適切な飲酒量って?

健康診断で肝臓の値が悪く、医者からお酒はほどほどにしてくださいと注意されました。じゃあほどほどってどのくらいなのって思ったことはありませんか?

アルコールによる肝障害は長期にわたる過剰の飲酒が肝障害の主な原因と考えらる状態をいいます。まず、とりすぎたアルコールは中性脂肪に変換され肝臓に蓄積される「脂肪肝」になります。脂肪肝のままアルコールの過剰摂取を続けると、肝臓の細胞にダメージを与えるようになる「アルコール性肝炎」をおこし、肝炎の状態が長く続くと「アルコール性肝硬変」という末期の状態になります。

ではどれだけ飲むとこのような状態になるのでしょうか。

日本酒1合を1単位という基準にして考えます。他のお酒の1単位の量は下表の様になります。

 

お酒の1単位(純エタノールとして20g弱)
ビール 500 ml 大きな缶ビール1本
日本酒 180 ml 1合
焼酎 110 ml 0.6合
ウイスキー 60 ml ダブル1杯
ワイン 180 ml グラス1杯程度

 

肝障害を起こす目安としては、1日当たり3単位を5年以上、飲み続けている方に肝障害の出現頻度が上がることがわかっています。また、人生において摂取した積算純エタノール量が1トン(およそ50000単位)を超えると肝硬変になる確率が高くなります。

肝臓を痛めないためには飲酒量の調節が必要です。飲む日もあれば飲まない日もあると思います。ですので週単位で飲酒量をコントロールしましょう。1日に2単位、週14単位以下は問題なく、多いときでも週に21単位程度までにすることを意識すると、長い間お酒と楽しく付き合っていけると思われます。

ただし、お酒に関しては個人差があり、この見解は標準的な男性を基準に考えています。お酒に弱い方、女性、肥満の方はこの2/3程度を目安にしてください。また、肝臓の病気をお持ちの方もこの飲酒量は多い場合があります。詳しくは、医師へお問い合わせください。

ちなみに、健康診断の際に、採血があるから数日前から禁酒してきましたという方がいらっしゃいます。毎回、お酒のせいで肝機能がわるいからということですが、数日禁酒した程度では変わりません。

肝機能を示す血液中の物質にはにはGOT/GPT/γGTPなどの指標があります。この血液中の物質が半分に減るまでの時間を半減期といいますが、これらの指標の半減期は2-3週間です。たとえば200という値が半分の100になるのに2−3週間かかり、さらに半分の50になるのにまた2−3週間かかります。ですので、普段からアルコールによる肝機能異常がある方が、数日禁酒した程度でもとにもどることはありません。

ただ、逆に言えばアルコールを断つと元に戻るのがアルコール性肝障害の特徴でもあります。もともとの値にもよりますが、3ヶ月程度禁酒すればほぼ正常値に戻る方が多い印象です。何れにせよ適切な飲酒量で肝機能異常が起きないように注意して、楽しいお酒との付き合い方をしてみませんか?

参考文献:わが国におけるアルコール性肝障害の現状と診断基準の変遷 日消誌 2012;109:1509―1517

 

文責:佐々木洋

 

健診と検診の違いって?

みなさんは「けんしん」を受けていますか?

「けんしん」を辞書で引くと健診とも検診とも記載があります。

「健診」は健康診断の略で、会社で行う定期健診や自治体で行われる区民健診が主なものになります。この目的は健康かどうかを判定することです。病気になる前に、全身の健康状態を評価し、病気の発生を未然に防ぐことを目的とします。予防がメインですので、高血圧や糖尿病、高コレステロールなどの生活習慣病にならないためにどうするかを考えるのが健康診断です。毎年受けることで体の変化に気付き、健康を維持するためにどうするかを考えます。

一方、「検診」は特定の病気を探すための検査を行うことをいいます。がん検診や歯科検診などが代表的なものになります。これは病気にならないためにどうするかではなく、病気かどうかの早期発見が目的になります。

みなさんはどちらの「けんしん」をうけていますか?

健診は会社員の方などは定期的に受けると思いますし、自営業のかたなども自治体の健診を年に一度受けるチャンスがあると思います。でも皆さんが知りたいのは健診でわかる生活習慣病になっているかどうかだけではなく、命にかかわるような病気=がんになってないかどうか?ではないでしょうか。健康診断で行う採血・心電図・レントゲンだけではわかることが限られています。極端な話では、生活習慣病かどうかしかわかりません。患者さんの中には毎年健診を受けていたのに「がん」になってしまった。全然意味がなかったとおっしゃる方も今までいらっしゃいましたが、それは健診の意味合いを誤解されているものと思います。日々の診療で感じることは、健診を受けているからなんとなく安心と思っている方が非常に多くいらっしゃるように思います。健診が意味がないことはありません。非常に重要なものですが、できるかぎり「検診」も受けるようにしてください。かかりつけの病院で普段の健康状態を把握してもらっている方は、「健診」より「検診」のほうが重要と考えます。

「検診」は特定の病気を見つけるために、科学的に検証された方法に基づいて行われているものがほとんどです。検診を受けることで、病気を発見し治療に結びつけることもできますし、検診を受けた集団では死亡率を下げることがわかっています。胃がん・大腸がん・肺がん検診は男女問わずに受けてください。女性は、乳がん・子宮がん検診を、50歳を超えた男性は前立腺がん検診は受けましょう。また、検診で異常を指摘されたら必ず精密検査まで行うようにしてください。

便潜血検査

この検査はどういう検査か知っていますか?

これは、大腸癌検診で行う便潜血検査といいます。ケースの中の綿棒で便をこすって採取しますが、この便の中に微量の血液が混じっていると陽性になります。

この検査は2回便を採取します。

 

大腸癌の粘膜から出血しています。

大腸癌の粘膜は出血しやすいため、便に血液が混じってきますが、常に出血しているわけではないので、大腸癌があるから必ずしも便に血液が混ざるわけではありません。ですので確率を上げるために、2回にわけて便を採取して一度でも検査が陽性であれば、腸の中を詳しく精密検査する全大腸内視鏡検査が必要になります。

 

出血しやすい大腸ポリープ
(一部癌化しています)

便潜血検査で陽性になる確率は報告はいろいろありますが、2−10%程度の方が陽性になるといわれています。私の前職場の統計でも約6%程度の方が陽性になりました。

検査陽性の方に全大腸内視鏡検査を行うと、約40%の方は異常がありませんでしたが、50%の方にポリープ、6%の方に早期癌、4%の方に進行癌が見つかっています。なんと、便潜血陽性になった方の約6割が内視鏡を行うことで治療すべき病変が見つかっています。

出血した場所はどこか?たまたま硬い便でお尻の穴の周りが切れてしまったかもしれませんが、同時に腸の中のポリープや癌からも出血している可能性は十分にあります。検査が陽性になると、都合のいいほうへ考えることが多く、もともと痔を持っているからと精密検査を受けたがらない方が少なくありません。

6月1日から杉並区 区民健康診査がはじまります。

区民健康診査では40歳以上の方には便潜血検査(大腸癌検診)を行うことが可能です。

便潜血検査で陽性になった方は、がんを見つけるチャンスをもらったようなものです。大腸癌は早く見つければ、かなりの確率で完治が望める病気です。必ず大腸内視鏡検査を行い、早期発見につなげていきましょう

参考文献:免疫法便潜血検査陽性にて当院で全大腸内視鏡検査を行った症例の検討~高齢者大腸癌の特徴を中心に~ 日消化器がん検診誌 Vol.52(2), Mar. 2014 233-239