セマグルチドの効果と副作用|種類(リベルサス)や費用を徹底解説

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近年、糖尿病治療や体重管理の分野で注目を集めている「セマグルチド」。
この成分を含む医薬品は、血糖値を下げる効果に加え、体重減少効果も期待できることから、多くの人々の関心を集めています。
しかし、その効果や安全性、正しい使用方法については、正確な情報を理解することが非常に重要です。

この記事では、セマグルチドとはどのような薬なのか、GLP-1受容体作動薬としての作用メカニズム、利用される主な疾患について詳しく解説します。
また、経口薬であるリベルサス錠、注射薬であるオゼンピック皮下注・ウゴービ皮下注といった種類ごとの特徴や正しい使い方、他のGLP-1薬との違いにも触れます。
さらに、セマグルチドの主な効果(血糖降下、体重減少、心血管イベント抑制など)、起こりうる副作用とその対処法、処方を受ける際の適応やプロセス、気になる費用や薬価、そして使用上の注意点や禁忌についても、専門的な視点から分かりやすく解説します。

セマグルチドは医師の処方が必要な医療用医薬品です。
インターネット上には不正確な情報や個人輸入に関する危険な情報も散見されます。
この記事を通じて、セマグルチドに関する正しい知識を身につけ、安全かつ適切に使用するための参考にしていただければ幸いです。

目次

セマグルチドとはどんな薬か

セマグルチドは、主に2型糖尿病の治療薬として開発された薬剤です。
体内にもともと存在するホルモン「GLP-1(ジーエルピーワン:Glucagon-like peptide-1)」と似た働きを持つように人工的に作られた成分です。
このGLP-1の作用を長く持続させるように改良されており、様々な薬理作用を発揮します。

GLP-1受容体作動薬としてのセマグルチドの作用

GLP-1は、食事を摂ると小腸から分泌されるホルモンです。
血糖値が高くなったときに膵臓からのインスリン分泌を促したり、逆に血糖値が低いときにはインスリンの分泌を抑える働きがあります。
また、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑える作用もあります。
これにより、食後の高血糖を抑え、血糖値のバランスを整える役割を果たしています。

さらに、GLP-1は胃の動きをゆっくりにする(胃排出遅延作用)ことで、食後の急激な血糖値上昇を抑えたり、満腹感を持続させたりする効果も持っています。
脳の食欲中枢にも作用し、食欲を抑制する効果も確認されています。

セマグルチドは、この体内のGLP-1と構造が非常によく似ており、GLP-1が結合する細胞の「受容体」に結合して、GLP-1と同様の様々な薬理作用を強力に発揮します。
セマグルチドは体内で分解されにくいため、体内のGLP-1よりもはるかに長く作用を持続できるという特徴があります。
この持続性の高さから、週に一度の注射で効果が維持できる注射薬や、特別な製剤技術により毎日服用することで効果が得られる経口薬として利用されています。

セマグルチドが使われる疾患(糖尿病、肥満症)

セマグルチドを含む医薬品は、現在、主に以下の疾患の治療に用いられています。

  • 2型糖尿病:
    日本では、2型糖尿病の治療薬として、経口薬の「リベルサス錠」と注射薬の「オゼンピック皮下注」が承認され、広く使用されています。
    食事療法や運動療法を行っても血糖コントロールが十分に改善しない場合に、単独または他の糖尿病治療薬と組み合わせて使用されます。
    血糖降下効果だけでなく、後述する体重減少効果や心血管イベント抑制効果も期待できる点が、2型糖尿病治療において重要なメリットとされています。
  • 肥満症:
    日本では、2024年2月に、セマグルチドを有効成分とする注射薬「ウゴービ皮下注」が、特定の基準を満たす肥満症に対する治療薬として承認されました。
    これは、単に痩せたいという美容目的ではなく、肥満によって健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症など)が生じている、またはそのリスクが高いと診断された肥満症患者さんに対し、食事療法・運動療法に加えて使用される医療用医薬品です。
    肥満症は疾患であり、その治療には医師の適切な診断と管理が必要です。
    「ウゴービ皮下注」の米国での添付文書によると、肥満症治療には最大2.4mgまでの用量が承認されています。
    https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2024/215256s011lbl.pdf
    日本でも同様に、2型糖尿病治療薬であるオゼンピックよりも高用量まで使用可能であり、肥満症治療に特化しています。

このように、セマグルチドは体内のGLP-1の働きを模倣し、2型糖尿病や肥満症といった慢性疾患の治療において、血糖コントロールの改善や体重減少を促進する重要な役割を担っています。

セマグルチドの種類と商品名

セマグルチドを有効成分とする医薬品には、剤形や投与経路の違いによりいくつかの種類があり、それぞれ異なる商品名で販売されています。
現在、日本で承認・販売されている主なセマグルチド製剤は、経口薬の「リベルサス錠」と注射薬の「オゼンピック皮下注」「ウゴービ皮下注」です。

セマグルチドの経口薬:リベルサス錠

リベルサス錠は、セマグルチドを有効成分とする世界初の経口GLP-1受容体作動薬です。
これまでのGLP-1受容体作動薬はすべて注射薬でしたが、リベルサス錠は特別な吸収促進技術(サルカプロザートナトリウムとの配合)を用いることで、経口での吸収を可能にしました。

リベルサス錠の特徴と正しい服用方法(飲食制限について)

リベルサス錠は、錠剤として毎日服用できる点が大きな特徴です。
これにより、注射が苦手な患者さんや、インスリン注射のように毎日の注射が必要な方にとって、治療の選択肢が広がりました。

日本のリベルサス錠添付文書
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068883.pdf
によると、有効成分であるセマグルチドは、消化管からの吸収率が非常に低い性質があります。
そのため、有効成分を効率よく体内に吸収させるために、特別な服用方法が定められています。

正しい服用方法:

  • 服用タイミング: 1日の最初の飲食(朝食など)を摂る前、完全に胃が空っぽの状態で服用します。
  • 服用量: 医師から指示された用量(3mg、7mg、または14mg)の錠剤を服用します。
  • 服用時の水分量: コップ約半分の水(約120mL以下)と一緒に服用します。
    多すぎる水や、水以外の飲み物(コーヒー、牛乳、ジュースなど)で服用すると、吸収が悪くなる可能性があります。
  • 服用後の飲食制限: 服用後、少なくとも30分間は飲食や他の薬剤の服用を避けてください
    できれば60分以上空けることが推奨される場合もあります。
  • 錠剤の扱い: 錠剤を割ったり、砕いたり、噛んだりせずに、そのまま飲み込んでください。

飲食制限が必要な理由:

リベルサス錠に含まれる吸収促進剤(サルカプロザートナトリウム)は、胃の中でセマグルチドの吸収を助ける働きをしますが、食物や飲み物、他の薬剤が存在するとその働きが著しく妨げられてしまいます。
胃の中に食べ物や飲み物があると、錠剤が適切に溶解・吸収されるための環境が整わず、有効成分がほとんど吸収されずに体外に排出されてしまうのです。
そのため、薬の効果を最大限に得るためには、必ず空腹時に、少量の水で服用し、その後の飲食を一定時間避けるという厳しいルールを守る必要があります。

セマグルチドの注射薬:オゼンピック皮下注・ウゴービ皮下注

セマグルチドの注射薬には、「オゼンピック皮下注」と「ウゴービ皮下注」の2つの商品名があります。
どちらもセマグルチドを有効成分とし、週1回皮下注射するタイプの薬剤です。
ペン型の注入器(オートインジェクター)にあらかじめ薬液が充填されており、患者さん自身が自宅で簡単に注射できる設計になっています。

オゼンピック・ウゴービの特徴と違い

オゼンピックとウゴービは、同じセマグルチドを有効成分とする週1回注射製剤ですが、主な適応疾患と使用可能な最大用量が異なります。

  • オゼンピック皮下注:
    主に2型糖尿病治療薬として使用されます。
    日本では、0.25mg、0.5mg、1.0mgの規格が承認されています。
    週1回皮下注射することで、安定した血糖降下作用と体重減少効果を発揮します。
    通常、少量(0.25mgや0.5mg)から開始し、効果や副作用を見ながら用量を増量していきますが、最大用量は1.0mgです。
  • ウゴービ皮下注:
    主に肥満症治療薬として使用されます。
    日本では、2024年2月に承認された新しい製剤です。
    「ウゴービ皮下注」の米国での添付文書
    https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2024/215256s011lbl.pdf
    に示されている通り、オゼンピックよりも高用量で使用することが特徴で、0.25mgから開始し、週ごとにまたは数週間ごとに段階的に増量し、最終的には最大2.4mgまで使用することが承認されています。
    肥満症の診断基準を満たし、かつ肥満に関連する健康障害を持つ患者さんに対して、食事療法・運動療法と併用して使用されます。

オゼンピックとウゴービの主な違いを表で比較:

項目 オゼンピック皮下注 ウゴービ皮下注
有効成分 セマグルチド セマグルチド
投与方法 週1回皮下注射 週1回皮下注射
主な適応疾患 2型糖尿病 肥満症
日本での規格 0.25mg, 0.5mg, 1.0mg 0.25mg, 0.5mg, 1.0mg, 1.7mg, 2.4mg
最大用量 1.0mg 2.4mg
承認時期(日本) 2018年 2024年

このように、オゼンピックは糖尿病治療における血糖コントロールを目的とした製剤であり、ウゴービは肥満症治療における体重管理を主目的とした製剤として、それぞれ異なる適応と用量設定がされています。
どちらも同じ成分ですが、目的とする治療効果と安全性プロファイルに基づいて使い分けられます。

セマグルチドと他のGLP-1薬(マンジャロなど)との比較

セマグルチド以外にも、GLP-1受容体作動薬には様々な種類が存在します。
代表的なものとして、リラグルチド(商品名:ビクトーザ、サクセンダ)、デュラグルチド(商品名:トルリシティ)、そしてセマグルチドと同じくノボ ノルディスク社が開発した経口薬のソマグルチド(商品名:リベルサス)などがあります。

また、最近では、GLP-1だけでなく、もう一つの血糖や食欲調節に関わるホルモンであるGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)の受容体にも作用する「GIP/GLP-1受容体作動薬」が登場しています。
その代表例が、チルゼパチド(商品名:マンジャロ、肥満症治療薬としてはゼップバウンド)です。

これらの薬剤は、すべてGLP-1の働きを模倣または増強することで血糖降下や体重減少効果をもたらしますが、それぞれ作用時間、投与方法、効果の強さ、副作用のプロファイルなどが異なります。

セマグルチドの特徴(他のGLP-1薬と比較して):

  • 長い作用持続時間: 週1回の注射(オゼンピック、ウゴービ)または1日1回の服用(リベルサス)で効果が持続します。
    特に週1回注射製剤は、毎日の注射が必要なリラグルチドなどに比べて利便性が高いです。
  • 強力な血糖降下作用と体重減少効果: 臨床試験の結果から、セマグルチドは他の多くのGLP-1受容体作動薬と比較して、より強力な血糖降下効果と体重減少効果を持つことが示されています。
    特に高用量のウゴービ(2.4mg)は、肥満症治療において非常に高い体重減少効果が報告されています。
  • 経口薬の存在: セマグルチドは、経口薬であるリベルサスが存在する唯一のGLP-1受容体作動薬(2024年現在)であり、注射が苦手な患者さんにとって画期的な選択肢となっています。
  • 心血管イベント抑制効果: オゼンピック(セマグルチド)は、心血管疾患のリスクが高い2型糖尿病患者さんにおいて、主要な心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)の発症リスクを有意に低下させることが大規模臨床試験(例えばSUSTAIN-6試験など、
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34894326/
    は糖尿病網膜症に関する報告ですが、SUSTAINプログラムの一部としてセマグルチドの心血管アウトカムが評価されています)で示されています。
    他のGLP-1薬にも同様の報告があるものもありますが、セマグルチドはその効果が確認されています。

マンジャロ(チルゼパチド)との比較:

マンジャロは、GLP-1とGIPの両方の受容体に作用するため、単独のGLP-1受容体作動薬であるセマグルチドと比較して、さらに強力な血糖降下効果と体重減少効果を示す可能性が示唆されています。
作用機序が異なるため、セマグルチドで十分な効果が得られない場合や、より強力な効果が必要な場合に選択肢となり得ます。
ただし、マンジャロも注射薬であり、使用上の注意点や副作用はセマグルチドと類似する部分が多いです。

どのGLP-1薬またはGIP/GLP-1薬を選択するかは、患者さんの病状、目標とする血糖値や体重、併存疾患、他の使用薬剤、患者さんの希望(注射か経口か、投与頻度など)、費用などを総合的に考慮して、医師が判断します。

セマグルチドの主な効果

セマグルチドは、GLP-1受容体作動薬として体内のGLP-1と同じ、あるいはそれ以上の働きをすることで、複数の重要な効果をもたらします。
主な効果としては、血糖降下作用、体重減少作用、そして心血管イベント抑制効果が挙げられます。

血糖値を下げる効果

セマグルチドの最も基本的な効果は、血糖値を下げることです。
これは主に以下のメカニズムによって実現されます。

  • 血糖依存的なインスリン分泌促進: 血糖値が高いときに、膵臓のベータ細胞からのインスリン分泌を促します。
    インスリンは血液中の糖分(ブドウ糖)を細胞に取り込ませることで血糖値を下げます。
    セマグルチドによるインスリン分泌促進は、血糖値が高いときにのみ起こるため、単独で使用した場合に重篤な低血糖を引き起こすリスクが比較的低いとされています(ただし、他の糖尿病薬と併用する場合は注意が必要です)。
  • グルカゴン分泌抑制: 血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑制します。
    これにより、肝臓からのブドウ糖放出が抑えられ、血糖値の上昇が抑制されます。
  • 胃排出遅延: 胃の内容物が腸へ移動する速度を遅らせます。
    これにより、食事から吸収されるブドウ糖が一度に大量に血中に入るのを防ぎ、食後の急激な血糖値上昇(食後高血糖)を抑制します。

これらの作用の組み合わせにより、セマグルチドは空腹時血糖値と食後血糖値の両方を改善し、長期的な血糖コントロールの指標であるHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)を低下させる効果が期待できます。

体重減少・ダイエット効果

セマグルチドは、血糖降下作用とは独立して、あるいはその作用と組み合わさる形で、有意な体重減少効果をもたらします。
これは、2型糖尿病患者さんだけでなく、特定の基準を満たす肥満症患者さんにおいても認められています。

食欲抑制・満腹感への作用

セマグルチドによる体重減少効果は、主に食欲抑制と満腹感の持続によってもたらされます。

  • 胃排出遅延: 前述のように、胃の内容物が腸へ移動する速度を遅らせることで、満腹感が持続しやすくなります。
  • 脳への作用: 脳の視床下部など、食欲やエネルギー代謝を調節する領域にあるGLP-1受容体に作用し、食欲を抑え、食事摂取量を減少させます。
    これにより、自然と摂取カロリーが減少し、体重が減少します。

臨床試験では、セマグルチド(特にウゴービなどの高用量)を使用することで、単独の食事療法・運動療法と比較して、より大きな体重減少が認められています。
ただし、セマグルチドはあくまで体重管理の補助薬であり、効果を最大限に引き出し、維持するためには、引き続き食事療法と運動療法を継続することが不可欠です。
また、誰でも「ダイエット薬」として安易に使用できるものではなく、医師の診断のもと、適応症例に処方される医療用医薬品であることを理解しておく必要があります。

心血管イベント抑制効果

セマグルチド(オゼンピック)は、心血管疾患のリスクが高い2型糖尿病患者さんを対象とした大規模な臨床試験(SUSTAIN-6試験など)において、主要な心血管イベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)の発症リスクを低下させることが報告されています(例:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34894326/
は糖尿病網膜症に関する報告ですが、これはSUSTAIN-6試験のサブグループ解析であり、この試験で心血管イベント抑制効果も同時に評価されました)。

この効果のメカニズムは完全には解明されていませんが、血糖コントロールの改善、体重減少、血圧や脂質プロファイルの改善に加え、直接的な血管保護作用などが関与している可能性が考えられています。
この心血管イベント抑制効果は、セマグルチドが2型糖尿病治療において、単に血糖を下げるだけでなく、患者さんの長期的な予後改善にも貢献しうる重要なメリットであることを示しています。

セマグルチドの副作用について

セマグルチドを含むGLP-1受容体作動薬は、その効果と引き換えにいくつかの副作用を引き起こす可能性があります。
副作用の発現頻度や程度には個人差がありますが、多くは投与初期に起こりやすく、継続によって軽減することが多いです。

頻繁に見られる副作用(消化器症状など)

セマグルチドで最も頻繁に見られる副作用は、消化器系の症状です。
これは、GLP-1受容体が消化管にも多く存在し、胃排出遅延などの作用が消化器症状として現れるためと考えられます。

  • 吐き気(悪心)
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 便秘
  • 腹部膨満感
  • 腹痛
  • 消化不良

これらの症状は、特に治療を開始したばかりの頃や、用量を増やした後に起こりやすい傾向があります。
多くの場合、軽度から中等度であり、治療を続けるうちに体が慣れてきて症状が和らいでいくことが期待できます。

吐き気・嘔吐・下痢などの対処法

頻繁に見られる消化器症状に対しては、いくつかの対処法があります。

  • 少量からの開始と段階的な増量(タイトレーション): セマグルチドは、通常、低い用量から開始し、体の慣れ具合を見ながら徐々に用量を増やしていきます。
    この段階的な増量(タイトレーション)は、副作用、特に消化器症状の発現を抑えるために非常に重要です。
    医師の指示に従い、焦らずゆっくりと用量を上げていくようにしましょう。
  • 食事内容の工夫: 消化の良いものを食べる、一度に大量に食べない、脂っこい食事や刺激物を避けるといった食事の工夫が有効な場合があります。
  • 対症療法薬の使用: 症状が強い場合には、吐き気止め、下痢止め、整腸剤などの対症療法薬が処方されることもあります。

これらの対策を試しても症状が改善しない場合や、症状が非常に強い、日常生活に支障をきたす場合は、必ず医師に相談してください。
医師は用量の調整を検討したり、他の薬剤に変更したりといった対応を行います。
自己判断で服用・使用を中止したり、用量を変更したりすることは危険です。

注意すべき重大な副作用

頻繁ではありませんが、セマグルチドの使用に際して注意すべき重大な副作用も報告されています。
これらの兆候が現れた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。

  • 膵炎: 急激な激しい腹痛、背中の痛み、嘔吐などが主な症状です。
    GLP-1受容体作動薬と膵炎との関連性が指摘されており、膵炎の既往がある人やリスク因子を持つ人は特に注意が必要です。
    膵炎を疑う症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診し、医師にセマグルチドを使用していることを伝えてください。
  • 胆嚢炎、胆管炎、胆石症: 右脇腹やみぞおちの痛み、発熱、黄疸などが症状として現れることがあります。
    特に急激な体重減少が起こる場合にリスクが高まる可能性があります。
  • 腸閉塞: 持続する腹痛、腹部膨満、嘔吐、排便・排ガス停止などが症状として現れます。
  • 急性腎障害: 尿量減少、むくみ、だるさなどが症状として現れることがあります。
    下痢や嘔吐による脱水が原因となる場合もあります。
  • 低血糖: 特にスルホニル尿素薬やインスリン製剤といった他の血糖降下薬と併用した場合に、低血糖のリスクが高まります。
    震え、動悸、冷や汗、強い空腹感、目のかすみ、意識障害などの症状が現れます。
    これらの症状が出た場合は、すぐに糖分(ブドウ糖や砂糖など)を摂取して対処する必要があります。
  • アナフィラキシーを含む重篤な過敏症: 発疹、かゆみ、呼吸困難、まぶた・口唇・舌の腫れなどのアレルギー症状が現れることがあります。
    これらの症状が出た場合は、直ちに使用を中止し、緊急で医療機関を受診してください。
  • 視覚異常: 糖尿病網膜症の悪化などが報告されています
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34894326/
    視界のかすみや変化を感じた場合は医師に相談してください。

副作用が起きた場合の対応

セマグルチドの使用中に何らかの副作用、特に上記のような重大な副作用の兆候が疑われる症状が現れた場合は、自己判断で対応せず、速やかに処方医または薬剤師に相談してください
症状が重い場合や、重大な副作用の可能性が否定できない場合は、迷わず救急医療機関を受診することも必要です。

副作用について不安がある場合は、使用を開始する前に医師や薬剤師に十分に説明を聞き、起こりうる症状やその対処法について理解しておくことが大切です。
また、副作用が現れた際には、いつから、どのような症状が、どのくらいの強さで現れているのかを具体的に伝えられるようにしておくと、医師の診断や対応がスムーズになります。

セマグルチドの処方について

セマグルチドは、医師の診断と処方箋が必要な医療用医薬品です。
薬局やドラッグストアで一般的に購入することはできません。
安全かつ適切に使用するためには、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けて処方してもらう必要があります。

セマグルチドの処方が適応となる人

セマグルチド製剤の処方は、それぞれの製剤に承認された適応疾患と患者さんの状態に基づいて行われます。

  • リベルサス錠、オゼンピック皮下注:
    これらは主に2型糖尿病の治療に用いられます。
    適応となるのは、食事療法や運動療法を適切に行っても、十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者さんです。
    他の血糖降下薬(メトホルミン、SGLT2阻害薬、インスリン製剤など)と組み合わせて使用されることもあります。
    患者さんの年齢、病歴、合併症、腎機能、他の使用薬剤などを総合的に評価し、セマグルチドの使用が適切であると医師が判断した場合に処方されます。
  • ウゴービ皮下注:
    ウゴービは肥満症の治療薬として承認されています。
    日本肥満学会の定める肥満症の診断基準を満たし、かつ肥満に関連する健康障害(例えば、血糖値が高い、高血圧、脂質異常症など)を持つ患者さんに対して、食事療法・運動療法に加え、薬物療法が必要と医師が判断した場合に処方されます。
    具体的には、BMI(Body Mass Index)が一定基準以上であることや、既存の肥満関連健康障害の有無などが処方の判断基準となります。
    ウゴービは、美容や痩身目的での適応外使用は認められていません。

上記以外にも、セマグルチドを使用できない(禁忌となる)人や、慎重な投与が必要な人がいます。
これについては、後述の「セマグルチド使用上の注意点」で詳しく解説します。
医師は、患者さんがこれらの条件に当てはまらないかを確認した上で、処方の可否を判断します。

医療機関での処方プロセス

セマグルチドの処方を受けるための一般的なプロセスは以下の通りです。

  • 受診: 糖尿病または肥満症の診療を行っている医療機関を受診します。
    かかりつけ医がいる場合はまず相談してみましょう。
    セマグルチドは専門的な知識が必要な薬剤であるため、内分泌代謝内科や糖尿病専門医、肥満症専門医のいる医療機関を受診するのが望ましいでしょう。
  • 問診・診察: 医師が患者さんの病歴(いつから糖尿病/肥満症か、治療歴、他の疾患)、現在の症状、生活習慣(食事、運動)、身長・体重(BMI)、血圧、併存疾患(心臓病、腎臓病、膵炎の既往など)、アレルギーの有無、現在使用しているすべての薬剤(処方薬、市販薬、サプリメントなど)について詳しく問診します。
    身体診察も行われます。
  • 検査: 血糖値(HbA1cを含む)、腎機能、肝機能、膵酵素などの血液検査、尿検査などが行われることがあります。
    肥満症の場合は、肥満関連健康障害の評価のための検査も行われます。
  • 診断・適応判断: 問診、診察、検査結果に基づいて、医師が病状を診断し、セマグルチドによる治療が適切であるか、保険適応となる条件を満たすかなどを判断します。
    患者さんの希望やライフスタイル(注射への抵抗、規則正しい生活が可能かなど)も考慮されます。
  • 説明と同意: セマグルチドの効果、予想される体重減少効果、副作用(特に消化器症状や重大な副作用)、正しい使用方法(リベルサスなら服用方法、注射薬なら自己注射の手技指導)、注意点、費用などについて、医師または薬剤師から詳細な説明を受けます。
    疑問点があればここで確認し、治療に同意した場合に処方となります。
  • 処方箋の発行: 医師が処方箋を発行します。
    リベルサス錠の場合は錠剤、オゼンピックまたはウゴービの場合はペン型注入器の形で処方されます。
  • 調剤・薬の説明: 処方箋を持って薬局に行き、薬剤師から薬を受け取ります。
    薬剤師からも、薬の名前、用量、服用・使用方法、保管方法、副作用、他の薬との飲み合わせなどについて詳しい説明を受けます。
    特にリベルサスの服用方法や、注射薬の自己注射手技については、初回は医療機関や薬局で丁寧に指導を受け、理解できるまで確認することが重要です。
  • 定期的な診察: セマグルチドによる治療中は、効果や副作用を確認し、必要に応じて用量を調整したり、合併症をチェックしたりするために、定期的な通院が必要です。
    医師の指示されたスケジュールで必ず受診しましょう。

最近では、オンライン診療でセマグルチドの処方を行うクリニックも増えています。
特に、時間がない方や遠方に住んでいる方にとって便利な選択肢となり得ますが、オンライン診療においても上記と同様の診察や適応判断、薬剤に関する十分な説明が実施されることが重要ですし、必要に応じて対面診療に繋げられる体制が整っているか確認が必要です。
また、正規の医薬品ではない調製薬の使用に関して、FDAは投与エラーを含む潜在的なリスクについて警告を発しています
https://www.fda.gov/drugs/human-drug-compounding/fda-alerts-health-care-providers-compounds-and-patients-dosing-errors-associated-compounded
安全のためにも、正規のルートで処方された製剤を使用することが非常に大切です。

保険適用と自由診療の違い

セマグルチド製剤は医療用医薬品であるため、原則として医療機関での医師の診断に基づき処方されます。
その際に、治療を受ける疾患や患者さんの状態によって、保険が適用される場合と、全額自己負担となる自由診療となる場合があります。

  • 保険適用:
    日本国内でセマグルチド製剤(リベルサス、オゼンピック、ウゴービ)が保険適用となるのは、それぞれの製剤に承認された適応疾患の治療目的で使用される場合です。
    • 2型糖尿病: リベルサス、オゼンピックは、2型糖尿病の治療薬として保険適用されます。
    • 肥満症: ウゴービは、日本肥満学会の定める基準を満たす肥満症患者さんに対して、食事療法・運動療法に加えて使用される場合に保険適用されます。

    医師が、患者さんがこれらの疾患の診断基準を満たし、セマグルチドによる治療が保険診療として適切であると判断した場合に、保険が適用されます。
    保険が適用されれば、患者さんの自己負担額は通常、医療費全体の1~3割となります。

  • 自由診療:
    セマグルチド製剤を保険適用とならない目的で使用する場合は、全額自己負担となる自由診療となります。
    最も一般的なのは、「単に痩せたい」という美容やダイエット目的で、肥満症の診断基準やウゴービの保険適用基準を満たさないにも関わらず、体重減少効果を期待してセマグルチドを使用する場合です。

    医師が適応外使用(承認された効能効果以外の目的で使用すること)を判断した場合、あるいは患者さんの希望による適応外使用となる場合は、健康保険が使えず、診察料、検査料、薬剤費を含め、医療費の全額を自己負担することになります。
    自由診療の場合、医療機関が自由に価格を設定できるため、費用は医療機関によって大きく異なります。

注意点:
「痩せたい」という目的でセマグルチド製剤(特にオゼンピックやリベルサスを適応外使用として)を自由診療で提供しているクリニックも存在します。
しかし、これは本来の承認された使用方法ではありません。
適応外使用は、十分なエビデンスに基づかない場合や、予期せぬ副作用のリスクが管理されにくい可能性があります。
また、何か副作用が起きた場合でも、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性があるため、注意が必要です。
安全性を最優先するためにも、セマグルチドによる治療を希望する場合は、必ず正規のルートで、医師の診断に基づき、適応疾患に対して処方を受けるようにしましょう。
特に肥満症治療目的の場合は、ウゴービの保険適用基準を満たすか、医師とよく相談することが重要です。

セマグルチドにかかる費用・薬価

セマグルチド製剤にかかる費用は、使用する製剤の種類(リベルサス、オゼンピック、ウゴービ)、用量、処方量(日数や本数、錠数)、そして保険適用となるか自由診療となるかによって大きく異なります。
ここでは、保険診療における薬価(薬剤自体の公定価格)と、自己負担額の目安について解説します。

リベルサス錠の薬価(値段)

リベルサス錠は、1日1回服用の経口薬です。
規格は3mg、7mg、14mgの3種類があります。
薬価は厚生労働省によって定められています(2024年現在の薬価を例示します。
薬価は改定される可能性があります)。

規格 薬価(1錠あたり) 1日あたりの薬価 1ヶ月(30日)あたりの薬価
3mg錠 約 400円 約 400円 約 12,000円
7mg錠 約 600円 約 600円 約 18,000円
14mg錠 約 900円 約 900円 約 27,000円

(※これは薬剤自体の薬価であり、実際の患者さんの自己負担額はこれに診察料や検査料、調剤料などが加わります。)

オゼンピック・ウゴービの薬価(値段)

オゼンピック皮下注、ウゴービ皮下注は、週1回注射の製剤です。
ペン型注入器の形で提供され、1本で複数回(多くの場合4回分)使用できるものが多いです。
薬価はペン1本あたりで設定されています。

  • オゼンピック皮下注:
    2型糖尿病治療薬として使用されます。
    規格は0.25mg、0.5mg、1.0mgの3種類があり、それぞれペン1本(4回分)の薬価が設定されています。
    規格 薬価(ペン1本/4回分) 1ヶ月(約4週間)あたりの薬価
    0.25mg注 約 5,000円 約 5,000円
    0.5mg注 約 9,000円 約 9,000円
    1.0mg注 約 17,000円 約 17,000円

    (※これは薬剤自体の薬価であり、実際の患者さんの自己負担額はこれに診察料や検査料などが加わります。)

  • ウゴービ皮下注:
    肥満症治療薬として使用されます。
    「ウゴービ皮下注」の米国での添付文書
    https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2024/215256s011lbl.pdf
    にあるように、規格は0.25mgから2.4mgまで複数あり、それぞれペン1本(4回分)の薬価が設定されています。
    ウゴービは高用量を使用するため、オゼンピックよりも薬価が高くなります。
    規格 薬価(ペン1本/4回分) 1ヶ月(約4週間)あたりの薬価
    0.25mg注 約 7,500円 約 7,500円
    0.5mg注 約 13,000円 約 13,000円
    1.0mg注 約 24,000円 約 24,000円
    1.7mg注 約 34,000円 約 34,000円
    2.4mg注 約 43,000円 約 43,000円

    (※これは薬剤自体の薬価であり、実際の患者さんの自己負担額はこれに診察料や検査料などが加わります。)

自己負担額の目安

保険診療でセマグルチドの処方を受ける場合、上記の薬価に加え、診察料、検査料、処方箋料、調剤料などがかかります。
これら医療費全体の自己負担割合は、健康保険の種類や年齢、所得によって通常1割、2割、または3割となります。

保険診療の場合の自己負担額(目安):

  • リベルサス錠: 用量によって異なりますが、1ヶ月あたり薬剤費の自己負担額は、薬価の1~3割となります。
    例えば、14mg錠を1ヶ月服用する場合、薬剤費の自己負担額は薬価27,000円の1~3割、つまり約2,700円~8,100円程度が目安となります。
    これに診察料などが加わります。
  • オゼンピック皮下注: 用量によって異なりますが、1ヶ月あたり薬剤費の自己負担額は、薬価の1~3割となります。
    例えば、1.0mg注を1ヶ月(ペン1本)使用する場合、薬剤費の自己負担額は薬価17,000円の1~3割、つまり約1,700円~5,100円程度が目安となります。
    これに診察料などが加わります。
  • ウゴービ皮下注: 用量によって大きく異なりますが、1ヶ月あたり薬剤費の自己負担額は、薬価の1~3割となります。
    例えば、最大用量である2.4mg注を1ヶ月(ペン1本)使用する場合、薬剤費の自己負担額は薬価43,000円の1~3割、つまり約4,300円~12,900円程度が目安となります。
    これに診察料などが加わります。

診察料や検査料を含めた月額の自己負担額は、医療機関や治療内容、検査頻度などによって変動しますが、概ね数千円から1万円台後半になることが多いでしょう。
ただし、これはあくまで目安であり、実際の費用は医療機関や保険証の種類によって異なります。

自由診療の場合の費用:

自由診療でセマグルチドを使用する場合(主に美容目的など適応外使用)、上記の薬価は適用されません。
医療機関が独自に価格を設定するため、費用は医療機関によって大きく異なり、保険診療の場合よりも高額になることがほとんどです。
診察料や薬剤費を含め、月額数万円から10万円以上かかる場合もあります。
自由診療の費用については、受診を検討している医療機関に直接確認することが必要です。
また、自由診療には前述のリスク(医薬品副作用被害救済制度の対象外など)があることも理解しておく必要があります。

いずれの場合も、セマグルチドによる治療を開始する前に、医師や医療機関の窓口で費用について十分に説明を受け、納得した上で治療に進むことが大切とします。

セマグルチド使用上の注意点

セマグルチドは効果的な薬剤ですが、安全に使用するためにはいくつかの重要な注意点があります。
特に、使用できない人(禁忌)や、他の薬剤との飲み合わせ、特定の状態(妊娠・授乳など)での使用については、医師の指示を厳守する必要があります。

服用・使用ができない人(禁忌)

以下に該当する人は、原則としてセマグルチドを服用・使用してはいけません(禁忌)。
これは添付文書に記載されている事項であり、安全性を確保するために非常に重要です。

  • セマグルチドまたは本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある人: 以前にセマグルチド製剤を使用してアレルギー反応を起こしたことがある人。
  • 糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡、1型糖尿病の人: これらの状態はインスリン治療が必要であり、セマグルチドは適応外です。
  • 重症感染症、手術等の緊急の場合: これらの状態では血糖コントロールが不安定になりやすく、インスリン治療が優先されるべきです。
  • 重度胃不全麻痺等、重度の消化管障害のある人: セマグルチドの胃排出遅延作用が悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 膵炎の既往歴のある人: セマグルチドは膵炎を引き起こす可能性があるため、過去に膵炎になったことがある人には使用できません。
  • 甲状腺髄様がんまたは多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の既往歴あるいは家族歴のある人: 動物実験で甲状腺腫瘍の発生リスクが報告されているため、ヒトでのリスクは不明ですが、これらの病歴がある人には使用できません。
  • 妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性: 安全性が確立されていないため、後述のように使用できません。

上記の他にも、患者さんの状態によっては使用に注意が必要な場合があります。
必ず医師に既往歴や健康状態を正確に伝えてください。

他の薬剤との相互作用

セマグルチドと他の薬剤を一緒に使用することで、薬の効果に影響が出たり、副作用のリスクが高まったりする可能性があります。
医師や薬剤師に、現在使用しているすべての薬剤(処方薬、市販薬、サプリメント、漢方薬なども含む)を正確に伝えることが非常に重要です。

特に注意が必要な相互作用としては以下が挙げられます。

  • 他の血糖降下薬(スルホニル尿素薬、インスリン製剤など): これらの薬剤とセマグルチドを併用すると、低血糖のリスクが高まる可能性があります。
    併用する場合は、低血糖の症状に注意し、必要に応じて他の血糖降下薬の用量調整が行われます。
  • 経口薬剤: セマグルチドには胃排出遅延作用があるため、他の経口薬の吸収速度や吸収量に影響を与える可能性があります。
    特に、速やかな吸収が必要な薬剤(例えば、狭心症治療薬など)を使用している場合は注意が必要です。
    セマグルチドを開始または用量変更する際は、併用する経口薬の効果に変化がないか注意深く観察する必要があります。
    リベルサス錠の場合は、特に服用タイミングのルールを守ることが重要です。

妊娠中・授乳中の使用について

セマグルチドは、妊婦または妊娠している可能性のある女性、および授乳中の女性には使用できません

  • 妊娠中: 動物実験において、セマグルチドが胎児の発育に影響を及ぼす可能性が報告されています。
    ヒトでの安全性は確立されていません。
    妊娠を希望する女性や妊娠が判明した場合は、速やかに医師に相談し、セマグルチドの使用を中止する必要があります。
    通常、妊娠計画中または妊娠が判明した時点で使用を中止し、胎児への影響を考慮して、薬の最終使用から一定期間(例えば、約2ヶ月間)避妊を行うことが推奨される場合があります。
  • 授乳中: セマグルチドが母乳中に移行するかどうかは不明ですが、乳児への影響の可能性が否定できません。
    そのため、授乳中の女性はセマグルチドを使用できません。
    セマグルチドによる治療を受けている間に授乳を希望する場合は、医師に相談してください。

セマグルチドに関するよくある質問

セマグルチドについて、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

セマグルチドは痩せ薬として使えますか?

セマグルチドは、肥満症治療薬として正式に承認されている薬剤(ウゴービ皮下注)があります
「ウゴービ皮下注」の米国での添付文書
https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2024/215256s011lbl.pdf
に示されているように、ウゴービは、日本肥満学会の定める診断基準を満たし、かつ肥満に関連する健康障害を有する肥満症患者さんに対して、食事療法・運動療法と組み合わせて使用される医療用医薬品です。
臨床試験で有意な体重減少効果が確認されています。

しかし、セマグルチドを含む製剤(リベルサスやオゼンピックなど)を、単に「痩せたい」という美容目的で、肥満症の診断基準を満たさない人が使用することは、本来の適応外使用となります。
このような適応外使用は、安全性や有効性が十分に確立されていない場合があり、医師の適切な管理下で行われない限りリスクを伴います。
また、正規の医薬品ではない調製薬の使用に関して、FDAは投与エラーを含む潜在的なリスクについて警告を発しています
https://www.fda.gov/drugs/human-drug-compounding/fda-alerts-health-care-providers-compounds-and-patients-dosing-errors-associated-compounded

したがって、「痩せ薬」として誰もが簡単に使えるものではありません。
体重管理のためにセマグルチドによる治療を検討する場合は、ご自身の状態が肥満症の診断基準を満たすか、ウゴービの保険適用基準に合致するかなどを医師に相談し、正規の医療機関で適切な診断と処方を受けることが重要です。
安易な個人輸入や適応外使用には、前述のような健康被害のリスクや、医薬品副作用被害救済制度の対象外となるリスクがあります。

リベルサスはなぜ飲食禁止なのですか?

リベルサス錠は、セマグルチドを経口で吸収させるために特別な技術を用いて製造された製剤だからです。

セマグルチドは本来、消化管で容易に分解されてしまう性質があり、そのまま内服してもほとんど吸収されません。
リベルサス錠には、有効成分であるセマグルチドに加えて、吸収促進剤(サルカプロザートナトリウム)が含まれています。
この吸収促進剤が、胃の粘膜を一時的に変化させて、セマグルチドが分解されずに吸収されるのを助ける働きをします。

日本のリベルサス錠添付文書
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068883.pdf
にも記載されているように、この吸収促進剤の働きは、胃の中に食べ物や飲み物、他の薬剤があると著しく妨げられてしまいます。
胃に何かがあると、リベルサス錠が適切に溶解・吸収されるための環境が整わず、せっかくの吸収促進剤の力も発揮されません。
その結果、有効成分であるセマグルチドが体内にほとんど吸収されずに、薬の効果が得られなくなってしまうのです。

そのため、リベルサス錠を服用する際は、薬の効果を最大限に引き出すために、以下の厳しいルールを守る必要があります。

  • 1日の最初の飲食前、完全に胃が空っぽの状態で服用する。
  • 少量の水(約120mL以下)で服用する。
  • 服用後、少なくとも30分間(できれば60分以上)は飲食や他の薬剤の服用を避ける。

これらのルールを守ることで、リベルサス錠に含まれるセマグルチドが胃から効率よく吸収され、本来の効果を発揮できるようになります。
飲食制限は、リベルサス錠の有効性を確保するための非常に重要な条件なのです。

まとめ:セマグルチドについて医師に相談しましょう

セマグルチドは、GLP-1受容体作動薬として、2型糖尿病治療における血糖コントロール改善や、特定の基準を満たす肥満症患者さんにおける体重減少に、非常に効果的な薬剤です。
経口薬のリベルサス錠、注射薬のオゼンピック皮下注、ウゴービ皮下注といった種類があり、それぞれの特徴や適応疾患、正しい使用方法が定められています。

セマグルチドの使用により、血糖降下効果、体重減少効果、そして心血管イベント抑制効果が期待できます。
一方で、吐き気や下痢といった消化器症状をはじめとする副作用や、膵炎などの重大な副作用のリスクもゼロではありません。
また、特定の人(禁忌)は使用できず、他の薬剤との相互作用や、妊娠・授乳中の使用についても注意が必要です。
糖尿病網膜症の悪化に関する報告もあるため(例:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34894326/
)、視覚の変化には注意が必要です。

セマグルチドは医師の処方が必須の医療用医薬品です。
自己判断での使用や、医師の管理下でない個人輸入は、効果が得られないだけでなく、重篤な健康被害を引き起こすリスクがあります。
FDAも正規の医薬品ではない調製薬の使用に関して警告を発しています
https://www.fda.gov/drugs/human-drug-compounding/fda-alerts-health-care-providers-compounds-and-patients-dosing-errors-associated-compounded
特に「痩せたい」という目的でセマグルチドを検討されている場合は、ご自身の状態が肥満症治療薬(ウゴービ)の適応となるか、保険適用となるかなどを含め、必ず医師に相談し、適切な診断と指導のもとで使用することが重要です。

この記事で解説した情報が、セマグルチドに関する理解を深める一助となれば幸いです。
セマグルチドによる治療を検討されている方や、現在使用中の方で不安や疑問がある方は、迷わず医療機関を受診し、医師や薬剤師に相談してください。
あなたの健康状態や目標に合った、安全で最適な治療法を選択するためには、専門家との対話が最も重要です。

免責事項:
この記事はセマグルチドに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスや個別の診断・治療を推奨するものではありません。
セマグルチドの使用に関しては、必ず医師の診察を受け、指示に従ってください。
また、ここに記載されている情報は、記事執筆時点のものであり、最新の医学的知見や規制変更により変更される可能性があります。
治療の決定は、必ず担当の医師と相談の上で行ってください。

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