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肥満症は、見た目の問題だけでなく、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった様々な健康障害のリスクを高める深刻な状態です。
食事療法や運動療法だけでは十分な効果が得られない場合、新たな選択肢として注目されているのが肥満症治療薬「ウゴービ」です。
この記事では、ウゴービに期待できる効果や、知っておくべき副作用、さらには費用や対象者について、網羅的に解説します。治療を検討している方は、正しい知識を身につけ、医師との相談に役立ててください。
ウゴービとは?肥満症治療薬の概要
ウゴービ(一般名:セマグルチド)は、2023年に日本で肥満症治療薬として承認された、週1回投与の皮下注射薬です。これまでの治療の中心であった食事療法や運動療法を補助し、より高い体重減少効果を目指すために使用されます。
ただし、誰でも使える美容目的の「痩せ薬」ではありません。あくまで肥満症という病気の治療薬であり、医師の診断と適切な指導のもとで使用されることが大前提となります。
ウゴービの効果|期待できる体重減少とメカニズム
ウゴービには、食欲を自然に抑え、体重減少をサポートする効果が期待できます。その効果は、有効成分である「セマグルチド」の作用によるものです。
GLP-1受容体作動薬としての作用
ウゴービは「GLP-1受容体作動薬」という種類の薬です。GLP-1は、もともと私たちの体内にあり、食事を摂ると小腸から分泌されるホルモンです。ウゴービは、このGLP-1と似た働きをします。
- 脳への作用: 脳の視床下部にある満腹中枢に働きかけ、食欲を抑えます。
- 胃への作用: 胃の動きを緩やかにし、食べたものが胃に留まる時間を長くすることで、満腹感を持続させます。
これにより、「食べたい」という気持ちが自然に和らぎ、食事量が減ることで体重減少につながります。無理な我慢ではなく、体の仕組みに働きかけるのが特徴です。
どのくらい痩せる?体重減少効果について
国内外で行われた臨床試験では、ウゴービを投与されたグループは、偽薬(プラセボ)を投与されたグループに比べて有意な体重減少を示しました。
日本人も参加した国際共同臨床試験では、食事療法・運動療法に加えてウゴービ(2.4mg)を68週間投与した結果、平均で約13%の体重減少が認められています。
もちろん、この効果には個人差があり、食事や運動の取り組み方によっても結果は変わってきます。ウゴービはあくまで治療の補助であり、生活習慣の改善と組み合わせることで最大の効果が期待できます。
効果が出るまでの期間と最大投与期間
ウゴービの効果は、投与開始から数週間~数ヶ月で実感し始めることが多いですが、これも個人差があります。副作用を抑えるために少量から開始し、段階的に投与量を増やしていくため、目標体重に達するまでには時間がかかります。
ウゴービの最大投与期間は?
ウゴービの投与期間は、臨床試験の結果に基づき、原則として68週間(約1年半)までとされています。これは、長期的な安全性や効果に関するデータがこの期間で評価されているためです。治療の継続については、定期的に医師と相談しながら決定します。
ウゴービの主な副作用と対処法
多くの薬と同様に、ウゴービにも副作用があります。特に投与初期や増量時に現れやすいですが、その多くは時間と共に軽快する傾向にあります。
消化器系の副作用(吐き気、下痢、便秘など)
最も一般的に見られる副作用は、以下のような消化器系の症状です。
- 吐き気(悪心)
- 下痢
- 便秘
- 嘔吐
- 腹痛、腹部不快感
これらの症状は、ウゴービが胃の動きを緩やかにするために起こりやすいと考えられています。
<対処法の例>
- 一度にたくさん食べず、少量ずつ回数を分けて食べる。
- 脂っこい食事や香辛料の強い食事を避ける。
- 消化の良いもの(おかゆ、うどんなど)を選ぶ。
- 水分をこまめに補給する。
症状が辛い場合は、我慢せずに医師や薬剤師に相談してください。
その他の比較的よく見られる副作用
消化器症状以外にも、以下のような副作用が報告されています。
- 頭痛
- めまい
- 倦怠感
- 注射部位の反応(赤み、かゆみなど)
副作用が出た場合の相談先
副作用が出た場合、自己判断で投与を中止したりせず、必ず処方を受けた医療機関の医師や薬剤師に相談してください。症状に応じた対処法や、場合によっては投与量の調整などを検討します。
肥満治療薬ウゴービの副作用は?
改めてまとめると、ウゴービの主な副作用は吐き気や便秘・下痢といった消化器系の症状です。これらは投与初期に多く見られますが、徐々に慣れていくことがほとんどです。対処法としては、食事内容を工夫することが有効です。まれに重篤な副作用もあるため、いつもと違う強い症状が出た場合は、速やかに医療機関に連絡することが重要です。
まれに起こる重篤な副作用と注意点
頻度は非常に低いものの、注意すべき重篤な副作用も報告されています。以下の症状が現れた場合は、直ちに投与を中止し、速やかに医療機関を受診してください。
膵炎、胆嚢炎などの初期症状
- 急性膵炎: 持続する激しい腹痛、背中の痛み、嘔吐など。
- 胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸: 強い腹痛、皮膚や白目が黄色くなる、発熱など。
これらの症状は、重篤な状態につながる可能性があるため、見過ごさないことが大切です。
投与を中止すべきケース
上記の重篤な副作用が疑われる症状のほか、皮膚の発疹、じんましん、顔やまぶたの腫れ、呼吸困難といったアナフィラキシー反応が起きた場合も、直ちに投与を中止して受診が必要です。
禁忌・慎重投与の対象者
安全性の観点から、以下に該当する方はウゴービを使用できません(禁忌)。
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方
- 甲状腺髄様癌の既往歴のある方、または家族歴のある方(多発性内分泌腫瘍症2型)
- 妊娠中、授乳中の方、または妊娠を希望している方
また、糖尿病の方、膵炎の既往歴がある方、重度の胃腸障害がある方などは、慎重な投与が必要となります。必ず持病や既往歴を医師に伝えてください。
ウゴービのデメリットは?
ウゴービ治療のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 副作用のリスク: 特に消化器系の副作用が起こる可能性がある。
- 自己注射の手間: 週に1回、自身で注射をする必要がある。
- 費用: 保険適用でも一定の自己負担があり、自費診療の場合は高額になる。
- 投与中止後のリバウンド: 薬の効果で抑えられていた食欲が戻り、リバウンドする可能性があるため、治療中からの生活習慣の定着が不可欠。
ウゴービの投与方法
ウゴービは、医療機関で処方され、患者さん自身が自宅で投与する自己注射薬です。
週1回の自己注射
ウゴービは、週に1回、決められた曜日に皮下注射します。注射する部位は、腹部、太もも、または上腕(二の腕)です。
毎回同じ部位に注射すると皮膚が硬くなることがあるため、少しずつ場所をずらすことが推奨されます。
注射方法は、初めて処方される際に必ず医療機関で詳しい指導を受けられますので、ご安心ください。
投与量の段階的増量スケジュール
副作用を軽減するため、ウゴービは少量から開始し、4週間ごとに段階的に投与量を増やしていきます。これを「用量漸増」といい、体を薬に慣らしながら治療を進めるための重要なステップです。
<標準的な増量スケジュール>
- 1~4週目: 0.25mg
- 5~8週目: 0.5mg
- 9~12週目: 1.0mg
- 13~16週目: 1.7mg
- 17週目以降: 2.4mg(維持用量)
※医師の判断により、スケジュールは調整されることがあります。
ウゴービの対象者と処方条件
ウゴービは、効果的な治療薬ですが、希望すれば誰でも処方されるわけではありません。特に保険診療で処方を受けるには、厳しい条件を満たす必要があります。
保険適用となる基準(BMIや健康障害)
日本でウゴービが保険適用となるのは、以下の両方の条件を満たす「肥満症」の患者さんです。
- 高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有していること
- 食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない、以下のいずれかのBMIであること
- BMI 27kg/㎡以上で、肥満に関連する健康障害(耐糖能異常、睡眠時無呼吸症候群など)を2つ以上有する
- BMI 35kg/㎡以上
※BMI = 体重(kg) ÷ [身長(m) × 身長(m)]
保険適用外(自費)の場合
上記の保険適用基準を満たさない場合でも、一部のクリニックでは自由診療(自費)でウゴービを処方していることがあります。ただし、この場合は全額自己負担となり、費用が高額になります。また、安全管理の体制が整った信頼できる医療機関を選ぶことが非常に重要です。
ウゴービが処方される医療機関
ウゴービの処方には、肥満症治療に関する十分な知識と経験を持つ医師による診断が必要です。一般的には、肥満症を専門とする内科や内分泌内科、糖尿病内科などで処方されます。
ウゴービの費用(薬価)について
治療を続ける上で、費用は重要な要素です。保険適用と自費診療では、負担額が大きく異なります。
(2024年6月時点の薬価を参考にしています)
保険適用時の自己負担額
保険が適用される場合、医療費の自己負担は原則3割です。
ウゴービの薬価は投与量によって異なります。維持用量である2.4mgの場合、1本あたりの薬価は約10,740円です。
週1回の投与なので、1ヶ月(4本)あたりの自己負担額(3割)は約12,888円となります。これに加えて、診察料や検査料などが別途かかります。
自費診療の場合の費用
自費診療の場合、費用は医療機関が独自に設定するため、一概には言えません。一般的に、月額で数万円から十数万円程度かかることが多く、保険診療に比べてかなり高額になります。
オゼンピックとウゴービの違い
ウゴービと同じ「セマグルチド」を有効成分とする薬に「オゼンピック」があります。この2つは混同されがちですが、目的や用法・用量が異なる別の薬です。
項目 | ウゴービ | オゼンピック |
---|---|---|
承認された目的 | 肥満症 | 2型糖尿病 |
有効成分 | セマグルチド | セマグルチド |
最大投与量 | 2.4mg | 1.0mg |
保険適用の条件 | 肥満症の基準を満たすこと | 2型糖尿病と診断されていること |
オゼンピックを「痩せ薬」として肥満治療に使うのは、本来の目的とは異なる「適応外使用」にあたります。肥満症の治療として用いる場合は、ウゴービが正式に承認された薬剤です。
まとめ|ウゴービの効果と副作用を理解し医師と相談を
ウゴービは、GLP-1受容体作動薬として食欲を抑え、肥満症患者さんの体重減少を助ける効果的な治療薬です。その一方で、吐き気などの消化器症状を中心とした副作用や、まれに重篤な副作用が起こる可能性もあります。
ウゴービによる治療は、食事療法・運動療法が基本であることを忘れてはいけません。薬はあくまでその努力をサポートするものです。治療を開始するには、保険適用の厳しい基準を満たす必要があり、週1回の自己注射や費用負担も伴います。
ウゴービのメリット・デメリットを正しく理解し、治療を検討する際は、必ず専門の医師に相談してください。ご自身の健康状態やライフスタイルに合った最適な治療法を、医師と一緒に見つけていくことが何よりも大切です。
免責事項: 本記事は、肥満症治療薬「ウゴービ」に関する情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。治療に関する決定は、必ず医師の診察と指導のもとで行ってください。