「いつも体がだるい」「少し動いただけでもぐったりする」など、「疲れやすい」と感じることは、多くの方が経験することかもしれません。単なる一時的な疲労だろうと軽く考えている方もいるかもしれませんが、それが日常的に続く場合、体のサインかもしれません。もしかすると、生活習慣の乱れ、精神的な負担、栄養不足、あるいは体のどこかに隠れた不調や病気が原因となっている可能性もあります。
この記事では、「疲れやすい」と感じる様々な原因を掘り下げ、その症状の裏に潜む病気の可能性、そして日々の生活で実践できる具体的な改善策について詳しく解説します。ご自身の疲れやすさの原因を見つけ、よりエネルギッシュで快適な毎日を取り戻すためのヒントを見つけていきましょう。
疲れやすい主な原因とは?
「疲れやすい」という感覚は非常に主観的ですが、その背景には様々な要因が複合的に絡み合っていることがほとんどです。一時的なものもあれば、慢性的なものまで、まずは一般的な原因から見ていきましょう。
不規則な生活・睡眠不足
現代社会では、仕事やプライベートの都合で生活リズムが乱れがちです。特に、睡眠の質や量が不足すると、体は十分に回復できません。
- 睡眠の役割: 睡眠中には、脳や体の疲労回復、細胞の修復、ホルモンバランスの調整、記憶の整理など、様々な重要なプロセスが行われます。質の高い十分な睡眠がとれないと、これらの機能が十分に働かず、日中の疲労感や倦怠感につながります。
- 体内時計の乱れ: 夜更かしや交代勤務、時差ぼけなどにより体内時計が乱れると、睡眠と覚醒のリズムが崩れ、深い睡眠が得られにくくなります。これにより、睡眠時間が足りていても疲れが取れない、常にだるいといった状態になりやすいです。
- 睡眠の質の低下: 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、早く目が覚めてしまうなど、睡眠時間は確保できても質が低い場合も同様に疲労回復が不十分になります。寝る直前のスマホやPCの使用、カフェインやアルコールの摂取、寝室環境なども睡眠の質に影響します。
ストレスや精神的な疲労
心と体は密接に関係しています。精神的なストレスや悩みは、体の疲労として現れることがよくあります。
- 自律神経の乱れ: ストレスが続くと、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが乱れます。交感神経が優位な状態が続くと、体が常に緊張状態になり、リラックスして休息することが難しくなります。これにより、疲労を感じやすくなります。
- ホルモンバランスの変化: ストレスは、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を増加させます。慢性的なストレスによるホルモンの過剰な分泌は、体の様々な機能に影響を及ぼし、疲労感、倦怠感、集中力の低下などを引き起こす可能性があります。
- 心理的な負荷: 仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、将来への不安など、精神的な負荷が大きい状態が続くと、脳が疲弊し、全身の倦怠感として現れることがあります。これは「脳疲労」とも呼ばれ、休息してもなかなか回復しないのが特徴です。
運動不足や体力の低下
意外に思われるかもしれませんが、体を動かさない運動不足も疲れやすさの原因となります。
- 筋力低下: 運動不足が続くと、全身の筋力が低下します。特に、体を支えたり、日常生活で必要な動きをするための基本的な筋力が衰えると、ちょっとした動作でも体に負担がかかり、疲れやすさを感じやすくなります。
- 血行不良: 適度な運動は血行を促進し、全身に酸素や栄養を行き渡らせるのに役立ちます。運動不足は血行を悪化させ、筋肉への酸素供給が滞ることで、疲労物質が蓄積しやすくなります。
- 体力・持久力の低下: 心肺機能や全身持久力が低下すると、少しの運動や活動で息切れしたり、すぐに疲れてしまったりします。これは、体が効率よく酸素を取り込み、エネルギーを産生する能力が落ちているためです。
食事の偏り・栄養不足
私たちの体は、食べたものからエネルギーを作り出し、細胞を修復しています。食事内容が偏っていたり、特定の栄養素が不足したりすると、体は十分に機能せず、疲れやすさを感じやすくなります。
- エネルギー源の不足: 体を動かすための主なエネルギー源は糖質と脂質です。これらが極端に不足すると、必要なエネルギーが賄えず、すぐに疲れてしまいます。また、エネルギーを効率よく作り出すためには、ビタミンB群などの補酵素も不可欠です。
- 疲労回復に必要な栄養素の不足: タンパク質は筋肉や細胞の材料であり、疲労した組織の修復に必要です。鉄分は全身に酸素を運ぶ赤血球のヘモグロビンの材料であり、不足すると貧血になり酸素供給が滞り疲れやすくなります。ビタミンCは抗酸化作用があり、ストレスによる体のダメージを軽減するのに役立ちます。これらの栄養素が不足すると、疲労からの回復が遅れたり、疲労を感じやすくなったりします。
- 血糖値の変動: 甘いものや精製された炭水化物を一度にたくさん摂取すると、血糖値が急激に上昇し、その後急降下することがあります(血糖値スパイク)。血糖値が急降下する際に、倦怠感や眠気を感じやすくなることがあります。
年齢による体の変化(40代・更年期など)
年齢を重ねると、体の機能は自然と変化していきます。特に40代以降は、今まで感じなかったような疲れを感じやすくなることがあります。
- 基礎代謝の低下: 年齢とともに基礎代謝は低下し、同じ活動量でも若い頃よりエネルギー消費量が減ります。これにより、体が重く感じられたり、疲れやすさを感じやすくなったりします。
- 筋力の自然な減少: 特別なトレーニングをしない限り、加齢とともに筋力は自然と減少します(サルコペニア)。これも運動不足と同様に、体を支える負担が増えたり、日常的な動作で疲れやすさを感じたりする原因になります。
- ホルモンバランスの変化: 特に女性は、40代後半から閉経にかけて女性ホルモン(エストロゲン)が大きく減少します。これにより、更年期症状として疲れやすさ、だるさ、ほてり、気分の落ち込みなど、様々な症状が現れることがあります。男性もテストステロンの分泌が減少し、LOH症候群(加齢性腺機能低下症)として疲労感や意欲低下などを感じることがあります。
生まれつきの体質の場合
疲れやすさには、ある程度の個人差や体質的な傾向があると考えられています。代謝の効率や自律神経の感受性など、生まれつき体に備わった特性が、同じ生活を送っていても疲れやすさに影響を与える可能性があります。ただし、この「体質」だけで片付けず、生活習慣や病気の可能性をしっかりと見極めることが重要です。体質的な要因は、生活習慣の改善によってある程度補うことができる場合が多いです。
疲れやすい症状の裏に潜む病気
単なる「疲労」だと思って見過ごしている疲れやすさが、実は何らかの病気のサインであることも少なくありません。特に、十分な休息をとっても改善しない、特定の症状を伴う、急に疲れやすくなったといった場合は、医療機関を受診して原因を調べることが大切です。
ここでは、疲れやすさと関連の深い病気や、疲れやすさが初期症状として現れることのある病気をいくつかご紹介します。
疲れやすさと関連の深い病気一覧
様々な病気が、疲れやすさや倦怠感といった症状を引き起こします。代表的なものを挙げます。
病気名 | 疲れやすさとの関連性 | その他の主な症状 |
---|---|---|
貧血 | 全身に酸素を運ぶヘモグロビンが少なくなるため、組織への酸素供給が滞り、疲れやすくなる。 | 顔色が悪い、息切れ、めまい、動悸、頭痛、爪が割れやすい、口角炎など。 |
甲状腺機能の異常 | 甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節するため、ホルモンが少ない(機能低下症)と代謝が低下し、疲れやすさ、全身の倦怠感、むくみ、寒がり、便秘、気分の落ち込みなどを引き起こす。 | 体重増加、むくみ、寒がり、皮膚の乾燥、抜け毛、声のかすれ、便秘、抑うつ気分など。 |
糖尿病 | インスリンの働きが悪くなり、血糖値が高い状態が続く病気。細胞がブドウ糖をエネルギーとして効率よく利用できなくなるため、疲れやすさや倦怠感を感じやすい。また、合併症による神経障害や腎機能障害も倦怠感の原因となることがある。 | のどの渇き、頻尿、多尿、体重減少、食欲増進、手足のしびれ、視力低下など。 |
慢性疲労症候群 | 強烈な疲労感が6ヶ月以上続き、休息しても改善しない病気。微熱、リンパ節の腫れ、筋肉痛、関節痛、頭痛、のどの痛み、思考力・集中力の低下、睡眠障害などを伴う。原因は特定されていないが、感染症や免疫系の異常などが関連していると考えられている。 | 微熱、リンパ節の腫れ、筋肉痛、関節痛、頭痛、のどの痛み、思考力・集中力低下、睡眠障害など。 |
睡眠障害 | 睡眠時無呼吸症候群、不眠症、ナルコレプシーなど。睡眠の質が低下したり、十分な睡眠が取れなかったりすることで、日中の強い眠気や倦怠感、集中力低下を引き起こす。 | いびき、睡眠中の呼吸停止(無呼吸)、日中の強い眠気、寝落ち、入眠困難、中途覚醒など。 |
うつ病などの精神疾患 | 抑うつ気分だけでなく、体の症状として疲れやすさ、全身の倦怠感、頭痛、肩こり、食欲不振、睡眠障害などが現れることが多い。気分の落ち込みや興味・関心の喪失を伴う場合は特に注意が必要。 | 気分の落ち込み、意欲・興味の喪失、不眠または過眠、食欲不振または過食、体重の変化、焦燥感または制止、集中力・思考力の低下、死に関する考えなど。 |
がん | がん細胞の増殖による栄養分の消費、炎症性物質の放出、治療の副作用など、様々なメカニズムで強い倦怠感を引き起こすことがある。特に進行期や治療中は頻繁にみられる症状。 | 体重減少、原因不明の痛み、しこり、出血、特定の部位の不調など。症状はがんの種類による。 |
膠原病・リウマチ性疾患 | 全身の炎症や免疫系の異常により、慢性的な疲労感、倦怠感、関節痛、筋肉痛などを引き起こすことがある。代表的なものに、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などがある。 | 関節の腫れ・痛み、こわばり、発疹、口や目の乾燥、レイノー現象(指先が白くなる)など。症状は病気による。 |
肝臓病 | 肝臓は体の代謝の中心であり、疲労回復にも重要な役割を果たしています。肝機能が低下すると、老廃物の分解・排泄が滞ったり、エネルギー産生がうまくいかなくなったりして、強い倦怠感を感じやすくなる。 | 吐き気、食欲不振、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、むくみ、お腹の張りなど。 |
腎臓病 | 腎臓は体内の水分や電解質のバランスを調整し、老廃物を排泄する重要な臓器。腎機能が低下すると、体内に老廃物が蓄積したり、貧血(エリスロポエチンの産生低下による)が進んだりして、疲れやすさやだるさを感じやすくなる。 | むくみ、貧血、食欲不振、吐き気、息切れ、頻尿、血尿など。 |
感染症 | 風邪やインフルエンザのような急性感染症だけでなく、慢性的な感染症(例:EBウイルス、サイトメガロウイルスなど)や、過去の感染症の後遺症(例:COVID-19のブレインフォグや倦怠感)として、長期間にわたる疲労感や倦怠感が続くことがある。 | 発熱、咳、鼻水、のどの痛み、筋肉痛、関節痛、頭痛など。症状は感染症の種類による。 |
心臓病 | 心臓のポンプ機能が低下すると、全身への血流が滞り、特に体を動かしたときに息切れや強い疲労感を感じやすくなる。 | 息切れ、動悸、胸の痛み、むくみ、咳など。特に階段や坂道を上るなど負荷がかかる時に症状が出やすい。 |
ADHDと疲れやすさの関係
注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、発達障害の一つであり、不注意、多動性、衝動性といった特性を持ちます。ADHD自体が直接的に強い肉体疲労を引き起こす病気ではありませんが、その特性が間接的に疲れやすさにつながる可能性があります。
- 集中力の維持困難さ: 特定のタスクに集中し続けることが難しく、注意が逸れやすい特性があるため、一つの作業を完了するために多くのエネルギーを消耗したり、脳が疲弊しやすくなったりすることがあります。
- 過活動・落ち着きのなさ: じっとしているのが苦手で常に体を動かしていたり、頭の中で思考が駆け巡っていたりするため、物理的・精神的に休まる時間が少なく、知らず知らずのうちに体力を消耗していることがあります。
- 睡眠の問題: ADHDを持つ人の中には、寝つきが悪かったり、睡眠リズムが不規則だったりする人が少なくありません。これも日中の疲労や倦怠感につながる要因となります。
- ストレス耐性: 感情のコントロールが難しかったり、衝動的な行動をとってしまったりすることで、人間関係や社会生活でのストレスを感じやすく、それが精神的な疲労につながることもあります。
ADHDによる疲れやすさは、特性の理解と適切な対処法(環境調整、タスク管理、服薬治療など)によって軽減される可能性があります。もしADHDの特性があり、強い疲れやすさを感じている場合は、専門医に相談してみるのも良いでしょう。
病院を受診する目安・チェックリスト
「疲れやすい」と感じたときに、単なる一時的な疲労と見過ごさずに、医療機関を受診した方が良いかどうかの判断は重要です。以下のチェックリストで、当てはまる項目が複数ある場合や、症状が長く続く場合は、一度医師に相談することをお勧めします。
【病院受診を検討すべき「疲れやすい」チェックリスト】
- 十分な睡眠や休息をとっても疲れが改善しない、または悪化する。
- 疲れやすさとともに、発熱、体重減少、リンパ節の腫れなどの全身症状がある。
- 疲れやすさとともに、特定の部位の痛み(例:関節痛、筋肉痛)がある。
- 疲れやすさとともに、息切れ、動悸、胸の痛みがある。
- 疲れやすさとともに、手足のしびれや脱力感がある。
- 疲れやすさとともに、強い眠気があり、日常生活に支障が出ている。
- 疲れやすさとともに、気分の落ち込み、意欲の低下、不眠がある。
- 疲れやすさが急に現れ、以前とは明らかに違うと感じる。
- 疲れやすさが1ヶ月以上続いている。
- 特定の病気(糖尿病、心臓病、甲状腺疾患など)で治療中であり、疲れやすさが増した。
- 市販薬やサプリメントを試しても効果が見られない。
【何科を受診すべきか】
まずは、かかりつけ医や内科を受診するのが一般的です。医師は問診や身体診察、必要に応じて血液検査などを行い、原因を探ります。貧血、甲状腺機能異常、糖尿病、肝臓・腎臓の機能障害などの一般的な病気は内科で診断・治療が可能です。
もし、
- 強い精神的な負担や気分の落ち込みがある場合は、精神科や心療内科。
- 睡眠に関する悩みが強い場合は、睡眠外来。
- 特定の専門分野の病気(例:関節痛を伴う場合は整形外科やリウマチ科)が疑われる場合は、専門科への紹介となることもあります。
まずは内科で総合的に診てもらい、必要に応じて専門医を紹介してもらうのがスムーズでしょう。
疲れやすい体質を改善するための具体的な対処法
病気が原因の疲れやすさについては医療機関での治療が必要ですが、生活習慣やストレスによる疲れやすさの場合は、日々の工夫で改善できることが多くあります。ここでは、実践的な対処法をご紹介します。
生活習慣の見直し(睡眠、休息、運動)
疲れやすい体質を改善するための基本は、生活習慣を整えることです。特に睡眠、休息、運動は体の回復やエネルギーレベルに大きく影響します。
- 規則正しい生活リズムの確立: 毎日ほぼ同じ時間に寝て起きるように心がけましょう。休日も平日との差を最小限に抑えることで、体内時計が整いやすくなります。
- 質の高い睡眠をとる:
- 寝る1~2時間前からPCやスマホの使用を控える(ブルーライトは脳を覚醒させます)。
- 寝る前にカフェインやアルコールを摂取しない。
- 軽いストレッチやぬるめの入浴などで体をリラックスさせる。
- 寝室を暗く、静かに、快適な温度(一般的に18~22℃程度)に保つ。
- 寝る直前の激しい運動や、消化に負担のかかる食事は避ける。
- 積極的に休息をとる: 長時間同じ作業を続けるのではなく、適度に休憩を挟みましょう。短い休憩でも気分転換になり、疲労の蓄積を防ぎます。昼休憩中に15~20分程度の短い仮眠をとるのも効果的です(ただし、30分以上の仮眠は夜の睡眠を妨げる可能性があるため注意)。
- 適度な運動習慣を取り入れる:
- ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動は、心肺機能を高め、血行を促進し、疲労回復を助けます。週に2~3回、30分程度から始めてみましょう。
- スクワットやプッシュアップなどの筋力トレーニングは、全身の筋力維持・向上に役立ち、疲れにくい体づくりにつながります。無理のない範囲で継続することが大切です。
- ストレッチやヨガは、体の柔軟性を高め、筋肉の緊張を和らげ、リラクゼーション効果も期待できます。
- 「疲れているから動きたくない」と感じるかもしれませんが、軽い運動でも行うことで、かえって体がすっきりし、エネルギーレベルが向上することがあります。
食事と栄養摂取のポイント
バランスの取れた食事は、疲れにくい体を作る上で非常に重要です。特定の栄養素を意識して摂取することで、疲労回復やエネルギー産生をサポートできます。
疲れやすい人が不足しがちな栄養素(糖質、タンパク質、ビタミンB群、鉄分など)
疲れやすさに関わる主な栄養素とその役割、多く含む食品をまとめました。
栄養素 | 役割 | 多く含む食品例 |
---|---|---|
糖質 | 体を動かすための主要なエネルギー源。特に脳の唯一のエネルギー源。 | ご飯、パン、麺類、いも類、果物など。(精製されていない全粒穀物や複合炭水化物が血糖値を安定させやすい) |
タンパク質 | 筋肉、臓器、皮膚、髪、爪などの体の材料。疲労した組織の修復や、エネルギー産生に必要な酵素やホルモンの合成にも関わる。 | 肉類、魚類、卵、大豆製品(豆腐、納豆)、乳製品(牛乳、ヨーグルト)、豆類など。 |
ビタミンB群 | 糖質、タンパク質、脂質からエネルギーを取り出す代謝プロセスに不可欠な補酵素。特にビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸などがある。ビタミンB12は神経機能の維持や赤血球の生成にも関わる。 | 豚肉、レバー、うなぎ、魚類、卵、大豆製品、緑黄色野菜、きのこ類、牛乳、チーズなど。 |
鉄分 | 全身に酸素を運ぶヘモグロビンの重要な構成成分。不足すると貧血になり、酸素供給不足で疲れやすくなる。 | レバー、赤身の肉、かつお、まぐろ、あさり、ひじき、ほうれん草、小松菜、豆腐など。(動物性食品に含まれるヘム鉄の方が吸収率が高い。植物性食品の非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がる) |
マグネシウム | 300種類以上の酵素反応に関わるミネラル。エネルギー産生、筋肉や神経機能の調節などに重要。不足すると疲労感、筋肉の痙攣、精神的な不安定などを招くことがある。 | 種実類(アーモンド、カシューナッツ)、豆類、海藻類、緑黄色野菜(ほうれん草など)、魚類など。 |
カリウム | 体内の水分や電解質のバランスを調整。筋肉の機能維持や神経伝達に関わる。不足すると脱力感や疲労感を感じることがある。 | 果物(バナナ、メロン)、野菜(ほうれん草、アボカド)、いも類、豆類、海藻類など。 |
亜鉛 | 多くの酵素反応に関わるミネラル。免疫機能、細胞の成長・修復、ホルモンバランスなどに重要。不足すると疲労感、味覚障害、免疫力低下などを招くことがある。 | 肉類(特に赤身肉)、魚介類(牡蠣など)、卵、大豆製品、種実類、チーズなど。 |
ビタミンC | 強力な抗酸化作用があり、ストレスによる体の酸化ダメージを軽減。鉄分の吸収を助けたり、コラーゲンの生成に関わったりする。免疫機能の維持にも重要。 | 果物(柑橘類、いちご、キウイ)、野菜(ピーマン、ブロッコリー、じゃがいも)、いも類など。 |
コエンザイムQ10 | 体内の細胞でエネルギー(ATP)を作り出す際に重要な働きをする補酵素。特にエネルギー需要が高い心臓や筋肉に多く存在する。加齢とともに体内での生成量が減るとされる。 | 肉類(牛肉、豚肉)、魚介類(いわし、さば)、大豆製品、ナッツ類、ほうれん草など。 |
疲れやすい時の食事・栄養補給(サプリなど)
- バランスの取れた食事を基本に: 特定の栄養素だけを意識するのではなく、主食・主菜・副菜を揃えたバランスの取れた食事を心がけましょう。特に朝食を抜かず、3食しっかり摂ることで、血糖値の急激な変動を防ぎ、一日を通して安定したエネルギーを供給できます。
- こまめな水分補給: 脱水は疲れやすさや倦怠感の大きな原因となります。喉が渇く前にこまめに水分を摂りましょう。水やお茶が基本ですが、スポーツドリンクや経口補水液は、運動後や発汗が多い場合に失われた電解質も補給できます。
- サプリメントの活用: 食事で十分に栄養素を摂るのが難しい場合や、特定の栄養素が不足している可能性がある場合は、サプリメントで補うことも一つの選択肢です。特にビタミンB群、鉄分(女性に多い)、マグネシウム、コエンザイムQ10などが疲労回復に関連するサプリメントとして知られています。ただし、サプリメントはあくまで食事の「補助」であり、過剰摂取は体に悪影響を与える可能性もあります。利用する際は、製品の表示を確認し、必要であれば医師や薬剤師に相談しましょう。
- エナジードリンクについて: エナジードリンクにはカフェインや糖分、アミノ酸などが含まれており、一時的に眠気を覚ましたり、活力を与えたりする効果が期待できます。しかし、効果が切れると反動で強い疲労を感じたり、カフェインの過剰摂取による健康被害(動悸、不眠、胃腸の不調など)のリスクもあります。常用は避け、本当に必要な時に限定的に利用するのが賢明です。
ストレスへの対処法
精神的な疲労は、体の疲れに直結します。自分に合ったストレス解消法を見つけ、積極的に実践することが重要です。
- リラクゼーションを取り入れる: 深呼吸、瞑想、ヨガ、軽いストレッチ、アロマセラピーなど、心身をリラックスさせる方法を見つけましょう。毎日数分でも良いので、リラックスできる時間を持つことが大切です。
- 趣味や気分転換: 好きなことに没頭する時間は、ストレスを忘れさせてくれます。読書、音楽鑑賞、映画鑑賞、園芸、手芸など、自分が楽しめる趣味の時間を意識的に作りましょう。友人や家族と過ごす時間も良い気分転換になります。
- 適度な運動: ストレス解消には、軽い運動も有効です。体を動かすことで気分転換になり、セロトニンなどの気分を安定させる神経伝達物質の分泌が促進されると言われています。
- 十分な睡眠: 前述の通り、睡眠不足はストレスを増大させ、疲労感を強めます。質の高い十分な睡眠を確保することは、ストレス耐性を高める上でも非常に重要です。
- ストレスの原因を特定し、対処する: 何がストレスの原因になっているのかを具体的に書き出してみましょう。すぐに解決できない問題でも、原因を把握するだけで気持ちが楽になることがあります。解決できる問題であれば、具体的な対処法を考え、行動に移してみましょう。必要であれば、仕事量の調整や人間関係の改善など、環境を変えることも検討します。
- プロフェッショナルなサポートを検討する: 自分一人でストレスに対処するのが難しいと感じる場合は、心理カウンセリングや専門医(精神科、心療内科)のサポートを受けることも有効です。認知行動療法などの心理療法は、ストレスに対する考え方や行動パターンを変えるのに役立ちます。
まとめ|疲れやすさを改善して快適な毎日を
「疲れやすい」という症状は、誰にでも起こりうる身近なものですが、その原因は多岐にわたります。単なる寝不足や一時的な疲労だけでなく、不規則な生活習慣、ストレス、栄養不足といった日常的な要因から、貧血や甲状腺機能異常、糖尿病、睡眠障害、さらにはうつ病や慢性疲労症候群といった病気まで、様々な可能性が考えられます。
ご自身の疲れやすさの原因を探るためには、まずは日々の生活習慣(睡眠、食事、運動、ストレス)を振り返ってみることが大切です。そして、もし十分な休息をとっても改善しない、特定の症状を伴う、以前と比べて明らかに疲れやすくなったと感じる場合は、隠れた病気の可能性も考慮し、医療機関を受診することを強くお勧めします。内科医に相談し、必要に応じて専門医(精神科、心療内科、睡眠外来など)を紹介してもらいましょう。
原因が特定できれば、それに応じた適切な対処法を講じることができます。生活習慣の見直し、バランスの取れた食事と必要な栄養素の摂取、そしてストレスへの効果的な対処法を実践することで、疲れにくい体質を目指し、より健康的で活動的な毎日を送ることが可能になります。
疲れやすさを改善するための一歩を踏み出し、体と心の声に耳を傾け、ご自身に合った方法を見つけていきましょう。
免責事項: 本記事の情報は、一般的な知識を提供するものであり、特定の疾患の診断や治療法を推奨するものではありません。ご自身の症状について不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、専門医の診断と指導を受けてください。