呂律が回らないと感じたら?考えられる原因と病気

「あれ、なんだか上手く話せない…」と感じたことはありませんか?呂律が回らない、言葉がもつれるといった症状は、誰にでも起こりうる身近なものです。疲れやストレスが原因であることも多いですが、中には脳卒中など、すぐに対応が必要な病気が隠れている可能性もあります。

この記事では、呂律が回らない場合に考えられる原因を、病気とそれ以外のケースに分けて詳しく解説します。ご自身でできる簡単なチェック方法や、病院を受診するべきサイン、何科にかかればよいかについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

呂律が回らないとは?

呂律が回らないとは、言葉をはっきりと発音できず、不明瞭になってしまう状態を指します。医学的には「構音障害(こうおんしょうがい)」と呼ばれます。

私たちが言葉を話すとき、脳が「何を話すか」を考え、発声や発音に必要な筋肉(唇、舌、あご、喉など)に指令を送ります。この指令が神経を通り、筋肉が正しく動くことで、スムーズな発話が可能になります。

呂律が回らないという症状は、この「脳・神経・筋肉」のいずれかのプロセスに問題が生じているサインです。そのため、原因は多岐にわたります。

呂律が回らない場合に考えられる原因

呂律が回らない原因は、大きく「病気によるもの」と「病気以外のもの」に分けられます。

呂律が回らない病気による原因

特に注意が必要なのが、病気によって引き起こされるケースです。中には緊急性の高いものもあります。

脳の病気(脳卒中など)

突然、呂律が回らなくなった場合に最も警戒すべきなのが、脳卒中をはじめとする脳の病気です。

脳梗塞

脳の血管が詰まり、脳細胞に酸素や栄養が届かなくなる病気です。脳細胞がダメージを受けることで、呂律が回らない、片方の手足が動かしにくい、しびれる、顔が歪むといった症状が突然現れます。

脳出血

脳の血管が破れて出血し、できた血腫(血のかたまり)が脳を圧迫する病気です。突然の激しい頭痛や吐き気、意識障害とともに、呂律が回らなくなることがあります。

くも膜下出血

脳の表面を覆う「くも膜」の下で出血が起こる病気です。多くは脳動脈瘤の破裂が原因で、「ハンマーで殴られたような」と表現されるほどの激しい頭痛が特徴ですが、呂律が回らないといった症状を伴うこともあります。

一過性脳虚血発作(TIA)

一時的に脳の血管が詰まり、脳梗塞と同じような症状(呂律が回らない、手足の麻痺など)が現れますが、多くは24時間以内(多くは数分~1時間程度)に症状が消えてしまうのが特徴です。症状が消えるため軽く考えがちですが、本格的な脳梗塞の前触れであることが多く、絶対に放置してはいけません。

小脳の病気

体のバランスを司る小脳に梗塞や出血、腫瘍などができると、呂律が回らない症状(ろれつが回らないが言葉自体は出てくる「小脳性構音障害」)や、めまい、ふらつき、歩行困難などが現れることがあります。

神経や筋肉の病気

脳からの指令を伝えたり、実際に発声に関わる筋肉の動きに異常が生じたりする病気でも、呂律が回らなくなります。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

筋肉を動かす神経系が徐々に障害を受ける難病です。初期症状として、呂律が回らない、話しにくい、飲み込みにくいといった症状が現れることがあります。

重症筋無力症

筋肉を動かす指令が神経から筋肉へ伝わりにくくなる病気です。特徴的なのは、話しているうちにだんだん声が小さくなったり、呂律が回らなくなったりする「易疲労性(つかれやすさ)」です。休息すると一時的に回復します。

パーキンソン病

脳の神経伝達物質であるドパミンが減少することで、手足の震え、動作が遅くなるなどの症状が現れる病気です。進行すると、声が小さく、早口で、単調な話し方になり、呂律が回らないと感じることがあります。

口腔や舌の病気

発声・発音に直接関わる口や舌の病気も原因となります。

舌がん

舌にできるがんです。進行すると舌の動きが悪くなり、発音が不明瞭になったり、呂律が回らなくなったりします。しこりや痛み、出血などを伴うことが多いです。

構音障害

これは症状名でもありますが、脳や神経に明らかな異常がなく、唇や舌の形、動きの問題によって特定の発音がうまくできない状態を指すこともあります。

その他の病気

過眠症

日中に耐えがたいほどの強い眠気に襲われる病気です。強い眠気があるときに、呂律が回らない、ろれつが回らないといった症状が見られることがあります。

もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)

脳の太い血管が徐々に細くなり、血流を補うために「もやもや」とした細い血管が発達する病気です。子どもでは脳虚血発作(脱力、しびれ、呂律が回らないなど)、成人では脳出血を起こしやすいとされています。

呂律が回らない病気以外の原因

病気ではなく、日常生活の中に原因が潜んでいることも少なくありません。

ストレスや精神的な緊張

強いストレスや、人前で話すなどの極度な緊張状態では、筋肉がこわばり、口がうまく動かずに呂律が回らなくなることがあります。これは一時的なものであることがほとんどです。

疲労や睡眠不足

心身の疲労が蓄積したり、睡眠不足が続いたりすると、脳の働きが低下し、注意力が散漫になったり、体をうまくコントロールできなくなったりします。その結果、一時的に呂律が回らなくなることがあります。

飲酒・薬の副作用

アルコールは脳の機能を一時的に麻痺させるため、飲みすぎると呂律が回らなくなるのは多くの人が経験することです。また、抗不安薬、睡眠薬、抗てんかん薬などの一部の薬の副作用として、呂律が回りにくくなることがあります。

加齢

年齢とともに、舌や口周りの筋力が低下したり、唾液の分泌量が減少したりすることで、発音がしにくくなり、呂律が回らないと感じることがあります。

呂律が回らない場合に緊急で病院を受診すべきサイン

呂律が回らない症状に加えて、以下のサインが見られる場合は、脳卒中などの緊急性の高い病気の可能性があります。ためらわずに救急車を呼ぶか、すぐに医療機関を受診してください。

アメリカ脳卒中協会が提唱する脳卒中を疑うサイン「FAST」が参考になります。

  • F (Face) = 顔の麻痺:「イー」と口を横に広げたとき、片方の口角が上がらない、顔が歪む。
  • A (Arm) = 腕の麻痺:両腕を前に上げたとき、片方の腕だけが下がってくる。
  • S (Speech) = 言葉の障害:呂律が回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない。
  • T (Time) = 時間:これらの症状に気づいたら、発症時刻を確認し、すぐに救急車(119番)を呼ぶ。

これらに加えて、以下の症状がある場合も危険なサインです。

  • 突然の激しい頭痛
  • 立っていられないほどのめまい、ふらつき
  • ものが二重に見える
  • 意識がもうろうとする

呂律が回らないか自分でチェックする方法

緊急性はないけれど、少し気になる…という場合は、自分で簡単にチェックする方法があります。ただし、これはあくまで目安であり、自己判断は禁物です。

  • 早口言葉を言ってみる
    • 「パタカラ、パタカラ…」「らりるれろ、らりるれろ…」といった、唇や舌をしっかり使う言葉を繰り返してみましょう。言いにくさやもつれがないか確認します。
  • 鏡で顔の動きをチェックする
    • 鏡の前で「イー」「ウー」と口を動かしてみます。左右対称に動いているか、歪みがないかを確認します。
  • 文章を音読する
    • 新聞や本の文章を声に出して読んでみましょう。スムーズに読めるか、特定の音が言いにくいことはないかなどを確認します。

これらのチェックで違和感があったり、症状が続いたりする場合は、一度病院で相談することをおすすめします。

呂律が回らない場合の病院受診の目安と何科に行くべきか

症状に応じた受診の目安と診療科は以下の通りです。

症状 受診の目安 主な診療科
突然呂律が回らなくなった
顔や手足の麻痺・しびれ、激しい頭痛、めまいなどを伴う
今すぐ! 救急科(救急車を呼ぶ)
(専門は脳神経外科、神経内科)
呂律が回らない症状が続く
他に麻痺などはないが脳の病気が心配
なるべく早めに 脳神経外科神経内科
話しているうちにだんだん話しにくくなる 症状が気になったら 神経内科
口の中のしこりや痛みがある 症状が気になったら 耳鼻咽喉科歯科・口腔外科
ストレスや気分の落ち込みが原因と思われる 症状が気になったら 心療内科精神科

どこを受診すればよいか迷う場合は、まずはかかりつけ医に相談するか、脳神経外科や神経内科を受診するのがよいでしょう。

呂律が回らない状態を改善するためにできること(病気でない場合)

病院で検査をしても特に病気が見つからず、ストレスや疲れ、加齢などが原因と考えられる場合は、セルフケアで改善が期待できることもあります。

口や舌の体操・トレーニング

口周りや舌の筋肉を鍛えることで、発音がスムーズになります。

  • 口を大きく開け閉めする:「あー」「いー」「うー」「えー」「おー」と、一つ一つの音を意識して、口を大きく動かします。
  • 頬を膨らませる・すぼめる:左右の頬を交互に膨らませたり、両方の頬をいっぱいに膨らませたり、すぼめたりを繰り返します。
  • 舌を動かす運動:舌を前に突き出したり、上下左右に動かしたり、唇の周りをぐるりと舐めるように動かします。

滑舌を良くするための練習

発音の練習も効果的です。
* 早口言葉:「生麦生米生卵」「東京特許許可局」など、言いにくい言葉をゆっくり、はっきりと発音することから始め、徐々にスピードを上げていきます。
* 音読:本や新聞などを、一音一音はっきりと発音することを意識して読み上げます。自分の声を録音して聞いてみるのも良いでしょう。

生活習慣の見直し(ストレス・疲れ対策)

心身のコンディションを整えることは、呂律の改善にもつながります。

  • 十分な睡眠をとる
  • 栄養バランスの取れた食事を心がける
  • 適度な運動でリフレッシュする
  • 趣味の時間を作るなど、自分なりのストレス解消法を見つける

これらの対策を行っても改善しない、または悪化するような場合は、改めて医療機関に相談してください。

まとめ:呂律が回らない原因を正しく理解し、必要に応じて医療機関へ

呂律が回らないという症状は、疲れやストレスといった身近な原因から、脳卒中などの命に関わる病気まで、様々な原因によって引き起こされます。

特に、突然発症した場合や、顔・手足の麻痺、激しい頭痛などを伴う場合は、一刻を争うサインです。ためらわずに救急車を呼んでください。

一方で、病気以外の原因も多くあります。気になる症状が続く場合は、自己判断で放置せず、一度専門の医療機関を受診して原因をはっきりさせることが大切です。この記事が、ご自身の状態を正しく理解し、適切な行動をとるための一助となれば幸いです。


本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。呂律が回らないなどの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

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