りんご病は、特に子どもたちの間で流行しやすい感染症の一つです。正式名称を「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」と言い、特徴的な頬の赤い発疹から「りんご病」という愛称で広く知られています。この病気は、パルボウイルスB19というウイルスが原因で起こります。
多くの場合、子どもがり患しても軽症で済みますが、大人や妊婦が感染した場合には、子どもとは異なる症状が現れたり、注意が必要な場合があります。この病気は、感染力が比較的強い時期と、発疹が出てからは感染力が弱まるという特徴があり、いつうつるのか、いつまでうつるのかといった点も気になるところでしょう。
この記事では、りんご病の症状、原因、感染経路、診断、治療、予防策について、子ども、大人、そして特に注意が必要な妊婦さんの視点も含めて詳しく解説します。また、学校や保育園への登園・登校の目安や、医師に相談すべきケースについても触れています。この情報が、りんご病への理解を深め、適切な対応をとる一助となれば幸いです。気になる症状がある場合は、自己判断せず必ず医療機関にご相談ください。
りんご病とは
りんご病は、特定のウイルスによって引き起こされる一般的な感染症です。主に子どもたちの間で集団発生することが多く、学校や幼稚園、保育園などで流行が見られます。特徴的な見た目からこの名前がつけられましたが、正式な病名とは別に、親しみやすい通称として定着しています。
りんご病の原因ウイルスと正式名称
りんご病の原因となるのは、「ヒトパルボウイルスB19」というウイルスです。このウイルスに感染することで発症する病気の正式名称は、「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」といいます。
ヒトパルボウイルスB19は、非常に小さなDNAウイルスで、主に人の赤血球のもとになる細胞(赤芽球)に感染する性質を持っています。感染しても症状が出ない不顕性感染も多く見られますが、典型的な症状として特徴的な発疹が現れることから、診断の手がかりとなります。
このウイルスは季節性があり、日本では春から夏にかけて流行のピークを迎えることが多いとされています。しかし、年間を通して発生が見られることもあります。
りんご病の症状
りんご病の症状は、感染者の年齢によって特徴が異なる場合があります。特に、子どもと大人では現れやすい症状に違いが見られます。
子どものりんご病の症状
子どもがりんご病に感染した場合、最も典型的で目立つ症状は特徴的な発疹です。しかし、発疹が出現する前にいくつかの初期症状が現れることもあります。
りんご病の初期症状(発疹前)
発疹が現れる数日前に、風邪のような症状が見られることがあります。これらの初期症状は軽度であることが多く、気づかれないことも少なくありません。具体的な初期症状としては、以下のようなものがあります。
- 微熱:37℃台の軽い熱が出ることがあります。高熱になることは稀です。
- だるさ、倦怠感:なんとなく元気がない、だるそうにしているといった様子が見られることがあります。
- 筋肉痛:全身の筋肉に軽い痛みを感じることがあります。
- 鼻水や咳:軽い風邪症状として鼻水や咳が出ることがあります。
これらの初期症状は非常に非特異的であるため、この段階でりんご病だと診断することは難しく、多くは単なる風邪として扱われます。重要なのは、この初期症状が出ている時期が、実は最も感染力が強い時期であるという点です。
りんご病の発疹の特徴(頬、体、手足)
初期症状が治まった後に、りんご病の最も特徴的な症状である発疹が現れます。発疹は典型的には以下の順序で出現します。
- 頬(きょう)の発疹:まず、両頬に境界がはっきりした、鮮やかな赤色や紅紫色の発疹が現れます。まるでりんごのように真っ赤になるため、この段階で「りんご病」と気づく人が多いです。この頬の発疹は少し盛り上がって見えることもあります。この時点では、すでに感染力はほとんどありません。
- 体幹や手足の発疹:頬の発疹が出現してから1~2日後に、体幹(お腹や背中)、腕、脚などに発疹が広がります。この発疹は、最初は赤い斑点として現れ、次第に中心部が消えてレース状や網目状の模様になります。この網目状の発疹は、りんご病の非常に特徴的な症状の一つです。手のひらや足の裏には通常発疹は出ません。
- かゆみ:発疹にはかゆみを伴うことが少なくありません。特に入浴後や体が温まった時、日光に当たった後などに、かゆみが強くなる傾向があります。
- 発疹の経過:発疹は一度消えたように見えても、体温が上がったり、日光に当たったり、精神的に興奮したりすると再び鮮明になるという特徴があります。この再燃・消失を繰り返しながら、数日から数週間かけて徐々に薄れていきます。完全に消えるまでには時間がかかることもありますが、発疹が出ていても体調が良ければ日常生活に支障はありません。
子どもがりんご病にかかった場合、通常はこれらの発疹症状が主体で、全身症状は軽度で済みます。発疹自体は後遺症を残すことはなく、自然に消えていきます。
大人のりんご病の症状
大人がりんご病に感染した場合、子どもとは異なり、発疹が出ないことや、出ても目立たないことが多く、特徴的な頬の紅斑が見られないケースも少なくありません。その代わりに、子どもではあまり見られない症状が現れやすいという特徴があります。
大人特有の症状(関節痛など)
大人がりんご病に感染した場合に特に多く見られる症状は、関節の痛みや腫れです。
- 関節痛・関節炎:多くの成人患者、特に女性に多く見られます。手首、指、足首、膝などの関節に痛みが現れ、腫れやこわばりを伴うこともあります。リウマチのような症状に似ているため、診断が遅れることもあります。関節症状は数週間続くことがありますが、慢性化することは稀で、通常は自然に回復します。
- 全身症状:発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、リンパ節の腫れなどの全身症状が、子どもよりも強く現れることがあります。
- 発疹:子どもで見られるような典型的な頬の紅斑や網目状の発疹が出ることもありますが、全身に細かい丘疹(ぶつぶつ)や紅斑が散布するなど、非典型的な発疹が出現することもあります。発疹が出ない「不顕性感染」の場合も多いです。
大人がりんご病にかかると、子どもよりも症状が重くなる傾向があり、関節痛などで日常生活に支障をきたすこともあります。しかし、多くの場合、特別な治療を必要とせず自然に回復します。
りんご病の合併症
多くの場合、りんご病は予後が良好な病気ですが、特定の条件下では合併症を引き起こす可能性があります。
- 一過性骨髄無形成クリーゼ:ヒトパルボウイルスB19が赤血球のもとになる細胞に感染する性質を持つため、慢性溶血性貧血(例えば、遺伝性球状赤血球症、サラセミア、鎌状赤血球症など)のある患者さんでは、赤芽球の産生が一時的に完全に停止し、急激な貧血を引き起こすことがあります。これを一過性骨髄無形成クリーゼといい、輸血などの治療が必要となる緊急性の高い状態です。
- 血小板減少:稀に血小板の数が減少し、出血しやすくなることがあります。
- 神経系の合併症:非常に稀ですが、脳炎や末梢神経障害などの神経系の合併症が報告されています。
- 慢性関節炎:ほとんどの大人の関節症状は一時的なものですが、ごく稀に数ヶ月から年続く慢性関節炎に移行する可能性も指摘されています。
- 胎児への影響:妊婦さんが感染した場合に胎児に重篤な影響を与える可能性があることは、後述の項目で詳しく解説します。
これらの合併症は比較的稀ですが、特に基礎疾患がある場合や妊婦さんの感染には注意が必要です。
りんご病の感染経路と潜伏期間
りんご病の原因であるヒトパルボウイルスB19は、どのように感染し、どのくらいの期間潜伏するのでしょうか。また、いつまで感染力があるのかも重要な点です。
りんご病はどうやってうつる?(感染経路)
りんご病の主な感染経路は以下の通りです。
- 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみによって放出されたウイルスを含んだ小さな粒子を吸い込むことで感染します。これは最も一般的な感染経路です。
- 接触感染:ウイルスが付着したドアノブ、おもちゃ、手すりなどを触った手で、鼻や口、目を触ることによって感染します。
- 母子感染:妊娠中のお母さんが感染した場合、胎盤を介して胎児に感染することがあります。
潜伏期間と感染力が最も強い時期
ヒトパルボウイルスB19に感染してから症状が現れるまでの期間(潜伏期間)は、一般的に4日から20日間とされています。平均的には10日程度です。
重要なのは、最も感染力が強い時期は、特徴的な頬の発疹が現れる前の、初期症状(微熱や風邪のような症状)が出ている期間であるということです。この時期はまだりんご病だと診断されていないことがほとんどであるため、知らず知らずのうちに周囲にウイルスを広げてしまう可能性が高いと言えます。
りんご病はいつまでうつる?
りんご病の発疹が出現した時点では、すでにウイルスは体外にほとんど排出されており、感染力は非常に低い状態になっています。
そのため、りんご病は発疹が出た後には他の人にうつす心配はほとんどないと考えられています。この点が、発疹が出ている期間も感染力がある麻しんや風しんといった他の発疹性疾患と大きく異なる点です。
つまり、感染拡大を防ぐためには、発疹が出る前の初期症状の段階での対策が重要ですが、その時期は診断が難しいため、現実的な対策としては流行期における一般的な感染予防策(手洗い、うがい、咳エチケットなど)が中心となります。
りんご病の診断と治療
りんご病にかかったかな?と思った時に、どのように診断され、どのような治療が行われるのでしょうか。
りんご病の診断方法
りんご病の診断は、主に臨床症状に基づいて行われます。特に子どもに見られる、両頬の紅斑と体や手足の網目状の発疹という典型的な症状があれば、医師は視診によってりんご病を強く疑います。周囲での流行状況なども診断の参考にされます。
症状が非典型的である場合や、妊婦さん、免疫力が低下している方、慢性溶血性貧血の方など、診断を確定する必要がある場合には、血液検査が行われることがあります。
- 抗体検査:ヒトパルボウイルスB19に対するIgM抗体やIgG抗体を調べます。IgM抗体は感染初期に上昇し、IgG抗体は感染から時間が経ってから上昇するため、それぞれの抗体の有無や量を調べることで、最近感染したのか、過去に感染したことがあるのかを判断できます。
- PCR法:血液中にウイルスが存在するかどうかを検出する方法です。特に免疫不全の患者さんや、胎児の感染が疑われる場合などに行われることがあります。
通常、典型的な症状の子どもであれば、血液検査なしで臨床診断されることが多いです。
りんご病に特効薬はある?(治療法)
残念ながら、りんご病の原因であるヒトパルボウイルスB19に対する特効薬はありません。ウイルスそのものを直接攻撃して排除する薬は、現在のところ開発されていません。
したがって、りんご病の治療は、症状を和らげるための対症療法が中心となります。
- 発熱:微熱程度であれば特別な治療は不要ですが、つらい場合は医師の判断で解熱剤を使用することがあります。
- かゆみ:発疹に伴うかゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬やかゆみ止めの塗り薬が処方されることがあります。
- 関節痛:大人の関節痛に対しては、鎮痛剤や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方されることがあります。
- 一過性骨髄無形成クリーゼ:この重篤な合併症に対しては、輸血が必要となる場合があります。
自宅でのケア方法
りんご病は、多くの場合、自宅での安静と適切なケアで回復が期待できます。
- 安静:発熱やだるさがある場合は、無理せず安静に過ごしましょう。
- 水分補給:特に発熱がある場合は、脱水を防ぐために十分な水分を摂らせてください。
- 保湿とかゆみ対策:発疹部分がかゆい場合は、掻き壊さないように注意が必要です。保湿剤を塗って皮膚の乾燥を防いだり、医師から処方されたかゆみ止めの塗り薬を適切に使用しましょう。爪を短く切っておくことも有効です。
- 体を温めすぎない:入浴や運動などで体が温まると、かゆみや発疹が強くなることがあります。熱すぎるお風呂や、激しい運動は避けた方が良いでしょう。
発疹が出ていれば感染力はほとんどないため、発疹のみで全身状態が良ければ、普段通りの生活に戻って問題ありません。ただし、かゆみでつらそうにしている場合は、症状が落ち着くまで自宅で休ませるなどの配慮が必要です。
りんご病の予防と対策
りんご病は主に飛沫感染や接触感染で広がるため、日頃からの予防が重要です。しかし、感染力が強い時期には診断が難しいため、完全な予防は困難な側面もあります。
日常的な予防法(手洗い・うがい)
りんご病に特異的な予防策はありませんが、他の多くの感染症と同様に、一般的な衛生対策が有効です。
- 丁寧な手洗い:外出から帰った時、食事の前、咳やくしゃみを手で覆った後などには、石鹸を使って流水でしっかりと手を洗いましょう。
- うがい:手洗いと併せてうがいをすることも、喉や口の中のウイルスを洗い流すのに役立ちます。
- 咳エチケット:咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチ、上着の内側などで口鼻を覆い、飛沫の飛散を防ぎましょう。使用済みのティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、手洗いをすることが重要です。
- タオルの共有を避ける:家庭内などでタオルを共有すると、接触感染のリスクが高まります。個人用のタオルを使用しましょう。
これらの基本的な感染対策は、りんご病だけでなく、他の様々な感染症の予防にもつながります。
りんご病にワクチンはある?
現時点では、りんご病(ヒトパルボウイルスB19感染症)に対する有効なワクチンは開発されていません。
そのため、ワクチンによる集団免疫の獲得や、予防接種による個人の発症予防はできません。予防のためには、前述の基本的な感染対策を徹底するしかありません。
流行時期と注意点
りんご病は、日本では春から夏にかけて(特に4月~7月頃)に流行のピークを迎えることが多いとされています。しかし、秋や冬に流行が見られることもあり、年間を通して注意が必要です。
流行期には、特に子どもたちの集まる場所(幼稚園、保育園、小学校など)や人混みへの不要な外出を避けるなど、周囲への配慮も重要になります。
また、発疹が出現する前の初期症状の期間が最も感染力が強いことを理解し、体調がすぐれない時には無理な登園・登校を避けるなど、周囲への配慮も重要になります。
りんご病と似た病気
りんご病の特徴的な発疹は診断の手がかりとなりますが、他の感染症でも発疹が出ることがあります。似たような症状を示す病気と区別することが重要です。
他の発疹性疾患との見分け方
子どもに発疹が出た場合、りんご病以外にも以下のような病気が考えられます。
- 麻しん(はしか):発熱、咳、鼻水、目の充血などの症状に続き、全身に赤い発疹が出現します。発疹は顔から体、手足へと広がります。りんご病と異なり、発疹が出現している期間も感染力が非常に強い病気です。ワクチンで予防可能です。
- 風しん(三日ばしか):発熱、発疹、リンパ節の腫れが特徴です。発疹は体幹から手足に広がります。麻しんより軽く済むことが多いですが、妊婦が感染すると胎児に重篤な影響(先天性風しん症候群)を与えるリスクがあります。ワクチンで予防可能です。
- 突発性発疹:主に乳幼児がかかる病気で、3日程度高熱が続いた後、熱が下がると同時に全身に発疹が出現します。
- 溶連菌感染症:発熱、喉の痛み、体に細かい赤い発疹(いちご舌を伴うこともある)が出現します。発疹は触るとザラザラしていることが多いです。抗菌薬で治療が必要です。
- アデノウイルス感染症:発熱、喉の痛み、目の充血など様々な症状が出ることがあり、稀に発疹を伴うことがあります。
- 伝染性単核球症:発熱、喉の痛み、リンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫れが特徴で、稀に発疹を伴うことがあります。
これらの病気は、それぞれ原因ウイルスや菌、症状の経過、発疹の質や分布、感染力のある時期などが異なります。りんご病の典型的な頬の紅斑と網目状の発疹があれば比較的区別しやすいですが、非典型的な症状の場合や発疹だけでは判断が難しいこともあります。特に発熱や全身状態が悪い場合は、速やかに医療機関を受診し、正確な診断を受けることが重要です。
以下に、主要な発疹性疾患と症状の比較を表で示します。
病気名 | 原因 | 主な症状 | 発疹の特徴 | 感染力のある時期 | ワクチン |
---|---|---|---|---|---|
りんご病 | ヒトパルボウイルスB19 | 微熱、だるさ → 頬の紅斑、体幹・手足の網目状発疹、関節痛(大人) | 頬が真っ赤、体幹・手足はレース状・網目状。かゆみ伴うことあり | 発疹出現前(初期症状期)が最も強い。発疹後はほぼなし | なし |
麻しん | 麻しんウイルス | 高熱、咳、鼻水、目の充血 → 発疹 | 全身に紅い丘疹状の発疹。融合して広がる。顔から体幹へ | 発疹出現前後を通じて感染力が強い | あり |
風しん | 風しんウイルス | 発熱、発疹、リンパ節腫脹 | 小さな紅い発疹。体幹から手足へ。比較的軽症の場合が多い | 発疹出現前後を通じて感染力がある | あり |
突発性発疹 | ヒトヘルペスウイルス6/7 | 3日程高熱 → 解熱と同時期に発疹 | 体幹中心に小さな紅斑や丘疹 | 発熱中が主(発疹出現時は比較的低い) | なし |
溶連菌感染症 | 溶血性連鎖球菌 | 発熱、喉の痛み、体に細かい発疹、イチゴ舌、腹痛など | 細かい紅い発疹でザラザラ。皮膚が剥けることもあり | 抗菌薬開始後24時間経てば感染力は低下 | なし |
この表はあくまで一般的な特徴であり、個々の症状には個人差があります。診断は必ず医師が行うべきです。
妊婦がりんご病に感染した場合の注意点
妊婦さんがヒトパルボウイルスB19に感染した場合、お腹の赤ちゃん(胎児)に影響を与える可能性があります。このため、妊婦さんはりんご病の流行期には特に注意が必要です。
妊婦感染による胎児への影響とリスク
妊婦さんが初めてヒトパルボウイルスB19に感染すると、ウイルスが胎盤を通過して胎児に感染するリスクがあります。胎児が感染した場合、特に妊娠20週頃までの早い時期の感染では、以下のような重篤な影響を与える可能性があります。
- 胎児水腫:胎児が重度の貧血になり、全身にむくみ(水腫)が生じることがあります。心臓への負担が大きくなり、胎児の命に関わる状態です。
- 流産・死産:胎児水腫などが原因で、流産や死産に至るリスクが高まります。
ただし、すべての妊婦さんの感染が胎児に影響を与えるわけではありません。
- 妊婦さんが感染しても、多くの場合は胎児に影響は出ません。
- 過去にりんご病にかかったことがある(ヒトパルボウイルスB19に対する免疫を持っている)妊婦さんの場合、基本的に感染する心配はありません。抗体を持っているかどうかは、血液検査で確認できます。
- 胎児が感染した場合でも、約8割は自然に回復するとされています。
- 重症化した胎児水腫の場合でも、胎児輸血などの治療によって救命できる可能性もあります。
リスクはゼロではありませんが、過度に不安になりすぎる必要はありません。重要なのは、感染が疑われた場合や感染が判明した場合に、速やかに産婦人科医に相談し、適切な管理を受けることです。
妊婦のための感染予防策
妊婦さんがりんご病の感染を予防するためには、以下の点に注意が必要です。
- 流行情報に注意する:お住まいの地域でりんご病が流行しているかどうか、自治体や医療機関からの情報に注意しましょう。
- 人混みを避ける:流行期には、特に子どもが多く集まる場所(保育園、幼稚園、小学校、児童館など)や人混みへの不要な外出を控えることが望ましいです。
- 感染者との接触を避ける:身近にりんご病にかかった人(特に発疹が出る前の初期症状の段階の人)がいる場合は、接触を避けるようにしましょう。子どもがりんご病にかかった場合、残念ながらお母さんが感染者と完全に接触を避けるのは難しいですが、できる範囲でマスクの着用や手洗いなどを徹底しましょう。
- 手洗い・うがいを徹底する:基本的な感染対策である手洗いとうがいは非常に重要です。
- 体調の変化に注意する:風邪のような症状や、関節痛など、りんご病の可能性が考えられる症状が出た場合は、早めに医療機関(かかりつけの産婦人科医)に相談しましょう。
- 抗体検査を検討する:過去にりんご病にかかったかどうかわからない場合は、希望すれば抗体検査を受けることができます。抗体を持っていれば、過度な心配は不要になります。
妊婦さんの感染予防は非常に重要ですが、過剰な心配はストレスになります。正しい知識を持ち、できる限りの対策を行い、気になることがあれば遠慮なく医師に相談するようにしましょう。
りんご病での学校・保育園・登園・登校
子どもがりんご病にかかった場合、学校や保育園、幼稚園にいつから行けるようになるのか、気になる保護者の方も多いでしょう。
りんご病で登校停止になる?
学校保健安全法では、学校において予防すべき感染症が定められており、それぞれ出席停止の期間の目安が示されています。
りんご病(伝染性紅斑)は、学校において予防すべき感染症の第三種に分類されています。しかし、第三種の感染症であっても、学校保健安全法では「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」とされており、通常は発疹が出現した時点では感染力がほとんどないため、出席停止の措置はとられません。
つまり、りんご病は、一般的に発疹が出ていても登校(または登園)して問題ないとされる感染症です。
登校・登園が可能な目安
学校保健安全法に基づけば、りんご病の発疹が出現した後は感染力が非常に低いため、発疹が出ていても全身状態が良ければ、登校・登園は可能です。
これは、最も感染力が強い時期が発疹が出る前の、まだ診断がついていない期間であるため、発疹が出てから休ませても感染拡大を防ぐ効果は期待できないという理由からです。むしろ、発疹が出ていない初期症状の段階で無理して登校する方が、周囲に感染を広げるリスクが高まります。
したがって、りんご病と診断された子どもは、
- 発疹が出現していること
- 発熱がなく、元気があること
- 食欲があり、普段通り過ごせること
といった全身状態が良好であれば、基本的には学校や保育園に行くことができます。
ただし、これはあくまで一般的な考え方であり、学校や園によっては独自の基準を設けている場合もあります。登校・登園を再開する前には、必ず学校や園に確認し、指示に従うようにしてください。また、発疹が出ていることで見た目が気になる、かゆみが強くて授業に集中できないなど、症状によって普段通りの活動が難しい場合は、無理せず自宅で休ませることも検討しましょう。
りんご病の症状で休むべきか?
発疹が出現した時点では感染力は低いものの、以下のような症状がある場合は、他の感染症の可能性も考慮し、無理せず自宅で休ませ、必要であれば医療機関を受診することが望ましいです。
- 発熱がある(特に高熱)
- だるさが強い、元気がない
- 食欲がない
- 関節の痛みが強い(特に大人の場合)
- かゆみが非常に強く、日常生活に支障がある
- その他、全身状態が悪い
りんご病の典型的な発疹のみで他の症状がない場合は、基本的には登校・登園は可能ですが、子どもの体調をよく観察し、つらそうな様子があれば休ませてあげることも大切です。また、発疹が出る前の風邪のような初期症状の段階で、発熱やだるさがある場合も、他の感染症の可能性や周囲への配慮から、無理せず休ませる方が良いでしょう。
最終的には、子どもの体調と症状の程度を考慮し、保護者が判断する必要があります。迷う場合は、かかりつけの医師や学校・園に相談してください。
医師に相談する目安
りんご病は多くの場合、自然に回復する病気ですが、以下のような場合は医療機関への相談や受診を検討しましょう。
- 症状が典型的なりんご病ではないと感じる場合:発疹の様子が違う、高熱が続くなど、他の病気の可能性が考えられる場合。
- 子どもの全身状態が悪い場合:高熱、ひどい倦怠感、食欲不振など、元気がなくぐったりしている場合。
- 大人が感染し、関節痛などの症状がつらい場合:日常生活に支障をきたすほどの関節痛や腫れがある場合。
- 特定の基礎疾患がある方が感染した場合:慢性溶血性貧血など、ヒトパルボウイルスB19感染で重篤な合併症を起こすリスクのある病気をお持ちの方。
- 妊婦さんが感染した、または感染が疑われる場合:風邪のような症状や発疹、関節痛など、りんご病の可能性が考えられる症状が出た場合は、速やかに産婦人科医に相談してください。過去にりんご病にかかったか不明な妊婦さんも、流行期に症状が出た場合は相談が推奨されます。
- 免疫力が低下している方:エイズや白血病、臓器移植などで免疫抑制剤を使用しているなど、免疫機能が低下している方が感染した場合、ウイルスが体内に長期間留まり、重篤な貧血などを引き起こす可能性があります。
- 診断や登園・登校について迷う場合:症状について心配な点がある場合や、学校や園への連絡、再開時期について判断に迷う場合。
これらのケースに当てはまる場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けるようにしてください。
監修者情報/情報出典
本記事は、〇〇医師(専門分野:△△科)の監修のもと作成しています。
情報出典元:
- 厚生労働省:伝染性紅斑について
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/06/h0609-2a.html - 国立感染症研究所:伝染性紅斑とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/527-erythema-infectiosum.html - 東京都感染症情報センター:伝染性紅斑
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/erythema/ - 日本小児科学会:学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/sick_guideline_20230515.pdf
まとめ
りんご病(伝染性紅斑)は、ヒトパルボウイルスB19による感染症で、特に子どもに多い病気です。特徴的な頬の赤い発疹が出ますが、この発疹が出る前の風邪のような初期症状の期間が最も感染力が強いという特徴があります。発疹が出た後は、他の人にうつす心配はほとんどありません。
子どもの場合は発疹が主体で軽症で済むことが多いですが、大人が感染すると関節痛などの症状が強く出る傾向があります。また、妊婦さんが感染した場合には、胎児に影響を与えるリスクがあるため特に注意が必要です。
りんご病には特効薬がなく、治療は症状を和らげるための対症療法が中心となります。日頃からの手洗い、うがいなどの一般的な感染対策が予防には有効ですが、ワクチンはありません。
学校や保育園への登園・登校については、発疹が出て全身状態が良ければ可能とされていますが、学校や園の基準を確認し、子どもの体調に合わせて判断することが大切です。
もし、ご自身やご家族にりんご病が疑われる症状がある場合、特に大人の症状がつらい場合、妊婦さんの感染が疑われる場合、または基礎疾患をお持ちの方などが感染した場合は、速やかに医療機関に相談し、適切な診断とアドバイスを受けるようにしてください。
免責事項:本記事の情報は、医学的な診断や治療に代わるものではありません。特定の症状がある場合や、健康に関するご質問がある場合は、必ず資格を持つ医療専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて行ったいかなる行為についても、当サイトは責任を負いません。