蕁麻疹の原因とNG行動20選|今すぐできる対処法と予防策を徹底解説

皮膚の表面が突然赤く盛り上がり、強いかゆみを伴う「蕁麻疹」。多くの方が一度は経験したことがある症状ではないでしょうか。数時間以内に跡形もなく消えることが特徴ですが、繰り返し現れたり、原因が分からず不安になったりすることも少なくありません。この記事では、蕁麻疹とは何か、その多様な原因や症状、病院での診断や治療、そして自宅でできるケアや予防法まで、あなたの疑問を解消するために詳しく解説します。正しい知識を持ち、適切に対処することで、蕁麻疹のつらい症状を和らげ、快適な日常を取り戻しましょう。

目次

蕁麻疹とは?基本を知ろう

蕁麻疹の定義と特徴的な症状

蕁麻疹は、皮膚の一部が突然、境界のはっきりした赤みのある盛り上がり(膨疹)を生じ、同時に強いかゆみを伴う病気です。この膨疹は数十分から数時間以内に、多くは24時間以内に跡形もなく消えるという「一過性」の特徴があります。一つ消えたかと思うと別の場所にまた現れる、というように症状が現れる場所が移動することもよくあります。

膨疹の大きさや形は様々で、数ミリ程度の小さなものから、地図状に広がる大きなものまであります。色は赤っぽいものが多いですが、中には白っぽいものや、中心が白くて周囲が赤いものもあります。かゆみは非常に強く、焼けるような、あるいはチクチクするような感覚を伴うこともあります。

この膨疹は、皮膚の真皮上層にある血管から血漿成分が漏れ出し、組織内に溜まることで生じます。このメカニズムの中心的な役割を果たすのが、マスト細胞という細胞です。マスト細胞から放出されるヒスタミンなどの化学伝達物質が、血管を拡張させ、透過性を高めることで膨疹やかゆみを引き起こします。

蕁麻疹の種類:急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹

蕁麻疹は、その経過期間によって大きく二つに分けられます。

  • 急性蕁麻疹: 症状が現れてから6週間以内に治まるものを急性蕁麻疹といいます。特定の食品や薬剤、感染症などが原因であることが比較的多いですが、原因が特定できない場合も少なくありません。一度きり、あるいは比較的短期間で症状が消失します。
  • 慢性蕁麻疹: 症状が現れてから6週間以上続くものを慢性蕁麻疹といいます。毎日、またはほぼ毎日、断続的に症状が現れます。原因が特定できないことが多く(特発性慢性蕁麻疹)、治療に時間がかかる傾向があります。数ヶ月から数年にわたって症状が続くこともあります。

急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹では、原因や治療アプローチが異なる場合があります。特に慢性蕁麻疹は、根気強い治療が必要となることが多いです。

蕁麻疹は伝染する?

蕁麻疹は、人から人にうつる病気ではありません。症状は体内で起こるアレルギー反応やその他の刺激に対する反応によって生じるものであり、ウイルスや細菌のように接触によって広がることはありません。したがって、蕁麻疹が出ている人がいても、周りの人に感染する心配はありません。学校や職場などで、周囲に気兼ねなく過ごせます。

蕁麻疹の主な原因を探る

蕁麻疹の原因は非常に多様で、特定できないことも少なくありません。大きく分けて、アレルギー性のものと非アレルギー性のものがあります。

アレルギー性蕁麻疹の原因

アレルギー性蕁麻疹は、特定の物質(アレルゲン)に対して体の免疫システムが過剰に反応することで起こります。この反応には、IgE抗体という免疫物質が関与しています。アレルゲンが体内に入ると、アレルゲンに特異的なIgE抗体が結合したマスト細胞が刺激され、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、蕁麻疹の症状を引き起こします。

代表的なアレルゲンとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 食品: 卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、エビ、カニ、サバなどの魚介類、果物など。特定の食品を摂取して数分から数時間以内に症状が出ることが多いです。
  • 薬剤: 抗生物質、解熱鎮痛薬、造影剤、ワクチンなど。特定の薬剤を服用したり、注射したりした後に起こることがあります。
  • 昆虫毒: 蜂やアリなどの毒。
  • 植物: 特定の植物との接触。
  • 動物の毛やフケ
  • ラテックス: 天然ゴム製品。

アレルギー性蕁麻疹の場合、原因となるアレルゲンを特定し、それを避けることが最も効果的な予防法となります。

非アレルギー性蕁麻疹の原因

非アレルギー性蕁麻疹は、アレルギー反応(IgE抗体が関与する反応)以外のメカニズムでマスト細胞が刺激され、ヒスタミンなどが放出されることで起こります。原因は多岐にわたります。

  • 物理性蕁麻疹:
    • 機械的刺激: 衣服による締め付けや摩擦(圧迫蕁麻疹、摩擦蕁麻疹)。ベルトや下着のゴムの部分など。
    • 温熱刺激: 温かいものに触れる、熱いお風呂に入る(温熱蕁麻疹)。
    • 寒冷刺激: 冷たいものに触れる、冷たい風に当たる、冷たい飲み物を飲む(寒冷蕁麻疹)。冬場の外気や冷房などが原因になることも。
    • 日光刺激: 日光に当たる(日光蕁麻疹)。露出した部分に症状が出やすい。
    • 水刺激: 水に触れる(水蕁麻疹)。水温に関わらず起こる。非常に稀なタイプ。
  • コリン性蕁麻疹: 運動や入浴、精神的緊張などによって体温が上昇し、発汗が促される際に起こる蕁麻疹です。数ミリ程度の小さな膨疹が多数出現し、強いかゆみやチクチク感を伴うのが特徴です。若い人に多く見られます。
  • 薬剤性蕁麻疹: アレルギー反応によらない機序で薬剤によって起こるもの。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが関与することがあります。
  • 感染症に伴う蕁麻疹: ウイルス感染(風邪など)、細菌感染、寄生虫などが原因となって蕁麻疹が出ることがあります。特に子供の蕁麻疹は感染症が原因であることが少なくありません。
  • 内臓の病気: 慢性的な感染症(副鼻腔炎、歯周病など)、甲状腺疾患、膠原病、悪性腫瘍などが背景にある場合もあります。稀ですが、注意が必要です。

ストレス・疲労が原因となる場合

ストレスや疲労は、直接的な原因となるだけでなく、他の原因による蕁麻疹を悪化させる要因となることが知られています。精神的なストレスや過労は、自律神経のバランスを乱し、免疫システムやホルモンバランスに影響を与えます。これにより、マスト細胞が活性化されやすくなり、蕁麻疹の症状が出やすくなったり、かゆみが強くなったりすることが考えられています。

原因が特定できない慢性蕁麻疹の場合、ストレスや疲労の蓄積が症状の維持や悪化に関わっていることが多いため、これらの管理が治療において重要となります。

突然蕁麻疹が出るのはなぜ?

蕁麻疹が突然出るのは、皮膚のマスト細胞が刺激を受け、細胞内に蓄えられているヒスタミンなどの化学伝達物質を急激に放出するためです。この放出が、皮膚の血管を拡張させ、水分を漏れ出させ(膨疹)、神経を刺激する(かゆみ)ことで、数分から数十分という短時間のうちに症状が現れます。

このマスト細胞を刺激する引き金は、前述のアレルゲンや物理的刺激、ストレス、感染など非常に多様です。特定の引き金に体が反応しやすい状態にあるときに、突然症状が現れるのです。例えば、ある食品を摂取した直後、寒さに触れた瞬間、運動して汗をかき始めた時など、原因と症状の出現タイミングが比較的はっきりしている場合もあります。しかし、多くの場合は原因が特定できないまま、突然症状が出現します。

免疫システムと蕁麻疹の関係

免疫システムは、アレルギー性蕁麻疹において中心的な役割を果たします。特定のアレルゲンに対するIgE抗体が関与し、免疫応答としてマスト細胞が活性化されます。

一方、非アレルギー性蕁麻疹の中にも、免疫システムの一部が関与していると考えられているものがあります。例えば、自己免疫性蕁麻疹と呼ばれるタイプでは、自分の体の一部に対する抗体(自己抗体)がマスト細胞を刺激し、ヒスタミン放出を促すことが原因の一つと考えられています。

このように、蕁麻疹の発症には、アレルギー反応に限らず、様々な形で免疫システムが関与していることがあります。しかし、原因不明の慢性蕁麻疹を含め、その詳細なメカニズムはまだ完全には解明されていません。

蕁麻疹は「排毒」ではない

一部で「蕁麻疹は体内に溜まった毒素を排出する反応だ」といった考え方が聞かれることがありますが、これは医学的な根拠に基づいたものではありません。蕁麻疹は、体内のマスト細胞から放出される化学伝達物質による血管や神経への作用によって生じる皮膚の反応であり、体外への「排毒」とは全く関係がありません。誤った情報に惑わされず、科学的な知識に基づいて対処することが重要です。

蕁麻疹の症状と見分け方

膨疹(ぼうしん)の特徴と変化

蕁麻疹の最も特徴的な症状が「膨疹」です。これは、皮膚の表面が蚊に刺された跡のように突然盛り上がり、赤みを帯びるものです。以下のような特徴があります。

  • 境界がはっきりしている: 周囲の皮膚との境目が比較的明確です。
  • 形と大きさの多様性: 数ミリの小さな円形のものから、隣の膨疹とくっついて不規則な大きな形(地図状)になるものまで様々です。
  • 色: 赤みが強いことが多いですが、中心部が白っぽくなることもあります。
  • 強いかゆみ: 膨疹の出現と同時に、または少し遅れて強いかゆみが生じます。
  • 一過性: 数十分から数時間(多くは24時間以内)で、かゆみや赤み、盛り上がりが消え、皮膚が元通りになるのが最大の特徴です。跡が残ることは通常ありません。

この「数時間で消える」という特徴は、他の皮膚疾患(湿疹、虫刺され、薬疹など)と区別する上で非常に重要です。例えば、湿疹はじゅくじゅくしたり、皮膚が厚くなったりすることがあり、通常は数時間で消えることはありません。

強いかゆみへの対応

蕁麻疹のかゆみは非常に強く、我慢するのが難しいほどです。しかし、かきむしってしまうと、症状が悪化したり、皮膚を傷つけて二次感染を起こしたりするリスクがあります。かゆみを感じたときは、以下の方法で対処しましょう。

  • 冷やす: 膨疹が出ている部分を冷やすと、かゆみが和らぐことが多いです。保冷剤や冷たいタオルなどを直接ではなく、清潔な布やタオルでくるんでから患部に当てましょう。冷やしすぎると寒冷蕁麻疹を誘発する可能性があるので注意が必要です。
  • 薬を使う: 処方された抗ヒスタミン薬の内服や、必要に応じてかゆみ止めの塗り薬を使用します。自己判断で市販薬を使う場合は、薬剤師に相談し、適切に使用してください。
  • 刺激を避ける: 熱いお風呂、アルコール、香辛料などの刺激物は、かゆみを悪化させる可能性があります。入浴はぬるめのお湯にし、飲酒は控えましょう。
  • 締め付けの少ない服装: 摩擦や圧迫は蕁麻疹を誘発・悪化させることがあります。締め付けの少ない、ゆったりとした服を選びましょう。
  • 爪を短く切る: 掻いてしまった場合の皮膚へのダメージを最小限にするために、爪は常に短く清潔にしておきましょう。

血管性浮腫(クインケ浮腫)とは

血管性浮腫(クインケ浮腫)は、蕁麻疹と同じメカニズムで起こりますが、皮膚のより深い部分(真皮深層や皮下組織)や粘膜に水分が貯留することで生じる腫れです。膨疹のように境界がはっきりせず、広い範囲がむくむように腫れるのが特徴です。

血管性浮腫は、顔面(特にまぶたや唇)、舌、喉、手足などに起こりやすいです。かゆみよりも、ピリピリ、チクチクといった違和感や、圧迫感を伴うことが多いです。多くの場合、数時間から数日かけて自然に消退しますが、蕁麻疹の膨疹より消えるまでに時間がかかります(24時間以上かかることが多い)。

特に注意が必要なのは、喉や舌に血管性浮腫ができた場合です。気道が狭窄し、呼吸困難を引き起こす危険性があります。このような症状が現れた場合は、速やかに救急医療機関を受診する必要があります。

自分が蕁麻疹かどうかの判断基準

「皮膚が赤く盛り上がってかゆい」症状は、蕁麻疹以外にも湿疹、虫刺され、かぶれなど様々な皮膚疾患で見られます。自分が蕁麻疹かどうかを見分けるポイントは、その「一過性」の特徴です。

  • 突然症状が現れたか?
  • 皮膚の盛り上がり(膨疹)と強いかゆみがあるか?
  • その盛り上がりは、数時間以内に完全に消えたか?
  • 消えたかと思うと、体の別の場所にまた現れたか?

これらの特徴が当てはまる場合、蕁麻疹である可能性が高いです。特に「数時間以内に消える」という点が重要です。症状が数日以上同じ場所に留まっている場合は、蕁麻疹以外の皮膚疾患(湿疹など)の可能性が高いと考えられます。自己判断が難しい場合や、症状が続く場合は、皮膚科医に相談しましょう。

夜に蕁麻疹が悪化しやすい理由

蕁麻疹の症状は、夜間や夕方に悪化しやすい傾向があります。これにはいくつかの理由が考えられます。

  • 体温の上昇: 夜間は布団に入ったり、部屋を暖かくしたりすることで体温が上がりやすくなります。体温の上昇は血管を拡張させ、かゆみを感じやすくさせたり、一部の蕁麻疹(コリン性蕁麻疹など)を誘発・悪化させたりすることがあります。
  • 副交感神経の優位性: 夜間はリラックスモードの副交感神経が優位になります。副交感神経の活動は、マスト細胞からのヒスタミン放出を促す可能性があると考えられています。
  • 意識: 日中は仕事や活動に集中しているため、かゆみを感じにくくても、夜間はリラックスして体の感覚に意識が向きやすくなるため、かゆみを強く感じることがあります。
  • ストレス・疲労: 日中のストレスや疲労が夜になってから影響を及ぼし、症状を悪化させることもあります。

これらの要因が複合的に影響し、夜間に蕁麻疹が悪化することが多いと考えられています。

蕁麻疹の診断方法と検査

医療機関での診断プロセス

医療機関、特に皮膚科を受診した場合、医師はまず患者さんの話(問診)と皮膚の状態の観察(視診)によって診断を行います。

問診では、以下のようなことを詳しく聞かれます。

  • 症状がいつから始まったか(急性か慢性かの判断)
  • どのような症状か(膨疹の特徴、かゆみの程度、持続時間など)
  • 症状が現れるタイミングや状況(特定の食品を食べた後、寒さに触れた時、汗をかいた時、ストレスを感じた時など)
  • 症状が現れる体の部位
  • これまでの病歴やアレルギー歴
  • 現在服用している薬やサプリメント
  • 最近の生活の変化、ストレス、疲労の状況
  • 家族に蕁麻疹やアレルギーの人がいるか

視診では、

  • 膨疹の有無、形、大きさ、色、分布
  • 皮膚の乾燥や傷の有無

などを確認します。

多くの蕁麻疹は、問診と視診によって診断が可能です。特に典型的な症状(数時間で消える膨疹と強いかゆみ)があれば、特別な検査をしなくても診断がつくことが多いです。

アレルギー検査の種類と有効性

原因が特定できない慢性蕁麻疹の場合、全てのケースで原因究明のための詳細な検査が行われるわけではありません。なぜなら、慢性蕁麻疹の原因の多くは特定が難しく、検査をしても異常が見つからない場合が多いからです。しかし、急性蕁麻疹で特定の原因(食品や薬剤など)が強く疑われる場合や、物理性蕁麻疹の診断を確定したい場合などには、以下のような検査が行われることがあります。

検査の種類 方法 目的・有効性 限界
特異的IgE抗体検査 血液検査で、特定の物質(アレルゲン)に対するIgE抗体の量を測定します。 食品や花粉、動物の毛など、アレルギー性蕁麻疹の原因として疑われるアレルゲンを特定するのに役立ちます。 IgE抗体が高くても必ず症状が出るとは限らず、また原因不明の蕁麻疹の多くはIgE抗体が関与しないため、万能ではありません。
プリックテスト アレルゲンエキスを皮膚表面に一滴垂らし、細い針で皮膚の浅い部分を軽く突きます。 アレルゲンに反応があるか(膨疹や紅斑が出るか)を皮膚で直接確認します。食物や花粉などのアレルギー診断に用いられます。 検査可能なアレルゲンに限りがあり、皮膚の状態によっては実施できない場合があります。
誘発試験 物理性蕁麻疹が疑われる場合、原因となる刺激(氷、温水、摩擦など)を意図的に皮膚に加えて症状が出るか確認します。 物理性蕁麻疹の診断を確定し、原因となる刺激を特定するために有効です。 刺激の種類や程度によって症状が出ない場合や、症状が強く出すぎるリスクもあります。
内服テスト 薬剤性蕁麻疹が疑われる場合、原因薬を少量ずつ服用して症状が出るか確認します。 薬剤性蕁麻疹の診断を確定する最も確実な方法ですが、アナフィラキシーなどの重篤な副作用のリスクがあるため、入院管理下など慎重に行われます。 リスクが高く、安易に行うべき検査ではありません。
自己血清皮膚テスト 患者さん自身の血液(血清)を皮膚に注射し、膨疹が出るか確認します。 自己免疫性蕁麻疹の可能性を調べる検査です。 保険適用外であったり、実施している医療機関が限られたりします。

これらの検査は、全ての患者さんに行われるわけではなく、医師が必要と判断した場合にのみ実施されます。特に慢性蕁麻疹では、検査で原因が特定できるのは一部のケースに過ぎないため、原因不明(特発性)として治療が進められることが多いことを理解しておくことが重要です。

蕁麻疹の治療の選択肢

蕁麻疹の治療の基本は、原因が特定できればその原因を取り除くことですが、多くの場合は原因が特定できないため、薬物療法による対症療法が中心となります。

薬物療法(抗ヒスタミン薬など)

蕁麻疹の薬物療法で最もよく使われるのが、抗ヒスタミン薬です。ヒスタミンはマスト細胞から放出され、かゆみや膨疹を引き起こす主要な化学伝達物質であるため、その働きを抑える抗ヒスタミン薬が効果的です。

抗ヒスタミン薬には、大きく分けて第一世代と第二世代があります。

  • 第一世代抗ヒスタミン薬: 古くから使われているタイプの薬です。かゆみを抑える効果は強いですが、眠気や口の渇きなどの副作用が出やすい傾向があります。頓服薬として、かゆみが強いときに一時的に使用されることがあります。
  • 第二世代抗ヒスタミン薬: 現在、蕁麻疹治療の中心となっている薬です。第一世代に比べて眠気や口の渇きなどの副作用が出にくく、効果の持続時間も長いため、慢性蕁麻疹のように毎日症状が出る場合に継続して服用するのに適しています。様々な種類の薬があり、効果や副作用の出方には個人差があります。

薬の選択と服用方法:

  • 通常、まず第二世代抗ヒスタミン薬が処方されます。効果を見ながら、適切な種類や量を調整します。
  • 標準量の第二世代抗ヒスタミン薬で効果が不十分な場合は、医師の判断で最大4倍量まで増量されることがあります。
  • それでも効果が不十分な場合や、症状の種類によっては、他の抗ヒスタミン薬を追加したり、H2ブロッカー(胃薬として使われることもありますが、蕁麻疹にも効果がある場合があります)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(喘息やアレルギー性鼻炎の薬ですが、蕁麻疹にも効果を示すことがあります)などが併用されることがあります。
  • 症状が落ち着いてきても、すぐに薬をやめると再発することが多いため、医師の指示に従い、徐々に減量したり、症状が出ない状態を維持するためにしばらく継続したりすることが重要です。

重症時の治療法

抗ヒスタミン薬の増量や複数種類の併用でも症状が十分にコントロールできない場合や、血管性浮腫で呼吸困難の危険があるような重症の場合には、より強力な治療法が検討されます。

  • ステロイド薬: 内服薬や注射薬として使用されることがあります。非常に強い抗炎症作用があり、短期間で症状を抑える効果が期待できます。しかし、長期使用には様々な副作用(免疫力の低下、骨粗鬆症、糖尿病、満月様顔貌など)のリスクがあるため、通常は症状が重い場合に短期間(数日から1週間程度)のみ使用されます。
  • 免疫抑制薬: 慢性蕁麻疹の中でも特に難治性のタイプに対して使用されることがあります。体の免疫反応を抑えることで蕁麻疹を改善させますが、副作用のリスクもあり、専門医の管理のもとで使用されます。
  • 生物学的製剤(オマリズマブ:商品名 ゾレア): 難治性の慢性蕁麻疹に対して、近年使用されるようになった注射薬です。IgE抗体の働きを抑えることで、マスト細胞からのヒスタミン放出を抑制します。これまでの治療で効果がなかった重症の慢性蕁麻疹に有効性が確認されており、治療の選択肢の一つとなっています。高価な治療薬であり、使用には条件があります。

急性蕁麻疹を早く治すには?

急性蕁麻疹は、原因がはっきりしている場合はその原因(食品、薬剤など)を避けることが最も早く治すための方法です。原因が不明な場合でも、多くは数日から数週間で自然に改善します。

早く治すためには、

  • 原因の特定と回避: もし心当たりがある場合は、その原因となる可能性のあるもの(特定の食品、薬剤、特定の刺激など)を避けてみましょう。ただし、自己判断で安易な食事制限などは行わないようにしてください。
  • 適切な薬物療法: 医師に相談し、処方された抗ヒスタミン薬を指示通りに服用します。かゆみが強い場合は、我慢せずに薬を使いましょう。
  • 自宅でのケア: かゆみを和らげるために冷やす、刺激物を避けるなどのセルフケアを行います。

原因が特定でき、それを避けることができれば、数日以内に症状が改善することが多いです。原因が不明な場合でも、多くは薬物療法で症状をコントロールしながら、自然に治癒するのを待ちます。

慢性蕁麻疹の根治は可能?

慢性蕁麻疹は、原因が特定できない特発性慢性蕁麻疹が多いのが実情です。そのため、原因を取り除くという治療ができず、薬物療法で症状をコントロールしながら、自然に治まるのを待つというアプローチが中心になります。

慢性蕁麻疹が完全に「根治」するかどうかは、個人差が大きく、一概には言えません。数ヶ月から数年かけて自然に症状が出なくなる人もいれば、長期にわたって症状が続く人もいます。

治療目標としては、「薬を適切に服用することで、症状がほとんど気にならない、あるいは全く出ない状態を維持し、日常生活に支障がないようにすること」となります。薬で症状を抑えている間に、体質が変化したり、原因が自然に消失したりすることで、将来的に薬が不要になる可能性もあります。

根気強く治療を続け、医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけることが重要です。安易に治療を中断せず、症状が落ち着いても医師の指示に従って薬を続けることが、再発を防ぎ、将来的な寛解(症状が落ち着いた状態)につながる可能性があります。

蕁麻疹が出た場合の自宅でのケア

蕁麻疹が出たとき、医療機関での治療と並行して、自宅での適切なケアを行うことで、かゆみを和らげたり、症状の悪化を防いだりすることができます。

かゆみを和らげるセルフケア

つらいかゆみを和らげるために、自宅でできることはいくつかあります。

  • 患部を冷やす: 冷たいタオルや、保冷剤をタオルでくるんだものを患部に優しく当てます。これにより血管が収縮し、かゆみを感じにくくなります。ただし、冷やしすぎると寒冷蕁麻疹を誘発する可能性があるので、肌に直接長時間当てたり、全身を冷やしたりするのは避けましょう。
  • 掻かない努力: 掻くと一時的にかゆみが紛れるように感じますが、実際にはマスト細胞を刺激してさらにヒスタミン放出を促し、かゆみや膨疹を悪化させます。また、皮膚を傷つけて感染のリスクを高めます。かゆいときは、掻く代わりに冷やす、優しくさするなどして、掻かないように意識しましょう。
  • 保湿: 皮膚が乾燥しているとかゆみを感じやすくなります。日頃から保湿剤を使って皮膚のバリア機能を保つことは、かゆみの軽減につながります。
  • 入浴: 熱いお湯での長湯は体温を上昇させ、かゆみを悪化させやすいです。ぬるめのお湯(38~40℃程度)で、短時間で済ませましょう。石鹸は刺激の少ないものを使い、体をゴシゴシ洗いすぎないようにしましょう。
  • 衣服: 締め付けのきつい服や、肌触りの悪い素材の服は、摩擦や圧迫によって蕁麻疹を誘発・悪化させることがあります。綿などの肌触りが良く、ゆったりとした通気性の良い素材を選びましょう。

食事で蕁麻疹を改善できる?

特定の食品や食品添加物が蕁麻疹の原因となるアレルギー性蕁麻疹の場合、原因食品を避けることで症状は改善します。しかし、原因不明の慢性蕁麻疹の場合、特定の食品を避けても必ずしも改善するとは限りません。

食品の中には、アレルギー反応とは異なるメカニズムでマスト細胞を刺激し、ヒスタミン放出を促す「仮性アレルゲン」と呼ばれるものが存在します。これらには、以下のようなものが含まれることがあります。

  • ヒスタミンを多く含む食品: 青魚(サバ、マグロなど)、発酵食品(チーズ、ワイン、ビール、漬物など)、チョコレート、ほうれん草、トマトなど。
  • サリチル酸を多く含む食品: ベリー類、トマト、香辛料など。
  • 食品添加物: 着色料(タール色素)、保存料、香料など。

ただし、これらの食品を避けたからといって、すべての慢性蕁麻疹が改善するわけではありませんし、個人差が大きいです。安易な自己判断による極端な食事制限は、栄養バランスを崩し、体調を崩すリスクがあります。もし特定の食品との関連が疑われる場合は、自己判断で除去する前に必ず医師に相談し、必要であれば医師の指導のもとで除去試験などを行うようにしましょう。

日常生活で避けるべきこと

蕁麻疹の症状を悪化させないために、日常生活で注意すべき点があります。

  • 疲労や睡眠不足: 体の抵抗力を弱め、ストレスを増大させ、蕁麻疹を悪化させる可能性があります。十分な休息と睡眠を心がけましょう。
  • ストレス: 精神的なストレスは蕁麻疹の大きな誘発因子・悪化因子となり得ます。リラックスできる時間を作り、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
  • 飲酒: アルコールは血管を拡張させ、かゆみを増強させたり、蕁麻疹を誘発・悪化させたりすることがあります。症状が出ているときは飲酒を控えるのが望ましいです。
  • 熱いお風呂やサウナ: 体温を急激に上昇させ、特にコリン性蕁麻疹や温熱蕁麻疹を誘発・悪化させることがあります。
  • 刺激物: 香辛料などの刺激物は、一部の人で症状を悪化させることがあります。
  • 摩擦や圧迫: 衣服や下着による締め付け、強く掻くこと、マッサージなどは皮膚に刺激を与え、蕁麻疹を誘発・悪化させる可能性があります。

これらの点を意識して日常生活を送ることで、蕁麻疹の症状を軽減できる可能性があります。

蕁麻疹の予防と再発防止

蕁麻疹の予防と再発防止は、原因が特定できているか、あるいは原因不明かにかかわらず、いくつかの共通するアプローチがあります。

原因の特定と回避

原因が特定できた急性蕁麻疹の場合は、その原因となる物質や刺激を徹底的に避けることが最も確実な予防法です。例えば、特定の食品が原因であればその食品を摂取しない、特定の薬剤が原因であればその薬剤を使用しない、寒冷が原因であれば寒さに触れる機会を避けるなどの対策を行います。

原因不明の慢性蕁麻疹の場合は、特定の原因を完全に回避することはできません。しかし、症状が出やすい状況(例えば、疲れた時、ストレスを感じた時、特定の食品を食べた後など)に心当たりがある場合は、それを意識して生活習慣を調整することが、症状の頻度や程度を軽減するのに役立つ可能性があります。

ストレス管理と生活習慣

原因不明の慢性蕁麻疹では、ストレスや疲労、睡眠不足が症状を悪化させる大きな要因となります。そのため、これらの管理が予防と再発防止において非常に重要です。

  • ストレス管理: 自分なりのストレス解消法を見つけ、積極的にリフレッシュする時間を作りましょう。趣味に没頭する、適度な運動をする、リラクゼーションを取り入れる(瞑想、ヨガ、深呼吸など)などが有効です。
  • 十分な睡眠: 睡眠不足は体の抵抗力を低下させ、蕁麻疹を含む様々な体調不良の原因となります。規則正しい生活を送り、質の良い睡眠を十分にとりましょう。
  • バランスの取れた食事: 栄養バランスの取れた食事は、体の健康を維持し、免疫システムの正常な働きを助けます。特定の食品を安易に制限するのではなく、様々な食品をバランス良く摂取することが大切です。
  • 適度な運動: 適度な運動はストレス解消や体調管理に役立ちますが、激しい運動や体温が急激に上昇するような運動は、コリン性蕁麻疹などを誘発する可能性があるため、自分の体調と相談しながら行いましょう。
  • 皮膚のケア: 皮膚を清潔に保ち、乾燥を防ぐために保湿をしっかり行うことも、皮膚のバリア機能を維持し、外部からの刺激に対する感受性を低下させる上で重要です。

これらの生活習慣の見直しは、蕁麻疹だけでなく、全身の健康状態を良好に保つためにも役立ちます。

医療機関を受診する目安

蕁麻疹は数時間で消えることが多い症状ですが、以下のような場合は医療機関を受診することをおすすめします。

  • 初めて蕁麻疹が出た場合: 診断を確定し、原因や対処法について専門的なアドバイスを受けるために受診しましょう。
  • 症状が数日以上続く場合: 特に同じ場所に症状が留まっている場合は、蕁麻疹以外の皮膚疾患の可能性も考えられます。
  • かゆみが強く、日常生活(睡眠など)に支障をきたす場合: 適切な薬物療法で症状をコントロールする必要があります。
  • 市販薬を使っても改善しない、あるいは悪化する場合: 症状に合った治療薬が必要かもしれません。
  • 皮膚の症状だけでなく、息苦しさ、声枯れ、めまい、腹痛、吐き気、意識の混濁などの全身症状(アナフィラキシーの疑い)を伴う場合: これは緊急性の高い状況です。迷わず救急車を呼ぶか、速やかに救急医療機関を受診してください。特に喉の違和感や腫れ(血管性浮腫)がある場合は注意が必要です。
  • 蕁麻疹が繰り返し現れる場合(慢性蕁麻疹の疑い): 慢性蕁麻疹は治療に時間がかかることが多く、専門医の管理のもとで根気強く治療を続けることが重要です。
  • 物理性蕁麻疹やコリン性蕁麻疹など、特殊なタイプの蕁麻疹が疑われる場合: 診断や治療法が通常の蕁麻疹と異なることがあります。
  • 原因が特定できず不安な場合: 医師に相談することで、原因究明に向けた検査や、適切な情報提供を受けることができます。

自己判断で様子を見すぎず、気になる症状がある場合は早めに皮膚科医に相談しましょう。

まとめ

蕁麻疹は、皮膚が突然赤く盛り上がり、強いかゆみを伴う一過性の症状です。数時間で消えるのが特徴ですが、繰り返し現れる慢性蕁麻疹に移行することもあります。原因はアレルギーや物理的刺激、ストレス、感染など多岐にわたりますが、多くは特定できません。

治療の中心は、ヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン薬による薬物療法です。重症の場合や難治性の場合は、ステロイド薬や生物学的製剤などが用いられることもあります。

自宅でのケアとしては、かゆみを和らげるために患部を冷やすこと、掻かないこと、そして疲労やストレスを避け、規則正しい生活を送ることが重要です。特定の食品との関連が疑われる場合でも、自己判断での極端な食事制限は避け、医師に相談しましょう。

初めて症状が出た場合や、症状が続く場合、全身症状を伴う場合などは、必ず医療機関を受診してください。特に、呼吸困難などを伴う血管性浮腫の症状が出た場合は、緊急性が高いので速やかに医療機関を受診することが必要です。

蕁麻疹はつらい症状ですが、適切な診断と治療、そして日々のセルフケアによって、症状をコントロールし、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。気になる症状がある場合は、一人で悩まずに皮膚科医に相談しましょう。


免責事項:
本記事は、一般的な情報の提供を目的としており、個別の症状に対する医学的な診断や治療法を推奨するものではありません。具体的な症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。本記事の情報に基づいて行われた行為によって生じたいかなる結果についても、筆者および公開元は一切の責任を負いません。

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