コンジローマ(尖圭コンジローマ)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染によって引き起こされる性感染症の一つです。特に男性の場合、陰茎や陰嚢、肛門周辺などにイボのような病変が現れるのが特徴です。
見た目の変化を伴うことが多いため、気づいて不安を感じる方も少なくありません。
この記事では、男性のコンジローマの症状、原因、感染経路、潜伏期間、診断方法、治療法、予防策、そして再発防止について詳しく解説します。
もしこの記事を読んで、ご自身の症状が当てはまるかもしれない、と少しでも感じられたら、一人で悩まず専門の医療機関にご相談ください。
コンジローマ(尖圭コンジローマ)とは?
コンジローマ(尖圭コンジローマ)は、主に性行為によって感染する性感染症です。
原因となるのは、多種多様な型が存在するヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、特にHPVの6型や11型といった「低リスク型」と呼ばれるタイプです。
これらのウイルスに感染すると、性器やその周辺、肛門周辺の皮膚や粘膜に、特徴的なイボ状の病変ができます。
コンジローマは、感染症法の5類定点把握対象疾患として報告されており、特徴的な臨床症状による診断が行われています[IDWR]。
[厚生労働省の資料] によると、HPV6型または11型を主因とし、性器周辺に生じる乳頭状・鶏冠状病変がコンジローマの正式な医学的定義とされています。
コンジローマはがん化のリスクが低い「低リスク型HPV」によるものですが、同じHPVの中には子宮頸がんや肛門がん、陰茎がんなどの原因となる「高リスク型」も存在します。
コンジローマと診断された場合は、他の性感染症の可能性も考慮し、専門の医療機関で適切な検査と診断を受けることが重要です。
男性コンジローマの主な症状・見た目
男性のコンジローマで最も特徴的なのは、性器やその周辺、肛門周囲にできるイボです。
このイボの見た目や症状は、時間経過や個人によって異なります。
男性器や肛門周囲にできるイボが特徴
コンジローマの典型的な症状は、皮膚や粘膜にできる小さな盛り上がり、つまり「イボ」です。
最初は非常に小さく、ほとんど気づかないこともありますが、時間が経つにつれて数が増えたり、大きくなったりすることがあります。
これらのイボは、触るとザラザラしていたり、柔らかかったりします。
多くのコンジローマのイボは痛みを伴いません。
しかし、場所によっては、かゆみや、下着や衣服で擦れた際の軽い出血が見られることもあります。
また、尿道の中にできた場合は、排尿時の違和感や出血につながる可能性もあります。
イボの形状・大きさ・色
コンジローマのイボの見た目は多様ですが、代表的な形状は以下の通りです。
- 単発の小さな盛り上がり: 最初は点のような小さな盛り上がりです。
- 集合して大きくなる: 小さなイボが集まって、塊状になることがあります。
- カリフラワー状、ニワトリのトサカ状: 特徴的な見た目で、ボコボコとした表面を持ち、まるでカリフラワーやニワトリのトサカのように見えることがあります。
- 平坦な盛り上がり: 明確なイボ状ではなく、皮膚の色調が少し変化したり、少し盛り上がったりするだけのタイプもあります。
イボの大きさは、初期には1mm程度の非常に小さいものですが、放置すると数cm、時にはそれ以上に大きくなることもあります。
色は、周囲の皮膚の色に近い肌色、ピンク色、茶色、黒っぽい色など様々です。
通常、痛みやかゆみはありませんが、二次感染を起こしたり、刺激を受けたりすると、炎症を起こして赤みを帯びたり、痛みやかゆみが出たりすることもあります。
[東京都福祉保健局の情報] でも、男女別の症状特徴が解説されており、男性器や肛門周辺のイボが主な症状であることが述べられています。
発生しやすい具体的な部位
男性のコンジローマは、HPVが感染しやすい湿った粘膜や皮膚の柔らかい部分によく発生します。
主な発生部位は以下の通りです。
- 陰茎(ペニス): 特に亀頭、亀頭の付け根(冠状溝)、包皮の内側などによく見られます。包茎の方は、湿度が高く清潔に保ちにくいため、コンジローマができやすい傾向があります。
- 陰嚢(睾丸の袋): 皮膚が柔らかいため、できることがあります。
- 肛門および肛門周辺: アナルセックスの経験があるかどうかにかかわらず、発生することがあります。特に、肛門のひだの間や、肛門の入口付近によく見られます。
- 尿道口: 尿道の出口部分にイボができることがあり、排尿時の不快感や出血の原因となることがあります。
- 太ももの付け根(鼠径部): 性器に近い部分にできることがあります。
これらの部位以外にも、口の中や喉などにできる可能性もゼロではありませんが、比較的稀です。
複数の部位に同時に発生することも珍しくありません。
自分で確認しにくい場所(肛門や尿道内など)にもできることがあるため、気になる症状がある場合は専門医による確認が不可欠です。
男性コンジローマの原因と感染経路
コンジローマの原因は特定のウイルス感染であり、その主な感染経路も限定されています。
原因と感染経路を正しく理解することは、予防や拡大防止のために重要です。
原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染
コンジローマを引き起こす直接の原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染です。
HPVは非常にありふれたウイルスで、100種類以上の型があり、皮膚や粘膜に感染します。
コンジローマの原因となるのは、主にHPVの6型と11型です。
これらの型は皮膚のイボ(尋常性疣贅)も引き起こすことがありますが、性器や肛門周囲に特異的な病変(尖圭コンジローマ)を作るのは主にこれらの型です[厚生労働省の資料]。
HPVは非常に小さく、目に見えないため、感染経路を特定するのは難しい場合があります。
また、感染してもすぐに症状が出るわけではなく、ウイルスが体内に潜伏する期間があるため、いつ、どこで感染したかを正確に判断することは困難です。
主な感染経路は性行為(性交類似行為含む)
コンジローマの最も一般的な感染経路は、性行為です。
ここでの性行為には、性器同士の接触だけでなく、オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)を含む性交類似行為も含まれます。
イボがある部分や、ウイルスが付着した皮膚・粘膜が、相手の皮膚・粘膜と直接接触することでウイルスがうつります。
イボそのものからの感染力が最も高いと考えられていますが、目に見えるイボがなくても、ウイルスが皮膚や粘膜に存在しているだけで感染させる可能性があります(無症状のキャリア)。
そのため、パートナーに症状がないからといって、感染のリスクがないわけではありません。
性行為以外の感染リスクはある?
性行為以外の経路での感染リスクは極めて低いと考えられています。
例えば、温泉やプール、公衆浴場、サウナの利用、タオルの共有、下着の共有などでコンジローマに感染する可能性はゼロではありませんが、医学的には稀なケースとされています。
小児のコンジローマ症例において、性感染症以外の感染経路(皮膚型HPVなど)の可能性が示唆される学術論文も報告されていますが[関連学術論文]、成人においてはほとんどが性行為によると考えられます。
HPVは乾燥に弱く、皮膚から離れた環境で長時間生存することは難しいウイルスです。
また、性器や肛門周囲以外の皮膚はウイルスが定着しにくいため、これらの経路での感染は非常に起こりにくいと考えられています。
したがって、コンジローマのほとんどのケースは性行為による感染と考えられます。
男性コンジローマの潜伏期間と初期症状
コンジローマに感染しても、すぐに症状が現れるわけではありません。
ウイルスが体内で増殖し、目に見えるイボになるまでには時間がかかります。
潜伏期間は数週間〜数ヶ月と幅広い
コンジローマの潜伏期間は、感染してから症状(イボ)が現れるまでの期間を指します。
この期間は個人差が非常に大きく、短い場合は数週間、長い場合は数ヶ月、時には1年以上ということも珍しくありません。
平均的には、感染から2〜3ヶ月で症状が現れることが多いとされています。
潜伏期間が長いことから、過去のいつの性行為で感染したかを特定するのは困難な場合がほとんどです。
パートナーに症状が出たからといって、必ずしも直近の性行為が原因であるとは限りません。
初期は自覚症状がない(無症状)ことも多い
コンジローマの初期症状は、非常に小さないぼであるため、自覚症状がない、あるいはほとんど気づかないことが多いです。
- 小さすぎて見えない
- 痛みやかゆみが全くない
- 自分で確認しにくい場所(肛門内、包皮の裏など)にできている
といった理由で、初期段階では感染に気づかないまま過ごしてしまうケースが多く見られます。
パートナーから指摘されて初めて気づいたり、他の目的で受診した際に偶然発見されたりすることもあります。
イボが大きくなったり数が増えたりすると、見た目の変化で気づきやすくなります。
また、その頃になると、下着との摩擦や、掻いてしまったりすることで、かゆみや軽い痛み、出血といった症状が現れることもあります。
しかし、基本的に痛みの少ない病変であることが、発見を遅らせる要因の一つとも言えます。
コンジローマの診断・検査方法【男性】
コンジローマが疑われる症状がある場合、正確な診断のためには医療機関を受診することが不可欠です。
自己判断は難しく、見た目が似ている他の病気との区別が必要です。
自己診断は難しい、専門家への相談が重要
男性器や肛門周囲にできたイボを見て、「これはコンジローマではないか?」と不安になる方は多いでしょう。
しかし、これらの部位にできるイボ状の病変は、コンジローマ以外にもいくつかあります。
例えば、生まれつきの生理的なもの(真珠様陰茎小丘疹、フォアダイスなど)や、他の原因による皮膚疾患(伝染性軟属腫(水いぼ)、毛嚢炎、粉瘤など)、さらには悪性腫瘍(がん)の可能性もごく稀にあります。
見た目だけでコンジローマであると自己判断するのは非常に危険であり、診断を誤る可能性があります。
また、他の性感染症を併発している可能性も考慮する必要があります。
したがって、性器や肛門周辺に気になるイボやできものを見つけたら、必ず泌尿器科、皮膚科、または性感染症科などの専門医療機関を受診し、医師の診断を受けるようにしましょう。
[東京都福祉保健局] も医療機関受診を強く推奨しています。
医療機関での視診・ダーモスコピー検査
医療機関では、まず医師が問診を行い、症状が現れた時期や性行為の状況などを確認します。
次に、病変部位を視診(目で見て確認)します。
コンジローマに特徴的なカリフラワー状やニワトリのトサカ状のイボであれば、視診だけでコンジローマと診断されることも多いです[IDWR]。
より詳しく病変を観察するために、ダーモスコピー検査が行われることがあります。
これは、ダーモスコープと呼ばれる拡大鏡と特殊な光を使って皮膚の表面や内部構造を詳細に観察する検査です。
コンジローマに特徴的な血管パターンなどが見られることがあり、診断の精度を高めるのに役立ちます。
また、酢酸を塗布して白く変色するかを確認する酢酸白変テストが行われることもあります。
コンジローマの病変は、酢酸を塗布すると白く見えることがありますが、このテストは偽陽性や偽陰性もあるため、補助的な検査として行われることが多いです。
組織検査(生検)やHPV型判定検査
視診やダーモスコピー検査で診断が確定できない場合や、病変の見た目が非典型的で悪性腫瘍(がん)などの他の病気の可能性が否定できない場合には、組織検査(生検)が行われます。
これは、病変の一部を小さく切り取って採取し、顕微鏡で詳しく調べる病理検査です。
この検査によって、コンジローマであるか、あるいは他の病気であるかを確定診断することができます。
また、がん化していないかどうかも確認できます。
さらに、原因となっているHPVの型を特定するためにHPV型判定検査が行われることもあります。
これは、病変部の細胞を採取して、ウイルスの遺伝子を調べる検査です。
コンジローマの原因となる低リスク型(6型, 11型など)か、それともがんのリスクが高い高リスク型(16型, 18型など)かを調べることができます。
特に、見た目が非典型的な病変や、再発を繰り返すケースなどで、診断や今後の治療方針の決定に役立つことがあります。
検査方法 | 目的・内容 | 特徴・補足 |
---|---|---|
視診 | 病変の見た目を確認し、コンジローマに特徴的な形状か判断する。 | 医師が直接目で見て診断する基本的な検査。典型的な病変なら視診で診断できることが多い。 |
ダーモスコピー検査 | ダーモスコープで病変を拡大観察し、コンジローマに特徴的な構造を確認する。 | 視診だけでは判断が難しい場合に補助的に行う。痛みを伴わない。 |
酢酸白変テスト | 酢酸を塗布し、病変が白く変色するか確認する。 | コンジローマが白く変色することがあるが、偽陽性・偽陰性があり、診断の確定には至らない補助検査。刺激を感じる場合がある。 |
組織検査(生検) | 病変の一部を採取し、顕微鏡で細胞組織を詳しく調べる。 | 確定診断に最も有効な検査。他の病気(がんなど)との鑑別にも重要。局所麻酔が必要となる場合がある。 |
HPV型判定検査 | 原因となっているHPVの型(低リスク型/高リスク型)を特定する。 | ウイルス遺伝子を調べる。今後のリスク評価や治療方針の参考に。診断確定後の補助検査として行うことが多い。 |
これらの検査を組み合わせて、医師が総合的に診断を行います。
自己判断せず、専門家による正確な診断を受けることが、適切な治療への第一歩です。
[東京都福祉保健局の情報] にも、検査や治療方法について記載があります。
男性コンジローマの治療法
コンジローマと診断された場合、治療の目的は、目に見えるイボを除去し、症状を改善することです。
残念ながら、体内に潜伏しているウイルスを完全に排除する治療法は現在のところありませんが、イボを除去することで見た目の改善や感染拡大の防止につながります。
[東京都福祉保健局の情報] でも治療方法について触れられています。
ウイルスを排除するための治療ではない
コンジローマの治療は、あくまでも皮膚や粘膜に現れた「イボ」を取り除くことが目的です。
治療によってイボが消失しても、原因ウイルスであるHPVが体の組織(皮膚や粘膜の細胞)の中に潜伏している可能性が高いです。
そのため、治療後もしばらくしてから再びイボが現れる「再発」のリスクがあります。
治療によってウイルスを完全に排除することはできませんが、イボを除去することで、見た目の悩みが解消されるだけでなく、イボの数が増えたり大きくなったりするのを防ぎ、さらに性行為を通じてパートナーに感染させるリスクを低減させることができます。
外用薬による治療法
比較的小さいイボや、広範囲にイボがある場合に選択されるのが、外用薬を用いた治療法です。
患者さん自身が自宅で塗布できるため、通院の負担が少ないというメリットがあります。
- イミキモドクリーム(商品名:ベセルナクリームなど): 免疫賦活作用を持つ薬剤で、塗布することで体内の免疫細胞を活性化させ、ウイルスに感染した細胞を排除する働きを助けます。
通常、週に3回(例:月・水・金曜日の夜)就寝前に塗布し、翌朝洗い流します。
治療期間は数週間から数ヶ月に及ぶことがあります。
効果が出るまでに時間がかかりますが、イボの再発率が比較的低いという報告があります。
塗布した部位に炎症、赤み、かゆみ、ただれなどの副作用が出ることがあります。 - ポドフィロトキシンドクリーム: ウイルスが増殖する細胞の分裂を阻害する薬剤です。
通常、1日2回、3日間塗布し、その後4日間休薬、というサイクルを繰り返します。
治療期間はイミキモドクリームより短いことが多いですが、副作用として塗布部位の強い炎症やただれが出やすい傾向があります。
妊娠中の女性には使用できません。
日本では現在、医師の処方箋が必要な外用薬としてはイミキモドクリームが主流です。
外用薬治療は自宅で手軽に行える反面、効果が出るまでに時間がかかること、塗布部位の皮膚トラブルが起こりやすいこと、イボが大きい場合や硬い場合には効果が期待しにくいといったデメリットもあります。
使用方法を誤ると重篤な副作用につながることもあるため、必ず医師の指示に従って正しく使用することが重要です。
外科的治療(切除、冷凍凝固、レーザーなど)
イボが大きい場合、数が多い場合、外用薬で効果が見られない場合、あるいは迅速な治療を希望する場合などには、外科的な治療法が選択されます。
これらの治療は医療機関で行われ、比較的短期間でイボを除去できるというメリットがあります。
外科的治療の主な種類は以下の通りです。
- 液体窒素による冷凍凝固術: 非常に冷たい液体窒素をイボに当てて凍結させ、細胞を壊死させる方法です。
数回繰り返すことでイボが脱落します。
麻酔なしで行える場合が多いですが、治療時に痛みやしみる感じがあり、治療後にも水ぶくれや痛みが起こることがあります。
比較的簡便な方法ですが、イボが大きい場合や、深い部分にウイルスが潜んでいる場合は再発しやすいことがあります。 - 電気焼灼術: 電気メスなどを用いて、イボを焼き切る方法です。
局所麻酔をしてから行われるため、治療中の痛みはありません。
イボを根元から焼き切るため、再発率は比較的低いとされています。
ただし、治療部位に傷跡が残ることがあります。 - 炭酸ガスレーザー蒸散術: レーザーを照射してイボを蒸発させて取り除く方法です。
電気焼灼術と同様に局所麻酔をしてから行います。
出血が少なく、細かい作業が可能ですが、広範囲の治療には時間がかかります。
治療部位に傷跡が残る可能性があります。 - 切除術: メスでイボを切り取る方法です。
局所麻酔をしてから行います。
比較的大きないぼや、他の治療法で効果がない場合に選択されることがあります。
病変を完全に切除するため、再発率は低い傾向がありますが、縫合が必要となる場合があり、傷跡も残ります。
治療法 | 方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
外用薬(イミキモド) | 自宅で塗布(週3回) | 通院負担が少ない、比較的再発率が低い可能性 | 効果が出るまで時間、皮膚炎、即効性なし |
外用薬(ポドフィロ) | 自宅で塗布(週5日間) | イミキモドより短期間で効果 | 皮膚炎が起こりやすい、即効性なし |
冷凍凝固術 | 液体窒素で凍結壊死させる | 簡便、麻酔不要の場合が多い | 痛み、水ぶくれ、再発しやすい可能性、複数回必要 |
電気焼灼術 | 電気メスで焼き切る | 即効性、比較的再発率低い | 局所麻酔必要、傷跡、痛み |
レーザー蒸散術 | レーザーで蒸発させる | 即効性、出血少ない、細かい作業が可能 | 局所麻酔必要、傷跡、広範囲には不向き |
切除術 | メスで切り取る | 確実な除去、再発率低い | 局所麻酔必要、傷跡、縫合が必要な場合がある |
どの治療法を選択するかは、イボの大きさ、数、部位、患者さんの希望などを考慮して医師が判断します。
複数の治療法を組み合わせて行う場合もあります。
自然治癒は期待できる?
コンジローマが自然に治癒する可能性は非常に低いと考えられています。
免疫力が十分に働き、ウイルスを抑え込むことができれば、理論上は自然にイボが消えることもあり得ますが、実際にはイボが自然に消失するケースは稀です。
むしろ、放置しておくとイボがどんどん大きくなったり、数が増えて広がったりする可能性が高いです。
また、見た目の悪化だけでなく、不快な症状(かゆみ、出血など)が現れたり、治療がより難しくなったり、パートナーへの感染リスクを高めたりすることにつながります。
したがって、コンジローマが疑われる症状に気づいたら、「そのうち治るだろう」と自己判断せず、必ず医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが強く推奨されます。
コンジローマの予防と再発防止
コンジローマは性感染症であるため、予防が非常に重要です。
また、一度治療しても再発するリスクがあるため、治療後の注意も必要です。
HPVワクチン接種による予防
最も効果的なコンジローマの予防策の一つは、HPVワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン)の接種です。
HPVワクチンには、コンジローマの主な原因となる6型・11型を含む9価ワクチンが存在し、公費接種対象となっています[政府広報オンライン]。
ワクチン接種により、コンジローマだけでなく、子宮頸がんや肛門がんなど、他のHPV関連疾患の原因となる型の感染も予防できます。
日本では現在、小学校6年生から高校1年生相当の女子を対象とした定期接種がありますが、男性も任意接種としてHPVワクチンを接種することが可能です。
男性がHPVワクチンを接種することで、自身がコンジローマや陰茎がん、肛門がんなどになるリスクを減らせるだけでなく、性行為によってパートナー(特に女性)にHPVを感染させてしまうリスクも低減させることができます。
特に、性行為の経験がないうちに接種することが、最大の予防効果を得るために推奨されています。
性行為時の注意点とコンドームの効果
性行為における感染リスクを低減するためには、いくつかの注意点があります。
- コンドームの使用: コンドームは性行為における様々な性感染症の予防に有効であり、コンジローマの感染リスクも低減させることができます。
ただし、コンドームが覆いきれない範囲(陰嚢や肛門周辺など)にイボがあったり、ウイルスが存在したりする場合は、コンドームを使用しても完全に感染を防ぐことはできません。 - 不特定多数との性行為を避ける: 性行為のパートナーが多いほど、HPVに感染するリスクは高まります。
不特定多数との性行為は避けることが、感染リスクを減らす上で重要です。 - パートナーとのコミュニケーション: パートナーとの間で性感染症について話し合い、お互いの健康状態を把握することも大切です。
- 皮膚や粘膜に傷がある場合の性行為に注意: 皮膚や粘膜に傷がある状態では、ウイルスが侵入しやすくなる可能性があります。
これらの注意点を実践することで、感染リスクを下げることができますが、完全にゼロにすることは難しいのが現状です。
治療後の再発リスクと経過観察
コンジローマは治療によってイボが除去されても、原因ウイルスが体内に潜伏しているため、再発のリスクがあります。
特に、治療後数ヶ月以内での再発が多く見られます。
免疫力が低下している場合などに再発しやすい傾向があります。
再発に早期に気づき、再度治療を開始するためには、治療後も一定期間、定期的な経過観察を行うことが重要です。
通常、治療後数ヶ月から半年程度は、数週間〜数ヶ月に一度の頻度で医療機関を受診し、再発していないか医師に確認してもらうことが推奨されます。
自己判断せずに医師の指示に従って通院しましょう。
また、再発防止のためには、体調を整え、免疫力を維持することも大切です。
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理などを心がけましょう。
コンジローマに関するよくある質問(FAQ)
コンジローマについて、多くの方が疑問や不安を感じる点についてお答えします。
相手に症状がなくても感染しますか?
はい、感染する可能性はあります。
HPVは、目に見えるイボがなくても、感染者の皮膚や粘膜に存在しているだけで感染力を持つことがあります。
また、コンジローマには数週間から数ヶ月、長い場合は1年以上の潜伏期間があるため、感染していてもまだ症状が出ていない(無症状)パートナーから感染することもあります。
そのため、「相手にイボがないから大丈夫」と過信することはできません。
男性コンジローマの写真を参考にしても良いですか?
インターネットなどで男性コンジローマの写真を参考にすることは、ご自身の症状がコンジローマかもしれないと気づくきっかけになるかもしれません。
しかし、写真だけで自己診断することは危険です。
前述の通り、コンジローマと似た見た目の他の皮膚疾患はたくさんあります。
写真と見比べて「違うようだ」「似ているからコンジローマだ」と自己判断せず、必ず専門の医療機関を受診し、医師による診断を受けてください。
正確な診断には、医師の視診や必要に応じた検査が不可欠です。
[東京都福祉保健局] の情報でも、医療機関受診の重要性が強調されています。
イボがなければ感染の心配はありませんか?
イボがなくても感染している可能性はあります。
コンジローマの原因であるHPVに感染しても、イボが全くできない(無症状のキャリア)、あるいは非常に小さすぎて気づかない、自分で確認できない場所にできている、ということがあります。
また、感染していてもまだ潜伏期間中でこれからイボが現れる段階である可能性もあります。
性感染症について心配がある場合は、症状の有無にかかわらず、検査を受けることを検討しても良いでしょう。
一度感染したら一生治らない病気ですか?
コンジローマの治療によって、目に見えるイボは除去できます。
しかし、原因ウイルスであるHPVが体の細胞の中に潜伏している可能性は残ります。
この意味では、「ウイルスが体内から完全に消える」という意味での「完治」は難しい場合が多いです。
ただし、多くの場合は時間とともに体の免疫力がウイルスを抑え込み、イボの再発がなくなるなど、病気の状態としては「治癒」したと言えるようになります。
免疫力がウイルスをコントロールできれば、再発することなく過ごせる可能性は十分にあります。
しかし、免疫力が低下した際などに再びイボが現れる(再発する)リスクは、治療後も一定期間残ると考えられます。
治療中は性行為をしても大丈夫ですか?
コンジローマの治療中は、性行為を控えることが推奨されます。
- パートナーへの感染リスク: 治療中の病変部位は、ウイルスがまだ存在しており、感染力が高い状態です。
性行為によってパートナーにウイルスをうつしてしまう可能性が高いです。 - 治療部位への刺激: 性行為によって治療中のデリケートな部位が刺激され、痛みや炎症が悪化したり、治癒が遅れたりする可能性があります。
特に外用薬を使用している場合や、切除・焼灼などの外科的治療を受けた直後は、治療部位が敏感になっています。
イボが完全に消失し、医師から性行為を再開しても良いという許可が出るまでは、性行為を控えるようにしましょう。
パートナーへの配慮も忘れずに行うことが大切です。
気になる症状があれば専門の医療機関へご相談を
男性コンジローマは、性行為によって感染するHPVが原因で、性器や肛門周囲にイボができる病気です。
イボの見た目は多様で、初期には自覚症状がないことも多いため、ご自身で判断するのは難しい場合があります。
また、見た目が似ている他の病気との鑑別や、他の性感染症の併発の可能性も考慮する必要があります。
もし、陰茎、陰嚢、肛門周辺などに「いつもと違うな」「何かできものができた」といった気になる症状を見つけたら、「どうしよう」「恥ずかしい」と一人で悩んだり、自己判断したりせず、必ず専門の医療機関を受診してください。
泌尿器科、皮膚科、性感染症科などで診察を受けることができます。
[東京都福祉保健局] の公式サイトでも、医療機関受診を強く推奨しています。
専門医による正確な診断を受けることが、適切な治療への第一歩です。
治療によってイボを除去し、見た目の悩みを解消し、感染の拡大や再発のリスクを低減することができます。
この記事の情報は一般的な医学的知識に基づくものであり、個々の症状や状況に対する診断や治療方針を示すものではありません。
ご自身の体調や症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。
【免責事項】
本記事で提供する情報は、コンジローマに関する一般的な知識を解説することを目的としており、特定の症状に対する診断や治療を推奨するものではありません。
医学的診断、治療、および個別の健康問題については、必ず医療機関の医師にご相談ください。
本記事の情報によって生じたいかなる損害についても、筆者および公開者は一切の責任を負いません。