男性のトリコモナス症状とは?無症状でも要注意!放置リスクと検査

男性トリコモナス感染症は、トリコモナス原虫という非常に小さな微生物が尿道などに寄生することで起こる性感染症(STI)の一つです。世界中で広くみられ、比較的頻度の高いSTIとして知られています。
しかし、男性の場合、特徴的な症状が現れにくいことが多く、感染に気づかないまま過ごしている方も少なくありません。「トリコモナス 症状 男」と検索されているあなたは、ご自身の体調やパートナーの状況に不安を感じているのではないでしょうか。
この記事では、男性のトリコモナス感染症について、無症状が多い理由から、もし症状が出た場合の具体的なサイン、感染経路、正しい検査方法と治療法、そして放置することで起こりうるリスクまで、詳しく解説します。この情報が、あなたの不安解消と適切な行動につながる一助となれば幸いです。

目次

男性トリコモナス感染症の症状|無症状が多いって本当?

男性がトリコモナス原虫に感染した場合、多くが無症状で経過すると言われています。これは女性のトリコモナス感染症が、かゆみや悪臭を伴うおりものなど、比較的特徴的な症状を示すことが多いのとは対照的です。そのため、男性は自分が感染していることに気づかず、知らず知らずのうちにパートナーに感染させてしまう「感染源」となるケースが少なくありません。

無症状で経過することが多い男性のトリコモナス

男性のトリコモナス感染において、無症状の割合は非常に高いとされています。具体的な統計によって差はありますが、報告によっては感染者の70%から80%以上が無症状であるとも言われています。

[18-59歳の男性のトリコモナス陽性率は0.49%だったという報告もあります。(参照: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29893808/)]

なぜ男性は無症状が多いのでしょうか? その理由はいくつか考えられます。一つは、トリコモナス原虫が主に寄生する場所の違いです。女性の場合、原虫は膣や子宮頸部に寄生しやすく、これらの部位は粘液が多く、原虫が定着しやすい環境です。炎症が起こりやすく、かゆみや分泌物といった症状が出やすい傾向があります。一方、男性の場合、トリコモナス原虫は主に尿道に寄生します。尿道は女性の膣に比べて構造が単純で、排尿によって原虫が洗い流されやすい環境です。また、前立腺液など男性特有の分泌物によって、原虫の増殖が抑制される可能性も指摘されています。

さらに、男性の免疫システムが原虫に対して比較的速やかに反応し、増殖を抑え込むことができる場合があることも、無症状で経過する一因と考えられています。ただし、これは原虫が完全に排除されるわけではなく、体内に少量が存在し続け、感染力を維持している状態であることが多いです。無症状であっても、トリコモナス原虫は体内に存在し、性行為によってパートナーに感染させる可能性があります。特に女性は感染すると症状が出やすいことが多いため、男性が無症状のままパートナーに感染させ、パートナーの症状で感染が発覚するというケースも珍しくありません。そのため、男性にとってトリコモナス感染症は「サイレントインフェクション(静かなる感染)」と呼ばれることもあります。

[特定の集団では感染率が高い傾向も見られます。例えば、喫煙者、HSV-2感染者、若年での性行為開始、コンドーム使用率の低さ、生涯の性パートナー数の多さなどが男性のトリコモナス感染と関連があるという報告があります。(参照: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29893808/)]

症状がある場合の具体的なサイン

無症状が多い男性トリコモナス感染症ですが、もちろん全く症状が出ないわけではありません。症状が現れる場合は、主に尿道炎の形で現れることが多いです。症状が出始めるまでの潜伏期間は、感染機会から数日~2週間程度が多いですが、さらに長いこともあります。症状の程度は個人差が大きく、軽い違和感程度で済むこともあれば、比較的はっきりとした症状が出ることもあります。

症状がある場合に注意すべき具体的なサインは以下の通りです。

排尿時の痛みや違和感

排尿している最中、あるいは排尿の開始時や終了時に、尿道に軽い痛みや灼熱感(ヒリヒリするような感覚)を感じることがあります。これは、トリコモナス原虫が尿道粘膜に炎症を引き起こしているためです。痛みの程度は、我慢できないほどの激しい痛みというよりは、軽い痛みや違和感として感じられることが多い傾向があります。排尿が終わった後も、尿道に何かが残っているような、すっきりしない感覚やむずかゆさを感じることもあります。

尿道からの分泌物(膿)

尿道から分泌物、いわゆる「膿(うみ)」が出ることがあります。分泌物の性状は、クラミジアや淋病による尿道炎に比べると比較的少ない傾向がありますが、透明や白っぽいものから、黄色がかったり、時には泡立っていたりすることもあります。分泌物の量も少量であることが多く、下着にわずかに付着する程度だったり、朝起きた時に尿道の出口にかさぶたのように固まっているのを見つける程度だったりします。匂いについては、トリコモナス感染では特徴的な悪臭を伴うことは稀です。(女性のトリコモナス膣炎では悪臭を伴うことが多いです。)

陰茎の痒みや灼熱感

尿道だけでなく、陰茎の先端、特に亀頭やその周辺に痒みや灼熱感を感じることがあります。痒みは持続的なこともあれば、時々強く感じることもあります。亀頭が赤みを帯びたり、軽い腫れを伴ったりすることもあります。これは、尿道から分泌された炎症物質が亀頭部に付着したり、亀頭自体に炎症が広がったりすることで起こると考えられます。

その他稀な症状

男性トリコモナス感染症が進行したり、他の部位に広がったりした場合、より重い症状が現れることも稀にあります。これらは放置した場合のリスクと関連することも多いですが、初期症状として現れる可能性もゼロではありません。

  • 前立腺炎: トリコモナス原虫が尿道から前立腺に侵入し、炎症を起こすことがあります。この場合、排尿時の痛みや頻尿、残尿感といった症状に加えて、下腹部や会陰部(陰嚢と肛門の間)の不快感や痛み、射精時の痛みなどを感じることがあります。
  • 精巣上体炎: さらに奥、精巣の横にある精巣上体にまで炎症が及ぶと、陰嚢の腫れや痛み、発熱といった症状が出ることがあります。これは比較的強い痛みを伴うことが多く、緊急性が高い場合があります。
  • 亀頭炎: 前述のように、亀頭の赤み、腫れ、かゆみ、痛みといった症状が出ることがあります。

これらの症状は、トリコモナス感染以外の原因(他の性感染症、細菌感染、アレルギーなど)でも起こりうるため、自己判断は危険です。上記のような症状に心当たりがある場合は、放置せずに必ず医療機関を受診し、原因を特定するための検査を受けることが重要です。

トリコモナス感染の原因と主な経路

トリコモナス原虫は、特定の環境下で生存できる微生物です。ヒトへの感染経路は限られており、そのほとんどが性行為によるものです。

性行為による感染がほとんど

男性がトリコモナスに感染する最も主要かつ現実的な経路は、トリコモナスに感染しているパートナーとの性行為です。具体的には、膣分泌物や精液、尿道分泌物などに含まれるトリコモナス原虫が、性器の粘膜同士の接触によって移動し、感染が成立します。

  • 膣性交: トリコモナスに感染した女性との膣性交が、男性が感染する最も一般的な経路です。
  • オーラルセックス、アナルセックス: これらの行為による感染リスクは、膣性交に比べて低いと考えられていますが、粘膜の接触がある限り可能性は否定できません。特に、アナルセックスでは、尿道に原虫が付着する機会が生まれる可能性があります。
  • コンドームの使用: コンドームはトリコモナスの感染リスクを減らすために有効な手段の一つです。ただし、コンドームで覆われていない部分の接触による感染リスクはゼロではありません。適切な使用が重要です。

男性が無症状で感染している場合でも、性行為によってパートナー(特に女性)にトリコモナス原虫をうつしてしまう可能性があります。そのため、自分が感染しているかどうかが不明な場合や、新たなパートナーとの性行為を行う際には、感染予防策を講じることが非常に重要になります。

性行為以外の感染リスク(風呂、タオルなど)

以前は、浴槽、タオル、下着、便座などを介した性行為以外の感染経路についても言及されることがありました。しかし、現在では、これらの経路でトリコモナスに感染する可能性は極めて低いと考えられています。

その理由は、トリコモナス原虫がヒトの体外では比較的短時間しか生存できないこと、そして感染が成立するためにはある程度の数の原虫が粘膜に到達する必要があること、にあります。

  • 体外での生存能力: トリコモナス原虫は、温度や湿度の変化に弱く、乾燥した環境や熱いお湯の中ではすぐに死滅してしまいます。一般的な家庭の浴槽やタオルの環境では、長時間生存し続けることは難しいです。
  • 感染に必要な原虫の量: 微生物による感染症では、病原体が体内に侵入するだけでなく、ある程度の数が存在しないと感染が成立しないことが多いです。性行為による直接的な粘膜接触に比べて、浴槽の残り湯や湿ったタオルなどにわずかに付着した原虫の量では、現実的に感染を引き起こすには不十分であると考えられています。

したがって、一般的な衛生状態が保たれている環境であれば、性行為以外の経路で男性がトリコモナスに感染する可能性は、ほぼ心配する必要はないと言えるでしょう。感染の不安がある場合は、まず性行為による感染の可能性を考慮することが重要です。

男性トリコモナスの検査方法

男性のトリコモナス感染症は無症状が多い性質上、自分が感染しているかどうかを知るためには検査が不可欠です。特に、パートナーがトリコモナスに感染していることがわかった場合や、排尿時の違和感などの症状がある場合は、速やかに検査を受ける必要があります。男性のトリコモナスの主な検査方法には、尿検査と精密検査があります。

尿検査について

男性のトリコモナス検査で最も一般的に行われるのが尿検査です。比較的簡便に行える検査であり、泌尿器科などで受けることができます。

検査では、採取した尿の中にトリコモナス原虫が存在するかどうかを調べます。検査の精度を高めるためには、いくつか注意点があります。

  • 早朝尿または排尿後時間を空けた尿: 理想的には、数時間(可能であれば半日程度)排尿していない状態の、最初の尿(初尿)を採取することが推奨されます。尿道に存在する原虫が尿によって洗い流されずに、検査サンプルに濃縮されている可能性が高まるためです。
  • コップの中間尿: 尿を採取する際は、出始めの尿は捨てて、中間部分の尿をコップに採取することが一般的です。ただし、トリコモナス検査の場合は、初尿(出始めの尿)に原虫が多く含まれている可能性があるため、初尿を採取することもあります。医師の指示に従ってください。

尿検査は手軽ですが、検出感度が他の方法に比べて劣る場合があります。特に無症状で原虫の数が少ない場合や、排尿直後に検査を受けた場合などには、感染していても「偽陰性」(実際は陽性なのに陰性と出る)となる可能性があります。

精密検査(培養法、PCR法)について

尿検査で陰性だった場合や、より確実な診断が必要な場合には、培養法やPCR法といった精密検査が行われることがあります。これらの検査は、尿検査よりも感度が高く、微量の原虫でも検出できる可能性が高いです。

  • 培養法: 尿や尿道からの分泌物を特殊な培地に入れ、トリコモナス原虫が増殖するかどうかを調べる方法です。原虫が生きた状態で存在することを確認できるため、より確実な診断につながります。ただし、結果が出るまでに数日かかるのが一般的です。
  • PCR法: 尿や尿道からの分泌物に含まれるトリコモナス原虫の遺伝子を増幅して検出する方法です。非常に高い感度を持ち、微量の原虫でも検出することが可能です。結果は比較的短時間で得られることが多いです。

どの検査方法を選択するかは、症状の有無、感染の可能性、医療機関の設備などによって医師が判断します。尿道からの分泌物がある場合は、尿道拭い液を採取して検査することもあります。

検査を受けるタイミング

トリコモナス感染の検査を受ける最適なタイミングは、感染の機会があったと思われる日から1〜2週間後が目安となります。これは、トリコモナス原虫が体内で一定数に増殖し、検査で検出できるようになるまでの期間(潜伏期間)を考慮するためです。

  • 症状がある場合: 排尿時の痛みや尿道からの分泌物など、トリコモナス感染が疑われる症状が出ている場合は、症状に気づいたらできるだけ早く医療機関を受診し、検査を受けてください。
  • 症状はないが感染の可能性がある場合: パートナーがトリコモナスに感染していたことが判明した場合や、不特定多数との性行為があった場合など、自覚症状はなくても感染の可能性がある場合は、感染機会から1〜2週間経過した頃に検査を受けることをお勧めします。無症状のまま放置しないことが、ご自身の健康とパートナーへの感染予防のために非常に重要です。

不安なことがあれば、まずは医療機関に相談し、適切な検査についてアドバイスを受けるのが良いでしょう。

男性トリコモナスの治療方法

男性トリコモナス感染症は、適切な治療を受ければ比較的容易に完治させることが可能です。治療の中心は薬物療法であり、同時にパートナーも治療を受けることが非常に重要です。

薬物療法(メトロニダゾールなど)

男性トリコモナス感染症の治療には、主にニトロイミダゾール系の抗菌薬が用いられます。代表的な薬剤はメトロニダゾールチニダゾールです。これらの薬剤は、トリコモナス原虫に対して強い殺菌作用を示します。

治療方法は、通常、内服薬として処方されます。トリコモナスが腟だけでなく尿路などにも感染している可能性があるため、内服薬による全身投与を第一選択とします。例えば、[フラジール内服薬を1回1錠、1日2回を10日間服用する方法などがあります。(参照: fuyukilc.or.jp/column/%E3%80%8C%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%80%8D%E3%81%AE%E4%BD%BF%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%A8%E3%80%9C%E8%85%9F%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%A2%E3%83%8A%E3%82%B9%E7%97%87%E3%81%A8%E7%B0%A6/)]

服用方法や期間は、使用する薬剤の種類や医師の判断によって異なりますが、短期間の治療で済むことが多いです。

薬剤名 一般的な服用方法例 服用上の注意点
メトロニダゾール 1回250mg〜500mgを1日2〜3回、7日間内服 服用期間中はアルコール摂取を厳禁(ジスルフィラム様反応)。吐き気、腹痛、金属様の味覚異常などの副作用がある場合がある。
チニダゾール 1回2gを単回内服、または複数回に分けて内服 服用後24時間以内はアルコール摂取を避ける。吐き気、下痢などの副作用がある場合がある。

(※上記は一般的な例であり、必ず医師の指示に従って服用してください。また、アルコールに関する注意は特に重要です。)

これらの薬剤は、トリコモナス原虫を効果的に死滅させることができます。指示された通りに正確に服用することが、治療成功のために最も重要です。症状が消えたからといって自己判断で服用を中止したり、量を減らしたりすると、原虫が完全に死滅せず、再発したり、他の人にうつしてしまう可能性があります。

治療期間中は、感染拡大を防ぐため、性行為を控えるように指導されることが一般的です。

パートナーも一緒に治療が必要

男性トリコモナス感染症の治療において、最も重要なポイントの一つが「パートナーも同時に治療を受ける」ことです。これは、いわゆる「ピンポン感染」を防ぐためです。

  • ピンポン感染とは: 一方のパートナーが治療を受けて完治しても、もう一方のパートナーが感染したままだと、性行為によって再び感染させてしまうことを指します。卓球のピンポンのように、感染が行ったり来たりすることからこのように呼ばれます。

男性が無症状であっても、性行為のパートナーがトリコモナスに感染している場合、男性も感染している可能性が非常に高いです。逆に、男性が感染している場合、パートナーに感染させている可能性が高いです。

したがって、男性がトリコモナス感染症と診断された場合、性行為のパートナーにもトリコモナス感染の検査・治療を受けるよう強く勧める必要があります。パートナーが女性の場合、症状が出ている可能性が高いですが、男性と同様に無症状であることもあります。症状の有無にかかわらず、すべての性行為のパートナーが同時に検査を受け、必要であれば同時に治療を開始することが、感染の連鎖を断ち切り、双方の完治のために不可欠です。

女性では,感染者の半数が無症状ですが、症状は男性より強いです。症状が出ない場合でも、治療をしないと他の人に感染させることがあります。(参照: hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/seikansensho/knowledge/trichomonas/index.html)

パートナーが医療機関を受診する際には、「パートナーがトリコモナスと診断されたため」と正確に伝えるように促してください。

治療完了後、医師によっては再検査を推奨する場合もあります。これは、治療が成功したかどうか、原虫が完全に排除されたかを確認するためです。再検査の必要性については、治療を受けた医療機関で確認してください。

トリコモナスを放置した場合のリスク

男性トリコモナス感染症は、無症状が多いからといって決して軽視してはいけません。放置してしまうと、様々なリスクが生じる可能性があります。自分自身の健康だけでなく、パートナーや将来の健康にも影響を及ぼすことがあるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。

前立腺炎や精巣上体炎への進行

無症状の男性トリコモナス感染が長期間続くと、原虫が尿道から体の奥、特に前立腺や精巣上体に侵入し、炎症を引き起こす可能性があります。

男性の場合、無症状であることが多いため治療が遅れがちですが、放置すると尿道炎や前立腺炎などに発展する可能性があります。(参照: mycare.or.jp/venereal-disease/trichomonas/)

  • 前立腺炎: 前立腺に炎症が起こると、頻尿、排尿時の痛みや不快感、残尿感、下腹部や会陰部(陰嚢と肛門の間)の痛み、射精時の痛みなどを引き起こすことがあります。慢性前立腺炎になると、これらの症状が長期間続き、生活の質を著しく低下させることもあります。トリコモナスによる前立腺炎は、他の原因による前立腺炎に比べて診断が難しい場合もあり、治療に時間がかかることもあります。
  • 精巣上体炎: 精巣上体に炎症が及ぶと、陰嚢の強い痛み、腫れ、発熱といった症状が現れます。これは急性の場合、非常に強い痛みを伴い、緊急の治療が必要です。放置すると、精巣自体に影響が及んだり、慢性的な痛みが残ったりする可能性も否定できません。

これらの炎症性疾患は、自覚症状がないトリコモナス感染から、より深刻な状態へと進行したサインである可能性があります。

パートナーへの感染リスク

前述の通り、男性が無症状であっても、トリコモナス原虫を性行為によってパートナーに感染させるリスクが常にあります。特に女性はトリコモナスに感染すると症状が出やすいことが多く、かゆみ、悪臭を伴う泡状のおりもの、排尿時の痛みなど、不快な症状に悩まされることになります。

女性では,感染者の半数が無症状ですが、症状は男性より強いです。**悪臭が強いおりもの(魚のような臭い)黄緑色であわ状の大量のおりもの膣のかゆみ外陰部痛性行為の痛み**といった症状が現れることがあります。(参照: hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/seikansensho/knowledge/trichomonas/index.html)

また、女性がトリコモナス膣炎を放置した場合、骨盤内炎症性疾患(PID)のリスクを高める可能性や、妊娠中の場合は早産や低出生体重児のリスクを高める可能性が指摘されています。さらに、トリコモナス感染があることで、HIVを含む他の性感染症にかかりやすくなるという研究報告もあります。

自分が無症状だからといって放置することは、パートナーの健康を危険にさらす行為であり、倫理的にも問題となります。

不妊症への影響(可能性)

男性トリコモナス感染症と不妊症との関連については、まだ研究段階であり、確定的ではありませんが、いくつかの研究で関連性が示唆されています。

トリコモナス原虫が前立腺や精巣上体に感染し、炎症を引き起こすことで、精子の質(運動率や形態など)に影響を与える可能性が指摘されています。また、原虫自体が精子に付着し、運動を阻害する可能性も考えられています。これらの影響が、男性不妊の一因となる可能性が示唆されていますが、どの程度の確率で不妊につながるのか、メカニズムの詳細など、まだ十分に解明されていない部分が多いです。

しかし、将来的に子供を望んでいる方にとっては、わずかでも不妊のリスクがあることは無視できません。トリコモナス感染が判明した場合は、放置せず適切に治療を受けることが、将来の健康や家族計画においても重要であると言えるでしょう。

トリコモナスの予防策

男性トリコモナス感染症は性行為によって感染するため、予防策も他の性感染症と同様のものが基本となります。

  • コンドームの正しい使用: 性行為時にコンドームを最初から最後まで正しく使用することは、トリコモナスを含む多くの性感染症の感染リスクを減らすために有効です。ただし、コンドームで覆われていない部分の接触による感染リスクはゼロではないことを理解しておく必要があります。
  • 不特定多数との性行為を避ける: 性行為のパートナーの数が増えるほど、性感染症に遭遇するリスクは高まります。パートナーの数を限定することが、リスクを低減するための基本的な考え方です。
  • パートナーとのコミュニケーション: 新たなパートナーとの性行為を始める前に、お互いの性感染症の検査歴や健康状態について話し合うことも、リスクを理解し、適切な予防策を講じる上で重要です。
  • 定期的な性病検査: 特に複数のパートナーがいる場合や、リスクの高い行為(コンドームなしでの性行為など)があった場合は、定期的に性感染症の検査を受けることを検討しましょう。早期発見・早期治療は、自分自身の健康維持と他者への感染予防のために非常に重要ですです。無症状でも感染している可能性があるトリコモナスにおいては、特に検査の意義が大きいと言えます。

これらの予防策を実践することで、トリコモナスだけでなく、クラミジア、淋病、梅毒、HIV、ヘルペスなどの他の性感染症のリスクも同時に低減することができます。

男性と女性で異なるトリコモナスの症状

トリコモナス感染症は、男性と女性で症状の現れ方が大きく異なることが特徴です。この違いを知っておくことは、パートナーの感染に気づいたり、自身の無症状感染の可能性を理解したりする上で役立ちます。

特徴 男性トリコモナス感染症 女性トリコモナス感染症
主な寄生部位 尿道(主に)、前立腺、精巣上体など 膣(主に)、子宮頸部、尿道など
症状の有無 無症状で経過することが非常に多い(70-80%以上) 症状が出やすい傾向がある(約50%に症状が出ると言われる)
症状がある場合 尿道炎症状(排尿時の痛み、尿道からの分泌物)、陰茎の痒み、稀に前立腺炎や精巣上体炎の症状 外陰部・膣のかゆみ悪臭を伴う黄色~緑色の泡状の大量のおりもの、性交時の痛み、排尿時の痛みや不快感(尿道炎を合併した場合)
放置リスク 前立腺炎・精巣上体炎への進行、パートナーへの感染、不妊症の可能性(研究中) 骨盤内炎症性疾患(PID)、妊娠合併症(早産、低出生体重児)、他の性感染症への罹患リスク増加、不妊症の可能性(卵管の損傷など)、パートナーへの感染
診断 尿検査、培養法、PCR法 膣分泌物の顕微鏡検査、培養法、PCR法、尿検査
治療 内服薬(メトロニダゾールなど) 内服薬(メトロニダゾールなど)、必要に応じて膣剤
パートナー治療 必須 必須

このように、男性は無症状であることが多いため、自分が感染していることに気づきにくいという点が最大の特徴です。一方、女性は特徴的なおりものやかゆみといった症状が出ることが多いため、比較的感染に気づきやすいと言えます。しかし、女性でも無症状の場合もあります。

だからこそ、パートナーがトリコモナスに感染していたことが判明した場合、男性は症状が全くなくても必ず検査を受け、感染していればパートナーと同時に治療を開始することが極めて重要なのです。

症状や不安があれば専門の医療機関へご相談ください

この記事では、男性トリコモナス感染症について詳しく解説してきましたが、ご自身の症状や状況については、やはり専門家である医師に相談することが最も確実で安全です。

  • どのような場合に医療機関を受診すべきか?
    排尿時の痛み、尿道からの分泌物、陰茎の痒みなどの症状がある場合。
    性行為のパートナーがトリコモナスに感染していると診断された場合。
    心当たりはないが、性感染症にかかっているかもしれないという不安がある場合。
    不特定多数との性行為があったなど、感染リスクのある行為があった場合。
  • 何科を受診すれば良いか?
    男性の場合、性感染症の検査・治療は主に泌尿器科で行われます。性病科を標榜しているクリニックや、性感染症外来を設けている病院もあります。お近くの医療機関をインターネットで検索する際は、「(お住まいの地域) 泌尿器科 性病」「(お住まいの地域) 性病検査 男性」といったキーワードで探すと良いでしょう。
  • 受診する際の注意点
    恥ずかしがらず、症状や感染の可能性がある行為について正直に医師に伝えましょう。正確な情報が、正しい診断と適切な治療につながります。
    内服している薬や持病があれば、必ず医師に伝えてください。
    パートナーの感染が判明して受診する場合は、その旨を伝えましょう。

最近では、性感染症の検査や治療をオンラインで受けられるクリニックも増えています。直接医療機関に行く時間がない方や、対面での受診に抵抗がある方にとっては、オンライン診療も選択肢の一つとなるかもしれません。ただし、オンライン診療が適しているかどうかは、症状の有無や程度、クリニックの方針によって異なりますので、事前に確認が必要です。

大切なのは、症状や不安を放置しないことです。早期に検査を受け、もし感染が判明しても適切な治療を受ければ、トリコモナス感染症は完治します。また、自分だけでなくパートナーの健康も守ることができます。勇気を出して、医療機関のドアを叩いてみましょう。

【まとめ】トリコモナス症状【男性】について知っておくべきこと

男性トリコモナス感染症は、多くの人が無症状で経過するという特徴を持つ性感染症です。しかし、症状がないからといって放置すると、前立腺炎や精巣上体炎といった自分自身の健康問題を引き起こす可能性があるだけでなく、性行為を通じてパートナーに感染させてしまうリスクも常に伴います。特に女性は感染すると症状が出やすいことが多く、放置によるリスクも指摘されています。

この記事では、男性トリコモナスについて以下の点を解説しました。

  • 男性は無症状で経過することが多いが、これは原虫が定着しにくかったり、免疫で抑え込まれたりするためであり、感染力は失われていない。 [18-59歳男性の感染率に関する報告もあります。(参照: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29893808/)]
  • 症状が出る場合は、排尿時の痛みや違和感、尿道からの分泌物、陰茎の痒みなどが主なサインである。稀に前立腺炎や精巣上体炎といった重い症状で現れることもある。
  • 感染経路のほとんどは性行為であり、浴槽やタオルなど性行為以外の経路での感染リスクは極めて低い。
  • 検査は主に尿検査で行われるが、より確実な診断には培養法やPCR法が用いられる。感染機会から1〜2週間経過してから検査を受けるのが目安。
  • 治療はメトロニダゾールなどの内服薬で完治可能である。 [治療には内服薬による全身投与を第一選択とするのが一般的です。(参照: fuyukilc.or.jp/column/%E3%80%8C%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%80%8D%E3%81%AE%E4%BD%BF%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%A8%E3%80%9C%E8%85%9F%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%A2%E3%83%8A%E3%82%B9%E7%97%87%E3%81%A8%E7%B0%A6/)]
  • 最も重要な治療原則は、性行為のパートナーも同時に検査・治療を受けることである。
  • 放置すると、自分自身の炎症性疾患のリスクを高め [(参照: mycare.or.jp/venereal-disease/trichomonas/)]、パートナーの健康を害し [(参照: hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/seikansensho/knowledge/trichomonas/index.html)]、不妊症の可能性(研究中)も否定できない。
  • コンドームの正しい使用や定期的な検査が予防に有効である。
  • 男性と女性では症状の現れ方が大きく異なるが、パートナー間の同時治療は必須である。

もし、あなた自身にトリコモナス感染の可能性がある場合や、何らかの症状がある場合は、迷わず泌尿器科などの専門の医療機関を受診してください。医師の診察を受け、適切な検査と治療を行うことが、あなた自身と大切なパートナーの健康を守るための最善の方法です。不安な気持ちを抱え込まず、一歩踏み出しましょう。

【免責事項】
本記事は、男性トリコモナス感染症に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医学的な診断や治療を推奨・保証するものではありません。個々の症状や状況については個人差がありますので、必ず専門の医療機関を受診し、医師の判断と指導に従ってください。本記事の情報に基づいて行われたいかなる行為についても、当サイトおよび執筆者は責任を負いかねます。

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