接合部型表皮水疱症は、遺伝子の異常によって皮膚が非常に脆くなり、わずかな刺激でも水疱(水ぶくれ)やびらん(ただれ)が生じる病気です。
全身の皮膚だけでなく、口の中や食道、目など、粘膜のある場所にも症状が出ることがあります。
この病気は、生まれつき持っている遺伝子の変化が原因で起こるため、現在の医療では根本的に「治す」ことは難しいとされています。
しかし、適切なケアや治療によって、症状を和らげ、日常生活の質を高めることは十分に可能です。
この記事では、接合部型表皮水疱症について、その基本的な知識から、具体的な症状、原因となる遺伝子のこと、診断方法、病気とどう向き合っていくか(予後や寿命)、そして現在行われている治療や将来への展望について、分かりやすく解説していきます。
お子さんが診断された方、ご家族に患者さんがいる方、あるいはこの病気について詳しく知りたいと考えているすべての方にとって、正確で役立つ情報を提供できれば幸いです。
接合部型表皮水疱症
接合部型表皮水疱症とは
表皮水疱症は、皮膚の最も外側にある「表皮」とそのすぐ下にある「真皮」とのつながりが生まれつき弱く、機械的な刺激(こする、押さえるなど)が加わっただけで皮膚が剥がれて水疱やびらんが生じる遺伝性の病気の総称です。
皮膚の構造を建物に例えるなら、表皮が壁、真皮が土台で、その間をつなぐ接着剤や釘の役割をするタンパク質に異常があることで、壁が土台から簡単に剥がれてしまうような状態と言えます。
表皮水疱症にはいくつかのタイプがあり、皮膚の中でどの層に水疱ができるかによって、大きく以下の4つに分類されます。
表皮水疱症の基本的な分類
表皮水疱症は、水疱が発生する皮膚の層によって主に4つの型に分けられます。
- 単純型表皮水疱症 (Epidermolysis Bullosa Simplex: EBS): 表皮の一番上の層で水疱ができます。比較的軽症のことが多いですが、様々なサブタイプがあります。
- 接合部型表皮水疱症 (Junctional Epidermolysis Bullosa: JEB): 表皮と真皮をつなぐ「基底膜(きていまく)」と呼ばれる層で水疱ができます。このタイプの多くは重症化しやすい傾向があります。
- 栄養障害型表皮水疱症 (Dystrophic Epidermolysis Bullosa: DEB): 真皮の浅い層で水疱ができます。水疱が治った後に瘢痕(傷あと)を残しやすく、指がくっついてしまう(偽合指症)などの症状が見られます。
- キンドラー症候群 (Kindler Syndrome): 複数の層にまたがって水疱ができる特徴を持ちます。皮膚の萎縮や光線過敏症なども見られます。
これらの分類は、皮膚の組織を顕微鏡で観察したり、特定のタンパク質の有無や量を調べたりする検査(免疫染色や電子顕微鏡検査)によって行われます。
どのタイプかによって、原因となる遺伝子や、症状の現れ方、重症度、経過などが大きく異なります。
接合部型表皮水疱症の病型(ヘルリッツ型・非ヘルリッツ型)
接合部型表皮水疱症(JEB)は、さらにその重症度や原因遺伝子によって、大きく2つの病型に分けられます。
- ヘルリッツ型接合部型表皮水疱症 (JEB-Herlitz):
- 最も重症な病型で、新生児期から全身に広範な水疱やびらんがみられます。
- 皮膚だけでなく、口の中、食道、気道、消化管、泌尿器など、全身の粘膜にも重度のびらんが生じやすいのが特徴です。
特に、気道や消化管のびらんが哺乳困難や呼吸困難を引き起こし、生命予後に関わることが多いです。 - ヘルリッツ型は出生直後から広範囲に水疱形成がみられ、粘膜にも強く影響を及ぼすため、摂食困難や呼吸障害を伴うことが多くなりますhttps://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/genetic-diseases2/junctional-epidermolysis-bullosa-herlitz-type/。
- 多くは生後数ヶ月から1年以内に、重い感染症や呼吸不全、全身状態の悪化などにより命を落とすことがあります。
過去の報告では、平均寿命が5.8ヶ月(0.5〜32.6ヶ月の範囲)と極めて短いことが示されていますhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21801158/。 - 原因遺伝子としては、LAMA3、LAMB3、LAMC1(旧称*LAMC2*)などが関与しておりhttps://medlineplus.gov/genetics/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/、これらは基底膜を構成する重要なタンパク質であるラミニン332(旧称ラミニン5)を作るための情報を持っています。
このラミニン332が完全に欠損するか、機能が大きく障害されることで、基底膜が極めて脆くなります。
特にLAMB3遺伝子の変異が最も一般的で、接合部型表皮水疱症全体の約70%の原因となっていますhttps://medlineplus.gov/genetics/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。
- 非ヘルリッツ型接合部型表皮水疱症 (JEB-non-Herlitz):
- ヘルリッツ型に比べて比較的軽症な病型です。
- 水疱やびらんは主に手足や関節部など、摩擦を受けやすい場所に生じやすい傾向があります。
- 全身症状や粘膜症状がヘルリッツ型ほど重篤でないことが多いですが、個人差が大きく、口腔や食道、泌尿器などの粘膜にも症状が出ることがあります。
- 一部の患者さんでは、成人期以降に皮膚がん(扁平上皮癌)を発症するリスクが高いことが知られています。
- 原因遺伝子としては、ヘルリッツ型と同じLAMA3、LAMB3、LAMC1遺伝子の異常の場合もありますが、その異常のタイプが異なり、ラミニン332の機能が一部保たれている場合が多いです。
また、COL17A1遺伝子(これも基底膜の構成要素であるXVII型コラーゲンに関わる)の異常によっても非ヘルリッツ型が生じることがありますhttps://medlineplus.gov/genetics/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。
病型の診断は、臨床症状の重症度、皮膚組織の免疫染色や電子顕微鏡によるラミニン332やXVII型コラーゲンの確認、そして最終的には遺伝子検査によって行われます。
ラミニン332の染色が欠損または著しく減少していることは、ヘルリッツ型JEBの特徴的な所見ですhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21801158/。
正確な病型診断は、予後の予測や適切な治療方針の決定、遺伝カウンセリングを行う上で非常に重要です。
接合部型表皮水疱症の症状
接合部型表皮水疱症の症状は、皮膚にとどまらず、全身の様々な場所に現れることがあります。
特に重症なヘルリッツ型では、全身的なケアが必要となります。
皮膚の脆弱性と水疱・びらん
接合部型表皮水疱症の最も特徴的な症状は、皮膚の極めて強い脆弱性です。
これは、皮膚の表皮と真皮をつなぐ基底膜の構造が遺伝子の異常によって不安定になっているためです。
- わずかな刺激での水疱・びらん: 服を着せる、抱っこする、オムツを替える、医療処置を行うなど、日常生活で当たり前に行われるわずかな摩擦や圧力、テープなどの刺激によって、皮膚が剥がれて水疱やびらんが生じます。
- 広範な症状: 特にヘルリッツ型では、新生児期から全身の皮膚に広範な水疱やびらんがみられます。
非ヘルリッツ型では、手足や関節部など、物理的な力がかかりやすい場所から始まることが多いですが、全身に広がることもあります。
水疱のサイズは様々で、脆く破れやすいため、治りにくい生の湿った部分を残しますhttps://www.skinhealthinfo.org.uk/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/. - 治癒の遅延と瘢痕: できた水疱は破れてびらんとなり、通常よりも治癒に時間がかかります。
治癒しても、色素沈着や萎縮性の瘢痕(傷あと)を残すことがあります。
ただし、栄養障害型のように強い瘢痕収縮や偽合指症を生じることは少ない傾向があります。 - 慢性的な傷: 常にどこかの皮膚に新しい水疱ができたり、びらんが治りにくかったりするため、慢性的な傷の状態が続き、痛みを伴います。
最も問題となる部位は顔と脚であることが多いとされていますhttps://www.skinhealthinfo.org.uk/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。 - 感染のリスク: 広範なびらん部位は、細菌感染の入り口となりやすく、感染を起こすとびらんが悪化したり、発熱などの全身症状が出たりすることがあります。
重症例では、敗血症などの全身感染症が生命を脅かすこともあります。
大きな潰瘍が多発すると、皮膚の感染や炎症反応を繰り返し、皮膚から浸出液と共にタンパク質が喪失し、低栄養、鉄欠乏性貧血を合併することがありますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。
粘膜・その他の臓器の症状
皮膚以外の症状は、特にヘルリッツ型で顕著に現れますが、非ヘルリッツ型でも見られることがあります。
- 口腔: 口の中(頬、舌、歯茎)や唇にも水疱やびらんがよくできます。
これが食事や飲み物を摂る際の強い痛みの原因となります。 - 食道: 食道の粘膜にびらんができると、飲み込むときに痛みを伴ったり(嚥下痛)、食道が狭くなってしまったり(食道狭窄)することがあります。
これにより、哺乳困難や食事量の低下が起こり、栄養不良につながることがあります。 - 呼吸器: 気道(のど、気管、気管支)の粘膜にびらんができると、声がかすれたり、呼吸が苦しくなったり(呼吸困難)することがあります。
特にヘルリッツ型では、気道の重度なびらんが命に関わる主要な原因の一つですhttps://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/genetic-diseases2/junctional-epidermolysis-bullosa-herlitz-type/。 - 眼: まぶたや結膜、角膜にもびらんができることがあります。
これが繰り返されると、角膜が濁ったり、視力障害を引き起こしたりする可能性があります。 - 消化管: 胃や腸にもびらんが生じることがあり、慢性の出血による貧血や、吸収不良による栄養障害の原因となることがあります。
- 泌尿器: 尿道や膀胱にもびらんができることがあり、排尿時の痛みや、まれに尿路の狭窄を引き起こすことがあります。
- 爪: 爪の発育が悪かったり、変形したり、剥がれ落ちたりすることがあります。
正常な場合もありますが、欠損したり、厚くなったり、慢性的に炎症を起こしたりすることがありますhttps://www.skinhealthinfo.org.uk/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。 - 歯: 歯のエナメル質の形成異常が見られることがあります。
- 貧血: 慢性の出血や炎症、栄養不足により、貧血を合併することが多いです。
特に大きな潰瘍による出血や炎症は、低栄養や鉄欠乏性貧血を招くことがありますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。 - 成長障害: 痛みによる食事困難、消化吸収障害、慢性の炎症などにより、体重増加不良や成長遅延が見られることがあります。
これらの全身症状の現れ方や重症度は、病型や個人によって大きく異なります。
特に赤ちゃんや小さなお子さんの場合、症状を自分で伝えられないため、注意深く観察し、適切なケアや治療を行うことが重要です。
新生児では顔、手足などに皮膚欠損が見られる場合もありますhttps://www.skinhealthinfo.org.uk/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。
接合部型表皮水疱症の原因と遺伝
接合部型表皮水疱症は、特定の遺伝子の異常によって引き起こされる遺伝性の病気です。
遺伝子異常による原因
皮膚の表皮と真皮がしっかりと結合するためには、基底膜と呼ばれる層にある様々なタンパク質が重要な役割を果たしています。
接合部型表皮水疱症は、この基底膜を構成したり、その機能に関わったりする特定のタンパク質を作るための遺伝子に異常(病的な変化)が生じることで発症します。
主な原因遺伝子とその働きは以下の通りです。
- LAMB3, LAMA3, LAMC1遺伝子: これらの遺伝子は、基底膜の主要な構成要素であるラミニン332(旧称ラミニン5)というタンパク質を作るための情報を持っています。
ラミニン332は、表皮の細胞(基底細胞)を基底膜に固定する役割を果たしています。
これらの遺伝子の異常により、ラミニン332がうまく作られなかったり、機能しなくなったりすると、表皮が基底膜から剥がれやすくなり、水疱やびらんが生じます。
ヘルリッツ型JEBのほとんどは、これらの遺伝子の重度な異常(タンパク質が全く作られない、あるいは全く機能しないような変異)によって起こります。
特にLAMB3遺伝子の変異がJEB全体の約70%を占め、最も一般的ですhttps://medlineplus.gov/genetics/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。
非ヘルリッツ型JEBの一部は、これらの遺伝子の比較的軽度な異常(タンパク質が一部作られる、あるいは一部機能するような変異)によって起こります。
LAMC1遺伝子はかつて*LAMC2*と呼ばれていましたhttps://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/genetic-diseases2/junctional-epidermolysis-bullosa-herlitz-type/。 - COL17A1遺伝子: この遺伝子は、基底膜の別の構成要素であるXVII型コラーゲン(BP180とも呼ばれます)というタンパク質を作るための情報を持っています。
XVII型コラーゲンも、表皮の細胞を基底膜に固定する役割を担っています。
この遺伝子の異常により、XVII型コラーゲンがうまく作られなかったり、機能しなくなったりすると、同様に基底膜が脆くなり、水疱やびらんが生じます。
非ヘルリッツ型JEBの一部は、この遺伝子の異常によって起こりますhttps://medlineplus.gov/genetics/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。 - ITGB4, ITGA6遺伝子: これらの遺伝子は、インテグリンα6β4というタンパク質に関わります。
インテグリンα6β4は、表皮細胞の表面にあり、細胞を基底膜のラミニンなどに結合させるための「足場」となる構造(ヘミデスモソーム)の重要な構成要素です。
これらの遺伝子の異常により、ヘミデスモソームがうまく機能しなくなると、表皮細胞が基底膜にしっかり接着できず、水疱やびらんが生じます。
これらの遺伝子の異常によるJEBは比較的まれですが、爪の異常や幽門狭窄(胃の出口が狭くなること)を伴う特定の病型を引き起こすことがあります。
これらの遺伝子のどれに、どのような異常があるかによって、作られるタンパク質の量や機能が異なり、それが病気の重症度(ヘルリッツ型か非ヘルリッツ型かなど)や症状の現れ方の違いにつながります。
遺伝形式について(常染色体劣性遺伝など)
接合部型表皮水疱症は、主に「常染色体劣性遺伝」という形式で遺伝します。
人間の細胞には、父親と母親からそれぞれ1つずつもらった、2セットの遺伝子があります。
常染色体劣性遺伝とは、この2セットある遺伝子のうち、両方の遺伝子に病気の原因となる異常がある場合に病気を発症する遺伝形式です。
- 両親がそれぞれ、病気の原因となる異常を持った遺伝子を1つずつ(もう1つは正常な遺伝子)持っている場合、両親自身は病気を発症しません(このような方を「保因者」といいます)。
- このような保因者の両親から生まれてくるお子さんの場合、
- 父親から異常な遺伝子、母親から異常な遺伝子を受け継いだ場合(異常な遺伝子を2つ持つ):病気を発症します(確率 1/4)
- 父親から異常な遺伝子、母親から正常な遺伝子を受け継いだ場合(異常な遺伝子を1つと正常な遺伝子を1つ持つ):病気を発症せず保因者になります(確率 1/4)
- 父親から正常な遺伝子、母親から異常な遺伝子を受け継いだ場合(正常な遺伝子を1つと異常な遺伝子を1つ持つ):病気を発症せず保因者になります(確率 1/4)
- 父親から正常な遺伝子、母親から正常な遺伝子を受け継いだ場合(正常な遺伝子を2つ持つ):病気を発症せず保因者でもありません(確率 1/4)
つまり、常染色体劣性遺伝の場合、保因者の両親からお子さんが生まれるたびに、男女に関わらず4分の1の確率で病気を発症する可能性があります。
そして、2分の1の確率で保因者となり、4分の1の確率で保因者でもありません。
接合部型表皮水疱症の原因遺伝子(LAMB3, LAMA3, LAMC1, COL17A1など)のほとんどは常染色体上にあり、病的な変化が劣性遺伝する性質を持っています。
ヘルリッツ型接合部型表皮水疱症は致死的な常染色体劣性疾患として知られていますhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21801158/。
ごくまれに、原因遺伝子によっては常染色体優性遺伝の形式をとる場合もありますが、接合部型表皮水疱症の主要な遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。
親から子への遺伝可能性
接合部型表皮水疱症が常染色体劣性遺伝である場合、病気を発症している患者さん(異常遺伝子を2つ持つ)が、病気でない方(正常遺伝子を2つ持つ)と結婚して子供をもうける場合、生まれてくるお子さんは全員が「保因者」となり、病気を発症することはありません。
しかし、患者さんが「保因者」の方と結婚した場合、生まれてくるお子さんは2分の1の確率で病気を発症し、2分の1の確率で保因者となります。
また、両親が共に保因者である場合には、前述のように4分の1の確率で病気を発症するお子さんが生まれる可能性があります。
両親のどちらかが患者さんで、どちらかが保因者であるというケースは非常にまれですが、その場合は生まれてくるお子さんの2分の1が患者さんとなります。
病気の遺伝について心配がある場合は、遺伝カウンセリングを受けることができます。
専門家(認定遺伝カウンセラーなど)が、家系図を作成したり、遺伝子検査の結果を元に、具体的な遺伝の確率や将来の家族計画について分かりやすく説明してくれます。
不安を抱え込まずに、医療機関の遺伝子診療部や遺伝カウンセリング外来などに相談してみましょう。
接合部型表皮水疱症の診断
接合部型表皮水疱症の診断は、臨床症状の観察から始まり、確定診断のために特殊な検査が行われます。
臨床症状からの診断
生まれたばかりの赤ちゃんや、幼児期に、わずかな刺激で皮膚に大きな水疱やびらんが繰り返しできる、治りにくい傷がある、などの症状が見られた場合に、表皮水疱症の可能性が疑われます。
表皮水疱症はどの病型でも、生まれた直後あるいは生まれて間もなく、皮膚に水疱や潰瘍が生じますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。
特に、新生児期から全身に広範な水疱やびらんがあり、口の中やその他の粘膜にも症状が見られる場合は、重症な接合部型表皮水疱症(ヘルリッツ型など)が強く疑われます。
一方、比較的軽症で、手足など限られた部位に症状が出る場合でも、水疱ができる場所や治癒の仕方などを注意深く観察することで、表皮水疱症の可能性を検討します。
医師は、症状の現れ方、水疱のできやすい場所、傷の治り方、他の臓器に症状があるかなどを詳しく問診し、皮膚の状態を視診します。
しかし、臨床症状だけでは、表皮水疱症の他のタイプ(単純型や栄養障害型など)や、他の水疱ができる病気と区別することが難しいため、確定診断には専門的な検査が必要です。
確定診断のための検査(皮膚生検、遺伝子検査)
表皮水疱症の診断、そしてどのタイプ(接合部型、単純型、栄養障害型など)で、どの病型(ヘルリッツ型、非ヘルリッツ型など)であるかの確定診断のためには、以下の検査が非常に重要です。
- 皮膚生検と組織学的検査:
- 水疱ができた皮膚の辺縁部などから、小さな皮膚組織を採取します(皮膚生検)。
- 採取した組織を顕微鏡で観察し、水疱が皮膚のどの層(表皮内、基底膜部、真皮内など)にできているかを確認します。
接合部型表皮水疱症では、表皮と真皮の間の基底膜の層で剥離が起こっていることが確認されます。 - 免疫染色: 特定の抗体を使って、基底膜などを構成する様々なタンパク質(ラミニン332、XVII型コラーゲン、インテグリンなど)が皮膚組織の中に正常に存在するか、量や局在に異常がないかを調べます。
接合部型表皮水疱症では、原因となっているタンパク質が欠損していたり、著しく減少していたりすることが多いです。
特にラミニン332の染色が欠損または著しく減少していることは、ヘルリッツ型JEBの診断に非常に有用ですhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21801158/。 - 電子顕微鏡検査: より詳細に皮膚の構造、特に基底膜やその周辺の構造(ヘミデスモソームなど)を観察することができます。
接合部型表皮水疱症では、ヘミデスモソームの異常や基底膜の構造異常などが確認されます。
- 遺伝子検査:
- 血液などからDNAを採取し、接合部型表皮水疱症の原因となる可能性のある遺伝子(LAMB3, LAMA3, LAMC1, COL17A1, ITGB4, ITGA6など)に病的な変化(変異)がないかを調べます。
- 遺伝子検査によって、病気の原因となっている遺伝子や具体的な変異を特定することができます。
症状の程度は遺伝子塩基配列変異の種類によってある程度決定されますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。 - 遺伝子検査の結果は、病型診断の確定、予後の予測、遺伝カウンセリング、そして将来的な新しい治療法(遺伝子治療など)の適応を判断する上で非常に重要となります。
- 最近では、複数の原因遺伝子を一度に調べられる「マルチ遺伝子パネル検査」なども利用できるようになってきており、効率的な診断が可能になっています。
これらの検査結果を総合的に判断し、接合部型表皮水疱症の診断と病型分類が確定されます。
診断には専門的な知識と経験が必要なため、表皮水疱症の診療に慣れた専門医(皮膚科医、小児科医など)のいる医療機関で検査を受けることが推奨されます。
赤ちゃんでの診断時期
接合部型表皮水疱症の多くは、生まれた直後、あるいは生後間もない新生児期に皮膚の症状(水疱やびらん)が現れることが多いため、この時期に病気が疑われ、診断のための検査が行われることが多いです。
表皮水疱症はどの病型でも、生まれた直後あるいは生まれて間もなく、皮膚に水疱や潰瘍が生じますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。
特に重症なヘルリッツ型は、出生時にすでに広範な皮膚剥離が見られたり、出生後すぐにわずかな刺激で水疱が多発したりするため、新生児集中治療室(NICU)などで診療が行われる中で病気が疑われ、早期に診断のための検査が進められます。
新生児において、顔や手足に皮膚欠損が見られる場合もありますhttps://www.skinhealthinfo.org.uk/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。
非ヘルリッツ型の場合、出生直後は症状が目立たなかったり、症状が比較的軽度であったりすることもあるため、生後数ヶ月経ってから診断されることもあります。
しかし、皮膚の脆弱性は生まれつき持っているため、多くの場合、乳児期までには何らかの皮膚症状が現れ、医療機関を受診するきっかけとなります。
早期に正確な診断を得ることは、適切なケアを開始し、重篤な合併症を予防したり、早期に介入したりするために非常に重要です。
症状が見られた場合は、速やかに専門医に相談することが推奨されます。
接合部型表皮水疱症の予後と寿命
接合部型表皮水疱症の予後(病気が今後どのように経過していくか)は、病型によって大きく異なります。
病型による予後の違い
- ヘルリッツ型接合部型表皮水疱症:
- 残念ながら、予後は極めて厳しいことが多い病型です。
- 全身の皮膚や粘膜に重度のびらんが生じるため、感染症、呼吸不全(気道のびらん)、栄養障害(食道・消化管のびらん)などの重篤な合併症を起こしやすく、生命を脅かすことが多いです。
- 多くの場合、生後数ヶ月から1年以内に命を落とすという非常に厳しい経過をたどります。
ヘルリッツ型は致死的な疾患とされていますhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21801158/。
過去の報告では、平均寿命が5.8ヶ月(0.5〜32.6ヶ月の範囲)であったことが示されていますhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21801158/。 - しかし、最近では医療の進歩により、以前よりも長期生存が可能になるケースも報告されており、一律に「寿命が非常に短い」と断言することはできなくなってきています。
集中治療や栄養管理、感染対策などの進歩が、予後を改善させる可能性を示しています。
- 非ヘルリッツ型接合部型表皮水疱症:
- ヘルリッツ型に比べて予後は良好で、多くの場合、生命予後に直接関わる重篤な合併症は少ない傾向があります。
- しかし、皮膚症状は生涯にわたって続き、水疱やびらん、それに伴う痛みやかゆみは、日常生活に大きな影響を与えます。
症状の程度は、生活環境、生活習慣、栄養状態、治療状況によっても左右されますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。 - 一部の病型では、成人期以降に慢性的な傷や炎症が生じやすい部位に皮膚がん(扁平上皮癌)が発生するリスクが高いことが知られています。
そのため、定期的な皮膚の診察や検査が重要となります。 - 口腔、食道、眼などの粘膜症状が続く場合もあり、それぞれの症状に応じたケアが必要です。
このように、病型によって予後や寿命は大きく異なります。
正確な病型診断と、それに合わせた適切な医療的管理が、患者さんのQOL(生活の質)や予後を改善させるために不可欠です。
ヘルリッツ型の平均寿命
ヘルリッツ型接合部型表皮水疱症の平均寿命は、かつては「生後数ヶ月」と言われることも多く、多くの場合が乳児期に集中治療室などで亡くなるケースが多かったです。
過去の報告では、平均寿命が5.8ヶ月(0.5〜32.6ヶ月の範囲)であったことが示されていますhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21801158/。
しかし、これは過去のデータに基づいたものであり、医療の進歩によって状況は変わりつつあります。
具体的な平均寿命を示す正確な統計データは限られていますが、最近の報告では、適切な医療管理によって1歳以降、さらには数年間生存する例も増えてきています。
特に、呼吸管理や胃瘻による栄養管理、厳格な感染対策などが予後改善に貢献していると考えられます。
しかし、それでも依然として生命予後が厳しい病型であることに変わりはありません。
重篤な呼吸器感染症、敗血症、全身衰弱などが主要な死因となることが多いです。
医療チームは、患者さんの状態に応じて最善の治療とケアを提供し、ご家族と共に病気と向き合っていきます。
終末期においては、患者さんの苦痛を最大限に和らげる緩和ケアが重要となります。
大人における病状と経過
接合部型表皮水疱症の患者さんが大人になる場合、ほとんどは非ヘルリッツ型の患者さんです。
ヘルリッツ型の患者さんの多くは残念ながら成人期まで生存することが難しいためです。
非ヘルリッツ型の患者さんは、成人期になっても皮膚の脆弱性は続きます。
日常生活での物理的な刺激によって水疱やびらんができやすく、そのケアは生涯にわたって必要です。
特に、仕事や趣味などで手足を使うことが多い場合、症状が出やすい傾向があります。
大人になってからの主な課題としては、以下のようなものがあります。
- 皮膚症状: 慢性のびらん、痒み、痛みが続きます。
特に摩擦を受けやすい部位や、過去に何度も傷ができた部位に症状が出やすいです。
頭皮の毛が薄くなる方もいますhttps://www.skinhealthinfo.org.uk/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。 - 皮膚がんのリスク: 非ヘルリッツ型の一部(特にラミニン332やXVII型コラーゲンの軽度な異常によるもの)では、成人期以降に慢性の傷や炎症を繰り返した部位に皮膚がん(扁平上皮癌)が発生するリスクが高いことが知られています。
この扁平上皮癌は進行が早い場合があるため、定期的な皮膚科の診察を受け、疑わしい病変を早期に発見・治療することが非常に重要です。 - 粘膜症状: 口腔や食道、泌尿器などの粘膜症状が続く場合もあります。
食道狭窄がある場合は、食事が通りにくくなることがあります。 - QOL(生活の質): 痛み、痒み、傷のケアにかかる時間、外見への影響などから、QOLが低下しやすい傾向があります。
精神的なサポートも重要です。 - 社会生活: 病気に対する周囲の理解を得ること、仕事や人間関係、結婚や出産など、様々な面で困難に直面することがあります。
大人になっても病気と向き合いながら、自分らしい生活を送るためには、適切な医療的サポートに加え、社会的な支援や、同じ病気を持つ仲間との交流なども助けになります。
接合部型表皮水疱症の治療法
現在の医療では、接合部型表皮水疱症の根本的な原因である遺伝子の異常を直接的に修復する治療法は確立されていません。
そのため、現在の治療の中心は、症状を和らげ、合併症を予防・管理し、患者さんのQOLを向上させるための「対症療法」です。
しかし、新しい治療法の研究・開発も世界中で進められています。
現在行われている主な治療(対症療法)
対症療法は、皮膚や粘膜の保護、水疱・びらんのケア、感染予防、痛み・痒みの管理、栄養管理、リハビリテーションなど、多岐にわたります。
- 皮膚・水疱・びらんのケア:
- 保護: 皮膚への刺激を最小限にするため、柔らかい衣類を着用し、摩擦を避ける工夫をします。
オムツや衣類が直接傷口に当たらないように、特殊な素材のガーゼや被覆材を使用します。 - 水疱の処理: できた水疱は、清潔な針などで早めに内容液を抜き、皮膚が剥がれてびらんになるのを防ぎます。
これは、水疱が大きくなると周囲の皮膚をさらに圧迫・牽引し、剥離を広げる可能性があるためです。
水疱の膜は剥がさずに残し、自然に乾燥させて剥がれ落ちるのを待ちます。
水疱は脆く破れやすいので、破れた跡が治りにくい生の湿った部分を残すことがありますhttps://www.skinhealthinfo.org.uk/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。 - 傷のケア: びらん部分には、感染を防ぎ、治癒を促進するための薬剤(抗菌薬入りの軟膏など)を塗布し、傷にくっつきにくい非固着性のガーゼや被覆材で保護します。
ドレッシング材(医療用の被覆材)は様々な種類があり、傷の状態や部位によって適切なものを使い分けます。
毎日のように傷の手当てが必要となる場合が多く、大きな負担となります。 - 清潔保持: 入浴やシャワーは、傷口を清潔に保ち、古いガーゼや付着物を優しく洗い流すために重要です。
刺激の少ない石鹸を使用し、湯温に注意します。
入浴後に皮膚を拭く際も、こすらずに優しく押さえるように水分を拭き取ります。
- 保護: 皮膚への刺激を最小限にするため、柔らかい衣類を着用し、摩擦を避ける工夫をします。
- 感染予防・治療:
- びらん部位は感染しやすいため、日々の傷のケアを丁寧に行い、清潔を保つことが最も重要です。
大きな潰瘍は感染のリスクを高めますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。 - 感染の兆候(発熱、傷口の悪化、膿の発生、強い痛みなど)が見られた場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な抗菌薬による治療を行います。
- 重症感染症(敗血症など)に対しては、入院して点滴による抗菌薬治療が必要となります。
- びらん部位は感染しやすいため、日々の傷のケアを丁寧に行い、清潔を保つことが最も重要です。
- 痛み・痒みの管理:
- 傷やびらん、毎日のケアには強い痛みを伴うことが多いです。
痛み止め(鎮痛薬)を適切に使用して、痛みを和らげます。
特にケアの前に痛み止めを使用することで、患者さんの負担を軽減できます。 - 強い痒みを伴うこともあり、かゆみ止め(抗ヒスタミン薬など)が処方されることがあります。
- 傷やびらん、毎日のケアには強い痛みを伴うことが多いです。
- 栄養管理:
- 口腔や食道のびらんにより、食事を摂るのが困難になったり、痛みを伴ったりすることが多いです。
特にヘルリッツ型では摂食困難を伴うことが多くなりますhttps://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/genetic-diseases2/junctional-epidermolysis-bullosa-herlitz-type/。 - 栄養状態が悪化しないように、柔らかく刺激の少ない食事や、栄養価の高い流動食などが用いられます。
- 経口での栄養摂取が難しい場合や、成長のために十分なカロリーが必要な乳幼児などでは、胃に直接チューブを通して栄養剤を投与する「胃瘻(いろう)」を造設することがあります。
- 貧血に対しては、鉄剤の投与などが行われます。
慢性的な出血や炎症は鉄欠乏性貧血を合併することがありますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。
- 口腔や食道のびらんにより、食事を摂るのが困難になったり、痛みを伴ったりすることが多いです。
- リハビリテーション:
- 特に手足の関節周囲に症状が出やすい場合、痛みや傷のために動かすことを嫌がり、関節が硬くなってしまう(拘縮)ことがあります。
- 早期から gentle なリハビリテーションを行い、関節の動きを保つことが重要です。
専門の理学療法士や作業療法士の指導のもとで行います。
- その他の合併症の管理:
- 食道狭窄に対しては、食道を広げる処置(バルーン拡張術など)が行われることがあります。
- 眼の症状に対しては、眼科医による診察と治療(点眼薬、眼軟膏など)が必要です。
- 歯科的な問題(エナメル質形成不全など)に対しては、歯科医によるケアが必要です。
- 呼吸障害に対しては、呼吸器科医と連携した管理が必要ですhttps://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/genetic-diseases2/junctional-epidermolysis-bullosa-herlitz-type/。
これらの対症療法は、病気の根本を治すものではありませんが、患者さんの日々の苦痛を和らげ、感染などの重篤な合併症を防ぎ、可能な限り快適な生活を送るために不可欠です。
専門的な知識と経験を持つ医療チーム(医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、リハビリテーション専門職、ソーシャルワーカーなど)によるチーム医療が重要となります。
新しい治療法の研究・開発状況(治る可能性)
接合部型表皮水疱症は、特定の遺伝子の異常が原因であるため、その根本を治すためには、異常な遺伝子の働きを正常に戻したり、不足しているタンパク質を補ったりするような治療法が考えられます。
現在、このような「根本治療」を目指した新しい治療法の研究・開発が世界中で進められています。
- 遺伝子治療:
- 患者さんの皮膚細胞や骨髄細胞などに、正常な遺伝子(病気の原因となっている遺伝子の正常なコピー)を導入することで、不足しているタンパク質を作れるようにする治療法です。
- 皮膚にシート状にした細胞を移植する方法や、全身に遺伝子を運ぶ方法などが研究されています。
- 一部の遺伝子治療の臨床試験では、効果が示唆される結果も報告されており、将来有望な治療法として期待されています。
特に、LAMB3遺伝子の異常による非ヘルリッツ型JEBに対する局所遺伝子治療などが進んでいます。
- 細胞治療:
- 患者さん自身の細胞(皮膚細胞など)や、健康なドナーの細胞(骨髄間葉系幹細胞など)を移植することで、皮膚の構造を修復したり、炎症を抑えたりする効果を目指す治療法です。
- 移植された細胞が、不足しているタンパク質を供給したり、傷の治りを促進したりする可能性が研究されています。
- タンパク質補充療法:
- 病気の原因となっているタンパク質そのもの(例: ラミニン332)を体外から供給する治療法です。
- 欠損しているタンパク質を直接注射したり、皮膚に塗布したりする方法が検討されています。
- 薬剤開発:
- 炎症を抑えたり、傷の治りを促進したり、皮膚の結合を強めたりする効果を持つ薬剤の開発も進められています。
- 遺伝子異常によるタンパク質産生の異常を部分的に修復するような薬剤や、mRNA技術を用いた治療なども研究されています。
これらの新しい治療法は、まだ研究段階であったり、ごく一部の患者さんに対して臨床試験として行われたりしている段階です。
安全性や有効性について、さらに多くの検証が必要です。
しかし、これらの研究の進展は、将来的に接合部型表皮水疱症を「治せる病気」に、あるいは病気の症状を大きく改善できる病気に変える可能性を秘めています。
現状では、これらの新しい治療法は広く普及しているわけではなく、多くの患者さんにとっては、前述した対症療法が主な治療となります。
しかし、研究開発の最新情報を把握し、可能であれば臨床試験への参加なども検討することは、治療の選択肢を広げる上で重要です。
合併症の管理
接合部型表皮水疱症では、皮膚や粘膜の脆弱性から様々な合併症が生じやすいため、それぞれの合併症に対して適切な管理が必要です。
- 感染症: 皮膚や粘膜のびらんから細菌が侵入しやすく、局所感染だけでなく、全身に広がる敗血症を起こすことがあります。
大きな潰瘍が多発すると、感染や炎症を繰り返すリスクが高まりますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。
日々の丁寧な傷のケア、感染兆候の早期発見、適切な抗菌薬治療が不可欠です。
予防的な抗菌薬の使用が検討される場合もあります。 - 栄養障害・成長障害: 口腔・食道のびらんによる摂食困難や、消化吸収障害、慢性の炎症によるエネルギー消費増加などから、栄養不良や成長障害が起こりやすいです。
特にヘルリッツ型では摂食困難を伴うことが多くなりますhttps://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/genetic-diseases2/junctional-epidermolysis-bullosa-herlitz-type/。
大きな潰瘍による慢性の炎症や浸出液によるタンパク質喪失も低栄養の原因となりますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。
管理栄養士と連携し、栄養状態の評価と適切な栄養補給(高カロリー食、流動食、経管栄養など)を行います。
貧血の管理も重要ですhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。 - 呼吸器合併症: 気道のびらんによる声門下狭窄や、慢性的な肺の感染症などが起こることがあります。
特にヘルリッツ型では呼吸障害を伴うことが多くなりますhttps://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/genetic-diseases2/junctional-epidermolysis-bullosa-herlitz-type/。
呼吸困難や声のかすれに注意し、耳鼻咽喉科医や呼吸器科医と連携して管理を行います。
重症な乳児では、人工呼吸器管理が必要になる場合もあります。 - 眼科的合併症: まぶた、結膜、角膜のびらんや瘢痕により、ドライアイ、角膜潰瘍、角膜混濁、視力障害などが生じることがあります。
定期的な眼科受診と、保湿点眼、角膜保護などの治療が必要です。 - 泌尿器合併症: 尿道のびらんや狭窄により、排尿困難や尿路感染症が起こることがあります。
- 皮膚がん(扁平上皮癌): 非ヘルリッツ型の一部で、成人期以降にリスクが高まります。
定期的な皮膚のチェックと、疑わしい病変に対する生検などの検査、早期の切除が重要です。 - 貧血: 慢性の出血や炎症、栄養不足による鉄欠乏性貧血などが起こりやすいですhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。
定期的な血液検査で貧血の有無を確認し、鉄剤の補充などを行います。
これらの合併症は、患者さんの全身状態やQOLに大きく影響します。
様々な専門分野の医師や医療スタッフが連携する包括的なケア体制が、合併症の予防と管理には非常に重要です。
指定難病としての接合部型表皮水疱症
接合部型表皮水疱症は、日本の「指定難病」に定められています。
指定難病となることで、患者さんやご家族は様々な支援を受けることができます。
難病指定のメリット(医療費助成など)
指定難病に認定されることで、主に以下のようなメリットがあります。
- 医療費助成制度:
- これが最も大きなメリットの一つです。
指定難病の治療にかかる医療費(診察料、検査料、薬剤費、入院費など)のうち、自己負担分について助成を受けることができます。 - 申請には、お住まいの都道府県等への申請手続きが必要です。
診断書や住民票などの書類を提出し、審査を経て「医療受給者証」が交付されます。 - 自己負担の上限額は、患者さんの世帯所得に応じて設定されます。
高額な医療費がかかる場合でも、月々の自己負担額が一定額を超える分は公費で負担されるため、経済的な負担を大幅に軽減できます。 - 助成の対象となる医療機関は、都道府県等から指定を受けた「指定医療機関」に限られます。
受診している病院やクリニック、調剤薬局などが指定医療機関であるか確認が必要です。
- これが最も大きなメリットの一つです。
- その他の支援:
- 障害者手帳(身体障害者手帳)の取得要件を満たす場合があります。
手帳を取得することで、様々な福祉サービス(例えば、医療費の助成、公共交通機関の割引、税制上の優遇など)を利用できるようになる可能性があります。 - 介護保険サービスや障害福祉サービス(ホームヘルパーの利用、訪問看護、短期入所(ショートステイ)など)の利用が円滑になる場合があります。
- 患者会への参加を通じて、同じ病気を持つ他の患者さんやご家族と情報交換したり、精神的なサポートを得たりすることができます。
- 障害者手帳(身体障害者手帳)の取得要件を満たす場合があります。
難病指定を受けるためには、まず医療機関で診断書を作成してもらい、お住まいの自治体(都道府県または指定都市)の窓口に申請する必要があります。
申請手続きには時間がかかる場合があるため、診断が確定したら早めに情報収集を始め、医療機関のソーシャルワーカーなどに相談してみることをお勧めします。
この制度は、患者さんの経済的な負担を軽減し、必要な医療や福祉サービスにアクセスしやすくすることで、患者さんが病気と向き合いながら安心して生活を送れるように支援することを目的としています。
接合部型表皮水疱症に関する話題(YouTuber関根りささんなど)
近年、YouTubeなどのSNSを通じて、難病や希少疾患に関する情報を発信する方が増えています。
接合部型表皮水疱症に関しても、YouTuberの関根りささんが、ご自身のチャンネルでこの病気のお子さん(甥っ子さん)について触れられたことで、病気の認知度が高まり、注目が集まりました。
このような情報発信は、一般の人々が病気について知るきっかけとなったり、同じ病気を持つ患者さんやご家族が共感を得たり、情報を共有したりする上で非常に大きな意味を持ちます。
病気に対する理解が深まることは、社会全体でのサポート体制の構築にもつながる可能性があります。
一方で、SNSで発信される情報は、個人の体験に基づくものであり、病状や経過は人それぞれ異なることを理解しておくことが重要です。
また、医学的な内容については、必ずしも専門家による正確な情報とは限らない場合もあります。
したがって、病気に関する医学的な情報や治療法については、YouTubeなどのSNSだけでなく、必ず信頼できる医療機関や専門機関(難病情報センター、患者会、学会など)から提供される情報を確認するようにしましょう。
SNSはあくまで情報収集の一つのツールとして活用し、最終的な判断は専門家である医師と相談の上で行うことが最も重要です。
難病情報センターのウェブサイトや、表皮水疱症に関する患者会のウェブサイトなどには、病気の詳細や最新の研究情報、支援制度などの信頼できる情報が掲載されています。
まとめ:接合部型表皮水疱症について知っておくべきこと
接合部型表皮水疱症は、遺伝子の異常によって皮膚が非常に脆くなり、わずかな刺激で水疱やびらんが生じる難病です。
主に常染色体劣性遺伝によって遺伝し、原因遺伝子や異常のタイプによって、重症なヘルリッツ型と比較的軽症な非ヘルリッツ型に分けられます。
- 主な症状: 皮膚の脆弱性、広範な水疱・びらんが特徴で、口腔、食道、呼吸器、眼などの粘膜にも症状が出ることがあります。
痛みやかゆみ、感染症のリスクが高いです。
大きな潰瘍は感染や炎症を繰り返し、低栄養や鉄欠乏性貧血を合併することがありますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。
水疱は脆く破れやすく、治りにくい傷を残します。
顔や脚、爪、頭皮にも症状が出ることがありますhttps://www.skinhealthinfo.org.uk/condition/junctional-epidermolysis-bullosa/。 - 診断: 臨床症状から疑い、皮膚生検(免疫染色、電子顕微鏡)や遺伝子検査によって確定診断が行われます。
特に赤ちゃんでの早期診断が重要です。
免疫染色でラミニン332の欠損などが確認されることがありますhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21801158/。
症状の程度は遺伝子変異の種類によってある程度決まりますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。 - 予後: 病型によって大きく異なり、ヘルリッツ型は生命予後が厳しいことが多いですがhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21801158/、非ヘルリッツ型は成人期まで生存するケースが多いです。
非ヘルリッツ型の一部では、成人期以降に皮膚がんのリスクが高まるため注意が必要です。
予後は生活環境やケアによっても左右されますhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/5338。 - 治療: 現在は対症療法が中心であり、皮膚・傷のケア、感染予防、痛み・痒みの管理、栄養管理、リハビリテーションなどを行います。
日々のケアは患者さんやご家族にとって大きな負担となります。 - 新しい治療法: 遺伝子治療や細胞治療などの根本治療を目指した研究開発が進められており、将来的な展望が開かれつつあります。
- 指定難病: 接合部型表皮水疱症は指定難病であり、医療費助成制度などの支援を受けることができます。
診断を受けた場合は、難病申請を検討することが重要です。
この病気と共に生きる患者さんやご家族は、身体的・精神的に大きな負担を抱えています。
適切な医療的ケアに加え、社会的な支援や周囲の理解、そして患者さん同士のつながりが非常に大切です。
この記事が、接合部型表皮水疱症についての理解を深め、病気と向き合う方々の一助となれば幸いです。
病気に関する疑問や不安がある場合は、必ず医療機関の専門医にご相談ください。
信頼できる情報源から正確な情報を得るように努めましょう。
免責事項: この記事は、接合部型表皮水疱症に関する一般的な情報を提供することを目的としています。
個々の症状や治療方針については、必ず医療機関の専門医と相談し、診断や指導を受けてください。
この記事の情報によって生じたいかなる損害についても、筆者および出版者は一切の責任を負いません。