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妊娠中のエコー検査は、お腹の赤ちゃんの成長を確認する大切な機会です。
しかし、エコー検査で「ダウン症の可能性」について言及されることがあると聞き、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。「エコーでダウン症がわかるの?」「どんな兆候が見られるの?」といった疑問や不安を抱えているあなたへ、この記事では、エコー検査でわかること、わからないこと、そして見られる可能性のある兆候について、正確な情報をお伝えします。
エコー検査の役割を正しく理解し、安心して妊婦健診に臨めるよう、ぜひ最後までお読みください。
エコー検査でダウン症の可能性はわかりますか?
エコー(超音波)検査は、お腹の中の胎児の様子を画像として確認できる非侵襲的な検査です。
妊婦健診では、胎児の大きさや臓器の発達、羊水の量などを確認するために広く行われています。
では、このエコー検査で、胎児がダウン症候群であるかどうかを診断することはできるのでしょうか。
結論から言うと、エコー検査だけでダウン症候群であると確定診断することはできません。
エコー検査は、胎児の身体的な特徴や形態的な異常を捉えることはできますが、ダウン症候群の原因である染色体異常そのものを直接見ることできないためです。
エコー検査で確認できるのは、あくまでダウン症候群に特徴的に見られる可能性のある「兆候」や「所見」です。
エコー検査でわかること・わからないことの概要
エコー検査で「わかること」は、胎児の形態的な発達や、特定の身体的特徴の有無です。
例えば、頭の大きさ、大腿骨(太ももの骨)の長さ、心臓の構造、腎臓の形などを詳細に観察することができます。
週数が進めば、顔のパーツや手足の指なども確認できる場合があります。
これらの観察を通して、胎児が順調に発育しているか、あるいは何らかの形態的な異常や特定の所見が見られないかを確認します。
胎児超音波スクリーニングで評価される項目や用語については、専門サイトで詳しく確認できます。
一方で、エコー検査で「わからないこと」は、胎児の染色体がどのような状態であるかという根本的な情報です。
ダウン症候群は、21番染色体が通常2本であるところが3本あることで起こる疾患です。
この染色体の数の異常は、エコー検査の画像からは直接判断することはできません。
そのため、エコー検査で特定の兆候が見られたとしても、それはあくまで「ダウン症候群である可能性を示唆する所見」であり、確定診断には至りません。
エコーでダウン症を疑う具体的な「兆候」とは?
エコー検査で観察される、ダウン症候群の胎児に特徴的に見られる可能性のある所見はいくつかあります。
これらは「ソフトマーカー」と呼ばれることもあり、単独で見られることもあれば、複数組み合わさって見られることもあります。
これらの所見が見られたからといって必ずしもダウン症候群であるわけではありませんが、可能性を考慮してさらなる精密検査が検討されることがあります。
ダウン症候群に関連するエコー所見の詳細については、こちらの記事でも解説されています。
代表的な兆候としては、以下のようなものが挙げられます。
NT(項部透亮像)とは?
妊娠初期(特に妊娠11週0日~13週6日頃)に行われるエコー検査で重要な所見の一つに、NT(Nuchal Translucency:項部透亮像)があります。
これは、胎児の首の後ろの頸部に見られる、一時的なむくみや浮腫のような超音波透過性の領域を指します。
エコー画像では、この領域が黒く抜けて見えます。
NT(項部透亮像)についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの解説記事をご覧ください。
NTの厚みは、胎児の染色体異常(特にダウン症候群、エドワーズ症候群、パタウ症候群など)や、心臓病などの可能性と関連があることが知られています。
妊娠週数に応じて基準となるNTの厚みは異なりますが、一般的に、特定の週数における平均的な厚みよりも厚い場合に、染色体異常やその他の疾患の可能性が示唆されることがあります。
NTの厚みが増すほど、これらの可能性が高まるといわれています。
ただし、NTの厚みは個人差が大きく、厚みがあっても全く問題なく成長する胎児も多くいます。
NTの計測は非常にデリケートであり、計測する時期(適切な妊娠週数)、胎児の向き、計測者の技量などによって結果が左右される可能性もあります。
そのため、NTの厚みだけでダウン症候群と判断することはできず、あくまで可能性を評価するための指標の一つとして用いられます。
胎児のサイズに関わる兆候(FLなど)
胎児の体の各部分のサイズも、ダウン症候群の可能性を示唆する兆候となり得ます。
特に注目されることのあるサイズに関する所見には、以下のようなものがあります。
- FL (大腿骨長 – Femur Length): 太ももの骨の長さです。ダウン症候群の胎児では、全体的な成長が緩やかであることに関連して、大腿骨が標準よりも短く計測されることがあります。ただし、胎児のサイズには個人差が大きく、FLが短いことだけをもってダウン症候群と判断することはできません。単に遺伝的な体格による可能性もあります。
- HL (上腕骨長 – Humerus Length): 二の腕の骨の長さです。FLと同様に、ダウン症候群の胎児では標準より短く計測されることがあります。
- CRL (頭殿長 – Crown Rump Length): 妊娠初期の胎児の頭からお尻までの長さです。妊娠週数を確定するために非常に重要な指標ですが、妊娠初期におけるダウン症候群の胎児のCRLは、平均と比べてわずかに小さい傾向があるという報告もあります。
- BPD (児頭大横径 – Biparietal Diameter): 胎児の頭の最も幅のある部分の直径です。妊娠中期以降の成長の指標となります。
これらのサイズに関する所見は、単独で見られることもありますが、複数の部位のサイズが全体的に小さめであるなど、他の所見と組み合わせて評価されることが多いです。
エコーで計測される胎児のサイズは、あくまでその時点での目安であり、成長のカーブ全体を見て判断する必要があります。
エコー検査で見られるダウン症候群の兆候について、専門的な視点からの情報も役立ちます。
心臓やその他の身体的な特徴
エコー検査では、胎児の心臓の構造を詳細に観察することも重要です。
ダウン症候群の赤ちゃんは、先天性の心臓疾患を合併する確率が高いことが知られています。
特に多いのは、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症といった、心臓の壁に穴が開いている疾患、あるいは房室弁逆流といった弁の異常などです。
妊娠中期以降の精密超音波検査(胎児スクリーニング検査)では、これらの心臓の構造的な異常がないかを丁寧に確認します。
心臓以外にも、ダウン症候群の胎児に見られる可能性のあるその他の身体的な特徴がエコーで観察されることがあります。
これらも「ソフトマーカー」に含まれる場合があります。
- 鼻骨の低形成または欠損 (Absent or Hypoplastic Nasal Bone): 鼻骨の長さが標準より短い、あるいは確認できない所見です。特に妊娠初期のNT計測と合わせて評価されることがあります。
- 消化器系の異常: 十二指腸閉鎖(double bubble signとしてエコーで確認されることがあります)や食道閉鎖などが見られることがあります。
- 腎盂拡張 (Pyelectasis): 腎臓の中央部分が通常より膨らんでいる所見です。
- 短指症・湾曲小指 (Clinodactyly): 小指が短く内側に曲がっている所見です。エコーで手や指の形が確認できる場合に観察されることがあります。
- 頚部浮腫: 妊娠初期のNT以外にも、妊娠中期以降に頚部の皮膚の厚みが増しているように見えることがあります。
- 単一臍帯動脈 (Single Umbilical Artery): 通常2本ある臍帯動脈が1本しかない所見です。
これらの所見は、ダウン症候群以外の様々な原因でも起こり得ます。
また、これらの所見が複数見られたとしても、必ずしもダウン症候群であるとは限りません。
エコー検査を行う医師は、これらの兆候を総合的に評価し、もし気になる所見が見られた場合は、妊婦さんやご家族にその旨を伝え、さらなる検査について説明を行います。
重要なのは、これらの所見はあくまで「可能性」を示唆するものであり、確定診断ではないという点です。
妊娠中のいつからエコーでダウン症の兆候が見られますか?
ダウン症候群の胎児に見られる可能性のあるエコー上の兆候は、妊娠の時期によって観察されやすさが異なります。
特定の兆候は妊娠初期に、また別の兆候は妊娠中期以降に確認されることが多いです。
妊娠初期におけるエコー検査(NT計測時期)
妊娠初期のエコー検査で最も注目されるダウン症候群に関連する兆候は、前述のNT(項部透亮像)の厚みです。
NTの計測に適した時期は、妊娠11週0日から13週6日の間です。
この時期の胎児は、NTの評価が最も正確に行えるサイズと発達段階にあります。
この時期を過ぎると、NTは自然に消失するか、他の組織に変化するため、正確な計測が難しくなります。
NTについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの解説記事をご覧ください。
この妊娠初期のエコー検査では、NTの厚みに加えて、胎児の心拍、CRL(頭殿長)、そして鼻骨の形成なども同時に評価されることがあります。
これらの情報を組み合わせて、ダウン症候群などの染色体異常の可能性を統計的に評価する「コンバインド検査」と呼ばれるスクリーニング検査が行われることもあります。
妊娠初期のエコー検査でNTが厚い、あるいは鼻骨が確認できないといった所見が見られた場合、ダウン症候群などの可能性が示唆されます。
ただし、この時期に見られる所見はあくまで初期の兆候であり、後の週数で問題がなくなるケースも少なくありません。
妊娠中期以降のエコー検査
妊娠中期(およそ妊娠18週頃から20週頃にかけて行われることが多い精密超音波検査など)以降は、胎児の臓器や体の構造がより詳細に観察できるようになります。
この時期のエコー検査では、以下のような兆候がないかを詳しく確認します。
ダウン症候群に関連するエコー所見の詳細については、こちらの記事で解説されています。
- 心臓の構造: 心房中隔欠損、心室中隔欠損、弁の異常など、心臓の構造的な異常がないかを丁寧に調べます。
- 消化器系の構造: 十二指腸閉鎖などの消化管の閉鎖がないかを確認します(エコー画像で特徴的な所見として捉えられることがあります)。
- 腎臓の構造: 腎盂拡張などがないかを確認します。
- 顔の特徴: 鼻骨の長さ、眼窩(目のくぼみ)の間隔、あごの形などを観察します。
- 手足の長さや形: 大腿骨や上腕骨の長さ、指の形などを確認します。
- その他の所見: 頚部浮腫、単一臍帯動脈など、様々なソフトマーカーがないかを調べます。
妊娠中期以降のエコー検査でこれらの兆候が複数見られた場合、ダウン症候群である可能性がより高まることが示唆されます。
しかし、繰り返しになりますが、これらの兆候も単独あるいは複数見られたとしても、それだけでダウン症候群と確定診断することはできません。
これらの所見は、確定診断のための追加検査(羊水検査など)を検討するきっかけとなる情報です。
妊娠の時期によってエコーで確認できる兆候は異なりますが、どの時期のエコー検査も、胎児の健康状態を知るための重要な機会です。
もしエコー検査で気になる所見があった場合は、担当の医師から必ず説明がありますので、疑問や不安な点があれば遠慮なく質問しましょう。
エコーでダウン症を指摘されなくても可能性はありますか?
エコー検査で特に気になる所見が見られなかった場合、ホッと安心されることでしょう。
しかし、「エコーで何も言われなかったけど、本当に大丈夫かな?」と、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
エコー検査でダウン症候群の可能性を示唆する所見が指摘されなかった場合でも、可能性はゼロではありません。
エコー検査で見られるダウン症候群の兆候について、専門的な視点からの情報も参考にしてみてください。
エコー検査の検出確率と限界
エコー検査は、胎児の形態的な異常やダウン症候群に関連するソフトマーカーを検出するための有用な手段ですが、限界もあります。
エコー検査だけでダウン症候群を検出できる確率は、検査を行う時期、観察する項目、そして検査を行う医師や技師の経験や技術によって異なります。
胎児超音波スクリーニングで評価される項目や用語については、専門サイトで詳しく確認できます。
一般的に、ダウン症候群の胎児の約半数から7割程度に、エコー検査で何らかの異常所見やソフトマーカーが見られると言われています。
つまり、約3割から5割程度のダウン症候群の胎児では、エコー検査で目立った異常所見が確認されない可能性があるということです。
これは、ダウン症候群の赤ちゃんの中には、エコーで見つけられるような明確な形態異常やソフトマーカーを持たない場合があるためです。
エコー検査の限界は、以下の点が挙げられます。
- 染色体異常を直接見ることはできない: 前述の通り、エコーは形態を見る検査であり、染色体異常そのものは診断できません。
- ソフトマーカーの解釈の難しさ: ソフトマーカーは非特異的(ダウン症候群以外でも見られる)であり、その臨床的な意義の解釈が難しい場合があります。
- 胎児の向きや状態: 胎児の体位によっては、特定の部位が観察しにくかったり、正確な計測ができなかったりすることがあります。
- 妊娠週数: 妊娠の進み具合によって、観察できる構造や所見が異なります。
- 検査者の技量: 精密なエコー検査を行うには、高度な知識と経験が必要です。
これらの限界があるため、エコー検査で「問題なし」と判断されたとしても、ダウン症候群の可能性が完全に否定されるわけではありません。
エコー検査はあくまで「スクリーニング検査」としての役割を担っており、高い確率で異常を見つけ出すことを目的としていますが、偽陰性(実際には異常があるのに見つけられないこと)の可能性は避けられません。
エコーで指摘されなかった場合のケース
エコー検査で特に指摘事項がなかった場合、担当の医師は胎児が順調に発育していると判断していると考えられます。
多くの妊婦さんにとって、エコー検査で異常が見られないことは安心材料となるでしょう。
しかし、「エコーで指摘されなかった=ダウン症の可能性はゼロ」ではありません。
もし、年齢などの要因からダウン症候群の可能性をより詳しく知りたいと考えている場合や、エコー検査の結果だけでは不安が解消されない場合は、他の出生前診断について担当の医師に相談することができます。
他の出生前診断には、非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)や、確定診断である絨毛検査や羊水検査などがあります。
これらの検査は、エコー検査とは異なる方法で胎児の染色体情報を調べるものであり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。
エコー検査の結果だけでなく、ご自身の年齢や家族歴、そして何をどの程度知りたいのかといった希望を考慮して、医師とよく相談し、どのような検査を受けるかを検討することが大切です。
エコー検査で指摘がなかったとしても、不安な気持ちを抱えたままでいる必要はありません。
医療者に相談し、ご自身にとって最適な選択肢を見つけましょう。
エコー所見があった場合の次のステップ
エコー検査で、ダウン症候群に関連する可能性のある兆候や所見が見られた場合、多くの妊婦さんやそのご家族は大きな不安を感じられることと思います。
このような状況に直面した場合、パニックにならず、冷静に次のステップについて考えることが重要です。
医師からの検査結果の告知について
エコー検査で気になる所見が見られた場合、担当の医師は、その所見がどのようなものであるか、そしてそれがダウン症候群などの疾患とどのように関連している可能性があるのかについて、丁寧に説明を行います。
医師からの説明を受ける際は、以下の点に留意すると良いでしょう。
- 落ち着いて話を聞く: 予期せぬ告知に動揺するのは当然ですが、まずは落ち着いて医師の説明を聞くように努めましょう。
- 疑問点を質問する: 所見の意味、可能性のある疾患、次に取るべき行動など、分からないことや不安な点は遠慮なく質問しましょう。メモを取るのも良いでしょう。
- パートナーと一緒に聞く: 可能な場合は、パートナーと一緒に説明を聞くことで、情報を共有し、今後のことを一緒に考えることができます。
- 一度にすべてを決めない: その場で最終的な判断を求められることは少ないです。まずは情報を持ち帰り、時間をかけてご夫婦で話し合う時間を持ちましょう。
医師は、エコーで得られた情報をもとに、胎児の状態を医学的な観点から説明してくれます。
しかし、エコー所見はあくまで可能性を示唆するものであり、確定診断ではないことを理解しておくことが重要です。
確定診断(羊水検査など)の必要性
エコー検査でダウン症候群の可能性を示唆する所見が見られた場合、その可能性を確定するために、確定診断を行うかどうかを検討することになります。
確定診断には、主に以下の2つの方法があります。
- 絨毛検査: 妊娠初期(妊娠11週~13週頃)に行われます。胎盤の一部である絨毛組織を採取し、染色体を調べます。比較的早い時期に結果が得られますが、羊水検査よりもわずかに流産のリスクが高いと言われています。
- 羊水検査: 妊娠中期(妊娠15週~18週頃に行われることが多い)に行われます。子宮内の羊水を採取し、羊水中に浮遊している胎児の細胞の染色体を調べます。絨毛検査よりは実施時期が遅くなりますが、一般的に染色体診断の精度が高いとされています。
これらの確定診断は、胎児の染色体異常(ダウン症候群であるか、あるいはその他の染色体異常があるか)をほぼ100%の精度で調べることができます。
しかし、検査の性質上、ごくわずかながら流産のリスク(一般的に0.1%~0.3%程度と言われています)が伴います。
エコー所見があった場合に確定診断を受けるかどうかは、ご夫婦の考え方によって異なります。
確定診断は、その後の妊娠継続や出産、育児に対する準備をする上で重要な情報となり得ますが、同時にリスクも伴います。
医師から確定診断について説明を受けた際には、検査の内容、精度、リスク、そして検査結果が出た後の選択肢などについて十分に理解し、ご夫婦でよく話し合った上で、検査を受けるかどうかを慎重に判断することが大切です。
NIPTなど他の出生前診断との関係性
エコー所見があった場合に検討される他の検査として、非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)があります。
NIPTは、母体から採血した血液に含まれる胎児由来のDNA断片を解析することで、ダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群(18トリソミー)、パタウ症候群(13トリソミー)といった特定の染色体異常の可能性を調べるスクリーニング検査です。
NIPTは、エコー検査のような胎児の形態を直接見る検査ではありませんが、これらの染色体異常に対する検出精度(感度・特異度)が比較的高いことが特徴です。
エコー検査と比較すると、エコー検査では見つけにくいソフトマーカーがなくても可能性を検出できる場合があります。
また、母体からの採血だけで行えるため、絨毛検査や羊水検査のような流産のリスクはありません。
エコー検査で気になる所見が見られた場合、確定診断の前にNIPTを検討するケースもあります。
NIPTで陽性(可能性が高い)という結果が出た場合は、確定診断である羊水検査や絨毛検査を受けることを検討することになります。
NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、確定診断ではないため、NIPTで陽性となっても、最終的な診断には確定診断が必要です。
出生前診断の種類と特徴の比較(例)
検査方法 | 検査時期目安 | 検査方法 | 検出できること | 精度(スクリーニング/確定) | リスク(流産など) |
---|---|---|---|---|---|
エコー検査 | 妊娠初期~後期 | 超音波で胎児の形態を見る | 形態異常、ソフトマーカーの有無 | スクリーニング | なし |
NIPT | 妊娠10週以降 | 母体採血で胎児DNAを解析 | 特定の染色体異常の可能性(高精度) | スクリーニング | なし |
コンバインド検査 | 妊娠11週~13週 | 母体採血+初期エコー(NTなど) | 特定の染色体異常の可能性(統計的) | スクリーニング | なし |
絨毛検査 | 妊娠11週~13週 | 絨毛組織を採取 | 胎児の染色体異常(確定) | 確定診断 | わずかにあり |
羊水検査 | 妊娠15週~18週頃 | 羊水を採取し細胞を培養・解析 | 胎児の染色体異常(確定) | 確定診断 | わずかにあり |
エコー検査で所見があった場合、これらの他の検査方法についても医師から説明があるでしょう。
それぞれの検査のメリット・デメリット、費用、実施時期、そしてご夫婦の考え方などを総合的に考慮して、どのような選択をするかを決めることになります。
どのような選択をするにしても、十分な情報を得て、納得した上で決めることが大切です。
ダウン症のエコー検査に関するよくある質問
エコー検査とダウン症候群について、妊婦さんが抱きやすい疑問にお答えします。
エコーでダウン症かどうか教えてくれる?
エコー検査は診断の手段ではないため、エコー検査を受けたその場で「この赤ちゃんはダウン症です」と確定的に告知されることはありません。
医師はエコーで観察された胎児の形態や所見について説明しますが、それはあくまでダウン症候群を含む何らかの疾患の「可能性」を示唆するものです。
もし、ダウン症候群に関連する可能性のある兆候が見られた場合は、医師からその旨と、さらなる検査(NIPTや確定診断など)を検討する必要性について説明があります。
確定診断を受けない限り、エコー検査だけではダウン症候群であるかを断定することはできません。
ダウン症の場合のエコー写真に特徴はある?
エコー写真は、超音波の反射によって得られた画像であり、見た目だけでダウン症候群であるかを判断することはできません。
ダウン症候群の胎児に見られる可能性のある兆候は、NTの厚みや特定の骨の長さ、心臓の構造など、医師が専門的な知識をもって計測・評価する項目です。
素人の方がエコー写真を見ただけで、「この写真に写っている赤ちゃんはダウン症だ」と判断することは不可能ですし、そのような心配をする必要もありません。
エコー写真はあくまでも記録であり、診断は trained medical professional によって行われます。
FLが短いと必ずダウン症?
FL(大腿骨長)が標準よりも短いという所見は、ダウン症候群の胎児に見られることのある「ソフトマーカー」の一つです。
しかし、FLが短いことだけでダウン症候群と確定することは絶対にありません。
胎児のサイズには個人差が大きく、遺伝的な体格、計測の誤差、あるいは単なる一時的な成長のばらつきなどが原因で、FLが短く計測されることはよくあります。
FLの短さだけが単独で見られる場合、ダウン症候群である可能性はそれほど高くないことが一般的です。
FLの短さに加えて、他の複数のソフトマーカーが見られたり、高年妊娠などのリスク因子があったりする場合に、ダウン症候群の可能性が考慮され、精密検査が検討されることになります。
胎児の動きに特徴はある?
エコー検査では、胎児が子宮内で手足を動かしたり、体の向きを変えたりする様子を観察することができます。
胎児の活発な動きは、元気に成長していることの一つのサインとなります。
ダウン症候群の胎児に、エコー検査で観察できるような特有の動きがあるかについては、一般的には言われていません。
胎児の動きのパターンや活発さは個人差が大きく、エコーで観察される動きだけでダウン症候群であるかを判断することはできません。
胎児の動きは、主に健康状態や神経系の発達の目安として評価されます。
まとめ:エコー検査はダウン症の「可能性」を知る手段
妊娠中のエコー検査は、お腹の赤ちゃんの成長や健康状態を確認するための非常に重要な検査です。
この検査で、ダウン症候群に関連する可能性のある特定の形態的な特徴や「兆候(ソフトマーカー)」が見られることがあります。
ダウン症候群に関連するエコー所見の詳細については、こちらの記事でも解説されています。
しかし、最も重要な点は、エコー検査だけでダウン症候群であると確定診断することはできないということです。
エコーで観察される兆候は、あくまでダウン症候群である「可能性」を示唆するものであり、他の原因でも起こり得ます。
また、ダウン症候群の胎児すべてにエコーで確認できる兆候が見られるわけでもありません。
エコー検査で見られるダウン症候群の兆候について、専門的な視点からの情報も参考にしてみてください。
もしエコー検査で気になる所見があった場合は、担当の医師から必ず丁寧な説明があります。
その際には、所見の意味や、次に検討できる検査(NIPTや確定診断など)について十分に説明を受け、疑問点や不安な点は遠慮なく質問しましょう。
医師は、ご夫婦の状況や希望を踏まえ、適切な情報を提供し、今後のサポートを行います。
エコー検査の結果に一喜一憂するのではなく、エコー検査が胎児の状態を知るための一つの「手段」であり、必要に応じて他の検査方法や専門家への相談があることを理解しておくことが大切です。
どのような状況であっても、落ち着いて情報を収集し、ご夫婦でよく話し合い、納得のいく選択をしてください。
免責事項: 本記事で提供する情報は、一般的な知識をまとめたものであり、医学的な診断や助言に代わるものではありません。個々の状況に関するご質問やご不安については、必ず医療機関で医師にご相談ください。