化学流産の原因は?症状や確率、繰り返すか不安な方へ

妊娠を心待ちにしている中で、妊娠検査薬で陽性反応が出たにもかかわらず、その後に生理のような出血が来て妊娠が継続しなかった経験は、つらいものです。これは「化学流産」と呼ばれる現象かもしれません。化学流産は決して珍しいことではなく、多くの女性が経験していると考えられています。その原因を知ることは、不安を軽減し、次の妊娠に向けて前向きになるための一歩となります。この記事では、化学流産の原因や症状、その後のケアについて詳しく解説します。

目次

化学流産とは?定義とメカニズム

「化学流産」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。これは、妊娠の非常に初期段階で起こる現象を指します。医学的な定義や、なぜ起こるのか、そのメカニズムについて見ていきましょう。

妊娠初期の出来事

妊娠は、卵子と精子が受精し、受精卵が子宮内膜に着床することで成立します。化学流産は、この一連のプロセスのごく初期に起こります。具体的には、受精卵が子宮内膜に着床したものの、その後の成長がうまく進まずに、妊娠が継続できなくなる状態です。受精卵の着床が継続できなかった状態とも言えます(https://minerva-clinic.or.jp/column/miscarriage/how-to-recognize-a-chemical-miscarriage/より)。

妊娠検査薬での陽性反応

化学流産の大きな特徴の一つは、妊娠検査薬で一度陽性反応が出ることです。これは、受精卵が着床することで、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されるためです。妊娠検査薬はこのhCGホルモンに反応して陽性を示します。しかし、その後妊娠が継続しないため、hCGの分泌も停止し、後に続く妊娠検査薬では陰性になったり、生理が始まったりします。

超音波検査で胎嚢が確認できない状態

通常の妊娠では、妊娠5週頃になると超音波検査で胎嚢(たいのう)と呼ばれる、赤ちゃんが入る袋が子宮内に確認できるようになります。しかし、化学流産の場合、妊娠検査薬で陽性になっても、この胎嚢が確認できる前に妊娠の継続が止まってしまうため、超音波検査では妊娠が確認されません。この点が、胎嚢が確認された後に起こる「臨床的流産」と区別されることがあります。

化学流産は、妊娠検査薬にて妊娠反応が陽性となったにも関わらず、子宮の中に胎嚢が確認できない状態を指します(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/chemical-abortion/より)。日本においては、流産の回数には含まれないと定義されることが多く、超音波検査で胎嚢が確認された後の臨床的流産とは区別されます(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/chemical-abortion/https://minerva-clinic.or.jp/column/miscarriage/how-to-recognize-a-chemical-miscarriage/より)。

着床不全との関連

化学流産は、広い意味で「着床不全」の一種と捉えることもできます。着床不全とは、体外受精などで良好な胚を子宮に戻しても、妊娠に至らない状態や、着床しても妊娠が継続しない状態を指します。化学流産は、まさに受精卵が着床したにも関わらず、その後早い段階で妊娠が終了してしまう状態であり、着床のプロセスに関連していると考えられています。ただし、一度の化学流産をもって直ちに不育症や不妊症と診断されるわけではありません。

このように、化学流産は妊娠の非常に初期に起こる出来事であり、妊娠検査薬の性能向上によって以前よりも多くの人がその存在に気づくようになりました。超音波検査で妊娠が確認される前に終了するため、「生化学的妊娠」と呼ばれることもあります(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/chemical-abortion/より)。

化学流産の主な原因

化学流産の原因は一つではなく、様々な要因が複合的に関わっていると考えられています。しかし、多くの場合、特定の原因をはっきりさせることは難しいのが現状です。主な原因として考えられているものをいくつか見ていきましょう。

受精卵側の問題(染色体異常など)

化学流産の最も多い原因は、受精卵そのものの問題、特に染色体異常であると考えられています。妊娠初期に発生する流産の約60~80%以上は、染色体異常が原因とされており、化学流産も同様に受精卵に原因があることがほとんどです(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/about-miscarriage/https://minerva-clinic.or.jp/column/miscarriage/how-to-recognize-a-chemical-miscarriage/より)。

受精卵は、母親からの卵子(23本の染色体)と父親からの精子(23本の染色体)が合わさって、合計46本の染色体を持つことで正常に発生します。しかし、卵子や精子が作られる過程や、受精・初期分割の過程で、染色体の数や構造にエラーが生じることがあります。例えば、染色体が多すぎたり(トリソミーなど)、少なすぎたり(モノソミーなど)するケースです。

このような染色体異常を持つ受精卵は、残念ながら正常な成長を続けることができません。妊娠の初期段階で、その成長が停止してしまいます。化学流産は、自然淘汰のプロセスの一つであり、育つことが難しい受精卵の多くがこの段階で妊娠を終えると考えられています。これは誰にでも起こりうる、偶発的な出来事であることが多いです。母体側の問題がなくても、染色体異常は一定の確率で発生します。特に、母体や父親の年齢が上がると、受精卵の染色体異常の発生率が上昇する傾向があることが知られています。

母体側の問題

受精卵側の問題が多い一方で、母体側の様々な要因も化学流産に関与する可能性があります。ただし、これらの要因が化学流産の直接的な原因となるケースは、受精卵側の問題に比べると少ないと考えられています。

ホルモンバランスの異常

妊娠を維持するためには、様々なホルモンが適切なバランスで分泌される必要があります。特に重要なのが、妊娠黄体から分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)です。プロゲステロンは、子宮内膜を厚くして受精卵が着床しやすい状態を整え、着床後の妊娠を維持する働きがあります。

もし、このプロゲステロンの分泌が不足している場合(黄体機能不全)、子宮内膜が十分に育たなかったり、着床後の妊娠を維持する力が弱まったりして、化学流産の原因となる可能性があります。その他にも、甲状腺ホルモンの異常なども、妊娠に影響を及ぼすことがあります。

子宮の形態異常や疾患

受精卵が着床し、育つ場所である子宮に問題がある場合も、化学流産の要因となりえます。

  • 子宮の形態異常: 子宮がハート型になっている(双角子宮)など、生まれつきの形態異常がある場合、着床しにくかったり、着床後の維持が難しくなったりすることがあります。
  • 子宮筋腫: 子宮にできる良性の腫瘍ですが、筋腫のできている場所や大きさによっては、子宮内膜の環境を悪化させ、着床を妨げたり、化学流産の原因となったりすることがあります。
  • 子宮内膜ポリープ: 子宮内膜にできる良性のイボ状の突起で、これも大きさや数によっては着床の妨げになることがあります。
  • アッシャーマン症候群: 子宮内膜が癒着してしまう病気で、着床そのものが難しくなります。

これらの子宮の問題は、不妊や流産の原因として知られていますが、化学流産にも関与する可能性が指摘されています。

免疫学的要因

母体の免疫システムが、受精卵や胎児を「異物」として認識し、攻撃してしまうのではないかという免疫学的な要因も研究されています。通常、妊娠中は母体の免疫システムが調整され、胎児を攻撃しないようになっていますが、このシステムに異常が生じる可能性が考えられています。具体的なメカニズムや診断基準はまだ確立されていない部分も多く、治療法についても議論がある分野です。

その他の全身性疾患

母体が何らかの全身性疾患を抱えている場合も、妊娠に影響を及ぼし、化学流産の原因となることがあります。

  • 糖尿病: 血糖値が高い状態が続くと、着床や初期胚の発生に悪影響を及ぼす可能性があります。血糖コントロールが重要です。
  • 甲状腺疾患: 甲状腺機能亢進症や機能低下症も、ホルモンバランスの乱れを通じて妊娠に影響することがあります。
  • 血液凝固異常(抗リン脂質抗体症候群など): 血液が固まりやすくなる体質の場合、子宮内の血流が悪くなり、着床や初期胚の成長に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
  • 自己免疫疾患: リウマチなどの自己免疫疾患も、妊娠の継続に影響を及ぼす可能性があります。

これらの疾患がある場合は、妊娠前から主治医とよく相談し、疾患のコントロールをしっかり行うことが重要です。

原因が特定できないケース

先に述べたように、化学流産の最も多い原因は受精卵の染色体異常であり、これは偶発的なことが多いです。また、母体側の要因が疑われる場合でも、検査を行っても明確な原因が特定できないケースも少なくありません。化学流産の原因は詳しくわかっていませんが、妊娠初期流産の多くと同様、受精卵に原因があることがほとんどと考えられています(https://minerva-clinic.or.jp/column/miscarriage/how-to-recognize-a-chemical-miscarriage/より)。

化学流産は非常に早期に起こるため、原因を特定するための情報(例えば、流産組織の染色体検査など)が得られにくいことも、原因究明を難しくしている要因の一つです。

一度の化学流産で原因を徹底的に調べることは一般的ではありません。なぜなら、ほとんどの場合が偶発的な受精卵の問題であり、次の妊娠には影響しないと考えられるためです。しかし、化学流産を繰り返す場合は、不育症の可能性も考慮し、母体側の要因を詳しく調べる検査が推奨されます(これについては後述します)。

化学流産の兆候と症状

化学流産は、妊娠検査薬で陽性が出た後に起こるため、普段の生理と区別がつかないことも多いです。しかし、なかにはいつもと違うと感じる兆候や症状が現れることがあります。

生理との違い

化学流産による出血は、生理予定日頃、あるいは生理予定日から少し遅れて始まります。そのため、多くの場合は「生理が来た」と感じ、妊娠が継続しなかったことに気づかないことがあります。

しかし、人によっては、普段の生理に比べて:
出血の量が多い
出血の期間が長い
レバー状の血の塊が出やすい
といった違いを感じる場合があります。また、普段の生理周期が規則正しい人が、生理予定日を数日過ぎてから出血が始まることで、「もしかして妊娠だったのかも」と気づくこともあります。

出血の状態(量や期間)

化学流産による出血は、個人差が非常に大きいです。前述のように、普段の生理とほとんど変わらない人もいれば、生理よりも量が多かったり、出血が長引いたりする人もいます。出血の期間も数日で終わる人もいれば、1週間以上続く人もいます。出血量は、通常の生理とさほど変わりないか少し多い程度になるケースが多くみられますhttps://minerva-clinic.or.jp/column/miscarriage/until-when-does-it-keep-positive-after-chemical-miscarriage/より)。

出血の色も、鮮血から茶褐色まで様々です。生理様の出血とともに、子宮内膜が剥がれ落ちる際に、レバー状の塊や、白い膜のようなもの(脱落膜)が排出されることがあります。中には血の塊や白い塊が一緒に出てくるケースもあり、これは赤ちゃんではなく妊娠の成分(子宮内膜など)です(https://minerva-clinic.or.jp/column/miscarriage/until-when-to-keep-positive-after-chemical-miscarriage/より)。

出血量が多く、生理用ナプキンが1時間も持たないほど大量に出血する場合は、化学流産以外の可能性も考えられるため、速やかに医療機関を受診してください。

腹痛の有無

化学流産に伴って、軽い腹痛や腰痛を伴うことがあります。これは、子宮が収縮して内容物を排出しようとする際に起こる痛みと考えられます。生理痛に似た、下腹部の鈍い痛みであることが多いですが、痛みの程度も個人差があります。強い痛みが続く場合は、医療機関に相談しましょう。

その他の症状(つわりなど)

もし妊娠初期症状(つわり、乳房の張り、眠気など)が少しでも現れていた場合、化学流産が起こるとこれらの症状は消失することが多いです。妊娠検査薬の陽性反応も、時間の経過とともに薄くなったり、陰性になったりします。化学流産が起こると即座にhCGが分泌されなくなるわけではなく、通常は出血が止まって1週間程度は陽性反応が出るようです(https://minerva-clinic.or.jp/column/miscarriage/until-when-does-it-keep-positive-after-chemical-miscarriage/より)。

気づかないことも多い化学流産

化学流産の定義からわかるように、妊娠検査薬を使わなければ、単に「生理が少し遅れたかな」「いつもより少し重い生理だったかな」と感じるだけで、妊娠の初期に終わったことに全く気づかないケースが非常に多いです。

妊娠検査薬を試すタイミングは人それぞれですが、生理予定日よりもかなり早い段階で検査薬を使用した場合、陽性反応が出ても後に生理が来ることがあります。これも化学流産ですが、「フライング検査」と呼ばれる早期の検査だからこそ気づく現象とも言えます。もし、生理予定日まで待ってから検査していれば、妊娠にすら気づかなかったかもしれません。一般的に、妊娠検査薬で適切に反応が出るのは、生理予定日を1週間過ぎた妊娠5週以降と言われています(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/about-miscarriage/より)。

このように、化学流産は妊娠検査薬の普及によって認知度が高まった現象であり、気づかれないまま終わるケースを含めると、実際の発生率はもっと高いと考えられています。

化学流産の確率

化学流産は決して珍しいことではありません。多くの女性が経験する可能性のある出来事です。その確率について、統計的な観点から見てみましょう。

全体的な発生確率

妊娠全体の何%が化学流産として終わるのかを正確に統計することは非常に難しいです。その主な理由は、前述したように、多くの化学流産が本人に気づかれないまま終わってしまうからです。妊娠検査薬を使わない限り、「少し遅れた生理」として処理されてしまうため、正確な数を把握することができません。

しかし、妊娠検査薬が普及した現代においては、妊娠の約15〜20%が臨床的な妊娠(超音波で胎嚢が確認できる妊娠)に至る前に終了する、つまり化学流産であるとする推計があります。体外受精の分野では、着床後の胚の運命を詳細に追跡できるため、化学流産の発生率に関するデータが蓄積されていますが、自然妊娠の場合の正確な確率は把握が困難です。化学流産の一般的な原因が受精卵の染色体異常であり、これが妊娠初期流産の多くを占める(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/about-miscarriage/より)という点からも、化学流産が多いことが推測されます。

いずれにしても、化学流産は非常に多くの人が経験する可能性のある出来事であり、決して特別なことではありません。一度の化学流産を経験したからといって、次の妊娠が難しいということではありませんので、過度に心配する必要はありません。

年齢と確率の関係

化学流産の最も一般的な原因は受精卵の染色体異常であるため、母体年齢の上昇に伴い、化学流産の確率も上昇する傾向があります。

これは、卵子の老化に伴い、染色体異常の発生率が高くなるためと考えられています。一般的に、35歳を過ぎると卵子の質が低下し始めると言われており、40歳を過ぎると染色体異常を持つ受精卵ができる確率がさらに上昇します。

例えば、
20代後半~30代前半の女性の流産率は約10~15%程度ですが、この中には化学流産も含まれます。
40歳では流産率が約40%程度
45歳では流産率が約70%程度
になると言われています(これらは臨床的流産を含む流産全体の確率ですが、年齢に伴う受精卵の染色体異常の増加は、化学流産の増加にもつながると考えられます)。

このように、年齢は化学流産の確率に影響を与える要因の一つですが、若い年齢でも化学流産は起こりえますし、年齢が高いからといって必ずしも化学流産を経験するわけではありません。確率を知ることは重要ですが、数字に捉われすぎず、必要以上に不安にならないことも大切です。

化学流産を繰り返す場合(不育症との関連)

一度の化学流産は珍しいことではなく、ほとんどの場合が偶発的な受精卵の染色体異常が原因であり、次の妊娠に影響しないと考えられています。しかし、化学流産や臨床的流産を繰り返し経験する場合は、偶発的な問題だけでなく、母体側に何らかの要因が隠れている可能性も考慮し、「不育症」の観点から詳しい検査が推奨されることがあります。

繰り返す原因の可能性

化学流産を繰り返す場合、以下のような母体側の要因が関与している可能性があります。

可能性のある原因 内容
血液凝固異常 血液を固まりにくくする働きを持つ因子(プロテインS, プロテインC, アンチトロンビンIIIなど)が不足していたり、血液を固まりやすくする自己抗体(抗リン脂質抗体など)があったりする場合。子宮内の血栓形成により着床や胎盤形成が妨げられる。代表的な疾患に抗リン脂質抗体症候群、プロテインS欠乏症、活性化プロテインC抵抗性など。
内分泌異常 甲状腺機能異常(亢進症、低下症)、高プロラクチン血症、糖尿病など。ホルモンバランスが乱れると着床や妊娠継続に悪影響を及ぼす。
子宮形態異常 子宮奇形(中隔子宮、双角子宮など)、子宮筋腫、子宮内膜ポリープなど。子宮の形や内腔の状態に問題があると、着床しにくかったり、妊娠を維持できなかったりする。
免疫系の異常 自己免疫疾患(SLEなど)、NK細胞活性異常など(まだ研究段階の分野も多い)。
夫婦どちらかの染色体構造異常 均衡型転座など、夫婦のどちらかが染色体の構造に異常を持っている場合、受精卵に不均衡型の染色体異常が生じやすくなる。

専門的な検査と診断

化学流産を含む流産を繰り返す場合、「不育症」の専門的な検査が行われることがあります。不育症とは、妊娠はするものの流産や死産を繰り返し、生児が得られない状態を指します。明確な定義はありませんが、一般的には2回以上の流産・死産を繰り返した場合に不育症と診断され、検査や治療が検討されます。化学流産をどこまで回数に含めるかは医師の判断や施設の方針によりますが、化学流産であっても繰り返し経験して強い不安がある場合は、相談を検討する価値はあります。

不育症の検査には、以下のようなものがあります。

検査項目 内容
内分泌検査 血液検査でホルモン値(プロゲステロン、プロラクチン、甲状腺ホルモンなど)を測定し、内分泌系の異常がないか調べます。
子宮卵管造影検査 子宮内に造影剤を注入し、X線で子宮の形や卵管の通りを調べます。子宮形態異常や子宮内腔の癒着などがわかります。
子宮鏡検査 細いカメラを子宮内に入れ、子宮内膜の状態やポリープ、筋腫、癒着などを直接観察します。
超音波検査 経腟超音波検査で子宮の大きさや形、筋腫、卵巣の状態などを調べます。
血液凝固系検査 血液検査で血液が固まりやすい体質かどうかを調べます(抗リン脂質抗体、プロテインS、プロテインC、アンチトロンビンIIIなど)。
免疫系検査 自己抗体(抗核抗体など)やNK細胞活性などを調べることがありますが、保険適用外の場合や、診断・治療法が確立されていないものもあります。
夫婦染色体検査 血液検査で、夫婦それぞれの染色体に構造異常がないか調べます。反復流産・死産を繰り返す場合に考慮されます。

これらの検査によって、不育症の原因が特定されることもあります。原因が特定された場合は、その原因に応じた治療法(ホルモン補充療法、抗凝固療法、手術など)を行うことで、次の妊娠を継続できる可能性が高まります。

医療機関への相談の目安

一度の化学流産であれば、特別な検査や治療は不要な場合がほとんどです。しかし、以下のような場合は、医療機関(産婦人科、不妊治療専門クリニック、不育症外来など)に相談することを検討しましょう。

  • 化学流産を繰り返している
  • 化学流産だけでなく、超音波で確認できる流産も経験している
  • 年齢が高い
  • 基礎疾患(糖尿病、甲状腺疾患など)がある
  • 化学流産や今後の妊娠について強い不安を感じている

特に、化学流産を2回以上繰り返している、あるいは化学流産と臨床的流産を合わせて2回以上繰り返している場合は、不育症の検査について相談してみるのが良いでしょう。化学流産は流産の回数に含まれないと定義されることが多いですが(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/chemical-abortion/より)、繰り返し経験して不安が大きい場合は相談する価値があります。早期に相談することで、原因が特定され、適切な対応をとることができるかもしれません。一人で悩まず、専門家のアドバイスを求めることが大切です。

化学流産後の心と体のケア

化学流産は、妊娠検査薬で陽性を見てからの出来事であるため、たとえ早い段階であっても、精神的なショックを受けることがあります。また、体も妊娠に向けて変化を始めていたため、その後の回復についても知っておく必要があります。

体の回復について

化学流産の場合、超音波で胎嚢が確認される前に終了するため、子宮の内容物は生理様の出血とともに自然に排出されることがほとんどです。特別な手術(子宮内容除去術など)が必要になることは、まずありません。

出血は通常、数日から1週間程度で収まりますが、生理より長引いたり、出血量が多かったりする場合もあります。腹痛も数日続くことがありますが、徐々に軽減していくはずです。

出血や腹痛がひどい場合、発熱がある場合、出血が2週間以上続く場合などは、完全に排出されずに子宮内に残っている可能性や、感染症の可能性があるため、必ず医療機関を受診してください。

体の回復には、十分な休息をとることが大切です。無理はせず、ゆっくり過ごしましょう。次の生理は、化学流産後、通常は数週間から1ヶ月程度で来ることが多いですが、ホルモンバランスが元に戻るのに時間がかかる場合もあり、周期が一時的に乱れることもあります。

次の妊娠への影響

化学流産を経験したことが、その後の妊娠に悪影響を及ぼすという医学的な根拠はありません。一度化学流産を経験したからといって、次の妊娠が難しくなるわけではありませんし、流産しやすくなるわけでもありません。

化学流産の原因の多くは偶発的な受精卵の染色体異常であり、これは次回の妊娠とは直接関係ないことがほとんどです。

ただし、化学流産を繰り返している場合は、前述のように不育症の可能性も考慮し、原因を調べる検査を検討する必要があります。原因が見つかれば、適切な治療によって次の妊娠を成功させる可能性を高めることができます。

精神的なケアの重要性

妊娠検査薬の陽性反応は、多くの人にとって喜びや希望をもたらすものです。しかし、その後の化学流産によって、期待が打ち砕かれ、悲しみや失望、自分を責める気持ち、そして今後の妊娠に対する不安など、様々な感情が湧き上がることがあります。

たとえ短い期間であっても、「赤ちゃんができた」と感じていた気持ちは本物であり、その妊娠が終わってしまったことに対する悲しみは当然の感情です。「まだ病院に行く前だったから」「初期だったから」といって、その悲しみを軽視する必要は全くありません。

大切なのは、その感情を抑え込まず、自分自身の心に正直に向き合うことです。悲しいときは悲しみ、つらいときはつらいと感じて良いのです。

パートナーと気持ちを分かち合うこと、信頼できる友人や家族に話を聞いてもらうことも心の回復につながります。一人で抱え込まず、誰かに話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがあります。

もし、悲しみや不安が強く、日常生活に支障が出ていると感じる場合は、専門家(心理カウンセラーや精神科医など)に相談することも考えてみましょう。医療機関の中には、不妊治療や不育症に関する相談窓口や心理カウンセリングを提供している施設もあります。

また、妊娠を望む気持ちと、再び化学流産を経験するのではないかという不安の間で揺れ動くこともあるかもしれません。次の妊活をいつ再開するかについても、パートナーとよく話し合い、体と心の準備ができてから進めることが大切です。焦る必要はありません。

化学流産に関するよくある質問

化学流産を経験したり、その可能性があったりする場合、様々な疑問が浮かんでくると思います。ここでは、化学流産に関してよく聞かれる質問にお答えします。

化学流産後、生理はいつきますか?

化学流産後の最初の生理は、通常、化学流産による出血が始まってから数週間(目安としては2〜6週間程度)で来ることが多いです。化学流産は非常に初期の段階で起こるため、体の回復も比較的早く、次の生理周期も比較的早く戻りやすい傾向にあります。

ただし、生理周期は個人差が大きく、ストレスや体調によっても変動します。すぐにいつもの周期に戻らないからといって、必ずしも何か問題があるわけではありません。心配な場合は、医療機関に相談してみましょう。

化学流産後、いつから妊活を再開できますか?

化学流産後の妊活再開時期について、明確な医学的ガイドラインはありません。一般的には、化学流産後の最初の生理が来てから(つまり、一度リセットされてから)妊活を再開しても良いとされています。最初の生理が来ることで、子宮内膜が一度完全に剥がれ落ち、次の妊娠に向けて準備が整うと考えられます。

しかし、これはあくまで目安であり、大切なのは心と体の両方の準備が整っているかです。体の回復を待つとともに、化学流産による精神的なショックから立ち直れているかどうかも重要な判断基準です。焦って妊活を再開するよりも、十分に休息をとり、前向きな気持ちになってから始める方が良い結果につながることもあります。具体的な時期については、個々の状況に応じて医師に相談することをお勧めします。

化学流産は「流産」として扱われますか?

医学的な定義においては、化学流産は「臨床的妊娠」に至る前に終了した妊娠として扱われることが多く、「流産」とは区別されることがあります。臨床的妊娠とは、超音波検査で胎嚢が確認できた妊娠を指します。化学流産は、妊娠検査薬で陽性になっても、超音波で胎嚢が確認できないまま終了します。

日本において化学流産は、流産の回数に含まれないと定義されることが一般的です(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/chemical-abortion/https://minerva-clinic.or.jp/column/miscarriage/how-to-recognize-a-chemical-miscarriage/より)。

しかし、妊娠検査薬で陽性を見たという事実がある以上、本人にとっては妊娠という認識があり、それが継続しなかったことへのショックや悲しみは、臨床的流産と同様に大きい場合があります。

診断書などで「流産」として扱われるかは、医療機関の方針によって異なることがあります。例えば、自治体によっては流産後の支援制度がありますが、化学流産がその対象となるかは自治体によって判断が異なる可能性があります。もし、公的な手続きで診断書などが必要になる場合は、医療機関に相談してみましょう。

まとめ:化学流産の原因を理解し、必要なら医療機関へ相談を

化学流産は、妊娠検査薬で陽性反応が出たものの、超音波検査で胎嚢が確認される前に妊娠が終了してしまう、妊娠の非常に初期段階で起こる出来事です。妊娠検査薬にて妊娠反応が陽性となったにも関わらず、子宮の中に胎嚢が確認できない状態を指し(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/chemical-abortion/より)、多くの場合生理と区別がつかず、気づかれないまま終わりますが、妊娠検査薬の普及により、その存在が広く知られるようになりました。

化学流産の最も多い原因は、受精卵の染色体異常であり、これは多くの場合、偶発的に発生する自然淘汰のプロセスと考えられています。妊娠初期の流産の約60~80%以上は染色体異常が原因であり、化学流産も受精卵に原因があることがほとんどです(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/about-miscarriage/https://minerva-clinic.or.jp/column/miscarriage/how-to-recognize-a-chemical-miscarriage/より)。その他にも、ホルモンバランスの異常、子宮の形態異常や疾患、免疫学的要因、全身性疾患など、様々な母体側の要因が関与する可能性もありますが、一度の化学流産でこれらの原因を特定することは難しいのが現状です。

化学流産は決して珍しいことではなく、多くの女性が経験する可能性のある出来事であり、一度の経験がその後の妊娠に悪影響を及ぼすことはありません。また、日本においては流産の回数に含まれないと定義されることが一般的です(https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/chemical-abortion/https://minerva-clinic.or.jp/column/miscarriage/how-to-recognize-a-chemical-miscarriage/より)。

しかし、化学流産を繰り返す場合や、化学流産以外にも流産経験がある場合は、不育症の可能性も考慮し、専門的な検査を検討することが推奨されます。年齢が高い方や基礎疾患がある方も、不安があれば早めに医療機関に相談してみましょう。

化学流産は体への負担は少ないことが多いですが、妊娠を期待していた分、精神的なショックが大きいことがあります。一人で抱え込まず、パートナーや家族と気持ちを共有したり、必要であれば専門家のサポートを求めたりすることも大切です。

化学流産を経験したすべての方に、一日も早く心が安らぎ、次の妊娠に向けて前向きな気持ちになれることを願っています。原因を理解し、必要に応じて医療機関へ相談することで、未来への希望が見えてくるはずです。


免責事項:
この記事で提供される情報は一般的なものであり、医学的なアドバイスを代替するものではありません。個々の健康状態に関する懸念や症状については、必ず医療専門家に相談してください。この記事の情報に基づいて行った行為の結果について、当方はいかなる責任も負いません。

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