受精卵が子宮内膜に根を下ろす「着床」。この着床は、妊娠の始まりを告げる重要なステップです。多くの女性が、この時期に体に起こる変化に敏感になり、「もしかして妊娠かも?」と期待や不安を抱くことがあります。しかし、着床時期に現れる可能性のある症状は非常に個人差が大きく、また生理前の症状(PMS)とよく似ているため、自己判断は難しいのが現状です。この記事では、着床とは何か、着床時に起こりうる可能性のある様々な症状、そしてそれらの症状はいつから自覚できるのか、さらに妊娠検査薬を使う適切なタイミングについて詳しく解説します。妊娠の可能性についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
着床とは?妊娠成立までのステップ
妊娠は、精子と卵子が出会って受精卵ができ、それが子宮に着床することで成立します。この一連のプロセスは、いくつかの段階を経て進行します。
まず、排卵された卵子が卵管に入り、そこで精子と出会うと受精が起こります。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、約3〜5日かけて卵管を通り、子宮へと移動します。この頃には受精卵は「胚盤胞(はいばんほう)」と呼ばれる状態になっています。
子宮にたどり着いた胚盤胞は、子宮内膜にもぐり込み、しっかりと結合します。このプロセスが「着床」です。着床は一般的に、受精から約6日〜12日後にかけて起こるとされています。医師監修の解説によると、着床の時期は妊娠3週目前後であり、受精後約12日前後で完了する場合が一般的です。着床が完了して初めて、医学的に妊娠が成立したと判断されます。つまり、受精卵ができただけでは妊娠とは言えず、子宮内膜に根付くことが不可欠なのです。
着床は非常にデリケートなプロセスであり、受精卵の質や子宮内膜の状態など、様々な要因が影響します。無事に着床が完了すると、胎盤のもととなる組織からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌され始め、これが妊娠検査薬で検出されることで妊娠を確認できるようになります。
着床時に現れる可能性のある主な症状
着床時期に、体の変化を感じる女性は少なくありません。しかし、これらの症状は妊娠初期のサインである可能性もあれば、生理前に現れる症状(PMS)である可能性もあります。また、まったく自覚症状がないまま妊娠に至るケースも多いです。あくまで「可能性のある症状」として理解することが大切です。
着床時期に自覚する可能性がある主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 着床出血
- 着床痛
- 基礎体温の変化
- 胸の張りや痛み
- 眠気やだるさ
- 吐き気や胃の不快感
- 頻尿
- イライラや情緒不安定
- 腰痛
- おりものの量や性状の変化
これらの症状は、個人によって感じ方や程度が大きく異なります。また、同じ人でも周期によって症状が出たり出なかったりすることもあります。
着床出血の特徴と時期
着床出血は、受精卵が子宮内膜にもぐり込む際に、子宮内膜の血管が傷つくことによって起こる可能性のある少量の出血です。妊娠のごく初期に見られる症状の一つとして知られています。
- 特徴:
- 量: 生理よりも明らかに少ない量で、おりものに血が混じった程度、あるいは少量のにじむような出血であることが多いです。生理のように量が増えたり、塊が出たりすることは通常ありません。
- 色: 鮮血というよりは、ピンク色、茶色、あるいは薄い赤色であることが多いです。
- 期間: 数時間で終わることもあれば、1〜3日程度続くこともありますが、長くても数日で治まります。医師監修の情報によると、着床出血は受精卵が子宮内膜にくっつく時に生じる出血で、約1〜2日間続くことがあるとされています。生理のように5〜7日続くことは稀です。
- 時期: 生理予定日の数日前から生理予定日頃にかけて見られることが多いです。これは、着床が排卵から約6〜12日後、つまり次の生理が始まる頃に起こるためです。
着床出血と生理の出血の見分け方:
最も大きな違いは、出血の「量」と「期間」です。生理は通常、出血量が徐々に増え、数日間続きますが、着床出血は少量で短期間であることがほとんどです。また、生理痛のような強い痛みを伴うことは少ない傾向があります。
ただし、着床出血がある人は全体の約20%程度と言われており、すべての人に起こるわけではありません。また、生理不順やホルモンバランスの乱れなどによって、生理前後に不正出血が見られることもあります。そのため、出血だけで着床したかどうかを確実に判断することはできません。
着床痛はどんな感じ?
着床痛も、着床の際に子宮内膜で起こる変化に関連して感じられる可能性のある痛みのことです。これも医学的に広く認知された症状というよりは、妊娠経験者の中での自覚症状として語られることが多いものです。
- 特徴:
- 場所: 下腹部、特に子宮のあるあたりに感じることが多いです。
- 種類: チクチク、ズキズキ、キューッ、生理痛のような鈍い痛みなど、感じ方には個人差があります。鋭い激痛であることは稀です。
- 程度: 生理痛に比べると軽いことが多いですが、これも個人差が大きいです。
- 期間: 数時間で治まることもあれば、1〜2日続くこともあります。継続的な強い痛みではありません。
- 時期: 着床時期(生理予定日の数日前から生理予定日頃)に感じられることが多いです。
着床痛と生理痛の見分け方:
生理痛も下腹部に痛みを感じますが、一般的に生理が始まる直前や生理中に痛みが強くなる傾向があります。一方、着床痛とされるものは、生理予定日の数日前に短期間だけ現れることが多いとされます。しかし、これも区別が難しく、PMSによる腹痛や、単なる体調の変化、腸の動きなどによっても下腹部の痛みを感じることはあります。
着床痛も着床出血と同様に、すべての人に起こるわけではありません。また、痛みの感じ方は主観的なものであり、これが確実に着床のサインであると断定することは不可能です。
基礎体温の変化
基礎体温は、妊娠の可能性を探る上で重要な指標の一つです。着床や妊娠初期には、ホルモンの影響によって基礎体温に特徴的な変化が現れることがあります。
通常、女性の月経周期における基礎体温は、排卵を境に低温期と高温期の二相性を示します。排卵後に分泌が増加する黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きにより、基礎体温は上昇し、次の生理が来るまで高温期が続きます。生理が始まると体温は低下し、低温期に戻ります。
着床時の基礎体温:
着床が起こると、妊娠を維持するために黄体ホルモンの分泌が継続されます。そのため、通常であれば生理が始まって体温が下がる時期になっても、高温期が維持されます。生理予定日を過ぎても高温期が続く場合、妊娠の可能性が考えられます。
インプランテーションディップ(着床期体温陥没):
一部の女性は、着床時期にあたる高温期の途中で、一時的に体温がガクッと下がる日を経験することがあります。これを「インプランテーションディップ」と呼び、着床のサインではないかと言われることがあります。これは、着床に伴ってエストロゲンというホルモンが一時的に増加し、それが体温を下げるのではないかと考えられています。
- インプランテーションディップの特徴:
- 時期: 高温期の半ば、着床が起こる時期(排卵から約7〜10日後)に見られることが多いです。
- 変化: 基礎体温が一時的に0.2〜0.3℃程度、普段の高温期より下がる。
- 期間: 1日だけで、翌日には再び高温に戻ることがほとんどです。
ただし、インプランテーションディップが見られる人もいれば、見られない人もいます。また、体温が一時的に下がる原因は着床だけとは限らず、測定ミスや体調の変化などによっても起こりえます。インプランテーションディップがあったからといって、必ず着床したと断定することはできません。重要なのは、生理予定日を過ぎても高温期が続いているかどうかです。
基礎体温は、毎日同じ条件(朝起きてすぐに、体を動かさずに舌の下で)で測定することが重要です。正確な基礎体温を記録することで、自分の体のリズムや変化を把握しやすくなります。
胸の張りや痛み
生理前になると胸が張ったり痛くなったりする症状(月経前症候群、PMS)は多くの女性が経験しますが、これと同様の、あるいはさらに強い症状が着床後にも現れることがあります。
妊娠初期には、妊娠を維持するために女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の分泌が急激に増加します。これらのホルモンの影響で乳腺が発達し、胸が張って大きくなったり、触れると痛みを感じたり、乳首が敏感になったりすることがあります。
- 特徴:
- 感じ方: 胸がパンパンに張る、重く感じる、押すと痛い、チクチクする、乳首が敏感で下着が擦れるだけでも痛い、など。
- 時期: 生理予定日の数日前から、生理予定日を過ぎても続くことが多いです。PMSによる胸の張りは生理が始まると和らぐことが多いですが、妊娠している場合は継続します。
ただし、PMSによる胸の張りや痛みと、妊娠初期の胸の症状は非常によく似ており、症状だけで区別することは困難です。また、これらの症状がないからといって妊娠していないということでもありません。
眠気やだるさ
着床後、体内で急激に変化するホルモンバランスは、全身に様々な影響を及ぼします。特に、妊娠を維持するために重要な役割を果たすプロゲステロンは、眠気を誘う作用があることが知られています。
- 特徴:
- 感じ方: 普段よりも強い眠気を感じる、日中に我慢できないほどの眠気に襲われる、寝ても寝ても眠い、体がだるく疲れやすい、微熱感があるなど。
- 時期: 生理予定日頃から感じ始めることが多いですが、個人差があります。
これらの症状も、生理前や生理中、あるいは単なる睡眠不足、疲労、風邪の引き始めなどによっても起こりえます。特にプロゲステロンは生理前にも分泌が増えるため、PMSによる眠気やだるさとの区別は難しいです。
吐き気や胃の不快感
いわゆる「つわり」と呼ばれる症状の最も代表的なものの一つが吐き気や胃の不快感です。これは妊娠初期、特に妊娠5〜6週頃から現れることが多いですが、中には着床時期にあたる生理予定日頃から軽い吐き気を感じる人もいます。
- 特徴:
- 感じ方: 胃がムカムカする、胸やけ、軽い吐き気、特定の匂いが不快に感じる、食欲不振または特定のものが食べたくなる(食べづわり)、唾液が多く出るなど。
- 時期: 一般的には妊娠5〜6週以降が多いが、早い人では生理予定日頃から始まることも。
吐き気や胃の不快感は、妊娠ホルモンの影響、特にhCGホルモンの急激な増加と関連があると考えられています。しかし、これも胃腸の風邪、食あたり、ストレス、PMSなど、妊娠以外の様々な原因でも起こりうる症状です。着床時期の軽い吐き気だけで妊娠を断定することはできません。
頻尿になることも
着床後、子宮が大きくなるにつれて膀胱を圧迫し、頻尿になることがあります。また、妊娠初期には体内の水分量が増加し、腎臓の働きが活発になるため、尿の生成量が増えて頻尿になることもあります。
- 特徴:
- 感じ方: 普段よりもトイレに行く回数が増える、夜中にトイレに起きることが増える。
- 時期: 妊娠初期の比較的早い段階から現れる可能性があります。
しかし、頻尿も冷え、膀胱炎、水分摂取量の増加、ストレスなど、妊娠以外の様々な原因で起こりうる症状です。特に着床時期の子宮はまだそれほど大きくないため、この時期の頻尿が直接的に着床のサインである可能性は低いとも考えられますが、ホルモンバランスの変化が影響している可能性も否定できません。
イライラや情緒不安定
妊娠初期には、ホルモンバランスの急激な変化が脳にも影響を及ぼし、精神的に不安定になることがあります。些細なことでイライラしたり、悲しくなったり、普段より感情的になったりすることがあります。
- 特徴:
- 感じ方: 理由もなくイライラする、気分が落ち込む、涙もろくなる、情緒不安定になる。
- 時期: 着床時期から生理予定日頃にかけて、ホルモンバランスの変化が大きい時期に現れる可能性があります。
これらの症状は、PMSによる精神的な不調と非常によく似ています。生理前も黄体ホルモンの影響で精神的に不安定になりやすい時期です。そのため、イライラや情緒不安定だけで妊娠を判断することは非常に難しいと言えます。
腰痛やおりものの変化
着床時期には、上に挙げた症状の他に、専門情報では腰痛やおりものの量・性状の変化なども着床時期の体の変化として挙げられています。
- 腰痛: ホルモンバランスの変化や、骨盤周りの血行の変化などが影響している可能性があります。
- おりものの変化: 量が増えたり、色や粘度が変わったりすることがあります。これもホルモンバランスの変化によるものです。
ただし、腰痛やおりものの変化も、生理前や生理中、その他の体調の変化によって起こりうる一般的な症状です。
症状 | 着床時期に起こる可能性 | 一般的な特徴 | 他の原因の可能性 | PMSとの類似性 |
---|---|---|---|---|
着床出血 | 高い(約20%の人) | 少量、ピンク〜茶色、1〜3日程度の短い出血 | 不正出血、生理不順 | 低 |
着床痛 | あり得る(個人差大) | 下腹部のチクチク、ズキズキ、鈍い痛み | PMS、便秘、腹痛、腸の動き | 高 |
基礎体温の変化 | 高い | 生理予定日以降も高温期が続く(インプランテーションディップもあり得る) | 体調不良、測定ミス | 低(生理で体温が下がるため) |
胸の張りや痛み | 高い | 胸が張る、痛み、乳首の敏感さ | PMS、ホルモンバランスの乱れ | 高 |
眠気やだるさ | 高い | 強い眠気、体がだるい、疲れやすい | PMS、疲労、睡眠不足、風邪の引き始め | 高 |
吐き気や胃の不快感 | あり得る(早い人) | ムカムカ、胸やけ、軽い吐き気 | 胃腸の不調、食あたり、ストレス、PMS | 中程度 |
頻尿 | あり得る(初期から) | トイレに行く回数が増える | 冷え、膀胱炎、水分過多、ストレス | 低 |
イライラ・情緒不安定 | あり得る | 理由もなくイライラ、落ち込み、感情的になる | PMS、ストレス、ホルモンバランスの乱れ | 高 |
腰痛 | あり得る | 腰の鈍痛、違和感 | PMS、冷え、疲労、姿勢 | 中程度 |
おりものの変化 | あり得る | 量の増減、色や粘度の変化 | 排卵期、PMS、感染症、ホルモンバランスの乱れ | 高 |
上記の表からもわかるように、着床時期に現れる可能性のある症状の多くは、生理前に起こるPMSの症状や他の体調の変化とよく似ています。そのため、これらの症状だけで「妊娠した!」と自己判断するのは難しいと言えます。
着床症状はいつから自覚できる?
着床症状を自覚できる時期は、個人によって大きく異なります。全く何も感じない人もいれば、生理予定日よりも早く何らかの変化を感じる人もいます。しかし、一般的に言われる着床や妊娠初期の症状は、着床が完了してhCGホルモンの分泌が始まる頃から、つまり生理予定日頃から現れ始めることが多いです。
受精からの日数と着床時期
受精は排卵のタイミングで起こります。排卵から受精卵が子宮に移動し、胚盤胞になって着床するまでには、通常約6日から12日かかります。
- 排卵日: 卵子と精子が出会う可能性がある日。
- 受精: 排卵から数時間以内。
- 卵管移動・細胞分裂: 受精から約3〜5日。
- 胚盤胞になる: 受精から約5〜7日。
- 着床: 受精から約6〜12日。
最も多いのは、受精から約7〜10日後に着床すると言われています。生理周期が28日の場合、排卵日は生理開始日から約14日目頃と計算されることが多いため、着床時期は生理開始日から約20日目〜26日目頃にあたります。これはちょうど、次の生理が始まる予定日の数日前から生理予定日頃にあたる時期です。
生理予定日との関係
多くの女性が着床症状を自覚し始めるのは、生理予定日の数日前から生理予定日頃にかけてです。
これは、この時期に着床が完了し、妊娠を維持するためのホルモン(特にhCG)の分泌が本格的に始まるからです。hCGホルモンは、つわり、眠気、だるさなどの様々な妊娠初期症状を引き起こす要因の一つと考えられています。
生理予定日を過ぎても生理が来ず、上で挙げたような症状が続く場合は、妊娠の可能性がより高まります。ただし、これらの症状はPMSと似ているため、症状だけでの判断はあくまで目安にすぎません。正確な判断には、妊娠検査薬の使用や医療機関での検査が必要です。
生理周期が安定している人ほど、生理予定日からの遅れや体調の変化で妊娠の可能性に気づきやすい傾向があります。しかし、生理不順の人は、いつが生理予定日か正確に把握するのが難しいため、症状だけで判断するのはさらに困難になります。
着床成功のサインとは?
「これがあれば着床成功!」と医学的に断定できる、明確なサインは残念ながらありません。上で解説した着床出血や着床痛なども、あくまで起こる可能性がある症状であり、すべての人に現れるわけではありませんし、他の原因でも起こりえます。
妊娠の成立を客観的に確認できる最も確実なサインは、着床後に分泌されるhCGホルモンが検出されることです。これを検出するのが妊娠検査薬や、医療機関での血液検査です。
体調の変化としては、生理予定日を過ぎても基礎体温の高温期が続くことや、PMSとは違う種類の症状や普段よりも強い症状が現れることで、「もしかして?」と感じる人は多いです。しかし、これらの体調の変化も個人差が非常に大きく、断定はできません。
したがって、着床成功を確実に知るためには、体のサインに一喜一憂するだけでなく、適切な時期に妊娠検査薬を使用するか、医療機関を受診することが必要です。
着床しなかった場合の可能性
受精卵ができても、必ずしも着床に成功するわけではありません。様々な原因で着床に至らなかったり、着床しても継続できなかったりすることがあります。
着床に至らなかった場合、子宮内膜はそのまま剥がれ落ちて、次の生理が来ます。体外受精などを行った場合を除き、ほとんどの場合は「生理が来た」という認識で終わり、着床しなかったことを特別な症状として自覚することはまずありません。
妊娠を望んでいる方にとっては残念な結果となりますが、多くの場合は受精卵側の染色体異常など、自然淘汰によるものであり、必ずしも母体側に問題があるわけではありません。しかし、もし何度も妊娠を試みても着床に至らない場合や、不正出血や強い腹痛など気になる症状がある場合は、婦人科医に相談してみることをお勧めします。
これらの症状が出たら?妊娠検査薬を使うタイミング
着床症状かな?と思うような体調の変化を感じたら、妊娠の可能性が気になりますよね。妊娠を自分で確認できる最も手軽な方法は、妊娠検査薬を使用することです。
妊娠検査薬が反応する時期
妊娠検査薬は、尿中に含まれるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを検出して妊娠の有無を判定します。hCGホルモンは、受精卵が子宮に着床した後、胎盤のもととなる組織から分泌され始めます。
hCGホルモンの分泌は着床直後から始まりますが、検査薬で検出できる量になるまでには時間がかかります。市販されている多くの妊娠検査薬は、生理予定日の約1週間後から正確な判定ができるように作られています。この時期になると、多くの妊娠で尿中のhCG濃度が検査薬の検出限界を超えているためです。
生理予定日1週間後が目安:
ほとんどの妊娠検査薬のパッケージには、「生理予定日より1週間後から検査可能」と記載されています。これは、最も信頼性の高い結果を得るための推奨時期です。
より正確な結果を得るために
正確な検査結果を得るためには、いくつかの注意点があります。
- 推奨時期を守る: 生理予定日より前に検査する「フライング検査」では、hCG濃度がまだ十分に高くなっておらず、妊娠していても陰性と出てしまう可能性があります(偽陰性)。また、化学流産(着床はしたが、妊娠が継続せず生理が来た場合)の兆候を拾ってしまう可能性もあります。正確性を期すなら、生理予定日1週間後まで待つのがベストです。
- 朝一番の尿を使用する: 朝一番の尿は、一日のうちで最もhCG濃度が高い傾向があります。より確実に検出するためには、朝一番の尿を使用するのがおすすめです。ただし、最近の高感度な検査薬では、日中の尿でも十分な精度が得られるものもあります。使用する検査薬の説明書を確認しましょう。
- 検査薬の説明書をよく読む: 検査薬の種類によって、尿をかける時間、判定までの時間、判定方法などが異なります。必ず説明書をよく読み、指示通りに使用してください。
- 水分摂取に注意する: 検査前に多量の水分を摂取すると、尿が薄まりhCG濃度が低くなる可能性があります。検査直前の過度な水分摂取は避けましょう。
- 判定時間内に確認する: 判定窓に結果が出るまでの時間は決まっています。指定された時間を過ぎてからの判定は、蒸発線などによって誤った結果(偽陽性)を示すことがあるため、判定時間内に確認することが重要です。
検査タイミング | メリット | デメリット |
---|---|---|
生理予定日より前(フライング) | 早く結果がわかる可能性がある | hCG濃度が不十分で偽陰性になる可能性がある、化学流産を拾う可能性がある |
生理予定日 | 一部の高感度検査薬で検出できる可能性がある | まだhCG濃度が低く偽陰性になる可能性がある |
生理予定日より1週間後(推奨時期) | 最も正確な結果が得られる | 結果が出るまで待つ必要がある |
生理予定日より1週間後以降(生理が来ない場合) | ほぼ正確な結果が得られる | 特にデメリットなし |
生理が予定日から遅れていて、上で解説したような症状が気になる場合は、まずは生理予定日1週間後を目安に妊娠検査薬を試してみましょう。そこで陽性反応が出た場合は、できるだけ早く医療機関を受診して、医師による正確な診断を受けてください。
着床時期や初期症状に関するQ&A
着床や妊娠初期の症状については、様々な疑問があるかと思います。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。
受精から着床まで何日かかる?
受精から着床までは、通常約6日から12日かかります。最も多いのは、受精から約7日目から10日目にかけてと言われています。医師監修の解説でも、受精後約12日前後で完了する場合が一般的とされています。この期間に、受精卵は卵管を移動し、細胞分裂を繰り返して胚盤胞となり、子宮内膜にもぐり込んで定着します。
妊娠何日目から症状が出る?
医学的な「妊娠何日目」は、最後に生理が始まった日(最終月経開始日)を「妊娠0週0日」と数えるのが一般的です。排卵日は妊娠2週0日頃にあたり、着床は妊娠3週頃にあたります。
着床によって引き起こされる可能性のある症状(着床出血や着床痛など)は、着床が起こる妊娠3週頃、つまり生理予定日の数日前から生理予定日頃に出現する可能性があります。医師監修の解説でも、妊娠超初期症状は妊娠3週目前後から現れ始めるとされています。
一方、吐き気などのいわゆる「つわり」の症状は、hCGホルモンの分泌が本格化する妊娠5週〜6週頃から現れることが多いですが、早い人では妊娠4週頃(生理予定日頃)から軽い症状を感じ始めることもあります。
したがって、最も早い体調の変化は生理予定日頃から現れる可能性がありますが、症状には個人差が大きく、何も感じない人も多くいます。
着床痛はどれくらい続く?
着床痛とされる下腹部の痛みは、一般的には数時間で治まるか、長くても1〜2日程度で自然に消失することが多いです。生理痛のように数日間継続して強い痛みを感じることは稀です。
もし、着床時期と思われる時期に強い腹痛が続いたり、出血量が多い場合は、着床とは別の原因(生理、不正出血、子宮外妊娠など)の可能性も考えられるため、医療機関を受診することをお勧めします。
着床出血は必ずある?
いいえ、着床出血は必ずあるわけではありません。着床出血を経験する女性は、妊娠した人のうちの約20%程度と言われています。多くの女性は着床出血を経験せずに妊娠に至ります。
着床出血がないからといって着床しなかったということでは決してありませんし、逆に少量でも不正出血があれば必ず着床出血というわけでもありません。出血だけで妊娠の有無を判断することはできません。
心配な場合は医療機関へ相談しましょう
着床時期や妊娠初期には、様々な体の変化が起こる可能性があります。上で解説したような症状は、妊娠のサインである可能性もあれば、生理前や他の原因による症状である可能性もあります。症状だけで自己判断することは難しく、不安に感じることが多いかもしれません。
- 生理予定日を1週間以上過ぎても生理が来ない
- 市販の妊娠検査薬で陽性反応が出た
- 下腹部にいつもと違う強い痛みがある
- 生理にしては量が少ない、あるいは量が多いなど、いつもと違う不正出血がある
- 妊娠の可能性があり、体の変化について専門医に相談したい
このような場合は、早めに婦人科や産婦人科を受診することをお勧めします。医師による診察や超音波検査、血液検査などによって、妊娠の有無や週数を正確に診断してもらえます。また、万が一、子宮外妊娠などの異常があった場合でも、早期発見・早期治療につながります。
経験豊富な医師に相談することで、体の状態を正確に把握し、安心して今後の対応を進めることができます。気になる症状がある場合や、妊娠について不安なことがある場合は、一人で悩まずに専門家を頼りましょう。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を推奨するものではありません。個人の体の状態や症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断を受けてください。本記事の情報によって生じたいかなる損害についても、当方は一切責任を負いかねます。