タダラフィルは、勃起不全(ED)の治療薬として世界中で広く処方されている薬剤です。その効果や作用時間には、他のED治療薬とは異なる特徴があり、「すごい」と言われることも少なくありません。しかし、インターネット上には誤った情報も散見されるため、正確な知識を持つことが重要です。
この記事では、タダラフィルの主な効果であるED治療を中心に、そのメカニズム、用量別の違い、効果の持続時間、そしてED以外の効能について、詳しく解説します。さらに、正しい服用方法や注意すべき副作用、処方方法についても触れていきます。タダラフィルの効果について深く理解したい方、服用を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
タダラフィルとは(ED治療薬シアリスの有効成分)
タダラフィルは、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬と呼ばれる薬剤の一種です。この系統の薬剤は、主に男性の勃起不全(ED)の治療に用いられます。
日本国内では、タダラフィルを有効成分とする先発医薬品として「シアリス」が2007年に製造販売承認を取得しました。その後、特許期間満了に伴い、複数の製薬会社から「タダラフィル錠」として様々な名称のジェネリック医薬品が製造・販売されています。
タダラフィルは、ED治療薬の市場において、バイアグラ(有効成分:シルデナフィル)、レビトラ(有効成分:バルデナフィル)に次いで登場した第三世代の薬剤に位置づけられます。これらのED治療薬はすべてPDE5阻害薬ですが、それぞれに作用時間や食事の影響の受けやすさなどの特徴が異なります。特にタダラフィルは、その効果の持続時間の長さにおいて、他の薬剤と一線を画しています。
ヒロクリニック泌尿器科のED治療に関する情報はこちらで詳しくご確認いただけます。国内で認可されているED治療薬や、かつての治療法についても触れられています。
タダラフィルの主な効果(ED治療)
タダラフィルの最も主要な効果は、ED(勃起不全)の症状を改善することです。EDとは、「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られない、または維持できない状態が持続または再発すること」と定義されています。タダラフィルは、この勃起のメカニズムに作用することで、硬度と持続性をサポートします。
EDの原因は、心因性(ストレスや精神的な要因)、器質性(糖尿病、高血圧、動脈硬化などの身体的な要因)、あるいはこれらが複合した混合性など様々です。タダラフィルを含むPDE5阻害薬は、これらの原因に関わらず、共通の最終経路である「陰茎海綿体への血流不足」を改善することで効果を発揮します。
タダラフィルを服用しても、性的な興奮がなければ勃起は起こりません。これは、タダラフィルが勃起そのものを引き起こすのではなく、性的な刺激によって生じる勃起のメカニズムをサポートする薬剤であるためです。パートナーとの触れ合いや視覚的な刺激など、性的な興奮があってはじめて、タダラフィルの効果によって十分な勃起が得られるようになります。
タダラフィルが勃起不全に効く仕組み
タダラフィルがEDに効果を発揮する仕組みは、その有効成分がPDE5という酵素の働きを阻害することにあります。
正常な勃起のメカニズムは以下の通りです。
- 性的な刺激を受けると、陰茎の神経から一酸化窒素(NO)が放出されます。
- NOは、陰茎海綿体にある平滑筋細胞内でグアニル酸シクラーゼという酵素を活性化させます。
- 活性化されたグアニル酸シクラーゼは、cGMP(環状グアノシン一リン酸)という物質を生成します。
- cGMPは、陰茎海綿体の平滑筋を弛緩させる作用があり、これにより陰茎への血流が増加し、海綿体が血液で満たされて硬くなります(勃起)。
- 性的興奮が収まると、PDE5という酵素がcGMPを分解し、平滑筋が収縮して勃起が収まります。
EDの場合、何らかの原因で陰茎への血流が十分に増加しない、あるいはcGMPが早期に分解されてしまうといった問題が生じています。
タダラフィルは、このcGMPを分解する酵素であるPDE5の働きを特異的に阻害します。PDE5が阻害されると、性的刺激によって生成されたcGMPが分解されにくくなるため、陰茎海綿体内のcGMP濃度が高い状態が維持されます。これにより、平滑筋の弛緩が持続し、陰茎への血流がより長時間、より豊富に流れ込むようになり、結果として十分な硬さの勃起を維持することが可能になります。
つまり、タダラフィルは、性的刺激による自然な勃起反応を「阻害されていた要因を取り除く」ことで増強・維持する薬剤と言えます。
用量別タダラフィルの効果と特徴
タダラフィルは、日本国内では主に5mg、10mg、20mgの3つの用量で処方されます。どの用量が適切かは、患者さんのEDの程度、健康状態、他の疾患の有無、併用薬などを考慮して医師が判断します。一般的に、用量が多いほど効果が強く現れる傾向がありますが、同時に副作用のリスクもわずかに高まる可能性があります。
タダラフィル5mgの効果(毎日服用含む)
タダラフィル5mgは、主に以下の目的で処方されます。
- 軽度から中等度のED治療(オンデマンド服用): 性行為の前に服用する「オンデマンド服用」の場合、5mgでも十分な効果が得られることがあります。初めてタダラフィルを試す場合や、他の用量で効果が強すぎると感じた場合などに選択肢となります。
- ED治療のための毎日服用(Daily Use): タダラフィル5mgの最大の特徴は、毎日継続して服用することで効果が期待できることです。毎日服用することで、血中のタダラフィル濃度を一定に保ち、性行為のタイミングに関わらず勃起しやすい状態を維持することができます。これは、性行為の計画を立てる必要がないという大きなメリットがあります。
- 良性前立腺肥大症(BPH)に伴う排尿障害の改善: 前述の通り、タダラフィル5mgはBPHに伴う排尿障害(頻尿、残尿感、排尿困難など)に対しても効果が認められており、保険適用で処方される場合があります。EDとBPHの両方に悩む患者さんにとって、5mgの毎日服用は特に有効な選択肢となり得ます。
5mgは他の用量に比べて効果は穏やかですが、副作用の発現頻度も低い傾向があります。特に毎日服用の場合、オンデマンド服用で見られる一時的な副作用(頭痛やほてりなど)を感じにくいという報告もあります。
タダラフィル10mgの効果
タダラフィル10mgは、日本でED治療薬として最初に承認された用量であり、現在も多くのED患者さんに処方される標準的な用量と言えます。
- ED治療(オンデマンド服用): 性行為の前に服用するオンデマンド服用が基本です。5mgで効果が不十分だった場合や、中等度以上のEDの場合に選択されます。
- 効果と副作用のバランス: 10mgは、効果と副作用のバランスが良いとされる用量です。20mgほどの強い効果を必要としないが、5mgでは物足りないという方に適しています。
服用から効果発現までの時間や持続時間は、基本的なタダラフィルの特徴(長い持続時間)を受け継いでいますが、効果のピーク時の硬度や維持力は5mgよりも強く感じられることが期待できます。
タダラフィル20mgの効果
タダラフィル20mgは、日本国内で承認されているED治療薬としてのタダラフィルの最大用量です。
- 重度EDの治療: 他の用量(5mgや10mg)で十分な効果が得られなかった場合や、重度のEDの場合に検討されます。
- より強い効果: 20mgは、タダラフィルの中で最も強い効果が期待できる用量です。より高い硬度や持続性を求める場合に処方されることがあります。
- 副作用のリスク: 用量が増えるほど、副作用が現れる頻度や程度が高まる可能性があります。ただし、これは個人差が大きく、20mgでも全く副作用を感じない人もいますし、軽い副作用で済む人もいます。
タダラフィル20mgは、必ず医師の診察と判断のもとで処方されるべき用量です。自己判断での増量は危険を伴う可能性があるため、絶対に行わないでください。
以下に、タダラフィル各用量の一般的な特徴をまとめます。
用量 | 主な用途 | 服用方法 | 効果の強さ | 持続時間 | 副作用の傾向 |
---|---|---|---|---|---|
5mg | 軽度~中等度ED、BPH | オンデマンド/毎日 | 穏やか | 最大36時間 | 比較的少ない |
10mg | 標準的なED治療 | オンデマンド | 標準的 | 最大36時間 | 標準的 |
20mg | 他の用量で効果不十分、重度ED | オンデマンド | 強い | 最大36時間 | やや高まる |
※効果や副作用は個人差があります。上記の表は一般的な傾向を示すものであり、すべての人に当てはまるわけではありません。
タダラフィルの効果時間・持続時間
タダラフィルが他のED治療薬と比較して最も特徴的なのは、その効果の「持続時間」の長さです。この長い持続時間によって、性行為のタイミングに縛られにくいという大きなメリットがあります。
服用から効果発現までの時間
タダラフィルの効果は、服用後およそ1時間程度から現れ始めると言われています。ただし、個人差やその日の体調、食事の状況などによって、効果が現れるまでの時間は異なります。早い人では30分程度で感じ始めることもあれば、2時間以上かかることもあります。
効果の発現時間は、他のPDE5阻害薬(バイアグラは約30分~1時間、レビトラは約15分~1時間)と比較すると、やや緩やかと言えます。しかし、タダラフィルの真価はその後の持続時間にあります。
効果のピークと持続時間
タダラフィルの血中濃度がピークに達し、効果が最も強く感じられるのは、服用後1時間から4時間後程度とされています。この時間帯を性行為のタイミングに合わせるのが、効果を最大限に引き出す一つの目安となります。
そして、タダラフィルの最大の特徴は、その効果の「持続時間」です。一般的に、タダラフィルの効果は服用後約30時間から36時間持続するとされています。これは、他のED治療薬(バイアグラは約4~5時間、レビトラは約8~10時間)と比較して圧倒的に長い時間です。
この長い持続時間から、タダラフィルは「ウィークエンドピル」とも呼ばれ、金曜日の夜に服用すれば、土曜日いっぱい効果が期待できるため、週末の性行為を計画しやすいというメリットがあります。
重要なのは、「効果が持続する=36時間勃起し続ける」わけではないということです。タダラフィルは、あくまで性的な刺激があった場合に勃起をサポートする薬剤です。薬が体内に残っている36時間の間は、性的刺激があれば勃起しやすい状態が保たれるという意味での持続時間です。この特性により、パートナーとの自然な流れの中で性行為を行うことが可能になります。
ウィキペディアによると、タダラフィルは「先行するED治療薬シルデナフィル(バイアグラ)やバルデナフィル(レビトラ)と異なり、翌日にも作用が持ち越す長時間型であり、食事の有無にかかわらず作用する点が異なる」とされています。
タダラフィルのED以外の効能
タダラフィルは、もともとED治療薬として開発・承認されましたが、その後、ED以外の疾患に対しても効果が認められ、治療薬として使用されるようになっています。日本国内では、EDと良性前立腺肥大症(BPH)に伴う排尿障害に対して、タダラフィル(シアリスおよびジェネリック)が承認されています。海外では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療薬としても使用されています(日本ではPAH治療薬としては別のタダラフィル製剤が承認)。
ウィキペディアにも「日本での適応は、勃起不全 (ED) 、肺動脈性肺高血圧症、前立腺肥大の排尿障害である。」と記載されています。
良性前立腺肥大症(BPH)への効果
良性前立腺肥大症(BPH)は、加齢とともに前立腺が大きくなり、尿道を圧迫することで様々な排尿に関する症状(頻尿、夜間頻尿、尿勢低下、残尿感など)を引き起こす疾患です。BPHとEDは合併することも多く、高齢男性においては両方の症状に悩む方が少なくありません。
タダラフィル5mgの毎日服用は、BPHに伴う排尿障害の改善にも効果があることが確認されています。タダラフィルがPDE5だけでなく、前立腺や膀胱、尿道の平滑筋にも作用し、これらの組織を弛緩させることで、尿路の抵抗を減らし、排尿症状を緩和すると考えられています。
EDとBPHの両方を持つ患者さんにとって、タダラフィル5mgの毎日服用は、一つの薬で両方の症状に対応できるというメリットがあります。ただし、BPHの治療薬としてのタダラフィルの使用は、医師の診断に基づき、適切な用量と服用方法で行われる必要があります。
肺動脈性肺高血圧症(PAH)への効果
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、肺の血管の血圧が異常に高くなる難病です。PAHになると、心臓に負担がかかり、息切れや疲労感などの症状が現れ、重症化すると命に関わることもあります。
タダラフィルは、肺血管の平滑筋にも作用し、血管を拡張させる効果があります。これにより、肺動脈の血圧を低下させ、PAHの症状を改善することが期待できます。
海外では、PAH治療薬としてタダラフィルが承認され、使用されています。
日本国内では、PAH治療薬としては「アドシルカ」という別のタダラフィル製剤が承認・使用されています。これは、ED治療薬としてのタダラフィル(シアリスやジェネリック)とは異なる製剤であり、用量や使用上の注意も異なります。ED治療薬を自己判断でPAH治療に使用することは絶対に避けてください。PAHの治療は専門医の管理のもとで行われる必要があります。
ウィキペディアでもタダラフィルの商品名として「シアリス、アドシルカ、ザルティア」が挙げられており、それぞれの適応症が異なります。
タダラフィルの効果についてさらに詳しく知りたい場合は、「タダラフィルの効果と特徴」に関する記事もご参照ください。
タダラフィルの正しい飲み方
タダラフィルの効果を最大限に引き出し、安全に服用するためには、正しい飲み方を守ることが非常に重要です。
推奨される服用タイミング
タダラフィルは、性行為の計画に合わせて服用する「オンデマンド服用」と、毎日一定量を服用し続ける「毎日服用(Daily Use)」の2つの主な服用方法があります。
- オンデマンド服用: 主に10mgまたは20mgを、性行為を行う予定のおよそ2~3時間前に服用するのが一般的です。効果は服用後1時間程度から現れ始め、ピークは1~4時間後ですが、持続時間が長いため、早めに服用しておいても問題ありません。むしろ、焦らずリラックスして性行為に臨めるという点で、早めの服用が推奨されることもあります。ただし、初めて服用する場合などは、ご自身の体に合うタイミングを試してみることも必要です。
- 毎日服用(Daily Use): 主に5mgを、毎日ほぼ同じ時間に服用します。毎日服用することで、血中のタダラフィル濃度が安定し、常にEDに効果が期待できる状態を維持できます。特定の性行為の時間を気にする必要がなくなり、より自然な形で性行為を行うことができます。
どちらの服用方法が適切かは、EDの程度、性行為の頻度、ライフスタイルなどを考慮して医師と相談して決定します。
服用する際は、必ず水またはぬるま湯で服用してください。多量のアルコールや特定の飲み物(グレープフルーツジュースなど)との併用は、効果や副作用に影響を与える可能性があるため避けるべきです。
食事やアルコールの影響
タダラフィルは、他のPDE5阻害薬(特にバイアグラ)と比較して、食事の影響を受けにくいという特徴があります。バイアグラは食事と一緒に服用すると効果が弱まることがありますが、タダラフィルは食事の直後に服用しても、吸収率や効果の現れ方に大きな影響が出にくいとされています。
ただし、まったく影響がないわけではありません。脂っこい食事や、大量の食事を摂った直後に服用すると、タダラフィルの吸収が遅れる可能性があり、効果が現れるまでに時間がかかったり、効果が十分に得られなかったりすることがあります。可能であれば、空腹時または軽食後に服用するのが最も効果的と言えるでしょう。どうしても食後に服用する場合は、食後ある程度の時間を置いてから服用することを推奨します。
ウィキペディアでも「食事の有無にかかわらず作用する点が異なる」と他のED薬との違いとして挙げられています。
アルコールについても、適量であればタダラフィルとの併用は可能とされています。しかし、過度の飲酒は血管拡張作用によって血圧を低下させ、タダラフィルの副作用(頭痛、めまい、血圧低下など)を増強させる可能性があります。また、アルコール自体が中枢神経の機能を抑制し、勃起力を低下させるため、タダラフィルの効果を妨げる可能性もあります。タダラフィル服用時は、飲酒は控えめにするのが賢明です。
飲んではいけないケース(禁忌)
タダラフィルは、すべての人に安全な薬ではありません。以下に該当する方は、タダラフィルを服用してはいけません(禁忌)。これらの状況でタダラフィルを服用すると、重篤な健康被害につながる可能性があります。
- 硝酸剤または一酸化窒素(NO)供与剤を投与中の患者: ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、亜硝酸アミルなどの薬剤は、心臓病(狭心症など)の治療に用いられる血管拡張薬です。これらの薬剤とタダラフィルを併用すると、急激かつ過度な血圧低下を引き起こし、失神や心臓発作など、命に関わる危険な状態(ショック)に陥る可能性があります。これはED治療薬において最も重要な禁忌事項です。
- 心血管系障害を有するなど性行為が不適当と考えられる患者: 不安定狭心症、重症心不全、コントロール不良の不整脈、最近6ヶ月以内の心筋梗塞や脳卒中の既往などがある場合、性行為自体が心臓に負担をかけるため危険を伴います。タダラフィルを服用して性行為を行うことは、そのリスクをさらに高める可能性があります。
- コントロール不良な低血圧または高血圧のある患者: 収縮期血圧が90mmHg未満の低血圧、または収縮期血圧が170mmHg以上もしくは拡張期血圧が100mmHg以上の高血圧がコントロールされていない場合、タダラフィル服用により血圧が変動し、健康被害を起こすリスクがあります。
- 重度の肝機能障害のある患者: タダラフィルは主に肝臓で代謝されるため、重度の肝機能障害があると薬が適切に代謝・排泄されず、血中濃度が高くなりすぎて副作用のリスクが増加します。
- タダラフィルに対して過敏症(アレルギー)の既往歴がある患者: 過去にタダラフィル(シアリスやジェネリック含む)を服用して発疹やかゆみ、呼吸困難などのアレルギー症状が出たことがある場合は、再度服用すると重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性があります。
- 網膜色素変性症の患者: 網膜色素変性症の一部には、PDE6という酵素の遺伝的な障害が関わっている可能性があり、タダラフィルの作用が視覚機能に悪影響を与える懸念があるため禁忌とされています。
- 女性: タダラフィルは男性のED治療薬として開発されており、女性における有効性および安全性は確認されていません。女性が服用しても効果がないばかりか、予期せぬ副作用や健康被害のリスクがあるため、服用は避けてください。
これ以外にも、特定の薬剤との飲み合わせに注意が必要なケースや、特定の疾患(鎌状赤血球性貧血、多発性骨髄腫、白血病、陰茎の物理的変形など)がある場合に慎重な投与が必要な場合があります。必ず医師に自身の健康状態、既往歴、現在服用中のすべての薬剤(処方薬、市販薬、サプリメント含む)を正確に伝えてください。
タダラフィル服用時の副作用と注意点
タダラフィルは適切に服用すれば比較的安全性の高い薬剤ですが、全く副作用がないわけではありません。多くの場合は軽度で一時的なものですが、稀に重篤な副作用が起こる可能性もあります。
よくある副作用(頭痛、ほてりなど)
タダラフィルを含むPDE5阻害薬に共通して見られる、比較的発生頻度が高い副作用としては、以下のようなものがあります。これらは主にタダラフィルの血管拡張作用に起因するものです。
- 頭痛: 最も頻度が高い副作用の一つです。血管が拡張することで頭部の血管に影響を与えるためと考えられています。多くは軽度で、時間とともに改善します。
- 顔のほてり(潮紅): 顔や首筋が赤くなり、熱っぽく感じる症状です。これも血管拡張によるものです。
- 鼻づまり: 鼻の粘膜の血管が拡張することで起こることがあります。
- 消化不良: 胃のむかつき、胸焼け、腹部不快感など。
- 背部痛、筋肉痛: 他のED治療薬に比べて、タダラフィルで比較的多く見られる副作用です。特に背中の下部や腰、太ももの筋肉に痛みを感じることがあります。多くは服用後12~24時間で現れ、持続時間は1~2日程度です。
- 目の充血: 目の血管が拡張して赤くなることがあります。
- めまい: 血圧がわずかに低下することなどが原因で起こることがあります。
これらの副作用は、通常は軽度で一時的であり、薬の効果が切れるとともに自然に消失することがほとんどです。症状が気になる場合や長引く場合は、医師に相談してください。症状を和らげるための対症療法(例:頭痛薬の服用)についてアドバイスをもらえることもあります。
重大な副作用について
頻度は非常に低いものの、タダラフィル服用時に注意が必要な重篤な副作用も報告されています。これらの症状が現れた場合は、すぐにタダラフィルの服用を中止し、直ちに医療機関を受診してください。
- 視覚障害(非動脈炎性前部虚血性視神経症:NAION): 稀な副作用ですが、視力の急激な低下や視野の一部が欠けるといった症状が現れることがあります。失明に至るケースも報告されていますが、非常に稀です。NAIONを発症した人の多くは、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙、虚血性心疾患などの危険因子を持っていたことが報告されています。タダラフィルとの因果関係は完全には解明されていませんが、リスクがある可能性は指摘されています。
- 聴力低下: 急な聴力の低下や難聴、耳鳴りなどが起こる可能性があります。
- 持続勃起症(プリアピズム): 性的刺激がないにも関わらず、勃起が4時間以上持続する状態です。放置すると陰茎組織の損傷や永久的な勃起不全につながる可能性があるため、緊急の処置が必要です。タダラフィルでは稀ですが、万一このような状態になった場合は、ためらわずにすぐに救急医療機関を受診してください。
- 心筋梗塞、脳卒中: 性行為そのものが心臓や血管に負担をかけるため、心血管系のリスクがある方が性行為中に心筋梗塞や脳卒中を起こす可能性はゼロではありません。タダラフィルが直接これらの原因となるわけではありませんが、前述の通り、心血管系のリスクが高い方は服用が禁忌とされています。
- 重篤な皮膚障害: スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症などが報告されていますが、極めて稀です。皮膚や粘膜に重い発疹や水ぶくれなどが現れた場合は、すぐに服用を中止し医師の診察を受けてください。
これらの重篤な副作用は非常に稀であり、多くの場合、医師の指示通りに服用し、禁忌や注意事項を守っていれば、安全に服用することができます。しかし、万が一異常を感じた場合は、迅速な対応が必要です。
併用禁忌薬・注意薬
「飲んではいけないケース(禁忌)」の項目で述べたように、硝酸剤または一酸化窒素(NO)供与剤との併用は絶対に避けてください。
その他にも、タダラフィルとの併用に注意が必要な薬剤があります。これらの薬剤と併用する場合、タダラフィルの効果や血中濃度に影響が出たり、副作用のリスクが高まったりする可能性があります。
- α(アルファ)遮断薬: 高血圧や前立腺肥大症の治療に用いられる薬剤です。タダラフィルとの併用で血圧が過度に低下する可能性があります。併用する場合は、低用量から開始するなどの注意が必要です。
- CYP3A4阻害薬: タダラフィルを分解する酵素(CYP3A4)の働きを阻害する薬剤(一部の抗生物質、抗真菌薬、HIV治療薬など)と併用すると、タダラフィルの血中濃度が上昇し、副作用のリスクが高まる可能性があります。
- CYP3A4誘導薬: CYP3A4の働きを促進する薬剤(一部の抗てんかん薬、結核治療薬など)と併用すると、タダラフィルの分解が早まり、効果が弱まる可能性があります。
- その他のED治療薬: タダラフィルを含むPDE5阻害薬や、他のED治療薬(アポモルフィンなど)との併用は、効果や安全性が確立されていないため避けるべきです。
現在服用しているすべての薬剤について、必ず医師または薬剤師に伝え、飲み合わせに問題がないか確認してもらうことが重要です。お薬手帳を活用すると、正確な情報伝達に役立ちます。
タダラフィルに関するよくある質問(FAQ)
タダラフィルについて、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。
タダラフィルが一番効くのはいつですか?
タダラフィルの効果が最も強く感じられるのは、一般的に服用後1時間から4時間後です。この時間帯に血中濃度がピークに達するため、性的な刺激があった場合に十分な勃起が得られやすいと考えられます。ただし、効果が現れる時間やピークには個人差があります。
タダラフィルは性行為の何分前に服用しますか?
オンデマンド服用の場合、性行為を行う予定のおよそ2~3時間前に服用するのが推奨されます。効果は服用後1時間程度から現れ始め、持続時間が最大36時間と長いため、早めに服用しておくことで焦らず性行為に臨めます。ご自身の体の反応を見ながら、最適なタイミングを見つけると良いでしょう。
タダラフィルのデメリットは何ですか?
タダラフィルのデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 個人差はありますが、副作用(頭痛、ほてり、背部痛など)が現れる可能性があること。
- 稀ではありますが、重篤な副作用や併用禁忌薬があること。
- 性的な刺激がないと効果を発揮しないため、性的欲求そのものを高める効果はないこと。
- ED治療目的の場合、多くは保険適用外(自由診療)となるため、費用がかかること。(男性不妊治療としてED治療薬が処方される場合は保険適用となる例外があります)
- 心因性の要素が強いEDの場合、薬の効果だけでなく、カウンセリングなど他のアプローチが必要な場合があること。
タダラフィルは何に効く薬ですか?
タダラフィルは、主に以下の疾患の治療薬として使用されます(日本国内で承認されている効能)。
- 勃起不全(ED):性行為に十分な勃起が得られない、または維持できない状態を改善します。
- 良性前立腺肥大症(BPH)に伴う排尿障害:BPHによる頻尿や残尿感などの症状を改善します(低用量5mgの毎日服用)。
海外では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療薬としても使用されていますが、日本国内ではPAH治療薬としては別の製剤が承認されています。
ウィキペディアのタダラフィルの項目でも、これらの適応症が記載されています。
タダラフィルとシアリスの違いは?
タダラフィルは有効成分の名称です。シアリスは、その有効成分であるタダラフィルを含有する先発医薬品(最初に開発・販売された薬)の商品名です。自動車に例えるなら、タダラフィルが「エンジン」で、シアリスが「車のブランド名」のような関係です。シアリスの特許が切れた後に、タダラフィルを有効成分とする様々なジェネリック医薬品(後発医薬品)が登場しています。
ウィキペディアによると、タダラフィルの商品名にはシアリスの他にアドシルカやザルティアがあります。
タダラフィルにジェネリックはありますか?
はい、タダラフィルにはジェネリック医薬品があります。先発医薬品であるシアリスの特許が2020年に満了したため、現在では複数の製薬会社からタダラフィルを有効成分とするジェネリック医薬品が製造・販売されています。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と有効成分、効果、安全性などが同等であることが国によって認められています。価格は先発医薬品よりも安価なことが多いため、費用を抑えたい場合に良い選択肢となります。
タダラフィルの処方について
タダラフィルは、医師の処方箋が必要な「処方箋医薬品」です。安全に服用するためには、必ず医師の診察を受けて処方してもらう必要があります。
どこで処方してもらえる?(医療機関)
タダラフィルは、ED治療を行っている泌尿器科や内科などのクリニックで処方してもらうことができます。最近では、ED治療に特化したED専門クリニックも増えています。
医療機関を受診することに抵抗がある方や、忙しくて受診する時間がない方には、オンライン診療が便利な選択肢となります。オンライン診療では、自宅や都合の良い場所から、パソコンやスマートフォンを通じて医師の診察を受け、タダラフィルを処方してもらうことができます。処方された薬は自宅に配送してもらえるため、他の人に知られる心配も少なく、手軽に利用できます。多くのED専門クリニックや一部の総合クリニックがオンライン診療に対応しています。
インターネット通販サイトなどでの個人輸入は、偽造薬や粗悪品を掴まされるリスクが非常に高く、健康被害や重篤な副作用につながる危険性があります。厚生労働省からも個人輸入の危険性について注意喚起がなされています。また、万が一健康被害が生じた場合でも、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。安全のため、タダラフィルは必ず国内の医療機関で医師の診察を受けて処方してもらってください。
ヒロクリニック泌尿器科のED治療に関する詳細についても参考にしてください。
診察の流れと費用
医療機関でのタダラフィルの処方は、一般的に以下のような流れで行われます。
- 予約: 多くのクリニックでは予約制です。電話やインターネット(Webサイト、LINEなど)で予約を取ります。オンライン診療の場合は、まずオンライン診療の予約を行います。
- 問診票の記入: 受付後、現在の症状、既往歴、アレルギーの有無、現在服用中の薬剤、生活習慣などについて問診票に記入します。正直かつ正確に記入することが重要です。
- 医師による診察: 記入した問診票に基づき、医師が症状や健康状態を確認します。EDの原因や程度、タダラフィルの適応があるかなどを判断します。他の疾患の可能性が疑われる場合や、安全性の確認のために、血圧測定や簡単な身体検査、必要に応じて血液検査などが行われることもあります。オンライン診療の場合は、ビデオ通話や音声通話で診察が行われます。
- 処方と説明: タダラフィルが処方可能と判断された場合、医師が適切な用量や服用方法、副作用、注意点について詳しく説明します。疑問点があれば遠慮なく質問しましょう。
- 会計と薬の受け取り: 診察後、会計を済ませます。ED治療目的の場合、多くは自由診療となりますので、費用はクリニックによって異なります。薬は院内処方の場合もあれば、処方箋を持って調剤薬局に行く場合もあります。オンライン診療の場合は、クレジットカードなどで決済し、後日自宅などに薬が配送されます。
費用については、自由診療のためクリニックによって大きく異なります。一般的には、診察料(初診料、再診料)と薬剤費がかかります。オンライン診療の場合は、これに加えてシステム利用料や配送料がかかることがあります。ジェネリック医薬品を選択することで、薬剤費を抑えることが可能です。事前にクリニックのウェブサイトなどで料金体系を確認しておくと良いでしょう。
まとめ
タダラフィルは、ED治療薬シアリスの有効成分であり、最大36時間という長い効果持続時間が最大の特徴です。この持続時間の長さにより、性行為のタイミングに神経質にならずに、より自然な性行為を楽しむことができます。
タダラフィルは、PDE5という酵素の働きを阻害することで、性的刺激があった際に陰茎への血流を増加させ、十分な硬さの勃起をサポートします。用量としては5mg、10mg、20mgがあり、EDの程度やライフスタイルに合わせて適切な用量を選択します。特に5mgは毎日服用することで、常に効果が期待できる状態を維持できるというメリットがあります。また、EDだけでなく、良性前立腺肥大症に伴う排尿障害にも効果が認められています。
タダラフィルは適切に服用すれば安全性の高い薬剤ですが、頭痛やほてりなどの副作用が起こる可能性があり、稀に重篤な副作用も起こり得ます。また、特定の薬剤(特に硝酸剤)との併用は命に関わる危険があるため絶対に避ける必要があります。安全かつ効果的に服用するためには、必ず医師の診察を受け、指示された用量・服用方法を守り、飲み合わせや健康状態について正確に伝えることが重要です。
タダラフィルは医師の処方箋が必要な薬剤であり、薬局やドラッグストアで購入することはできません。医療機関(泌尿器科、内科、ED専門クリニックなど)を受診するか、オンライン診療を利用することで処方してもらえます。インターネットでの個人輸入は偽造薬のリスクが高く危険です。
EDの症状に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、まずは専門の医療機関に相談してみましょう。タダラフィルの効果やご自身の状態に合った治療法について、医師から正確な情報とアドバイスを得ることができます。
免責事項: この記事は、タダラフィルの効果に関する一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や健康状態、併用薬などによって、適切な治療法や薬剤は異なります。タダラフィルの服用を検討される場合は、必ず医師の診察を受け、ご自身の状況についてご相談ください。この記事の情報に基づいて自己判断で服用したり、治療を中断したりしないでください。