クアトロ検査とは|偽陽性ってどういうこと?精度・費用・NIPTとの違いを解説

クアトロ検査(母体血清マーカー検査)は、妊娠中の女性の血液を採取し、特定のホルモンやタンパク質の値を測定することで、赤ちゃんが特定の染色体異常(ダウン症など)や開放性神経管欠損症を持つ確率を算出する検査です。この検査は「スクリーニング検査」と呼ばれ、確定診断ではありません。確率が高いと出た場合でも、必ずしも異常があるわけではなく、さらに詳しい検査(確定診断)が必要となります。比較的簡単な採血で行える検査ですが、その精度や結果の解釈には注意が必要です。

目次

クアトロ検査とは?基本的な情報

クアトロ検査は、お腹の赤ちゃんの状態を知るための出生前検査の一つです。非確定的検査に分類され、検査を受けるかどうかは妊婦さんやご家族が十分に情報を得た上で判断することが重要です。

クアトロ検査(母体血清マーカー検査)で分かること

クアトロ検査は、主に以下の3つの疾患について、赤ちゃんが生まれてくる確率を調べることができます。

  • ダウン症候群(21トリソミー): 染色体が通常2本であるところ、21番染色体が3本あることで起こる疾患です。様々な身体的・精神的な特徴を持ちます。
  • 18トリソミー: 18番染色体が3本あることで起こる疾患です。重い身体的な特徴を持ち、出生後も厳しい状況となることが多い疾患です。
  • 開放性神経管欠損症: 赤ちゃんの脳や脊髄のもととなる神経管が、発達の早期にうまく閉じないことで起こる先天異常です。二分脊椎や無脳症などが含まれます。

これらの疾患に対して「どのくらいの確率で赤ちゃんが持っている可能性があるか」を数値で示します。例えば、「確率が250分の1」といった形で結果が出ます。

クアトロ検査の検査方法と対象時期

クアトロ検査は、採血のみで行う非常にシンプルな検査です。妊婦さんの腕から少量の血液を採取します。特別な準備は必要ありません。

検査を受けられる時期は、一般的に妊娠15週0日から17週6日までが最適とされています。ただし、医療機関によっては多少前後することがあります。この時期の母体血中の特定の物質の濃度が、赤ちゃんの状態と関連が強いと考えられているためです。

採取された血液は検査機関に送られ、数週間後に結果が出ます。結果は通常、妊婦健診の際に医師から説明されます。

クアトロ検査の精度と限界

クアトロ検査は、採血のみという簡便さがある一方で、その「精度」については十分に理解しておく必要があります。精度は他の出生前検査と比較して低く、これが「あてにならない」と言われる主な理由です。

クアトロ検査の結果の見方(確率・カットオフ値)

クアトロ検査の結果は、「〇〇症候群である確率が△△分の1」という形で数値で報告されます。

この確率が、あらかじめ設定された「カットオフ値」よりも高いか低いかで、「陽性」または「陰性」という結果が出ます。例えば、ダウン症のカットオフ値が295分の1と設定されている医療機関の場合、確率が250分の1であれば「陽性」、300分の1であれば「陰性」となります。

重要なのは、「陽性」であっても「疾患が確定した」という意味では全くないということです。単に「確率が高い」と判定されたにすぎません。同様に、「陰性」であっても「絶対に疾患がない」わけではありません。単に「確率が低い」と判定されただけです。

クアトロ検査が「あてにならない」と言われる理由とは?(偽陽性・偽陰性)

クアトロ検査が「あてにならない」「精度が低い」と言われる最大の理由は、偽陽性率が高いことです。

  • 偽陽性: 実際には赤ちゃんが対象の疾患を持っていないのに、検査結果が「陽性」(確率が高い)と出ることを指します。クアトロ検査では、陽性と判定された人のうち、実際に赤ちゃんが対象の疾患を持っている確率はわずか数%程度と言われています。つまり、陽性と出た人のほとんど(90%以上)は偽陽性ということになります。
  • 偽陰性: 実際には赤ちゃんが対象の疾患を持っているのに、検査結果が「陰性」(確率が低い)と出ることを指します。偽陽性ほど多くはありませんが、偽陰性の可能性もゼロではありません。

なぜ偽陽性が多いのでしょうか?クアトロ検査は、妊婦さんの血液中の4種類の物質の濃度や、妊婦さんの年齢、体重、妊娠週数などを組み合わせて確率を計算します。これらの物質の濃度は、対象疾患がある場合とない場合で平均的に違いが見られますが、個人差や他の要因(例えば双子妊娠など)によっても変動するため、確率計算に誤差が生じやすいのです。

偽陽性が多いことで、実際には異常がないにもかかわらず、陽性結果を受け取った妊婦さんやご家族が大きな精神的負担や不安を感じることになります。そして、その不安を解消するために確定診断(羊水検査や絨毛検査)を検討することになりますが、これらの検査には流産のリスクが伴います。偽陽性の多さが、不要な確定診断の検討とそのリスクにつながる点が、クアトロ検査の大きな課題であり、「あてにならない」と感じられる要因となっています。

一方、対象疾患を見つける能力(検出率)は、ダウン症に対して約80%程度とされています。これは、100人のダウン症の赤ちゃんのうち、約80人を見つけ出す可能性があるという意味です。しかし、見つけられない約20人は偽陰性となります。

このように、クアトロ検査は非侵襲的で手軽な検査ですが、確定診断ではないこと、特に偽陽性が多いという精度上の限界を理解しておくことが非常に重要です。

他の出生前検査との比較(NIPT・コンバインド検査・羊水検査)

出生前検査には、クアトロ検査以外にもいくつかの種類があります。それぞれの特徴や精度、費用、検査時期などが異なります。どの検査を選択するか検討する上で、他の検査との違いを知ることは非常に役立ちます。

クアトロ検査とNIPTの違い【精度・費用・時期など】

近年普及が進んでいるNIPT(新型出生前診断)も、採血のみで行う非確定的検査です。しかし、クアトロ検査と比較すると、精度や費用、検査時期などに大きな違いがあります。

以下の表に、クアトロ検査とNIPTの主な違いをまとめました。

比較項目 クアトロ検査(母体血清マーカー検査) NIPT(新型出生前診断)
検査方法 妊婦さんの採血 妊婦さんの採血
対象疾患 ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、開放性神経管欠損症 ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミー(施設による、他の染色体異常も含む場合有)
検出率(精度) ダウン症: 約80%程度
18トリソミー: 約80%程度
開放性神経管欠損症: 約80%程度
ダウン症: 99%以上
18トリソミー: 97%以上
13トリソミー: 92%以上
偽陽性率 高い(約5%程度、陽性と出ても実際に疾患がある確率は数%程度) 低い(約0.1%程度、陽性と出た場合に実際に疾患がある確率は高い)
検査時期 妊娠15週0日~17週6日(最適時期) 妊娠10週0日~15週頃(推奨時期は施設による、遅い週数でも可能な場合がある)
費用相場 1万円~3万円程度 10万円~20万円程度(施設による)
結果の内容 対象疾患である「確率」 対象疾患である「可能性が非常に高い/低い」
確定診断 陽性の場合、確定診断(羊水検査など)が必要 陽性の場合、確定診断(羊水検査など)が必要
分かること 確率計算のみ 赤ちゃんのDNA断片を分析し、染色体数の違いを見る

このように、NIPTはクアトロ検査と比較して、対象疾患の検出率が非常に高く、偽陽性率が低いという点で精度が高い検査と言えます。また、比較的早い妊娠週数で検査が可能です。ただし、費用はクアトロ検査よりも高額になります。

コンバインド検査との違い

コンバインド検査も、クアトロ検査と同様に非確定的検査です。クアトロ検査が妊娠中期に行われるのに対し、コンバインド検査は妊娠初期(主に11週0日~13週6日頃)に行われます。

コンバインド検査は、以下の二つを組み合わせて確率を算出します。

  • 超音波検査: 赤ちゃんの首のうしろのむくみ(NT: Nuchal Translucency)の厚さを測定します。NTの厚みは、染色体異常を持つ赤ちゃんに統計的に厚い傾向があることが知られています。
  • 母体血清マーカー検査: 妊婦さんの血液中の特定の物質(PAPP-A、hCGなど)の濃度を測定します。

クアトロ検査は血液マーカーの測定値と年齢などで確率を計算しますが、コンバインド検査はこれに初期の超音波所見(NT測定)を加える点が大きな違いです。NT測定を加えることで、クアトロ検査よりも検出率がやや高いとされています(ダウン症に対して検出率約85%程度)。

コンバインド検査も、結果は確率で示され、陽性の場合には確定診断の検討が必要になります。検査時期が早い点がメリットと言えます。

確定診断となる羊水検査・絨毛検査との違い

羊水検査や絨毛検査は、クアトロ検査やNIPT、コンバインド検査といったスクリーニング検査で確率が高いと判定された場合などに検討される、確定診断のための検査です。これらの検査は、スクリーニング検査とは根本的に目的と方法が異なります。

  • 羊水検査: 妊娠中期(主に15週~18週頃)に、お腹に細い針を刺して羊水を採取し、羊水中の赤ちゃんの細胞の染色体を調べる検査です。
  • 絨毛検査: 妊娠初期(主に11週~13週頃)に、子宮頸部またはお腹から針を刺して胎盤の一部である絨毛組織を採取し、その染色体を調べる検査です。

これらの検査は、赤ちゃんの染色体を直接調べるため、染色体異常があるかどうかをほぼ確定的に診断することができます。しかし、いずれも針を刺すという侵襲的な手技を伴うため、流産や感染などのリスクが伴います。リスクの程度は絨毛検査の方がやや高いとされていますが、いずれもゼロではありません。

クアトロ検査などのスクリーニング検査は、これらの確定診断を行うかどうかを判断するための情報を提供する目的で行われます。スクリーニング検査で「確率が低い」と出た場合は確定診断を受ける必要性は低いと考えられますが、「確率が高い」と出た場合には、リスクを伴う確定診断を受けるかどうかを検討することになります。

比較項目 クアトロ検査(スクリーニング) NIPT(スクリーニング) コンバインド検査(スクリーニング) 羊水検査(確定診断) 絨毛検査(確定診断)
目的 確率算出(スクリーニング) 可能性評価(スクリーニング) 確率算出(スクリーニング) 確定診断 確定診断
方法 採血 採血 採血+超音波 羊水採取(侵襲的) 絨毛採取(侵襲的)
時期 妊娠中期 妊娠初期~中期 妊娠初期 妊娠中期 妊娠初期
精度 低い(偽陽性率高い) 高い(偽陽性率低い) クアトロよりやや高い 高い(ほぼ100%) 高い(ほぼ100%)
結果 確率 可能性が非常に高い/低い 確率 染色体異常の有無を確定 染色体異常の有無を確定
リスク ほぼなし ほぼなし ほぼなし 流産・感染などのリスク有 流産・感染などのリスク有
費用相場 1万~3万 10万~20万 2万~4万 10万~20万 10万~20万

このように、出生前検査には様々な種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。どの検査を選ぶかは、何をどのくらいの精度で知りたいか、いつ頃知りたいか、費用やリスクをどこまで許容できるかなどを考慮して、ご夫婦で話し合い、医療機関で相談することが非常に大切です。

クアトロ検査の費用

クアトロ検査は、公的な医療保険が適用されない自費診療となります。そのため、医療機関によって費用が異なります。

一般的な費用相場は、1万円から3万円程度です。 NIPTや羊水検査・絨毛検査と比較すると、比較的安価に受けられる検査と言えます。

ただし、これは検査自体の費用であり、初診料や再診料、結果説明のための費用などが別途かかる場合もあります。検査を検討している医療機関に、事前に詳しい費用について確認することをおすすめします。

クアトロ検査陽性の場合の確率とその後の対応

クアトロ検査で「陽性」という結果が出た場合、それは「赤ちゃんが対象の疾患を持っている確率が高い」と判定されたという意味です。しかし、先述の通りクアトロ検査の偽陽性率は高いため、陽性と判定された場合でも、実際に赤ちゃんが対象の疾患を持っている確率は低いということを十分に理解しておく必要があります。この確率を「陽性的中率」と呼びますが、疾患の種類や妊婦さんの年齢によって異なりますが、一般的には数%程度です。

例えば、ダウン症の確率がカットオフ値を超えて陽性と判定されたとしても、実際に赤ちゃんがダウン症である確率は、年齢によっては1%未満であることも珍しくありません。つまり、陽性と出た人の多くは、偽陽性である可能性が高いのです。

クアトロ検査で陽性だった場合の一般的な対応は以下の通りです。

  1. 遺伝カウンセリング: 確定診断に進む前に、遺伝の専門家(遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医など)による遺伝カウンセリングを受けることが強く推奨されます。カウンセリングでは、検査結果の意味(確率の解釈)、対象疾患についてさらに詳しい情報、そして確定診断(羊水検査など)の具体的な方法、リスク、費用、そして陽性確定診断後の選択肢などについて、十分に時間をかけて説明を受け、疑問点を解消することができます。
  2. 確定診断の検討: 遺伝カウンセリングを経て、確定診断を受けるかどうかを夫婦で話し合い、決定します。確定診断は羊水検査や絨毛検査で行われます。これらの検査は流産リスクを伴うため、検査を受けるかどうかは慎重に判断する必要があります。
  3. 確定診断の実施: 確定診断を受けることを決めた場合、検査が実施されます。結果が出るまでには通常数週間かかります。
  4. 結果説明と今後の対応: 確定診断で異常が見つかった場合、改めて遺伝カウンセリングなどで詳しい説明を受け、今後のことについて十分に話し合います。疾患を持って生まれてくることへの準備や、残念ながら人工妊娠中絶を選択する場合など、様々な可能性について情報を得て、夫婦で向き合っていくことになります。確定診断で異常が見つからなかった場合は、偽陽性だったということになります。

クアトロ検査の陽性結果は、確定診断に進むかどうかの「きっかけ」と捉えるのが適切です。陽性結果に過度に不安を感じすぎず、専門家からの正確な情報を得て、落ち着いて次のステップを検討することが大切です。

クアトロ検査を受けるかどうかの判断

クアトロ検査を含む出生前検査は、すべての妊婦さんに必須の検査ではありません。検査を受けるかどうかは、妊婦さんやご家族が、検査の目的、分かること、分からないこと、精度、メリット、デメリット、そして結果が出た場合の受け止め方などを十分に理解した上で、自らの意思で決定するべきものです。

クアトロ検査を受けることのメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 手軽さ: 採血のみで行えるため、身体的な負担が少ないです。
  • 費用: 他の出生前検査(NIPTや確定診断)と比較して安価です。
  • 心の準備: 確率が高いと出た場合、確定診断に進むかどうかを検討し、もし確定診断で異常が見つかった場合に、赤ちゃんの状態について知ることで心の準備ができる可能性があります。

一方、デメリットとしては以下が挙げられます。

  • 偽陽性の多さ: 陽性と出てもほとんどが偽陽性であり、不要な不安や精神的な負担が生じやすいです。
  • 確定診断ではない: 結果は確率であり、確定診断にはさらに侵襲的な検査が必要となります。
  • 偽陰性の可能性: 確率が低いと出ても、ごく稀に疾患がある可能性を否定できません。

クアトロ検査を検討する際には、以下の点を考慮することが重要です。

  • なぜ検査を受けたいのか? 漠然とした不安からか、特定の理由があるのか。
  • 検査結果をどのように受け止めることができるか? 陽性と出た場合に、続く確定診断や、その先の様々な可能性について冷静に向き合うことができるか。
  • パートナーや家族と十分に話し合ったか? 出生前検査は夫婦や家族全体で考えるべき問題です。
  • 医療機関から十分な説明を受けたか? 検査の内容、精度、限界、リスク、費用、陽性の場合の対応などについて、納得いくまで説明を受けることが不可欠です。可能であれば、遺伝カウンセリングの機会を利用することも推奨されます。

クアトロ検査は、妊娠中期の比較的早い時期に、特定の疾患の確率を知るための一つの選択肢です。その性質を正しく理解し、検査を受けることの意味と向き合い、ご夫婦にとって最善の選択をすることが何よりも大切です。

まとめ:クアトロ検査で正確な情報を得るために

クアトロ検査(母体血清マーカー検査)は、妊娠中に採血で行う非確定的検査であり、赤ちゃんが特定の染色体異常や開放性神経管欠損症を持って生まれてくる確率を算出するものです。「クアトロ検査とは」という疑問を持つ方にとって、まず知っておくべきは、この検査が「確率」を示すものであり、確定診断ではないということです。

特に、クアトロ検査は偽陽性率が高いという特徴があります。陽性と判定されても、実際に赤ちゃんに対象疾患がある確率は非常に低いことがほとんどです。この偽陽性の多さが、「あてにならない」と感じられる要因の一つとなっています。しかし、その性質を正しく理解し、結果を冷静に受け止めることができれば、その後の確定診断を検討する上で有用な情報となり得ます。

他の出生前検査と比較すると、クアトロ検査はNIPTよりも精度は低いですが、費用は安価です。また、妊娠中期という時期に実施されます。コンバインド検査は妊娠初期に行われ、超音波所見も加える点が異なります。羊水検査や絨毛検査は、リスクを伴いますが確定診断が可能な検査です。

クアトロ検査を受けるかどうかを判断する際には、検査のメリット・デメリット、特に偽陽性の可能性や結果の解釈の難しさを十分に理解し、夫婦でよく話し合い、医療機関で遺伝カウンセリングなど専門家からの説明を受けることが非常に重要です。

この記事はクアトロ検査に関する一般的な情報を提供するものであり、個別の状況に応じた医学的な判断やアドバイスを行うものではありません。検査を受けるかどうか、また検査結果をどのように受け止めるかについては、必ず医療機関で医師や専門家とご相談の上、決定してください。

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