横になると咳が出て夜もぐっすり眠れない、そんなお悩みをお持ちではありませんか?
普段はあまり気にならないのに、ベッドに入ったりソファでくつろいだりと、体が横になった姿勢になると急に咳が出始める、止まらなくなるといった経験は、つらいものです。
なぜ横になると咳が出やすいのでしょうか。
そこには、重力や体内の分泌物の移動、あるいは特定の病気が関係している可能性があります。
この記事では、横になると咳が出る主な原因や考えられる病気、ご自宅で試せる具体的な対処法、市販薬の選び方、そして医療機関を受診すべき目安について、呼吸器専門医監修の情報をもとに詳しく解説します。
この記事を読めば、あなたの「横になると出る咳」の原因が分かり、つらい咳を和らげるための具体的な一歩を踏み出せるでしょう。
今すぐ実践できる対策を見つけて、少しでも楽になるためのヒントを見つけてください。
横になると咳が出る主な原因とは?
体が横になった姿勢になると咳が出やすくなるのには、いくつかの物理的なメカニズムや体内の変化が関わっています。
ここでは、横になると咳が出やすくなる主な原因について解説します。
重力による影響
私たちは普段、重力が垂直方向に働いている状態で生活しています。
立っている状態では、鼻や喉、気管支などに溜まった分泌物(鼻水や痰など)は、重力によって下方向(喉や胃の方)に流れやすい傾向があります。
しかし、体が横になると、この重力の作用方向が変化します。
分泌物が下方向ではなく、気道全体に広がりやすくなったり、特定の場所に溜まりやすくなったりすることがあります。
これが、気道を刺激し、咳を引き起こす原因の一つとなります。
また、横になることで肺の血流分布も変化し、気道の感受性が高まる可能性も指摘されています。
粘液や分泌物の移動
鼻や喉の奥では、常に粘液が分泌され、異物や病原体を絡め取り、線毛運動によって喉の方へ運ばれています。
通常、これらの分泌物は無意識のうちに飲み込まれています。
しかし、アレルギーや感染症などにより分泌物が増加している場合や、線毛の働きが低下している場合、横になることで分泌物が喉の奥や気管支の方へ流れ込みやすくなります。
特に、鼻の奥から喉へ流れ落ちる「後鼻漏」は、横になることで顕著になり、気管支を刺激して咳を引き起こす代表的な原因となります。
痰も同様に、横になることで気管支内で移動し、咳の原因となることがあります。
気道や肺への刺激
横になる姿勢は、胃酸の逆流を引き起こしやすくすることもあります。
胃と食道の境目の筋肉(下部食道括約筋)が緩んでいる場合、横になると胃の内容物や胃酸が食道に逆流しやすくなります。
さらに、逆流した胃酸が食道のさらに上、喉や気管支にまで到達すると、これらが刺激されて咳反射が起こります。
これは特に、食後すぐに横になった場合などに顕著に現れます。
また、乾燥した空気やアレルギー物質(ハウスダスト、ダニなど)は、気道を刺激し、気道の過敏性を高めることが知られています。
寝室の環境が乾燥していたり、寝具にアレルゲンが多く潜んでいたりすると、横になってリラックスした状態でも気道が刺激され、咳が出やすくなることがあります。
これらの要因が単独で、あるいは複合的に作用することで、横になると咳が出るという症状が現れます。
単なる体の反応である場合もありますが、 underlying(背景にある)病気が隠れている可能性も十分に考えられます。
横になると咳が出る症状から考えられる病気
横になると咳が出やすいという症状は、特定の病気によって引き起こされている場合があります。
ここでは、横になる姿勢と関連が深い、咳の原因となりうる主な病気について解説します。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃の内容物や胃酸が食道に逆流し、食道粘膜を刺激する病気です。
症状が進行すると、胃酸が食道を越えて喉や気管支まで到達することがあり、これを「非定型的な逆流性食道炎」と呼ぶこともあります。
胃酸が気管支を刺激すると、咳反射が起こり、慢性的な咳の原因となります。
逆流性食道炎による咳の特徴は、特に食後や夜間、横になった時に悪化しやすいことです。
これは、横になることで胃酸が逆流しやすくなるためです。
咳以外には、胸焼け(みぞおちから胸にかけての灼熱感)、呑酸(酸っぱいものがこみ上げてくる感じ)、喉の違和感、声のかすれといった症状を伴うことがあります。
これらの症状があり、横になると咳がひどくなる場合は、逆流性食道炎が原因である可能性が高いと考えられます。
後鼻腔漏(後鼻漏)
後鼻腔漏(こうびくうろう)とは、鼻の奥から喉の奥へと鼻水や分泌物が流れ落ちる状態を指します。
これは病名そのものではなく、様々な鼻や副鼻腔の病気(副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎など)によって引き起こされる症状の一つです。
後鼻漏がある場合、分泌物が喉を常に刺激するため、咳や痰が絡む感じ、喉のイガイガ感といった症状が現れます。
横になると、重力の関係で分泌物が喉に流れ込みやすくなり、咳が誘発されやすくなります。
特に、夜寝ている間に分泌物が気管支の方へ流れ込むと、睡眠中に咳き込んだり、朝方に咳が出やすくなったりします。
透明な鼻水だけでなく、粘り気のある分泌物や、色が黄色や緑色になった分泌物も後鼻漏の原因となります。
鼻の症状(鼻づまり、鼻水、嗅覚障害など)を伴うことが多いですが、咳だけが目立つ場合もあります。
咳喘息・気管支喘息
喘息は、気道に慢性的な炎症が起こり、様々な刺激に対して気道が過敏になり、狭くなる(気道収縮)病気です。
咳喘息は、喘息の一種で、典型的な喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音)や息苦しさがなく、慢性的な咳だけが症状として現れるタイプです。
咳喘息や気管支喘息では、特に夜間から朝方にかけて症状が悪化しやすいことが知られています。
これは、自律神経のバランスや体内時計のリズム、そして横になった姿勢が影響していると考えられています。
横になることで、気道を取り巻く筋肉が収縮しやすくなったり、分泌物が気道に溜まりやすくなったりすることが、咳の誘発につながります。
運動後や冷たい空気を吸った時、特定の刺激(アレルゲン、タバコの煙など)で咳が出やすいのも特徴です。
放置すると、本格的な気管支喘息に移行することもあるため、注意が必要です。
感染症後遺症(新型コロナ後遺症など)
ウイルスや細菌による呼吸器感染症(風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、気管支炎など)にかかった後、感染自体は治癒したにもかかわらず、咳だけが長期間(数週間から数ヶ月)続くことがあります。
これを感染後咳嗽と呼び、感染症後遺症の一つとして認識されています。
感染後咳嗽では、感染によって気道がダメージを受け、過敏な状態が続いていると考えられています。
特定の姿勢、例えば横になった時に気道が刺激されやすくなり、咳が出やすくなることがあります。
新型コロナウイルス感染症の後遺症としても、慢性的な咳、特に横になった時の咳が報告されています。
多くの場合、時間の経過とともに改善しますが、症状が続く場合は専門医に相談することが重要です。
心不全
心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態です。
心臓の機能が低下すると、肺から心臓へ戻る血液の流れが滞り、肺に水分が溜まりやすくなります(肺うっ血)。
肺に水分が溜まると、肺の換気能力が低下し、横になった時に肺のうっ血が悪化し、咳や息切れ(特に夜間や横になった時)といった症状が現れやすくなります。
これは、横になると重力によって肺の下部(背中側)に水分が溜まりやすくなるためです。
心不全による咳は、ピンク色の泡状の痰を伴うこともあります。
心不全は重篤な病気であり、咳以外に強い息切れ、むくみ、動悸、疲れやすさなどの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
その他の原因
上記の病気以外にも、横になると咳が出ることに関連する、あるいは咳そのものの原因となる可能性のある病気や状態はいくつかあります。
- 薬剤の副作用: 一部の降圧剤(ACE阻害薬など)は、副作用として空咳を引き起こすことがあります。薬剤の種類によっては、特定の姿勢で症状が悪化する可能性もゼロではありません。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)・間質性肺炎: これらの病気は、肺の機能が低下し、慢性的な咳や息切れを引き起こします。横になった時に特に悪化するというよりは、常に症状がある場合が多いですが、症状の一部として関連することがあります。
- 精神的な要因: ストレスや不安が、咳の症状を悪化させたり、咳を誘発したりすることがあります。特に、原因がはっきりしない慢性の咳の場合に考慮されることがあります。
- 睡眠時無呼吸症候群: 睡眠中に呼吸が一時的に止まる病気ですが、覚醒時の咳や、横になった時の気道の狭窄感と関連することもあります。
このように、横になると咳が出るという症状の背景には、様々な病気が隠れている可能性があります。
自己判断で済ませず、症状が続く場合や気になる場合は、医療機関で相談することが大切です。
横になると咳が止まらない時の具体的な対処法
横になると咳が出る症状はつらいものですが、ご自宅で試せる対処法もいくつかあります。
ここでは、咳を和らげるための具体的な方法をご紹介します。
ただし、これらの対処法はあくまで症状緩和を目的とするものであり、病気が原因の場合は医療機関での適切な診断と治療が必要です。
咳を和らげる寝方の工夫
横になる姿勢そのものが咳の誘発につながる場合、寝方を工夫することで症状が軽減されることがあります。
- 上半身を高くして寝る: 一番効果的な方法の一つは、クッションや複数の枕を使って、上半身を少し起こした状態で寝ることです。
これにより、胃酸の逆流を防ぎやすくなったり、鼻や喉の分泌物が気管支に流れ込みにくくなったりします。
背中全体を支えるように、大きめのクッションやマットレスの角度を調整できるベッドを使用すると、より楽な姿勢を保てます。 - 横向きに寝る: 仰向けよりも横向きの方が楽な場合があります。
どちらかの横向き(例えば右向きまたは左向き)が、咳が出にくいと感じるかもしれません。
これは、痰や分泌物が肺や気管支の特定の部分に溜まりにくくなるためと考えられます。
ご自身の体で試してみて、最も楽な向きを見つけてみましょう。 - 枕の選び方: 頭だけでなく、首や肩も支える適切な高さの枕を選ぶことも大切です。
これにより、気道が確保されやすくなります。
また、アレルギーが原因で咳が出やすい場合は、アレルゲン(ダニなど)が溜まりにくい素材の枕や、定期的に洗える枕カバーを使用することも重要です。
部屋の環境調整(加湿・温度)
寝室の環境を整えることも、夜間の咳対策には有効です。
- 加湿: 空気が乾燥していると、喉や気管支の粘膜が乾燥し、刺激に対して過敏になります。
これにより咳が出やすくなるため、加湿器を使って適切な湿度(50~60%程度)を保つことが推奨されます。
ただし、過剰な加湿はカビやダニの繁殖を招く可能性もあるため注意が必要です。 - 温度: 寝室の温度も適切に保ちましょう。
冷たい空気は気道を刺激し、咳を誘発することがあります。
快適な温度(一般的に20~22℃程度)を保つように心がけましょう。 - 空気清浄: 空気中に浮遊するハウスダスト、花粉、カビの胞子などのアレルゲンや刺激物質も咳の原因となります。
空気清浄機を使用することで、これらの物質を取り除き、気道への刺激を減らすことができます。
水分・はちみつを摂る
喉を潤し、痰や分泌物を柔らかくすることは、咳を和らげるのに役立ちます。
- 水分摂取: 十分な水分を摂取することで、全身の粘膜が潤い、痰や分泌物が粘り気を失い、排出しやすくなります。
特に寝る前にコップ一杯の水を飲むことや、枕元に飲み物を置いておき、夜中に咳が出た時にすぐに飲めるようにしておくと良いでしょう。 - 温かい飲み物: 温かい飲み物は、喉を潤し、咳を和らげる効果が期待できます。
ハーブティー(カモミール、ペパーミントなど)や生姜湯などがおすすめです。
カフェインの入った飲み物(コーヒー、紅茶など)は利尿作用があるため、摂りすぎには注意しましょう。 - はちみつ: はちみつには、咳を鎮める効果があるという研究報告があります。
寝る前にスプーン一杯のはちみつをそのまま舐めるか、温かい飲み物に入れて飲むと良いでしょう。
ただし、ボツリヌス菌中毒のリスクがあるため、1歳未満の乳児には絶対に与えないでください。
市販薬の選び方と注意点
市販薬の中にも、咳を和らげる効果が期待できるものがあります。
ただし、原因によって適した薬が異なるため、薬局の薬剤師に相談して選ぶことをお勧めします。
市販薬には、主に咳止め薬(鎮咳薬)と去痰薬があります。
薬の種類 | 主な効果 | 適した症状 | 注意点 |
---|---|---|---|
咳止め薬 | 咳反射を抑える | 乾いた、コンコンといった咳 | 痰が絡む咳の場合、痰の排出を妨げる可能性がある。眠気を催す成分を含む場合がある。長期使用は避ける。 |
去痰薬 | 痰を柔らかくし、排出しやすくする | 痰が絡んで出しにくい咳 | 咳そのものを止める効果はない。十分な水分摂取と併用するとより効果的。 |
総合感冒薬 | 咳、鼻水、発熱など、様々な風邪症状に効果がある | 風邪による咳や鼻水、発熱などが同時にある場合 | 複数の成分が含まれており、特定の症状には効果が不十分な場合がある。他の薬との飲み合わせに注意が必要。 |
漢方薬 | 体の状態を整え、咳を和らげる | 乾いた咳、痰の絡む咳など、症状や体質による | 効果が現れるまでに時間がかかる場合がある。体質に合わない場合もあるため、薬剤師や登録販売者に相談するのが望ましい。 |
去痰薬には、痰を柔らかくしたり、排出しやすくしたりする様々な種類があります。
代表的な成分として、フドステイン(気道分泌液を正常化)、ブロムヘキシン(痰の粘度低下)、カルボシステイン(気道粘膜修復促進)、アンブロキソール(気道潤滑)などがあります([出典](https://higashinagoya.hosp.go.jp/files/000192423.pdf))。
また、横になると出る咳の原因が、逆流性食道炎やアレルギー性鼻炎である場合は、それぞれに対応する市販薬(胃酸を抑える薬、抗ヒスタミン薬など)が効果的なこともあります。
市販薬を使用する際は、以下の点に注意が必要です。
- 添付文書をよく読む: 用法・用量、使用上の注意、副作用について確認しましょう。
- 他の薬との飲み合わせ: 現在服用している処方薬や他の市販薬、サプリメントがある場合は、飲み合わせに問題がないか薬剤師に確認してください。
- 症状の改善が見られない場合: 市販薬を数日使用しても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、市販薬で対応できる範囲を超えている可能性があるため、医療機関を受診しましょう。
アレルゲンの対策
アレルギーが原因で咳が出やすい場合、寝室に潜むアレルゲンを徹底的に排除することが重要です。
- 寝具の手入れ: 寝具(枕、布団、マットレス)はダニの温床になりやすい場所です。
定期的に洗濯したり、天日干ししたり、布団乾燥機を使用したりして、ダニの繁殖を防ぎましょう。
防ダニカバーを使用するのも有効です。 - 部屋の掃除: 寝室は特に丁寧に掃除機をかけ、ハウスダストを取り除きましょう。
掃除機をかける際は、舞い上がったハウスダストを吸い込まないよう、換気をしながら行うか、高性能フィルター付きの掃除機を使用することをお勧めします。 - 換気: 定期的に窓を開けて換気を行い、室内の空気の入れ替えをしましょう。
ただし、花粉の時期は、換気の時間帯や方法(窓を小さく開けるなど)に注意が必要です。 - ペット: ペットのフケや毛もアレルゲンとなります。
寝室にはペットを入れないようにする、こまめにペットの体を拭く、部屋を掃除するなど対策が必要です。
その他の対処法
- 胃酸逆流対策: 逆流性食道炎が疑われる場合は、胃酸の逆流を防ぐ生活習慣を取り入れましょう。
- 食後すぐに横にならない: 食後2~3時間は横にならないようにしましょう。
- 夕食を早めに済ませる: 就寝の2~3時間前までに夕食を済ませるようにしましょう。
- 刺激物を避ける: 脂っこい食事、チョコレート、柑橘類、香辛料、カフェイン、アルコールなどは胃酸の分泌を促進したり、下部食道括約筋を緩めたりするため、摂りすぎに注意しましょう。
- 禁煙・受動喫煙回避: タバコの煙は気道を直接刺激し、炎症を悪化させます。
喫煙している場合は禁煙を強く推奨します。
また、家族や周囲の喫煙者にも協力を求め、受動喫煙を避けましょう。 - マスクの着用: 就寝時にマスクを着用することで、喉や気道の乾燥を防ぎ、冷たい空気やアレルゲン、ホコリなどの刺激を軽減することができます。
保湿効果のあるマスクなども市販されています。 - リラックス: ストレスや不安は、自律神経のバランスを乱し、気道の過敏性を高めることがあります。
寝る前にリラックスする時間を持つこと(ぬるめのお風呂に入る、軽い読書、ストレッチなど)も、咳の軽減につながる可能性があります。
これらの対処法は、原因や個人の体質によって効果が異なります。
色々な方法を試してみて、ご自身に合うものを見つけることが大切です。
こんな症状の場合は要注意!すぐに医療機関を受診すべき目安
横になると咳が出るという症状は、多くの場合、上記のような原因や比較的軽症の病気によるものですが、中には注意が必要なサインが隠れていることもあります。
以下のような症状が伴う場合は、重篤な病気の可能性も考えられるため、速やかに医療機関を受診してください。
息苦しさや胸の痛み
- 息苦しさ(呼吸困難): 安静にしていても息切れがする、呼吸が浅く速くなる、話しづらいほどの息苦しさを感じる場合は、肺や心臓に重篤な問題が起きている可能性があります。
- 胸の痛みや圧迫感: 胸が締め付けられるような痛みや圧迫感、重苦しさを伴う場合は、狭心症や心筋梗塞などの心臓疾患、肺炎、胸膜炎などの肺疾患の可能性が考えられます。
特に、労作時や夜間に悪化する場合は注意が必要です。
発熱や全身倦怠感
- 高い熱: 38℃以上の高熱が続く場合、肺炎や気管支炎などの感染症が進行している可能性が高いです。
- 全身の倦怠感: 咳とともに強いだるさや食欲不振がある場合も、感染症などが疑われます。
痰の色や量の変化
- 色のついた痰: 黄色や緑色の粘り気のある痰が出る場合は、細菌感染による気管支炎や肺炎の可能性が考えられます。
- 血痰: 咳に血が混じる場合(鮮血、茶褐色、サビ色など)は、気管支や肺からの出血を示唆しており、肺炎、気管支拡張症、肺結核、肺がんなど、様々な病気の可能性があるため、必ず医療機関を受診してください。
- 痰の急激な増加: 普段よりも明らかに痰の量が増えた場合も、感染症などが疑われます。
- ピンク色の泡状の痰: 心不全による肺水腫の可能性があります。
症状の長期化・悪化
- 2週間以上続く咳: 風邪などによる咳は通常1~2週間で改善することが多いですが、それ以上続く場合は、感染後咳嗽、咳喘息、逆流性食道炎、後鼻漏、あるいはその他の慢性的な病気が原因である可能性が高まります。
- 対処法を試しても改善しない: ご自宅でできる対処法や市販薬を試しても、症状が改善しない、あるいは徐々に悪化していく場合は、医療機関での詳しい検査が必要です。
基礎疾患がある場合
- 心臓病、肺の病気(COPD、喘息、間質性肺炎など)、腎臓病、糖尿病、免疫不全など、すでに何らかの持病がある方は、咳の症状が重症化しやすかったり、持病の悪化と関連していたりする可能性があります。これらの基礎疾患をお持ちの方で咳が出る場合は、いつも以上に慎重に経過を観察し、早めに主治医に相談することをお勧めします。
これらの症状が一つでも当てはまる場合や、「いつもと違う」「何かおかしい」と感じる場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
受診すべき科について:
横になると出る咳の原因は多岐にわたるため、何科を受診すれば良いか迷うかもしれません。
- 呼吸器内科: 咳、痰、息切れなど、呼吸器系の症状全般を専門としています。
咳喘息、気管支喘息、感染後咳嗽、肺炎、COPD、間質性肺炎などが疑われる場合に最適です。 - 耳鼻咽喉科: 後鼻漏や副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎など、鼻や喉の病気が原因の咳が疑われる場合に適しています。
- 消化器内科: 逆流性食道炎による咳が疑われる場合に適しています。
- 循環器内科: 息苦しさやむくみ、動悸などを伴い、心不全が疑われる場合に適しています。
まずはかかりつけ医に相談するか、判断に迷う場合は総合内科を受診するのも良いでしょう。
症状を詳しく伝え、適切な専門医を紹介してもらうことができます。
まとめ|横になると出る咳の原因を知り適切な対処を
横になると咳が出るという症状は、多くの人が経験することであり、その背景には様々な原因が考えられます。
重力や分泌物の移動といった物理的な要因だけでなく、逆流性食道炎、後鼻漏、咳喘息・気管支喘息、感染症後遺症、心不全といった病気が隠れている可能性もあります。
このようなつらい咳に対して、ご自宅でできる対処法もいくつかあります。
寝る時に上半身を少し高くする、寝室の湿度や温度を適切に保つ、十分な水分を摂取する、アレルゲン対策を行う、胃酸の逆流を避ける工夫をするなど、様々な方法があります。
また、市販の咳止め薬や去痰薬、症状に応じた薬を試してみることも有効です。
例えば去痰薬には、フドステイン、ブロムヘキシン、カルボシステイン、アンブロキソールといった様々な成分があり、それぞれ痰を柔らかくしたり、排出しやすくしたりといった異なる作用機序で効果を発揮します([出典](https://higashinagoya.hosp.go.jp/files/000192423.pdf))。
しかし、市販薬を使用する際は、薬剤師に相談し、用法・用量を守り、他の薬との飲み合わせにも注意が必要です。
最も重要なのは、横になると出る咳が、単なる一時的な症状なのか、それとも何らかの病気のサインなのかを見分けることです。
特に、息苦しさ、胸の痛み、発熱、色のついた痰や血痰を伴う場合、症状が長期間続く場合、基礎疾患がある場合は、放置せずに速やかに医療機関を受診することが大切です。
これらの症状は、重篤な病気の可能性を示唆していることがあります。
ご自身の症状をよく観察し、この記事で解説した原因や対処法、受診目安を参考に、適切な行動をとってください。
原因がはっきりしない場合や不安な場合は、自己判断せず、呼吸器内科をはじめとする専門医に相談し、正確な診断と適切な治療を受けることを強くお勧めします。
専門家のアドバイスを受けながら、つらい咳を改善し、夜もぐっすり眠れる穏やかな日々を取り戻しましょう。
免責事項:
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代替するものではありません。
特定の症状がある場合や健康状態について懸念がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。
記事の情報に基づいて行った行動によって生じたいかなる結果についても、当方は一切責任を負いません。