続く左下腹部の鈍痛、大丈夫?考えられる病気・何科・対処法

目次

導入

左下腹部の鈍痛が続く場合、その原因は多岐にわたります。単なる便秘やガスだまりといった一時的なものから、医療機関での適切な診断と治療が必要な病気が隠れている可能性もあります。特に痛みが長引く場合や、痛みに加えて他の症状が現れている場合は注意が必要です。

このページでは、左下腹部の鈍痛が続く場合に考えられるさまざまな原因について、病気以外のものから女性・男性特有の原因、痛みの性質による違いまで詳しく解説します。また、どのような場合に医療機関を受診すべきか、どの診療科を選べば良いのかといった病院へ行く目安についてもご紹介します。

長引く左下腹部の鈍痛にお悩みの方は、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。

左下腹部の鈍痛が続く場合に考えられる原因

左下腹部の鈍痛が続く場合、その原因は消化器系の問題、泌尿器系の問題、生殖器系の問題(女性・男性)、または筋肉や神経、ストレスなど、多岐にわたります。痛みの性質や程度、痛む場所の正確さ、他の症状の有無などによって、疑われる原因は異なります。

便秘やガスだまりなどの病気以外の原因

比較的軽度で、多くの場合医療機関での特別な治療を必要としない原因として、便秘やガスだまりが挙げられます。これらは生活習慣や食生活に大きく影響を受けることが多く、左下腹部に鈍い痛みを引き起こすことがあります。

  • 便秘: 便が腸内に滞留することで、腸が張ったり、圧迫されたりして痛みを生じます。特にS状結腸や直腸など、左下腹部に位置する腸管に便がたまると、その部位に鈍痛として感じられることがあります。便秘に伴って、お腹の張りや不快感も伴うことが多いです。
  • ガスだまり: 腸内で発生したガスがうまく排出されずに溜まると、腸管が拡張されて痛みや張りを感じます。特定の食品(豆類、イモ類、炭酸飲料など)の摂取後や、早食い、ストレスなどが原因となることがあります。ガスが移動する際に、痛みの場所が変わったり、ゴロゴロとお腹が鳴ったりすることもあります。
  • 過食や消化不良: 大量に食事を摂った後や、消化しにくいものを食べた後に、消化器系が活発に働くことで一時的に腹痛や不快感が生じることがあります。
  • 筋肉痛: 腹筋を過度に使った後や、不自然な姿勢を続けた後に、腹部の筋肉が炎症を起こして痛みを感じることがあります。鈍痛として感じられることが多く、体を動かしたり、押したりすると痛みが増すことがあります。
  • 姿勢や体の使い方の問題: 長時間座りっぱなしであったり、前かがみの姿勢が続いたりすることで、腹部や骨盤周辺の筋肉や神経に負担がかかり、鈍痛を引き起こすことがあります。
  • 冷え: 体が冷えることで、血行が悪くなり、腹部の筋肉が緊張したり、内臓の働きが鈍ったりして痛みを感じることがあります。特に女性に多く見られる原因の一つです。

これらの病気以外の原因による痛みは、多くの場合一時的であり、原因を取り除く(便秘を解消する、ガスを排出するなど)ことで改善します。しかし、痛みが続く場合や、痛みの程度が強い場合、他の症状を伴う場合は、病気の可能性も考慮する必要があります。

左下腹部の鈍痛を引き起こす主な病気

左下腹部の鈍痛が続く場合、以下のような様々な病気が原因となっている可能性があります。それぞれの病気によって、痛みの性質や程度、伴う症状が異なります。

大腸憩室炎

大腸憩室炎は、大腸の壁にできた袋状の小さな突起(憩室)に便が溜まり、炎症を起こす病気です。憩室は加齢とともにできやすくなり、特にS状結腸(左下腹部に位置する部分)に多く発生します。

  • 症状: 左下腹部に持続的な痛みが生じることが最も一般的な症状です。痛みは通常、鈍痛として始まり、炎症が強くなるとズキズキとした痛みに変わることもあります。痛みに加えて、発熱、吐き気、嘔吐、お腹の張り、下痢や便秘などの便通異常を伴うことがあります。炎症がひどくなると、穿孔(穴が開く)や膿瘍形成などの重篤な合併症を引き起こす可能性もあります。
  • 診断: 医師による問診や触診に加え、血液検査(炎症反応の確認)、腹部超音波検査、CT検査などが行われます。確定診断にはCT検査が有用です。
  • 治療: 軽度の場合は、抗生物質の投与や食事制限(絶食や流動食)で炎症を抑えます。炎症が強い場合や合併症がある場合は、入院して点滴による治療が必要となることもあります。繰り返し炎症を起こす場合や、重篤な合併症がある場合は手術が検討されることもあります。

より詳細な情報については、大腸憩室炎診療ガイドラインもご参照ください。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(IBS)は、腸に明らかな病変がないにも関わらず、腹痛や腹部の不快感、便通異常(下痢や便秘を繰り返す、または下痢と便秘を交互に繰り返す)が慢性的に続く機能性の病気です。ストレスや精神的な要因が関与することが多いとされています。

  • 症状: 腹痛や腹部の不快感が主な症状で、特に排便後に症状が軽快することが特徴の一つです。痛みは下腹部の広い範囲に感じられることが多いですが、左下腹部に鈍痛として現れることもあります。便秘型、下痢型、混合型、分類不能型に分けられ、便通異常のパターンは人によって異なります。お腹の張りやゴロゴロといった腹鳴を伴うこともよくあります。
  • 診断: 問診によって症状の特徴を確認し、他の病気(炎症性腸疾患や大腸がんなど)を除外するために大腸内視鏡検査や血液検査などが行われます。国際的な診断基準(Rome分類など)に基づいて診断されます。
  • 治療: 食生活の改善(特定の食品を避けるなど)、生活習慣の見直し(規則正しい生活、十分な睡眠)、ストレス管理が基本となります。症状に応じて、整腸剤、下痢止め、便秘薬、腹痛を和らげる薬(抗コリン薬や腸管運動調整薬)、精神的な症状が強い場合には抗うつ薬や抗不安薬が処方されることもあります。

過敏性腸症候群に関するより詳細な情報は、過敏性腸症候群(IBS)診療ガイドラインも参考にしてください。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)

炎症性腸疾患は、腸管に慢性的な炎症が生じる自己免疫疾患と考えられている病気の総称です。代表的なものに潰瘍性大腸炎とクローン病があります。どちらも国の指定難病であり、根治が難しい病気です。

  • 潰瘍性大腸炎: 主に大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができる病気です。直腸から口側に連続して炎症が広がることが特徴です。
    • 症状: 腹痛(左下腹部を含む)、下痢、血便、粘液便が主な症状です。炎症の範囲や程度によって症状は異なりますが、炎症が強い時期(活動期)と症状が落ち着いている時期(寛解期)を繰り返します。全身症状として、発熱、倦怠感、体重減少などが現れることもあります。
  • クローン病: 口から肛門までの消化管のどの部分にも炎症が起こりうる病気ですが、特に小腸や大腸に炎症が起こりやすいです。腸管の壁の深い層まで炎症が及ぶことが特徴です。
    • 症状: 腹痛(炎症が起こっている部位による)、下痢、発熱、倦怠感、体重減少、貧血などが主な症状です。炎症が強い時期と落ち着いている時期を繰り返します。腸管の狭窄や穿孔、膿瘍形成、痔ろうなどの合併症を起こしやすいです。左下腹部に炎症が生じた場合は、その部位に痛みを感じます。
  • 診断: 問診、血液検査(炎症反応、貧血の有無など)、便検査、大腸内視鏡検査(炎症や潰瘍の確認、組織の採取)、X線検査(バリウム造影)、CT検査、MRI検査など、様々な検査を組み合わせて診断されます。
  • 治療: 薬物療法が中心となり、炎症を抑えるためにステロイド剤や免疫抑制剤、生物学的製剤などが使用されます。栄養療法や食事療法も重要です。狭窄や穿孔などの合併症がある場合や、薬物療法で効果が得られない場合は手術が必要となることもあります。

炎症性腸疾患の診療に関する詳細は、炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドラインをご参照ください。

虚血性大腸炎

虚血性大腸炎は、大腸に血液を送る血管の血流が悪くなり、大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができる病気です。高齢者に多く見られますが、若年者にも起こることがあります。便秘やいきみ、脱水などが誘因となることがあります。

  • 症状: 突然の激しい腹痛(左下腹部に起こることが多い)、下痢、血便が主な症状です。痛みは差し込むような激しい痛みであることが多いですが、虚血の程度によっては鈍痛として感じられる場合もあります。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
  • 診断: 問診や触診に加え、腹部X線検査、CT検査、大腸内視鏡検査などが行われます。大腸内視鏡検査で粘膜の虚血による特徴的な所見を確認することで診断されます。
  • 治療: 多くの場合、絶食、点滴による水分補給、抗生物質の投与などで改善します。血流障害が重度の場合や、腸管の壊死や穿孔といった合併症を起こした場合は手術が必要となることもあります。

大腸がん

大腸がんは、大腸の粘膜から発生する悪性腫瘍です。早期の段階では自覚症状がほとんどないことが多いですが、進行すると様々な症状が現れます。左下腹部に位置するS状結腸や直腸にがんができると、その部位に症状が出やすくなります。

  • 症状: 進行した大腸がんでは、便通異常(便秘や下痢が続く、便が細くなる)、血便、腹痛、腹部の張り、お腹を触るとしこりがある、体重減少、貧血などが現れることがあります。左下腹部にがんがある場合は、その部位に鈍痛や不快感として感じられることがあります。がんで腸が狭窄すると、腹痛や腹部の張りが強くなることがあります。
  • 診断: 問診、便潜血検査、大腸内視鏡検査、CT検査、MRI検査、PET検査などが行われます。確定診断には大腸内視鏡検査で組織を採取し、病理検査を行う必要があります。
  • 治療: がんの進行度によって治療法は異なりますが、手術による切除が基本となります。進行している場合は、抗がん剤による化学療法や放射線療法が併用されることもあります。

尿管結石

尿管結石は、腎臓で作られた結石が尿管に移動し、尿の流れを妨げることで激しい痛みを引き起こす病気です。結石がある場所によって痛む部位が異なりますが、左側の尿管に結石がある場合、左下腹部や側腹部、背中にかけて激しい痛み(疝痛発作)が生じることがあります。

  • 症状: 突然起こる、非常に強い差し込むような痛み(疝痛)が特徴的です。痛みは数十分から数時間続き、いったん軽快しても再び現れることがあります。痛む場所は結石の位置によって移動することがあり、左側の尿管結石では左下腹部に痛みが放散することもあります。吐き気、嘔吐、血尿(目に見える血尿や、検査でわかる血尿)、頻尿、排尿時の痛みなどを伴うこともあります。鈍痛が続く場合は、結石が尿管の一部を閉塞しているか、結石が小さくゆっくりと移動しているなどが考えられます。
  • 診断: 問診、尿検査(血尿の確認)、腹部X線検査、腹部超音波検査、CT検査などが行われます。CT検査は結石の有無や位置を正確に把握するために最も有用です。
  • 治療: 小さな結石の場合は、水分を多く摂取し、鎮痛剤を使用しながら自然に排出されるのを待ちます。結石が大きい場合や、痛みが強い場合、尿路感染症を伴う場合などは、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡を用いた手術(経尿道的尿管結石破砕術など)が行われます。

尿管結石の診療に関するより詳しい情報は、尿管結石診療ガイドラインも参考にしてください。

膀胱炎

膀胱炎は、細菌感染によって膀胱に炎症が起こる病気です。女性に多く見られますが、男性にも起こることがあります。

  • 症状: 排尿時の痛み(排尿痛)、頻尿、残尿感(排尿後もすっきりしない)、尿が濁る、血尿、下腹部(膀胱のある部位)の不快感や鈍痛が主な症状です。左下腹部に鈍痛として感じられることもあります。炎症が腎臓に広がると、発熱や側腹部痛を伴う腎盂腎炎になることがあります。
  • 診断: 問診、尿検査(白血球や細菌の有無の確認、細菌の種類を調べる培養検査)によって診断されます。
  • 治療: 細菌感染が原因であるため、抗生物質による治療が一般的です。適切な抗生物質を使用すれば、通常は数日で症状が改善します。水分を多く摂取することも推奨されます。

女性の場合に考えられる原因

女性の場合、生理周期に関連する痛みや、子宮・卵巣といった生殖器系の病気が左下腹部の鈍痛の原因となることがあります。

月経困難症(生理痛)

月経困難症は、生理期間中に腹痛や腰痛などの不快な症状が強く現れる状態です。生理痛の原因には、プロスタグランジンという物質によって子宮が収縮することによる機能性月経困難症と、子宮や卵巣に病気があることによる器質性月経困難症があります。

  • 症状: 生理期間中やその直前に、下腹部(左下腹部を含む)や腰に鈍痛や cramping(差し込むような痛み)が生じます。痛みの程度は個人差が大きく、日常生活に支障をきたすほど強い場合もあります。痛みに加えて、吐き気、嘔吐、頭痛、倦怠感、イライラなどの全身症状を伴うこともあります。左下腹部の痛みは、子宮の収縮や、子宮内膜症などが原因で左側の卵巣やその周辺に問題がある場合に感じられることがあります。
  • 診断: 問診で症状や生理周期について詳しく聞き取り、内診や超音波検査で子宮や卵巣に異常がないかを確認します。
  • 治療: 機能性月経困難症の場合は、鎮痛剤、低用量ピル(排卵を抑え、子宮内膜の増殖を抑えることで生理痛を軽減)、漢方薬などが用いられます。器質性月経困難症の場合は、原因となっている病気(子宮内膜症や子宮筋腫など)の治療が必要です。

月経に伴う症状に関する診療の詳細は、月経随伴症状の診療ガイドラインもご参照ください。

卵巣の病気(卵巣嚢腫、卵巣茎捻転、子宮内膜症など)

左側の卵巣に病気がある場合、左下腹部に痛みが生じることがあります。

  • 卵巣嚢腫: 卵巣に液体や脂肪などが溜まって腫れる良性の腫瘍です。小さいうちは無症状であることがほとんどですが、大きくなると下腹部の張りや違和感、頻尿、便秘などの症状が現れることがあります。左側の卵巣嚢腫が大きくなると、左下腹部に鈍痛として感じられることがあります。
  • 卵巣茎捻転: 卵巣嚢腫などが原因で、卵巣とその血管がつながっている部分(茎)がねじれてしまう状態です。卵巣への血流が遮断されるため、突然の激しい下腹部痛(左側の場合、左下腹部痛)が生じ、吐き気や嘔吐を伴うことが多いです。緊急手術が必要な状態です。
  • 子宮内膜症: 子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所(卵巣、腹膜など)で増殖する病気です。月経周期に合わせて出血を繰り返し、周囲の組織と癒着を起こしたり、炎症を引き起こしたりします。卵巣にできた場合は卵巣チョコレート嚢腫となり、生理痛や慢性的な下腹部痛(左側にある場合は左下腹部痛)の原因となります。
  • その他: 卵巣炎、卵管炎といった感染症や、異所性妊娠(子宮外妊娠)なども左下腹部痛の原因となり得ます。異所性妊娠の場合は、初期には軽度の腹痛や出血が見られることがありますが、進行すると激しい腹痛や出血、ショック状態に至る可能性があり、緊急性の高い状態です。

これらの病気が疑われる場合は、婦人科での診察が必要です。超音波検査、MRI検査、血液検査などを組み合わせて診断が行われます。

男性の場合に考えられる原因

男性の場合、前立腺や精巣上体といった泌尿生殖器系の病気が左下腹部やその周辺の痛みの原因となることがあります。

前立腺炎

前立腺炎は、前立腺に炎症が起こる病気です。細菌感染によるものと、原因が特定できないもの(非細菌性前立腺炎や慢性骨盤痛症候群)があります。

  • 症状: 会陰部(睾丸と肛門の間)、下腹部(左下腹部を含む)、股の付け根、睾丸などに鈍痛や不快感が生じることがあります。排尿時の痛み、頻尿、残尿感、排尿困難などの排尿に関する症状や、射精時の痛み、ED(勃起不全)といった性機能に関する症状を伴うこともあります。細菌性前立腺炎の場合は、発熱や悪寒を伴うこともあります。
  • 診断: 問診、直腸診(前立腺の触診)、尿検査(細菌や白血球の確認)、前立腺液検査などが行われます。
  • 治療: 細菌性前立腺炎の場合は抗生物質による治療が行われます。非細菌性の場合は、症状に応じてαブロッカー(前立腺や膀胱の筋肉を弛緩させる薬)、鎮痛剤、抗不安薬などが用いられます。生活習慣の見直し(長時間の座位を避ける、カフェインやアルコールを控えるなど)も重要です。

精巣上体炎

精巣上体炎は、精巣の近くにある精巣上体に炎症が起こる病気です。多くの場合、細菌感染(性感染症や大腸菌など)が原因となります。

  • 症状: 陰嚢の痛みや腫れが主な症状ですが、炎症が波及して左下腹部や鼠径部に痛みが放散することがあります。痛みは比較的急に始まり、時間とともに強くなることが多いですが、慢性的な炎症の場合は鈍痛が続くこともあります。発熱、悪寒、排尿時の痛み、頻尿、尿道の分泌物などを伴うこともあります。
  • 診断: 問診、視診、触診、尿検査(細菌の確認)、超音波検査などが行われます。
  • 治療: 細菌感染が原因であるため、抗生物質による治療が行われます。症状が強い場合は、安静、陰嚢の冷却、鎮痛剤の使用なども有効です。

痛みの種類(チクチク、ズキズキ、押すと痛い)別の原因

痛みの感じ方によっても、原因を推測するヒントが得られます。

左下腹部がチクチク痛む場合

チクチクとした痛みは、比較的軽度の炎症や、神経の刺激、ガスなどが原因で起こることがあります。

  • ガスだまり: 腸内でガスが移動したり溜まったりする際に、チクチクとした刺激として感じられることがあります。
  • 便秘: 硬い便が腸壁を刺激することで、チクチクとした不快感や痛みを伴うことがあります。
  • 過敏性腸症候群: 腸の動きが過敏になっている場合に、チクチク、ピリピリとした痛みが現れることがあります。
  • 軽度の炎症: 憩室の軽度の炎症や、婦人科系の軽微な炎症なども、チクチクとした痛みとして感じられることがあります。
  • 帯状疱疹: 帯状疱疹の初期症状として、皮膚に発疹が現れる数日〜数週間前に、ピリピリ、チクチクとした神経痛が生じることがあります。左下腹部に帯状疱疹が出現する場合、その前兆として左下腹部にチクチクとした痛みを感じることがあります。

左下腹部がズキズキ痛む場合

ズキズキとした痛みは、比較的強い炎症や、血管の拍動に伴う痛み、神経痛などが考えられます。

  • 大腸憩室炎: 憩室の炎症が進行すると、ズキズキと拍動するような痛みに変わることがあります。発熱を伴うことが多いです。
  • 炎症性腸疾患(活動期): 潰瘍性大腸炎やクローン病の炎症が強い時期には、ズキズキとした強い腹痛が生じることがあります。
  • 尿管結石(軽度または移動中の場合): 典型的な疝痛発作ほどではないものの、結石が尿管で刺激を与えたり、閉塞しかけている場合にズキズキとした痛みを感じることがあります。
  • 婦人科系の炎症: 卵巣炎や卵管炎など、左側の生殖器系に炎症が起きている場合に、ズキズキとした痛みが生じることがあります。
  • 血管系の問題: まれに、腹部大動脈瘤やその解離などが原因で、左下腹部を含む腹部にズキズキとした痛みを感じることがあります。これは非常に危険な状態です。

左下腹部を押すと痛む場合(圧痛)

押したときに痛みが強くなる「圧痛」は、その部位に炎症や圧迫があることを示唆します。

  • 大腸憩室炎: 炎症を起こしている憩室がある部位(左下腹部)を押すと、強い痛みを感じます。
  • 炎症性腸疾患: 炎症が強い部位を押すと痛みが現れます。
  • 便秘: 硬い便が溜まっている腸管を押すと、圧迫感や痛みを感じることがあります。
  • 腹膜炎: 腹部の内臓を覆う膜(腹膜)に炎症が及んでいる場合、押した時だけでなく、離した時(反跳痛)にも強い痛みが生じます。これは緊急性の高いサインです。
  • 婦人科系の病気: 卵巣の腫れや炎症がある場合、左下腹部を押すと痛みを感じることがあります。
  • 筋・筋膜性の痛み: 腹部の筋肉や筋膜に問題がある場合、その部位を押すと痛みを感じます。

左下腹部が急に痛み出した場合

突然始まった強い痛みは、緊急性の高い病気を示唆することがあります。

  • 尿管結石: 突然、非常に激しい差し込むような痛みが起こることが特徴です。
  • 卵巣茎捻転: 卵巣嚢腫などで卵巣がねじれると、突然激しい痛みが起こります。
  • 虚血性大腸炎: 突然の激しい腹痛と血便が特徴です。
  • 腸閉塞: 腸が詰まって内容物が流れなくなる状態で、突然の腹痛、吐き気、お腹の張りなどが現れます。
  • 腹部大動脈瘤破裂/解離: 非常に危険な状態で、突然の激しい腹痛や背部痛、ショック症状が現れます。

ストレスによる左下腹部痛

心と体は密接に関連しており、強いストレスや精神的な緊張が腹痛を引き起こすことがあります。

  • 過敏性腸症候群: ストレスは過敏性腸症候群の症状を悪化させる大きな要因です。ストレスによって腸の動きが過敏になったり、痛みの感じ方が強くなったりして、左下腹部を含む腹部に鈍痛や不快感が続くことがあります。
  • 心身症: ストレスが原因で身体症状が現れる病気の一つとして、腹痛があります。検査をしても器質的な異常が見つからない場合に、ストレスによる影響が考えられます。
  • 自律神経の乱れ: ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、消化管の動きが悪くなったり、知覚過敏になったりして、腹部の不快感や痛みを引き起こすことがあります。

ストレスによる痛みは、休養を取ったり、リラックスしたりすることで軽減することが多いですが、痛みが続く場合は自己判断せず、他の病気の可能性も考慮して医療機関に相談することが大切です。精神的なケアが必要な場合もあります。

左下腹部の鈍痛:考えられる主な原因の比較

原因 痛みの性質 主な伴う症状 特徴 関連する性別/年齢
便秘/ガスだまり 鈍痛、張り お腹の張り、不快感、便通異常 食事や生活習慣と関連、比較的軽度 全般
大腸憩室炎 鈍痛〜ズキズキ痛 発熱、吐き気、便通異常 左下腹部の圧痛 高齢者、便秘傾向
過敏性腸症候群 鈍痛、差し込み痛 便通異常(下痢/便秘)、腹部の張り、腹鳴 排便で症状が軽快、ストレスと関連 全般(若年〜中年)
炎症性腸疾患 鈍痛〜ズキズキ痛 下痢、血便、発熱、体重減少、倦怠感 慢性的な経過、活動期と寛解期を繰り返す 全般
虚血性大腸炎 激しい痛み〜鈍痛 下痢、血便、吐き気 突然発症、高齢者に多い 高齢者
大腸がん 鈍痛、張り 便通異常、血便、体重減少、貧血 進行すると症状が出やすい 高齢者
尿管結石 激しい差し込み痛 吐き気、嘔吐、血尿、頻尿 痛みが側腹部や背中に放散することも、移動に伴い痛む場所が変わる 全般(男性に多い)
膀胱炎 鈍痛、不快感 排尿痛、頻尿、残尿感、血尿、尿の濁り 排尿症状を伴う 女性に多い
月経困難症(生理痛) 鈍痛、差し込み痛 腰痛、吐き気、頭痛、倦怠感、イライラ 生理期間中または直前 女性
卵巣の病気(嚢腫、内膜症) 鈍痛、張り、ズキズキ 不正出血、生理痛悪化、不妊(内膜症)、腹部膨満感(嚢腫) 左側にある場合、左下腹部痛の原因に。茎捻転は突然の激痛。 女性
前立腺炎 鈍痛、不快感 排尿痛、頻尿、残尿感、射精痛、ED 会陰部や睾丸にも痛むことがある 男性
精巣上体炎 鈍痛〜強い痛み 陰嚢の痛み/腫れ、発熱、排尿症状 陰嚢の触診で確認 男性
ストレス 鈍痛、張り 便通異常、不眠、不安感、頭痛 精神的な要因、検査で異常なし 全般

※上記の表はあくまで一般的な傾向を示すものであり、すべてのケースに当てはまるわけではありません。個々の症状や状況によって原因は異なります。

左下腹部の鈍痛が続く場合、病院へ行く目安

左下腹部の鈍痛が続く場合、いつ病院に行くべきか迷うことがあるかもしれません。痛みの程度や期間、他の症状の有無によって、受診のタイミングや緊急性が異なります。

どのくらいの期間続いたら受診すべきか

痛みの程度が軽く、我慢できるような鈍痛であっても、数日から1週間以上続く場合は、一度医療機関を受診することを検討しましょう。特に、市販薬を試しても改善しない場合や、痛みが徐々に強くなっている場合は、早めの受診が推奨されます。

受診を検討する目安:

  • 軽度の鈍痛が数日〜1週間以上続いている
  • 痛みの程度が徐々に強くなっている
  • 市販薬で痛みが改善しない
  • 繰り返して痛みが現れる

ご自身で「いつものことだから」と放置せず、気になる症状がある場合は専門家に相談することが安心につながります。

すぐに病院を受診すべき症状

以下のような症状が左下腹部の鈍痛に加えて現れている場合は、緊急性の高い病気の可能性も考えられます。ためらわずに、すぐに医療機関(夜間や休日であれば救急外来)を受診してください。

すぐに病院を受診すべき危険な兆候:

  • 突然始まった非常に強い痛み:立っていられないほどの激痛
  • 痛みが時間とともに急速に悪化している
  • 高熱(38℃以上)がある
  • 吐き気や嘔吐を繰り返している
  • 血便や黒いタール状の便が出る
  • 下痢がひどい、または便が全く出ない(お腹が張っている場合)
  • お腹を触ると硬いしこりがある、または強く押すと激痛が走る
  • 冷や汗や顔面蒼白、意識がもうろうとしている
  • 大量の性器出血がある(女性の場合)
  • 陰嚢が強く痛む、腫れている(男性の場合)
  • 痛みのために全く眠れない、食事も摂れない

これらの症状は、重篤な炎症、腸閉塞、血管系の異常、卵巣茎捻転など、一刻も早い治療が必要な状態を示唆している可能性があります。

診療科の選び方

左下腹部の鈍痛で医療機関を受診する際、どの診療科を選べば良いか迷うかもしれません。考えられる原因によって適切な診療科は異なりますが、まずはかかりつけ医がいる場合は相談するか、症状に合わせて以下の診療科を検討しましょう。

  • 内科・消化器内科:
    便秘、ガスだまり、過敏性腸症候群、大腸憩室炎、炎症性腸疾患、虚血性大腸炎、大腸がんなど、消化器系の病気が疑われる場合に最初に受診することが多い診療科です。腹部全体の痛みや、便通異常(下痢や便秘)、血便などの症状がある場合もこちらが適しています。
  • 泌尿器科:
    尿管結石、膀胱炎など、尿路系の病気が疑われる場合に受診します。排尿時の痛み、頻尿、残尿感、血尿などの排尿に関する症状や、側腹部から下腹部にかけての痛みが強い場合に適しています。男性の場合は、前立腺炎や精巣上体炎も泌尿器科で診察します。
  • 婦人科:
    月経困難症、卵巣嚢腫、子宮内膜症、卵巣炎、卵管炎など、女性特有の生殖器系の病気が疑われる場合に受診します。生理に関連する痛みや、不正出血、性器の違和感などの症状がある場合に適しています。
  • 救急科:
    突然の激しい痛み、高熱、嘔吐を繰り返す、意識がもうろうとしているなど、緊急性の高い症状が現れている場合は、迷わず救急外来を受診してください。

症状が複雑で原因が特定できない場合は、まずは内科を受診し、医師の判断で専門科を紹介してもらうのが良いでしょう。複数の症状がある場合(例:下腹部痛と排尿痛があるなど)は、症状を医師に詳しく伝えることが大切です。

左下腹部の鈍痛に関するよくある質問

左下腹部の鈍痛について、多くの方が抱える疑問にお答えします。

左下腹部の痛みがずっと続く原因は何ですか?

左下腹部の痛みがずっと続く場合、便秘やガスだまりといった一時的な原因の可能性もありますが、病気が隠れている可能性も十分に考えられます。特に慢性的に痛みが続く原因としては、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、大腸憩室炎、婦人科系の病気(子宮内膜症、卵巣嚢腫など)、前立腺炎(男性)、尿路系の病気(慢性的な膀胱炎や小さな結石など)、またはストレスや自律神経の乱れなどが挙げられます。痛みが続く場合は自己判断せず、医療機関を受診して原因を特定することが重要です。

下腹部の鈍痛がずっと続く原因は何ですか?

下腹部全体の鈍痛が続く場合も、左下腹部の鈍痛と同様に様々な原因が考えられます。消化器系(大腸全体、小腸の一部)、泌尿器系(膀胱、尿管)、生殖器系(子宮、卵巣、前立腺)、骨盤内の筋肉や神経、ストレスなどが原因となり得ます。
具体的には、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、機能性ディスペプシア(胃の機能異常)、慢性的な膀胱炎、前立腺炎、女性の場合は子宮筋腫や子宮腺筋症、慢性的な骨盤内炎症性疾患などが考えられます。痛みの場所が特定しにくい場合や、他の症状(便通異常、排尿症状、不正出血など)を伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

下腹部痛はどれくらい続いたら病院に行くべきですか?

痛みの程度にもよりますが、軽度な下腹部痛であっても、数日〜1週間以上続く場合は医療機関を受診することを検討してください。特に、痛みが徐々に悪化する場合、日常生活に支障が出ている場合、市販薬が効かない場合は早めの受診が推奨されます。
また、痛みの期間に関わらず、突然の激しい痛み、高熱、吐き気・嘔吐、血便、意識障害などの緊急性の高い症状を伴う場合は、すぐに救急外来を受診してください。

左下腹部が鈍痛で押すと痛い場合、病気ですか?

左下腹部を押したときに痛み(圧痛)がある場合、その部位に何らかの異常がある可能性があります。炎症を起こしている可能性が高く、例えば大腸憩室炎や炎症性腸疾患、女性の場合は左側の卵巣やその周辺の炎症などが考えられます。便秘で便が溜まっている場合も圧痛を感じることがあります。
押したときだけでなく、離したときに痛みが強くなる「反跳痛」を伴う場合は、腹膜炎の可能性があり、緊急性の高い状態です。圧痛がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診して詳しい検査を受けることが大切です。

まとめ|長引く左下腹部痛は専門医に相談しましょう

左下腹部の鈍痛が続く場合、その原因は便秘やガスだまりといった比較的軽度なものから、大腸憩室炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、大腸がん、尿管結石、女性や男性特有の病気など、多岐にわたる病気が隠れている可能性があります。

痛みが数日〜1週間以上続く場合や、徐々に強くなる場合は、放置せずに医療機関を受診することが重要です。特に、突然の激しい痛み、高熱、吐き気、血便などの緊急性の高い症状を伴う場合は、すぐに救急外来を受診してください。

消化器系の病気が疑われる場合は内科や消化器内科、尿路系の病気や男性特有の病気が疑われる場合は泌尿器科、女性特有の病気が疑われる場合は婦人科を受診するのが一般的です。

長引く左下腹部の鈍痛は、体のサインかもしれません。ご自身の判断で様子を見すぎず、不安な場合は早めに専門医に相談し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

免責事項:
本記事の情報は、左下腹部の鈍痛に関する一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療の代替となるものではありません。個々の症状や状況は異なるため、具体的な診断や治療については必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。本記事の情報に基づいて行われた行為によって生じた損害について、当方は一切責任を負いません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次