咳のしすぎであばらが痛い 対処法
咳が続くと、あばら周辺に強い痛みを感じることがあります。この痛みは非常に不快で、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。咳のしすぎによるあばらの痛みは比較的よくある症状ですが、その原因は筋肉痛から骨折までさまざまです。つらい痛みを和らげ、原因に応じた適切な対処を行うためには、痛みの性質を理解し、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。
この記事では、咳であばらが痛くなる主な原因とその特徴、自宅でできる対処法、そして病院に行くべき目安や何科を受診すべきかについて詳しく解説します。つらい痛みに悩まされている方は、ぜひ参考にしてください。
その痛み、何が原因?咳であばらが痛くなる主な理由
咳をするとき、私たちの体は胸やお腹の筋肉を激しく使います。特に、長時間または激しい咳が続くと、これらの筋肉や周辺組織に大きな負担がかかり、痛みを引き起こすことがあります。咳によるあばらの痛みの原因として、主に以下の3つが考えられます。それぞれの痛みの特徴を理解することで、ご自身の痛みがどのタイプに近いのか、ある程度の見当をつけることができるでしょう。
筋肉痛・筋膜炎による痛み
咳は、肺から空気を勢いよく吐き出すために、腹筋や胸の筋肉、そして肋骨と肋骨の間にある肋間筋といった呼吸に関わる筋肉を強く収縮させる運動です。激しい運動をすると筋肉痛が起こるように、長時間の咳によってこれらの筋肉が疲労し、炎症を起こすことがあります。これが、咳のしすぎによるあばらの痛みの最も一般的な原因である筋肉痛や筋膜炎です。
筋肉痛による痛みは、咳をしたときや深呼吸をしたとき、体を動かしたとき、痛む部分を押したときに強くなる傾向があります。痛みの範囲は比較的広く、あばら周辺全体がだるい、重い、ピリピリするといった鈍い痛みや、ズキズキとした痛みとして感じられることが多いでしょう。特定のピンポイントではなく、広範囲が痛むのが特徴です。安静にしていると痛みが和らぎますが、再び咳が出ると痛みが走ります。通常、原因となった咳が治まれば、数日から1週間程度で自然に回復に向かいます。
肋間神経痛による痛み
肋間神経痛は、肋骨に沿って走る神経が刺激されたり傷ついたりすることで生じる痛みの総称です。咳のしすぎによって胸郭の筋肉が緊張したり、姿勢が悪くなったりすることで、肋間神経が圧迫されたり引っ張られたりして、神経痛を引き起こすことがあります。また、咳の原因となっている病気(肺炎や胸膜炎など)が神経を刺激することでも起こり得ます。
肋間神経痛による痛みは、電気が走るような、あるいは針で刺されたような鋭い痛みが特徴です。痛む場所は肋骨に沿った特定のライン上に出やすく、左右どちらか片側に起こることが多い傾向があります。咳をしたとき、深呼吸をしたとき、くしゃみをしたときなど、胸郭が動かされたときに瞬間的に「ズキン!」という激しい痛みが走ることがあります。安静にしていても痛みが続く場合や、痛みの波がある場合もあります。原因が咳による筋肉の緊張であれば、咳が治まるとともに改善することが多いですが、帯状疱疹など他の原因で生じる肋間神経痛もあるため注意が必要です。(咳による痛みの文脈では、咳による筋肉・神経への負担に焦点を当てます)
肋骨の疲労骨折・ヒビ
咳のしすぎによるあばらの痛みの中で、最も重症度が高いのが肋骨の疲労骨折やヒビです。これは、繰り返し胸郭に強い力がかかることで、肋骨に小さな亀裂(ヒビ)が入ったり、完全に折れたりする状態です。特に、骨が脆くなっている高齢者や骨粗鬆症の方、痩せている方、または長期間ステロイド薬を使用している方などは、比較的軽い咳でも肋骨が損傷しやすい傾向があります。しかし、若い方でも非常に激しい咳が長く続けば起こる可能性はあります。
肋骨の疲労骨折やヒビによる痛みは、特定の場所を指で押したときに非常に強い痛みが走る「圧痛」が顕著です。咳をしたときや深呼吸をしたとき、寝返りを打ったときなど、胸郭が動くたびに激しい痛みが起こり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。痛みはピンポイントで感じられることが多く、ひどい場合は「ミシッ」という音や感覚を伴うこともあります。外見上は変化がないことが多いですが、腫れや内出血が見られることもあります。筋肉痛や神経痛と異なり、安静にしていても痛みが完全に消失することは少なく、痛みが持続するのが特徴です。レントゲン検査でも骨折が確認しにくい場合があり、診断が難しいケースもあります。適切な治療と安静が必要となるため、この可能性が疑われる場合は必ず医療機関を受診すべきです。
病院に行くべき?セルフケアで様子を見る?判断の目安
咳によるあばらの痛みを感じたとき、まず考えるのは「病院に行くべきか、それとも家で様子を見ていいか」という点でしょう。痛みの原因が一時的な筋肉痛であれば、数日間のセルフケアで改善することも少なくありません。しかし、骨折や他の病気が隠れている可能性もあり、安易に自己判断するのは危険な場合もあります。ここでは、病院を受診すべきかどうかの判断基準と、まず何科に行くべきかについて解説します。
こんな症状は要注意!すぐに病院へ
以下のような症状が見られる場合は、単なる筋肉痛ではなく、より重い原因や他の病気が隠れている可能性が高いため、できるだけ早く医療機関を受診してください。
激しい痛み、深呼吸や咳で悪化
痛みの程度が非常に強く、息を吸い込むだけでも激しい痛みが走る、咳をすることが非常につらい、痛みで夜眠れないなど、日常生活に大きな支障をきたしている場合は、骨折や重度の炎症などが考えられます。特に、今まで感じたことのないような強い痛みが突然始まった場合は要注意です。
患部の腫れや内出血、変形
痛みのあるあばら周辺を観察したときに、見た目にわかる腫れがある、押すとブヨブヨする、内出血している、あるいは肋骨の形が明らかに歪んでいるなどの変化が見られる場合は、骨折の可能性が非常に高いです。
発熱や息苦しさなど、咳以外の症状
咳によるあばらの痛みだけでなく、同時に高熱が出ている、黄色や緑色の痰が出る、息苦しさを感じる、呼吸が速い、胸の音がゼーゼー・ヒューヒューするなど、咳の原因となっている病気(肺炎、気管支炎、胸膜炎など)が重症化している可能性を示す症状がある場合も、速やかに受診が必要です。これらの症状は、肺や胸膜に炎症が広がっているサインかもしれません。また、体重が減少した、食欲がない、だるさが続くといった全身症状がある場合も、原因疾患の悪化や別の病気を疑う必要があります。
その他にも、安静にしても痛みが全く改善しない、あるいは痛みが日増しに強くなっている、痛みの範囲が徐々に広がっている、痛みのために深く息が吸えず呼吸が浅くなっている、といった場合も医療機関での診察を受けることをお勧めします。
まずは何科を受診すべきか
咳によるあばらの痛みで病院を受診する場合、何科に行けばよいか迷うことがあるかもしれません。痛みの主な原因や随伴症状によって、適した科が異なります。
痛みの特徴・主な症状 | 考えられる原因 | 受診すべき科 |
---|---|---|
痛みが中心、押すと痛い、動くと痛む(広範囲) | 筋肉痛、筋膜炎、肋骨のヒビ・骨折 | 整形外科 |
痛みが中心、肋骨に沿った鋭い痛み(片側) | 肋間神経痛(咳によるもの)、帯状疱疹など | 整形外科、神経内科 |
激しい咳が続く、痰が出る、発熱、息苦しさ | 肺炎、気管支炎、胸膜炎など(咳の原因疾患) | 呼吸器内科、内科 |
その他、原因がはっきりしない場合 | 全身的な疾患、心臓や消化器系の関連痛の可能性 | 内科、かかりつけ医 |
咳がひどくてあばらが痛いという場合は、まず咳の原因を調べるために呼吸器内科や内科を受診するのが一般的です。そこで肺炎や気管支炎などの診断を受け、咳の治療を行いますが、その過程で肋骨の痛みについても相談できます。咳の原因が特定できず、痛みが主な症状である場合は、整形外科を受診して筋肉や骨、神経の異常がないか診てもらうのが良いでしょう。肋骨の疲労骨折やヒビが疑われる場合も整形外科が専門となります。
もし、どの科に行けば良いか判断に迷う場合は、まずはかかりつけ医や近隣の内科を受診して相談することをお勧めします。医師が症状を総合的に判断し、必要であれば適切な専門科を紹介してくれるでしょう。
【自宅でできる】咳によるあばら痛の応急処置・緩和方法
病院に行くほどではない、あるいは病院に行くまでの間に、つらい咳によるあばらの痛みを少しでも和らげるために、自宅でできるセルフケアや応急処置があります。これらの方法は、主に痛みの緩和と、咳による胸郭への負担を軽減することを目的としています。ただし、これらの方法を試しても痛みが改善しない場合や、痛みが悪化する場合は、無理せず医療機関を受診してください。
安静にする
痛む部分に負担をかけないよう、安静にすることが最も基本的な対処法です。激しい運動や、痛みを誘発するような体のひねりや急な動きは避けましょう。可能な範囲で、体を休める時間を十分に取ることが大切です。無理に動くと痛みが強くなったり、回復が遅れたりする可能性があります。特に肋骨にヒビや骨折がある場合は、安静が非常に重要です。
### 痛む部分を冷やす or 温める
痛みの原因や症状の経過によって、冷やすのが良い場合と温めるのが良い場合があります。
- 冷やす(アイシング): 痛みが始まったばかりの急性期(数日以内)や、熱感や腫れがある場合は、炎症を抑えるために痛む部分を冷やすのが効果的です。アイスパックや氷嚢をタオルで包み、1回15~20分程度、1日に数回、痛む部分に当ててください。長時間冷やしすぎると皮膚に負担がかかることがあるので注意が必要です。
- 温める: 痛みが慢性化している場合や、筋肉の凝りや張りが原因で痛みが生じている場合は、温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を和らげるのが効果的です。温湿布、蒸しタオル、カイロなどを利用したり、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かったりするのも良いでしょう。ただし、炎症が強い急性期に温めると、かえって炎症が悪化する場合があるので、使い分けが大切です。どちらが良いか分からない場合は、両方を試してみて、より痛みが和らぐ方を選んでも構いません。
湿布や市販の痛み止めを使う
軽い痛みであれば、市販の湿布薬や内服の痛み止め(鎮痛剤)を使用するのも有効な手段です。
- 湿布薬: 消炎鎮痛成分が含まれた湿布薬(テープ剤やパップ剤)を痛む部分に貼ることで、皮膚を通して成分が吸収され、局所的な炎症や痛みを抑える効果が期待できます。温感タイプと冷感タイプがありますが、痛みの性質や冷やす・温めるの判断を参考に選ぶと良いでしょう。
- 市販の痛み止め: アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの成分を含む市販薬が利用できます。これらの薬は、痛みの原因となる物質の生成を抑えることで痛みを和らげます。使用する際は、必ず添付文書に記載された用法・用量を守り、胃の不調などの副作用に注意してください。特に他の薬を服用している場合や、持病がある場合は、使用前に薬剤師や登録販売者に相談することをお勧めします。
楽な姿勢や寝方を工夫する
咳をする際や、安静にしているときの姿勢を工夫することで、痛みを軽減できることがあります。
- 咳をする時: 咳をする瞬間に、痛むあばら側を手で押さえる、クッションなどを抱きかかえて胸を支えるといった方法で、胸郭の動きを抑え、痛みを和らげることができます。
- 寝る時: 痛む側を上にして横向きに寝る、あるいは仰向けで膝の下にクッションを入れて腰や胸への負担を減らすなど、自分が最も楽な姿勢を見つけましょう。クッションをあばらの下や横に挟むことで、痛む部分への圧迫を避けたり、安定させたりするのも効果的です。
腹式呼吸を意識する
咳によるあばらの痛みがある場合、無意識のうちに痛みを避けるために胸での浅い呼吸(胸式呼吸)になりがちです。しかし、胸式呼吸は肋間筋に負担をかけやすく、かえって痛みを悪化させる可能性があります。代わりに、お腹を膨らませるようにゆっくりと息を吸い込み、お腹をへこませながらゆっくりと息を吐き出す腹式呼吸を意識してみましょう。腹式呼吸は横隔膜を主に使うため、胸郭の動きを抑えつつ深い呼吸ができ、肋骨や肋間筋への負担を軽減する効果が期待できます。無理のない範囲で、痛みを誘発しないようにゆっくり行うことが重要です。
これらの自宅での応急処置や緩和方法は、あくまで一時的に痛みを和らげるためのものです。痛みが強い場合や長引く場合は、必ず医療機関を受診して適切な診断と治療を受けてください。
医療機関での診断と治療法
咳によるあばらの痛みで医療機関を受診した場合、医師は痛みの原因を特定するためにさまざまな診察や検査を行います。診断に基づいて、原因に応じた適切な治療法が選択されます。
診断方法(問診、画像検査など)
まず、医師は患者さんから詳しいお話を伺います(問診)。いつから痛みがあるか、痛みの場所や性質(ズキズキ、ピリピリ、鋭いなど)、どのような時に痛みが強くなるか(咳、深呼吸、体動、押すなど)、痛みの程度、咳の頻度や性質、他の症状(発熱、痰、息苦しさなど)、既往歴、服用中の薬など、痛みの原因を探るための重要な情報を収集します。
次に、視診や触診を行います。痛む部分に腫れや内出血がないか、変形がないかなどを観察し、実際に痛む部分やその周囲を軽く押したり叩いたりして、痛みの正確な場所や性質を確認します。特に特定の場所の強い圧痛は、骨折やヒビの可能性を示唆します。
これらの情報から肋骨の骨折やヒビが疑われる場合は、画像検査が行われます。
- レントゲン検査(X線検査): 最も一般的に行われる画像検査です。骨折や大きなヒビを確認するのに有効ですが、小さなヒビや疲労骨折の場合は、発生直後には写りにくいこともあります。数日~1週間程度経過してから再び撮影すると写ってくる場合もあります。
- CT検査: レントゲン検査で診断が難しい場合や、骨折の詳しい状態、周囲の組織への影響などを確認するために行われます。骨の小さな異常も捉えやすい検査です。
- MRI検査: 骨だけでなく、筋肉や神経、軟部組織の状態を詳しく調べるのに適しています。肋間神経痛の原因を調べたり、レントゲンやCTで診断がつかない微細な骨折(疲労骨折など)や軟部組織の損傷を確認したりする場合に有用です。
- 骨シンチグラフィ: 微細な骨折や骨の炎症部位を特定するのに非常に感度が高い検査です。特に疲労骨折のようにレントゲンに写りにくい骨の異常を早期に発見するのに用いられることがあります。
これらの検査結果と問診・診察の結果を総合して、痛みの原因が特定されます。
治療法(薬物療法、固定、安静指導など)
診断された原因に基づいて、以下のような治療法が選択されます。
- 薬物療法:
- 鎮痛剤(痛み止め): 痛みを和らげるために処方されます。市販薬よりも強力な非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)や、痛みの程度に応じてより強い鎮痛剤が使われることもあります。肋間神経痛の場合は、神経の興奮を抑えるタイプの薬(プレガバリンなど)が用いられることもあります。
- 湿布薬や塗り薬: 局所的な痛みや炎症に対して、湿布や塗り薬が処方されることもあります。
- 筋弛緩薬: 筋肉の緊張が強い場合は、筋肉のこわばりを和らげる筋弛緩薬が処方されることがあります。
- 咳止め(鎮咳薬): 痛みの根本原因である咳を鎮めるために、原因に応じた咳止めが処方されます。空咳がひどい場合は咳中枢に作用する鎮咳薬、痰が絡む咳の場合は去痰薬などが用いられます。咳が治まれば、それに伴ってあばらの痛みも軽減することが期待できます。
- 原因疾患の治療薬: 肺炎や気管支炎など、咳を引き起こしている原疾患がある場合は、それに対する抗菌薬や抗ウイルス薬、気管支拡張薬、吸入薬などが処方されます。原因疾患が改善すれば、咳も減り、あばらの痛みも解消に向かいます。
- 固定:
- バストバンド: 肋骨の骨折やヒビがある場合、胸郭の動きを制限し、痛みを和らげ、治癒を促進するためにバストバンド(胸部固定帯)が用いられます。胸部を圧迫しすぎると呼吸が浅くなり肺炎などのリスクを高めることもあるため、装着方法や期間については医師の指示に従うことが重要です。
- テーピング: 軽いヒビや筋肉・筋膜の痛みに対して、キネシオテープなどで痛む部分やその周囲を固定・サポートする方法が用いられることもあります。
- 安静指導: 痛みの原因に関わらず、患部への負担を減らすための安静指導は重要です。特に骨折の場合は、治癒するまでの間、激しい運動や重いものを持つこと、体をひねる動きなどは厳禁となります。
- リハビリテーション: 痛みが軽減してきたら、必要に応じて胸郭周囲の筋肉のストレッチや、呼吸法の指導など、再発予防や機能回復のためのリハビリテーションが行われることもあります。
肋骨のヒビ・骨折の治癒期間
肋骨のヒビや骨折の治癒にかかる期間は、損傷の程度や個人の年齢、健康状態などによって異なりますが、一般的には数週間から数ヶ月を要します。
- ヒビの場合: 比較的軽いヒビであれば、痛みが和らぎ始めるまでに2~3週間、完全に痛みがなくなるまでに1ヶ月~1ヶ月半程度かかることが多いです。
- 骨折の場合: 完全に骨がくっつくまでには、通常1ヶ月半から3ヶ月程度かかります。痛みが続く期間も長く、完全に痛みが消失するまでにはさらに時間がかかることもあります。
治癒期間中は痛みが続きますが、徐々に軽減していくのが一般的です。痛みが全く良くならない、あるいは悪化する場合は、合併症や診断の見直しが必要な可能性もあるため、医師に相談してください。治癒期間中は、医師の指示に従い、無理な活動は避け、痛みを我慢しすぎないことが大切です。
咳を抑えるための対策と予防
咳によるあばらの痛みを根本的に解決するためには、痛みの原因となっている「咳そのもの」を抑えることが最も重要です。咳を誘発する原因を取り除いたり、咳が出にくい環境を整えたりすることで、痛みの軽減と再発予防につながります。
咳の原因となる疾患の治療
長引く咳には必ず原因があります。風邪やインフルエンザなどの感染症、気管支炎、肺炎、喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺結核、肺がんなどの呼吸器疾患のほか、心不全、逆流性食道炎、アレルギー(花粉症、ハウスダストなど)、特定の薬の副作用なども咳の原因となり得ます。
あばらの痛みを伴うような激しい咳や、長引く咳がある場合は、必ず医療機関を受診して咳の原因を特定し、適切な治療を受けることが不可欠です。原因疾患を治療することで、咳が治まり、それに伴ってあばらの痛みも解消されます。例えば、喘息であれば気管支拡張薬や吸入ステロイド薬、肺炎であれば抗菌薬、逆流性食道炎であれば胃酸を抑える薬など、原因に応じた治療が行われます。自己判断で市販の咳止めだけを使い続けても、根本的な原因が解決されなければ、咳も痛みも改善しないばかりか、病気を悪化させてしまう危険性もあります。
加湿や水分補給
喉や気管支の乾燥は、咳を誘発したり悪化させたりする大きな要因の一つです。特に冬場やエアコンを使用している室内は乾燥しやすいため、加湿を心がけましょう。
- 加湿: 加湿器を使用したり、洗濯物を室内に干したり、濡らしたタオルを吊るしたりすることで、室内の湿度を適切(目安として50~60%)に保ちましょう。ただし、加湿器はこまめに清掃し、カビや雑菌の繁殖を防ぐことが重要です。
- 水分補給: こまめな水分補給も、喉の乾燥を防ぎ、気道粘膜を潤すために大切です。水やぬるめのお茶、白湯などを意識して飲みましょう。冷たい飲み物は気管支を刺激して咳を誘発することがあるため、避けた方が良い場合があります。また、蜂蜜を溶かしたお湯なども喉を潤す効果が期待できます。十分な水分補給は、痰を柔らかくして排出しやすくする効果もあります。
マスクの着用
マスクを着用することも、咳の予防や軽減に役立ちます。
- 保湿効果: マスクの内側は呼気によって湿度が高く保たれるため、喉や気管支の乾燥を防ぐ効果があります。
- 外部刺激からの保護: 冷たい空気、乾燥した空気、ほこり、花粉などの外部からの刺激が気道に入るのを防ぐことで、咳を誘発する要因を減らすことができます。外出時はもちろん、乾燥しやすい室内や就寝時にマスクを着用するのも効果的です。
市販の鎮咳薬の利用
一時的に咳を抑えたい場合に、市販の咳止め薬(鎮咳薬)を利用することもできます。ただし、これはあくまで対症療法であり、咳の根本原因を治療するものではありません。
市販の咳止め薬には、咳中枢に作用して咳を鎮めるタイプや、気管支の痙攣を抑えて咳を和らげるタイプ、痰を出しやすくして結果的に咳を減らすタイプなど、様々な種類があります。ご自身の咳の性質(空咳、痰が絡む咳など)に合わせて選ぶことが重要です。
使用する際は、必ず添付文書をよく読み、用法・用量を守ってください。眠気を引き起こす成分が含まれているものもありますので、車の運転などには注意が必要です。また、数日使用しても咳が改善しない場合や、発熱や息苦しさなどの症状を伴う場合は、自己判断を続けずに医療機関を受診してください。薬剤師や登録販売者に相談して、ご自身の症状に合った薬を選んでもらうのが安心です。
咳を予防・軽減するための生活習慣
- 禁煙: 喫煙は気道に慢性的な炎症を引き起こし、咳の原因となります。禁煙は最も重要な咳の予防策の一つです。
- 規則正しい生活: 十分な睡眠を取り、バランスの取れた食事を心がけることで、体の免疫力を維持し、風邪などの感染症にかかりにくくなります。
- ストレス管理: ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、咳を誘発したり悪化させたりすることがあります。適度な休息やリラクゼーションを取り入れ、ストレスを溜め込まないようにすることも大切です。
- 適度な運動: 体力を維持し、全身の血行を良くすることは、免疫力向上や呼吸器系の機能維持につながります。ただし、咳や痛みがある時は無理せず、体調が良い時に行うようにしましょう。
まとめ:つらいあばら痛、適切に対処しよう
咳のしすぎによるあばらの痛みは、一時的な筋肉痛から、肋間神経痛、さらには肋骨の疲労骨折やヒビまで、様々な原因で起こり得ます。痛みの性質や程度、他の随伴症状によって、その原因や重症度が異なります。
痛みが比較的軽く、安静にしていれば和らぐような場合は、自宅での安静、痛む部分の冷却や温熱、市販の湿布や痛み止め、楽な姿勢の工夫などで様子を見ることも可能です。しかし、痛みが非常に強い場合、特定の場所を押すと激痛が走る場合、腫れや内出血がある場合、発熱や息苦しさを伴う場合などは、骨折や重症な病気が隠れている可能性があるため、速やかに医療機関を受診することが非常に重要です。
咳の原因を特定し治療することは、あばらの痛みを根本的に解決するために不可欠です。長引く咳や激しい咳がある場合は、まずは呼吸器内科や内科で診てもらい、咳の原因となる疾患がないか調べてもらいましょう。痛みが主な症状で咳の原因がはっきりしない場合は、整形外科を受診するのが適切です。
ご自身の症状をよく観察し、ここで解説した目安を参考に、必要に応じて専門医の診察を受けてください。つらいあばらの痛みは、我慢せずに適切に対処することで、早期の改善と回復につながります。
免責事項: この記事は、一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。個別の症状に関する診断や治療方針については、必ず医療機関を受診し、医師の判断に従ってください。自己判断による治療は危険を伴う場合があります。