肩甲骨の痛みは、日常生活で経験しやすい不調の一つです。デスクワークやスマートフォンの長時間使用、運動不足、あるいは普段行わない動作などが原因で、肩甲骨の周囲に痛みを感じることは珍しくありません。「肩甲骨が痛い」といっても、その原因は様々で、単なる筋肉の疲れやこりからくるものだけでなく、体の別の部分の不調や、時には内臓の病気が隠れている可能性もあります。
この痛みは、左側だけ、右側だけ、内側や肩甲骨と肩甲骨の間など、痛む場所によって原因が異なることもあります。痛みの性質も、「ズキズキする」「ピリピリする」「重だるい」「じっとしていても痛い」など人によって異なります。
この記事では、肩甲骨の痛みの主な原因を詳しく解説し、痛む場所別の原因の考え方、ご自身でできる対処法、そして医療機関を受診すべき目安についてご紹介します。肩甲骨の痛みにお悩みの方が、ご自身の痛みの原因を知り、適切な対処法を見つけるための手助けとなれば幸いです。
肩甲骨の痛みの主な原因
肩甲骨の痛みの多くは、筋肉や骨格の問題に由来しますが、中には注意が必要なケースもあります。ここでは、痛みの主な原因について詳しく見ていきましょう。
筋肉の緊張や使いすぎによる痛み
肩甲骨の痛みで最も一般的な原因は、肩甲骨周囲の筋肉の緊張や使いすぎです。特に、デスクワークで長時間同じ姿勢を続けたり、パソコンやスマートフォンを長時間操作したりすることで、僧帽筋(そうぼうきん)や菱形筋(りょうけいきん)、肩甲挙筋(けんこうきょきん)といった肩や背中の筋肉が硬くなり、痛みを引き起こします。
- 長時間労働や同じ姿勢: 長時間座りっぱなし、立ちっぱなし、前かがみの姿勢などが続くと、特定の筋肉に負担がかかり続けます。
- 運動不足: 普段あまり体を動かさないと、筋肉が衰えたり硬くなったりしやすくなります。急な運動や無理な動きで筋肉を痛めることもあります。
- 冷え: 体が冷えると筋肉が収縮し、血行が悪くなることで痛みが起こりやすくなります。
- 筋膜性疼痛症候群: 筋肉を覆う筋膜が硬くなり、しこり(トリガーポイント)ができることで、関連する部位に痛みを引き起こす状態です。肩甲骨周辺の筋肉の筋膜に問題が生じると、肩甲骨の痛みの原因となることがあります。
これらの筋肉の緊張や使いすぎによる痛みは、多くの場合、安静にしたり、ストレッチやマッサージをしたりすることで緩和されます。
姿勢の悪さが招く肩甲骨の痛み
現代人に多い猫背や巻き肩、ストレートネックといった不良姿勢は、肩甲骨の痛みと深く関連しています。本来、肩甲骨はスムーズに動くことで、腕の動きをサポートし、肩への負担を軽減する役割を担っています。しかし、姿勢が悪くなると、肩甲骨の動きが制限され、特定の筋肉に過剰な負担がかかります。
- 猫背: 背中が丸まり、頭が前に突き出た姿勢です。肩甲骨が外側に開き、背中の筋肉が常に引っ張られる状態になります。
- 巻き肩: 肩が体の前面に丸まっている姿勢です。肩甲骨が前方にスライドし、胸の筋肉が縮こまり、背中の筋肉が伸ばされます。
- ストレートネック: 首の骨の自然なカーブが失われ、まっすぐになっている状態です。頭の重さを首だけで支えることになり、肩や肩甲骨周囲の筋肉に大きな負担がかかります。
これらの姿勢の悪さは、肩甲骨周囲の筋肉の血行不良を招き、こりや痛みを慢性化させる原因となります。意識的に正しい姿勢を保つことや、姿勢を改善するためのエクササイズを取り入れることが重要です。
内臓の不調による関連痛の可能性
肩甲骨の痛みの中には、筋肉や姿勢の問題ではなく、体の内部にある臓器の不調が原因で起こる「関連痛(放散痛)」である場合があります。関連痛とは、病気がある場所とは別の場所に痛みを感じる現象です。肩甲骨の痛みとして現れる関連痛は、特に注意が必要です。
心臓や肺など胸部の関連痛
胸部にある臓器の病気が、肩甲骨の痛みを引き起こすことがあります。
- 心筋梗塞、狭心症: 心臓の血流が悪くなることで起こる病気です。典型的な症状は胸の痛みですが、左肩や左腕、顎、そして左肩甲骨にかけて痛みが広がる(放散痛)ことがあります。特に、運動時や寒冷時に痛みが強くなる、痛みが30分以上続く、冷や汗や息切れを伴う場合は、緊急性の高い可能性があります。
- 大動脈解離: 大動脈の壁が裂けてしまう非常に危険な病気です。突然、引き裂かれるような激しい痛みが胸や背中(肩甲骨の間など)に現れます。
- 肺炎、胸膜炎: 肺やその周りの膜の炎症です。咳や発熱、息苦しさに加えて、炎症がある側の肩甲骨周囲や背中に痛みを感じることがあります。
これらの症状が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
胆のうや胃など腹部の関連痛
腹部にある臓器の病気も、肩甲骨の関連痛の原因となることがあります。
- 胆のう炎、胆石症: 胆のうや胆管に炎症が起きたり、石ができたりする病気です。みぞおちや右脇腹の痛みが典型的ですが、右肩や右肩甲骨の下あたりに痛みが広がることがあります。特に、脂っこい食事の後や夜間に痛みが強くなる傾向があります。
- 胃炎、胃潰瘍: 胃の粘膜に炎症や潰瘍ができる病気です。みぞおちの痛みや吐き気、食欲不振などが主な症状ですが、背中や肩甲骨の間あたりに痛みを感じることもあります。
内臓疾患による関連痛は、安静にしても痛みが改善しない、食後や特定の体勢で痛みが変わる、吐き気や発熱などの他の症状を伴うといった特徴が見られることがあります。
その他の原因(神経圧迫、ストレスなど)
筋肉や姿勢、内臓の問題以外にも、肩甲骨の痛みを引き起こす原因があります。
- 頸椎の疾患: 首の骨(頸椎)の椎間板ヘルニアや変形性頸椎症などにより、首から肩や腕にかけて伸びる神経が圧迫されると、肩甲骨周囲や腕、手にかけて痛みやしびれが生じることがあります。
- 帯状疱疹: 体の片側の神経に沿って痛みや発疹が現れる病気です。発疹が現れる数日前から、肩甲骨周辺の皮膚にピリピリ、チクチクとした痛みを感じることがあります。
- ストレス、精神的な緊張: 精神的なストレスや過度な緊張は、自律神経のバランスを崩し、筋肉を硬直させ、血行を悪くすることがあります。これが原因で、肩甲骨周囲に痛みを引き起こすことがあります。心因性の痛みは、身体的な原因が見つからない場合や、痛みの場所や性質が変化するといった特徴が見られることがあります。
- 関節や骨の疾患: 肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)が肩甲骨の動きにも影響を与えたり、まれに骨腫瘍などが痛みの原因となることもあります。
様々な原因が考えられるため、痛みが続く場合や、他に気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関で相談することが大切です。
痛む場所で考える原因(左・右・内側・間)
肩甲骨の痛みは、その痛む場所によって原因を推測する手がかりになります。痛む場所が特定の筋肉や神経、あるいは内臓と関連していることがあるためです。
左肩甲骨が痛い場合の原因
左肩甲骨の痛みの多くは、筋肉の緊張や姿勢の悪さに由来します。しかし、心臓や肺といった胸部の関連痛の可能性も考慮する必要があります。特に、左胸の痛みや息切れを伴う場合は、心臓の病気を疑い、迅速な対応が必要です。
考えられる主な原因 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
筋肉の緊張・使いすぎ | デスクワーク、左腕の使いすぎなど。左肩甲骨周辺の筋肉を押すと痛む。 | 軽いストレッチや休息で改善することが多い。 |
姿勢の悪さ(猫背、巻き肩) | 左側の肩甲骨が動きにくくなっている、姿勢が悪いと痛みが強くなる。 | 日常生活での姿勢改善が重要。 |
心臓の関連痛 | 胸の痛み、息切れ、冷や汗などを伴う。運動時や寒冷時に悪化しやすい。痛みが左肩、左腕、顎に広がる。 | 緊急性が非常に高い。速やかに救急外来を受診または救急車を呼ぶ。 |
肺の関連痛 | 咳、発熱、息苦しさを伴う。特に深呼吸で痛むことがある。 | 呼吸器科など専門医の受診が必要。 |
頸椎の疾患 | 左肩甲骨だけでなく、左腕や手に痛みやしびれを伴う。首の動きで痛みが変化することがある。 | 神経内科や整形外科を受診。 |
ストレス、精神的緊張 | 身体的な原因が見当たらない。痛みの性質や強さが日によって変動する。 | ストレス管理やリラクゼーションが有効な場合がある。心療内科も選択肢。 |
右肩甲骨が痛い場合の原因
右肩甲骨の痛みも、筋肉の緊張や姿勢の問題が主な原因です。しかし、胆のうや肝臓といった腹部の関連痛の可能性を考慮する必要があります。特に、食後に痛みが強くなる、吐き気を伴うといった場合は、消化器系の病気を疑います。
考えられる主な原因 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
筋肉の緊張・使いすぎ | 右腕の使いすぎ、利き手側への負担など。右肩甲骨周辺の筋肉を押すと痛む。 | 軽いストレッチや休息で改善することが多い。 |
姿勢の悪さ(猫背、巻き肩) | 右側の肩甲骨が動きにくくなっている、姿勢が悪いと痛みが強くなる。 | 日常生活での姿勢改善が重要。 |
胆のう・肝臓などの関連痛 | みぞおちや右脇腹の痛みを伴うことが多い。食後、特に脂っこい食事の後に痛みが強くなる。吐き気や発熱を伴うこともある。痛みが右肩や右肩甲骨に広がる。 | 消化器内科を受診。 |
胃や十二指腸の関連痛 | みぞおちの痛み、吐き気、胃もたれなどを伴う。空腹時や食後に痛みが変化することがある。痛みが右肩甲骨の間や背中に広がる。 | 消化器内科を受診。 |
頸椎の疾患 | 右肩甲骨だけでなく、右腕や手に痛みやしびれを伴う。首の動きで痛みが変化することがある。 | 神経内科や整形外科を受診。 |
ストレス、精神的緊張 | 身体的な原因が見当たらない。痛みの性質や強さが日によって変動する。 | ストレス管理やリラクゼーションが有効な場合がある。心療内科も選択肢。 |
肩甲骨の内側が痛い場合
肩甲骨の内側、特に背骨に近い部分の痛みは、菱形筋や僧帽筋といった、肩甲骨を内側に引き寄せる筋肉の緊張が原因であることが多いです。これらの筋肉は、猫背などの不良姿勢や、前かがみでの作業、重いものを持つ動作などで負担がかかりやすい筋肉です。
- 筋肉の緊張: デスクワークでの前かがみ姿勢、長時間のスマホ操作、リュックサックの重さなど。
- 不良姿勢: 猫背により菱形筋などが常に引き伸ばされる状態。
- ぎっくり背中: 急な動作や無理な体勢で、肩甲骨周囲の筋肉や筋膜を痛めることがあります。内側に鋭い痛みを感じることがあります。
肩甲骨の内側の痛みは、筋肉の疲労が原因であることが多いため、ストレッチや温めることで緩和されるケースが多く見られます。
肩甲骨の間が痛い場合
肩甲骨と肩甲骨の間の痛みは、僧帽筋や広背筋といった背中の大きな筋肉の緊張や疲労が主な原因です。また、猫背姿勢で背中が丸まっていると、この部分の筋肉に常に負担がかかります。
- 筋肉の緊張・疲労: 長時間のデスクワーク、前かがみでの作業、背中を丸める姿勢など。
- 不良姿勢: 猫背や円背(背中の曲がり)により、肩甲骨の間が常に伸ばされる状態。
- 胃腸の関連痛: 胃や十二指腸の不調が、背中や肩甲骨の間に痛みを引き起こすことがあります。
肩甲骨の間の痛みは、筋肉のこりや血行不良が原因であることが多いため、ストレッチや適度な運動、姿勢改善が有効です。ただし、内臓の関連痛の可能性もゼロではないため、消化器系の不調を伴う場合は注意が必要です。
突然の肩甲骨の痛み
これまで感じたことのないような、突然の強い肩甲骨の痛みは、注意が必要です。単なる筋肉痛ではなく、以下のような緊急性の高い病気のサインである可能性があります。
- 心筋梗塞、大動脈解離: 特に左肩甲骨や肩甲骨の間に、これまで経験したことのない激しい痛みが突然現れた場合。胸の痛みや息苦しさを伴うことが多いです。
- 胆石発作: 右肩甲骨の下あたりに、突然、差し込むような激しい痛みが現れる場合。しばしば食後に起こります。
- ぎっくり背中: 急に重いものを持ったり、体をひねったりした際に、肩甲骨周囲や背中に激痛が走る場合。筋肉や筋膜の損傷の可能性が高いです。
- 神経系の問題: 頸椎の疾患による神経の圧迫が急に強くなった場合など、突然のしびれや脱力を伴う痛み。
突然の強い痛みの場合、自己判断せず、速やかに医療機関を受診することが最も重要です。
肩甲骨の痛みを和らげる治し方・対処法
肩甲骨の痛みの原因が筋肉の緊張や疲労、姿勢の問題など、比較的軽度なものである場合は、ご自身でできるセルフケアによって痛みを和らげることができます。
自分でできるストレッチや体操
肩甲骨周囲の筋肉の緊張を和らげ、血行を促進するためには、ストレッチや体操が効果的です。無理のない範囲で、痛みを感じないように行いましょう。
ストレッチ/体操名 | 方法 | ポイント |
---|---|---|
肩甲骨回し | 椅子に座るか立ち、両肩をゆっくりと前回し(10回程度)、次に後ろ回し(10回程度)を行います。呼吸を止めずに行いましょう。 | 肩甲骨を大きく動かすイメージで。 |
タオルを使った肩甲骨ストレッチ | タオルを両手で持ち、頭上で腕を伸ばします。息を吐きながら、ゆっくりと腕を後ろに倒していきます。肩甲骨を寄せるように意識しましょう(10秒キープ、数回繰り返す)。 | 無理に倒しすぎないこと。肩や肘に痛みがあれば中止。 |
胸を開くストレッチ | 壁の角に立ち、片方の腕を壁に沿って伸ばします(肩より少し上)。息を吐きながら、体を壁と反対側にゆっくりひねります。胸や肩甲骨周りの筋肉が伸びるのを感じましょう(20秒キープ、左右数回)。 | 胸の筋肉(大胸筋)を伸ばすことで、巻き肩の改善にも繋がります。 |
首のストレッチ | ゆっくりと首を左右に倒したり、前後に倒したりします。また、首を回す体操も有効です。 | ゆっくりと丁寧に行い、痛みのない範囲で。 |
猫のポーズ(四つん這い) | 四つん這いになり、息を吸いながら背中を反らせて顔を上げ、息を吐きながら背中を丸めておへそを覗き込むようにします。背骨と肩甲骨を意識して動かしましょう(数回繰り返す)。 | 背骨と肩甲骨の柔軟性向上に効果的。 |
これらのストレッチは、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進する効果が期待できます。特に長時間のデスクワークの合間などにこまめに行うのがおすすめです。
効果的な温め方と休息
肩甲骨周囲の痛みが、筋肉のこりや血行不良が原因である場合、温めることが痛みの緩和に有効です。
- 入浴: 湯船にゆっくり浸かることで、全身の血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。38~40℃くらいのぬるめのお湯に10~15分程度浸かるのがおすすめです。
- ホットタオルやカイロ: 痛む部分にホットタオルや使い捨てカイロを当てるのも効果的です。ただし、低温やけどには注意が必要です。就寝中は使用しないようにしましょう。
- 蒸気アイマスク: 肩甲骨の痛みと首や目の疲れが関連している場合、目の周りを温めることでリラックス効果も得られます。
また、十分な休息をとることも大切です。睡眠不足や疲労は、筋肉の緊張を高め、痛みを悪化させる可能性があります。心身をリラックスさせ、質の高い睡眠をとるように心がけましょう。
日常生活での姿勢改善
痛みの根本的な原因である姿勢の悪さを改善することは、痛みの緩和だけでなく、再発予防にも非常に重要です。
- デスクワーク時の姿勢:
- 椅子に深く座り、背もたれに寄りかかります。
- 足の裏全体が床につくように、椅子の高さを調整します。
- パソコンのモニターは目の高さにくるように調整し、画面に顔を近づけすぎないようにします。
- キーボードやマウスは体の近くに置き、腕や肩に負担がかからないようにします。
- 30分~1時間に一度は席を立ち、軽く体を動かしたりストレッチをしたりしましょう。
- スマートフォンの使用時:
- スマートフォンを持つ手を顔の高さに上げ、うつむき姿勢にならないように意識します。
- 長時間の連続使用は避け、こまめに休憩を挟みましょう。
- 立つ時の姿勢:
- 背筋を伸ばし、顎を引き、お腹を軽く引き締めます。
- 重心は足の裏全体にかかるようにします。
- 寝る時の姿勢:
- 適切な高さの枕を選び、首の自然なカーブを保つようにします。
- うつぶせ寝は首や背中に負担をかけるため、避けるのが無難です。
これらの姿勢改善を意識することで、肩甲骨周囲の筋肉への負担を軽減し、痛みを予防することができます。
専門家への相談が必要なサイン
肩甲骨の痛みが続く場合や、痛みが強い、他に気になる症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが非常に重要です。特に、以下のような症状が見られる場合は、早急に専門家の診察を受ける必要があります。
病院を受診すべき症状
受診目安となる症状 | 考えられる可能性 |
---|---|
痛みが非常に強い、耐えられない | 筋肉や筋膜の重度の損傷、内臓疾患の発作など |
安静にしていても痛みが続く、あるいは悪化する | 筋肉の炎症が強い、骨や関節の問題、内臓疾患など |
痛みに加えて、腕や手にしびれや脱力を伴う | 頸椎の疾患による神経圧迫、神経系の病気など |
発熱や吐き気、冷や汗を伴う | 内臓疾患(心筋梗塞、胆のう炎、肺炎など)、感染症など |
胸の痛みや息苦しさを伴う | 心臓や肺の病気(心筋梗塞、狭心症、肺炎、胸膜炎、大動脈解離など) |
痛みが広がっていく(放散痛) | 内臓疾患の関連痛、神経の圧迫など |
怪我や強い衝撃を受けた後に痛みがある | 骨折、脱臼、筋挫傷など |
痛みが数週間以上続き、セルフケアで改善しない | 慢性的な筋骨格系の問題、他の病気が隠れている可能性 |
原因が分からない急な痛み | 緊急性の高い病気のサインの可能性も |
特定の動作(例:腕を上げる、ひねる)で激しい痛みがある | 筋や腱の損傷、関節の問題など |
皮膚に発疹を伴う痛み(ピリピリ、チクチク) | 帯状疱疹の可能性 |
体重減少や食欲不振など、全身的な症状を伴う | 悪性腫瘍など重篤な病気の可能性も |
これらの症状が見られる場合は、「たかが肩こりだろう」と軽視せず、必ず医療機関を受診してください。特に、胸の痛みや息苦しさを伴う左肩甲骨の痛み、激しい腹痛を伴う右肩甲骨の痛みは、命に関わる病気のサインである可能性があるため、迷わず救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。
考えられる病気と適切な診療科
肩甲骨の痛みの原因によって、受診すべき診療科が異なります。どの科を受診すべきか迷う場合は、まずはかかりつけ医や内科に相談するのも良いでしょう。
考えられる病気 | 適切な診療科 |
---|---|
筋骨格系の問題(筋肉痛、筋膜炎、姿勢不良関連痛) | 整形外科、整骨院、整体院、鍼灸院(ただし、病気の診断は整形外科で行う) |
頸椎の疾患(椎間板ヘルニア、変形性頸椎症、神経圧迫) | 整形外科、脳神経外科、神経内科 |
内臓疾患(心筋梗塞、狭心症、肺炎、胸膜炎) | 循環器内科(心臓)、呼吸器内科(肺)、内科 |
内臓疾患(胆のう炎、胆石症、胃炎、胃潰瘍) | 消化器内科、内科 |
神経系の病気(帯状疱疹など) | 皮膚科(発疹がある場合)、神経内科 |
ストレス、精神的な緊張による痛み | 精神科、心療内科 |
関節の病気(四十肩・五十肩など) | 整形外科 |
まれな疾患(骨腫瘍など) | 整形外科 |
問診や触診、必要に応じてレントゲン検査やMRI検査、血液検査などが行われ、痛みの原因が特定されます。原因に応じた適切な治療を受けることが、痛みの改善と再発予防につながります。
肩甲骨の痛みを予防するには
肩甲骨の痛みを経験した後、あるいは痛みが慢性化しないようにするためには、日頃からの予防が大切です。主な予防法を以下にまとめます。
- 定期的なストレッチや運動: 肩甲骨周りの筋肉を柔軟に保ち、血行を促進するために、日常的にストレッチやウォーキング、軽い筋力トレーニングなどを取り入れましょう。特に、長時間同じ姿勢でいることが多い人は、こまめに体を動かす習慣をつけることが重要です。
- 正しい姿勢を意識する: デスクワーク中だけでなく、立つ時や歩く時も、背筋を伸ばし、肩甲骨を軽く寄せるように意識しましょう。スマートフォンを見る時も、うつむき姿勢にならないように注意が必要です。
- 休憩をこまめにとる: 長時間の連続作業は避け、1時間に一度は休憩を挟み、体の緊張をほぐしましょう。簡単なストレッチや深呼吸をするだけでも効果があります。
- 体の冷えを防ぐ: 体が冷えると筋肉が収縮し、血行が悪くなります。特に冬場やエアコンの効いた室内では、羽織るものを利用したり、首や肩周りを冷やさないように注意しましょう。
- ストレス管理: ストレスは筋肉の緊張を高め、痛みを悪化させる要因となります。趣味やリラクゼーションなど、自分に合った方法でストレスを解消しましょう。
- バランスの取れた食事と十分な睡眠: 健康的な体は、痛みの予防にもつながります。栄養バランスの取れた食事を心がけ、質の高い睡眠を十分にとりましょう。
- 体の片側だけに負担をかけない: 重い荷物を持つ時は、左右の手に交互に持ったり、リュックサックを利用したりするなど、体の片側だけに過度な負担がかからないように工夫しましょう。
これらの予防策を日々の生活に取り入れることで、肩甲骨の痛みの発生リスクを減らし、健康な体を維持することができます。
まとめ
肩甲骨の痛みは、筋肉の緊張や姿勢の悪さなど、比較的よくある原因で起こることが多いですが、中には内臓の病気など、見過ごせない原因が隠れている場合もあります。痛む場所や痛みの性質、他の症状の有無などを注意深く観察することが、原因を特定する手がかりとなります。
多くの場合、セルフケア(ストレッチ、温める、休息、姿勢改善など)で痛みが和らぐことが期待できます。しかし、痛みが強い、安静にしても良くならない、しびれを伴う、胸の痛みや息苦しさなど他の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診し、専門家の診断を受けることが非常に重要ですし、特定の情報を引用元として入れることで、より信頼性の高い情報として参考にしていただけるでしょう。特に、これまで経験したことのない突然の激しい痛みや、胸の痛みを伴う場合は、緊急性が高い可能性があります。
この記事でご紹介した情報が、肩甲骨の痛みに悩む皆様の一助となれば幸いです。ご自身の体の声に耳を傾け、必要に応じて専門家のサポートを受けながら、痛みのない快適な生活を目指しましょう。
免責事項:
この記事で提供する情報は一般的なものであり、医療的なアドバイスに代わるものではありません。個々の症状や状態は異なりますので、肩甲骨の痛みがある場合は、必ず医師や医療専門家の診断と指導を受けてください。この記事の情報に基づいて行った行為の結果について、当サイトは一切責任を負いません。