突き指をしてしまい、指を曲げようとすると痛みが走る…そんな経験はありませんか?
日常生活やスポーツ中に起こりやすい突き指ですが、「たかが突き指」と軽く見ていると、思わぬ事態に繋がることもあります。
突き指は、指先に強い力が加わることで起こる怪我の総称です(日本整形外科学会参照)。
特に、指を曲げる際に強い痛みを感じる場合は、単なる打撲や捻挫ではない可能性も考えられます。
この痛みは一体なぜ起こるのでしょうか?
この記事では、突き指で指を曲げると痛い原因から、家庭でできる正しい応急処置、病院に行くべき目安、そしてやってはいけない対処法まで、専門家の視点を踏まえて詳しく解説します。
適切な知識を持って対処することで、早期回復と後遺症の予防につながります。
突き指で曲げると痛いのはなぜ?考えられる原因
突き指で指を曲げると痛む場合、その原因はいくつか考えられます。単に関節をぶつけただけの打撲もあれば、靭帯や腱といった組織の損傷、さらには骨折に至るケースもあります。それぞれの原因によって、痛みの種類や程度、適切な対処法も異なります。突き指の主な症状としては、指の腫れ、赤みや内出血、痛み、変形、動かしにくさなどが挙げられますが、一言に「突き指」といっても、様々な外傷につながります(突き指(突き指した場合の症状や対処法)より)。
腱や靭帯の損傷・炎症が痛みの原因に
指を曲げる動作には、指の骨を動かすための腱(けん)と、関節を安定させるための靭帯(じんたい)が深く関わっています。突き指によってこれらの組織が無理に引き伸ばされたり、一部が断裂したりすると、損傷や炎症が起こります。
特に、指を曲げる際に働く屈筋腱(くっきんけん)や、関節を横方向やねじれの動きから守る側副靭帯(そくふくじんたい)、指の付け根にある掌側板(しょうそくばん)などが損傷しやすいです。
- 腱の損傷・炎症: 指を曲げようとすると、損傷した腱が引っ張られて痛みが生じます。炎症が強い場合は、安静時にもズキズキとした痛みを感じることがあります。腱鞘炎(けんしょうえん)のような症状が出ることもあります。
- 靭帯の損傷: 関節がグラグラ不安定になる(不安定性)に加え、指を曲げたり特定の方向に力を入れたりした際に、損傷した靭帯に負担がかかり痛みが出ます。特に、指の側面にある側副靭帯の損傷では、指を横に揺らすような動きで痛みが増すことがあります。
- 掌側板の損傷: 指の付け根(MP関節やPIP関節)の過伸展(反りすぎ)などで損傷します。指を伸ばす方向に力が加わった際に痛みが出やすいですが、炎症によって曲げる際にも痛むことがあります。
これらの組織の損傷や炎症は、腫れや熱感を伴うことが多く、指の機能(曲げ伸ばしや握る動作など)にも影響を与えます。
関節の打撲・捻挫による痛み
突き指の最も一般的な原因の一つは、関節への直接的な衝撃による打撲(だぼく)や、関節が正常な可動域を超えて曲げられたり捻られたりすることで起こる捻挫(ねんざ)です。
- 打撲: 指先や関節を強くぶつけることで、骨や周りの軟部組織(筋肉、皮下組織など)がダメージを受け、内出血や腫れが生じます。関節自体に大きな損傷がなくても、周囲組織の炎症や腫れによって指を曲げると痛むことがあります。触ると痛い、色が変わるといった症状が出やすいです。
- 捻挫: 関節を支える靭帯が一時的に伸びたり、部分的に切れたりした状態です。多くの場合、靭帯損傷を伴います。軽度の捻挫であれば靭帯の伸びに留まりますが、程度が強くなると靭帯の一部断裂、完全に切れてしまう完全断裂に至ることもあります。捻挫の場合も、損傷した靭帯に負担がかかるような指の動き(特に無理に曲げたり伸ばしたり、横に動かしたりする)で痛みが強くなります。腫れや内出血が見られることもあります。
打撲や軽度の捻挫であれば、比較的早く回復することが多いですが、適切な処置を怠ると痛みが長引いたり、関節の不安定性が残ったりする可能性があります。
要注意!剥離骨折や不全骨折の可能性も
突き指の痛みの中でも、特に注意が必要なのは骨折です。突き指によって骨が折れるというと意外に思うかもしれませんが、指の骨は比較的細く、強い衝撃が加わると骨折してしまうことがあります。特に、指を曲げると激痛が走る、特定の箇所を押すと非常に痛い、指が明らかに腫れている、または変形しているといった場合は、骨折の可能性が高いと考えられます。
骨折にはいくつかの種類がありますが、突き指で起こりやすいのは以下のタイプです。
- 剥離骨折(はくりこっせつ): 靭帯や腱が付着している骨の一部が、強い力で引っ張られて剥がれてしまう骨折です。指の関節周辺で起こりやすく、靭帯損傷と同時に発生することも多いです。指を曲げたり伸ばしたり、または靭帯や腱に力がかかる特定の動きで激しい痛みが生じます。
- 不全骨折(ひび): 骨に完全に断裂はせず、ひびが入った状態です。完全骨折ほど強い変形は見られないことが多いですが、押すと痛い、特定の動作で痛みが走るといった症状が出ます。
骨折のサインは、単なる打撲や捻挫と区別がつきにくい場合もありますが、以下のような症状が見られる場合は、自己判断せずに必ず医療機関(整形外科など)を受診してください。
- 激しい痛み: 突き指直後から非常に強い痛みがあり、時間経過で軽快しない。
- 強い腫れ: 指全体や特定の関節が著しく腫れている。
- 変形: 指の向きが不自然、明らかに曲がっているなど、見た目に変化がある。
- 動かせない: 痛みが強くて指を全く動かせない、または動かそうとすると激痛が走る。
- 特定の場所を押すと痛い: 骨の上などをピンポイントで押すと非常に強い痛みがある。
- しびれや感覚異常: 指先がしびれる、感覚がないなどの症状がある。
簡単なセルフチェック方法(注意:あくまで目安であり、自己診断は危険です)
- 見た目の確認: 突き指した指と反対側の同じ指を比べて、形や向きに明らかな違いがないか確認する。腫れや内出血の程度も比較する。
- 優しく触れてみる: 痛い場所を優しく触ってみて、特に骨の上に強い圧痛(押すと痛い)があるか確認する。
- 動かせるか確認: 痛みのない範囲で、ゆっくりと指を曲げたり伸ばしたり、横に動かしたりできるか確認する。強い痛みが走る場合は無理しない。
これらのチェックで異常が見られたり、少しでも不安を感じたりする場合は、必ず医療機関を受診してください。特に、子どもは骨がまだ柔らかく、骨端線損傷(成長軟骨の損傷)を起こしやすいですが、見た目では分かりにくいこともあります。専門家による正確な診断が不可欠です。
突き指の痛みを和らげる正しい応急処置(RICE処置)
突き指をしてしまったら、まずは慌てずに正しい応急処置を行いましょう。適切な応急処置は、痛みを和らげ、腫れや内出血を最小限に抑え、回復を早めるために非常に重要です。スポーツ現場や家庭で広く行われるRICE処置(ライスしょち)が基本となります。
RICE処置とは?応急処置の基本
RICE処置は、スポーツ外傷などの急性期に行われる応急処置の基本原則をまとめたものです。以下の4つの処置の頭文字をとって名付けられました。
- Rest(安静)
- Ice(冷却)
- Compression(圧迫)
- Elevation(挙上)
これらの処置を速やかに行うことで、損傷部位の出血や腫れ、炎症を抑え、痛みを軽減することができます。
【R】Rest(安静)の重要性
損傷した部位を動かさずに安静に保つことは、それ以上の損傷を防ぎ、回復を促すために最も重要です。突き指をした指は、すぐに使用を中止し、なるべく動かさないようにしましょう。無理に動かすと、損傷が悪化したり、痛みが増したりする可能性があります。
- 具体的な安静方法:
- 突き指をした指を使わない。
- 可能であれば、副子(そえぎ)や厚紙、割り箸などを使って軽く固定する(ただし、きつく締め付けすぎないように注意)。
- テーピングで隣の指と一緒に固定する「バディテーピング」も有効な安静方法の一つです(後述)。
安静期間は損傷の程度によって異なりますが、少なくとも痛みが落ち着くまでは無理な使用は避けるべきです。
【I】Ice(冷却)で炎症を抑える
患部を冷やす(冷却)ことで、血管を収縮させて内出血や腫れを抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。特に受傷直後の急性期(24~72時間以内)に効果的です。
- 具体的な冷却方法:
- 氷嚢(ひょうのう)やビニール袋に氷を入れて、患部に当てます。
- 保冷剤を使用する場合は、凍傷を防ぐために必ずタオルなどで包んでから使用してください。
- 冷却時間は1回につき15~20分程度を目安とし、感覚がなくなってきたら一旦中止します。
- 間隔を空けて(1~2時間おきなど)、1日に数回繰り返すと効果的です。
- 皮膚が赤くなったり、ジンジンしたり、感覚がなくなったりしたらすぐに中止してください。
冷やしすぎは組織を傷める可能性があるため、注意が必要です。
【C】Compression(圧迫)で腫れを軽減
適度な圧迫を患部に加えることで、内出血や腫れの広がりを抑えることができます。
- 具体的な圧迫方法:
- 弾性包帯やテーピングを使って、患部を軽く圧迫するように巻きます。
- 巻き始めは指先から心臓に向かって、少しずつ重ねながら巻き上げます。
- 重要: きつく巻きすぎると血行が悪くなり、しびれや痛みが強くなることがあります。指先の色が悪くなる、冷たくなる、しびれるといった症状が出たら、すぐに緩めてください。夜間は圧迫を弱めるか、外す方が安全な場合もあります。
- 圧迫は、冷却や挙上と併せて行うとさらに効果的です。
【E】Elevation(挙上)で内出血を防ぐ
損傷した部位を心臓より高い位置に保つ(挙上)ことで、重力を利用して血液やリンパ液の流れを促進し、腫れや内出血を防ぐ効果があります。
- 具体的な挙上方法:
- 座っているときや寝ているときは、クッションや枕を使って突き指をした手を心臓より高く持ち上げます。
- 三角巾などを使って腕を吊るすのも効果的です。
- 寝ている間も、可能な範囲で手が高い位置に来るように工夫します。
RICE処置は、あくまで医療機関を受診するまでの応急処置です。特に痛みが強い場合や骨折が疑われる場合は、RICE処置を行いながら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
処置項目 | 内容 | 目的 | 注意点 |
---|---|---|---|
Rest | 患部を動かさず安静にする | さらなる損傷防止、回復促進 | 無理な使用は避ける |
Ice | 氷などで患部を冷やす(1回15-20分、1-2時間おき) | 内出血・腫れ抑制、炎症緩和、鎮痛 | 凍傷注意(タオルで包む)、感覚がなくなったら中止 |
Compression | 弾性包帯やテーピングで患部を圧迫する | 内出血・腫れ抑制 | きつく巻きすぎない(血行障害注意)、しびれ等が出たら緩める |
Elevation | 患部を心臓より高く持ち上げる | 血液・リンパ液の滞留防止、腫れ・内出血抑制 | クッションなどを活用する |
突き指の症状別に見る病院に行く目安
突き指の痛みが「曲げると痛い」程度で、見た目に大きな変化がない場合でも、自己判断は危険です。特に以下のような症状が見られる場合は、必ず医療機関(整形外科が望ましい)を受診しましょう。
こんな症状が見られたらすぐに病院へ(骨折のチェック方法)
前述した骨折のサインに加えて、以下のような症状が見られる場合も、重症である可能性が高いです。
- 指の変形: 指の軸が曲がっている、関節部分がずれているように見えるなど、明らかに見た目が普段と違う。
- 強い腫れと内出血: 突き指した指全体や特定の関節がパンパンに腫れていて、紫色や黒っぽい内出血が見られる。
- 激しい痛みと可動域制限: 痛みが非常に強く、指を少しでも動かそうとすると激痛が走り、全く曲げ伸ばしができない。
- 特定の箇所(骨の上など)を押すと強い痛み: 骨折している可能性がある部位をピンポイントで押すと、飛び上がるような強い痛みがある。
- 指先のしびれや感覚のなさ: 神経が圧迫されている可能性があり、骨折や脱臼を伴っている場合がある。
- 関節の不安定性: 指の関節がグラグラする、不自然に曲がる、またはまっすぐ伸ばせない。
- 「ゴリッ」「ポキッ」といった音を聞いた・感じた: 骨折や靭帯の完全断裂の可能性がある。
簡単なセルフチェック方法(注意:あくまで目安であり、自己診断は危険です)
- 見た目の確認: 突き指した指と反対側の同じ指を比べて、形や向きに明らかな違いがないか確認する。腫れや内出血の程度も比較する。
- 優しく触れてみる: 痛い場所を優しく触ってみて、特に骨の上に強い圧痛(押すと痛い)があるか確認する。
- 動かせるか確認: 痛みのない範囲で、ゆっくりと指を曲げたり伸ばしたり、横に動かしたりできるか確認する。強い痛みが走る場合は無理しない。
これらのチェックで異常が見られたり、少しでも不安を感じたりする場合は、必ず医療機関を受診してください。特に、子どもは骨がまだ柔らかく、骨端線損傷(成長軟骨の損傷)を起こしやすいですが、見た目では分かりにくいこともあります。専門家による正確な診断が不可欠です。
痛みが取れない、症状が治らない場合
受傷直後に大きな異常が見られなかった場合でも、以下のような場合は医療機関の受診を検討しましょう。
- RICE処置を数日行っても痛みが改善しない: 応急処置で痛みが軽減しない、または悪化する場合は、軽度ではない損傷の可能性があります。
- 腫れや痛みが1週間以上続く: 通常、軽度の突き指であれば数日である程度の症状は落ち着いてきます。1週間以上症状が続く場合は、靭帯損傷や他の原因が考えられます。
- 指を曲げると痛い症状が続く: 特定の動作で痛みが続くのは、その動作に関わる組織(腱、靭帯、骨など)にまだ損傷が残っているサインです。
- 指の動きが悪くなった: 完全に曲げられない、伸ばせない、または以前より動きが制限されている。
- 関節が不安定に感じる: 指に力が入りにくい、指の関節がぐらつくように感じる。
痛みが長引く場合や関節がうまく曲がらない、腫れが引かないなどの症状が続くなら、整形外科への受診が重要です。早めの受診をおすすめします(突き指の症状・原因・治療とは?指をぶつけたときに知っておきたい基礎知識より)。
これらの症状は、適切な治療を受けずに放置すると、痛みが慢性化したり、関節の機能障害や変形などの後遺症につながったりする可能性があります。早めに専門家の診断を受け、原因を特定し、適切な治療を開始することが大切です。
突き指で「やってはいけない」間違った対処法
突き指をした際に、良かれと思って行われる行動の中には、かえって症状を悪化させてしまうものがあります。正しい知識を持ち、避けるべき行動を知っておきましょう。
指を引っ張る行為はNG
突き指をしたら「引っ張れば治る」という迷信を聞いたことがあるかもしれません。しかし、これは絶対に行ってはいけない間違った対処法です。
突き指は、指の骨がずれる脱臼や、骨折、靭帯・腱の損傷など、様々な原因で起こります。指を無理に引っ張るという行為は、これらの損傷部位にさらに負担をかけ、症状を悪化させる可能性が非常に高いです。
- 指を引っ張ることで起こりうるリスク:
- 骨折・靭帯損傷の悪化: すでに骨折や靭帯の一部断裂がある場合、引っ張ることでさらに大きく損傷させたり、完全に断裂させたりする可能性があります。
- 脱臼の悪化: もし脱臼していた場合、無理に引っ張ると関節の周りの組織をさらに傷つけ、正しい位置に戻すのを困難にしたり、神経や血管を傷つけたりする危険があります。
- 内出血・腫れの増大: 損傷部位への刺激が増え、内出血や腫れがひどくなる可能性があります。
- 痛みの増強: 当然ながら、損傷部位を無理に引っ張ることで強い痛みが生じます。
突き指の応急処置は、RICE処置を基本とし、患部を安静に保つことが重要です。決して指を引っ張ってはいけません。
放置するリスクと後遺症について
「たかが突き指だから」と軽く考え、適切な診断や治療を受けずに放置することも危険です。軽度の打撲や捻挫であれば自然に回復することもありますが、骨折や靭帯の大きな損傷がある場合は、放置すると様々な後遺症が残るリスクがあります。
- 放置することで起こりうる後遺症:
- 痛みの慢性化: 損傷した組織が適切に修復されず、痛みが長く続いたり、慢性的な痛みに移行したりすることがあります。特に指を曲げたり、力を入れたりする際に痛みが残りやすくなります。
- 関節の不安定性: 靭帯の損傷が適切に治らないと、指の関節がグラグラと不安定になり、力を入れたり動かしたりする際に不安定感や痛みを伴うことがあります。これは特にスポーツなどで指に負荷がかかる場合に問題となります。
- 可動域制限: 関節の動きが悪くなり、指を完全に曲げたり伸ばしたりできなくなることがあります。損傷した組織の瘢痕化(傷跡になって硬くなること)や、骨の変形などが原因となります。
- 変形: 骨折がずれたままくっついたり(不正癒合)、靭帯の損傷によって関節がずれたりすることで、指の形が変形してしまうことがあります。
- 腱の機能障害: 腱の損傷が適切に治らないと、指をスムーズに曲げ伸ばしできなくなったり、力が入りにくくなったりします。
これらの後遺症は、日常生活や仕事、趣味(特に楽器演奏やスポーツなど指を使う活動)に大きな支障をきたす可能性があります。突き指をした場合は、痛みの程度や症状をよく観察し、不安な場合は必ず医療機関を受診して、正確な診断と適切な治療を受けることが重要です。
突き指の治癒期間とテーピングについて
突き指の治癒にかかる期間は、損傷の程度によって大きく異なります。また、治癒過程やスポーツ復帰において、テーピングが補助的な役割を果たすことがあります。
症状別の一般的な治癒期間
突き指の治癒期間は、軽度なものから重度なものまで幅があります。以下は一般的な目安であり、個人差や適切な処置を受けたかによっても変動します。
損傷の程度 | 含まれる病態例 | 一般的な治癒期間の目安 | 症状の経過(例) |
---|---|---|---|
軽度 | 打撲、軽度の捻挫(靭帯の伸び) | 数日~1週間程度 | 受傷直後の痛みが主体。腫れや内出血は軽度。安静にしていれば数日で痛みが和らぐ。 |
中度 | 中程度の捻挫(靭帯の部分断裂)、腱の部分損傷 | 2週間~1ヶ月程度 | 痛みや腫れが数日間続く。指の曲げ伸ばしに制限や痛みが伴う。関節にわずかな不安定感がある場合がある。 |
重度 | 骨折(剥離骨折含む)、靭帯の完全断裂、腱の完全断裂 | 1ヶ月~数ヶ月 | 激しい痛み、強い腫れ、変形、全く動かせないなどの症状。固定や手術が必要となることが多い。リハビリ期間を含むとさらに長くなることも。 |
重要なポイント:
- 上記の期間はあくまで目安です。
- 適切な応急処置を速やかに行ったかどうかが、治癒期間に影響することがあります。
- 骨折や靭帯の完全断裂などの重傷の場合は、固定期間が必要となり、その後リハビリテーションを行うことも多いため、治癒期間は長くなります。
- 完全に痛みがなくなり、元の指と同じように動かせるようになるまでには、さらに時間がかかることもあります。
- 完全に治癒する前に無理に動かしたり、スポーツに復帰したりすると、再発や後遺症のリスクが高まります。
医師の指示に従い、焦らずしっかりと治癒させることが重要です。
テーピングの効果と正しい巻き方(方法)
テーピングは、突き指の治癒過程やスポーツ復帰時に、指を保護したり、動きを制限したりする目的で使用されることがあります。
- テーピングの効果:
- 固定: 損傷した関節や靭帯、腱の動きを制限し、安静を保つ補助になります。特にバディテーピングは、損傷した指を隣の健康な指と一緒に固定することで、簡単に関節の動きを制限できます。
- 保護: 再び指に衝撃が加わるのを防ぎます。
- 心理的な安心感: テーピングをすることで、指が守られているという安心感が得られます。
- 再発予防: スポーツを行う際に、再度の突き指を防ぐ目的で使用されることがあります。
テーピングの正しい巻き方(バディテーピングの例):
バディテーピングは、特別な技術が必要なく、家庭でも比較的簡単に行える方法です。損傷した指を、その隣の健康な指と一緒にテープで巻いて固定します。
- 準備: キネシオロジーテープや非伸縮性の固定用テーピングなどを用意します。テープの幅は、指の太さに合わせて適切なものを選びます(1cm~2.5cm程度)。
- 指を準備: 損傷した指と隣の健康な指を、まっすぐ並べます。指の間に挟むことで、汗によるかぶれを防ぐためのガーゼやパッドを用意するとより快適です。
- テープを貼る位置: 関節の上下2ヶ所程度をテープで固定します。曲げ伸ばしの邪魔にならないように、関節の真上や真下は避けて、少しずらした位置に巻くのがコツです。
- テープの巻き方: テープを指の腹側から巻き始め、指の背側で止めます。指を軽く圧迫するように巻きますが、きつく巻きすぎないように十分注意してください。指先の色が悪くなったり、しびれたりしないか確認しながら行います。
- 確認: 巻き終わったら、指先の色や温度、しびれがないか確認します。指を軽く曲げ伸ばししてみて、過度に動きが制限されすぎていないか、痛みが増さないかなども確認します。
テーピングの注意点:
- テーピングはあくまで応急処置や補助であり、治療ではありません。骨折や靭帯の完全断裂が疑われる場合は、テーピングで済ませずに必ず医療機関を受診してください。
- 長時間同じテープを巻き続けると、血行不良やかぶれの原因になります。定期的に巻き直し、夜間は外すことも検討しましょう。
- 皮膚がかぶれやすい人は、アンダーラップなどを利用したり、テープの素材を選んだりしましょう。
- 正しい巻き方が分からない場合は、医療機関で指導を受けたり、専門家(理学療法士、スポーツトレーナーなど)に相談したりすることをおすすめします。
症状の程度や目的によって、適したテーピング方法や素材は異なります。自己判断せず、専門家のアドバイスを参考にすることが大切です。
まとめ:突き指の痛みに適切に対処しよう
突き指で指を曲げると痛いという症状は、単なる打撲や軽度の捻挫から、靭帯損傷、腱損傷、さらには骨折まで、様々な原因が考えられます。特に、激しい痛み、強い腫れ、変形、全く動かせないといった症状が見られる場合は、骨折の可能性が高く、放置すると重い後遺症につながるリスクがあります。中にはすぐに手術が必要なこともあります(日本整形外科学会参照)。
突き指をしてしまったら、まずは落ち着いてRICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)を行いましょう。これらの応急処置は、痛みを和らげ、腫れや内出血を抑え、その後の回復を助けるために非常に効果的です。ただし、「指を引っ張る」という行為は絶対に行ってはいけません。かえって損傷を悪化させる危険があります。
応急処置を行っても痛みが改善しない場合、または上記のような重症を疑わせる症状がある場合は、自己判断せず速やかに医療機関(整形外科)を受診してください。専門家による正確な診断を受け、適切な治療を開始することが、早期回復と後遺症予防のために最も重要です。
突き指は身近な怪我ですが、軽く見ずに適切な対処を行うことで、指の機能障害や痛みの慢性化といった後遺症を防ぎ、元の生活やスポーツにスムーズに戻ることができます。指の痛みや症状に不安がある場合は、迷わず専門家にご相談ください。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療を保証するものではありません。特定の症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。