太ももの内側に痛みを感じると、歩くのはもちろん、座っているだけでもつらく感じることがあります。
この痛みは、筋肉の使いすぎによる一時的なものから、医療機関での診断が必要な病気まで、さまざまな原因で起こり得ます。
この記事では、太ももの内側が痛む場合に考えられる主な原因や、痛みの特徴から原因を探るヒント、自分でできる対処法、そして病院へ行くべき目安について詳しく解説します。
この記事を通じて、あなたの痛みの原因を理解し、適切な対応をとるための一助となれば幸いです。
太ももの内側が痛くなる主な原因
太ももの内側の痛みは、主にその部位にある筋肉や神経、関節、またはその他の臓器の問題が原因で起こります。
原因を特定することは、適切な対処や治療を行う上で非常に重要です。
筋肉の損傷や炎症(大腿内転筋、恥骨筋など)
太ももの内側には、主に大腿内転筋群と呼ばれる複数の筋肉があります。
これには、長内転筋、短内転筋、大内転筋、薄筋、恥骨筋などが含まれます。
これらの筋肉は、脚を内側に閉じたり、股関節を安定させたりする重要な役割を担っています。
内転筋群は日常生活だけでなく、スポーツや特定の動作で酷使されやすく、痛みが生じやすい部位です。
スポーツによる筋肉の痛み(ランニング、サッカーなど)
スポーツ活動は、太ももの内側の痛みの一般的な原因の一つです。
特に、ランニングやサッカー、ラグビー、武道など、急な方向転換やストップ、キック動作、内股での踏み込みなど、内転筋群に強い負荷がかかるスポーツで痛みが発生しやすい傾向があります。
- ランニング: 長距離を走る際に、内転筋群に繰り返し負担がかかることで疲労が蓄積し、筋肉痛や炎症を起こすことがあります。
特に不整地や傾斜のある道を走る際に、股関節や内転筋群の使い方が偏ると痛みに繋がりやすいです。
不適切なランニングフォームやシューズも原因となり得ます。 - サッカー・ラグビー: ボールを蹴る動作(特にインサイドキック)や、相手との接触、急激な方向転換、加速・減速の際に、内転筋群が強く収縮したり、急に伸ばされたりすることで損傷や炎症が起こりやすいです。
特に、股関節周囲の柔軟性や筋力が不足しているとリスクが高まります。 - その他: 野球での投球動作(下半身の使い方が関連)、ダンス、体操、馬術など、股関節を大きく開閉したり、内転筋に力が入る動作が多いスポーツも痛みの原因となり得ます。
スポーツによる筋肉の痛みは、通常、運動中や運動後に発生し、安静にすると軽減することが多いです。
しかし、症状が進行したり、適切な処置を行わないと、慢性的な痛みやより重篤な損傷に繋がる可能性があります。
肉離れ、筋挫傷
肉離れは、筋肉の繊維が部分的に、または完全に断裂する状態です。
太ももの内転筋群は、急なダッシュ、ストップ、方向転換、ジャンプの着地など、筋肉が急激に収縮または伸ばされる際に起こりやすい肉離れの部位です。
- 症状: 肉離れを起こすと、突然の激しい痛み(「ブチッ」という音を感じることも)、患部の腫れ、内出血、力が入らない、歩行困難などの症状が現れます。
痛む場所を押すと強い圧痛があります。
重症度によって回復期間は大きく異なり、数週間から数ヶ月かかることもあります。
筋挫傷は、筋肉に直接的な強い衝撃(打撲)が加わることで、筋肉繊維や血管が損傷する状態です。
スポーツ中の衝突や転倒などで太ももの内側を強くぶつけた場合に発生します。
- 症状: 打撲した部位に痛み、腫れ、内出血が現れます。
触ると痛く、患部に力が入りにくくなることもあります。
肉離れと同様に、適切な処置が必要です。
筋膜性疼痛症候群
筋膜性疼痛症候群は、筋肉やそれを覆う筋膜にできるトリガーポイント(特定の硬結や圧痛点)が原因となって痛みを引き起こす状態です。
トリガーポイントが活性化すると、その部位だけでなく、離れた場所にも痛みやしびれを放散させることがあります(関連痛)。
太ももの内側の場合、内転筋群やその周辺の筋肉の筋膜にトリガーポイントができることで、太ももの内側に痛みが現れることがあります。
長時間の同じ姿勢(デスクワークなど)、繰り返しの動作、不良姿勢、精神的ストレス、冷えなどがトリガーポイント形成の原因となり得ます。
- 症状: 特定の部位を押すと痛みが強くなったり、太ももの内側や膝の内側などに重だるい痛み、うずくような痛み、こわばり、しびれなどを感じることがあります。
安静にしていても痛む場合や、朝起きた時に痛みが強い場合があります。
神経の圧迫や障害(閉鎖神経痛など)
太ももの内側への痛みは、神経の問題によって引き起こされることもあります。
特に閉鎖神経に関連する痛みが特徴的です。
長時間同じ姿勢での圧迫
閉鎖神経は、腰椎から出て骨盤内を走行し、太ももの内側を通って内転筋群などに分布しています。
この神経が、長時間同じ姿勢で座り続けたり、足を組み続けたりすることで圧迫されると、太ももの内側に痛みやしびれを引き起こすことがあります。
特に、仙骨や骨盤の歪みがある場合や、神経の走行経路にある筋肉が緊張している場合に、神経圧迫が起こりやすくなります。
坐骨神経痛の関連痛
坐骨神経痛は、坐骨神経が圧迫や刺激を受けることで起こる、腰からお尻、太ももの裏側や外側、下腿、足にかけての痛みやしびれを指すのが一般的です。
しかし、まれに坐骨神経の特定の枝や、神経の圧迫部位によっては、痛みが太ももの内側に放散する(関連痛)ことがあります。
坐骨神経痛の原因としては、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、梨状筋症候群などがあります。
通常は腰やお尻の痛みを伴いますが、太もも内側の痛みが主症状となることもあります。
ピリピリとした神経痛
神経の圧迫や炎症による痛みは、筋肉の痛みとは異なり、電気が走るような痛み、チクチク、ジンジン、焼けるような痛み、ピリピリとしたしびれといった特徴的な感覚を伴うことが多いです。
閉鎖神経痛の場合、太もも内側の皮膚表面や、その下の筋肉の深部でこのような神経痛特有の痛みやしびれを感じることがあります。
痛みの範囲が比較的限定的である場合や、特定の動作で痛みが誘発されることもあります。
関節や骨の問題(股関節疾患など)
太ももの内側の痛みは、股関節そのものやその周囲の骨に原因がある場合にも現れることがあります。
股関節の痛みは、しばしば太ももの内側や膝の内側に放散することが知られています(関連痛)。
変形性股関節症
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り、関節の形が徐々に変形していく病気です。
加齢に伴う一次性のものと、先天性股関節脱臼の後遺症や発達性股蓋形成不全、外傷、特定の病気(大腿骨頭壊死など)が原因となる二次性のものがあります。
この病気の典型的な症状は、股関節の痛みですが、痛みが太ももの内側や膝の内側に強く感じられることも少なくありません。
- 症状: 初期には、立ち上がりや歩き始めなど、動作を開始する時にだけ痛む動作時痛が特徴です。
進行すると、歩行時や階段昇降時の痛みが強くなり、さらに進行すると安静時痛や夜間痛が現れることもあります。
股関節の動きが悪くなる(可動域制限)や、歩行時に跛行(足を引きずる)が見られるようになります。
股関節唇損傷
股関節唇は、股関節の受け皿(臼蓋)の縁を取り巻く線維軟骨でできた組織で、股関節の安定性を高める役割をしています。
股関節唇が、スポーツなどによる外傷や、股関節の繰り返し動作(捻りやインピンジメント:骨同士がぶつかること)によって損傷することがあります。
- 症状: 股関節の痛みに加えて、太ももの内側への痛みを訴えることがあります。
特徴的な症状として、股関節を動かした際に引っかかり感やクリック音(ポキポキ、ゴリゴリといった音)を感じることがあります。
特定の姿勢や動作で痛みが誘発されることが多いです。
その他の病気
太ももの内側の痛みは、筋肉や神経、関節の問題以外にも、いくつかの病気が原因で起こることがあります。
これには、緊急性の高いものや、専門医の診察が必要な病気が含まれるため注意が必要です。
鼠径ヘルニア(脱腸)
鼠径ヘルニアは、「脱腸」とも呼ばれ、腹膜や腸の一部などが、鼠径部(太ももの付け根に近い部分)の筋膜の弱い部分から皮膚の下に飛び出す状態です。
- 症状: 鼠径部に柔らかい膨らみ(腫れ)が現れるのが典型的な症状です。
この膨らみは、寝ている時や指で押すと引っ込むことが多いです。
咳やくしゃみをしたり、立ったりお腹に力を入れたりした時に膨らみが大きくなり、痛みを伴うことがあります。
この痛みが、太ももの内側に放散して感じられることがあります。
嵌頓(かんとん)といって、飛び出した腸が締め付けられて戻らなくなる状態になると、激しい痛み、吐き気、嘔吐などを伴い、腸閉塞や腸壊死のリスクがある緊急性の高い状態です。
血管の病気
太ももの内側の痛みは、血管の病気が原因で起こることもあります。
- 閉塞性動脈硬化症: 足の動脈が動脈硬化によって狭窄したり閉塞したりし、血流が悪くなる病気です。
歩行時に太ももやふくらはぎなどの筋肉に痛みやしびれが生じ、休むと改善する間欠性跛行が特徴ですが、痛みが太ももの内側に現れることもあります。
進行すると安静時にも痛むようになり、皮膚の色調変化や潰瘍、壊死に至ることもあります。
喫煙者に多い病気です。 - 深部静脈血栓症: 太ももなど足の深部にある静脈に血栓(血の塊)ができる病気です。
長時間同じ姿勢を続けた後(旅行、デスクワークなど)、脱水、手術、悪性腫瘍などがリスクとなります。 - 症状: 血栓ができた部位やそれより末梢に、痛み、腫れ、発赤(赤み)、熱感、硬結(触ると硬い部分)などが現れます。
太ももの内側に血栓ができた場合、強い痛みや腫れを伴います。
血栓が剥がれて肺に飛ぶと肺塞栓症という重篤な状態を引き起こす危険性があるため、早期の診断と治療が必要です。
婦人科系の病気(女性の場合)
女性の場合、骨盤内にある子宮や卵巣などの臓器の病気が原因で、太ももの内側に関連痛として痛みを感じることがあります。
- 原因: 子宮筋腫(子宮にできる良性の腫瘍)や卵巣嚢腫(卵巣にできる袋状の腫れ物)が大きくなって周囲の神経や組織を圧迫したり、骨盤内炎症性疾患(子宮や卵巣、卵管などに細菌感染が起こり炎症を起こす)などが太もも内側への痛みの原因となり得ます。
- 症状: 通常は下腹部痛、腰痛、生理痛の悪化、不正出血などを伴うことが多いですが、これらの症状がなく太もも内側の痛みだけが現れることもあります。
痛みが月経周期と関連している場合もあります。
これらの病気が疑われる場合は、婦人科での診察が必要です。
痛みの特徴から原因を探る
太ももの内側の痛みは、その現れ方や痛みの性質によって、ある程度原因を推測することができます。
以下に、痛みの特徴別の原因の可能性をまとめました。
太ももの内側を「押すと痛い」場合
太ももの内側の特定の場所を指や物で押したときに痛みが強くなる(圧痛)場合、その部位の組織に問題がある可能性が高いです。
- 筋肉、腱、筋膜の損傷や炎症: 最も一般的な原因です。
使いすぎによる筋肉痛、打撲による筋挫傷、肉離れを起こした部位、筋膜性疼痛症候群のトリガーポイント、腱の炎症などが考えられます。
押したときに痛みが周囲に響くように感じられることもあります。 - リンパ節の腫れ: 鼠径部(太ももの付け根)にはリンパ節が集まっています。
足や陰部などに感染や炎症がある場合、リンパ節が腫れて硬くなり、押すと痛むことがあります。 - 骨膜炎: 骨の表面を覆う骨膜の炎症。
太ももの内側にある大腿骨や恥骨の骨膜が炎症を起こした場合、その部位を押すと強い痛みを感じることがあります。 - 鼠径ヘルニア: 鼠径部の膨らみがある場合、膨らみ自体が痛むことや、膨らみを戻そうと押すと痛むことがあります。
嵌頓している場合は激しい圧痛があります。
太ももの内側を「伸ばすと痛い」場合
太ももの内側の筋肉(内転筋群)をストレッチする方向に動かしたときに痛みが強くなる場合、筋肉や腱の問題が考えられます。
- 筋肉痛: 運動後などに起こる筋肉痛は、ストレッチで痛みが増す典型的な例です。
- 肉離れ、筋挫傷: 損傷した筋肉を伸ばすと、断裂した繊維に牽引力がかかり痛みが強くなります。
- 筋炎、腱炎: 筋肉や腱に炎症がある場合、伸ばしたり動かしたりすることで痛みが生じます。
- 筋膜性疼痛症候群: 硬くなった筋膜が伸ばされることで痛みを感じることがあります。
「急に」太ももの内側が痛くなった場合
前触れなく、突然強い痛みが太ももの内側に現れた場合、比較的急性で明確な原因があることが多いです。
- 肉離れ: スポーツ中や急な動作中に「ブチッ」という感覚と共に激痛が走る場合、肉離れの可能性が非常に高いです。
- 筋挫傷: 強くぶつけた直後から痛みが始まる場合。
- ぎっくり腰ならぬ「ぎっくり内転筋」: 急に無理な姿勢をとったり、重いものを持ち上げたりした際に、内転筋群が急激に収縮しすぎて筋繊維を痛めてしまうことがあります。
いわば内転筋の捻挫のような状態です。 - 血栓性静脈炎: 特に深部静脈血栓症の場合、突然の痛み、腫れ、熱感などが現れることがあります。
これは緊急性の高い状態です。 - 鼠径ヘルニアの嵌頓: 鼠径部の膨らみが急に硬くなり、強い痛みを伴って押しても戻らなくなった場合。
- 尿管結石: 尿管結石の痛みが、太ももの内側や股関節に放散して感じられることがあります。
通常は脇腹から下腹部にかけての激痛を伴います。
太ももの内側が「ピリピリ」痛む場合
痛みが焼けるような、チクチク、ジンジン、電気が走るような、あるいはしびれを伴うといった特徴がある場合、神経が原因である可能性が高いです。
- 閉鎖神経痛: 太もも内側の皮膚表面やその深部に、ピリピリ、ジンジンといった神経痛特有の痛みが現れる典型的なケースです。
- 坐骨神経痛の関連痛: 坐骨神経の圧迫や刺激が原因で、太もも内側に放散するピリピリとした痛みやしびれ。
- その他の神経障害: まれに、糖尿病性神経障害やアルコール性神経障害などが原因で、末梢神経に障害が起こり、太もも内側にしびれや痛みを引き起こすこともあります。
太ももの「付け根」に近い部分が痛む場合
太ももの内側の痛みの中でも、特に股関節に近い鼠径部やその直下に痛みが集中している場合、様々な原因が考えられます。
- 股関節疾患: 変形性股関節症、股関節唇損傷、FAI(大腿骨臼蓋インピンジメント)など、股関節自体に問題がある場合、痛みが太もも内側に放散することが非常に多いです。
歩行時や特定の股関節の動きで痛みが誘発されるのが特徴です。 - 鼠径ヘルニア: 鼠径部に膨らみを伴う痛みの場合、鼠径ヘルニアの可能性が高いです。
- 筋肉・腱の問題: 股関節周囲の筋肉(腸腰筋、内転筋群の起始部など)や腱の炎症、損傷。
オーバーユースや股関節周囲の筋力不足、柔軟性低下が原因となります。 - リンパ節炎: 鼠径部のリンパ節が腫れて痛む場合。
- 恥骨結合炎: 骨盤の中央前にある恥骨結合の炎症。
ランニングやサッカーなど、骨盤に繰り返しストレスがかかるスポーツ選手に起こりやすいです。
恥骨結合部やその周辺(太もも内側付け根)に痛みを感じます。 - 婦人科系疾患(女性): 子宮や卵巣の病気による関連痛が、太もも内側付け根に感じられることがあります。
これらの痛みの特徴はあくまで原因を推測するためのヒントであり、自己判断は危険です。
複数の原因が組み合わさっている場合や、予想外の病気が隠れている可能性もあります。
痛みが続く場合や強い場合は、必ず医療機関を受診しましょう。
太ももの内側の痛みへの対処法とセルフケア
太ももの内側の痛みの原因によって最適な対処法は異なりますが、まずは自分でできる応急処置や、症状が落ち着いてきた段階でのセルフケア、そして痛みを予防するための日常生活での工夫について解説します。
安静やアイシングなどの応急処置
急な痛みや、痛みが強い場合は、まず安静にすることが最も重要です。
無理に動かすと症状が悪化する可能性があります。
- 安静 (Rest): 痛む動作や運動は中止し、できるだけ安静にしましょう。
特に急性期(受傷直後~数日間)は、患部に負担をかけないようにします。 - 冷却 (Ice): 肉離れや打撲など、急な痛みや炎症(腫れ、熱感、発赤)が疑われる場合は、患部を冷やすことが有効です。
氷嚢や保冷剤をタオルなどで包み、15~20分程度冷やします。
数時間おきに繰り返しましょう。
冷却は痛みを和らげ、炎症の拡大を抑える効果があります。
ただし、凍傷に注意し、長時間冷やしすぎないようにしましょう。
慢性的な痛みや血行不良が原因と考えられる場合は、温める方が効果的なこともあります。
どちらが良いか判断に迷う場合は、専門家に相談するか、まずは冷却から試してみるのが無難です。 - 圧迫 (Compression): 患部の腫れを抑えるために、弾性包帯やサポーターなどで軽く圧迫することも有効です。
ただし、締め付けすぎると血行が悪くなるので注意が必要です。 - 挙上 (Elevation): 可能であれば、痛む足を心臓より高い位置に挙げるようにします。
特に横になる際に、クッションなどを利用して足を高くすることで、腫れを軽減する効果が期待できます。
これらRICE処置は、筋肉や関節の急性期の損傷に対する基本的な応急処置です。
ただし、神経痛や血管の病気など、原因が異なる場合はRICE処置が適さないこともあります。
原因が不明確な場合や、症状が強い場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。
痛みを和らげるストレッチ(※注意点あり)
痛みが強い時期や急性期は、ストレッチを行うと症状が悪化する可能性があります。
ストレッチは、痛みが和らいできた回復期や、痛みが慢性化している場合に、筋肉の柔軟性を回復させたり、血行を改善させたりする目的で行います。
- 内転筋ストレッチの例:
- 床に座り、両足の裏を合わせて膝を開き、かかとを体に近づける(股関節を開く)ストレッチ。
- 立った姿勢で、片方の足を大きく横に開いて、もう片方の膝を曲げながら重心を移動させるストレッチ。
- 床に座って開脚し、体を前に倒したり、片足に向かって倒したりするストレッチ。
- 四つん這いの姿勢から、片足を横にスライドさせて開脚するストレッチ。
【ストレッチの注意点】
- 痛みが強いときは絶対に行わない。
- 無理な範囲で行わない。「気持ちいい」と感じる程度の強度で。
- 反動をつけず、ゆっくりと伸ばす。
- 呼吸を止めず、リラックスして行う。
- 継続することが重要。毎日少しずつ行うのが理想です。
- ストレッチで痛みが悪化する場合は中止し、専門家(医師、理学療法士など)に相談してください。
日常生活での予防策(座り方、運動など)
痛みを繰り返さないため、また新たな痛みを発生させないためには、日常生活での工夫が大切です。
- 正しい姿勢を意識する:
- 座り方: 長時間座る際は、骨盤を立てて背筋を伸ばし、両足を揃えて座るように心がけます。
足を組むのは避け、30分~1時間ごとに立ち上がって軽いストレッチや体操を行うようにしましょう。 - 立ち方: 片足に重心をかけすぎず、左右均等に体重を乗せるように意識します。
- 運動習慣: 定期的な軽い運動は、全身の血行を促進し、筋肉の柔軟性や筋力を維持するために重要です。
ウォーキングや軽いジョギング、水泳、ヨガなどがおすすめです。 - ウォーミングアップとクールダウン: スポーツや運動を行う前には、しっかりとウォーミングアップ(軽い有酸素運動と動的ストレッチ)を行い、筋肉や関節を活動できる状態にします。
運動後には、クールダウン(静的ストレッチなど)を行い、使った筋肉をケアします。 - 体の柔軟性を保つ: 特に股関節周囲や太ももの内転筋群の柔軟性が低下すると、怪我のリスクが高まります。
日頃からストレッチを行い、柔軟性を保ちましょう。 - 体重管理: 体重が増加すると、股関節や膝などの関節に負担がかかり、周囲の筋肉にも影響が出ることがあります。
適正体重を維持することが、痛みの予防につながります。 - バランスの取れた食事: 筋肉や骨、軟骨などを健康に保つためには、バランスの取れた食事が不可欠です。
特に、タンパク質、カルシウム、ビタミンDなどを意識して摂取しましょう。 - 十分な睡眠: 体の修復は睡眠中に行われます。
疲労回復のためにも、十分な睡眠時間を確保することが大切です。 - 体を冷やさない: 冷えは筋肉を硬くし、痛みを悪化させる可能性があります。
特に冬場やエアコンの効いた場所では、体を冷やさないように注意しましょう。
湯船にゆっくり浸かるのも効果的です。
病院へ行くべき目安と受診科
太ももの内側の痛みの原因には、自己ケアで改善するものもあれば、医療機関での治療が必要な病気も含まれます。
どのような症状がある場合に病院を受診すべきか、また何科に行けばよいかを知っておきましょう。
こんな症状は要注意!医療機関を受診すべきサイン
以下のような症状が一つでも見られる場合は、単なる筋肉痛ではない可能性が高く、重篤な病気が隠れていることもあります。
迷わず早めに医療機関を受診してください。
要注意サイン | 考えられるリスク(太もも内側に関連) |
---|---|
激しい痛み | 肉離れ、筋挫傷、血栓性静脈炎、鼠径ヘルニア嵌頓、尿管結石など |
安静にしていても痛い | 炎症が強い、神経痛、変形性股関節症(進行期)、血管の病気、その他の疾患など |
しびれや感覚異常 | 神経の圧迫や損傷(閉鎖神経痛、坐骨神経痛など) |
強い腫れ、発赤、熱感 | 炎症が強い、感染、血栓性静脈炎など |
明らかに形がおかしい | 肉離れによる筋肉の陥凹、鼠径ヘルニアによる膨らみなど |
歩けない、体重をかけられない | 重度の筋肉損傷、関節疾患、骨折、神経麻痺など |
発熱を伴う | 感染、炎症性疾患など |
鼠径部に柔らかい膨らみがある(特に押しても戻らない、痛みが強い場合) | 鼠径ヘルニア(特に嵌頓) |
足の色が悪い、冷たい | 閉塞性動脈硬化症、血栓性静脈炎など、血管系の重篤な問題 |
原因が全く思い当たらない | 腫瘍や内部疾患の可能性も考慮 |
痛みが徐々に悪化している | 進行性の疾患の可能性 |
2週間以上痛みが続く | 自己ケアでの改善が難しい、慢性的な問題、または他の疾患の可能性 |
これらの症状は、早期の診断と治療が必要な場合が多いです。「もう少し様子を見よう」と自己判断せず、医療機関を受診することが大切です。
太ももの内側の痛みは何科で診てもらう?(整形外科など)
太ももの内側の痛みの原因は多岐にわたりますが、まず最初に受診を検討すべきは整形外科です。
- 整形外科: 筋肉、骨、関節、神経の病気や怪我を専門としています。
スポーツによる筋肉の痛み、肉離れ、筋挫傷、筋膜性疼痛症候群、股関節疾患(変形性股関節症、股関節唇損傷など)、神経痛(閉鎖神経痛、坐骨神経痛など)といった、太もも内側の痛みの原因の多くは整形外科の専門範囲です。
- 整形外科での診察: 医師による問診(いつから、どんな時に、どんな痛みかなど)、視診、触診が行われます。
必要に応じて、X線検査(骨の状態)、MRI検査(筋肉、神経、軟骨、靭帯など)、超音波検査(筋肉、腱、血管、ヘルニアなど)などの画像検査や、血液検査などが行われ、診断が進められます。
ただし、痛みの特徴や伴う症状によっては、他の診療科が適切な場合もあります。
- 神経内科: しびれやピリピリ感といった神経症状が強く、神経自体の病気(多発性神経炎など)が疑われる場合。
ただし、まずは整形外科で神経の圧迫などが原因ではないか診てもらうことが多いです。 - 血管外科: 足の冷感、色調変化、間欠性跛行など、血管系の病気(閉塞性動脈硬化症、深部静脈血栓症など)が強く疑われる場合。
緊急性が高い場合もあります。 - 消化器外科: 鼠径ヘルニアが疑われる場合。
嵌頓の可能性がある場合は、早急な受診が必要です。 - 婦人科(女性の場合): 下腹部痛、生理不順、不正出血など、婦人科系の病気による関連痛が疑われる場合。
- 泌尿器科: 尿管結石による放散痛が疑われる場合。
脇腹や背中の激痛を伴うことが多いですが、太もも内側が痛むこともあります。 - かかりつけ医: どの科に行けばよいか分からない場合や、複数の症状がある場合は、まずはかかりつけ医に相談するのも良いでしょう。
必要に応じて専門医を紹介してもらえます。
診断が確定すれば、原因に応じた治療が行われます。
治療には、薬物療法(痛み止め、湿布など)、リハビリテーション(ストレッチ、筋力トレーニング、物理療法)、注射療法(神経ブロック、トリガーポイント注射)、装具療法(サポーター、杖など)、そして必要に応じて手術などがあります。
まとめ
太ももの内側が痛む場合、その原因は筋肉の使いすぎや損傷、神経の圧迫、股関節などの関節や骨の問題、さらには血管や婦人科系の病気など、多岐にわたります。
痛みの性質(押すと痛い、伸ばすと痛い、ピリピリする、急に痛いなど)や、痛む場所(付け根に近いなど)によって、ある程度原因を推測するヒントになりますが、自己判断だけで済ませるのは危険です。
特に、激しい痛み、安静時も続く痛み、しびれや感覚異常、強い腫れや熱感、歩行困難、発熱、鼠径部の膨らみといった要注意サインがある場合は、放置すると重篤な状態になる可能性もあります。
これらの症状が見られる場合は、迷わず速やかに医療機関(まずは整形外科)を受診してください。
この記事が、あなたの太もも内側の痛みの原因を知り、適切な対処や受診の判断を行うための一助となれば幸いです。
しかし、ここに記載されている情報は一般的なものであり、個々の状態によって異なります。
最終的な診断や治療方針は、必ず医師の診察を受けて決定してください。
免責事項: 本記事は情報提供のみを目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。
ご自身の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。
本記事の情報に基づいて行われたいかなる行為についても、当方は一切の責任を負いません。