ふとした瞬間に腕に走る痛み、特に肘から下の部分に痛みやだるさを感じると、仕事や家事に集中できず、不安になりますよね。「ただの筋肉痛だろう」と放置していたら、痛みが長引いたり、しびれが出てきたりすることもあります。
その腕が痛い 肘から下の症状、原因は一体何なのでしょうか。
この記事では、腕の肘から下に痛みが生じる主な原因から、ご自身でできる対処法、そして病院を受診すべき目安までを詳しく解説します。あなたのつらい症状を和らげるためのヒントを見つけてください。
肘から下の痛みの主な原因：使いすぎによる炎症
同じ動作の繰り返しによって特定の筋肉や腱に負担がかかり、炎症を起こして痛みが生じるケースです。
上腕骨外側上顆炎（テニス肘）
通称「テニス肘」と呼ばれますが、テニスをしない人にも多く発症します。物をつかんで持ち上げる、タオルを絞る、キーボードを打つといった手首を反らせる動作で、肘の外側から前腕にかけて痛みが現れます。
- 主な原因: 手首を反らせる筋肉（短橈側手根伸筋など）の付け根である肘の外側部分の炎症
- 主な症状: 肘の外側の圧痛、物をつかんだり持ち上げたりする時の痛み
上腕骨内側上顆炎（ゴルフ肘）
「ゴルフ肘」は、手首を手のひら側に曲げる動作の繰り返しによって、肘の内側に痛みが生じる状態です。ゴルフのスイングだけでなく、重いものを運ぶ、フライパンを振るなどの動作でも起こります。
- 主な原因: 手首を曲げる筋肉（円回内筋、橈側手根屈筋など）の付け根である肘の内側部分の炎症
- 主な症状: 肘の内側の圧痛、手首を曲げたり物を握ったりする時の痛み
腱鞘炎（ドケルバン病など）
手首や指を動かすための「腱」と、それを包む「腱鞘」が擦れて炎症を起こす状態です。特に親指側の手首が痛む「ドケルバン病」が有名で、育児中の女性やスマホを多用する人によく見られます。
- 主な原因: 手首や指の使いすぎ
- 主な症状: 手首の親指側の腫れや痛み、親指を動かすと痛みが強くなる
スマホやパソコン作業による前腕の負担（スマホ肘・パソコン肘）
特定の病名ではありませんが、スマートフォンやパソコンの長時間利用によって前腕の筋肉が凝り固まり、痛みやだるさを引き起こすケースです。「テニス肘」や「ゴルフ肘」に似た症状が出ることがあります。
- 主な原因: 長時間同じ姿勢でのキーボード・マウス操作、スマホ操作による筋肉の持続的な緊張
- 主な症状: 前腕全体のだるさ、重さ、特定の箇所の痛み
肘から下の痛みの主な原因：神経の圧迫
腕を通る神経が、何らかの原因で圧迫されたり引っ張られたりして、痛みやしびれを引き起こすことがあります。
肘部管症候群
肘の内側にある「肘部管」というトンネル内で尺骨神経が圧迫される病気です。肘をぶつけた時に指先まで電気が走るような感覚が起こる、あの部分の神経です。
- 主な原因: 加齢による骨の変形、過去の骨折、ガングリオン（ゼリー状の物質が詰まった腫瘤）など
- 主な症状: 小指と薬指（小指側半分）のしびれ、手の筋肉が痩せる、細かい作業がしにくくなる
胸郭出口症候群
首から腕へ向かう神経や血管が、鎖骨周辺の「胸郭出口」という狭い通り道で圧迫されることで起こります。なで肩の女性や、重いものを運ぶ職業の人に多く見られます。
- 主な原因: 悪い姿勢、筋肉の過緊張、なで肩などの体型
- 主な症状: 腕を上げる動作での腕のだるさ、痛み、しびれ。つり革を持つ、洗濯物を干すなどの動作で症状が出やすい。
肘から下の痛みの主な原因：その他の可能性
頻度は低いですが、以下のような原因も考えられます。自己判断せず、気になる症状があれば医療機関を受診しましょう。
血管性の問題や血行不良
動脈硬化や血栓によって血流が悪くなり、腕に痛みや冷えを感じることがあります。
骨折や脱臼などの外傷
転倒などで手をついた覚えがある場合、骨折や脱臼の可能性があります。強い痛みや腫れ、動かせないといった症状が特徴です。
関節炎やリウマチ
関節リウマチでは、手首や肘の関節に腫れや痛みが現れます。特に朝起きた時に関節がこわばるのが特徴です。
内科的疾患や稀なケース（がんなど）
非常に稀ですが、心臓の病気（狭心症や心筋梗塞）の関連痛として左腕に痛みが出ることや、肺の腫瘍が神経を圧迫して腕に痛みやしびれを引き起こす（パンコースト腫瘍）こともあります。
腕が痛い 肘から下：痛む場所や症状別の原因
痛む場所や症状によって、原因をある程度推測することができます。
| 症状・痛む場所 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 前腕の外側が痛い | 上腕骨外側上顆炎（テニス肘）、橈骨神経の障害など |
| 前腕の内側が痛い | 上腕骨内側上顆炎（ゴルフ肘）、肘部管症候群など |
| ズキズキする、しびれる | 神経の圧迫（肘部管症候群、胸郭出口症候群）、頸椎（首）の問題など |
| 両腕に痛みやしびれ | 頸椎（首）の病気（頚椎症、椎間板ヘルニア）、胸郭出口症候群、糖尿病など |
前腕の外側が痛い場合
手首を反らせたり、物をつかんで持ち上げたりする時に肘の外側から前腕にかけて痛むなら、テニス肘（上腕骨外側上顆炎）の可能性が高いでしょう。
前腕の内側が痛い場合
手首を内側に曲げたり、物を握り込んだりする時に肘の内側から前腕にかけて痛むなら、ゴルフ肘（上腕骨内側上顆炎）が考えられます。
ズキズキする痛みやしびれを伴う場合
ピリピリ、ジンジンといったしびれや、電気が走るような痛みを伴う場合は、神経が圧迫されている可能性があります。小指側のしびれなら肘部管症候群、腕を上げた時のしびれなら胸郭出口症候群、首や肩こりもひどい場合は首（頸椎）の問題も考えられます。
両腕に痛みやしびれがある場合
片腕だけでなく両腕に症状が出ている場合、原因は腕そのものではなく、首（頸椎）にあることが多いです。また、糖尿病などの全身性の病気によって末梢神経に障害が起きている可能性も考慮する必要があります。
腕が痛い 肘から下、自分でできる対処法
痛みが軽度であれば、セルフケアで症状が和らぐことがあります。ただし、痛みが強い場合や悪化する場合は無理せず医療機関を受診してください。
痛みを和らげる基本的な対処法（安静、アイシング）
- 安静: まずは痛みの原因となっている動作を控え、腕を休ませることが最も重要です。
- アイシング: 痛み出した直後（急性期）や、熱感・腫れがある場合は、アイシングが効果的です。氷嚢や保冷剤をタオルで包み、1回15〜20分程度、痛む場所を冷やしましょう。
注意：慢性的な痛みには温める方が効果的な場合もありますが、炎症が起きている時に温めると悪化することがあります。判断に迷う場合は冷やす方を選びましょう。
効果的なストレッチやマッサージ
筋肉の緊張が原因の場合、ストレッチで血行を促進し、筋肉をほぐすことで痛みが和らぎます。
- 前腕（伸筋側）のストレッチ:
- 1. 痛い方の腕を前に伸ばし、手のひらを下に向けます。
- 2. 反対の手で、伸ばした方の手の甲を持ち、ゆっくりと手前に引きます。
- 3. 前腕の外側が「痛気持ちいい」と感じる程度で20〜30秒キープします。
- 前腕（屈筋側）のストレッチ:
- 1. 痛い方の腕を前に伸ばし、今度は手のひらを上に向けます。
- 2. 反対の手で、伸ばした方の指先を持ち、ゆっくりと手前に引きます。
- 3. 前腕の内側が伸びているのを感じながら20〜30秒キープします。
マッサージは、痛む場所の周りの凝り固まった筋肉を、優しく揉みほぐすように行いましょう。強い力でゴリゴリ押すのは逆効果になることがあるので注意してください。
サポーターや湿布薬の使い方
- サポーター: テニス肘用やゴルフ肘用のサポーターは、筋肉の動きを補助し、腱への負担を軽減する効果が期待できます。仕事や作業でどうしても腕を使う必要がある場合に活用しましょう。
- 湿布薬: 痛みを和らげる消炎鎮痛成分が含まれています。熱感がある場合は冷湿布、慢性的な痛みには温湿布が向いていますが、どちらを使っても消炎鎮痛効果自体に大きな差はありません。好みで選んでも良いでしょう。薬剤師に相談するのもおすすめです。
日常生活での工夫（スマホ、パソコン作業の見直し）
痛みの再発を防ぐには、日常生活の癖を見直すことが大切です。
- パソコン作業:
- 肘の角度が90度以上になるように、椅子や机の高さを調整する。
- 手首が反り返らないよう、リストレスト（キーボード用のクッション）を使う。
- 1時間に1回は休憩し、ストレッチを取り入れる。
- スマホ操作:
- 片手で長時間持たず、両手で持ったり、机に置いたりして操作する。
- 顔を上げ、スマホを目の高さに近づけて見るように意識する。
腕が痛い 肘から下：病院へ行く目安と受診すべき科
セルフケアを試しても改善しない場合や、以下のような症状がある場合は、迷わず病院を受診してください。
病院を受診すべきサインや症状
- 痛みが1週間以上続く、または悪化している
- 何もしていなくてもズキズキ痛む（安静時痛）
- 強いしびれや、感覚が鈍い感じがある
- 腕や指に力が入らない、物がうまくつかめない
- 痛む場所が赤く腫れている、熱を持っている
- 転倒などの後から急に痛み出した
- 腕の痛みだけでなく、胸の痛みや息苦しさなど他の症状もある
腕の痛みの診療科は主に整形外科
腕が痛い 肘から下の症状で病院へ行く場合、まずは整形外科を受診するのが一般的です。整形外科では、レントゲンや超音波（エコー）、MRIなどの検査を用いて、骨・関節・筋肉・腱の状態を詳しく調べ、正確な診断を下してくれます。
強いしびれが主な症状である場合や、整形外科で異常がないと言われた場合は、神経の専門家である神経内科や、首が原因と考えられる場合は脳神経外科の受診を勧められることもあります。
まとめ｜腕が痛い 肘から下は原因を正しく理解し適切に対処しよう
腕の肘から下の痛みは、パソコン作業やスマホの普及により、多くの人が経験しうる身近な症状です。その原因は、筋肉の使いすぎによる「テニス肘」や「ゴルフ肘」から、神経の圧迫、さらには他の病気が隠れている可能性まで多岐にわたります。
まずは安静を心がけ、ストレッチや湿布などのセルフケアを試してみましょう。しかし、痛みが長引いたり、しびれなどの気になる症状があったりする場合は、自己判断で放置せず、整形外科など専門の医療機関を受診することが大切です。
原因を正しく突き止め、適切な治療やケアを行うことで、つらい痛みから解放され、快適な毎日を取り戻しましょう。
免責事項: この記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代行するものではありません。腕の痛みに関して症状がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。
