切れ痔は、排便時に硬い便が肛門の皮膚を傷つけて起こる裂傷のことです。痛みや出血を伴うことが多く、経験したことのある方も少なくないでしょう。「どれくらいで治るのだろう」と不安に感じる方もいるかもしれません。
切れ痔が治るまでの期間は、傷の深さや日頃のケアによって大きく異なります。軽症であれば数日で改善することもありますが、適切な対処をしないと慢性化して長引くこともあります。
このガイドでは、切れ痔の治癒期間の目安、治りにくい原因、そして自宅でできるケア方法や、病院を受診すべきタイミングについて詳しく解説します。
切れ痔の治癒期間は症状の程度で異なる
切れ痔がどのくらいの期間で治るかは、傷の程度や体質、日頃のケアによって大きく左右されます。一概に「〇日で治る」と断言することはできませんが、一般的には症状が軽いほど早く治癒し、重いほど時間がかかります。
軽症の切れ痔が治る期間
初めて切れ痔になった場合や、傷が浅い場合は、比較的短い期間で治癒することが期待できます。硬い便で少し切れた、あるいは下痢で何度も排便して刺激になった、といった一時的な要因による軽症の切れ痔であれば、適切な自宅ケアを行うことで数日~1週間程度で改善することが多いです。排便習慣を見直し、患部を清潔に保つといった基本的なケアを徹底することで、傷口が早く閉じやすくなります。
慢性化した切れ痔が治る期間
切れ痔を何度も繰り返している場合や、傷が深い場合は、治癒に時間がかかる傾向があります。特に、痛みが強いことで肛門括約筋が緊張し、血行が悪くなると、傷の治りが遅れてしまいます。慢性的な切れ痔の場合、治癒までには数週間から数ヶ月かかることも少なくありません。自宅ケアだけでは限界がある場合も多く、症状によっては医療機関での専門的な治療が必要となることがあります。
潰瘍や見張りイボがある場合の期間
切れ痔が慢性化すると、傷口が深くなって「潰瘍(かいよう)」になったり、傷の上下に皮膚の盛り上がりである「見張りイボ」ができたりすることがあります。これらの病変ができている場合、自宅ケアだけで完治させることは非常に難しくなります。潰瘍は傷が深く治りにくく、見張りイボは排便時に刺激を受けやすく傷を悪化させる原因にもなり得ます。このような状態では、専門医による診察を受け、塗り薬や内服薬による治療、あるいは手術が必要となることもあります。治療期間は病変の程度や治療法によって異なりますが、数ヶ月単位での治療が必要となる場合もあります。
治癒期間が症状で異なる理由(痛みと血行の関係など)
傷の治りには、十分な血行が不可欠です。新鮮な血液が傷口に運ばれることで、栄養や酸素が供給され、細胞が修復されます。しかし、切れ痔の場合、排便時の強い痛みによって肛門括約筋が無意識に強く収縮してしまうことがあります。この括約筋の緊張が、肛門周辺の血行を悪化させ、傷の治りを妨げる原因となります。
また、便秘や下痢による刺激が繰り返されることも、傷口が治る前に再び傷つけてしまうことにつながります。傷が治らないまま刺激を受け続けると、傷口が深くなり潰瘍化したり、炎症が慢性化して見張りイボができたりと、症状が悪化していきます。このように、痛み、括約筋の緊張、血行不良、便通の悪化といった悪循環が生まれることで、切れ痔は治りにくく、慢性化してしまうのです。
切れ痔がなかなか治らない・繰り返す原因
「切れ痔が一度できたらずっと治らない」「治ったと思ったらすぐにまた切れる」という悩みを持つ方も少なくありません。切れ痔が治りにくかったり、繰り返したりするのには、いくつかの原因が考えられます。
便秘や下痢による肛門への負担
切れ痔の最大の原因であり、治癒を妨げる要因となるのが、便秘や下痢による肛門への過度な負担です。
- 便秘: 硬く大きくなった便は、排便時に肛門の皮膚を強く引き伸ばし、裂傷を起こしやすくします。また、無理にいきむことも肛門に大きな圧力をかけ、傷を悪化させたり再発させたりする原因となります。
- 下痢: 頻繁な下痢は、水様便が肛門の粘膜や皮膚を刺激し、炎症を引き起こすことがあります。また、何度も拭くことによる摩擦も、傷口を刺激し治りを遅らせる要因となります。
肛門括約筋の緊張が強い
切れ痔の痛みは、無意識のうちに肛門の内外の括約筋を収縮させてしまいます。特に、痛みが強いほど括約筋は強く緊張し、肛門が硬くなります。括約筋の緊張が続くと、肛門周辺の血管が圧迫されて血行が悪化します。傷の治りには十分な血行が必要であるため、括約筋の緊張は治癒を妨げる大きな原因となるのです。この緊張が慢性化すると、さらに治りにくい状態になってしまいます。
傷口が深くなり潰瘍化している
浅い傷であれば比較的早く治りますが、便秘や下痢が繰り返されたり、括約筋の緊張が続いたりすることで、傷口がなかなか閉じずに深くなり、潰瘍を形成することがあります。潰瘍は表面だけでなく、組織のより深い部分まで損傷が及んでいる状態です。このような深い傷は、浅い傷に比べて治癒に非常に時間がかかり、適切な治療を行わないと自然に治ることが難しい場合があります。
繰り返すことで見張りイボができる
切れ痔の傷が慢性化し、治っては切れてを繰り返す過程で、傷の上下の皮膚が炎症を繰り返し、硬く盛り上がることがあります。これが「見張りイボ(皮垂)」です。見張りイボは、それ自体は通常痛みを伴いませんが、排便時に便が引っかかったり、拭く際に刺激になったりすることで、再び切れ痔を引き起こしやすくします。また、見張りイボが存在することで、傷口が完全に閉じにくくなり、治癒を妨げる要因となることもあります。
複数の原因が絡み合っているケース
実際には、これらの原因が単独ではなく複数組み合わさっていることがほとんどです。例えば、便秘による傷が痛みを引き起こし、痛みが括約筋の緊張を招き、血行が悪化して傷が治りにくくなる、といった悪循環です。この悪循環をどこかで断ち切らない限り、切れ痔はなかなか治らず、慢性化へと進行してしまいます。
切れ痔を早く治すための自宅ケア
切れ痔を早く治し、慢性化や再発を防ぐためには、日頃からの適切な自宅ケアが非常に重要です。特に、便通の管理と患部のケアが中心となります。
便通を整えて負担を減らす
切れ痔を治すための最も基本的な対策は、便を柔らかくしてスムーズな排便を促し、肛門への負担を減らすことです。
食物繊維を多く摂る食事
食物繊維は便の量を増やし、適度な水分を保持することで便を柔らかくする働きがあります。野菜、果物、海藻、きのこ類、豆類、穀類などを意識して積極的に食事に取り入れましょう。特に、水溶性食物繊維(わかめ、こんぶ、果物、こんにゃくなど)は便を柔らかくする効果が高く、不溶性食物繊維(野菜、豆類、穀類など)は便のカサを増やして腸の動きを活発にする効果があります。両方をバランス良く摂ることが理想です。成人女性は1日18g以上、成人男性は1日21g以上の食物繊維摂取が推奨されています。
十分な水分摂取
水分が不足すると便が硬くなります。1日に1.5~2リットルを目安に、こまめに水分を摂るようにしましょう。特に朝起きてすぐにコップ1杯の水を飲む習慣をつけると、腸の動きを刺激して排便を促す効果が期待できます。コーヒーやアルコールは利尿作用があるため、摂りすぎに注意が必要です。
正しい排便習慣(うんちの仕方)
便意を感じたら我慢せず、できるだけ早くトイレに行くことが大切です。便意を我慢すると便が硬くなりやすくなります。トイレでは、リラックスして座り、必要以上にいきまないようにしましょう。前かがみになる、足元に台を置いて膝を高くするといった姿勢は、肛門を広げやすく排便をスムーズにする助けになります。理想は、トイレに座って数分以内で排便を終えることです。長時間トイレにこもることは避けましょう。毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつけることも効果的です。
その他(オリゴ糖、プロバイオティクスなど)
必要に応じて、オリゴ糖やプロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌などを含む食品やサプリメント)を摂取することも、腸内環境を整え、便通改善に役立ちます。ただし、効果には個人差があります。
患部を清潔に保ち血行を促進する
傷口を清潔に保つことは感染予防になり、温めて血行を良くすることは傷の治りを促進します。
入浴や座浴で温める
毎日湯船にゆっくり浸かることで、肛門周辺の血行が促進され、痛みが和らぎ、傷の治りが早まります。シャワーだけで済ませず、ぬるめのお湯(38~40℃)に10分以上浸かるのがおすすめです。湯船に浸かるのが難しい場合は、洗面器などにお湯を張り、肛門部を浸す「座浴(ざよく)」も効果的です。清潔なタオルを使用し、入浴後や座浴後には優しく水分を拭き取りましょう。
刺激の少ない洗浄方法
排便後には、トイレットペーパーでゴシゴシ拭くのではなく、温水洗浄便座(ウォシュレット)を使用するか、お湯で洗い流すのが最も理想的です。ウォシュレットを使う場合は、水圧を弱めに設定し、必要最低限の時間で洗浄しましょう。強い水圧や長時間の使用は、必要な常在菌まで洗い流してしまったり、かえって刺激になったりすることがあります。ペーパーで拭く場合は、強くこすらず、押さえるように優しく拭き取ってください。清潔な下着を着用し、通気性を良くすることも大切です。
炎症を抑え傷を保護する
傷口の炎症を鎮め、外部からの刺激から保護することも、治癒を助けます。
市販薬(塗り薬・坐剤)の活用
薬局で入手できる市販の痔の薬(塗り薬や坐剤)は、切れ痔の痛みを和らげ、炎症を抑え、傷の治りを助ける効果が期待できます。様々な種類の薬がありますが、切れ痔には特に、以下のような成分を含むものが適しています。どの薬を選べば良いか迷う場合は、薬剤師に相談しましょう。
成分の種類 | 主な効果 | 適している切れ痔のタイプ | 使用上の注意 |
---|---|---|---|
ステロイド | 炎症を強力に抑える | 炎症や腫れが強い場合 | 長期連用は避ける、傷口が化膿している場合は医師に相談 |
局所麻酔成分 | 痛みを一時的に和らげる(例:リドカイン、ジブカイン) | 排便時や安静時の痛みが強い場合 | アレルギー反応に注意 |
殺菌・消毒成分 | 傷口の感染を防ぐ | 傷があり感染が心配される場合 | 刺激を感じることがある |
止血成分 | 出血を抑える(例:酸化亜鉛) | 出血を伴う場合 | |
組織修復成分 | 傷口の治りを助ける(例:アラントイン、パンテノール) | 傷口の修復を早めたい場合 | |
血行促進成分 | 患部の血行を改善し治りを助ける | 傷の治りが遅い場合、括約筋の緊張が気になる場合 | |
保護成分 | 傷口を保護し滑りを良くする(例:ワセリン、スクワラン) | 排便時の摩擦を減らしたい場合、傷口を乾燥から守りたい場合 | ワセリン単体は傷の保護目的で使用 |
通常、切れ痔の初期には、痛み止め成分や炎症を抑える成分が含まれたものが使われます。慢性化して傷が深い場合は、組織修復を助ける成分や、血行促進成分、あるいは肛門括約筋の緊張を和らげる効果が期待できる成分が含まれたものが選ばれることもあります。使用方法(塗る回数、坐剤を入れるタイミングなど)は製品によって異なるため、添付文書をよく読んで正しく使用してください。
ワセリンなどで保護する
排便時の摩擦を減らすために、排便前に肛門に少量のワセリンや保湿クリームなどを塗って滑りを良くすることも効果的です。これは傷の治りを助けるというよりは、排便による新たな傷つきや刺激を防ぐための物理的なバリアとなります。清潔な指や綿棒を使って、肛門の入り口付近に薄く塗布してください。
その他(下着の選び方、座り方など)
- 下着の選び方: 綿など通気性の良い素材の下着を選び、締め付けのきついものは避けましょう。
- 座り方: 長時間座りっぱなしでいると肛門部に負担がかかることがあります。時々立ったり歩いたりして体勢を変えましょう。
病院(肛門科)へ行く目安
多くの切れ痔は、適切な自宅ケアで改善が見られます。しかし、自宅ケアだけでは治らない場合や、症状が悪化している場合は、早めに医療機関(肛門科または胃腸科など)を受診することが重要です。自己判断で放置せず、専門医の診断を受けることで、適切な治療法が見つかり、症状の早期改善につながります。
〇週間以上経っても症状が改善しない
一般的に、軽症の切れ痔であれば1週間程度で改善が見られることが多いです。自宅ケアをしっかり行っているにもかかわらず、1週間から2週間以上経っても痛みや出血といった症状が改善しない場合は、傷が深くなっていたり、慢性化の兆候が見られたりする可能性があります。この時点で専門医に相談することをおすすめします。
痛みが強い、出血が止まらない
排便時だけでなく、普段から痛みが強い場合や、出血量が多かったり、出血がなかなか止まらなかったりする場合は、症状が比較的重いと考えられます。特に、ズキズキとした激しい痛みが続く場合や、多量の出血がある場合は、早急に医療機関を受診してください。他の疾患の可能性も考慮し、正確な診断を受ける必要があります。
肛門周りに硬いしこりやポリープがある
排便時の痛みや出血に加え、肛門の周りに硬いしこりや、皮膚が盛り上がったようなもの(見張りイボなど)がある場合は、慢性化が進んでいるサインかもしれません。見張りイボのほか、痔核(いぼ痔)や痔ろうといった他の肛門疾患が合併している可能性も考えられます。これらの病変は自宅ケアでの改善は難しく、専門医による診断と治療が必要です。まれに悪性の病変の可能性も否定できないため、自己判断せず受診しましょう。
排便時以外も痛みが続く
排便時の痛みだけでなく、排便後も痛みが続いたり、普段から常に痛みが気になったりする場合は、傷が深くなっていたり、括約筋の緊張が強くなっていたりする可能性があります。また、痔ろうなど他の疾患が原因で痛みが続いていることも考えられます。慢性的な痛みを放置せず、専門医に相談してください。
再発を繰り返す場合
一度治っても、生活習慣や排便習慣が改善されないままでは、切れ痔を繰り返してしまうことがあります。頻繁に切れ痔を繰り返す場合は、根本的な原因(便秘、下痢、括約筋の緊張など)に対してより踏み込んだ対策が必要となる場合があります。専門医に相談し、適切なアドバイスや治療を受けることで、再発予防につながります。
自己判断が難しいと感じた場合
自分の症状がどの程度なのか判断に迷う場合や、市販薬を使っても効果が見られない場合、何かいつもと違う症状(発熱を伴う、おできのようなものができたなど)がある場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。肛門の症状は他の病気と区別がつきにくいこともあり、専門医による正確な診断が非常に重要です。
病院での治療法(簡単に紹介)
病院では、切れ痔の症状の程度や原因に応じて様々な治療法が選択されます。
薬物療法(内服薬、外用薬)
- 外用薬: 炎症を抑えるステロイド成分、痛みを和らげる局所麻酔成分、傷の治りを助ける成分、血行を促進する成分などが含まれた塗り薬や坐剤が処方されます。市販薬よりも有効成分の種類や濃度が高い場合や、医師の診断に基づいた適切な成分の薬が選ばれます。
- 内服薬: 便を柔らかくする下剤(緩下剤)や、肛門括約筋の緊張を和らげる薬(例:平滑筋弛緩薬)、痛みを抑える鎮痛剤などが処方されることがあります。便秘のタイプに合わせて適切な下剤を選ぶことが重要です。
ボツリヌス毒素注射
肛門括約筋の緊張が強い場合に、ボツリヌス毒素を少量注射することで、一時的に括約筋の緊張を和らげる治療法です。これにより血行が改善され、傷の治りを促進する効果が期待できます。効果は数ヶ月持続すると言われています。
手術療法(目的、種類)
薬物療法などで改善が見られない慢性的な切れ痔で、特に傷が深い潰瘍や、大きな見張りイボがある場合、あるいは肛門狭窄(肛門が狭くなること)を伴う場合に手術が検討されます。手術の目的は、傷の原因を取り除き、肛約括約筋の緊張を和らげ、肛門を広げることです。
- 内括約筋側方切開術: 肛門の内括約筋の一部を切開し、緊張を和らげる手術です。比較的簡単な手術で、痛みの緩和や傷の治癒に効果が期待できます。
- 皮膚弁移動術: 深い潰瘍や肛門狭窄がある場合に、健康な肛門周辺の皮膚を移動させて傷口や狭窄部を覆う手術です。治癒促進と肛門の機能温存を目指します。
- 見張りイボ切除: 大きな見張りイボが症状の原因となっている場合に切除する手術です。
どの治療法を選択するかは、症状の重さ、慢性化の程度、合併症の有無など、専門医が総合的に判断します。
切れ痔の予防法
切れ痔は一度治っても、原因となる生活習慣や排便習慣が変わらなければ再発しやすい病気です。日頃から予防を意識することが大切です。
日頃からの便通管理
最も重要な予防法は、便秘や下痢にならないように便通を規則正しく保つことです。前述の「食物繊維を多く摂る」「十分な水分を摂る」「正しい排便習慣をつける」といった自宅ケアは、同時に優れた予防法でもあります。毎日の食事内容や水分摂取量を意識し、適度な運動も取り入れて腸の働きを活発にしましょう。
肛門に負担をかけない習慣
排便時の無理ないきみを避け、長時間トイレにこもらないことも予防につながります。また、トイレットペーパーで強く拭きすぎない、温水洗浄便座を適切に使用するといった肛門を優しく扱う習慣をつけましょう。長時間座りっぱなしや立ちっぱなしも、肛門周辺の血行を悪くすることがあるため、適度に休憩を挟むようにしましょう。
ストレス管理
ストレスは自律神経のバランスを乱し、便通異常(便秘や下痢)を引き起こす原因の一つとなります。また、痛みを強く感じさせたり、肛門括約筋の緊張を高めたりすることもあります。趣味やリラクゼーションを取り入れるなど、自分なりのストレス解消法を見つけることも、切れ痔の予防に間接的に役立ちます。
切れ痔に関するよくある質問
子どもも切れ痔になる?
はい、子どもも切れ痔になることがあります。特に幼児期はトイトレーニングや偏食などで便秘になりやすく、硬い便で肛門を切ってしまうことがあります。大人と同様に、便通を整えること、お尻を清潔に保つことが基本的なケアとなります。子どもの場合は保護者が気づいてあげることが大切です。症状が続く場合や心配な場合は小児科や肛門科を受診しましょう。
妊娠中や産後の切れ痔は?
妊娠中はホルモンバランスの変化やつわりの影響で便秘になりやすく、大きくなった子宮が腸を圧迫することも便秘の原因となります。また、分娩時のいきみで肛門に負担がかかり、産後に切れ痔になる方も多くいます。妊娠中や産後の切れ痔のケアも基本的には大人と同様ですが、使用できる薬には制限がある場合があります。必ず医師に相談して、安全なケアや治療法を行いましょう。
切れ痔と他の肛門の病気の見分け方は?
切れ痔は排便時の痛みと出血が特徴的ですが、痔核(いぼ痔)や痔ろう、あるいは他の病気でも似たような症状が出ることがあります。
- 痔核(いぼ痔): 排便時に出血したり、肛門からいぼのようなものが出たりすることがありますが、切れ痔のような強い痛みは伴わないことが多いです(血栓性外痔核を除く)。
- 痔ろう: 肛門周囲に膿が溜まり、皮膚に穴が開いて膿が出ることがあります。痛みや腫れ、発熱を伴うこともあり、自然に治ることはありません。
これらの区別は自己判断では難しいため、症状に不安がある場合は専門医に相談することが最も確実です。
病院で診察を受けるのが恥ずかしいのですが?
肛門科の受診に抵抗を感じる方は少なくありません。しかし、医師は多くの患者さんの肛門の悩みと向き合っており、恥ずかしがる必要は全くありません。専門医であれば、診察も手際よく行い、患者さんの羞恥心に配慮してくれるはずです。安心して受診してください。早めに診察を受けることで、症状の悪化を防ぎ、早期回復につながります。
まとめ:切れ痔は早期の適切なケアと必要に応じた受診が大切
「切れ痔はどれくらいで治る?」という疑問に対して、答えは「症状の程度やケアによって大きく異なる」ということになります。軽症であれば数日~1週間で治ることもありますが、慢性化すると数ヶ月かかることもあります。
切れ痔を早く治し、再発を防ぐためには、
- 便通を整えること(便を柔らかくすること)
- 肛門を清潔に保ち温めること
- 市販薬などを適切に使用すること
といった自宅での適切なケアが非常に重要です。
しかし、自宅ケアを続けても症状が改善しない、痛みが強い、出血が多い、肛門にしこりやポリープがある、といった場合は、迷わず医療機関(肛門科など)を受診しましょう。専門医の診断を受け、原因に応じた適切な治療を行うことが、症状の改善と慢性化・重症化の予防につながります。
切れ痔は決して珍しい病気ではありません。一人で悩まず、適切なケアと必要に応じた受診で、つらい症状から解放されましょう。
免責事項: この記事の情報は、一般的な情報提供のみを目的としており、医療行為や診断に代わるものではありません。個々の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。自己判断での治療や放置は、症状を悪化させる可能性があります。