尿路結石は、尿の通り道である「尿路」に結晶の塊(結石)ができる病気です。突然、耐えがたいほどの激しい痛みに襲われることが特徴で、その痛みから「七転八倒の苦しみ」と表現されることもあります。また、痛みに加えて血尿が見られることも少なくありません。
尿路結石は決して珍しい病気ではなく、生涯のうちに多くの人が経験すると言われています。男性に多く見られますが、女性も例外ではありません。結石が小さいうちは症状が出ないことも多いため、知らず知らずのうちに結石ができているケースもあります。
この記事では、尿路結石の代表的な症状から、見逃しがちな初期症状、放置した場合のリスク、さらには病院を受診する目安や主な治療法、ご自身でできる予防策までを詳しく解説します。もし気になる症状がある場合や、予防に関心がある方は、ぜひ参考にしてください。
尿路結石とは?発生する場所と主な種類
尿路結石は、腎臓で作られた尿に含まれるミネラル成分などが結晶化し、固まってできる「石」のことです。この石が、尿の通り道である「尿路」のどこかに留まることで、様々な症状を引き起こします。
尿路は、腎臓で尿が作られ、尿管を通って膀胱に貯められ、最後に尿道を通って体外に排出されるまでの経路全体を指します。結石ができる場所によって、主に以下の名称で呼ばれます。
- 腎結石(じんけっせき):腎臓にある結石です。腎臓内に留まっている限りは、ほとんど症状が出ないことが多いです。
- 尿管結石(にょうかんけっせき):腎臓から膀胱へと尿を運ぶ尿管にある結石です。尿管は細く、結石が詰まりやすいため、激しい痛みの原因となることが最も多い結石です。
- 膀胱結石(ぼうこうけっせき):膀胱にある結石です。排尿時の痛みや頻尿、残尿感などの症状が出やすいです。
- 尿道結石(にょうどうけっせき):膀胱から体外へ尿を出す尿道にある結石です。男性に多く、排尿困難や尿道の痛みを引き起こします。
尿路結石は、その成分によっていくつかの種類に分けられます。最も多いのは、シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムを主成分とするカルシウム結石です。その他には、尿酸が結晶化してできる尿酸結石、細菌感染が原因でできる感染結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石など)、遺伝性疾患などによるシスチン結石などがあります。結石の種類によって、できやすい人の特徴や予防法が異なる場合があります。
尿路結石の代表的な症状
尿路結石の症状は、結石ができた場所や大きさ、数、そして尿路を塞いでいるか(閉塞の有無)によって大きく異なります。しかし、特に結石が尿管に詰まった場合に現れる、いくつかの典型的な症状があります。
激しい痛み(疝痛発作)
尿路結石の症状として最もよく知られているのが、非常に強い痛みです。これは「疝痛(せんつう)」と呼ばれ、特に結石が尿管を下降する際に、尿管が結石を排出しようとして痙攣することで起こります。痛みは周期的に現れることが多く、「疝痛発作」と呼ばれます。
痛む場所:腰、脇腹、背中、下腹部
痛みの場所は、結石が尿管のどのあたりにあるかによって変わってきます。
- 腎臓に近い尿管の上部にある場合:主に腰や脇腹、背中に強い痛みを感じることが多いです。
- 膀胱に近い尿管の下部にある場合:痛みが下腹部や足の付け根、男性の場合は陰嚢に放散することもあります。
痛みは片側だけに出ることがほとんどですが、結石が両側の尿管にある場合は両側に痛みが出ることもあります。
痛みの特徴:波があり、突然起こる
疝痛発作の最大の特徴は、突然始まる非常に激しい痛みであり、波があることです。痛みが数十分から数時間続き、その後いったん和らぎ、しばらくすると再び激しい痛みが襲ってくる、といった周期を繰り返します。痛みの間欠期でも鈍い痛みが残ることもあります。
痛みがあまりに激しいため、じっとしていることができず、体勢を変えたり、歩き回ったりしても痛みが和らがないことが多いです。この痛みのために、救急車を呼ぶ人も少なくありません。夜間や早朝に突然発症することも多く、日常生活に大きな支障をきたします。
痛みの原因:結石による尿路閉塞と水腎症
この激しい痛みの主な原因は、結石が尿管を塞ぐこと(尿路閉塞)によって起こる水腎症(すいじんしょう)です。尿管が詰まると、腎臓で作られた尿がスムーズに膀胱へ流れず、腎臓内の尿が集まる部分(腎盂じんう)や尿管が拡張し、腫れてしまいます。この内圧の上昇や尿管の痙攣が、激しい痛みを引き起こすと考えられています。
血尿
尿路結石では、痛みに伴って血尿が見られることも非常に多い症状です。結石が尿路を傷つけたり刺激したりすることで、尿に血液が混じります。
血尿には、目で見て尿が赤やピンク色をしているとわかる肉眼的血尿と、見た目ではわからず、尿検査で初めて顕微鏡的に赤血球が確認される顕微鏡的血尿があります。尿路結石の場合、肉眼的血尿が出ることもありますが、痛みがあるのに見た目には血尿がない、というケースも少なくありません。これは、肉眼的血尿ほどではないものの、尿路が傷ついているために顕微鏡的な血尿が出ていることがほとんどです。
痛みが強い時期に血尿も濃くなる傾向があります。
その他の随伴症状:吐き気、嘔吐、発熱など
激しい痛みに伴って、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。これは、痛みが非常に強いことや、尿路と消化器系の神経が近いために関連して起こると考えられています。
また、結石による尿路閉塞が長期間続いたり、尿の停滞によって細菌感染を合併したりすると、発熱を伴うことがあります。高熱が出る場合は、腎盂腎炎などの感染症を起こしている可能性があり、注意が必要です。この場合、速やかに医療機関を受診する必要があります。
その他にも、結石が膀胱に近い場所にある場合は、頻尿や残尿感、排尿時の痛みなどの膀胱炎に似た症状が出ることがあります。尿道結石の場合は、排尿困難や尿道の痛みが主な症状となります。
尿路結石の初期症状と石が出る前の前兆
尿路結石は、結石の大きさや場所によっては、初期にはほとんど症状が出ないことがあります。特に腎臓にある小さな結石は、症状がないまま健康診断などで偶然見つかることも珍しくありません。
しかし、結石が動き始めたり、少し大きくなったりすると、激しい疝痛発作が起こる前に、何らかのサインや違和感として現れることがあります。
尿管結石の初期症状・前兆
尿管結石が尿管を下降し始める前や、まだ完全に詰まっていない段階では、激しい痛みではなく、より軽い、あるいは漠然とした症状が出ることがあります。これが「初期症状」や「前兆」と呼ばれるものです。
具体的には、以下のような症状が挙げられます。
- 腰や背中の鈍い痛みや重い感じ:激しい痛みほどではないものの、片側の腰や背中に重苦しさや鈍痛を感じることがあります。特に体を動かしたり、特定の姿勢をとったりしたときに感じやすい場合があります。
- 排尿時の違和感:結石が膀胱に近い尿管の下部にある場合、排尿時に膀胱や尿道に違和感や軽い痛みを感じることがあります。
- 漠然とした下腹部痛:下腹部に原因不明の鈍痛を感じることがあります。
- 血尿(肉眼的ではない場合):見た目ではわかりませんが、尿検査をすると顕微鏡的血尿が検出されることがあります。
これらの初期症状や前兆は、他の病気と区別がつきにくいため、「疲れているのかな」「筋を違えたかな」などと思い、見過ごしてしまうことも少なくありません。しかし、これらのサインを感じた後、突然激しい痛みに襲われることがあります。
女性の尿管結石に見られる初期症状
女性の場合も、尿管結石の初期症状や前兆は男性と同様です。腰や背中の鈍痛、下腹部の違和感などが見られます。
ただし、女性特有の注意点として、これらの症状が婦人科系の疾患(卵巣のう腫茎捻転、子宮外妊娠など)や他の消化器系の疾患(虫垂炎、憩室炎など)と間違えやすいという点があります。特に下腹部痛や腰痛は、月経痛や子宮筋腫などでも起こりうるため、自己判断せずに医師に相談することが重要です。
女性の場合も、初期症状の後に突然の激しい痛みが起こる可能性は十分にあります。
尿路結石を放っておくとどうなる?合併症のリスク
尿路結石による激しい痛みは非常に辛いため、多くの場合、症状が出たらすぐに医療機関を受診します。しかし、結石が小さく痛みが軽かったり、痛みが自然に和らいだりした場合に、「大丈夫だろう」と自己判断して放置してしまうと、いくつかのリスクや合併症を引き起こす可能性があります。
腎機能低下の可能性
結石が尿管に詰まった状態が長期間続くと、尿の流れが完全に、あるいは部分的に妨げられます。これにより、腎臓で作られた尿が腎臓内に溜まり続け、腎臓が水風船のように腫れ上がる「水腎症」が悪化します。
水腎症が慢性的に続くと、腎臓に常に高い圧力がかかり、腎臓の組織が障害されて腎機能が徐々に低下してしまうリスクがあります。多くの場合、片側の腎臓の障害であれば、もう片側の健康な腎臓が機能を補うため、すぐに自覚症状として現れることは少ないですが、放置が続けば両側の腎臓に影響が及んだり、もともと腎臓が弱っている方ではより早く腎機能が低下したりする可能性があります。最悪の場合、透析が必要となるような重度の腎不全に至ることも考えられます。
感染症などのリスク
尿路が結石によって塞がれると、尿の流れが悪くなり、細菌が繁殖しやすい環境が生まれます。特に、尿路に細菌が入り込んだ場合、尿の停滞によって細菌が洗い流されにくくなり、増殖しやすくなります。
これにより、尿路感染症を引き起こすリスクが高まります。感染が膀胱にとどまれば膀胱炎で済みますが、結石による閉塞がある状態で感染が腎臓まで及ぶと、腎盂腎炎(じんうじんえん)を発症します。腎盂腎炎は、高熱、悪寒、腰や背中の強い痛みなどを伴う重篤な感染症です。
さらに、結石による閉塞と感染が同時に起こると、腎臓に膿が溜まる腎盂腎炎から、全身に細菌が回る敗血症へと進行し、命に関わる重篤な状態になる可能性もあります。
また、結石の種類によっては、尿路感染が原因で結石が大きくなる(感染結石)という悪循環に陥ることもあります。
痛みがなくなったとしても、結石が体内に残っている場合は、これらのリスクが常に存在します。そのため、症状が一時的に改善しても、必ず医療機関を受診し、結石の状態を確認してもらうことが重要です。
尿路結石の症状が出たら:受診の目安と診断の流れ
尿路結石の症状が出た場合、特に激しい痛みに襲われた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。痛みが激しい場合は、救急外来を受診することも検討しましょう。
【受診の目安】
- 突然、耐えがたいほどの激しい腰や脇腹、背中、下腹部の痛みがある場合
- 痛みに伴って血尿が出た場合
- 痛みに加えて、高熱や吐き気、嘔吐がある場合
- 痛みが軽度でも、腰や背中の鈍痛が続く場合
- 過去に尿路結石になったことがある方で、似たような症状が出た場合
これらの症状がある場合は、泌尿器科を受診するのが最も適切です。夜間や休日で泌尿器科が開いていない場合は、救急病院の救急外来を受診しましょう。
【診断の流れ】
医療機関を受診すると、 typically は以下のような流れで診断が進められます。
- 問診: いつから、どのような症状(痛みの場所、強さ、頻度、血尿の有無、吐き気、発熱など)があるか、過去に尿路結石になったことがあるか、服用中の薬、既往歴などを詳しく聞かれます。
- 身体診察: 痛む場所などを確認します。
- 尿検査: 尿中の赤血球(血尿の有無)、白血球(感染の有無)、結晶成分などを調べます。
- 画像検査: 結石の有無、大きさ、位置、水腎症の程度などを確認するために行われます。
- 腹部X線検査: カルシウムを多く含む結石はX線に写りやすいです。結石の位置や大きさを確認できます。
- 超音波(エコー)検査: 腎臓の水腎症の有無や程度、腎臓内の結石などを確認できます。X線に写りにくい結石も検出できます。
- CT検査: 結石の種類に関わらず、ほぼ全ての結石を正確に描出できます。結石の位置、大きさ、数、水腎症の程度、そして他の病気(虫垂炎など)との鑑別にも非常に有用です。緊急時やより詳しい情報が必要な場合によく行われます。
これらの検査結果を総合的に判断し、尿路結石であるかどうかの診断が確定されます。診断後、結石の状態や患者さんの全身状態に合わせて、最適な治療法が選択されます。
尿路結石の主な治療法
尿路結石の治療法は、結石の大きさ、位置、種類、水腎症や感染症の有無、患者さんの症状や全身状態などを考慮して決定されます。主な治療法は以下の通りです。
自然排出を待つ保存療法
結石が比較的小さく(一般的に10mm以下、特に4mm以下)、痛みが薬でコントロールできる範囲で、水腎症や感染症がない場合、自然に尿と一緒に体外に排出されるのを待つ治療法です。
- 水分摂取の奨励: 1日の尿量を増やし、結石を押し流しやすくするために、積極的に水分を摂取します。1日2リットル以上の尿量を目標とすることが多いです。
- 鎮痛剤: 痛みが強い場合は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や座薬などの鎮痛剤を使用して痛みを和らげます。
- 結石排出促進剤: 尿管の筋肉を弛緩させて結石の下降を助ける薬(α1ブロッカーなど)が処方されることもあります。
保存療法を選択した場合でも、定期的に医療機関を受診し、結石が下降しているか、水腎症が悪化していないかなどを確認することが重要です。
体外衝撃波結石破砕術(ESWL:Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy)
体の外から衝撃波を当てて、体内の結石を細かく砕く治療法です。砕かれた結石の破片は、尿と一緒に自然に排出されるのを待ちます。
- 特徴: 体を傷つけずに治療できる(非侵襲的)ため、患者さんの負担が比較的少ない治療法です。多くの場合、外来での治療が可能ですが、結石の大きさや場所によっては入院が必要な場合もあります。
- 適用: 腎臓や尿管にある比較的大きさが中程度の結石(一般的に20mm以下)に適用されることが多いです。
- 治療回数: 結石の大きさや硬さによっては、複数回の治療が必要になることがあります。
内視鏡による治療(TUL, f-TUL, PNL)
尿道から内視鏡を挿入し、結石を直接確認しながらレーザーや超音波などで砕いたり、鉗子で取り出したりする治療法です。結石の場所や大きさによって、いくつかの種類があります。
- 経尿道的尿管結石破砕術(TUL:Transurethral Ureterolithotripsy): 尿道から細い内視鏡(尿管鏡)を挿入し、尿管や腎臓の下部にある結石を砕いて除去します。硬い結石やESWLで砕けにくい結石にも有効です。多くの場合、入院が必要です。
- 経尿道的腎結石・尿管結石破砕術(f-TUL:Flexible-TUL): 従来のTULより柔らかく細い内視鏡(軟性尿管鏡)を使用し、腎臓のどの場所にある結石や、尿管の結石にも対応可能です。レーザーを使用して結石を砕きます。
- 経皮的腎・尿管結石破砕術(PNL:Percutaneous Nephrolithotripsy): 背中を小さく切開し、そこから太めの内視鏡(腎盂鏡)を腎臓に挿入して、腎臓内にある大きな結石や複雑な形状の結石を砕いて除去します。他の治療法が難しい場合や、大きな結石に適応されます。入院が必要です。
これらの内視鏡治療は、結石をその場で除去できる可能性が高く、治療効果が比較的確実です。ただし、全身麻酔や脊椎麻酔が必要となる場合が多く、入院が必要となります。
どの治療法を選択するかは、医師とよく相談し、ご自身の結石の状態やライフスタイルに合った方法を選ぶことが大切です。
尿路結石の再発予防のためにできること
尿路結石は、一度かかると約半数の人が5年以内に再発すると言われています。そのため、結石ができた原因を特定し、再発予防に努めることが非常に重要です。予防策は、結石の種類によって多少異なりますが、共通して有効なものも多くあります。
食事での注意点:摂るべきもの・控えるべきもの
食生活は、尿の成分に大きな影響を与え、結石の形成に深く関わっています。結石の種類(特にカルシウム結石か尿酸結石かなど)によって、より注意すべき点が異なりますが、一般的な予防のための食事のポイントをまとめます。
ポイント | 摂るべきもの | 控えるべきもの |
---|---|---|
水分 | 水、麦茶など(1日2リットル以上の尿量を目標に、こまめに飲む) | 清涼飲料水(特に果糖の多いもの)、アルコール(ビールなど、種類によっては尿酸値を上げる)、シュウ酸を多く含む飲み物(コーヒー、紅茶、ココア、抹茶など※過剰摂取を避ける程度でOK) |
カルシウム | 食事からの摂取は制限しすぎない(乳製品、小魚など)。食事と同時に摂取すると、腸内でシュウ酸と結合し、結石の成分として吸収されにくくなる。 | サプリメントでの過剰摂取は避ける。 |
シュウ酸 | 尿中でカルシウムと結合して結石になりやすい成分。カルシウムを多く含む食品と一緒に摂る工夫をする。 | シュウ酸を多く含む食品:ほうれん草、たけのこ、チョコレート、ナッツ類、コーヒー、紅茶、ココア、抹茶、バナナなど。これらの食品を全く摂らないのではなく、摂りすぎに注意したり、多量に摂る場合はカルシウムを多く含む食品(牛乳など)と同時に摂るなどの工夫が有効です。 |
塩分(ナトリウム) | 過剰摂取は厳禁。塩分の摂りすぎは尿中のカルシウム排泄を増やし、結石ができやすくなります。加工食品、インスタント食品、外食、漬物などに注意し、薄味を心がけましょう。 | |
動物性タンパク質 | 摂りすぎに注意。特に肉類の内臓や魚卵など、プリン体を多く含む食品は尿酸値を上げやすく、尿酸結石の原因となります。また、動物性タンパク質の分解産物は尿を酸性化させ、他の種類の結石にも影響する可能性があります。 | |
クエン酸 | レモン、オレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類に多く含まれる。クエン酸は尿中でカルシウムと結合し、結石ができにくくする効果があると言われています。 | |
マグネシウム | 大豆製品、海藻類、ナッツ類などに多く含まれる。マグネシウムも尿中でシュウ酸と結合し、結石ができにくくする効果があると言われています。 |
結石の種類に応じたより詳細な食事指導が必要な場合もありますので、医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。
水分摂取の重要性
再発予防において、最も重要で効果的な対策の一つが十分な水分摂取です。水分をたくさん摂ることで尿量が増え、尿中の結石成分の濃度が薄まります。これにより、成分が結晶化して結石になるのを防ぎやすくなります。
目安としては、1日に2リットル以上の尿量を確保できるだけの水分を摂るように心がけましょう。これは、飲んだ水分量そのものが2リットルではなく、尿として排出される量が2リットルということです。汗をたくさんかく夏場や運動時は、それ以上の水分摂取が必要になります。
飲む水分としては、水や麦茶が最も適しています。特に就寝中は尿が濃縮されやすいため、寝る前や夜中に目覚めたときにコップ1杯の水を飲むのも効果的です。
避けた方が良い飲み物としては、清涼飲料水(特に果糖ブドウ糖液糖を含むもの)、アルコール、一部のお茶(シュウ酸が多いもの)などがありますが、全く飲んではいけないということではなく、過剰摂取を避けることが重要です。
日常生活の改善
食生活や水分摂取に加え、日々の生活習慣を見直すことも再発予防につながります。
- 適度な運動: 適度な運動は血行を良くし、骨からのカルシウム溶出を抑える効果があると言われています。ただし、激しい運動後の脱水には注意が必要です。
- 肥満の解消: 肥満は尿酸結石を含む、いくつかの種類の結石のリスクを高めることがわかっています。適正体重を維持することが大切です。
- 規則正しい生活: 不規則な生活や過労、ストレスは体のバランスを崩し、結石ができやすい体質につながる可能性があります。十分な睡眠をとり、ストレスを溜め込まないようにすることも重要です。
- 定期的な健康診断: 特に過去に結石ができたことがある方は、定期的に尿検査や画像検査を受けて、結石ができていないかチェックしてもらうことが早期発見・早期治療につながります。
これらの予防策は、再発を防ぐだけでなく、全身の健康維持にも役立ちます。日々の生活の中で無理なく続けられることから始めてみましょう。
よくある質問
尿管結石はどこが痛くなる?
尿管結石による痛みは、結石が尿管のどの場所にあるかによって痛む場所が変わります。一般的には、腰や脇腹、背中に激しい痛みが出ることが多いです。結石が膀胱に近い尿管の下部にある場合は、下腹部や足の付け根、男性では陰嚢に痛みが放散することもあります。痛みは片側だけに出ることがほとんどです。
尿管結石は何日ぐらいで出るの?
尿管結石が自然に排出されるまでの期間は、結石の大きさ、位置、形状、そして個人差によって大きく異なります。
- 4mm以下の小さな結石: 比較的自然に排出されやすく、数日~数週間で排出されることが多いです。
- 4mm~10mm程度の結石: 自然排出の可能性はありますが、時間がかかる場合や、途中で詰まってしまうこともあります。排出されるまでには数週間~数ヶ月かかることもあります。
- 10mm以上の大きな結石: 自然排出されることは非常に難しく、ほとんどの場合、体外衝撃波結石破砕術や内視鏡による治療が必要となります。
また、結石が尿管の上部にあるよりも、膀胱に近い下部にある方が排出しやすい傾向があります。痛みが強い場合は、痛みを我慢せず、医療機関で診察を受けることが大切です。
尿管結石の前兆は?
尿管結石の激しい痛みの前に、前兆や初期症状として、腰や背中の漠然とした鈍痛や重い感じ、排尿時の軽い違和感、あるいは原因不明の下腹部痛などが現れることがあります。これらの症状は他の病気でも起こりうるため見過ごされがちですが、後に激しい痛みに繋がることがあります。見た目には分かりませんが、尿検査で顕微鏡的血尿が検出されることもあります。
尿路結石を放っておくとどうなるのか?
尿路結石による症状を放置すると、いくつかのリスクがあります。最も懸念されるのは、結石による尿路の閉塞が長期間続くことによる腎機能の低下です。これにより、将来的に腎不全に至る可能性もゼロではありません。また、尿の停滞が原因で尿路感染症を引き起こしやすくなり、腎盂腎炎など重篤な感染症や、さらに全身に波及する敗血症に至る危険性もあります。痛みが一時的に治まっても、結石が体内に残っている場合はこれらのリスクが続くため、必ず医療機関で適切な診断と治療を受けることが重要です。
まとめ:尿路結石の症状を正しく理解し、適切な対処を
尿路結石は、突然の激しい痛みや血尿を主な症状とする病気です。特に尿管に結石が詰まった場合に起こる疝痛発作は、「七転八倒の苦しみ」と表現されるほど非常に強い痛みであり、多くの人がこの痛みをきっかけに医療機関を受診します。
痛みや血尿の他にも、吐き気、嘔吐、発熱などの随伴症状が現れることもあります。また、激しい痛みが起こる前に、腰や背中の鈍痛、排尿時の違和感といった見逃しやすい初期症状や前兆が現れる場合もあります。
尿路結石を放置すると、腎機能の低下や重篤な尿路感染症を引き起こすリスクがあるため、症状が出た場合は自己判断せずに、速やかに医療機関(特に泌尿器科)を受診することが非常に重要です。医療機関では、問診や尿検査、画像検査などによって結石の有無や状態が診断され、結石の大きさや位置などに応じて、自然排出を待つ保存療法、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、あるいは内視鏡による手術など、最適な治療法が選択されます。
そして、尿路結石は再発しやすい病気でもあります。治療後も、十分な水分摂取、バランスの取れた食事(特に塩分、動物性タンパク質、シュウ酸の過剰摂取を控え、クエン酸やマグネシウムを意識的に摂る)、適度な運動、規則正しい生活といった生活習慣の改善に取り組み、再発予防に努めることが大切です。
尿路結石の症状を正しく理解し、症状が現れた際は適切に医療機関を受診すること、そして日頃から再発予防を意識した生活を送ることが、ご自身の健康を守るために最も重要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療法を保証するものではありません。個々の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を仰いでください。