お腹に締め付けられるような痛みを感じたとき、その不快感や不安は大きいものです。キリキリと差し込むような痛みや、ぎゅっと掴まれるような感覚は、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
このようなお腹の痛みは、誰にでも起こりうる症状ですが、原因は一時的なものから、すぐに医療機関を受診すべき病気が隠れている場合まで様々です。
この記事では、「お腹締め付けられるような痛み」の背景にある様々な原因や、痛みの現れ方による特徴、ご自身で試せる対処法、そして医療機関を受診する目安について詳しく解説します。
ご自身の症状と照らし合わせながら、適切な対応を考える一助としていただければ幸いです。
ただし、ここに記載されている情報は一般的なものであり、個々の症状については必ず医師の診断を受けるようにしてください。
お腹締め付けられるような痛みの主な原因
お腹の締め付けられるような痛みは、胃や腸といった消化器系の問題だけでなく、精神的な要因や、場合によっては消化器系以外の病気が原因となっていることもあります。
ここでは、考えられる主な原因を詳しく見ていきましょう。
胃や腸の機能的な問題
内視鏡検査などを行っても、胃や腸に明らかな病変が見つからないにもかかわらず、胃腸の働きに異常が生じることで痛みが起こることがあります。
これを「機能性消化管疾患」と呼びます。
過敏性腸症候群 (IBS)
過敏性腸症候群(IBS)は、最も一般的な機能性消化管疾患の一つです。
腹痛や腹部の不快感が慢性的に続き、便通異常(下痢や便秘、またはその両方)を伴います。
締め付けられるような腹痛は、IBSの典型的な症状の一つであり、排便によって症状が和らぐことが多いのが特徴です。
IBSの原因は完全には解明されていませんが、腸の動きの異常、内臓の知覚過敏、脳と腸の連携の乱れ、ストレスなどが複雑に関与していると考えられています。
特にストレスや緊張が高まると症状が悪化しやすい傾向があります。
IBSは、便の状態によっていくつかのタイプに分類されます。
- 下痢型: 腹痛とともに、頻繁な下痢が特徴です。
- 便秘型: 腹痛とともに、排便困難や硬い便が特徴です。
- 混合型: 下痢と便秘を繰り返します。
- 分類不能型: 上記のどれにも分類されないタイプです。
締め付けられるような痛みは、腸が痙攣するように収縮することによって起こると考えられており、特に下痢型や混合型のIBSで強く感じやすいことがあります。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、胃の機能に問題が生じることで、胃もたれ、みぞおちの痛みや灼熱感、早期満腹感(少し食べただけでお腹がいっぱいになる)、食後のもたれ感などが慢性的に続く病気です。
内視鏡検査などでは潰瘍や炎症などの明らかな異常は見つかりません。
みぞおちの痛みが、締め付けられるような感覚として現れることもあります。
胃の動きが悪い(胃排出遅延)、胃が食べ物によって膨らむのを感じやすい(胃の適応性弛緩障害)、胃酸に対する感受性が高い、精神的ストレスなどが原因として考えられています。
食後に症状が悪化しやすい傾向があります。
消化器系の病気
胃や腸、その他の消化器臓器に炎症や閉塞、腫瘍などの病変が生じることで、締め付けられるような痛みが起こることがあります。
これらの病気の中には、早期の診断と治療が必要な緊急性の高いものも含まれます。
急性胃腸炎
ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルスなど)や細菌(カンピロバクター、サルモネラなど)への感染によって、胃や腸に急性の炎症が起こる病気です。
吐き気、嘔吐、下痢、発熱とともに、お腹全体、特にへそ周りやみぞおちあたりに締め付けられるような腹痛が生じることがあります。
痛みは波があるように感じたり、排便や嘔吐後に一時的に軽快することがあります。
食中毒や、汚染された水や食品の摂取が原因となることが多いです。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が傷つき、深くえぐられてしまう病気です。
主な原因はヘリコバクター・ピロリ菌感染と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用です。
典型的な症状はみぞおちの痛みですが、痛みの感じ方は人によって異なり、締め付けられるような、あるいは焼けるような痛みとして感じられることもあります。
胃潰瘍では食後に痛むことが多く、十二指腸潰瘍では空腹時に痛むことが多いという特徴がありますが、必ずしも典型的ではありません。
重症化すると出血や穿孔(胃や十二指腸に穴が開くこと)を起こし、緊急手術が必要になることもあります。
腸閉塞
腸の内容物(消化された食物や便、ガスなど)の流れが、何らかの原因で完全に、または部分的に滞ってしまう状態です。
腹部の手術後の癒着、腫瘍、ヘルニアなどが原因となることが多いです。
腸閉塞が起こると、腸管が拡張して内容物が溜まり、強い締め付けられるような痛み(疝痛と言われます)、吐き気、嘔吐、お腹の張り(腹部膨満)、便通や排ガスの停止といった症状が現れます。
締め付けられる痛みは、詰まった部分より上流の腸が内容物を押し出そうとして、蠕動運動が過剰になることで生じます。
放置すると腸が壊死する可能性もあり、緊急性の高い病気です。
虫垂炎
一般的に「盲腸」として知られる病気ですが、正確には盲腸から伸びる虫垂という小さな臓器に炎症が起こる病気です。
初期症状は、みぞおちやへその周りの痛みとして始まることが多く、時間が経つにつれて痛みが右下腹部に移動するのが典型的な経過です。
初期の痛みが、締め付けられるような鈍い痛みとして感じられることがあります。
進行すると、右下腹部が強く痛み、押すと響くような痛み(反跳痛)や、発熱、吐き気などを伴うようになります。
炎症が悪化すると虫垂が破裂し、腹膜炎を引き起こす可能性もあるため、早期の診断・治療が必要です。
胆のう炎・胆石症
胆のうは肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵する袋状の臓器です。
胆石は胆汁の成分が固まってできる結石で、胆のうや胆管にできます。
胆石があるだけでは症状がないことも多いですが、胆石が胆のうの出口や胆管に詰まると、胆汁の流れが妨げられ、強い痛み(胆石疝痛)が生じます。
痛みは右上腹部が多いですが、みぞおちや右の肩、背中に放散することもあり、締め付けられるような、あるいは差し込むような痛みとして感じられます。
特に脂肪分の多い食事を摂った後に起こりやすい傾向があります。
胆のうに炎症が起こった状態が胆のう炎で、発熱や吐き気、右上腹部の持続的な強い痛みを伴います。
膵炎
膵臓は、消化酵素やホルモン(インスリンなど)を分泌する臓器です。
膵炎は膵臓に炎症が起こる病気で、アルコールの過剰摂取や胆石が主な原因となります。
激しい腹痛が特徴で、みぞおちから左上腹部にかけて痛み、背中に突き抜けるように痛むこともあります。
痛みは非常に強く、締め付けられるような、あるいはえぐられるような痛みとして感じられることが多く、体を丸めると少し楽になることがあります。
吐き気、嘔吐、発熱などを伴い、重症化すると生命に関わることもあります。
大腸がん(間欠痛との関連)
大腸がんは、初期には自覚症状がないことがほとんどですが、進行してがんが大きくなり、腸管が狭くなったり詰まったりすると、便の通過が悪くなり、お腹の張りや腹痛が現れることがあります。
この腹痛は、内容物を押し出そうとする腸の動きによって起こり、波がある締め付けられるような痛み(間欠的な腹痛)として感じられることがあります。
便秘や下痢が続いたり、便に血が混じったり、便が細くなるなどの症状を伴うこともあります。
特に高齢の方で、締め付けられるような痛みが慢性的に続く場合は、大腸がんの可能性も念頭に置き、医療機関を受診することが重要です。
精神的な要因や自律神経の乱れ
脳と消化管は密接に連携しており、「脳腸相関」と呼ばれています。
ストレス、不安、うつ病などの精神的な要因は、この脳腸相関を介して腸の動きや知覚に影響を与え、腹痛や便通異常を引き起こすことがあります。
自律神経は体の様々な機能を調整しており、そのバランスが乱れることでも胃腸の働きに異常が生じ、締め付けられるような痛みを感じることがあります。
過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアの発症・悪化にも、精神的な要因や自律神経の乱れが深く関わっていると考えられています。
その他の原因
消化器系以外の病気が、締め付けられるような腹痛の原因となることもあります。
婦人科系の病気
女性の場合、子宮や卵巣などの婦人科系の病気が下腹部の痛みを引き起こすことがあります。
例えば、子宮内膜症、卵巣嚢腫捻転(卵巣のう腫がねじれる)、子宮筋腫などが考えられます。
これらの痛みは下腹部が中心ですが、締め付けられるような、あるいは強い痛みが突然現れることもあります。
月経周期に関連して痛みが強くなることもあります。
ウエストの締め付け
物理的にウエストがきつい衣服や下着などで締め付けられることで、血行が悪くなったり、お腹が圧迫されたりして、締め付けられるような不快感や痛みを感じることがあります。
これは病気ではありませんが、原因として考えられる可能性があります。
症状・状況別の痛みの特徴
お腹の締め付けられるような痛みが、どのような状況で、どのような他の症状を伴って現れるかによって、原因を推測するヒントが得られます。
波がある締め付けられる痛み
痛みが強くなったり弱くなったりを繰り返す、波のような締め付けられる痛みは「疝痛(せんつう)」と呼ばれます。
これは、腸管や胆管、尿管などの管状の臓器が、内容物を押し出そうとして強く収縮したり、詰まった部分より上流が拡張したりすることで起こる典型的な痛み方です。
- 考えられる主な原因:
- 腸閉塞(最も典型的)
- 急性胃腸炎
- 胆石疝痛(胆石発作)
- 尿管結石(この場合は通常、脇腹から下腹部への痛み)
- 過敏性腸症候群(痙攣性の痛みとして)
急に始まる強い痛み
突然、これまでに経験したことのないような強い締め付けられる痛みが始まった場合、緊急性の高い病気の可能性があります。
- 考えられる主な原因:
- 腸閉塞
- 急性膵炎
- 胆石発作(胆石疝痛)
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍穿孔(穴が開く)
- 卵巣嚢腫捻転(女性の場合)
- 腹部大動脈瘤破裂(非常に重篤で、激痛とともに血圧低下などを伴う)
下痢を伴う痛み
腹痛とともに下痢がある場合、感染症や機能性の問題が考えられます。
- 考えられる主な原因:
- 急性胃腸炎(ウイルス性、細菌性、食中毒など)
- 過敏性腸症候群(下痢型、混合型)
- 感染性大腸炎(O157など)
- 潰瘍性大腸炎・クローン病(炎症性腸疾患の活動期)
食後に起こる痛み
食事を摂った後に締め付けられるような痛みが起こる場合、胃や胆のうに関連した問題が考えられます。
- 考えられる主な原因:
- 胃潰瘍(特に胃潰瘍の場合)
- 機能性ディスペプシア
- 胆石症・胆のう炎(特に脂肪分の多い食事の後)
左側が痛む場合
お腹の左側(左上腹部、左下腹部)の痛みは、原因となる臓器によって異なります。
- 考えられる主な原因:
- 左上腹部: 胃、膵臓、脾臓、左の腎臓、大腸の左曲、横行結腸
- 胃潰瘍(左側に症状が出ることがある)
- 膵炎
- 機能性ディスペプシア
- 左下腹部: 下行結腸、S状結腸、直腸、左の卵巣・卵管(女性)、左の尿管
- 過敏性腸症候群
- S状結腸憩室炎
- 感染性大腸炎
- 潰瘍性大腸炎
- 便秘
- 左の卵巣・卵管の病気
- 左の尿管結石
痛みの部位と疑われる主な原因(締め付けられる痛みの場合)
痛みの主な部位 | 疑われる主な原因 | 特徴 |
---|---|---|
みぞおち周辺 | 機能性ディスペプシア、胃潰瘍、急性胃腸炎、膵炎 | 食後悪化、胸やけ、背中への放散、波があるなど |
へその周り | 急性胃腸炎、虫垂炎(初期)、小腸の病気、便秘 | 下痢や嘔吐を伴う、右下腹部へ移動、お腹の張りなど |
右上腹部 | 胆石症・胆のう炎、肝臓の病気 | 食後悪化、右肩や背中への放散、発熱など |
左上腹部 | 膵炎、胃の病気、脾臓の病気 | 背中への放散、アルコールとの関連など |
右下腹部 | 虫垂炎、大腸憩室炎、婦人科系の病気(女性) | 押すと響く、発熱、性周期との関連など |
左下腹部 | S状結腸憩室炎、便秘、過敏性腸症候群、婦人科系の病気(女性) | 便通異常、発熱、性周期との関連など |
お腹全体(移動) | 腸閉塞、腹膜炎 | 波がある、便通・排ガス停止、お腹の張り、発熱など(緊急性が高い) |
※ これはあくまで一般的な目安であり、痛みの部位だけで原因を特定することはできません。
お腹の締め付けられる痛み、どうする?(対処法)
痛みが比較的軽い場合や、一時的なものであると考えられる場合は、ご自身でできる対処法を試すことで症状が和らぐことがあります。
しかし、痛みが強い場合や他の症状を伴う場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
自分でできる応急処置
痛みが軽い場合や、原因がストレスや軽い胃腸の不調と考えられる場合は、以下の対処法を試してみてください。
- 安静にする: 体を休ませ、無理な動きは避けましょう。
楽な姿勢(膝を抱えるなど、お腹を丸める姿勢)をとると痛みが和らぐことがあります。 - 体を温める: 腹部を温かいタオルやカイロ(低温やけどに注意)などで優しく温めると、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減されることがあります。
ただし、炎症性の病気(虫垂炎や腹膜炎など)の可能性がある場合は、温めるとかえって悪化することがあるため、この後の「温めるのは大丈夫?注意すべきケース」を参照し、慎重に行うか避けてください。 - 水分補給: 下痢や嘔吐を伴う場合は、脱水を防ぐために少しずつ水分を補給しましょう。
冷たい飲み物は胃腸を刺激することがあるため、常温または温かい飲み物がおすすめです。 - 締め付けをなくす: 衣服やベルトなどによる物理的な締め付けがある場合は、緩めて楽な状態にしましょう。
- 市販薬の使用は慎重に: 痛み止め(鎮痛剤)の中には、胃腸を刺激するものや、痛みを紛らわせて重篤な病気の発見を遅らせる可能性のあるものがあります。
特に原因が不明な場合は、自己判断で市販薬を使用する前に、薬剤師に相談するか、医療機関を受診してください。
痙攣性の痛みに対しては、腸の動きを抑えるタイプの市販薬が効果的な場合もありますが、腸閉塞がある場合には使用してはいけません。
痛むときの食事の注意点
お腹が痛むときは、胃腸に負担をかけない食事が大切です。
- 消化の良いものを少量ずつ: おかゆ、うどん、柔らかく煮た野菜、白身魚、鶏ささみなど、消化吸収の良い食品を選びましょう。
一度にたくさん食べず、少量ずつ複数回に分けて摂るようにします。 - 胃腸を刺激する食品は避ける:
- 脂っこいもの: 脂肪は消化に時間がかかり、胃腸に負担をかけます。
揚げ物やバターを多く使った料理は避けましょう。 - 辛いもの、酸っぱいもの: 香辛料や酸味の強い食品は胃腸の粘膜を刺激します。
- 冷たいもの、熱すぎるもの: 極端な温度の飲食物は胃腸に刺激を与えます。
- カフェイン、アルコール: コーヒー、紅茶、エナジードリンク、アルコール飲料は胃酸の分泌を増やしたり、腸の動きを乱したりすることがあります。
- 食物繊維が多いもの: 不溶性食物繊維が多い食品(ゴボウ、きのこ類、玄米など)は消化に時間がかかり、お腹の張りや痛みを悪化させることがあります。
痛みが強い間は避けるか、少量にしましょう。 - よく噛んでゆっくり食べる: 食べ物をしっかりと噛むことで、消化の負担を減らすことができます。
- 食後すぐに横にならない: 食後すぐに横になると、胃酸が逆流しやすくなることがあります。
温めるのは大丈夫?注意すべきケース
腹部を温めることで痛みが和らぐことは多いですが、温めてはいけない、あるいは慎重になるべきケースがあります。
- 温めるのが有効な可能性が高いケース:
- 冷えやストレスによる胃腸の緊張
- 過敏性腸症候群(痙攣性の痛み)
- 生理痛による下腹部痛
- 便秘による腹痛
- 温めるのに注意が必要、または避けるべきケース:
- 痛みが非常に強い、または急激に悪化した: 虫垂炎、腸閉塞、腹膜炎など、炎症や臓器の破裂・穿孔など、緊急性の高い病気が考えられます。
炎症がある場合、温めると血行が良くなり、かえって炎症を悪化させる可能性があります。 - 発熱を伴う: 感染症や炎症性の病気が強く疑われます。
- 嘔吐が続く: 脱水の危険があるだけでなく、腸閉塞など重篤な病気の可能性があります。
- 血便や黒いタール状の便が出る: 消化管からの出血が考えられ、潰瘍や腫瘍の可能性があります。
- 便通や排ガスが完全に止まる: 腸閉塞の可能性が非常に高く、緊急性が高いです。
迷う場合は自己判断で温めることは避け、医療機関を受診しましょう。
病院に行くべき目安と受診する科
お腹の締め付けられる痛みが続く場合や、特定の症状を伴う場合は、医療機関を受診することが非常に重要です。
自己判断で様子を見すぎると、重篤な病気の発見が遅れる可能性があります。
こんな症状があればすぐに病院へ
以下の症状が一つでも当てはまる場合は、迷わずに救急外来を受診するか、緊急性の高い医療機関に連絡してください。
- 痛みが非常に強い、我慢できない
- 急に痛みが始まった
- 痛みが徐々に悪化している、あるいは痛みの性質が変わった
- 痛む場所が移動した(特にみぞおち→右下腹部など)
- 発熱を伴う(38℃以上など)
- 繰り返す嘔吐があり、水分も摂れない
- 血を吐いた
- 血便が出る、または真っ黒でタール状の便が出る
- 便通も排ガス(おなら)も完全に止まっている
- お腹全体が板のように硬くなっている
- 冷や汗が出ている、顔色が悪い、意識がもうろうとしている
- お腹が大きく膨らんできた
- 体重が急激に減少した
これらの症状は、腸閉塞、急性膵炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍穿孔、虫垂炎破裂、腹膜炎、重症感染症など、命に関わる可能性のある病気のサインかもしれません。
一刻も早い診断と治療が必要です。
痛みが続く、繰り返す場合
上記のような緊急性の高い症状がない場合でも、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関(かかりつけ医や消化器内科など)を受診しましょう。
- 痛みが数日以上続いている
- 痛みが良くなったり悪くなったりを繰り返す
- 痛みに加えて、下痢や便秘が慢性的に続いている
- 食欲不振がある
- 体がだるい、疲れやすい
- 市販薬を飲んでも痛みが改善しない
- 原因が分からず不安を感じている
受診する科
お腹の痛みの原因は多岐にわたるため、まずは消化器内科を受診するのが一般的です。
消化器内科では、胃、腸、肝臓、胆のう、膵臓などの病気を専門に診ています。
女性で下腹部の痛みが強い場合や、月経周期との関連が疑われる場合は、婦人科の病気が原因の可能性もあるため、婦人科の受診も検討しましょう。
どちらの科を受診すべきか迷う場合は、かかりつけ医や総合内科医に相談するか、問診時に医師に詳しく症状を伝えれば、適切な診療科への紹介を受けることができます。
消化器内科での検査・診断・治療
消化器内科を受診すると、医師はまず患者さんの症状、いつから、どのような痛みか、他に症状があるか、既往歴、内服薬、生活習慣などについて詳しく問診を行います。
その後、腹部を触診して、痛む場所や硬さ、腫れなどを確認します。
必要に応じて、以下のような検査が行われます。
検査名 | 目的・わかること |
---|---|
血液検査 | 炎症の程度、貧血の有無、肝機能、膵機能、腎機能などを評価します。 |
尿検査 | 尿路感染症や腎臓の病気(尿管結石など)の可能性を調べます。 |
腹部X線検査 | 腸管内のガスの貯留や拡張、便の貯留などを確認し、腸閉塞などの診断に役立ちます。 |
腹部超音波検査(エコー) | 肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、脾臓などの形や状態を確認し、胆石や腫瘍、炎症などを調べます。 |
腹部CT検査 | 腹部臓器の断面画像を詳しく確認し、炎症、腫瘍、結石、血管病変などを調べます。緊急時にも有用です。 |
胃内視鏡検査(胃カメラ) | 食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察し、炎症、潰瘍、ポリープ、腫瘍などを診断します。ピロリ菌検査も可能です。 |
大腸内視鏡検査(大腸カメラ) | 大腸全体の粘膜を直接観察し、炎症、ポリープ、腫瘍などを診断します。組織の一部を採取(生検)することも可能です。 |
これらの検査結果と問診、触診の結果を総合して診断が行われます。
診断に基づき、原因となっている病気に対する治療が開始されます。
治療は、薬物療法(胃酸抑制剤、整腸剤、炎症を抑える薬、抗生剤など)、食事指導、生活習慣の改善指導、場合によっては手術など、病気の種類や重症度によって異なります。
例えば、機能的な問題である過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアと診断された場合は、症状を和らげる薬(腸の動きを調整する薬、消化酵素、抗不安薬など)や、食事・生活習慣の改善指導、ストレスマネジメントなどが治療の中心となります。
一方、急性虫垂炎や腸閉塞など、緊急性の高い病気の場合は、入院して点滴治療や手術が必要になることがあります。
【まとめ】お腹の締め付けられる痛みは、体の声に耳を傾けて
お腹の締め付けられるような痛みは、多くの人が経験する身近な症状ですが、その原因は一時的な胃腸の不調から、迅速な治療が必要な重篤な病気まで様々です。
痛みの強さ、痛みの始まり方、痛みの部位、他の症状(発熱、嘔吐、下痢、血便など)の有無によって、考えられる病気は大きく異なります。
特に、痛みが非常に強い、急に始まった、痛みが悪化する、発熱や嘔吐を伴う、血便が出る、便通や排ガスが止まっているといった症状がある場合は、迷わずに救急外来を受診するなど、すぐに医療機関に相談することが最も重要です。
これらの症状は、放置すると命に関わる可能性のある病気のサインかもしれません。
緊急性の高い症状がない場合でも、痛みが続いたり、繰り返したりする場合は、原因を特定し、適切な診断と治療を受けるために、消化器内科などの医療機関を受診しましょう。
自己判断や市販薬の安易な使用は、原因の特定を遅らせたり、かえって症状を悪化させたりする可能性があります。
ご自身の体の声にしっかりと耳を傾け、不安な症状があれば専門家である医師に相談することが、健康を守る上で何よりも大切です。
この記事が、お腹の痛みに向き合うための一助となれば幸いです。
免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を推奨するものではありません。
個々の症状や健康状態については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。
この記事の情報に基づいて行われた行為によって生じたいかなる結果についても、当方は一切の責任を負いかねます。