偏頭痛の痛みを和らげる!自宅でできる治し方・対処法・予防策

偏頭痛は、突然襲ってくる激しい痛みが特徴で、日常生活に大きな支障をきたすつらい症状です。
脈打つような痛みや、吐き気、光・音への過敏などを伴うことが多く、仕事や学業、家事などが手につかなくなってしまうことも少なくありません。
この痛みは、適切に対処することで和らげることができ、さらに日々の生活を工夫することで痛みの頻度や強度を減らすことも可能です。
この記事では、偏頭痛の原因や症状から、今すぐできる対処法、効果的な予防策、そして専門家への相談が必要なケースや治療法まで、偏頭痛の「治し方」について詳しく解説します。
つらい偏頭痛に悩むあなたが、痛みをコントロールし、より快適な毎日を送るための一助となれば幸いです。

目次

偏頭痛とは?原因と主な症状

偏頭痛は、国際頭痛分類によって明確に定義されている一次性頭痛の一つです。
これは、他の病気が原因で起きる二次性頭痛とは異なり、頭痛そのものが病気として扱われます。
偏頭痛の特徴は、ズキンズキンと脈打つような、あるいはガンガンと響くような痛みが、頭の片側または両側に繰り返し起こることです。

偏頭痛の原因は完全に解明されていませんが、脳の血管や神経の機能的な問題が複雑に関与していると考えられています。
有力な説としては、脳血管の拡張や、三叉神経という顔や頭の感覚を司る神経の過敏化が挙げられます。
セロトニンという脳内の神経伝達物質の変動も関与していると考えられており、セロトニンの急激な増減が血管の収縮や拡張を引き起こし、痛みを誘発する可能性が示唆されています。

偏頭痛を誘発する因子(トリガー)は多様で、個人によって異なります。
代表的なトリガーには、以下のようなものがあります。

  • ストレス: ストレスそのものよりも、ストレスから解放された時に頭痛が起こりやすい「週末頭痛」が典型的です。
  • 気圧や天候の変化: 低気圧が近づくと頭痛が悪化するという方は多く、湿気や温度の変化も影響します。
  • ホルモン変動: 女性に多く見られ、月経周期に伴うエストロゲンの変動が関連しています。妊娠や出産、更年期も影響する可能性があります。
  • 特定の食品: チーズ、チョコレート、赤ワイン、加工肉、カフェイン(摂りすぎ、または断ちすぎ)などが挙げられますが、これも個人差が大きいです。
  • 睡眠: 寝すぎや寝不足、睡眠時間の不規則さもトリガーになり得ます。
  • 光や音、匂い: 強い光(特に点滅する光)、大きな音、特定の強い匂い(香水、たばこ、化学物質など)も頭痛を誘発することがあります。
  • 空腹: 食事を抜いたり、時間が空きすぎたりすることで血糖値が低下し、頭痛を誘発することがあります。

偏頭痛の主な症状は以下の通りです。

  • 痛みの性質: ズキンズキン、ガンガンといった拍動性の痛み。
  • 痛む場所: 頭の片側が多いですが、両側が痛むこともあります。場所が移動することもあります。
  • 痛みの強度: 中等度から重度で、日常生活に支障をきたすほどです。
  • 持続時間: untreated(未治療)の場合、4時間から72時間続くことがあります。
  • 悪化因子: 身体活動(歩く、階段を上るなど)によって痛みが悪化します。
  • 随伴症状:
    • 吐き気や嘔吐
    • 光過敏(まぶしさを感じる)
    • 音過敏(音がうるさく感じる)
    • 匂い過敏

これらの症状のうち、痛みの性質、強度、悪化因子、随伴症状のいずれか複数が組み合わさることで偏頭痛と診断されることが多いです。

また、偏頭痛患者さんの約20~30%は、頭痛が始まる前に「前兆」を伴います。
前兆で最も一般的なのは視覚的なもので、ギザギザした光が見える(閃輝暗点)、視野の一部が欠ける、光がちらつくといった症状が現れます。
前兆は通常5分から60分続き、その後頭痛が始まります。
前兆を伴わない偏頭痛の方が一般的です。

偏頭痛は発作的に起こり、痛みが引くと普段通りの生活に戻れることが多いですが、発作中の苦痛は非常に大きいです。
適切に原因を理解し、対処法や予防法を知ることが、偏頭痛と上手に付き合っていくために非常に重要となります。

偏頭痛が起きたら?今すぐできる治し方・対処法

偏頭痛の発作が起きてしまったら、できるだけ早く痛みを和らげ、悪化を防ぐための対処を行うことが重要です。
痛みが強くなってからでは薬が効きにくくなることもあります。
ここでは、発作が起きたときに試せる具体的な対処法を紹介します。

痛む部位を冷やす

偏頭痛の痛みは、頭蓋内の血管が拡張することによって引き起こされると考えられています。
そのため、痛む部位、特にこめかみや後頭部などを冷やすことで、血管を収縮させ、痛みを和らげる効果が期待できます。

具体的な方法としては、氷のうや保冷剤をタオルでくるみ、痛む場所に当てて安静にするのが良いでしょう。
冷たい刺激が神経の興奮を鎮める効果もあると言われています。
ただし、冷やしすぎると逆効果になることもあるため、心地よいと感じる程度に留めましょう。
首の後ろや、額を冷やすのも効果的な場合があります。
温めると血管が拡張し、痛みが悪化することがあるため、入浴やマッサージなど、頭部を温める行為は避けるのが一般的です。

静かで暗い場所で安静にする

偏頭痛の随伴症状として多いのが、光過敏や音過敏です。
明るい光や大きな音は痛みを増強させることがあります。
発作が起きたら、できるだけ刺激の少ない環境で過ごすことが推奨されます。

カーテンを閉めて部屋を暗くし、テレビや音楽を消して静かな環境を作りましょう。
横になって安静にすることで、頭部への血流が落ち着き、痛みが軽減されることがあります。
可能であれば、そのまま眠ってしまうのが一番の対処法となる場合もあります。
静かで暗い空間は、感覚過敏を和らげ、リラックス効果も期待できます。

偏頭痛に効くツボ

伝統医学では、頭痛に対して様々なツボが用いられてきました。
科学的な根拠は確立されていませんが、ツボへの刺激は血行促進やリラクゼーション効果をもたらし、結果として痛みの緩和につながる可能性が示唆されています。
偏頭痛の対処に用いられることがある代表的なツボをいくつか紹介します。

  • 太陽(たいよう): こめかみと目尻の間にあり、押すと少し凹む部分。頭痛薬の名前にもなっている有名なツボです。円を描くように優しく押したり揉んだりします。
  • 印堂(いんどう): 眉間の中央にあるツボ。精神的な緊張を和らげる効果も期待できます。
  • 風池(ふうち): 後頭部の生え際、首筋の左右にある太い筋肉の外側のくぼみ。首や肩のコリからくる頭痛にも用いられますが、偏頭痛にも有効な場合があります。
  • 合谷(ごうこく): 手の甲、親指と人差し指の骨が合わさる部分の少し窪んだところ。全身の様々な症状に用いられる万能なツボとされています。

これらのツボを刺激する際は、強く押しすぎず、心地よいと感じる程度の力加減で行いましょう。
セルフケアとして試すことはできますが、症状が改善しない場合や悪化する場合は、専門医に相談してください。
ツボ押しだけで偏頭痛が完治するわけではないことを理解しておくことが大切です。

薬による対処法(市販薬と処方薬)

偏頭痛のつらい痛みを和らげるには、薬物療法が最も効果的な場合が多いです。
痛みの程度や頻度に応じて、市販薬または医療機関で処方される薬を使用します。
重要なのは、痛みが軽いうちに、あるいは前兆が現れた段階でできるだけ早く服用することです。
痛みがピークに達してからでは、薬の効果が十分に発揮されないことがあります。

市販薬

軽度から中等度の偏頭痛に対しては、薬局やドラッグストアで購入できる市販の鎮痛剤が有効な場合があります。

分類 主な成分 特徴 注意点
NSAIDs系 イブプロフェン、ロキソプロフェン、アスピリン 炎症や痛みの原因物質の生成を抑える。比較的効果が強い。 空腹時の服用は胃腸に負担をかけることがある。長期連用は避けるべき。
その他 アセトアミノフェン 脳に作用して痛みの感覚を和らげる。NSAIDsに比べて胃腸への負担が少ない。 効果は比較的マイルドな場合がある。重度の肝機能障害がある場合は使用を避けるべき。
複合剤 鎮痛成分+カフェイン、胃粘膜保護成分など 複数の成分を組み合わせることで、痛みの緩和や随伴症状(吐き気など)にも対応。カフェインが痛みを和らげることも。 カフェインの摂りすぎに注意が必要。成分によっては眠気を催すことがある。

市販薬を使用する際は、添付文書をよく読み、用法・用量を守ることが重要です。
特に、鎮痛剤を飲みすぎると、かえって頭痛を引き起こす「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」になるリスクがあります。
月に10日以上鎮痛剤を服用している場合は注意が必要です。
市販薬で効果がない場合や、痛みが頻繁に起こる場合は、医療機関を受診することをお勧めします。

処方薬

中等度から重度の偏頭痛、または市販薬で効果が得られない場合には、医療機関で処方される専門的な偏頭痛治療薬が有効です。

最も代表的なのが「トリプタン系薬剤」です。
トリプタンは、偏頭痛の原因とされる脳血管の過度な拡張を抑えたり、三叉神経から放出される痛みの物質を抑えたりする作用があります。
痛みのメカニズムに直接作用するため、高い効果が期待できます。
錠剤のほか、点鼻薬や注射剤もあり、吐き気で内服が難しい場合でも使用できます。
ただし、血管を収縮させる作用があるため、特定の心臓病や血管系の病気がある方には使用できない場合があります。
医師の診断のもと、適切に処方してもらう必要があります。

その他、エルゴタミン製剤も血管収縮作用を持つ薬で、古い世代の偏頭痛治療薬です。
トリプタンが効かない場合などに検討されることがあります。

また、偏頭痛の頻度が多く(月に数回以上など)、日常生活に大きな支障が出ている場合には、発作が起きる頻度や強度を減らすための「予防薬」が処方されることもあります。
予防薬には、もともと他の病気(高血圧、てんかん、うつ病など)の治療に使われていた薬が転用されることが多いです。

  • β遮断薬(高血圧治療薬)
  • カルシウム拮抗薬(高血圧治療薬)
  • 抗てんかん薬
  • 抗うつ薬(三環系抗うつ薬など)

これらの予防薬は毎日継続して服用することで効果を発揮し、効果が出るまでに数週間から数ヶ月かかることもあります。

近年では、偏頭痛のメカニズムに深く関わるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質の働きを抑える新しいタイプの予防薬(CGRP関連抗体薬)も登場しています。
これらは注射薬で、月に1回または3ヶ月に1回投与することで、高い予防効果が期待されています。
従来の予防薬で効果が不十分な場合などに検討されますが、比較的高価です。

どの薬を使用するかは、頭痛の頻度、強度、随伴症状、既往歴、体質などを考慮して医師が総合的に判断します。
自己判断で薬を選ぶのではなく、必ず医師と相談して適切な治療法を見つけることが大切です。

偏頭痛による吐き気の対処法

偏頭痛に高頻度で伴う吐き気は、痛みに加えて非常に不快な症状です。
吐き気が強いと、鎮痛剤やトリプタンを内服しても吸収されずに効果が得られないこともあります。

吐き気がある場合は、無理に食事を摂ったりせず、安静にすることが第一です。
水分補給は脱水予防のために少量ずつ行うようにしましょう。

薬物療法としては、吐き気止め(制吐剤)を併用することがあります。
市販の吐き気止めもありますが、偏頭痛に伴う吐き気には、脳内の特定の物質に作用するタイプの吐き気止めが有効な場合があります。
これらは医師の処方箋が必要となります。
トリプタンにも吐き気を軽減する効果を持つものがありますが、吐き気が強い場合は、トリプタンの内服が難しいことがあるため、前述の点鼻薬や注射剤が選択肢となります。
また、吐き気止めとトリプタンを同時に処方されることもあります。

痛みが和らぐと吐き気も改善することが多いですが、吐き気自体がつらい場合は我慢せずに医師に相談し、適切な吐き気止めを処方してもらいましょう。

食事や飲み物で和らげる方法は?

特定の食事や飲み物が偏頭痛のトリガーとなることがある一方で、食事の内容や水分補給に気をつけることで、症状を和らげたり、予防につなげたりできる可能性もあります。

  • カフェイン: コーヒーやお茶に含まれるカフェインは、血管収縮作用があり、適量であれば偏頭痛の痛みを和らげる効果を持つことがあります。市販の鎮痛剤にもカフェインが配合されているものがあります。しかし、カフェインを日常的に多く摂取している人が急に摂取をやめると、離脱症状として頭痛が起こることがあります(カフェイン離脱性頭痛)。また、発作中にカフェインを摂りすぎると、かえって痛みが悪化する場合もあります。自身のカフェインとの関係性を把握し、適切に利用することが重要です。
  • 水分補給: 脱水は偏頭痛のトリガーとなり得ます。特に夏場や運動後などは、こまめに水分を補給することが大切です。水やカフェインの少ないお茶などを適量飲むことで、体の巡りを良くし、痛みの緩和につながる可能性があります。
  • 食事のタイミング: 空腹がトリガーとなる場合は、食事を抜かない、規則正しく食事を摂る、血糖値の急激な変動を避けるために間食を上手に利用するなどが有効です。
  • 避けた方が良い可能性のある食品: チーズ(特に熟成タイプ)、チョコレート、赤ワイン、加工肉(ハム、ソーセージ)、柑橘類、人工甘味料などがトリガーとして報告されています。ただし、これらの食品が全ての偏頭痛患者さんに悪影響を及ぼすわけではありません。自身のトリガーを特定することが最も重要です。頭痛ダイアリーをつけて、食事内容と頭痛発作の関係性を記録してみるのが有効です。

特定の食品を極端に避けるよりも、バランスの取れた食事を規則正しく摂ることが、健康全般にも偏頭痛予防にも良い影響を与えるでしょう。

偏頭痛を予防するための日常生活のポイント

偏頭痛の発作が頻繁に起こる場合、発作が起きたときの対処だけでなく、発作自体を起こりにくくするための予防策を講じることが非常に重要です。
日常生活の習慣を見直すことで、偏頭痛の頻度や強度を減らし、QOL(生活の質)を大幅に改善することが期待できます。

規則正しい生活と適切な睡眠時間

不規則な生活や睡眠パターンの乱れは、脳の働きに影響を与え、偏頭痛の強力なトリガーとなり得ます。
「寝すぎ」も「寝不足」も良くありません。
理想的なのは、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるという規則正しい生活リズムを保つことです。

適切な睡眠時間は個人差がありますが、一般的には1日7〜8時間程度が良いとされています。
週末に寝だめをする方も多いかもしれませんが、これも体内時計を狂わせ、週末頭痛の原因となることがあります。
休日も平日と大きく変わらない時間に起きるように心がけましょう。
夜更かしを避け、寝る前にスマホやパソコンの使用を控えるなど、質の良い睡眠をとるための工夫も有効です。

ストレスとの付き合い方

ストレスは偏頭痛の最も一般的なトリガーの一つですが、ストレスそのものよりも、緊張が和らいだ時に頭痛が起こりやすいという特徴があります(リラクゼーション頭痛)。
例えば、仕事で忙しかった週の週末に頭痛が起こる、といったケースです。

ストレスを完全に避けることは難しいですが、ストレスに上手に対処する方法を身につけることが重要です。

  • リラクゼーション: 適度な休息、趣味の時間を持つ、アロマセラピー、ぬるめのお風呂に入る、深呼吸、瞑想などが有効です。
  • 適度な運動: ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどの有酸素運動は、ストレス解消になり、脳内のセロトニン分泌を促進して偏頭痛予防につながると言われています。ただし、激しい運動はかえって頭痛を誘発することもあるため、無理のない範囲で行いましょう。
  • 時間の管理: スケジュールを詰め込みすぎず、休息やリラックスできる時間を確保することも大切です。

自分なりのストレス解消法を見つけ、日々の生活に取り入れることが、偏頭痛予防につながります。

偏頭痛の誘発因子を知り避ける

前述したように、偏頭痛のトリガーは個人によって異なります。
自分の偏頭痛がどのような因子によって誘発されやすいのかを知ることが、効果的な予防策を講じる上で非常に重要です。

自分のトリガーを特定するためには、「頭痛ダイアリー」をつけることが有効です。
頭痛が起きた日時、痛みの程度、場所、随伴症状だけでなく、その日の天気、睡眠時間、食事内容、飲酒、月経周期、ストレスの状況、いつもと違う出来事などを記録します。
数ヶ月間記録することで、自分の偏頭痛パターンやトリガーが見えてくることがあります。

記録を元に特定のトリガーが分かったら、できるだけそれを避けるように心がけましょう。
例えば、特定の食品がトリガーであればそれを控える、睡眠不足や寝すぎがトリガーであれば睡眠時間を一定にする、気圧の変化に弱い場合は天気予報を参考に予定を調整するといった対策が考えられます。
ただし、トリガーを避けすぎることによって生活の質が低下しないように注意も必要です。

マグネシウムなど栄養素との関係

いくつかの研究で、特定の栄養素の不足が偏頭痛と関連している可能性が示唆されています。
特に注目されているのがマグネシウムです。
マグネシウムは脳の神経機能や血管の働きに関与しており、マグネシウム濃度が低いと偏頭痛が起こりやすいという報告があります。
マグネシウムを補給することで、偏頭痛の頻度や強度が改善したという研究結果もあります。

マグネシウムは、ナッツ類、種実類、大豆製品、海藻類、葉物野菜などに多く含まれています。
バランスの取れた食事でこれらの食品を積極的に摂取することが推奨されます。
食事からの摂取が難しい場合は、サプリメントを利用することも選択肢の一つですが、サプリメントを使用する際は医師や薬剤師に相談することをお勧めします。

マグネシウム以外にも、ビタミンB2(リボフラビン)も偏頭痛予防に有効である可能性が示唆されており、医療機関でビタミンB2製剤が処方されることもあります。

ただし、特定の栄養素の摂取だけで偏頭痛が完全に予防できるわけではありません。
あくまで補助的な手段として考え、基本的な生活習慣の改善と組み合わせることが重要です。

専門家へ相談を!病院に行くべきケースと治療

偏頭痛はつらい症状ですが、多くの場合は命に関わる病気ではありません。
しかし、頭痛の中には、くも膜下出血や脳腫瘍など、命に関わる危険な病気が原因で起こる二次性頭痛も含まれています。
自己判断で市販薬に頼りすぎるのではなく、不安を感じる場合や、特定の症状が現れた場合は、ためらわずに医療機関を受診することが非常に重要です。

どのような症状が出たら病院へ?

以下のような症状を伴う頭痛は、偏頭痛ではない他の重篤な病気が隠れている可能性があるため、速やかに医療機関(特に脳神経内科や脳神経外科)を受診する必要があります。

  • 突然、今までに経験したことのないような激しい頭痛: 「バットで殴られたような」「雷に打たれたような」と表現されるような、突発的で非常に強い頭痛は、くも膜下出血などの緊急性の高い疾患の可能性を示唆します。
  • 頭痛に加えて、以下のような神経症状を伴う場合:
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出てこない、ろれつが回らない(失語)
    • 物が二重に見える(複視)、視野が狭くなる
    • 意識がもうろうとする、意識を失う
    • けいれん
    • 高熱や項部硬直(首が硬くなって前に曲げにくい)
  • 今まで頭痛持ちでなかったのに、急に頭痛が始まった場合
  • 頭痛のパターンがいつもと違う場合: 痛みの性質や場所、強さ、頻度などが明らかに変化した場合。
  • 体を動かしたり、咳やくしゃみをしたりすると痛みが強くなる場合
  • 持病がある(がんなど)方が、新しい頭痛を訴える場合
  • 50歳以降で初めて頭痛が始まった場合
  • 市販薬が全く効かない、または飲む頻度が増えている場合
  • 頭痛によって日常生活や仕事に大きな支障が出ている場合

これらの症状は「危険な頭痛」のサインである可能性があります。
迷わず救急車を呼ぶか、救急病院を受診してください。

偏頭痛の診断を受けている場合でも、上記の危険な頭痛のサインが現れた場合は、いつもの偏頭痛とは違う原因が考えられるため、医療機関を受診する必要があります。

また、命に関わる緊急性はないとしても、偏頭痛の頻度が高い(月に数回以上)、痛みが強く日常生活に支障が出ている、市販薬では十分にコントロールできないといった場合は、我慢せずに専門医に相談することをお勧めします。
適切な診断と治療を受けることで、頭痛の苦痛から解放される可能性があります。

偏頭痛の専門的な診断と治療法

医療機関では、まず医師による詳しい問診が行われます。
頭痛の始まり方、痛みの性質、頻度、持続時間、痛む場所、随伴症状(吐き気、光・音過敏など)、頭痛が起こるきっかけ(トリガー)、頭痛の経過、既往歴、家族歴、使用している薬など、頭痛に関する様々な情報が診断の手がかりとなります。
前述の頭痛ダイアリーをつけている場合は、医師に提示すると診断の手助けになります。

次に、神経学的診察が行われます。
手足の動きや感覚、反射などを調べ、脳や神経に異常がないかを確認します。

危険な頭痛の可能性が疑われる場合や、診断を確定するために、画像検査(頭部CTやMRIなど)が行われることもあります。
ただし、偏頭痛自体は画像検査で異常が見つかる病気ではないため、偏頭痛の診断のためにルーチンで画像検査が行われるわけではありません。
他の病気を否定するために行われることが多いです。

診断が確定したら、個々の症状やライフスタイルに合わせた治療法が提案されます。
偏頭痛の治療には、痛みが起きた時に痛みを和らげる「急性期治療」と、頭痛の頻度や強度を減らす「予防療法」があります。

急性期治療:
痛みが起きた時に服用する薬です。
市販薬で効果が不十分な場合は、トリプタン系薬剤やエルゴタミン製剤などが処方されます。
医師は、痛みの強さや随伴症状、他の薬との飲み合わせなどを考慮して最適な薬を選択します。
痛みが軽いうちに服用する、吐き気がある場合は内服以外の剤形を選ぶなど、薬の効果を最大限に引き出すためのアドバイスも受けられます。

予防療法:
偏頭痛の頻度が高い場合や、急性期治療薬が効きにくい、または副作用で使用できない場合などに検討されます。
予防薬(β遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗てんかん薬、抗うつ薬など)を毎日継続して服用することで、頭痛発作の回数を減らし、痛みの程度を軽減することを目指します。
効果が出るまでに時間がかかること、副作用が出ることがあることなども理解した上で治療を進めます。

近年登場したCGRP関連抗体薬は、これまでの予防薬とは異なるメカニズムで作用し、高い効果が期待されています。
注射による投与が必要ですが、重症で難治性の慢性偏頭痛の患者さんにとって新しい選択肢となっています。

薬物療法の他に、生活習慣の改善指導(規則正しい生活、ストレス管理、トリガーの特定と回避など)も重要な治療の一部です。
ボツリヌス療法の適応となる難治性の慢性偏頭痛もあります。

専門医(特に脳神経内科医)は、頭痛の診断と治療に関する専門的な知識と経験を持っています。
自身の頭痛について正確な診断を受け、最新の治療法も含めた多様な選択肢の中から最適な治療計画を立ててもらうことが、偏頭痛の苦痛を軽減し、生活の質を向上させるための最も確実な方法と言えるでしょう。
一人で悩まず、専門医の力を借りることが大切です。

まとめ

偏頭痛は、多くの人が経験する一般的な症状でありながら、そのつらい痛みによって日常生活の質を著しく低下させる疾患です。
しかし、偏頭痛は決して「治らないもの」ではなく、原因を理解し、適切な「治し方」、つまり効果的な対処法や予防策を講じることで、痛みをコントロールし、発作の頻度や強度を減らすことが十分に可能です。

この記事では、偏頭痛の特徴や原因、発作が起きたときに自分でできる対処法(冷やす、安静にする、ツボなど)、薬物療法(市販薬と処方薬の使い分け)、吐き気への対処、そして食事や飲み物による緩和策について解説しました。
さらに、偏頭痛の予防に不可欠な生活習慣の見直し(規則正しい生活、ストレス管理、誘発因子の特定と回避、栄養素の補給など)についても詳しくご紹介しました。

最も重要な点は、自己判断に頼りすぎず、必要に応じて専門家の助けを借りることです。
特に、今まで経験したことのないような激しい頭痛や、頭痛に加えて麻痺や意識障害などの神経症状が現れた場合は、くも膜下出血など命に関わる病気のサインである可能性があるため、ためらわずに救急医療機関を受診してください。
また、偏頭痛の頻度が多くてつらい場合や、市販薬では効果が不十分な場合は、我慢せずに脳神経内科などの専門医に相談することをお勧めします。

医師は、あなたの頭痛のパターンを正確に診断し、個々の症状やライフスタイルに合わせた最適な治療法(急性期治療薬や予防薬)を提案してくれます。
最新の治療法も含め、多様な選択肢の中からあなたに合った方法を見つけることで、偏頭痛の苦痛を軽減し、より活動的で快適な毎日を送ることが可能になります。

偏頭痛は、あなた一人で抱え込む必要のある問題ではありません。
この記事で得た知識を参考に、まずは今すぐできる対処法や予防策を試してみてください。
そして、つらいと感じたらいつでも専門医に相談し、あなたの偏頭痛と上手に付き合っていくための最善の方法を見つけていきましょう。

免責事項: この記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。
個々の症状については、必ず医師や専門家にご相談ください。
この記事の情報に基づいて行われた行為によって生じた結果について、当方は一切の責任を負いません。

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