肘の内側が痛い!原因は?ゴルフ肘?自分でできる対処法

「肘の内側が痛い」と感じたとき、それは単なる筋肉痛かもしれませんし、特定の動作による炎症、あるいは関節や神経の問題など、様々な原因が考えられます。特に手首を曲げたり、指を使ったりする動作で痛みを感じやすいのが特徴です。放置すると痛みが悪化したり、日常生活に支障をきたしたりすることもあるため、原因を正しく理解し、適切な対処をすることが大切です。
この記事では、肘の内側が痛む原因から、自分でできる対処法、そして医療機関を受診すべき目安までを詳しく解説します。

肘の内側の痛みは、主に骨、筋肉、腱、神経などの組織に負担がかかることで発生します。その原因は、スポーツ、日常生活での繰り返し動作、または特定の病気によるものなど多岐にわたります。痛みの性質や、どんな時に痛むかによって、ある程度の原因を推測することができます。

スポーツによる肘の痛み(ゴルフ肘、野球肘など)

スポーツが原因で肘の内側が痛む代表的なものに、「ゴルフ肘」と「野球肘」があります。これらは、特定のスポーツ動作によって肘周辺の組織に過度な負荷がかかることで起こるスポーツ障害です。

ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)

ゴルフのスイング、特にダウンスイングからインパクトにかけて、手首を内側に曲げたり、前腕を回内(手のひらを下に向ける)させたりする動作を繰り返すことで、肘の内側にある骨の隆起部(上腕骨内側上顆)に付着する筋肉や腱に炎症が起こります。この部分には、手首を曲げたり、指を握ったりする際に使う前腕の屈筋群が付着しています。ゴルフだけでなく、テニス(フォアハンドストローク)、重いものを持ち上げる、タオルを絞るなどの日常動作でも起こりえます。中年以降の方に多く見られますが、原因となる動作があれば年齢に関わらず発症する可能性があります。

野球肘

野球肘は、特に投球動作を繰り返すことで発生する肘の障害の総称です。成長期の子供に多く見られますが、成人でも起こります。肘の内側の痛みは、投球時の牽引力によって、内側側副靭帯への負担や、上腕骨内側上顆の剥離骨折、骨端線離開(成長軟骨の損傷)、あるいは関節の軟骨損傷などが原因となります。成長期の場合は骨の成長が関わるため、成人とは異なる病態を示すことがあり、特に注意が必要です。投球のフェーズ(テークバック、加速期、リリース、フォロースルー)によって、痛む場所や原因が異なりますが、肘の内側痛は主に投球の加速期やリリース時に発生しやすい傾向があります。野球以外にも、槍投げやバレーボールのアタックなど、投球やオーバーハンドスローに類似した動作を繰り返すスポーツで発生することがあります。

ゴルフ肘と野球肘はどちらも肘の内側が痛む病気ですが、原因となる動作や影響を受ける組織、特に成長期か成人かで病態が異なる場合があります。

日常生活での負荷による痛み(スマホ肘、PC作業)

スポーツをしていない方でも、日常生活での繰り返しの動作や不自然な姿勢が原因で肘の内側が痛むことがあります。現代社会において特に増えているのが、「スマホ肘」やPC作業による肘の痛みです。

スマホ肘

スマートフォンを長時間使用する際に、肘を曲げたまま保持したり、不自然な角度で操作したりすることが原因で起こる肘の痛みを指す通称です。特に、小指側から肘にかけてのラインに痛みやしびれを感じやすいのが特徴です。これは、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫されたり、牽引されたりすることによって生じる可能性があります。尺骨神経は肘の「funny bone」(ぶつけるとビリビリ電気が走る部分)のすぐ後ろを通っており、この部分が長時間圧迫されたり、肘を深く曲げたままにすることで神経が引っ張られたりすることで症状が現れます。スマホ操作以外にも、長時間の電話や、肘をテーブルについて作業する習慣なども原因になり得ます。

PC作業

長時間のPC作業も、肘の内側の痛みの原因となり得ます。特に、キーボード操作やマウス操作で手首を繰り返し動かすことや、不自然な姿勢で作業を続けることが前腕の筋肉に負担をかけます。肘掛けに肘を強く押し付けたり、キーボードやマウスの位置が適切でなかったりすることも、肘への負荷を増大させます。手首や指の屈伸、前腕の回内・回外といった動作は、肘の内側に付着する筋肉が関与するため、これらの筋肉の使いすぎや疲労が炎症を引き起こすことがあります。また、不適切な椅子や机の高さも、体全体の姿勢を崩し、結果的に肘や肩、首への負担を増大させる要因となります。

このように、スポーツだけでなく、日常的に行う動作の中にも、肘の内側に負担をかける要因は潜んでいます。これらの動作は無意識に行われていることが多いため、自身の習慣を見直すことが痛みの予防や改善につながります。

関節や神経の病気(尺骨神経障害、関節炎など)

肘の内側の痛みは、スポーツや日常の負荷だけでなく、特定の病気が原因で起こることもあります。これには、神経の圧迫や炎症、関節自体の問題などが含まれます。

尺骨神経障害(肘部管症候群)

尺骨神経は、首から腕を通り、肘の内側の「肘部管」と呼ばれるトンネルのような場所を通過して、手首から薬指と小指に繋がっています。この肘部管で尺骨神経が圧迫されたり、牽引されたりすることで起こるのが尺骨神経障害、特に肘部管症候群です。原因としては、先述したスマホの長時間使用や肘のつき癖などの外的要因のほか、肘の変形(変形性肘関節症)、骨折後の変形、ガングリオンなどの腫瘍によって肘部管が狭くなることなどが挙げられます。症状としては、肘の内側の痛みに加え、薬指と小指のしびれ、感覚低下、進行すると指の筋肉が痩せて力が入りにくくなる(鉤爪指変形など)ことがあります。安静時や夜間に症状が悪化することもあります。

変形性肘関節症

肘関節の軟骨がすり減り、関節が変形することで痛みが生じる病気です。長年の使用や、過去の怪我(骨折など)が原因となることが多いですが、スポーツ選手など肘に継続的な強い負荷がかかる人にも起こりやすい傾向があります。進行すると、肘の曲げ伸ばしが悪くなったり、動かすとゴリゴリといった音がしたりすることもあります。痛みは、関節を動かした時や、安静時にも現れることがあります。変形が進むと、関節の骨棘(とげのような突起)が尺骨神経を刺激し、尺骨神経障害を併発することもあります。

関節リウマチなどの炎症性関節炎

関節リウマチは全身の関節に炎症を引き起こす自己免疫疾患ですが、肘関節も罹患することがあります。炎症によって関節の滑膜が増殖し、軟骨や骨が破壊されることで痛み、腫れ、熱感、動きの制限などが生じます。朝のこわばりが特徴的です。その他、痛風や偽痛風といった結晶性関節炎が肘に起こることも稀にあります。これらの病気による痛みは、安静時や夜間にも強く現れることがあります。

その他の原因

稀に、肘の内側付近の血管やリンパ節の問題、あるいは首の神経(頚椎症など)からくる放散痛として肘の内側が痛むこともあります。原因がはっきりしない場合や、通常の対処法で改善しない場合は、これらの可能性も考慮して専門医に相談することが重要です。

肘の内側の痛みは、どのように現れるか、どのような動作で痛むかによって、原因を推測するための重要な手がかりとなります。自分の症状を詳しく観察し、以下のチェック項目を参考にしてみてください。

押すと痛い、曲げると痛い、伸ばすと痛い

痛みが特定の動作や部位への刺激によって誘発される場合、原因となる組織や病態を絞り込むことができます。

* 押すと痛い: 肘の内側の骨の隆起部(上腕骨内側上顆)の少し下のあたりを指で押すと痛みが強い場合、ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)の可能性が高いです。炎症を起こしている腱の付着部が圧痛として現れます。
* 手首を曲げたり、指を握ったりすると痛い: これらの動作は前腕の屈筋群を使います。この筋肉が肘の内側で炎症を起こしている場合(ゴルフ肘)、動作によって痛みが誘発されます。特に、抵抗をかけながら手首を曲げる動作(例えば、手のひらを上に向け、反対の手で手首を下に押さえつけながら、手首を上に曲げようとする)で痛みが強くなる場合は、ゴルフ肘の可能性がさらに高まります。
* 肘を曲げると痛い: 肘関節そのものに問題がある場合(変形性肘関節症、関節炎など)、関節の動きに伴って痛みが生じます。また、尺骨神経が牽引されることで痛む場合もあります。野球肘の場合、肘を最大まで曲げた際に痛むことがあります。
* 肘を伸ばすと痛い: 肘関節の伸展に伴う痛みも、関節の問題や、筋肉・腱の炎症が原因で起こることがあります。無理に伸ばそうとすると痛む、最後まで伸ばしきれない、といった症状が見られることがあります。
* 物を持つ、投げる動作で痛い: 物を持つ際に手首を曲げたり、指を握ったりする動作で痛む場合はゴルフ肘が、ボールを投げる動作で痛む場合は野球肘が強く疑われます。日常生活での動作との関連性も重要なチェックポイントです。

何もしていないのに痛む、骨の痛みが気になる

安静にしている時や、夜間にもズキズキと痛む場合、あるいは肘の骨そのものが痛むと感じる場合は、より注意が必要です。

* 安静時痛・夜間痛: 炎症が強い場合や、関節の病気(関節炎、変形性関節症の進行)、あるいは神経痛(尺骨神経障害)がある場合、安静にしていても痛みを感じることがあります。特に夜間の痛みは、炎症や神経の圧迫が原因で睡眠を妨げることもあるため、医療機関を受診する目安となります。
* 骨の痛みが気になる: 押すと骨そのものが痛む、あるいは骨がきしむような音がするといった場合、骨の炎症、骨折(疲労骨折や剥離骨折など)、あるいは骨の変形(変形性関節症による骨棘など)の可能性があります。特に成長期に投球動作で骨の痛みを訴える場合は、野球肘の重症例(骨端線離開など)の可能性も考慮し、速やかに医療機関を受診する必要があります。

しびれやだるさを伴う場合

痛みに加えて、しびれやだるさを感じる場合、神経が圧迫されている可能性があります。

* しびれ: 肘の内側から薬指と小指にかけてしびれがある場合、尺骨神経が圧迫されている可能性が高いです(尺骨神経障害/肘部管症候群)。しびれは、肘を曲げた状態(例:長時間のスマホ操作、寝ている間に肘を曲げている)で悪化しやすい傾向があります。進行すると、指の細かい動きがしにくくなったり、指の筋肉が痩せてきたりすることがあります。
* だるさ: 肘や前腕全体がだるく感じる場合、筋肉の疲労や血行不良、あるいは軽度の神経障害の可能性があります。痛みが強い場合や、しびれを伴う場合は、単なる疲労とは異なる原因が考えられます。
* 握力低下: 指の筋肉を支配する神経(尺骨神経や正中神経など)に問題がある場合、握力が低下することがあります。特に薬指や小指で物が掴みにくい、細かい作業がしにくいといった症状が現れる場合は、神経障害の進行が疑われます。

これらの症状を複数伴う場合や、症状が徐々に悪化している場合は、自己判断せず医療機関を受診することをお勧めします。特にしびれが持続したり悪化したりする場合は、神経の不可逆的な損傷を防ぐためにも早期の診断と治療が必要です。

肘の内側の痛みが比較的軽度な場合や、医療機関を受診するまでの一時的な対処として、自宅でできるケアがいくつかあります。ただし、これらの対処法は症状を緩和するためのものであり、根本的な治療にはならない場合があることを理解しておきましょう。痛みが強い場合や、長期間改善しない場合は、必ず専門医の診察を受けてください。

痛む時はまず安静にする(休ませる)

痛みの原因が炎症である場合、最も基本的な対処法は患部を安静に保つことです。痛みを引き起こす動作を避け、肘や前腕にかかる負担を最小限に抑えましょう。

  • 痛む動作を避ける: ゴルフや野球であれば、痛みが引くまで練習を中止します。日常生活であれば、タオルを絞る、重いものを持つ、長時間のPC作業やスマホ操作など、痛みを誘発する動作を意識的に減らします。
  • サポーターや装具の利用: 痛む部位を固定したり、負荷を軽減したりするために、肘用のサポーターやバンド、手首の装具(シーネ)を使用することも有効です。特に、ゴルフ肘の場合は、前腕の痛む部分より少し手首側にバンドを巻くことで、筋肉の付着部への牽引力を軽減する効果が期待できます。サポーターについては後述します。
  • 十分な休息: 患部だけでなく、体全体を休ませることも重要です。睡眠を十分にとり、疲労を回復させることで、組織の修復を促します。

無理に痛みを我慢して動作を続けると、炎症が悪化したり、回復が遅れたりする可能性があります。痛む時は「休む」という選択をためらわないようにしましょう。

患部を冷やす(アイシング)

急性の痛みや炎症(腫れ、熱感など)がある場合は、患部を冷やす(アイシング)が効果的です。アイシングは、血管を収縮させて血流を抑え、炎症の拡大を防ぎ、痛みを和らげる効果があります。

  • アイシングの方法: 氷嚢や、氷と少量の水を入れたビニール袋を準備します。凍傷を防ぐために、必ずタオルなどで包んでから患部に当ててください。
  • 時間と頻度: 1回につき15分から20分程度を目安に冷やします。皮膚の色や感覚に注意し、冷たすぎると感じたり、感覚がなくなってきたりしたら中止します。1日に数回(2〜3時間おきなど)行うと効果的です。
  • 注意点: 痛みが慢性的な場合(熱感や腫れがない場合)や、血行障害がある場合は、アイシングは適していません。また、冷やしすぎは逆効果になることもありますので注意が必要です。

効果的なストレッチと軽い運動

痛みが落ち着いてきたら、硬くなった筋肉をほぐし、血行を改善するためのストレッチや、筋力を維持・回復させるための軽い運動を取り入れましょう。ただし、痛みを我慢して行うのは逆効果です。必ず痛みのない範囲で行い、様子を見ながら徐々に負荷を増やしてください。

ストレッチ

肘の内側の痛みに効果的なストレッチは、主に前腕の屈筋群を伸ばすものです。

  1. 前腕屈筋群のストレッチ:
    * 腕を前に伸ばし、手のひらを上に向ける。
    * 反対の手で、伸ばした手の指先(手のひら側)を持ち、手首をゆっくりと下(手の甲側)に曲げるように引っ張る。
    * 前腕の内側がストレッチされているのを感じながら、20秒から30秒キープ。
    * これを数回繰り返す。
    * ※肘はできるだけ伸ばした状態で行うのが効果的ですが、痛い場合は軽く曲げても構いません。
  2. 前腕回内・回外のストレッチ:
    * 肘を90度に曲げ、手のひらを下に向けた状態(回内)から、ゆっくりと手のひらを上に向ける(回外)動作を繰り返す。
    * あるいは、手首だけを内側、外側にひねる動作を行う。
    * 痛みが出ない範囲で、ゆっくりと丁寧に行う。

軽い運動

痛みが軽減してきたら、筋肉の萎縮を防ぎ、機能を回復させるための軽い運動を取り入れます。最初は痛みのない範囲で、負荷をかけない運動から始めます。

  1. 等尺性運動: 痛む部位に力を入れても、関節の動きを伴わない運動です。例えば、机の角に手のひら側を当てて、肘の内側(前腕屈筋群)に軽く力を入れる、といった方法があります。筋肉に刺激を与えることができますが、痛みが出ない範囲で行います。
  2. 抵抗運動(超軽い負荷から): 痛みがほとんどなくなってきたら、ペットボトルや軽いダンベル(500g〜1kg程度)を持ち、手首の屈曲・伸展、前腕の回内・回外といった動作をゆっくりと行います。最初は軽い回数から始め、徐々に回数や負荷を増やしていきます。
  3. 握力トレーニング: ゴルフボールやハンドグリッパーなどを使って握力を鍛えることも、前腕の筋肉を強くし、再発予防につながります。最初は弱い負荷から始め、痛みが出ないように注意します。

ストレッチや運動は、痛みが強い時期に行うと逆効果になることがあります。必ず痛みの程度に合わせて行い、不安がある場合は専門家(医師や理学療法士)に相談してください。

痛みを和らげるサポーターの選び方

肘の痛みを軽減し、再発を予防するためにサポーターを使用することは有効な手段の一つです。サポーターには様々な種類があり、目的や痛みの原因に合わせて選ぶことが重要です。

サポーターの種類と特徴を以下の表にまとめました。

サポーターの種類 特徴 主な効果 適している症状・原因
エルボーバンド(バンドタイプ) 肘の痛む部分(上腕骨内側上顆)より少し手首側の前腕に巻くバンド。特定の筋肉群をピンポイントで圧迫。 腱の付着部への牽引力軽減、痛みの緩和。 ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)など、筋肉や腱の付着部痛が主な原因の場合。
エルボースリーブ(スリーブタイプ) 肘全体を覆う筒状のサポーター。伸縮性のある素材が使われることが多い。 関節の保温、適度な圧迫による安定化、むくみの軽減。 全体的なだるさや軽い痛み、関節の不安感がある場合。スポーツ中の予防や保温にも。
ハードサポーター(固定タイプ) 金属やプラスチックのステー(支え)が入っていたり、マジックテープで強力に固定できるタイプ。 関節の動きの制限、強力な固定・安定化。 痛みが強く、安静が必要な時期。関節の不安定性が高い場合。スポーツ復帰初期の保護。
神経圧迫軽減サポーター 尺骨神経の通り道を避けたり、特定の部位の圧迫を和らげる構造になっているもの。クッション材が入っていることも。 尺骨神経への圧迫・牽引の軽減、しびれの緩和。 尺骨神経障害(肘部管症候群)による痛みやしびれがある場合。

サポーターを選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。

  • サイズ: 自分に合ったサイズを選ぶことが最も重要です。きつすぎると血行不良やしびれの原因になりますし、緩すぎると十分な効果が得られません。
  • 素材: 通気性や肌触りの良い素材を選びましょう。長時間の装着でも快適に過ごせます。
  • 装着感: サポーターを装着した状態で、痛む動作が軽減されるか確認しましょう。試着できる場合は試着することをお勧めします。
  • 目的: 痛みの緩和、予防、固定、保温など、サポーターを使用する目的に合わせて選びましょう。

サポーターはあくまで補助的なツールであり、根本的な治療ではありません。サポーターに頼りすぎず、原因に対する適切な治療やリハビリテーションと併用することが大切です。

日常生活での注意点と再発予防

痛みが軽減した後も、再発を防ぐために日常生活でいくつかの点に注意する必要があります。原因となった動作や習慣を見直し、肘への負担を減らす工夫を取り入れましょう。

  • 動作の改善:
    • 重い物の持ち方: 手首を立てたまま持ったり、肘だけで持ち上げようとせず、体全体を使うように意識します。前腕や手首の特定の筋肉に集中して負荷がかからないように分散させます。
    • PC・スマホ操作: 長時間同じ姿勢を避け、定期的に休憩をとります。PC作業では、キーボードやマウスを操作する際に手首を不自然に曲げないように、リストレストなどを活用するのも良いでしょう。スマホを使用する際は、肘を深く曲げたままにしない、肘をテーブルにつかないなど、尺骨神経への負担を減らすように注意します。
    • 繰り返しの動作: 工場でのライン作業や、特定の趣味(編み物、DIYなど)で繰り返しの動作が多い場合は、こまめに休憩を挟んだり、作業方法を見直したりします。
  • 適切な休憩: 長時間同じ動作を続けず、1時間に一度は手を休めたり、簡単なストレッチを行ったりする習慣をつけましょう。
  • ストレッチと筋力トレーニングの継続: 痛みがなくなった後も、前腕の筋肉を中心に、ストレッチや軽いトレーニングを継続することで、筋肉の柔軟性を保ち、強化し、肘への負担に耐えられる体を作ります。
  • 体のケア: 体全体のコンディショニングも重要です。肩や首、背中など、肘以外の部位の柔軟性や筋力のバランスが崩れていると、結果的に肘に負担がかかることがあります。全身のストレッチや適度な運動を心がけましょう。
  • 姿勢の改善: 特にPC作業時など、悪い姿勢は体の一部分に負担を集中させる原因となります。椅子や机の高さを調整し、正しい姿勢を保つように意識します。
  • 初期の違和感に気づく: 痛みが強くなる前に、少しでも違和感や軽い痛みを感じたら、無理をせず休息をとったり、アイシングをしたりするなど、早めに対処することが再発予防につながります。

日常生活における小さな工夫の積み重ねが、肘の痛みの再発を防ぎ、健康な肘を維持するために非常に重要です。

自分でできる対処法を試しても痛みが改善しない、あるいは痛みが強い場合、または特定の症状を伴う場合は、必ず医療機関を受診して専門医の診断を受ける必要があります。自己判断で対処を続けると、症状が悪化したり、回復が遅れたりする可能性があります。

医療機関を受診する目安となる症状

以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診することを強くお勧めします。

  • 痛みが非常に強い: 日常生活が困難なほどの強い痛みがある場合。
  • 安静にしていても痛む: 休んでいる時や夜間にも痛みが続く(安静時痛、夜間痛)。
  • 痛みが徐々に悪化している: 時間が経つにつれて痛みの程度が増している。
  • 痛みが長期間続いている: 2週間以上、自分で対処しても痛みが改善しない。
  • しびれがある、あるいは悪化している: 肘から手にかけてのしびれがあり、それが持続したり、強くなったりしている。指の感覚が鈍い、細かい動きがしにくいといった症状がある場合。
  • 熱感や腫れがある: 肘の内側が赤く腫れていたり、触ると熱を持っていたりする場合、強い炎症や感染の可能性も考慮。
  • 肘の動きが悪い: 肘を完全に曲げたり伸ばしたりすることができない、あるいは特定の方向に動かすと激痛が走る。
  • 外傷の記憶がある: 転倒して肘を強打した、無理な体勢で負荷がかかったなど、痛みの原因となる具体的な外傷の記憶がある場合。
  • 骨の変形や関節の不安定感がある: 見た目で肘の形がおかしい、動かすと関節がグラグラするような不安定感がある場合。

これらの症状は、単なる腱や筋肉の炎症だけでなく、骨折、靭帯損傷、神経の圧迫、関節炎など、より専門的な治療が必要な病気のサインである可能性があります。早期に正確な診断を受けることが、適切な治療に繋がり、回復を早めるために不可欠です。

受診は何科に行くべきか

肘の内側の痛みで医療機関を受診する場合、基本的には整形外科を受診するのが適切です。

整形外科は、骨、関節、筋肉、腱、神経といった運動器の病気や外傷を専門とする科です。肘の痛みは、これらの組織のいずれかに原因があることがほとんどであるため、整形外科医が専門的な知識と検査(レントゲン、MRI、エコー、神経伝導速度検査など)を用いて、正確な診断を下し、適切な治療法(薬物療法、リハビリテーション、注射、手術など)を提案してくれます。

  • スポーツによる痛み: スポーツ整形外科を標榜している医療機関があれば、そちらを受診するのも良いでしょう。スポーツ障害に詳しい専門医が対応してくれます。
  • しびれが強い場合: 整形外科で神経の専門医がいる場合や、神経内科医と連携している場合もあります。必要に応じて、神経専門医への紹介を受けることもあります。
  • 関節リウマチなどが疑われる場合: 関節リウマチの診断や治療はリウマチ科でも行われています。しかし、まずは一般的な整形外科を受診し、必要に応じてリウマチ科を紹介してもらうのが一般的です。

かかりつけの医師がいる場合は、まず相談してみるのも良いでしょう。必要に応じて適切な専門科を紹介してくれます。

自己判断で市販の湿布や痛み止めを使用するのも一時的には有効ですが、原因を特定せずに漫然と使用を続けるのは避けるべきです。痛みの裏に隠れた重要な病気を見逃してしまう可能性があります。特に、上記のような受診目安となる症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。

肘の内側の痛みは、ゴルフや野球などのスポーツ、スマホやPC作業といった日常生活での繰り返しの動作、あるいは尺骨神経障害や関節炎といった病気まで、様々な原因によって引き起こされます。痛みの現れ方や伴う症状(しびれ、腫れ、熱感など)は、原因を特定するための重要な手がかりとなります。

比較的軽度な痛みであれば、安静、アイシング、ストレッチ、サポーターの使用、そして原因となる動作や習慣の見直しといったセルフケアで症状が改善することもあります。しかし、痛みが強い場合、安静にしても痛む場合、しびれを伴う場合、長期間改善しない場合などは、自己判断せず速やかに整形外科を受診することが非常に重要です。

正確な診断を受けることで、痛みの原因に応じた適切な治療(薬物療法、物理療法、リハビリテーション、注射、手術など)を受けることができ、早期回復につながります。また、再発予防のためには、痛みが改善した後も、原因となった動作の改善、ストレッチや軽い運動の継続、適切な休息、姿勢の改善といった日常生活での注意を怠らないことが大切です。

肘の内側の痛みは、放置すると慢性化したり、機能障害を引き起こしたりする可能性もあります。「たいしたことない」と軽視せず、自身の体からのサインに耳を傾け、早期に適切に対処することで、快適な日常生活を取り戻しましょう。

免責事項: この記事は情報提供のみを目的としており、医療行為や診断を代替するものではありません。個々の症状については、必ず専門の医療機関で医師の診断を受けてください。治療方針や薬の選択についても、医師と相談の上、決定してください。

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