膝の外側が痛むとき、その原因は一つとは限りません。ランニングやジャンプをよくする方に多いもの、スポーツ中に特定の力が加わって起こるもの、加齢に伴う変化によるものなど、さまざまな病気や怪我の可能性があります。痛みの場所や強さ、どんな時に痛むか、他にどんな症状があるかによって、考えられる原因は異なります。この記事では、膝の外側が痛む主な原因となる病気や怪我について解説し、それぞれの特徴や自分でできる対処法、さらには病院へ行くべき目安や予防法まで、詳しくご紹介します。あなたの膝の痛みの原因を知り、適切に対処するための一助となれば幸いです。
膝の外側に痛みを感じる場合、いくつかの代表的な原因が考えられます。
ここでは、特に頻度が高いものから、可能性のあるものまでを幅広くご紹介します。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)
腸脛靭帯炎は、膝の外側が痛む原因として最も一般的なものの一つです。特に長距離ランナーやサイクリストなど、膝の曲げ伸ばしを繰り返すスポーツをする人に多く見られるため、「ランナー膝」とも呼ばれます。
腸脛靭帯とは、骨盤の外側から始まり、太ももの外側を通って脛の骨(脛骨)の外側上部についている、強靭な線維性のバンドです。膝の曲げ伸ばしを行う際、この腸脛靭帯が膝の外側にある骨の出っ張り(大腿骨外側上顆)の上を繰り返し擦れることで、炎症を起こし痛みが生じます。
主な症状:
- 膝の外側、特に大腿骨外側上顆周辺の痛み。
- 初期は運動中のみの痛みですが、悪化すると運動後や安静時にも痛むことがあります。
- ランニング中、特に下り坂や、同じ側の足で着地する際に痛みが強くなる傾向があります。
- 膝を約30度曲げたあたりで痛みがピークになることが多いです。
- 押すと強い痛み(圧痛)があります。
なりやすい人:
- ランニング距離を急に増やした
- 硬いアスファルトばかり走っている
- 下り坂をよく走る
- 不適切なランニングシューズを使用している
- O脚や回内足(足首が内側に倒れ込む)などのアライメント不良がある
- 太ももの外側や臀部の筋肉が硬い・弱い
腸脛靭帯炎は、使いすぎ(オーバーユース)によって発生することが多いですが、体の柔軟性や筋力不足、フォーム不良なども要因となります。
外側半月板損傷
半月板は、大腿骨と脛骨の間にあるC字型の軟骨組織で、膝の内側と外側にそれぞれあります。衝撃を吸収したり、膝を安定させたり、関節軟骨を保護したりする重要な役割を担っています。
外側半月板は円形に近い形をしており、内側半月板に比べて可動性が高いのが特徴です。外側半月板損傷は、スポーツ中の急な方向転換、ジャンプの着地、膝のねじりなどによって発生することが多いですが、加齢による変性によって些細な動きで損傷することもあります。
主な症状:
- 膝の外側の関節の隙間(関節裂隙)の痛み。
- 膝の曲げ伸ばしや、体重をかけた時に痛む。
- 損傷した半月板が関節に挟まり、「引っかかり感」や「クリック音(ポキッという音)」を感じることがあります。
- 重症の場合、膝が完全に伸びなくなったり曲がらなくなったりする「ロッキング」という状態が起こることがあります。
- 膝に水が溜まる(関節液の貯留)ことがあります。
なりやすい人:
- サッカー、バスケットボール、スキー、ラグビーなど、膝に強い回旋や衝撃が加わるスポーツをする人
- 加齢により半月板が弱くなっている人
- O脚の人(ただし、変形性膝関節症ほど外側半月板損傷が多いわけではない)
半月板損傷は、痛みの部位やロッキングの有無などが重要な手がかりとなります。
外側側副靭帯損傷
側副靭帯は、膝の内側と外側にあり、膝の横方向へのグラつきを防ぐ役割をしています。外側側副靭帯は、大腿骨と腓骨(脛骨の外側にある細い骨)を結んでおり、膝に内側から強い力が加わったり、膝が内側に「くの字」に曲がるような力が加わったりすることで損傷します。スキーで転倒した際や、タックルを受けた際などに起こりやすい怪我です。
主な症状:
- 膝の外側、特に外側側副靭帯に沿った部分の痛み。
- 靭帯の走行に沿って押すと痛い(圧痛)。
- 損傷した靭帯の周りに腫れや皮下出血が見られることがある。
- 膝が横方向(特に内側方向への力に対して)にグラつく感じ(不安定感)。
- 重症度によっては、体重をかけるのが難しくなる。
なりやすい人:
- スキー、ラグビー、アメフトなど、膝に強い横方向への衝撃が加わるスポーツをする人
- 不安定な場所での転倒
外側側副靭帯の単独損傷は比較的少ないとされており、前十字靭帯や半月板など他の組織の損傷を伴うこともあります。
変形性膝関節症(外側型)
変形性膝関節症は、膝の関節軟骨がすり減り、骨の変形などが進行する病気です。多くの場合、体重のかかりやすい内側から進行し、O脚になります。しかし、まれに外側から進行する「外側型」もあり、この場合に膝の外側が痛みの中心となります。外側型はX脚の人に起こりやすい傾向があります。
主な症状:
- 初期は立ち上がりや歩き始めなど、動作の開始時に膝の外側が痛む(開始時痛)。
- 進行すると、階段昇降、正座、長時間歩行などで痛みが強くなる。
- さらに進行すると、安静時や夜間にも痛むようになる。
- 膝の動きが悪くなり、曲げ伸ばしが制限される。
- 膝に水が溜まることがある。
- 関節の変形(X脚の進行)が見られる。
なりやすい人:
- 高齢者
- 過去に膝の外傷(半月板損傷、靭帯損傷など)がある人
- 肥満の人
- X脚の人
変形性膝関節症は、ゆっくりと進行する病気ですが、適切な治療やケアによって進行を遅らせることができます。
その他の考えられる病気・怪我
上記以外にも、膝の外側に痛みを引き起こす可能性のある病気や怪我があります。
腓骨頭滑液包炎
腓骨頭とは、脛の外側にある細い骨(腓骨)の上端部で、膝関節の外側下方に位置しています。この腓骨頭の周りには、骨や腱の摩擦を軽減するための滑液包という袋があります。腓骨頭周辺への繰り返しの刺激や圧迫によって、この滑液包に炎症が起き、痛みや腫れが生じることがあります。
主な症状:
- 膝の外側下方、腓骨頭の骨の出っ張り周辺の痛みや腫れ。
- 押すと痛い(圧痛)。
- 膝の曲げ伸ばしで痛むことがある。
疲労骨折
脛骨(すねの骨)や腓骨(すねの外側の細い骨)の近位部(膝に近い部分)に疲労骨折が起こると、膝の外側に痛みとして感じられることがあります。疲労骨折は、一度の大きな外力ではなく、骨に繰り返し加わる小さな力によって発生する骨のひびや不全骨折です。
主な症状:
- 運動中や運動後に特定の場所が痛む。
- 痛みのある場所を押すと強く痛む(限局性圧痛)。
- 進行すると安静時にも痛むようになる。
- 初期はレントゲンに写らないこともあり、診断が難しい場合があります。
なりやすい人:
- 長距離ランナー、跳躍競技など、特定の動作を繰り返し行うスポーツ選手
- 急激に運動量を増やした人
- 骨密度が低い人(女性など)
これらの他にも、神経の圧迫(総腓骨神経麻痺などによる関連痛)や、関節内の炎症(滑膜炎)、腫瘍などによって膝の外側が痛む可能性も考えられますが、比較的まれなケースです。自己判断せず、痛みが続く場合は医療機関を受診することが重要です。
症状別の原因と特徴
膝の外側の痛みといっても、その感じ方や症状の現れ方は人それぞれです。
ここでは、具体的な症状から考えられる原因と、その特徴について掘り下げて解説します。
急に膝の外側が痛くなった場合
「昨日までは何ともなかったのに、急に膝の外側が痛くなった」という場合、外傷性の原因が強く疑われます。
考えられる主な原因:
- 外側半月板損傷: スポーツ中の急な方向転換や、転倒、膝のねじりなどで発生することが多いです。損傷した瞬間に「ブチッ」「ポキッ」という音や感覚を自覚することもあります。
痛みだけでなく、膝が引っかかったり、動かせなくなったり(ロッキング)といった症状を伴うことがあります。 - 外側側副靭帯損傷: 膝に内側から強い力が加わった場合に起こります。スキーや球技中の衝突などで発生しやすいです。
痛みとともに、膝の横方向への不安定感を感じることがあります。 - 軟骨や骨の損傷: 重度の外力によって、関節軟骨や骨(脛骨や腓骨の一部)に損傷が起こる可能性もあります。
特徴:
- 痛みの onset(発症)が明確。
- 特定の出来事(外傷)に関連していることが多い。
- 受傷直後から強い痛みや腫れを伴うことがある。
- 体重をかけるのが困難になる場合がある。
急な痛みの場合、靭帯損傷や半月板損傷などの比較的重症な怪我の可能性も考えられます。
自己判断せず、早めに医療機関を受診することが推奨されます。
膝の外側が痛くて歩けない場合
膝の外側の痛みが強く、まともに歩くことができない、体重をかけると激痛が走るという場合は、重度の損傷や炎症が起きている可能性があります。
考えられる主な原因:
- 重度の半月板損傷(ロッキングを伴う): 損傷した半月板が関節に挟まり、膝が動かなくなって歩行が極めて困難になります。
- 重度の靭帯損傷(外側側副靭帯損傷、または複合損傷): 靭帯が完全に断裂したり、複数の靭帯が損傷したりすると、膝が不安定になり、体重を支えきれずに歩けなくなります。
- 骨折(疲労骨折の悪化、または外傷性骨折): 脛骨や腓骨の骨折がある場合、体重をかけることで激しい痛みが走り、歩行不能となることがあります。
- 重度の炎症(滑液包炎、関節炎): 強い炎症によって関節内に多量の水が溜まったり、周囲の組織が腫れたりすることで、痛みが強く歩行が困難になることがあります。
特徴:
- 痛みのレベルが非常に高い。
- 体重をかける動作で激痛が走る。
- 膝の可動域が著しく制限される(曲がらない、伸びない)。
- 膝の腫れや熱感を伴うことが多い。
- 場合によっては、膝の変形が見られることがある。
歩行が困難なほどの痛みは、医療機関での早期診断と適切な治療が必要です。
我慢せずにすぐに受診してください。
膝の外側を曲げると痛い場合
膝の外側が、特に膝を曲げたり伸ばしたりする動作で痛む場合、特定の組織の摩擦や圧迫、あるいは関節内の問題が考えられます。
考えられる主な原因:
- 腸脛靭帯炎: 膝を約30度曲げた角度で腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の摩擦が最も大きくなるため、この角度での曲げ伸ばしで痛みが誘発されやすい典型的な症状です。
- 外側半月板損傷: 損傷した半月板が関節内で引っかかったり、関節軟骨と擦れたりすることで、曲げ伸ばし時に痛みやクリック音を伴うことがあります。
しゃがみ込みや階段昇降で痛みが強くなることも特徴です。 - 変形性膝関節症: 関節軟骨の摩耗や骨棘(骨のとげ)の形成により、関節の動きが悪くなり、曲げ伸ばしの際に痛みや引っかかりを感じることがあります。
特徴:
- 特定の関節角度や可動域で痛みが誘発される。
- ランニング、自転車、階段昇降、しゃがみ込みなどの動作で痛みが強くなる傾向がある。
- 安静にしていると痛みが少ない場合が多い(ただし、進行すると安静時痛も出現)。
曲げ伸ばしの痛みは、比較的軽症の場合もあれば、半月板損傷のように精密検査が必要な場合もあります。
痛みが続く場合は専門家に相談しましょう。
膝の外側を押すと痛い場合
膝の外側の特定の場所を指で押したときに強い痛みを感じる場合、その場所にある組織に炎症や損傷が起きている可能性が高いです。
考えられる主な原因:
- 腸脛靭帯炎: 大腿骨外側上顆(膝の外側の骨の出っ張り)や、そこから少し下の脛骨への付着部あたりを押すと強い痛みを感じることが多いです。
- 外側側副靭帯損傷: 外側側副靭帯の走行(大腿骨外側上顆から腓骨頭にかけて)に沿って押すと痛みがあります。損傷部位によっては、部分的に腫れや皮下出血が見られることもあります。
- 腓骨頭滑液包炎: 腓骨頭の骨の出っ張りの部分を押すと痛みや腫れを感じます。
- 疲労骨折: 脛骨や腓骨の疲労骨折がある場合、骨の損傷部位をピンポイントで押すと激しい痛みが走ります。
- 筋肉や腱の炎症: 大腿筋膜張筋や腓骨筋など、膝の外側を通る筋肉や腱に炎症がある場合、その部位を押すと痛むことがあります。
特徴:
- 痛む場所が比較的はっきりしている。
- 特定の組織(靭帯、腱、滑液包、骨など)に関連した痛み。
- 触診によって痛みの原因部位を特定しやすい。
押したときの痛みは、炎症のサインである可能性が高いです。
痛みのある場所を特定し、無理な圧迫は避けるようにしましょう。
膝の外側の骨が出っ張って痛い場合
膝の外側で「骨が出っ張っているように見える」「その部分が痛む」と感じる場合、骨の変形や、その周辺組織の腫れが原因として考えられます。
考えられる主な原因:
- 変形性膝関節症: 進行した変形性膝関節症では、骨棘(骨のとげ)が形成されたり、関節全体の形が変化したりすることで、骨が出っ張っているように見えることがあります。
特に外側型であれば、外側の骨に変形が生じやすいです。 - 腓骨頭滑液包炎: 腓骨頭の周りの滑液包に炎症が起きると、滑液包が腫れてプヨプヨした膨らみとなり、骨が出っ張っているように感じることがあります。
この腫れ自体が痛みの原因となることも、腫れている部位が圧迫されて痛むこともあります。 - ガングリオンなどの嚢腫: まれに、関節包や腱鞘から発生するゼリー状の内容物が入った袋(ガングリオンなど)が、膝の外側の骨の近くにできて、出っ張りのように見え、周囲を圧迫して痛みを引き起こすことがあります。
- 過去の骨折や手術による変形: 過去に膝の外側部分で骨折を起こしたり、手術を受けたりした場合、その後の骨の癒合や組織の変化によって、骨が出っ張っているように見えることがあります。
特徴:
- 視覚的にも、触っても出っ張りが確認できる場合がある。
- 出っ張り自体が痛む場合と、出っ張りの周辺が痛む場合がある。
- 腫れを伴っている場合は、比較的柔らかい感触のこともある。
- 骨自体の変形の場合は、硬い感触。
骨が出っ張っているように見える場合、単なる腫れから骨の変形まで様々な可能性があります。
正確な診断のためには、医療機関でのレントゲン検査などが必要となることが多いです。
自分でできる対処法・治し方
膝の外側が痛む場合、原因によっては自分でできる対処法やケアがあります。
ただし、痛みが強い場合や、症状が改善しない場合は、必ず医療機関を受診してください。
痛みに対する応急処置(RICE処置)
スポーツ中や運動後に急に痛みが出た場合、まずはRICE処置を行うことが基本的な応急処置となります。
RICEは、以下の4つの頭文字をとったものです。
- Rest(安静): 痛む動作やスポーツ活動を中止し、膝に負担をかけないように安静にします。
無理に動かすと炎症が悪化する可能性があります。 - Ice(冷却): 痛む部分、特に炎症が疑われる場所をアイスパックや氷嚢などで冷やします。
1回につき15~20分程度、1日に数回行います。
冷却によって血管が収縮し、炎症や腫れ、痛みを抑える効果が期待できます。
ただし、凍傷に注意し、直接肌に氷を当てないようにタオルなどで包んで使用してください。 - Compression(圧迫): 弾性包帯やサポーターなどで痛む部位を軽く圧迫します。
圧迫によって腫れを最小限に抑えることができます。
ただし、強く巻きすぎると血行が悪くなるので注意が必要です。 - Elevation(挙上): 可能であれば、痛む方の膝を心臓より高い位置に上げます。
座っているときや寝ているときに、クッションなどを使って膝を高くします。
これも腫れを軽減するのに役立ちます。
湿布やアイシングで炎症を抑える
RICE処置の「Ice」にも含まれますが、湿布も炎症や痛みを抑えるために有効な手段です。
市販の湿布には、消炎鎮痛成分が含まれているものが多く、貼ることで局所の炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。
- 冷湿布: 主に急性期の炎症や、熱感・腫れを伴う痛みに適しています。
冷感刺激によって痛みを一時的に和らげる効果もあります。 - 温湿布: 慢性的な痛みや、血行不良が原因と考えられる痛みに使用されることがありますが、急性期の炎症がある場合は逆効果になることもあるため注意が必要です。
どちらの湿布を選ぶべきか迷う場合は、痛む部位に熱感があるかどうかが目安になります。
熱感や腫れがある場合は冷湿布が適していることが多いです。
ただし、湿布はあくまで対症療法であり、根本的な原因を治療するものではありません。
膝への負担を軽減する
痛みを悪化させないためには、日常生活や運動時の膝への負担をできるだけ減らすことが重要です。
安静にする
痛みが強い時期は、まず安静にすることが最も重要です。
痛む動作を避け、可能であれば数日間は運動を完全に休止します。
仕事などでどうしても動かなければならない場合でも、膝への負担を最小限にするように工夫します。
無理をして動き続けると、症状が長引いたり悪化したりする可能性があります。
痛みが引いてきたら、徐々に活動レベルを上げていくようにします。
サポーターの活用
膝のサポーターは、膝関節を安定させたり、特定の部位への圧迫や保温効果によって痛みを軽減したりするのに役立ちます。
膝の外側の痛みに対しては、外側をサポートしたり、膝関節全体の安定性を高めたりするタイプのサポーターが有効です。
- 圧迫・保温タイプ: 伸縮性のある素材で、膝全体を覆い、適度な圧迫と保温効果で血行を促進し痛みを和らげます。
比較的軽度な痛みに。 - ベルトタイプ: 膝の下(膝蓋骨の下)に巻くことで、特定の腱への負担を軽減します。
腸脛靭帯炎には直接的ではありませんが、関連する痛みに効果がある場合も。 - ストラップタイプ: 膝の外側や内側にストラップがあり、靭帯のサポートや動揺性の制限に役立ちます。
外側側副靭帯損傷や、膝の不安定感がある場合に。 - 機能性サポーター: 膝の皿(膝蓋骨)を誘導したり、特定の動きを制限したりする構造を持つもの。
半月板損傷後の不安定感などに。
サポーターの種類は非常に多く、痛みの原因や程度によって適したものが異なります。
スポーツ用品店やドラッグストアで購入できますが、迷う場合は専門家(医師や理学療法士、義肢装具士など)に相談して選ぶことをお勧めします。
ただし、サポーターは痛みを和らげるための補助具であり、使い続けることで筋力が衰える可能性もあるため、長期間の使用は専門家の指示に従いましょう。
膝の外側の痛みに効果的なストレッチ
痛みが落ち着いてきたら、硬くなった筋肉や靭帯を柔らかくするストレッチを行うことが、痛みの軽減や再発予防に効果的です。
特に腸脛靭帯炎の場合、腸脛靭帯そのものや、それに関連する筋肉の柔軟性が低下していることが原因の一つとなります。
ストレッチは痛みのない範囲で行い、無理は禁物です。
腸脛靭帯のストレッチ
腸脛靭帯は非常に硬い組織なので、直接伸ばすのは難しいですが、関連する筋肉(大腿筋膜張筋や大臀筋)を伸ばすことで、腸脛靭帯への負担を軽減できます。
方法例1: 立つ姿勢で
- 壁や椅子などに手をついて立ち、痛む方の足を、痛まない方の足の後ろでクロスさせます。
- 壁についている手と反対側の腕を頭の上に上げて、体を壁と反対側にゆっくり倒します。
- お尻の外側から太ももの外側にかけて伸びているのを感じながら、20~30秒キープします。
- これを3~5回繰り返します。
方法例2: 寝る姿勢で
- 仰向けになり、痛まない方の膝を立てます。
- 痛む方の足を伸ばしたまま、痛まない方の足の上にクロスさせます。
- 痛まない方の手で、痛む方の足の膝の外側を持ち、ゆっくりと手前に引き寄せながら、痛まない方の肩の方へ近づけるように体をねじります。
- 太ももの外側やお尻の外側が伸びているのを感じながら、20~30秒キープします。
- これを3~5回繰り返します。
臀部・大腿部のストレッチ
腸脛靭帯は骨盤のお尻の筋肉(大臀筋、中臀筋)や太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)、太ももの外側の筋肉(大腿筋膜張筋)と繋がっています。
これらの筋肉が硬いと、腸脛靭帯に余計な負担がかかります。
お尻(臀部)のストレッチ例: 椅子に座って
- 椅子に浅く座り、痛む方の足首を痛まない方の足の膝の上に置きます。
- 背筋を伸ばし、そのままゆっくりと体を前に倒していきます。
- お尻の筋肉が伸びているのを感じながら、20~30秒キープします。
- これを3~5回繰り返します。
太もも前面(大腿四頭筋)のストレッチ例: 立つ姿勢で
- 壁や椅子などに手をついて立ち、痛む方の足首を後ろから手で持ちます。
- 膝を曲げて、かかとをお尻に近づけるようにゆっくりと引きます。
- 太ももの前が伸びているのを感じながら、20~30秒キープします。
- これを3~5回繰り返します。
ストレッチの注意点:
- 痛みを感じない範囲で行います。無理なストレッチは逆効果です。
- 呼吸を止めずに、ゆっくりと自然な呼吸を続けながら行います。
- 毎日継続することで効果が期待できます。
- 特に運動前後に行うと効果的です。
膝の外側の痛みに効果的な筋力トレーニング
痛みが軽減し、ストレッチも無理なくできるようになったら、膝を支える筋肉の強化も重要です。
特に、お尻の筋肉(大臀筋、中臀筋)や太ももの内側の筋肉(内側広筋)などを鍛えることで、膝関節の安定性が増し、外側への負担を減らすことができます。
筋トレも痛みのない範囲で、軽い負荷から始めましょう。
お尻の筋力トレーニング例: サイドライイング レッグリフト(中臀筋)
- 横向きに寝て、下側の足の膝を軽く曲げ、上側の足は真っ直ぐ伸ばします。
- 体幹を安定させたまま、息を吐きながら上側の足を真横にゆっくり上げます。(つま先が下を向かないように注意)
- お尻の外側に効いているのを感じながら、一番上げたところで1~2秒キープ。
- 息を吸いながらゆっくりと下ろします。(完全に力を抜かず、少し浮かせたところで止める)
- これを10~15回繰り返し、1~3セット行います。
太もも内側の筋力トレーニング例: シーテッド ターミナル ニーエクステンション(内側広筋)
- 椅子に座り、膝の下にタオルなどを丸めて置きます。
- 太ももに力を入れ、膝を完全に伸ばしきります。このとき、太ももの内側(膝に近い部分)の筋肉が収縮しているのを感じます。
- 完全に伸ばした状態で1~2秒キープします。
- ゆっくりと力を抜いて、膝を元の角度に戻します。(完全に曲げきらない)
- これを10~15回繰り返し、1~3セット行います。
筋トレの注意点:
- 回数やセット数は目安です。無理せず、翌日に痛みが残らない範囲で行います。
- 正しいフォームで行うことが重要です。分からない場合は専門家から指導を受けましょう。
- 痛みが再発した場合は中止し、安静にします。
病院へ行くべき目安と受診のポイント
自分でできる対処法を試しても痛みが改善しない場合や、特定の症状がある場合は、医療機関を受診することが重要です。
膝の痛みの原因を正確に診断し、適切な治療を受けることで、早期回復や症状の悪化防止につながります。
こんな症状は要注意
以下のような症状がある場合は、自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。
- 痛みが強く、歩くのが困難、または全く歩けない。
- 痛む部分が赤く腫れていたり、熱を持っていたりする。
- 安静にしていても痛みが続く、または夜間に痛みが強くて眠れない。
- 膝が完全に伸びない、または曲がらない(ロッキング)。
- 膝がグラグラする、不安定感がある。
- 膝の形が変形しているように見える。
- しびれや感覚の異常を伴う。
- 怪我をした時に「ブチッ」「ポキッ」といった音がした。
- 痛みが1週間以上経っても改善しない、または悪化している。
- 発熱など、全身の症状を伴う。
これらの症状は、靭帯損傷、半月板損傷、骨折、重度の炎症など、専門的な治療が必要な病態である可能性を示唆しています。
何科を受診すべきか
膝の外側の痛みで病院を受診する場合、基本的に整形外科を受診しましょう。
整形外科は、骨、関節、靭帯、筋肉、神経などの運動器の病気や怪我を専門とする科です。
膝の痛みの原因を特定するための診察や検査(レントゲン、MRI、超音波など)を行い、適切な治療法(薬物療法、注射、リハビリテーション、手術など)を提案してくれます。
かかりつけの内科医に相談してから整形外科を紹介してもらう、という方法でも構いません。
診察で伝えるべきこと
医師に正確な診断と適切な治療を受けるためには、診察時に以下の情報をできるだけ具体的に伝えることが重要です。
- いつから痛みますか? (例: 〇日前から、〇ヶ月前から)
- 痛みのきっかけはありましたか? (例: スポーツ中、転んだ、重いものを持った後、特にきっかけはない)
- どんな時に痛みますか? (例: 歩き始め、階段昇降、ランニング中、座っている時、寝ている時、膝を曲げた時/伸ばした時、特定の角度で)
- 痛む場所はどのあたりですか? (指一本でさせるくらい具体的に、例: 膝の外側の出っ張りの下、関節の隙間、太ももの外側全体)
- 痛みの強さはどれくらいですか? (10段階評価などで)
- 痛みの種類はどんな感じですか? (例: ズキズキする、ジンジンする、鈍痛、ピリピリする、引っかかる感じ)
- 痛みの他に症状はありますか? (例: 腫れ、熱感、しびれ、引っかかり、音がする、膝が外れる感じ、動かせない)
- 痛みの経過はどうですか? (良くなっている、悪くなっている、変わらない、波がある)
- これまでに膝を怪我したことはありますか?
- 何か持病はありますか? (糖尿病、リウマチなど)
- 現在服用している薬はありますか?
- アレルギーはありますか?
- 仕事やスポーツなど、普段どのような活動をしていますか?
これらの情報を事前に整理しておくと、スムーズな診察につながります。
診断と主な治療法
整形外科を受診すると、問診や触診に加えて、痛みの原因を特定するためにさまざまな検査が行われます。
原因疾患によって、治療法は異なります。
病院で行われる主な検査
検査の種類 | 目的 | どんなことがわかる? |
---|---|---|
問診・触診 | 患者さんの状況を把握し、痛みの原因を推測する | 痛みの場所、症状、きっかけ、既往歴など。実際に膝を触って、腫れや熱感、圧痛の場所、可動域などを確認する。 |
レントゲン | 骨の形や状態を確認する | 骨折、骨の変形(骨棘など)、関節の隙間の狭小化、関節炎による変化などがわかる。軟骨や靭帯、半月板は写らない。 |
MRI | 軟部組織(靭帯、半月板、軟骨、筋肉など)の状態を詳しく確認する | 半月板の損傷、靭帯の断裂や損傷、軟骨の状態、骨内部の微細な変化(骨挫傷、疲労骨折)、炎症などがわかる。 |
超音波(エコー) | 靭帯、腱、筋肉、滑液包、関節内の炎症や水溜まりなどをリアルタイムで確認する | 靭帯や腱の損傷、筋肉内の出血、滑液包炎の程度、関節液の貯留などがわかる。動かしながら観察できるのが特徴。 |
CT | 骨の詳細な構造や複雑な骨折などを立体的に確認する | 関節の変形や骨折線の詳細な把握。 |
関節鏡検査 | 内視鏡を膝関節内に入れて直接内部を観察する | 半月板や軟骨の損傷を直接見て診断・治療を行う。侵襲性があるため、他の検査で診断が難しい場合や手術前提で行われる。 |
原因疾患ごとの主な治療法
診断された病気や怪我の種類、重症度、患者さんの年齢や活動レベルなどによって、治療法は異なります。
大きく分けて保存療法と手術療法があります。
原因疾患 | 主な保存療法 | 主な手術療法 |
---|---|---|
腸脛靭帯炎 | 安静、RICE処置、消炎鎮痛剤(内服・外用)、ストレッチ、物理療法(電気、超音波など)、インソール療法、ステロイド注射(難治例) | ごくまれに、保存療法に抵抗性の場合に腸脛靭帯の一部を切離する手術が行われることがある。 |
外側半月板損傷 | 安静、消炎鎮痛剤、サポーター、リハビリテーション(筋力強化、可動域改善)※損傷の程度が軽い場合や変性損傷の一部 | 関節鏡視下手術:損傷した半月板を縫合する(半月板縫合術)または切除する(半月板切除術)。ロッキングなど重度の症状や保存療法無効の場合に適応。 |
外側側副靭帯損傷 | 安静、冷却、サポーターや装具による固定、リハビリテーション(筋力強化、可動域改善)。多くの場合、保存療法で治癒。 | 重度の場合(完全断裂など)や、他の靭帯損傷を伴う場合、不安定性が残る場合などに、靭帯を修復または再建する手術が行われることがある。 |
変形性膝関節症 | 安静、体重コントロール、運動療法(ストレッチ、筋力トレーニング)、物理療法、消炎鎮痛剤(内服・外用)、ヒアルロン酸関節内注射、ステロイド関節内注射 | 骨切り術(骨の形を変えて負担を減らす)、人工関節置換術(進行して保存療法が無効の場合)。 |
腓骨頭滑液包炎 | 安静、冷却、消炎鎮痛剤(内服・外用)、局所麻酔薬やステロイドの滑液包内注射、滑液包内容物の吸引。 | 保存療法で改善しない場合や再発を繰り返す場合に、滑液包を摘出する手術が行われることがある。 |
疲労骨折 | 痛みがなくなるまでの絶対安静(松葉杖を使用する場合も)、患部への負担を避ける。リハビリテーション。 | ごくまれに、骨の癒合が得られにくい場合や、競技復帰を急ぐ場合などに手術(内固定など)が検討されることがある。 |
リハビリテーションは、どの疾患においても重要な役割を果たします。
痛みの改善だけでなく、関節の動きを良くしたり、膝を支える筋肉を強くしたり、正しい体の使い方を身につけたりすることで、再発予防にもつながります。
膝の外側の痛みを予防するには
一度膝の外側を痛めてしまうと、再発しやすい場合や、慢性的な痛みに移行してしまう場合もあります。
痛みを未然に防ぐため、また再発を予防するためには、日頃からのケアや注意が大切です。
運動前のウォーミングアップ・クールダウン
スポーツや運動を行う前後には、必ずウォーミングアップとクールダウンを行いましょう。
- ウォーミングアップ: 軽いジョギングや体操で全身を温め、筋肉や関節を動かす準備をします。
これにより、筋肉や靭帯の柔軟性が高まり、怪我のリスクを減らすことができます。
特に膝周りの筋肉を意識して動かしましょう。 - クールダウン: 運動後には、疲労した筋肉をゆっくりとストレッチして伸ばします。
運動中に緊張した筋肉をリラックスさせることで、疲労回復を促し、筋肉の硬化やそれに伴う痛みを予防します。
先述した腸脛靭帯や臀部のストレッチなどを丁寧に行うのが効果的です。
スポーツや動作フォームの見直し
ランニングやジャンプ、方向転換などのスポーツ動作のフォームが不適切だと、特定の部位に過剰な負担がかかり、怪我の原因となります。
- ランニング: 膝の外側の痛み(腸脛靭帯炎など)の場合、ピッチ(歩数/分)が遅すぎたり、ストライド(一歩の幅)が大きすぎたり、着地時の衝撃が大きいフォームが問題となることがあります。
少しピッチを上げる、着地を膝の下で行うように意識する、といったフォームの改善が有効な場合があります。
また、体が左右にブレる、骨盤が不安定といった問題も膝への負担につながります。 - その他スポーツ: ジャンプの着地姿勢、方向転換時の膝の向き、自転車のサドルの高さやクリート(ビンディングシューズとペダルを固定する部品)の位置なども、膝への負担に影響します。
可能であれば、専門家(ランニングコーチ、理学療法士など)にフォームを見てもらい、アドバイスを受けることも有効です。
適切な靴選びやインソールの使用
普段履いている靴や、スポーツ時に使用するシューズが足に合っていない、または機能が不十分であると、足のアライメントが崩れ、膝への負担が増加します。
- 適切な靴選び: 自分の足の形やサイズに合った靴を選びましょう。
特にスポーツシューズは、そのスポーツの種類に適した機能(クッション性、安定性、サポート性など)を持つものを選ぶことが重要です。
シューズの寿命(走行距離や使用年数)も考慮し、劣化している場合は買い替えましょう。 - インソールの使用: 足のアーチのサポートや、足首の過度な回内・回外を抑制する機能を持つインソールを使用することで、足元からのアライメントを整え、膝にかかる負担を軽減することができます。
市販のものから、個人の足に合わせて作るオーダーメイドのものまであります。
特に扁平足やハイアーチ、回内足などの傾向がある場合に有効です。
体重管理
体重が増加すると、膝関節にかかる負担は歩行時で体重の約2~3倍、階段昇降時で約5~6倍になると言われています。
体重を適正に保つことは、膝の痛みの予防や軽減に非常に効果的です。
もし体重が気になる場合は、無理のない範囲で減量に取り組むことをお勧めします。
食事の見直しや、膝に負担の少ない運動(水泳、水中ウォーキング、自転車など)から始めると良いでしょう。
継続的なストレッチと筋力トレーニング
一度痛みが治まった後も、膝周りの筋肉の柔軟性を維持し、筋力を保つことが、再発予防には欠かせません。
先述した腸脛靭帯や臀部のストレッチ、お尻や太ももの筋力トレーニングを、痛みのない範囲で日常的に継続しましょう。
特にデスクワークなどで長時間同じ姿勢をとることが多い方は、休憩時間に軽く体を動かしたり、ストレッチをしたりする習慣をつけることも大切です。
まとめ|膝の外側が痛い場合は専門家へ相談を
膝の外側の痛みは、ランナー膝として知られる腸脛靭帯炎が最も多い原因の一つですが、外側半月板損傷、外側側副靭帯損傷、変形性膝関節症、さらには腓骨頭滑液包炎や疲労骨折など、様々な病気や怪我の可能性があります。
痛みの現れ方(いつ、どんな時に、どんな痛みか)や、他にどんな症状があるか(腫れ、熱感、引っかかり、不安定感など)によって、原因となる病態は異なります。
比較的軽い痛みで、心当たりがある(例えばランニング距離を増やしたなど)場合は、まずは安静やアイシング、湿布などで様子を見る、痛みのない範囲でストレッチやサポーターを試すといったセルフケアも有効です。
しかし、痛みが強い、歩けない、腫れや熱感が強い、膝が動かせない(ロッキング)、不安定感がある、痛みが長期間続く、自己対処で改善しないといった場合は、必ず医療機関(整形外科)を受診しましょう。
正確な診断なく自己判断で対処を続けると、症状が悪化したり、治療が遅れたりする可能性があります。
医師に正確な診断と適切な治療を受けるためには、痛みの本当の原因が明らかになり、適切な治療を受けることができます。
早期に適切な治療を開始することで、痛みの軽減だけでなく、慢性化を防ぎ、日常生活やスポーツ活動への早期復帰につながります。
また、痛みが治まった後も、再発を予防するためのケア(ウォーミングアップ・クールダウン、フォームの見直し、適切な靴選び、体重管理、ストレッチ、筋力トレーニング)を継続することが大切です。
膝の痛みで悩んでいる方は、抱え込まずにぜひ一度専門家である整形外科医に相談してみてください。
あなたの膝の状態に合わせた適切なアドバイスや治療を受けることで、快適な生活を取り戻すことができるはずです。
免責事項: 本記事で提供する情報は、一般的な医学的知識に基づくものであり、個々の病状に対する診断や治療を保証するものではありません。
膝の痛みがある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。
自己判断によるケアや治療には限界があり、症状を悪化させる可能性もあります。