切れ痔の症状を徹底解説!痛みと出血の特徴・見分け方

排便時の激しい痛みや出血。これらは、もしかしたら「切れ痔」のサインかもしれません。切れ痔は、正式には「裂肛(れっこう)」と呼ばれ、肛門の皮膚が切れたり裂けたりする病気です。多くの方が一度は経験すると言われており、決して珍しいものではありません。この記事では、切れ痔の具体的な症状から、その原因、自分でできるケア方法、医療機関での治療、そして放置した場合のリスクまでを詳しく解説します。もしあなたが切れ痔の症状に悩んでいるなら、この記事を読んで、適切な対処法を知り、改善への一歩を踏み出しましょう。

切れ痔症状

目次

切れ痔とは?

切れ痔(裂肛)は、肛門の出口付近の皮膚が、硬い便の通過などによって切れたり裂けたりする状態を指します。特に肛門の後方(背中側)は構造上、血管が少なく切れやすいため、この部分に発生することが多いです。急性の切れ痔であれば、適切なケアによって比較的早く治癒しますが、繰り返したり慢性化したりすると、様々な合併症を引き起こす可能性があります。男性よりも女性に多く見られる傾向があり、これは女性ホルモンの影響で便秘になりやすいことなどが関係していると考えられています。

切れ痔の主な症状

切れ痔の最も特徴的な症状は、排便に伴う痛みと出血です。これらの症状は、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

排便時の痛み

切れ痔の痛みは非常に鋭く、「カミソリで切られたよう」「ガラスの破片が出たよう」と表現されることがあります。排便時に激痛が走り、その後もズキズキとした痛みがしばらく続くことが少なくありません。痛みが強いと、排便をためらってしまい、さらに便秘が悪化して次の排便で再び傷ついてしまう、という悪循環に陥ることもあります。痛みの程度は傷の深さや炎症の有無によって異なります。

出血(血便との見分け方)

切れ痔による出血は、通常、鮮やかな赤色(鮮血)です。排便時にトイレットペーパーに付着したり、便の表面に少し付着したり、傷が大きい場合は便器が赤くなるほどポタポタと垂れたりすることもあります。出血量は比較的少量であることが多いですが、毎日繰り返すと貧血の原因になる可能性もあります。

ここで重要なのは、「血便」との見分け方です。血便は、大腸や小腸など、より上部の消化管からの出血が原因で、通常は血液が便と混ざり合っていたり、黒っぽいタール状の便(タール便)になったりします。一方、切れ痔の出血は肛門の出口付近からの出血なので、便にべっとり付着していても、便と混ざることは少なく、鮮血であることが特徴です。ただし、自己判断は危険ですので、出血が続く場合や、便に混ざった血が出る場合は、必ず医療機関を受診してください。

肛門のいぼや腫れ

急性期の切れ痔は、傷口の周りが炎症を起こして腫れることがあります。また、切れ痔が慢性化して傷が治ってはまた切れ、を繰り返していると、傷の入り口部分の皮膚が盛り上がって「見張りいぼ(肥大性乳頭)」や「肛門ポリープ」ができることがあります。見張りいぼは、傷を繰り返さないように肛門管を狭くして便の通過を遅くしようとする体の防御反応とも言われます。これらができると、排便時にいぼやポリープが刺激されてさらに傷つきやすくなったり、排便後の拭き残しが増えたりすることもあります。

切れ痔症状チェックリスト

あなたの症状が切れ痔によるものか、以下の項目でセルフチェックしてみましょう。

  • 排便時に鋭い痛みがある
  • 排便後もしばらく痛みが続く
  • 排便時にトイレットペーパーに鮮血が付着する
  • 便の表面に鮮血が付着していることがある
  • 排便後に便器が赤くなることがある
  • 肛門の出口付近に触れるといぼのようなものがある
  • 肛門の周りが腫れている感じがする
  • 排便を怖がって我慢してしまうことがある

これらの項目のうち、当てはまるものが複数ある場合は、切れ痔の可能性が高いと考えられます。特に、排便時の痛みを伴う鮮血の出血は、切れ痔に特徴的な症状です。

切れ痔の原因

切れ痔は、様々な要因が組み合わさって発生します。最も一般的な原因は、肛門にかかる物理的な負担です。

硬い便・便秘

便秘によって便が硬くなると、排便時に硬い便が肛門管を無理に通過する際に、肛門の皮膚を傷つけてしまいます。これが最も一般的な切れ痔の原因です。特に、食物繊維不足や水分不足、運動不足、不規則な生活習慣などによって便秘になりやすい方は、切れ痔のリスクが高まります。

下痢

意外に思われるかもしれませんが、下痢も切れ痔の原因になります。頻繁に下痢をすると、肛門の粘膜が刺激され炎症を起こしやすくなります。また、水様便でも勢いよく排泄される際に肛門に負担がかかったり、何度も排便することで肛門周りの皮膚が擦れて傷ついたりすることがあります。

排便時のいきみ

便秘や下痢の有無にかかわらず、排便時に強くいきみすぎることも肛門に過度な圧力がかかり、切れ痔を引き起こす原因となります。特に、トイレで長時間過ごしたり、スマートフォンを見ながらいきみ続けたりする習慣がある方は注意が必要です。

ストレス

ストレスは、自律神経の働きを乱し、腸のぜん動運動に影響を与えることがあります。これにより、便秘や下痢を引き起こし、結果として切れ痔の原因となる可能性があります。また、ストレスによって肛門周辺の筋肉が緊張し血行が悪くなることも、傷の治りを遅らせたり、切れ痔になりやすくしたりする要因となり得ます。

その他の原因

  • 妊娠・出産: 妊娠中はホルモンバランスの変化や子宮による腸の圧迫で便秘になりやすく、出産時には強くいきむことで肛門に負担がかかります。
  • 長時間の同じ姿勢: 長時間座り続けたり、立ち続けたりすることで、肛門周辺の血行が悪くなり、うっ血や炎症を起こしやすくなることがあります。
  • 特定の疾患: クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患がある場合、肛門病変(切れ痔や痔ろうなど)を合併しやすいことが知られています。

切れ痔の治し方・改善策

切れ痔の治療は、まず生活習慣の改善とセルフケアから始め、症状に応じて医療機関での治療を組み合わせるのが一般的です。

自宅でできるセルフケア

軽度な切れ痔や急性期の切れ痔であれば、適切なセルフケアによって改善が期待できます。

#### 食生活の改善
便通を整えることが、切れ痔の改善・予防の基本です。

  • 食物繊維をたっぷり摂る: 野菜、果物、きのこ類、海藻類、豆類、全粒穀物などを積極的に食事に取り入れましょう。食物繊維は便のカサを増やし、水分を吸収して便を柔らかくする働きがあります。
  • 十分な水分を摂る: 水分不足は便を硬くします。1日にコップ8杯程度を目安に、こまめに水分を補給しましょう。特に朝起きてすぐに冷たい水や牛乳を飲むのは、腸の動きを活発にする効果があります。
  • 発酵食品を摂る: ヨーグルト、納豆、キムチなどの発酵食品は、腸内環境を整え、便通を改善するのに役立ちます。
  • 刺激物を避ける: 香辛料を多く使った料理やアルコール、カフェインなどは、肛門を刺激したり便通を乱したりすることがあるため、症状がある間は控えめにしましょう。

#### 正しい排便習慣
肛門への負担を減らす排便習慣を身につけましょう。

  • 便意を感じたら我慢しない: 便意は直腸に便が溜まって起こる自然なサインです。我慢すると便が硬くなり、排便が困難になります。
  • トイレにこもらない: トイレタイムは3分以内を目安にしましょう。長時間いきみ続けたり、座り続けたりすることは肛門に負担をかけます。
  • 無理にいきまない: 便が硬くて出にくい場合は、無理に強くいきまず、姿勢を変えたり、一旦トイレを出て軽い運動をしたりするのも良いでしょう。
  • 理想的な姿勢: 前かがみになり、膝を少し上げる姿勢(洋式トイレなら足元に踏み台を置くなど)は、直腸がまっすぐになり排便しやすくなります。

#### 肛門を清潔に保つ(温水洗浄便座など)
肛門周りを清潔に保つことは、感染予防や傷の治りを助けるために重要です。

  • 排便後の洗浄: トイレットペーパーでゴシゴシ拭きすぎると傷を悪化させる可能性があります。温水洗浄便座があれば、弱い水圧のぬるま湯で洗い流すのがおすすめです。温水は血行促進効果も期待できます。
  • 優しく拭く: 温水洗浄便座がない場合や外出先では、柔らかいトイレットペーパーで優しく押さえるように水分を拭き取りましょう。赤ちゃん用のおしり拭きシートを使うのも良い方法です。
  • 入浴で温める: 湯船にゆっくり浸かることで、肛門周辺の血行が促進され、痛みが和らぎ、傷の治りが早まります。シャワーだけで済まさず、毎日湯船に浸かる習慣をつけましょう。座浴(お湯を張った洗面器などに患部をつけて温める)も効果的です。

#### 市販薬(軟膏・ワセリンなど)の使用
市販薬は、一時的に症状を和らげたり、傷を保護したりするのに役立ちます。

  • 軟膏: 炎症を抑えるステロイド成分や、痛みを和らげる局所麻酔成分、傷の治りを助ける成分などが含まれた市販の痔疾患用軟膏があります。清潔にした肛門に塗布します。
  • ワセリン: 肛門の皮膚を保護し、硬い便の通過による刺激を和らげるために、排便前に肛門の入り口付近に塗布するのも有効です。ただし、治療効果はありません。
  • 使用上の注意: 市販薬はあくまで対症療法であり、根本的な原因(便秘など)の改善は必要です。また、症状が改善しない場合や悪化する場合は、自己判断で使用を続けず、医療機関を受診してください。特に、ステロイド配合剤の長期使用は副作用のリスクがあるため注意が必要です。

医療機関での治療法

セルフケアで改善が見られない場合や、症状が重い場合、慢性化している場合は、医療機関での治療が必要になります。

#### 保存療法
手術を行わない治療法で、切れ痔の治療の基本となります。

  • 生活習慣指導: セルフケアの項目で述べたような、食生活や排便習慣に関する指導が行われます。
  • 薬物療法: 医師の処方箋に基づき、より効果の高い薬剤が使用されます。
    • 便秘薬: 硬い便が原因の場合、便を柔らかくする薬(浸透圧性下剤、膨張性下剤など)や、腸の動きを助ける薬が処方されます。
    • 外用薬(軟膏・坐薬): 炎症や痛みを抑えるステロイドや非ステロイド性抗炎症薬、血行を促進する薬剤、肛門括約筋の緊張を和らげる薬剤(ニトロ外用薬など)が用いられます。
    • 内服薬: 痛みを和らげる鎮痛剤や、炎症を抑える薬などが処方されることがあります。

保存療法は、急性期の切れ痔であればほとんどの場合で効果が期待できます。重要なのは、医師の指示に従って正しく薬剤を使用し、生活習慣の改善を継続することです。

#### 手術療法
保存療法で改善が見られない場合や、肛門狭窄が見られる場合、慢性化して見張りいぼや肛門ポリープが大きい場合などに検討されます。

  • 側方内括約筋切開術(LSIS: Lateral Sphincterotomy): 慢性的な切れ痔で肛門括約筋の緊張が強い場合に行われる手術です。肛門を締める内括約筋の一部をわずかに切開することで、括約筋の過緊張を和らげ、血行を改善し、傷の治りを促進します。比較的再発が少なく効果の高い手術ですが、まれに便失禁のリスクも指摘されています。
  • 皮膚弁移動術( advancement flap surgery): 慢性的な深い切れ痔や肛門狭窄を伴う場合に行われます。傷ついた部分を切除し、その周囲の健康な皮膚や粘膜を移動させて欠損部を覆う手術です。これにより、傷の治りを助け、肛門の広さを保ちます。
  • 見張りいぼや肛門ポリープの切除: 慢性化によって大きくなった見張りいぼや肛門ポリープが症状の原因となっている場合に切除します。

手術は最後の手段として検討されますが、適切な適応であれば、長年の痛みを解消し、生活の質を大きく改善することが期待できます。

繰り返す切れ痔の改善

「治ったと思ったらまた切れた…」と、切れ痔を繰り返してしまう方もいます。繰り返す場合は、一時的な対処ではなく、根本的な原因を見直す必要があります。便秘や下痢、いきみすぎなどの排便習慣、ストレス、食生活など、日頃のライフスタイルに潜む原因を特定し、継続的に改善に取り組むことが重要です。また、肛門括約筋の過緊張が原因の場合もあるため、専門医に相談し、必要であれば薬物療法や手術を含めた治療を検討することも大切です。

治るまでにかかる期間

切れ痔が治るまでにかかる期間は、傷の状態や適切なケア・治療が行われているかによって大きく異なります。

傷の状態 適切なケア・治療を行った場合 放置した場合
急性期(軽度) 数日から1週間程度 慢性化、数週間〜数ヶ月、またはそれ以上
急性期(重度) 数週間程度 慢性化、数ヶ月〜年単位
慢性期 治療に数ヶ月かかることも 自然治癒は困難、手術が必要な場合も

急性の切れ痔であれば、セルフケアや市販薬、あるいは軽い保存療法で数日から1週間程度で症状が和らぎ、治癒に向かうことが多いです。しかし、不適切なケアを続けたり、原因が改善されなかったりすると、慢性化し、治るまでに数週間から数ヶ月、あるいはそれ以上かかることもあります。慢性化した場合は自然に治ることは難しく、医療機関での専門的な治療が必要になります。焦らず、根気強く治療を続けることが大切です。

切れ痔を放っておくとどうなる?

「そのうち治るだろう」「痛いけど我慢できる」と切れ痔を放置してしまうと、様々な問題を引き起こす可能性があります。

慢性化のリスク

急性期の切れ痔は、適切なケアで比較的容易に治癒しますが、放置したり、原因を取り除かずに繰り返したりしていると、傷が深くなったり、治りにくくなったりして慢性化します。慢性的な切れ痔は痛みが持続したり、治りにくくなったりするだけでなく、以下のような合併症を引き起こしやすくなります。

肛門ポリープ・見張りいぼ

慢性的な炎症や繰り返しの傷によって、傷の入り口付近の皮膚や粘膜組織が過剰に増殖し、肛門ポリープや見張りいぼ(肥大性乳頭)が形成されることがあります。これらができると、さらに排便時に刺激されて傷つきやすくなったり、肛門の違和感の原因になったりします。

肛門狭窄

慢性的な切れ痔が治癒する過程で、傷跡が引きつれて硬い瘢痕(はんこん)組織になることがあります。これが肛門管全体に広がると、肛門が狭くなってしまい、排便が困難になります(肛門狭窄)。狭くなった肛門を無理に便が通過しようとすると、さらに傷ができやすくなり、切れ痔が悪化するという悪循環に陥ります。肛門狭窄が進行すると、手術が必要になるケースが多いです。

痔ろうへの進行

切れ痔の傷口から細菌が感染し、肛門の周りにある肛門腺(便の滑りを良くする粘液を出す腺)に炎症が広がることがあります。炎症が進行すると、肛門の周りに膿が溜まる肛門周囲膿瘍(のうよう)となり、さらに膿が皮膚を破って外に流れ出るトンネルができることがあります。これが「痔ろう(あな痔)」です。痔ろうは自然に治ることはなく、がん化のリスクも指摘されているため、必ず手術が必要になります。切れ痔から痔ろうになるケースは比較的まれですが、可能性として知っておくべきリスクです。

こんな症状が出たら専門医へ相談

切れ痔の症状は自分でケアできる場合もありますが、以下のような症状が見られる場合は、放置せず、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

受診を検討すべき症状

  • 痛みが非常に強い、または持続する: 日常生活に支障が出るほどの痛みや、排便時以外も痛みが続く場合。
  • 出血が多い、または続く: 毎回出血する、出血量が多い、数日経っても出血が止まらない場合。
  • 市販薬を使っても改善が見られない: セルフケアや市販薬を数日〜1週間試しても症状が良くならない場合。
  • 肛門にいぼや腫れが大きい、または硬い: 見張りいぼなどが大きく、触れると痛い、または硬くなっている場合。
  • 肛門が狭くなった感じがする、排便が困難: 便が出にくくなった、細くなったなどの症状がある場合。
  • 発熱を伴う、または肛門の周りが赤く腫れて熱を持っている: 感染や炎症が強く疑われる場合。
  • 出血が黒っぽい、または便に血液が混ざっている: 切れ痔以外の消化管からの出血が疑われる場合。
  • 原因不明の下痢や便秘が続く: 切れ痔の原因となっている便通異常がなかなか改善しない場合。

これらの症状は、切れ痔が進行しているサインであったり、他の病気が隠れていたりする可能性を示しています。早期に専門医の診断を受けることが、適切な治療につながり、症状の悪化や合併症を防ぐために非常に重要です。

何科を受診すべきか

肛門の症状を診てもらう場合は、以下の科を受診するのが一般的です。

  • 肛門科: 肛門疾患を専門としている科です。最も専門的な知識と経験を持った医師が診療にあたります。
  • 胃腸科/消化器外科: 肛門疾患も消化器系の一部として診療対象としています。多くの病院に設置されており、受診しやすいでしょう。

可能であれば、肛門疾患を専門としている「肛門科」を受診することをおすすめします。専門医がいる医療機関であれば、切れ痔だけでなく、いぼ痔や痔ろうなど、他の肛門疾患の可能性も適切に診断し、最適な治療法を提案してもらえます。受診することに抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、肛門の病気は決して特別なものではありません。医師は多くの患者さんを診てきているため、安心して相談してください。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療法を推奨するものではありません。個人の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。


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