耳鳴りの治し方|原因を知って自分でできる対策を徹底解説

つらい耳鳴りに悩んでいませんか?「キーン」「ジー」といった不快な音が常に聞こえることで、集中力が続かなくなったり、眠れなくなったり、日常生活に大きな影響が出ている方もいらっしゃるでしょう。
耳鳴りは多くの人が経験する症状ですが、「なぜ起こるの?」「どうすれば治るの?」と疑問や不安を抱えている方も少なくありません。

この記事では、耳鳴りの原因や種類、ご自宅でできる簡単なセルフケア方法から、病院での専門的な治療法、そして「病院に行くべきか?」と迷った時の受診の目安まで、耳鳴りの治し方について詳しく解説します。
この記事を参考に、あなたの耳鳴りが少しでも楽になるヒントを見つけてください。

耳鳴りとは?原因と種類を解説

耳鳴りは、実際には外部に音源がないにもかかわらず、自分だけに音が聞こえるように感じる現象です。多くの人が一度は経験する可能性のある症状ですが、その感じ方や原因は人によって大きく異なります。

耳鳴りのメカニズム

耳鳴りが起こるメカニズムは完全に解明されているわけではありませんが、いくつかの説があります。最も有力な説の一つは、内耳(音を感じ取る部分)や聴覚神経、さらには脳の聴覚に関わる領域に何らかの異常が生じ、本来ないはずの音を脳が誤って認識してしまうというものです。

私たちの脳は、耳から入ってくる情報だけでなく、過去の経験や予測に基づいて音を処理しています。聴覚システムにダメージがあったり、脳の情報処理に変化が起きたりすると、このシステムが誤作動を起こし、耳鳴りとして感じ取られると考えられています。特に難聴がある場合、外からの音が聞こえにくくなったことで、脳が活動を高めて信号を補おうとし、それが耳鳴りとして認識される、という説もあります。

耳鳴りの主な原因

耳鳴りの原因は多岐にわたります。耳そのものに原因がある場合と、全身の病気や精神的な要因が関係している場合があります。

耳の病気:

  • 加齢性難聴: 年齢とともに聴力が低下する際に、耳鳴りを伴うことが多いです。
  • 騒音性難聴: 大きな音に長時間さらされたり、突発的に強い音を聞いたりすることで聴覚細胞が傷つき、難聴と耳鳴りを引き起こします。ヘッドホンやイヤホンでの大音量も原因になり得ます。
  • 突発性難聴: 突然片耳または両耳の聴力が低下する病気で、高い確率で耳鳴りやめまいを伴います。早期治療が重要です。
  • メニエール病: 回転性のめまい、難聴、耳鳴り、耳閉感(耳が詰まった感じ)を繰り返す病気です。内耳のリンパ液の異常が関係しているとされます。
  • 外耳炎・中耳炎: 外耳道や中耳の炎症によって、一時的に耳鳴りが起こることがあります。
  • 耳垢塞栓: 耳垢が溜まって外耳道を塞いでしまうと、音が聞こえにくくなるだけでなく、耳鳴りが生じることがあります。
  • 聴神経腫瘍: 聴神経にできる良性の腫瘍で、片耳の難聴、耳鳴り、めまい、顔面のしびれなどを引き起こすことがあります。比較的稀な原因ですが、注意が必要です。

全身の病気・その他の原因:

  • 高血圧・低血圧: 血圧の変動が耳の血行に影響を与えることがあります。
  • 貧血: 酸素不足が耳の機能に影響することがあります。
  • 甲状腺機能異常: ホルモンバランスの乱れが耳鳴りを引き起こすことがあります。
  • 糖尿病: 末梢神経や血管に影響を与え、耳鳴りの原因となることがあります。
  • 顎関節症: 顎の関節の不調が、耳の近くの神経や筋肉に影響して耳鳴りや耳の痛みを引き起こすことがあります。
  • 肩こり・首こり: 首や肩周りの筋肉の緊張が血行不良を引き起こし、耳鳴りに関連することがあります。
  • ストレス・疲労: ストレスや疲労が自律神経のバランスを崩し、耳の機能や脳の情報処理に影響して耳鳴りを悪化させることがあります。
  • 睡眠不足: ストレスや疲労と同様に、自律神経の乱れにつながります。
  • 喫煙・飲酒: 血行を悪化させたり、神経系に影響を与えたりする可能性があります。
  • 特定の薬剤の副作用: アスピリンや一部の抗生物質など、特定の薬が耳鳴りを引き起こすことがあります。

このように、耳鳴りの原因は一つとは限りません。複数の要因が複雑に絡み合っていることも少なくありません。

耳鳴りの種類(キーン、ジーなど)

耳鳴りは、聞こえる音の種類によって大きく分けられます。代表的なものに「キーン」「ジー」「ザー」「ブーン」といった音があります。

  • 「キーン」「ピー」という高音性の耳鳴り:
    最も一般的で、内耳の細胞(有毛細胞)の障害や、加齢性難聴、騒音性難聴に伴って起こることが多いです。高い周波数の音を感じる細胞は音の刺激に弱く、ダメージを受けやすいためと考えられます。多くの耳鳴りはこちらに分類されます。
  • 「ジー」「ザー」「ゴー」という低音性の耳鳴り:
    メニエール病の初期や、滲出性中耳炎、耳管狭窄症(耳と鼻をつなぐ耳管の働きが悪くなる)などで起こることがあります。血管の拍動が聞こえる「拍動性耳鳴り」(ドクンドクンなど)もこの範疇に入ることがあり、こちらはまれに血管の異常が原因の可能性もあるため注意が必要です。
  • 「ブーン」「シュー」というような耳鳴り:
    原因は様々で、ストレスや自律神経の乱れ、血圧の変動などが関係していることもあります。
  • 「カタカタ」「カサカサ」といった耳鳴り:
    これは耳の内部にある筋肉が痙攣したり、耳垢や異物が鼓膜に触れたりすることで生じる「他覚的耳鳴り」の可能性があります。自分だけでなく、医師が診察時に聞き取れる場合もあります。

耳鳴りの音の種類や大きさ、聞こえる頻度(常時聞こえる、時々聞こえる、特定の状況で聞こえるなど)は、原因を特定する上で重要な手がかりとなります。

耳鳴りと難聴の関係性

耳鳴りを訴える方の多くに、何らかの難聴が合併していることが知られています。特に、加齢性難聴や騒音性難聴など、感音性難聴(音を感知する内耳や聴神経の障害による難聴)がある場合に耳鳴りを伴うことが多いです。

音が聞こえにくくなると、脳は音の情報を補うために聴覚に関わる領域の活動を高めると考えられています。この過剰な活動が、耳鳴りとして認識されるという説が有力です。難聴があっても耳鳴りを感じない人もいれば、軽度の難聴でも強い耳鳴りを感じる人もいるなど、その関連性は複雑です。

しかし、耳鳴りの背景に難聴が隠れていることは非常に多いため、耳鳴りが気になる場合は、聴力検査を受けることが大切です。難聴が改善したり、補聴器などで音刺激を与えたりすることで、耳鳴りが和らぐこともあります。

目次

自宅でできる耳鳴りの簡単ケア・対処法

耳鳴りの原因によっては、自宅でのセルフケアや生活習慣の改善が症状の緩和につながることがあります。すぐにできることから試してみましょう。ただし、これらのケアはあくまで補助的なものであり、医療行為に代わるものではありません。症状が続く場合や悪化する場合は、必ず医療機関を受診してください。

生活習慣の改善で耳鳴りを和らげる

全身の健康状態は耳の機能にも影響を与えます。特にストレスや疲労は耳鳴りを悪化させる大きな要因の一つです。規則正しい生活を送ることは、耳鳴りの緩和だけでなく、全身の健康維持にもつながります。

十分な睡眠と休息の確保

睡眠不足は自律神経の乱れを引き起こし、耳鳴りを強く感じさせることがあります。質の高い十分な睡眠をとることは、心身の回復に不可欠です。

  • 就寝・起床時間を一定にする: 体内時計が整い、質の良い睡眠につながります。
  • 寝る前にリラックスする: 温かいお風呂に入る、軽いストレッチをする、カフェインやアルコールを控えるなどが有効です。
  • 寝室環境を整える: 暗く静かで快適な温度・湿度に保ちましょう。耳鳴りが気になって眠れない場合は、枕元に小さな音源(後述のサウンドジェネレーターなど)を置いて耳鳴りをごまかす方法も有効な場合があります。

ストレスを解消する方法

ストレスは耳鳴りを悪化させる大きな要因です。自分に合った方法でストレスを上手に解消することが重要です。

  • 趣味や好きなことに時間を割く: 心が安らぎ、リフレッシュできます。
  • リラクゼーションを取り入れる: 深呼吸、瞑想、ヨガ、アロマテラピーなどが効果的です。
  • 適度に体を動かす: 後述する運動もストレス解消に役立ちます。
  • 親しい人と話す: 悩みを打ち明けたり、楽しい時間を過ごしたりすることで気分転換になります。
  • デジタルデトックス: スマートフォンやパソコンから離れる時間を作ることも大切です。

適度な運動を取り入れる

軽い運動は血行を促進し、ストレス解消や睡眠の質の向上にもつながります。ウォーキング、ストレッチ、軽いジョギングなど、無理なく続けられる運動を日常に取り入れましょう。ただし、激しすぎる運動はかえって体を疲れさせてしまう可能性があるので注意が必要です。

バランスの取れた食事

栄養バランスの偏りは全身の不調につながります。特に耳鳴りに関連するとされる栄養素に注目してみましょう。

  • ビタミンB群: 神経機能の維持に関わるため、積極的に摂取したい栄養素です。豚肉、レバー、魚介類、大豆製品などに豊富です。
  • ビタミンE: 血行促進効果が期待できます。ナッツ類、植物油、うなぎなどに含まれます。
  • ミネラル(特に亜鉛): 味覚や嗅覚だけでなく、聴覚機能にも関与すると言われています。牡蠣、牛肉、チーズなどに含まれます。
  • カフェインやアルコールの過剰摂取を控える: これらは血管を収縮させたり、神経を刺激したりする可能性があり、耳鳴りを悪化させることがあります。

特定の食事療法だけで耳鳴りが治るわけではありませんが、バランスの取れた食事は全身の健康を支え、耳鳴りの症状安定に貢献する可能性があります。

耳鳴りを止めるツボ押し・マッサージ

東洋医学的な観点や血行促進の観点から、耳の周りや関連するツボを刺激することで耳鳴りの症状が和らぐことが期待されます。

効果的なツボ(聴宮など)とその位置・押し方

耳鳴りに効果があるとされる代表的なツボとその押し方を紹介します。

  • 聴宮(ちょうきゅう):
    • 位置: 耳珠(耳の穴の前にある突起)のすぐ前、口を開くとへこむ部分。
    • 押し方: 人差し指や中指の腹で、口を軽く開けながら、気持ち良いと感じる程度の強さでゆっくりと押します。数秒キープして離す、を数回繰り返します。
  • 耳門(じもん):
    • 位置: 聴宮のすぐ上で、耳の穴の上部あたり。口を開けるとへこむ部分。
    • 押し方: 聴宮と同様に、指の腹で気持ち良い強さで押します。
  • 和髎(わりょう):
    • 位置: 耳珠の前、髪の生え際あたり。口を開けると脈拍を感じる部分。
    • 押し方: 指の腹で軽く円を描くようにマッサージするか、優しく押します。
  • 翳風(えいふう):
    • 位置: 耳たぶの後ろ側、骨の出っ張りのすぐ下にあるくぼみ。
    • 押し方: 親指や人差し指で、下方向に向かって優しく押します。首や肩のこりにも効果が期待できます。

ツボ押しを行う際は、清潔な手で行い、肌を傷つけないように爪を立てないように注意しましょう。痛みを感じるほど強く押す必要はありません。毎日続けることが大切です。

耳周りの簡単なマッサージ方法

耳の周りの血行を促進する簡単なマッサージも効果が期待できます。

  1. 耳全体を揉む: 耳たぶから耳の上部まで、耳全体を指で優しく揉みほぐします。特に硬くなっている部分を中心に。
  2. 耳を引っ張る: 耳たぶを軽く下方向に引っ張り、耳の上部を斜め上に引っ張り、耳の後ろ側を後ろに引っ張ります。それぞれ数秒キープします。
  3. 耳を折りたたむ: 耳全体を内側に優しく折りたたみ、数秒キープします。
  4. 耳を温める: 手のひらで耳全体を覆うようにして温めます。

これらのマッサージは、入浴中や入浴後など体が温まっている時に行うとより効果的です。耳周りの筋肉の緊張を和らげ、血行を改善することで、耳鳴りが軽減される可能性があります。

耳を温めるセルフケア

耳の周りの血行が悪くなると、耳鳴りが悪化することがあります。耳を温めることで血行が促進され、耳鳴りが和らぐことが期待できます。

  • ホットタオル: 濡らしたタオルを電子レンジで温め(火傷に注意!)、適温になったら耳全体を覆うように当てます。
  • 使い捨てカイロ: 直接肌に貼らず、タオルやハンカチで包んで耳の周りに当てます。
  • 蒸しタオルやカイロがない場合: 両手のひらで耳全体を優しく覆い、手のひらの体温で耳を温めるだけでも効果があります。

ただし、炎症がある場合や発熱時は温めないでください。また、長時間当てすぎると低温火傷の危険があるため注意が必要です。

音響療法(サウンドジェネレーター)の活用

耳鳴りそのものを完全に消すのではなく、「耳鳴りが気にならない状態」を目指す方法の一つに音響療法があります。これは、耳鳴りよりも小さな音(サウンドジェネレーターなどから流れる広帯域ノイズや自然音)を同時に聞くことで、耳鳴りへの意識をそらしたり、脳が耳鳴りの音に慣れる(馴化)のを助けたりする治療法です。

  • サウンドジェネレーター: 耳の後ろに装着するタイプや、据え置きタイプがあります。自然音(波の音、川のせせらぎなど)や、シューっというホワイトノイズなどを流せます。
  • 環境音の活用: CDやスマートフォンのアプリを使って、自然音やリラックスできる音楽を流すのも有効です。
  • 使い方: 耳鳴りよりもわずかに小さい音量で、継続的に(特に耳鳴りが気になる時や寝る時など)聞くのがポイントです。耳鳴りを「かき消す」ほど大きな音で聞くと、かえって耳に負担をかけたり、難聴を進行させたりする可能性があるので避けましょう。

音響療法は、耳鳴りを「怖い」「不快だ」と感じる脳の反応を変えていくための補助療法です。医師や専門家の指導のもとで行うとより効果的です。

耳鳴りを気にしすぎない工夫(認知行動療法の考え方)

耳鳴りそのものよりも、「耳鳴りがするせいで眠れない」「集中できない」「何か悪い病気なのではないか」といった不安や否定的な感情が、耳鳴りの苦痛を増大させていることがあります。認知行動療法(CBT)は、こうした考え方や行動パターンに働きかけ、耳鳴りとの付き合い方を変えていく心理療法です。

  • 耳鳴りへの否定的な考え方を客観的に捉える: 「耳鳴りがするからダメだ」→「耳鳴りはするけれど、他のことにも集中できる時間はたくさんある」のように、考え方を変えてみる。
  • 耳鳴り以外のことに注意を向ける練習: 耳鳴りがした時に、「あ、鳴っているな」と意識するのをやめ、目の前の作業や他の音(環境音など)に意識を向ける練習を繰り返す。
  • リラックスできる行動を取り入れる: 緊張していると耳鳴りを強く感じやすいので、リラクゼーション法(深呼吸など)を実践する。
  • 耳鳴りについて学び、正しく理解する: 耳鳴りが必ずしも重篤な病気のサインではないことを知ることで、不安を軽減できる。

これらの考え方を日常生活に取り入れることで、耳鳴りに対する過度な反応を抑え、耳鳴りがあっても比較的平穏に過ごせるようになることを目指します。これはTRT療法の一部としても行われます。

病院での耳鳴り治療法

セルフケアを試しても改善が見られない場合や、耳鳴り以外の症状(難聴、めまい、痛みなど)がある場合は、専門医(耳鼻咽喉科)を受診することが重要です。病院では、耳鳴りの原因を特定し、それに応じた治療が行われます。

耳鼻科での検査内容

耳鳴りで耳鼻科を受診すると、まず詳しい問診が行われます。耳鳴りが始まった時期、聞こえる音の種類、大きさ、頻度、片耳か両耳か、他の症状(めまい、難聴、耳閉感、痛みなど)の有無、既往歴、服用中の薬など、詳しく伝えると診断の手助けになります。

その後、以下のような検査が行われるのが一般的です。

検査名 内容 目的
聴力検査 様々な高さ(周波数)の音を聞かせ、最も小さく聞こえる音の大きさを測る(閾値純音聴力検査)。骨導聴力も測る。 難聴の有無や程度、種類(感音性か伝音性か)を調べる。多くの耳鳴りに難聴が合併しているため必須の検査。
語音聴力検査 聞き取った言葉を復唱してもらい、言葉の聞き取り能力を評価する。 実際のコミュニケーション能力を測る。補聴器適応の判断などに用いる。
ティンパノメトリー 鼓膜に圧力をかけ、鼓膜や中耳の動きやすさを測る。 中耳炎や耳管機能不全など、中耳の病変を調べる。
耳音響放射(OAE) 内耳の有毛細胞が音に反応して出す微弱な音を測定する。 内耳の機能、特に有毛細胞の健康状態を非侵襲的に調べる。
聴性脳幹反応(ABR) クリック音を聞かせ、脳波を測定し、聴神経から脳幹にかけての音の伝わり方を調べる。 聴神経や脳幹の異常(聴神経腫瘍など)を調べる。聴力検査が困難な場合にも用いられる。
耳鳴検査(Tinnitogram) 耳鳴りの音に近い高さや大きさを測定する。 耳鳴りの客観的な情報を得る。治療効果の判定に参考になる場合がある。
画像検査(MRI/CT) 必要に応じて、脳や聴神経、側頭骨などを詳しく調べる。 聴神経腫瘍や脳血管疾患など、耳以外に原因がある可能性を調べる。
血液検査 貧血、糖尿病、甲状腺機能異常など、全身疾患の可能性を調べる。 全身状態から耳鳴りの原因を探る。

これらの検査結果を総合的に判断し、耳鳴りの原因や病態に合わせた治療方針が立てられます。

薬物療法(循環改善薬、ビタミン剤、漢方薬など)

耳鳴りの原因や症状に応じて、様々な種類の薬が処方されます。これらの薬は耳鳴りそのものを完全に消すというよりは、耳鳴りを引き起こしている可能性のある要因に働きかけたり、症状を和らげたりすることを目的とします。

  • 循環改善薬:
    耳の内耳や脳の血行を改善することで、耳鳴りを和らげる効果が期待されます。(例:ストロンチウム含有製剤など)
  • ビタミン剤:
    特にビタミンB群(神経機能の維持)やビタミンE(血行促進)などが用いられることがあります。(例:メチコバールなど)
  • 精神安定剤・抗不安薬:
    耳鳴りによる不安や不眠が強い場合に、症状を和らげるために短期間用いられることがあります。依存性に注意が必要です。
  • 漢方薬:
    体全体のバランスを整えることで耳鳴りの改善を目指します。個々の体質や症状に合わせて様々な種類の漢方薬が用いられます。(例:柴苓湯、五苓散、半夏白朮天麻湯、釣藤散など)
  • ステロイド薬:
    突発性難聴など、炎症が原因と考えられる耳鳴りに対して、早期に炎症を抑える目的で用いられることがあります。

薬の効果には個人差が大きく、効き始めるまでに時間がかかる場合もあります。医師の指示通りに服用し、勝手に中断したりせず、効果や副作用について医師に相談しながら治療を進めることが大切です。

心理療法・カウンセリング

耳鳴りは、不安やストレスによって悪化したり、耳鳴り自体が新たなストレスの原因になったりすることがあります。心理療法やカウンセリングは、耳鳴りに対する考え方や感じ方を変え、耳鳴りによる苦痛を軽減することを目的とします。

  • 耳鳴りに関する正しい知識の提供: 耳鳴りは珍しい症状ではないこと、多くの場合は重篤な病気ではないこと、耳鳴りがあっても慣れることが可能であることなどを説明し、不安を軽減します。
  • 認知行動療法の考え方を取り入れたカウンセリング: 前述の「耳鳴りを気にしすぎない工夫」を実践できるよう、否定的な思考パターンを変え、注意の向け方を変える練習をサポートします。
  • リラクゼーション法の指導: ストレスや緊張を和らげるための具体的な方法(深呼吸、筋弛緩法など)を学びます。

心理的なアプローチは、耳鳴りそのものの音量を下げるわけではありませんが、耳鳴りに対する苦痛や不快感を大きく軽減し、日常生活への影響を最小限に抑える上で非常に有効です。

TRT療法(耳鳴り再訓練療法)

TRT療法(Tinnitus Retraining Therapy)は、現在、国際的にも推奨されている耳鳴りの主要な治療法の一つです。耳鳴りそのものを消すのではなく、「耳鳴りが気にならなくなる」状態を目指す治療法です。

TRT療法は主に以下の2つの柱から成り立っています。

  1. カウンセリング(指示的カウンセリング):
    耳鳴りのメカニズムや脳の働きについて、専門家が分かりやすく説明します。耳鳴りが起こる理由を正しく理解し、「怖いものではない」「慣れることができる」という認識を持つことで、耳鳴りに対する否定的な感情や恐怖心を軽減します。耳鳴りに対する注意を減らす方法についても指導します。
  2. 音響療法:
    前述の「音響療法(サウンドジェネレーター)の活用」と同様に、サウンドジェネレーターなどを用いて、耳鳴りよりも小さな音を環境音として流します。これは、脳が耳鳴りの音に過度に注意を向けないようにするため、また、聴覚システムに音の刺激を与え続けることで、脳が耳鳴りの音を重要な信号として処理しないように「再訓練」することを目的とします。

TRT療法は、脳の可塑性(経験によって構造や機能が変化する能力)を利用した治療法です。効果が出るまでに数ヶ月から1年以上かかることもありますが、耳鳴りの苦痛を大きく軽減し、日常生活の質を向上させる効果が多くの研究で報告されています。専門的な知識と指導が必要なため、TRT療法を行っている医療機関を受診する必要があります。

補聴器・集音器の使用

耳鳴りの背景に難聴がある場合、補聴器や集音器の使用が耳鳴りの緩和につながることがあります。

  • 補聴器: 難聴によって聞こえにくくなった音を補い、外からの音を脳に届けます。外からの音刺激が増えることで、相対的に耳鳴りが気になりにくくなったり、脳が耳鳴りの音に注意を向けにくくなったりする効果が期待できます。また、多くの補聴器には耳鳴りマスキング機能(サウンドジェネレーターのように音を流す機能)が搭載されています。
  • 集音器: 補聴器と似ていますが、医療機器ではなく、単純に音を大きくするものです。難聴の程度によっては有効な場合もありますが、補聴器のように個々の聴力に合わせて細かく調整することはできません。

補聴器は専門家(耳鼻咽喉科医や認定補聴器技能者)による適切なフィッティングと調整が非常に重要です。安易に購入せず、必ず専門機関に相談しましょう。

他の病気が原因の場合の治療

耳鳴りが、突発性難聴、メニエール病、聴神経腫瘍、顎関節症など、他の特定の病気が原因で起こっている場合は、その原因疾患に対する治療が優先されます。

  • 突発性難聴: ステロイド薬の点滴や内服、血行促進剤、ビタミン剤などを用いた薬物療法が、発症から早期(一般的に2週間以内)に行われます。
  • メニエール病: めまい発作を抑える薬(抗めまい薬、利尿剤など)、耳鳴りや難聴に対する薬物療法、生活習慣の改善(ストレス管理、塩分制限など)が行われます。
  • 聴神経腫瘍: 腫瘍の大きさや増大速度、症状によって、経過観察、手術、放射線治療などが選択されます。
  • 顎関節症: 歯科口腔外科などで、マウスピース治療、理学療法、薬物療法などが行われます。

原因疾患が特定できた場合は、その治療を進めることで耳鳴りも改善することが期待できます。

耳鳴りで病院に行くべき目安

「耳鳴りがするけれど、このくらいなら大丈夫かな?」「様子を見てもいいの?」と迷う方もいらっしゃるでしょう。耳鳴りは必ずしも重篤な病気のサインではありませんが、中には注意が必要な場合もあります。ここでは、耳鳴りで病院を受診すべき目安について解説します。

放置しても大丈夫?危険な耳鳴りとは

一時的な耳鳴り(静かな場所に入った時や、疲れている時に短時間だけ聞こえるなど)や、両耳に同じように聞こえる耳鳴りで、他に症状がない場合は、それほど心配いらないことが多いです。しかし、以下のような耳鳴りには注意が必要です。

  • 突然始まった耳鳴り: 特に、昨日まで全く耳鳴りがなかったのに、急に強い耳鳴りが始まった場合。突発性難聴など、早期治療が必要な病気の可能性があります。
  • 片耳だけの耳鳴り: 片方の耳だけに聞こえる耳鳴りは、その耳に何らかの局所的な原因がある可能性を示唆します。聴神経腫瘍など、まれな疾患の可能性もゼロではないため、一度専門医の診察を受けることをお勧めします。
  • 耳鳴り以外の症状を伴う場合:
    • 難聴(聞こえにくい): 耳鳴りと同時に、あるいは少し遅れて聞こえが悪くなった場合。
    • めまい: 特に回転性のめまいを伴う場合。メニエール病や突発性難聴などが考えられます。
    • 耳の痛みや耳垂れ: 外耳炎や中耳炎の可能性。
    • 顔の麻痺やしびれ: 聴神経腫瘍など、神経系の病気の可能性。
    • 頭痛や手足のしびれ: 脳の病気の可能性。
  • 「ドクンドクン」という拍動性の耳鳴り: 心臓の拍動と同期するような耳鳴りは、耳の近くの血管の異常や高血圧などが原因の可能性があり、精査が必要な場合があります。
  • 徐々に悪化していく耳鳴り: 最初は軽かったのに、だんだん音が大きくなったり、聞こえる頻度が増えたりする場合。

これらの症状に当てはまる場合は、「大丈夫だろう」と自己判断せず、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。

どのくらい続いたら受診すべき?

耳鳴りがどのくらい続いたら病院に行くべきかという明確な基準はありませんが、目安としては以下のようになります。

  • 数日経っても改善しない耳鳴り: 特に原因が思い当たらないのに耳鳴りが数日以上続く場合は、一度受診して相談してみましょう。
  • 日常生活に支障が出ている耳鳴り: 耳鳴りのせいで眠れない、集中できない、イライラするなど、耳鳴りがストレスになり、生活の質が低下している場合は、症状を和らげるための治療やケアについて相談するために受診することをお勧めします。
  • 不安が強い場合: 耳鳴りについて不安で仕方がない、他の病気ではないかと心配になる場合も、医療機関で検査を受けて原因を調べてもらうことで、安心できることがあります。

迷ったら、まずは耳鼻咽喉科に電話で相談してみるのも良いでしょう。症状を伝えれば、受診の必要性についてアドバイスをもらえる場合があります。

片耳だけの耳鳴り、キーンとする耳鳴りの注意点

前述の通り、片耳だけの耳鳴りは特に注意が必要です。片方の耳だけに原因がある可能性が高く、まれではありますが聴神経腫瘍などが隠れている可能性も否定できません。片耳の耳鳴りが続く場合は、必ず一度耳鼻咽喉科で詳しい検査を受けてください。

「キーン」とする耳鳴りは最も一般的なタイプですが、これも難聴を伴っていることが非常に多いです。自覚症状がなくても、高音域の難聴が進んでいることがあります。難聴の有無や程度を確認するためにも、聴力検査を受けることが推奨されます。また、急に始まった高い音の耳鳴りも、突発性難聴などの可能性を考慮し、早期受診が必要です。

耳鳴りの予防と再発防止

一度耳鳴りが起こると、完全に消すことが難しい場合もありますが、日常生活の中で耳への負担を減らし、耳鳴りの悪化を防いだり、再発を予防したりすることは可能です。

日常生活で注意すること

  • 騒音から耳を守る:
    • 工事現場や大きな音がする場所では耳栓を使用する。
    • ヘッドホンやイヤホンで音楽を聞く際は、音量を控えめにする(目安は、電車内などで隣の人に聞こえない程度の音量)。長時間の使用は避ける。
    • ライブやクラブなど大音量の場所に長時間いる際は、適度に休憩を取るか、耳栓を使用する。
  • 耳を休ませる時間を作る:
    常に音にさらされている環境から離れ、静かな場所で耳を休ませる時間を作りましょう。
  • ストレスや疲労を溜め込まない:
    前述のストレス解消法や十分な休息を取り入れ、心身の健康を保つことが重要です。
  • 首や肩のこりを改善する:
    適度な運動やストレッチ、マッサージなどで血行を促進し、首や肩周りの緊張を和らげましょう。
  • 全身疾患の管理:
    高血圧、糖尿病、貧血など、耳鳴りの原因となりうる全身疾患がある場合は、主治医の指示に従って適切に管理することが重要です。
  • 耳に良い栄養素を意識する:
    ビタミンB群、ビタミンE、亜鉛などを意識して食事に取り入れましょう。
  • 喫煙を控える:
    喫煙は血行を悪化させ、耳の機能にも悪影響を与える可能性があります。

定期的な耳の健康チェック

特に40代以降は、加齢に伴う聴力低下が始まる方が増えてきます。難聴は徐々に進行するため、自分では気づきにくいこともあります。定期的に耳鼻咽喉科で聴力検査を受けることで、耳の健康状態を把握し、難聴や耳鳴りの兆候を早期に発見することができます。早期発見・早期対応は、症状の進行を防ぎ、適切なケアや治療につながる可能性があります。

耳鳴りについてよくある質問

Q: 耳鳴りは自然に治りますか?
A: 一過性の耳鳴りであれば、自然に治ることもあります。しかし、数日以上続いたり、悪化したり、他の症状を伴う場合は、医療機関を受診して原因を調べることが重要です。原因によっては早期治療が有効な場合もあります。

Q: 耳鳴りがする時は静かな場所にいた方が良いですか?
A: 極端な静寂はかえって耳鳴りを強く感じさせることがあります。耳鳴りが気になる時は、静かすぎない環境にいる方が良い場合が多いです。小さな音(自然音や環境音、サウンドジェネレーターの音など)を流す音響療法が有効な場合もあります。

Q: 耳鳴りはストレスが原因ですか?
A: ストレスや疲労は耳鳴りを引き起こしたり、悪化させたりする大きな要因の一つです。しかし、耳鳴りの原因はそれだけではありません。耳の病気や全身の病気など、様々な原因が考えられます。ストレスが関係している場合でも、他の原因がないか確認するために医療機関を受診することが推奨されます。

Q: 耳鳴りに効くサプリメントはありますか?
A: ビタミンB群や亜鉛など、耳の健康に関わる栄養素を含むサプリメントが市販されていますが、これらのサプリメントが耳鳴りを「治す」という科学的根拠は確立されていません。あくまで栄養補給の補助として考え、サプリメントだけに頼らず、バランスの取れた食事や医師による治療と並行して行うことが重要です。

Q: 耳鳴りと一緒にめまいがします。何かの病気ですか?
A: 耳鳴りとめまいを同時に伴う場合、メニエール病や突発性難聴、あるいは前庭神経炎など、内耳の病気の可能性が考えられます。特に回転性の強いめまいを伴う場合は、早急に耳鼻咽喉科を受診してください。

【まとめ】耳鳴りと向き合い、適切な対処を見つけよう

耳鳴りは非常に多くの人が経験する不快な症状ですが、その原因や感じ方、そして最適な「治し方」は一人ひとり異なります。ご自宅でできる生活習慣の改善やセルフケアは、耳鳴りを和らげるための第一歩として有効ですが、これらのケアはあくまで補助的なものです。

耳鳴りが続く場合、特に片耳だけの場合、急に始まった場合、難聴やめまいなど他の症状を伴う場合は、必ず耳鼻咽喉科を受診してください。専門医による正確な診断を受けることが、適切な治療や対処法を見つけるための最も重要なステップです。

病院では、様々な検査によって耳鳴りの原因を探り、薬物療法、心理療法、TRT療法、補聴器など、その人に合った治療法が提案されます。耳鳴りとうまく付き合い、日常生活への影響を最小限に抑えることは十分に可能です。

耳鳴りの苦痛を一人で抱え込まず、この記事を参考に、まずはできることから試してみたり、必要に応じて専門家を頼ったりして、耳鳴りと上手に付き合っていく方法を見つけていきましょう。

免責事項: 本記事は、耳鳴りに関する一般的な情報を提供するものであり、特定の治療法や製品を推奨するものではありません。耳鳴りの症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。本記事の情報に基づいて行ったいかなる行為についても、当社は一切の責任を負いません。

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