蓄膿症 症状を詳しく解説【副鼻腔炎のサイン】
蓄膿症(ちくのうしょう)は、医学的には「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」と呼ばれ、鼻の奥にある副鼻腔という空洞に炎症が起こり、膿が溜まる病気です。
「蓄膿症かな?」と感じる方の中には、鼻水や鼻づまりだけでなく、顔の痛みや頭重感など、様々な症状に悩まされている方が多くいらっしゃいます。
この記事では、蓄膿症の主な症状や原因、放置するリスク、そして適切な対処法について詳しく解説します。
ご自身の症状が蓄膿症によるものか気になる方、どのように対処すべきか知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
蓄膿症の症状に適切に対処するための一助となれば幸いです。
蓄膿症(副鼻腔炎)とは?
蓄膿症、すなわち副鼻腔炎は、鼻の周りにある骨の中の空洞である「副鼻腔」に炎症が生じ、本来排出されるべき分泌物や粘液が溜まり、感染が起こる状態を指します。
副鼻腔は、鼻腔(鼻の穴から喉までの空間)と細い通り道で繋がっています。
この通り道は普段は開いており、副鼻腔で分泌された粘液などを鼻腔へと排出したり、副鼻腔の換気を行ったりしています。
この粘液は、吸い込んだ空気中のほこりや細菌などを捕らえ、鼻腔の粘膜を保護する役割を担っています。
風邪やアレルギーなどによって鼻腔や副鼻腔の粘膜に炎症が起こると、この細い通り道が腫れて塞がってしまい、副鼻腔内の換気が悪くなります。
その結果、副鼻腔に分泌物が溜まりやすくなり、細菌やウイルスが増殖して炎症が悪化します。
この炎症が長引いたり、膿が溜まったりした状態が蓄膿症(副鼻腔炎)です。
副鼻腔は左右にそれぞれ、おでこの奥にある「前頭洞(ぜんとうどう)」、目の間にある「篩骨洞(しこつどう)」、頬の奥にある「上顎洞(じょうがくどう)」、鼻の一番奥にある「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」の4種類があります。
どの副鼻腔に炎症が起こるかによって、現れる症状の種類や痛む場所が異なる場合があります。
副鼻腔炎は、症状が比較的短期間で治まる「急性副鼻腔炎」と、症状が3ヶ月以上続く「慢性副鼻腔炎」に分類されます。
風邪が治った後も鼻の症状が長引く場合や、繰り返し副鼻腔炎を起こす場合は、慢性化している可能性があります。
蓄膿症の主な症状リスト
蓄膿症の症状は多岐にわたり、その程度も人によって、また病状の進行度によって異なります。
主な症状には以下のようなものがあります。
- ドロドロした鼻水が出る(黄色や緑色): 副鼻腔に溜まった膿が鼻水として出てくるため、粘り気が強く、色がついているのが特徴です。
- 鼻づまりがひどい・鼻の奥が詰まる: 炎症により副鼻腔や鼻腔の粘膜が腫れたり、膿が溜まったりすることで空気の通り道が狭くなります。
- 鼻や口から嫌な臭いがする: 溜まった膿が腐敗することで、不快な悪臭(自臭症や他臭症)を発生させます。
- 顔面(頬・目・おでこ・歯)が痛む: 炎症が神経を刺激したり、副鼻腔内の圧力が高まったりすることで、炎症が起きている副鼻腔の周囲に痛みを感じます。
- 頭痛や頭が重い感じがする: 副鼻腔の炎症や膿の貯留が頭部に影響し、頭重感や頭痛を引き起こします。
- においが分かりにくい(嗅覚障害): 鼻腔の空気の通りが悪くなったり、嗅覚に関わる粘膜や神経が炎症の影響を受けたりすることで、においを感じにくくなります。
- 喉の奥に鼻水が流れる(後鼻漏): 副鼻腔から鼻腔に流れてきた鼻水が、さらに喉の奥へと流れ落ちる現象です。
これらの症状は、単独で現れることもありますが、複数が組み合わさって起こることが多いです。
また、日によって症状の強さが変動することもあります。
次に、これらの主な症状について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
ドロドロした鼻水が出る(黄色や緑色)
蓄膿症の非常に特徴的な症状の一つが、粘り気が強く、黄色や緑色をした鼻水です。
これは、副鼻腔内に溜まった炎症性の分泌物や白血球、細菌などが混じった「膿」が鼻水として排出されるためです。
健康な時の鼻水は、サラサラとして透明に近いのが一般的ですが、細菌やウイルスに感染して炎症が起こると、免疫細胞が活発に働き、これらの細胞の死骸や細菌などが鼻水に混じり、色がついて粘り気が増します。
黄色や緑色の鼻水は、特に細菌感染が起こっているサインと考えられます。
ドロドロした鼻水は、鼻をかんでもなかなか出しきれずに鼻腔に残ったり、喉の方へ流れていったりするため、非常に不快感をもたらします。
特に朝起きた時や横になった時に、多量に出ることもあります。
この膿性鼻水が長期間続く場合は、蓄膿症を強く疑う必要があります。
鼻づまりがひどい・鼻の奥が詰まる
蓄膿症による鼻づまりは、単なる風邪の時よりも頑固で、両方の鼻が完全に詰まってしまうことも少なくありません。
これは、炎症によって鼻腔と副鼻腔の間の通り道や鼻腔自体の粘膜が強く腫れ上がることに加え、副鼻腔内に大量の膿が溜まることで、空気の通り道が物理的に狭められるためです。
特に、鼻の奥、目の間や頬の奥にある副鼻腔の炎症がひどい場合、鼻の奥深くに詰まっているような感覚が強くなります。
片側の副鼻腔だけに炎症がある場合は、片方の鼻だけが詰まることもあります。
ひどい鼻づまりは、日常生活に大きな影響を与えます。
息苦しさを感じたり、口呼吸が増えることで喉が乾燥しやすくなったりします。
また、夜間の鼻づまりは睡眠を妨げ、集中力の低下や疲労感につながることもあります。
においを感じにくくなる嗅覚障害や、味が分かりにくくなる味覚障害の原因にもなります。
鼻や口から嫌な臭いがする
蓄膿症で溜まった膿は、細菌の活動などにより腐敗することがあります。
この腐敗によって発生するガスなどが、鼻や口から不快な悪臭として感じられることがあります。
この悪臭は、自分自身が感じる「自臭症」として現れることもあれば、周囲の人に指摘されて初めて気づく「他臭症」として現れることもあります。
特に、鼻をかんだ時や、後鼻漏によって鼻水が喉に流れてきた時に、強い臭いを感じやすいことがあります。
嫌な臭いは、日常生活や対人関係において大きな精神的負担となることがあります。
特に自臭症の場合、臭いを気にしすぎて外出をためらったり、人と話すのが怖くなったりすることもあります。
このような悪臭は、蓄膿症がかなり進行しているサインの一つとも言えます。
顔面(頬・目・おでこ・歯)が痛む
副鼻腔は顔の様々な場所に隣接しているため、副鼻腔の炎症が周囲の組織や神経を刺激することで、顔面に痛みを感じることがあります。
痛みの部位は、炎症を起こしている副鼻腔によって異なります。
炎症を起こしている副鼻腔 | 主な痛みの部位 |
---|---|
上顎洞(頬の奥) | 頬、奥歯、上の歯茎 |
前頭洞(おでこの奥) | おでこ、眉間の上 |
篩骨洞(目の間、鼻の付け根) | 目の周り、鼻の付け根、こめかみ |
蝶形骨洞(鼻の一番奥) | 頭頂部、後頭部、目の奥 |
特に急性期の副鼻腔炎では、炎症が強く、ズキズキとした激しい痛みを伴うことがあります。
痛む場所を指で軽く押すと、痛みが強くなることもあります。
また、頭を前に傾けたり、階段を上ったりするなど、頭を動かした時に痛みが強くなる傾向があります。
慢性期の場合、痛みが激しいことは少ないですが、副鼻腔の周りに重苦しさや圧迫感、鈍い痛みを感じることがあります。
これらの顔面痛は、特に風邪の症状が治まった後も続く場合、蓄膿症を疑う重要なサインです。
頭痛や頭が重い感じがする
蓄膿症による頭痛は、主に前頭洞や篩骨洞、蝶形骨洞の炎症によって引き起こされることが多い症状です。
炎症によって副鼻腔内の圧力が高まったり、炎症が周囲の神経や血管に影響したりすることで発生すると考えられています。
頭痛の多くは、おでこのあたりや眉間、こめかみ、後頭部など、炎症を起こしている副鼻腔に関連する部位に感じられます。
痛みの性質は、ズキズキとした痛みよりも、頭全体が重く締め付けられるような「頭重感」として感じられることが多いです。
この頭痛や頭重感は、特に朝起きた時や、前屈するなど頭を下に向けた時に症状が強くなる傾向があります。
これは、夜間に横になっていたり、頭を下げることで副鼻腔内の膿や分泌物が溜まりやすくなり、内部の圧力が高まるためと考えられています。
慢性的な頭重感は、集中力の低下やイライラなど、精神的な不調にもつながることがあります。
においが分かりにくい(嗅覚障害)
嗅覚障害は、蓄膿症によって鼻の空気の通り道が狭くなったり、においを感じ取る嗅上皮(きゅうじょうひ)という部分が炎症の影響を受けたりすることで起こります。
鼻づまりがひどいと、においのもととなる物質が嗅上皮まで届きにくくなるため、においを感じにくくなります。
これは、トンネルが塞がれて電車が通れないような状態に似ています。
また、嗅上皮自体の炎症や、その奥にある嗅神経が障害されることでも嗅覚は低下します。
嗅覚障害は、食事の風味が分からなくなったり、ガス漏れや火事などの危険なにおいに気づけなくなったりと、日常生活に大きな影響を与えます。
蓄膿症による嗅覚障害は、病状が改善すれば回復する可能性がありますが、長期間放置すると回復が難しくなる場合もあります。
喉の奥に鼻水が流れる(後鼻漏)
後鼻漏(こうびろう)は、鼻水が鼻の穴から外に出ずに、喉の奥へと流れ落ちる現象です。
蓄膿症では、多量の粘り気のある鼻水が産生されるため、後鼻漏の症状が頻繁にみられます。
喉に流れ落ちた鼻水は、異物感や不快感をもたらし、痰が絡むような感覚を引き起こします。
常に喉に何か張り付いているような感じがしたり、咳払いが増えたりします。
特に夜寝ている間に後鼻漏がひどくなり、咳込んで眠りを妨げられることもあります。
後鼻漏が続くと、喉の粘膜が炎症を起こし、喉の痛みやイガイガ感につながることもあります。
また、流れ落ちた鼻水が気管に入り込み、咳や喘息発作の原因となったり、声がかすれたりすることもあります。
さらに、口臭の原因になることもあり、自分では気づきにくい症状ですが、周囲に影響を与えることもあります。
蓄膿症の種類|急性・慢性の症状の違い
蓄膿症は、病状の経過によって大きく「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」に分けられます。
それぞれ原因や症状の現れ方に特徴があります。
特徴 | 急性副鼻腔炎 | 慢性副鼻腔炎(蓄膿症) |
---|---|---|
経過 | 4週間以内(通常10日〜2週間程度) | 3ヶ月以上 |
主な原因 | ウイルス感染(風邪)、細菌感染 | 急性副鼻腔炎の遷延、アレルギー、鼻ポリープ、喫煙など |
症状 | 急激で強い症状 | 比較的軽度だが長期間続く |
顔面痛 | ズキズキとした強い痛み、圧痛が顕著 | 鈍い痛み、重苦しさ、圧迫感 |
鼻水 | 最初はサラサラ、その後黄色や緑色のドロドロ | 黄色や緑色のドロドロ、後鼻漏が顕著 |
発熱 | 伴うことがある(特に小児) | ほとんど伴わない |
全身症状 | 倦怠感など伴うことがある | ほとんど伴わない(QOL低下は大きい) |
急性蓄膿症の症状
急性副鼻腔炎は、風邪などのウイルス感染や細菌感染が原因で、比較的短期間に副鼻腔に炎症が起こるものです。
多くの場合、風邪をひいてから鼻の症状がひどくなり、その後副鼻腔炎へと移行します。
症状は急激に現れ、比較的強いのが特徴です。
黄色や緑色のドロドロした鼻水が多量に出たり、強い鼻づまりを感じたりします。
特に炎症を起こしている副鼻腔の周りに、ズキズキとした顔面痛や頭痛を強く感じることが多いです。
頬を押すと強い痛みを感じる「圧痛」もよくみられます。
子どもでは、急性副鼻腔炎で高熱を伴うことも少なくありません。
大人では発熱は比較的少ないですが、全身の倦怠感を伴うこともあります。
通常、適切な治療を行えば、数日〜2週間程度で症状は改善します。
しかし、治療が遅れたり不十分だったりすると、炎症が遷延して慢性副鼻腔炎に移行する可能性があります。
慢性蓄膿症の症状
慢性副鼻腔炎(一般的に「蓄膿症」と呼ばれることが多い状態)は、急性副鼻腔炎が治りきらずに炎症が長期間(3ヶ月以上)持続している状態です。
繰り返す急性副鼻腔炎や、アレルギー性鼻炎、鼻ポリープなどが原因となることもあります。
急性期のような強い痛みや発熱は少ないですが、症状が慢性的に続くのが特徴です。
常に鼻づまりを感じる、ドロドロした鼻水が続く、後鼻漏による喉の不快感が治まらない、においが分かりにくいといった症状が慢性的に続きます。
顔面の痛みも、激しい痛みというよりは、重苦しさや鈍い痛み、圧迫感として感じられることが多いです。
慢性副鼻腔炎は、これらの症状によって日常生活の質(QOL)を著しく低下させます。
集中力の低下、睡眠不足、精神的な不調などにつながることもあります。
また、慢性炎症が続くと、鼻の中にきのこのような良性の腫瘍である「鼻ポリープ」ができやすくなります。
鼻ポリープができると、さらに鼻づまりや嗅覚障害が悪化し、治療が難しくなることがあります。
蓄膿症の症状が出る原因
蓄膿症の症状は、副鼻腔に炎症が起こり、分泌物や膿が溜まることで発生します。
この炎症を引き起こす主な原因はいくつかあります。
- 風邪やその他のウイルス感染: 最も一般的な原因です。
風邪ウイルスが鼻腔から副鼻腔に広がり、粘膜に炎症を引き起こします。
最初はサラサラの鼻水でも、二次的に細菌感染が起こると膿性鼻水に変化し、副鼻腔炎へと発展することが多いです。 - 細菌感染: ウイルス感染に続いて、細菌が副鼻腔内で増殖し、炎症を悪化させることがあります。
これにより、膿が大量に産生され、黄色や緑色のドロドロした鼻水の原因となります。 - アレルギー性鼻炎: 花粉やハウスダストなどのアレルゲンに対するアレルギー反応によって、鼻腔や副鼻腔の粘膜が慢性的に炎症を起こし、腫れやすくなります。
これにより副鼻腔の通り道が狭くなり、分泌物が溜まりやすくなって副鼻腔炎を発症・慢性化させることがあります。 - 鼻ポリープ: 鼻腔や副鼻腔の慢性的な炎症によってできる良性の腫瘍です。
ポリープができると、副鼻腔の開口部を塞いでしまい、換気や排泄をさらに妨げ、副鼻腔炎を悪化させます。 - 歯性上顎洞炎: 上顎(上の歯)の虫歯や歯周病、根尖病巣(歯の根の先の炎症)などが、上顎洞(頬の奥の副鼻腔)に炎症を引き起こすことがあります。
歯が原因で起こる副鼻腔炎で、片側の頬や歯の痛みが強いのが特徴です。 - その他: 大気汚染物質、喫煙、鼻中隔弯曲症(鼻の真ん中の仕切りが曲がっている状態)など、鼻腔や副鼻腔の正常な換気・排泄を妨げる要因も蓄膿症の原因となることがあります。
これらの原因が単独、あるいは複数組み合わさることで、副鼻腔に炎症が起こり、蓄膿症の様々な症状を引き起こします。
原因を特定することは、適切な治療法を選択する上で非常に重要です。
蓄膿症かな?と思ったら【症状チェック】
ご自身の鼻の症状が蓄膿症によるものか心配な場合、以下の症状に当てはまるかチェックしてみましょう。
ただし、このチェックリストはあくまで目安であり、正確な診断は医師にしかできません。
- □ ドロドロした黄色や緑色の鼻水が続いている
- □ 鼻づまりがひどく、鼻をかんでもすっきりしない
- □ 鼻の奥や喉から嫌な臭いがする
- □ 頬、目の周り、おでこ、歯などが痛む・重い感じがする
- □ 頭が重い、または頭痛がする(特に朝や前屈した時)
- □ においが分かりにくい、または全く感じない
- □ 喉の奥に鼻水が流れ落ちる感じがする(後鼻漏)
- □ 咳や痰が絡むことが増えた
- □ 熱はないが、上記のような症状が数週間以上続いている
- □ 風邪の症状は治まったのに、鼻の症状だけが長引いている
- □ 以前にも同じような鼻の症状を繰り返したことがある
これらの症状のうち、複数に当てはまる場合は、蓄膿症の可能性があります。
特に、黄色や緑色の鼻水、頑固な鼻づまり、顔面痛や頭痛、嫌な臭い、後鼻漏などの症状が続く場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
蓄膿症の症状を放置するとどうなる?
「ただの鼻風邪だろう」と症状を軽視したり、忙しさから受診を先延ばしにしたりすると、蓄膿症の症状は改善しないばかりか、悪化したり、様々な合併症を引き起こしたりする可能性があります。
蓄膿症の炎症が長期間続くと、以下のような問題が起こることがあります。
- 慢性化: 急性副鼻腔炎が適切に治療されないまま放置されると、炎症が長引き、慢性副鼻腔炎に移行してしまいます。
慢性化すると治療に時間がかかったり、難治性になったりすることがあります。 - 鼻ポリープの形成: 慢性的な炎症刺激によって、鼻腔や副鼻腔の粘膜が腫れて、きのこのような良性の腫瘍である鼻ポリープができることがあります。
鼻ポリープができると、さらに鼻づまりや嗅覚障害が悪化し、薬物療法だけでは十分な効果が得られず、手術が必要となる可能性が高まります。 - 周囲組織への炎症の波及: 副鼻腔は目や脳などの重要な器官に隣接しています。
稀ではありますが、副鼻腔の炎症が周囲の組織に広がり、以下のような重篤な合併症を引き起こすことがあります。- 眼窩蜂巣炎(がんかほうそうえん): 目の周りの組織に炎症が広がるもので、まぶたの腫れや痛み、目の充血、眼球の動きの制限、視力低下などを引き起こすことがあります。
緊急の治療が必要です。 - 頭蓋内合併症: 炎症が脳を包む硬膜に及んだり、脳そのものに炎症を起こしたりすることがあります。
髄膜炎(ずいまくえん)や脳膿瘍(のうのうよう)などで、意識障害や麻痺、けいれんなど、生命に関わる重篤な状態を引き起こす可能性があります。
- 眼窩蜂巣炎(がんかほうそうえん): 目の周りの組織に炎症が広がるもので、まぶたの腫れや痛み、目の充血、眼球の動きの制限、視力低下などを引き起こすことがあります。
- 気管支や肺への影響: 後鼻漏によって鼻水が気管支や肺に流れ込むことで、咳が悪化したり、慢性的な気管支炎の原因となったりすることがあります。
特に喘息を持っている方は、蓄膿症の症状が悪化することで喘息発作が誘発・悪化することが知られています。 - QOL(生活の質)の低下: 慢性的な鼻づまり、鼻水、頭痛、嗅覚障害などは、集中力の低下、睡眠不足、イライラ、食欲不振などにつながり、日常生活や仕事、学業に支障をきたし、生活の質を著しく低下させます。
このように、蓄膿症の症状は放置せずに、早めに専門医の診断を受けて適切な治療を開始することが非常に大切です。
医療機関を受診する目安となる症状
蓄膿症が疑われる症状が現れたら、どのようなタイミングで医療機関を受診すべきでしょうか。
特に以下のような症状が見られる場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
- 風邪の症状(発熱、喉の痛みなど)が治まったのに、鼻水や鼻づまり、顔面痛などの鼻の症状が10日〜2週間以上続いている場合。
- 黄色や緑色のドロドロした鼻水や後鼻漏が続いている場合。
- 市販薬を使っても鼻づまりや顔面痛が改善しない場合。
- 顔面、特に頬や目の周り、おでこなどに強い痛みがある場合。
- においが全く分からない、または急激に分からなくなった場合。
- 発熱(特に38℃以上)を伴う顔面痛や頭痛がある場合。
- まぶたの腫れや目の痛み、物が二重に見えるなど、目に異常が現れた場合。
- 顔面の痛みが片側だけで、上の歯が痛む場合(歯性上顎洞炎の可能性)。
- 症状が強く、日常生活に支障が出ている場合。
これらの症状は、急性副鼻腔炎が遷延している、あるいは既に慢性化している、あるいは重症化しているサインかもしれません。
特に眼窩蜂巣炎や頭蓋内合併症の兆候である目の症状や高熱を伴う強い痛みは、緊急性の高い症状です。
蓄膿症の診断や治療は専門的な知識が必要です。
自己判断で市販薬を漫然と使い続けたり、放置したりせずに、早期に耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
医師は、問診や鼻鏡検査、レントゲン検査やCT検査などを行って診断を確定し、症状や病状に合わせた治療法を提案してくれます。
蓄膿症の治療法と症状の改善
蓄膿症の治療は、原因や病状(急性か慢性か、重症度など)によって異なりますが、炎症を抑え、副鼻腔内に溜まった分泌物や膿を排泄させることが主な目的となります。
適切な治療を行うことで、辛い症状を改善し、再発を防ぐことが期待できます。
治療法には、主に薬物療法、鼻洗浄などのセルフケア、そして手術療法があります。
医師の診断に基づき、これらの治療法が単独または組み合わせて行われます。
薬による治療
薬物療法は、蓄膿症の治療の中心となります。
症状や原因に合わせて、様々な種類の薬が処方されます。
- 抗生物質: 細菌感染が原因または合併している場合に処方されます。
副鼻腔内の細菌を殺菌することで、炎症を抑え、膿の産生を減らす効果があります。
通常、比較的短期間(1週間〜2週間程度)で効果が期待できますが、慢性の場合は効果が不十分なこともあります。
近年では、マクロライド系抗生物質を少量、長期間(数ヶ月)服用する治療法(少量長期療法)が、慢性の難治性副鼻腔炎や鼻ポリープを伴うタイプに有効であることが分かっています。 - ステロイド: 炎症を強く抑える効果があり、鼻腔や副鼻腔の粘膜の腫れを軽減し、鼻づまりや顔面痛、嗅覚障害の改善に役立ちます。
点鼻薬として使用されることが多いですが、炎症が強い場合や鼻ポリープが大きい場合は、内服薬が短期間処方されることもあります。 - 去痰薬(粘液溶解薬): 溜まった粘り気のある鼻水や膿をサラサラにして、排出しやすくする薬です。
後鼻漏や鼻づまりの症状改善に効果が期待できます。 - 抗アレルギー薬: アレルギー性鼻炎が蓄膿症の原因や悪化要因となっている場合に処方されます。
アレルギー反応を抑えることで、鼻腔・副鼻腔の炎症や腫れを軽減し、蓄膿症の症状改善に間接的に寄与します。 - 血管収縮薬含有点鼻薬: 一時的に鼻腔の血管を収縮させて鼻づまりを解消する効果がありますが、連用するとかえって鼻づまりが悪化する「薬剤性鼻炎」を引き起こすリスクがあるため、使用は最小限にとどめる必要があります。
医師の指示に従って正しく使用することが重要です。
これらの薬は、症状や病状、体質などを考慮して医師が適切に選択します。
自己判断で中断したり、量を調整したりせず、医師の指示通りに服用することが大切です。
鼻洗浄などのセルフケア(膿を出す方法にも関連)
医療機関での治療と並行して、自宅で行えるセルフケアも症状の緩和や改善に役立ちます。
- 鼻洗浄: 生理食塩水(体液と同じくらいの塩分濃度)を使って鼻腔内を洗浄する方法です。
これにより、鼻腔や副鼻腔の開口部付近に溜まった鼻水や膿、アレルゲンなどを洗い流すことができます。
鼻の通りが良くなり、後鼻漏の不快感も軽減されることがあります。
市販の鼻洗浄器や専用の洗浄液を使用すると便利です。
ただし、水道水を使用したり、間違った方法で行ったりすると、かえって炎症を起こしたり、耳に水が入って中耳炎の原因となることもあるため、必ず正しい方法で行いましょう。
無理に強く洗浄したり、鼻をかみすぎたりして自分で膿を無理やり出そうとするのは、かえって粘膜を傷つけたり、炎症を悪化させたりする可能性があるため避けましょう。 - 加湿: 空気が乾燥していると、鼻や喉の粘膜が乾燥しやすくなり、鼻水が固まって排出しにくくなります。
加湿器を使ったり、マスクを着用したりして、鼻腔内を適度に湿潤に保つことは、鼻水の排泄を促し、症状の緩和につながります。 - 安静と保温: 体力を消耗すると、免疫力が低下しやすくなります。
十分な休息をとり、体を温めることも、炎症の回復を助ける上で大切です。 - 喫煙の回避: タバコの煙は鼻や喉の粘膜に刺激を与え、炎症を悪化させます。
喫煙者は禁煙することが、蓄膿症の改善には不可欠です。
受動喫煙も避けるようにしましょう。
セルフケアはあくまで治療の補助であり、これだけで蓄膿症を治すことは難しい場合が多いです。
必ず医療機関での治療と組み合わせて行い、セルフケアの方法についても医師に相談することをおすすめします。
手術による治療
薬物療法やセルフケアで十分な効果が得られない場合や、鼻ポリープが大きい場合、歯性上顎洞炎などの特殊な原因の場合には、手術療法が検討されます。
現在の蓄膿症手術の主流は、内視鏡を使った手術(内視鏡下副鼻腔手術:ESS)です。
鼻の穴から細い内視鏡を挿入し、鼻腔内や副鼻腔の内部を観察しながら、炎症を起こしている粘膜や溜まった膿を取り除き、副鼻腔と鼻腔を繋ぐ通り道を広げます。
鼻ポリープがある場合は、ポリープも同時に切除します。
ESSは、以前行われていた顔の表面を切開する手術に比べて、傷口が小さく、体への負担が少ないのが特徴です。
入院期間も短縮され、日帰り手術が可能な場合もあります。
手術の目的は、副鼻腔の換気と排泄を改善し、炎症を鎮めることです。
手術によって副鼻腔の環境が整うことで、術後の薬物療法も効果が出やすくなり、症状の長期的な改善が期待できます。
ただし、手術後も定期的な診察や鼻の処置が必要となる場合があります。
どの治療法が適切かは、個々の症状、病状、原因、全身状態などを総合的に判断して医師が決定します。
医師とよく相談し、納得した上で治療を進めることが大切です。
まとめ|蓄膿症の症状に気づいたら早めに受診を
蓄膿症(副鼻腔炎)は、鼻水、鼻づまり、顔面痛、頭痛、嫌な臭い、嗅覚障害、後鼻漏など、多様な症状を引き起こす病気です。
これらの症状は、風邪やアレルギー性鼻炎と似ていることもありますが、長引いたり、悪化したりする場合は蓄膿症の可能性があります。
特に、黄色や緑色のドロドロした鼻水、頑固な鼻づまり、顔面や頭の重い痛み、嫌な臭いといった症状が続く場合は、放置せずに早めに医療機関、特に耳鼻咽喉科を受診することが重要です。
自己判断で市販薬に頼りすぎたり、受診をためらったりすると、症状が慢性化したり、稀ながら重篤な合併症を引き起こしたりするリスクが高まります。
蓄膿症の治療は、薬物療法を中心に、鼻洗浄などのセルフケア、そして必要に応じて手術療法が行われます。
早期に適切な治療を受けることで、辛い症状を改善し、病気の進行や合併症を防ぐことが期待できます。
もしこの記事で解説した症状に心当たりがあり、蓄膿症かもしれないとご心配されている方がいらっしゃいましたら、一人で悩まずに、まずは耳鼻咽喉科の医師に相談してみてください。
医師による正確な診断と、ご自身の病状に合った適切な治療を受けることが、症状改善への第一歩です。
免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療法を示すものではありません。
個々の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。
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