蓄膿症でやってはいけないこと5選|症状を悪化させるNG行動

蓄膿症(副鼻腔炎)は、多くの方が経験するつらい鼻の疾患です。
鼻づまりや鼻水、顔の痛みなどが続き、日常生活にも大きな影響を与えることがあります。
症状を早く改善し、慢性化を防ぐためには、避けるべき行動や習慣を知っておくことが非常に重要です。「良かれと思ってやっていたことが、実は症状を悪化させていた…」といったケースも少なくありません。

この解説では、蓄膿症の方が絶対にやってはいけないことや避けるべき習慣、そして症状を和らげ、早期回復を目指すための正しい対処法について詳しくお伝えします。
ご自身の症状と照らし合わせながら、適切なケアや医療機関への相談について考えてみましょう。

目次

蓄膿症(副鼻腔炎)とは?

蓄膿症とは、医学的には「副鼻腔炎」と呼ばれる病気です。
顔の骨の中にある空洞、つまり「副鼻腔」の粘膜に炎症が起こり、本来であればスムーズに排出されるはずの鼻水や膿がたまってしまう状態を指します。

鼻腔と副鼻腔は細い通路でつながっています。
風邪やアレルギー性鼻炎などで鼻の粘膜が腫れると、この通路が塞がりやすくなり、副鼻腔内の換気が悪化します。
その結果、細菌やウイルスが繁殖しやすくなり、炎症がさらに進行して膿がたまるのです。

副鼻腔炎は、原因や経過によって大きく二つに分けられます。

  • 急性副鼻腔炎: 風邪などの後に比較的短期間(通常4週間以内)で発症するもの。
    発熱や顔の痛み、ひどい鼻づまり、色のついた鼻水などが主な症状です。
  • 慢性副鼻腔炎: 急性副鼻腔炎が長引いたり、繰り返し起こったりして、症状が3ヶ月以上続くもの。
    鼻づまりや後鼻漏(鼻水が喉に流れること)、嗅覚障害、頭重感などが主な症状で、急性期ほどの強い痛みは少ないことが多いですが、症状が改善しにくくなります。

蓄膿症のつらい症状を改善するためには、副鼻腔にたまった鼻水や膿を排出し、炎症を鎮めることが治療の基本となります。
そして、そのためには「やってはいけないこと」を避け、「やるべきこと」を正しく行うことが非常に大切です。

蓄膿症で絶対やってはいけないこと

蓄膿症の症状がある時に、特に避けるべき、あるいは絶対に行ってはいけない行動があります。
これらは症状を悪化させたり、合併症を引き起こしたりするリスクを高める可能性があるため、十分な注意が必要です。

鼻水をすする(鼻すすり)

最もやってはいけないことの一つが「鼻すすり」です。
鼻水を吸い込んでしまうこの行為は、蓄膿症の症状を悪化させるだけでなく、耳の病気を引き起こす原因にもなります。

鼻をすすると、鼻腔内に陰圧(空気が薄くなる状態)が生じます。
この陰圧によって、鼻水や含まれている細菌・ウイルスが、鼻腔と耳(中耳)をつなぐ耳管という管を通して耳に逆流してしまうことがあります。
耳管は通常は閉じていますが、つばを飲み込む時などに一時的に開通します。
鼻すすりをしながらつばを飲み込むと、耳管が開き、感染物質が中耳に入り込みやすくなるのです。

これにより、以下のような問題が発生しやすくなります。

  • 副鼻腔炎の悪化: 鼻水をすすっても副鼻腔にたまった膿は排出されず、むしろ鼻腔と副鼻腔をつなぐ通路に刺激を与えたり、陰圧によって膿の排出を妨げたりする可能性があります。
  • 中耳炎の合併: 特に子どもに多いですが、大人でも鼻すすりによって副鼻腔炎に加え、急性中耳炎や滲出性中耳炎を発症することがあります。
    耳の痛み、聞こえが悪くなる、耳が塞がった感じがするといった症状が現れます。
  • 鼻の粘膜への負担: 頻繁な鼻すすりは、鼻の粘膜にも刺激を与え、炎症を助長する可能性があります。

鼻水が出たら、必ず「かむ」ようにしましょう。
かむのが難しい場合は、ティッシュなどで拭き取るだけでもかまいません。
「すすらない」ことを強く意識することが、蓄膿症の改善や合併症予防の第一歩です。

症状を自己判断で放置する

「たいしたことない」「いつか治るだろう」と蓄膿症の症状を自己判断で放置することも、絶対にしてはいけないことです。
急性副鼻腔炎であれば、適切な治療を受ければ比較的短期間で改善することが多いですが、放置すると慢性化したり、より重篤な合併症を引き起こしたりするリスクが高まります。

症状を放置することによって起こりうる問題は以下の通りです。

  • 慢性副鼻腔炎への移行: 急性炎症が十分に治療されないまま長引くと、副鼻腔の粘膜が厚くなったり、ポリープ(鼻茸)ができたりして、構造的な問題が生じやすくなります。
    こうなると自然治癒は難しくなり、治療もより時間がかかったり、手術が必要になったりすることがあります。
  • 鼻茸(鼻ポリープ)の発生: 慢性的な炎症が続くと、鼻や副鼻腔の粘膜がむくんで腫れ上がり、鼻茸と呼ばれる良性のポリープができることがあります。
    鼻茸ができると鼻づまりがさらにひどくなり、嗅覚障害も起こりやすくなります。
    大きくなると手術で切除する必要が出てきます。
  • 合併症のリスク: まれではありますが、副鼻腔の炎症が周囲の重要な臓器に広がる可能性があります。
    • 眼窩合併症: 副鼻腔は目の周りに位置するため、炎症が目に波及し、視力障害や眼球運動障害を引き起こすことがあります。
    • 頭蓋内合併症: さらに重篤な場合、炎症が脳に広がり、髄膜炎や脳膿瘍といった命に関わる合併症を引き起こす可能性もゼロではありません。
      特に前頭洞や篩骨洞の炎症は注意が必要です。
    • 下気道疾患: 鼻から喉に流れる膿(後鼻漏)を常に飲み込んでいる状態は、喉や気管、気管支にも負担をかけ、咳や痰が続いたり、気管支炎の原因になったりすることもあります。
    • 歯性上顎洞炎: 上顎洞という副鼻腔は歯の根元に近いため、虫歯や歯周病が原因で副鼻腔炎になることもあります。
      この場合、歯科での治療も同時に必要になります。

これらのリスクを避けるためにも、「いつか治る」と軽く考えず、症状がつらいと感じたら早めに耳鼻咽喉科を受診し、専門医の診断と適切な治療を受けることが大切です。

蓄膿症で避けるべき習慣や行為

絶対やってはいけないことほど緊急性はないかもしれませんが、日常生活の中にも蓄膿症の症状を悪化させたり、回復を遅らせたりする可能性のある習慣や行為があります。
これらを意識して避けることも、症状改善のためには重要です。

鼻を強くかみすぎる・鼻をほじる

鼻水が出た時に「かむ」ことは正しい対処法ですが、あまりにも強くかみすぎたり、頻繁に鼻をほじったりする行為は避けましょう。

  • 鼻を強くかみすぎる:
    • 粘膜の損傷: 強い力でかむと、鼻の入り口付近の粘膜を傷つけ、出血や炎症を招くことがあります。
    • 耳への圧力: 片側の鼻を完全に押さえつけ、もう片側を強くかむと、鼻腔内の圧力が非常に高まり、鼻すすりほどではないにしても、鼻水が耳管に逆流するリスクがないとは言えません。
      また、耳がツンとする、一時的に聞こえが悪くなるといった耳への不快感を生じることもあります。
  • 鼻をほじる:
    • 粘膜損傷と感染: 指で鼻をほじると、鼻の粘膜を傷つけやすく、そこから細菌感染を起こしたり、炎症を悪化させたりする可能性があります。
    • バイ菌の持ち込み: 手についている細菌を鼻の中に持ち込んでしまうリスクもあります。

正しい鼻のかみ方については後述しますが、ポイントは「片方ずつ優しく、強くかみすぎない」ことです。
鼻をほじる行為は、鼻の掃除にはならず、むしろ傷つけるリスクが高いので控えましょう。

市販の点鼻薬や内服薬を多用する

鼻づまりがつらい時、手軽に使える市販の点鼻薬や内服薬に頼りたくなる気持ちは分かります。
しかし、特定の種類の市販薬を漫然と、あるいは過剰に使用することは、蓄膿症の症状をかえって悪化させる「薬物性鼻炎」を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

特に注意が必要なのは、血管収縮剤(例:ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリンなど)を含む点鼻薬です。
これらの点鼻薬は、使用すると鼻の粘膜の血管を収縮させ、一時的に鼻づまりを劇的に改善させる効果があります。
しかし、これはあくまで対症療法であり、炎症の根本原因を取り除くものではありません。

血管収縮剤入りの点鼻薬を使い続けると、体が薬の作用に慣れてしまい、効果が薄れてきます。
すると、また使いたくなり、使用量や頻度が増加する悪循環に陥りがちです。
そして、薬の効果が切れた時にかえって鼻の粘膜が強く腫れてしまう「リバウンド現象」が起こります。
これを「薬物性鼻炎」と呼びます。
薬物性鼻炎になると、点鼻薬なしでは常にひどい鼻づまりに悩まされるようになり、蓄膿症の症状と合わさって、さらに治りにくい状態になってしまいます。

市販薬を使用する場合は、パッケージに記載された用法・用量を守り、長期間(目安として1週間以上)連用することは避けましょう。
症状が改善しない場合は、自己判断で市販薬を続けず、耳鼻咽喉科を受診して適切な診断と処方薬を受けることが重要です。
医師が処方する点鼻薬には、ステロイド点鼻薬など、炎症を抑えながらも薬物性鼻炎を起こしにくいものがあります。

喫煙や飲酒

喫煙や過度の飲酒も、蓄膿症の症状に悪影響を与える習慣です。

  • 喫煙:
    • 粘膜への刺激: タバコの煙には多くの有害物質が含まれており、鼻や副鼻腔、気道の粘膜を直接刺激します。
      これにより炎症が悪化し、鼻水や痰の分泌が増える可能性があります。
    • 線毛運動の低下: 鼻や気道の粘膜の表面には、「線毛」と呼ばれる細かい毛のようなものがあり、この線毛が協調して動くことで、鼻水や異物を喉の方へ運び、排出する役割を担っています(粘液線毛輸送機能)。
      喫煙は線毛の動きを著しく低下させるため、鼻水や膿が副鼻腔から排出されにくくなり、蓄膿症の治りを遅らせます。
    • 免疫力の低下: 喫煙は全身の免疫機能にも悪影響を与えるため、感染症にかかりやすくなったり、治りにくくなったりします。
  • 飲酒:
    • 血管拡張: アルコールには血管を拡張させる作用があります。
      これにより鼻の粘膜も腫れやすくなり、鼻づまりが悪化することがあります。
    • 脱水: 過度の飲酒は脱水を引き起こすことがあり、鼻水や痰がねばついて排出しにくくなる可能性があります。
    • 免疫力低下: 慢性的な飲酒は免疫機能を低下させる可能性があります。

蓄膿症の症状がある期間はもちろん、日頃から喫煙は避け、飲酒も適量に控えることが、鼻や副鼻腔の健康を保つために大切です。

不適切な方法での鼻うがい

鼻うがいは、鼻腔内の粘稠な鼻水や花粉、ハウスダストなどを洗い流し、鼻の通りを良くするために有効なセルフケアです。
しかし、方法を間違えると、かえって症状を悪化させたり、耳や鼻の粘膜に負担をかけたりする可能性があります。

不適切な鼻うがいの方法としては、以下のような点が挙げられます。

  • 水道水のそのまま使用: 滅菌されていない水道水をそのまま鼻に入れると、アメーバなどの微生物によって感染を起こすリスクがあります。
    また、水道水は体液と浸透圧が異なるため、鼻の粘膜に刺激を与えたり、ツンとした痛みを感じたりすることがあります。
  • 冷たい水や熱すぎる水の使用: 温度が適切でない水は、鼻の粘膜に刺激を与えます。
  • 勢いよく水を注入する: 強すぎる水圧で鼻に水を注入すると、鼻腔から耳管を通って耳に水が逆流し、中耳炎の原因となる可能性があります。
  • 使用器具の不衛生: 鼻うがい用の器具(ポットやボトルなど)を清潔に保たないと、細菌が繁殖し、感染源となることがあります。

適切な方法で行えば鼻うがいは蓄膿症のセルフケアとして有効ですが、間違った方法で行うのは避けるべきです。
正しい方法については、後述する「適切な方法での鼻うがい」のセクションで詳しく解説します。
不安な場合は、まず医師や薬剤師に相談してみましょう。

蓄膿症になったら行うべきこと(正しい対処法)

蓄膿症の症状がある時に避けるべきことだけでなく、積極的に行うべき正しい対処法もあります。
これらを実践することで、症状の緩和や早期改善につながる可能性があります。

正しい鼻のかみ方

鼻水が出た時にすすってはいけないことは述べましたが、ではどのようにかむのが正しいのでしょうか。
蓄膿症などで粘稠な鼻水が出ている場合、無理にかもうとせず、優しく丁寧に行うのがポイントです。

正しい鼻のかみ方のステップ:

  1. 清潔なティッシュを用意する: 柔らかく、吸収性の良いティッシュを使いましょう。
  2. 片方の鼻孔を指で軽く押さえる: 片方の鼻だけを押さえ、もう片方の鼻を開放します。
    両方の鼻を同時に押さえて強くかむのは避けてください。
  3. 口を少し開ける: 口を閉じていると、かんだ時の圧力が逃げ場を失い、耳に影響が出やすくなります。
    口を少し開けることで、圧力を逃がすことができます。
  4. ゆっくりと、優しくかむ: 押さえていない方の鼻から、息を吐き出すようにゆっくりと優しく鼻水を押し出します。
    力強く「フン!」と音を立ててかむ必要はありません。
  5. 反対側の鼻孔も同様に行う: 片方が終わったら、反対側の鼻孔を押さえて同様に優しくかみます。
  6. 使い終わったティッシュはすぐに捨てる: 鼻水には細菌やウイルスが含まれている可能性があるため、使用済みのティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、手に付いた可能性のある病原体を広げないようにしましょう。
  7. 手洗いをしっかり行う: 鼻をかんだ後は、石鹸と流水でしっかりと手洗いをすることが大切です。

粘稠な鼻水がなかなか出てこない場合でも、強くかき出そうとしないことです。
鼻の通りを良くするためには、この後の湿度を保つことや、適切な鼻うがいが有効です。

適度な湿度・保湿を保つ

鼻や副鼻腔の粘膜を乾燥させないことも、蓄膿症の症状緩和や改善に重要です。
乾燥した空気は粘膜に刺激を与え、炎症を悪化させたり、鼻水や痰をねばつかせて排出しにくくしたりします。

  • 室内の湿度を適切に保つ:
    • 特に空気が乾燥しやすい冬場や、エアコンを使用する時期は加湿器などを活用し、室内の湿度を40~60%程度に保つのが理想的です。
      湿度計を置いて確認するのも良いでしょう。
    • 濡らしたタオルを干したり、観葉植物を置いたりすることも、湿度を保つのに役立ちます。
  • 鼻腔内の保湿:
    • 外出時にはマスクを着用することで、自分の呼気で鼻や喉の湿度を保つことができます。
      これは感染予防にもつながります。
    • 市販の点鼻タイプの生理食塩水(鼻腔用スプレー)などを利用して、鼻腔内を直接保湿することも効果的です。
      医師や薬剤師に相談して適切なものを選びましょう。
    • 水分をこまめに摂取し、体全体の水分バランスを保つことも、鼻水や痰をサラサラにして排出しやすくするために大切です。

休息をとり免疫力を高める

体の免疫力が低下していると、炎症が長引いたり、細菌感染が起きやすくなったりします。
蓄膿症の改善には、全身のコンディションを整え、免疫力を高めることが重要です。

  • 十分な睡眠をとる: 睡眠不足は免疫力を著しく低下させます。
    質の良い睡眠を十分にとるように心がけましょう。
  • バランスの取れた食事: ビタミンやミネラルを豊富に含む食事は、免疫機能をサポートします。
    特に粘膜の健康に関わるビタミンAや、免疫細胞の働きを助けるビタミンC、亜鉛などを意識して摂取しましょう。
  • ストレスを溜め込まない: 過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、免疫力低下につながることがあります。
    リラックスできる時間を持つなど、ストレスを適切に解消する方法を見つけましょう。
  • 体を冷やさない: 体が冷えると血行が悪くなり、免疫機能にも影響が出ることがあります。
    特に首の後ろや足元などを冷やさないように注意しましょう。

体調を整え、免疫力を高めることは、蓄膿症だけでなく様々な病気の予防や回復にもつながります。

適切な方法での鼻うがい

不適切な方法での鼻うがいは避けるべきですが、正しく行えば蓄膿症のセルフケアとして非常に有効です。
副鼻腔にたまった膿を直接洗い流す効果は限定的かもしれませんが、鼻腔内の粘稠な鼻水や炎症物質を洗い流すことで、鼻の通りを良くし、副鼻腔からの自然な排泄を助ける効果が期待できます。

適切な鼻うがいの方法:

  1. うがい液の準備:
    • 生理食塩水を使用する: 体液に近い塩分濃度(0.9%)の生理食塩水を使用するのが最も適しています。
      これにより、鼻の粘膜への刺激や痛みを最小限に抑えることができます。
      生理食塩水は薬局で購入できるほか、ご自宅でぬるま湯(後述の温度参照)1リットルに対して食塩(添加物のない純粋な食塩)小さじ山盛り1杯(約9g)を溶かして作ることも可能です。
      この時使用する水は、一度沸騰させてから冷ましたもの(湯冷まし)や、滅菌精製水を使うとより安全です。
    • 温度は人肌程度に: 冷たすぎる水や熱すぎる水は粘膜を刺激します。
      体温に近い35~40℃程度の人肌に温めて使用しましょう。
  2. 器具の準備: 鼻うがい専用のポットやボトルを使用すると、適切に鼻腔内に洗浄液を流し込むことができます。
    シリンジなどを使用する場合は、勢いがつきすぎないように注意が必要です。
  3. うがいの姿勢と手順:
    • 洗面所などで行いましょう。
    • やや下を向き、口を「あー」などと言いながら大きく開けます。
      口を開けていると、鼻うがい液が喉の奥に行きにくくなります。
    • 片方の鼻の穴に、鼻うがい用器具の先端を軽く当てます。
    • 器具をゆっくりと傾け、洗浄液をゆっくりと鼻腔内に流し込みます。
      洗浄液は反対側の鼻の穴や口から出てきます。
    • この間、呼吸は口で行います。
      鼻で息を吸い込まないように注意してください。
    • 片側が終わったら、反対側も同様に行います。
    • うがいが終わったら、やさしく鼻をかんで、鼻腔内に残った洗浄液を排出します。
      強くかみすぎないように注意しましょう。
  4. 器具の洗浄と保管: 使用後の器具は、毎回きれいに洗い、乾燥させて清潔に保ちましょう。

鼻うがいは、鼻づまりがひどくて水が通らない時や、鼻血が出ている時、耳の病気がある時などは避けた方が良い場合があります。
不安な場合は、始める前に医師に相談しましょう。

早期改善のために医師へ相談を

蓄膿症のセルフケアは重要ですが、自己判断での対処には限界があります。
特に、特定の症状が現れた場合や、症状が長引く場合は、早期に耳鼻咽喉科を受診し、専門医の診断と治療を受けることが、症状を悪化させないため、そして早期改善のためには最も確実な方法です。

どのような場合に受診すべきか

以下のような症状がある場合は、自己判断せず、速やかに耳鼻咽喉科を受診することを強くお勧めします。

  • 黄色や緑色の、粘り気のある鼻水が続く(特に片側だけの場合)
  • 強い鼻づまりが続き、日常生活に支障が出ている(片側または両側)
  • 頬や目の下、おでこなどに痛みや圧迫感がある
  • 頭痛や顔の痛みが強い
  • 発熱がある
  • 嗅覚が低下したり、ほとんどなくなったりした
  • 鼻水が喉に流れ落ちる(後鼻漏)ために、常に咳や痰が出る
  • 市販薬を試したが効果がない
  • 症状が1週間以上続いている
  • 症状がいったん良くなったと思ったら、すぐにぶり返す
  • 目の周りが腫れたり、視力が低下したり、物が二重に見えたりする(緊急性が高い合併症の可能性)
  • 強い頭痛や高熱があり、意識状態がおかしい(緊急性が高い合併症の可能性)

特に、最後の二つのような症状(目の周りの腫れや視力変化、重度の頭痛や意識障害)は、炎症が副鼻腔の外に広がり、眼や脳に影響が出ている可能性があり、非常に危険です。
これらの症状が現れた場合は、迷わず救急医療機関を受診してください。

また、アレルギー性鼻炎が原因で副鼻腔炎を起こしやすい方もいます。
その場合は、アレルギー自体の治療も同時に行う必要がありますので、専門医に相談することが大切です。

医療機関での治療法

耳鼻咽喉科での蓄膿症の治療は、症状の程度、原因、病状の経過(急性か慢性か)によって異なりますが、主に以下のような治療が行われます。

  • 薬物療法:
    • 抗生物質: 細菌感染が原因の場合に処方されます。
      炎症を引き起こしている細菌を抑えることで、膿を減らし、炎症を鎮めます。
      急性副鼻腔炎では比較的短期間(7~10日程度)で効果が出ることが多いですが、慢性副鼻腔炎の場合は、長期にわたって少量を持続的に服用する「マクロライド少量長期療法」という特殊な治療が行われることもあります。
    • 消炎酵素薬: 炎症による膿や分泌物をサラサラにして排出しやすくする薬です。
    • 粘液溶解薬: 粘稠な鼻水や痰を溶かして排出しやすくする薬です。
    • ステロイド薬: 鼻の粘膜の炎症や腫れを抑えるために使用されます。
      内服薬として短期間使用する場合や、局所作用のあるステロイド点鼻薬が使用される場合があります。
      ステロイド点鼻薬は、市販の血管収縮剤点鼻薬とは異なり、長期使用しても薬物性鼻炎を起こしにくいのが特徴です。
    • 抗アレルギー薬: アレルギー性鼻炎が原因や併存している場合に、アレルギー反応を抑えるために使用されます。
  • 鼻処置(吸引・洗浄): 医療機関で、専用の器具を使って鼻腔や副鼻腔にたまった鼻水や膿を吸引したり、生理食塩水などで洗浄したりする処置です。
    ご自身で行う鼻うがいよりも効果的に鼻腔内をきれいにすることができます。
    通院して定期的にこの処置を受けることが、症状改善に有効な場合があります。
  • ネブライザー療法: 薬液(炎症を抑える薬や血管収縮剤など)を霧状にして鼻から吸入する治療法です。
    鼻や副鼻腔の粘膜に直接薬を届けることで、炎症を鎮めたり、鼻の通りを良くしたりします。
  • 手術療法:
    • 薬物療法などの保存的治療で改善が見られない慢性副鼻腔炎で、特に鼻茸が大きい場合や、副鼻腔の構造的な問題(例えば、生まれつき通路が狭い、過去の骨折など)がある場合、合併症のリスクが高い場合などに検討されます。
    • 現在主流となっているのは、内視鏡を使った手術(内視鏡下鼻副鼻腔手術)です。
      鼻の中から細い内視鏡を挿入し、モニターを見ながら副鼻腔と鼻腔をつなぐ通路を広げたり、炎症を起こしている粘膜や鼻茸を切除したりします。
      顔の表面に傷跡を残さずに済む、体への負担が比較的少ない手術法です。

どの治療法を選択するかは、医師が診察や画像検査(レントゲンやCTなど)の結果を見て総合的に判断します。
医師の指示に従って、根気強く治療を続けることが大切です。

まとめ

蓄膿症(副鼻腔炎)は、放置したり間違った対処をしたりすると、症状が長引いたり悪化したり、さらには中耳炎やまれに重篤な合併症を引き起こす可能性もある病気です。

蓄膿症で「やってはいけないこと」として特に重要なのは、鼻水をすすることと、症状を自己判断で放置することです。
鼻すすりは耳の病気の原因になり、放置は慢性化や合併症のリスクを高めます。

その他にも、鼻を強くかみすぎる、鼻をほじる、市販の血管収縮剤入り点鼻薬を使いすぎる、喫煙や過度の飲酒、不適切な方法での鼻うがいといった習慣や行為も、鼻や副鼻腔の健康にとって好ましくありません。

一方で、症状を和らげ、早期改善を目指すためには、正しい鼻のかみ方を実践し、適度な湿度を保つ環境を整え、十分な休息をとって免疫力を高めること、そして適切な方法での鼻うがいを行うことが有効なセルフケアとなります。

そして何よりも大切なのは、つらい症状が続く場合や、ご紹介した「受診すべき目安」に当てはまる症状がある場合は、迷わず耳鼻咽喉科を受診することです。
専門医による正確な診断を受け、原因に合わせた適切な薬物療法や処置を受けることが、蓄膿症を治すための最も確実な道です。

「蓄膿症かな?」と思ったら、まずはご自身の普段の行動を振り返り、「やってはいけないこと」をしていないか確認してみましょう。
そして、正しいケアを心がけつつ、症状が改善しない場合は必ず医療機関に相談し、専門家のサポートを受けるようにしてください。
早期の適切な対処が、つらい蓄膿症から解放されるための鍵となります。


免責事項: この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な助言や診断、治療を代替するものではありません。
個々の症状については、必ず医師または他の資格を持つ医療従事者に相談してください。
この記事の情報によって生じたいかなる損害についても、筆者および公開元は責任を負いません。

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