喉の奥から時折出てくる、小さくてくさい塊。「臭い玉」や「くさい玉」と呼ばれるその正体は、一体何なのでしょうか。もしかすると、あなたの口臭の原因になっているかもしれません。
この不快な塊ができる原因は何なのか、自分でできる対策はあるのか、そして病院に相談すべきかなど、多くの疑問を抱えている方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、臭い玉(膿栓)ができるメカニズムから、その主な原因、口臭との関係、安全な取り方や効果的な予防法まで、詳しく解説します。
臭い玉に関する疑問を解消し、適切なケア方法を知ることで、あなたの不安が少しでも軽くなることを目指します。ぜひ最後までお読みください。
臭い玉(膿栓)とは?その正体と発生メカニズム
「臭い玉」は俗称であり、正式には「膿栓(のうせん)」と呼ばれます。文字通り、膿のようなものが栓をしたように溜まった塊という意味です。
米粒ほどの大きさであることが多いですが、まれに数ミリメートル以上に達することもあります。
色は白や黄色っぽいクリーム色で、つぶすと非常に強い悪臭を放つのが特徴です。
扁桃腺の構造と膿栓ができる過程
膿栓は主に口蓋扁桃(こうがいへんとう)、いわゆる扁桃腺にできます。
扁桃腺は喉の奥、舌の付け根の両脇にあるリンパ組織の集まりです。
免疫機能の一部を担っており、口や鼻から侵入しようとする細菌やウイルスを捕まえる役割があります。
扁桃腺の表面には、「陰窩(いんか)」と呼ばれる小さなくぼみや穴がたくさんあります。
この陰窩は、例えるなら扁桃腺の表面にあるポケットのようなものです。
食事をしたときに付着した食べカスや、口の中や鼻から流れ込んできた細菌、ウイルス、そしてこれらと戦った免疫細胞(白血球など)などが、この陰窩に溜まりやすくなっています。
溜まったこれらの物質は、やがて固まり、細菌が繁殖して分解が進みます。
この分解の過程で、強い臭いを放つ揮発性硫黄化合物などのガスが発生します。
これが、あの独特の強い臭いの原因です。
そして、これらが塊となったものが膿栓、すなわち臭い玉の正体なのです。
臭い玉は誰にでもできるもの?
扁桃腺に陰窩があるという構造は、基本的に誰にでも共通しています。
そのため、理論的には誰にでも膿栓ができる可能性があります。
実際に、健康な人でも少量の膿栓が見られることは珍しくありません。
ただし、膿栓ができる頻度や量、大きさに個人差が大きいのも事実です。
全く気にならない人もいれば、頻繁にできて不快に感じる人、塊が大きいと感じる人もいます。
これは、扁桃腺の大きさや陰窩の深さ、口腔衛生状態、体質、喉や鼻の病気の有無など、様々な要因が影響していると考えられます。
膿栓ができること自体が、必ずしも病気であるとは限りませんが、頻繁にできたり、大きかったり、不快感が強い場合は、原因を探ることも大切です。
臭い玉ができる主な原因
臭い玉(膿栓)は、扁桃腺の陰窩に様々な物質が溜まってできるものですが、その溜まりやすさや細菌の繁殖のしやすさにはいくつかの要因が関わっています。
ここでは、臭い玉ができる主な原因について掘り下げて解説します。
口腔内の不衛生による細菌の繁殖
最も基本的な原因の一つとして挙げられるのが、口腔内の衛生状態です。
歯磨きが不十分で食べカスが口の中に残っていたり、舌の表面に苔のように細菌や食べカスが付着する舌苔(ぜったい)が多かったりすると、口腔内の細菌が増殖しやすい環境になります。
これらの細菌や食べカスは、唾液とともに喉の奥へと運ばれ、扁桃腺の陰窩に溜まります。
陰窩に溜まった有機物は、細菌にとって格好の餌となります。
細菌が繁殖し、これらの有機物を分解する過程で膿栓が形成されます。
したがって、日常的な丁寧な歯磨きやうがいが不足していると、膿栓ができやすくなる可能性があります。
扁桃炎など喉の炎症
扁桃炎は、扁桃腺が細菌やウイルスの感染によって炎症を起こす病気です。
扁桃炎になると、扁桃腺が腫れて陰窩が広がりやすくなることがあります。
また、炎症を起こしている扁桃腺からは、白血球や炎症性の滲出液(しんしゅつえき)が多く排出されます。
これらの炎症に関わる物質も陰窩に溜まり、膿栓の材料となります。
特に、風邪などで一時的に扁桃炎になった後に膿栓ができやすくなることはよくあります。
また、慢性的に扁桃炎を繰り返している人や、常に扁桃腺が腫れ気味の人は、陰窩に物質が溜まりやすいため、膿栓もできやすい傾向があります。
慢性扁桃炎は、膿栓の頻発と密接に関わっていることが多いです。
鼻の病気(後鼻漏など)の影響
意外に思われるかもしれませんが、鼻の病気も臭い玉ができる原因となることがあります。
特に「後鼻漏(こうびろう)」と呼ばれる症状は、膿栓と関連が深いです。
後鼻漏とは、鼻水が鼻腔から喉の奥へ流れ落ちる状態を指します。
アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)など、鼻の炎症を伴う病気で起こりやすい症状です。
鼻の炎症によって生じた鼻水や分泌物には、炎症に関わる細胞や細菌が含まれていることがあります。
これらの物質が後鼻漏として喉に流れ込むと、扁桃腺の陰窩に付着し、膿栓の形成を促進することがあります。
鼻の調子が悪い時に臭い玉ができやすくなったと感じる場合は、鼻の病気が原因の一つである可能性を考慮する必要があります。
臭い玉ができやすい人の特徴
これまでの原因を踏まえると、臭い玉ができやすい人にはいくつかの共通する特徴が見られます。
- 扁桃腺が大きい、陰窩が深い人: 構造的に溜まりやすい。
- 口腔ケアが不十分な人: 口腔内の細菌が多い。
- 扁桃炎を繰り返しやすい人: 喉の炎症が頻繁に起きる。
- 鼻炎や副鼻腔炎など、鼻の病気がある人: 後鼻漏がある場合。
- 口呼吸が多い人: 口の中が乾燥しやすく、細菌が繁殖しやすい。また、フィルターを通さずに空気を吸い込むため、喉に直接異物が届きやすい。
- 免疫力が低下している人: 細菌やウイルスが増殖しやすい。
- 喫煙者: 喫煙は喉や鼻の粘膜に炎症を起こしやすく、口腔内の衛生状態も悪化させやすい。
これらの特徴に複数当てはまる人は、臭い玉ができやすい傾向にあると言えるでしょう。
臭い玉が口臭の原因になる仕組み
臭い玉(膿栓)の存在に気づくきっかけの多くは、その不快な臭いです。
米粒ほどの小さな塊なのに、なぜあんなにも強烈な臭いを放つのでしょうか。
ここでは、臭い玉が口臭の原因となる仕組みについて詳しく解説します。
なぜ強い臭いを発するのか?
臭い玉(膿栓)の主成分は、剥がれ落ちた粘膜上皮細胞、食べカス、細菌、白血球などの死骸です。
これらが扁桃腺の陰窩に溜まり、酸素が少ない環境で嫌気性細菌(酸素がなくても生きられる細菌)が繁殖します。
これらの嫌気性細菌は、溜まったタンパク質などの有機物を分解する際に、「揮発性硫黄化合物(Volatile Sulfur Compounds: VSC)」と呼ばれるガスを発生させます。
VSCには、卵の腐ったような臭いの「硫化水素」、生ゴミのような臭いの「メチルメルカプタン」、キャベツの腐ったような臭いの「ジメチルサルファイド」などがあります。
特にメチルメルカプタンは歯周病の原因菌なども産生し、少量でも非常に強い悪臭を放つことが知られています。
臭い玉から放たれる強い臭いは、主にこれらのVSCが原因なのです。
細菌が有機物を分解・腐敗させる過程で生まれるガスが、あの独特の不快な臭いの正体です。
臭い玉を取ると口臭は消える?
臭い玉(膿栓)がVSCを発生させることから、膿栓が原因で口臭がひどくなっている場合は、膿栓を取り除くことで口臭が改善される可能性があります。
実際に、咳やくしゃみで自然に膿栓が出てきた後、「口の中がスッキリした」「臭いが減った気がする」と感じる人もいます。
しかし、臭い玉を取り除いたからといって、口臭が完全に消えるとは限りません。
口臭の原因は一つだけではなく、様々な要因が複合的に関わっていることが多いからです。
口臭の主な原因としては、膿栓の他にも以下のようなものが挙げられます。
- 舌苔(ぜったい): 舌の表面に付着した細菌や食べカス。
- 歯周病: 歯ぐきの炎症や出血、歯周ポケットの汚れから発生するVSC。
- 虫歯: 進行した虫歯による食べカスの詰まりや細菌の繁殖。
- ドライマウス(口腔乾燥症): 唾液の量が減ると、口の中の自浄作用が低下し、細菌が増殖しやすくなる。
- 飲食物: ニンニクやネギなど、臭いの強いものを食べた後。
- 全身の病気: 糖尿病、肝臓病、腎臓病、呼吸器系の病気、胃腸の病気などが原因で口臭が発生することもある。
したがって、臭い玉を取り除いても口臭が改善しない場合は、他の原因を疑う必要があります。
歯科医院で口腔内のチェックを受けたり、耳鼻咽喉科で喉や鼻の状態を診てもらったり、内科で全身の健康状態を確認したりするなど、多角的なアプローチで原因を特定することが重要です。
臭い玉の確認方法
「もしかして自分にも臭い玉があるかも?」と思っても、どこにあるのか、どうやって確認すれば良いのか分からないという方もいるかもしれません。
臭い玉は扁桃腺の陰窩にできるため、自分で確認するには少しコツが必要です。
見える場合の確認方法
比較的手前の陰窩にできていたり、大きかったりする場合は、口を開けて鏡で見ると確認できることがあります。
- 鏡を用意する: 顔全体が映る鏡と、手鏡があると便利です。
- 明るい場所で行う: 自然光や照明の明るい場所で行いましょう。ペンライトやスマートフォンのライトで喉の奥を照らすと、さらに見やすくなります。
- 大きく口を開ける: 舌を下に押さえるか、軽く「あー」と声を出すと喉の奥が見やすくなります。
- 扁桃腺を確認する: 喉の奥、舌の付け根の両脇にあるアーモンド形の組織が扁桃腺です。扁桃腺の表面に白い、または黄色っぽい米粒のような塊が付着していないか注意深く見てみましょう。陰窩と呼ばれる小さなくぼみの中に隠れていることもあります。
見えない場合の確認方法
見ただけでは確認できない場合や、喉の奥すぎて見えない場合でも、臭い玉が存在していることがあります。
見えない場合に臭い玉を疑うサインとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 喉の奥の異物感、不快感: 何か小さなものが詰まっているような感覚や、チクチクする、イガイガするといった不快感がある。
- 咳やくしゃみをした時に出てくる: 突然、口の中から白い小さな塊が出てきて、それが強烈な臭いを放つ。これが最も典型的な見えない臭い玉のサインです。
- 自分では気づきにくい口臭: 家族や友人などから口臭を指摘される(ただし、口臭の原因は膿栓だけではないので、これもあくまで可能性の一つです)。
これらのサインがある場合は、見えなくても扁桃腺の陰窩に臭い玉が溜まっている可能性があります。
無理に自分で探し出そうとせず、症状が気になる場合は耳鼻咽喉科で診てもらうのが安心です。
自宅でできる臭い玉の取り方(セルフケア)
喉の奥に臭い玉があると感じると、すぐにでも取りたいと思うものです。
自宅でできるセルフケアとして、最も推奨される安全な方法は「うがい」です。
ただし、無理なセルフケアはかえって扁桃腺を傷つけたり、症状を悪化させたりするリスクがあるため、十分な注意が必要です。
簡単なうがいの方法
最も効果的なうがいの方法は、口の中をゆすぐだけでなく、喉の奥でガラガラと音を立てる「ガラガラうがい」です。
- 水を用意する: 水道水で十分ですが、より効果を期待するなら、うがい薬(ポビドンヨードなど)を規定通りに薄めたものや、生理食塩水(水1リットルに塩小さじ2杯程度を溶かしたもの)を使う方法もあります。ただし、うがい薬の使いすぎは口の中の常在菌のバランスを崩す可能性があるため注意が必要です。
- 上を向いてガラガラうがい: 喉の奥に液体が届くように、しっかりと上を向いて「あー」や「おー」のような声を出しながら、20秒ほどガラガラとゆすぎます。
- 何度か繰り返す: 数回繰り返すことで、陰窩に詰まった膿栓が水圧で押し出される可能性があります。
強めの水流でうがいをすることがポイントです。
食後に毎回うがいをする習慣をつけると、食べカスが溜まるのを防ぎ、膿栓の予防にもつながります。
その他セルフケアの注意点
インターネット上には、綿棒やピンセットのような器具を使って自分で臭い玉をほじくり出す方法などが紹介されていることがありますが、これは絶対におすすめできません。
- 扁桃腺を傷つけるリスク: 扁桃腺の粘膜はデリケートです。硬いもので無理にこじると、粘膜を傷つけ、出血させたり、炎症を悪化させたりする可能性があります。
- 細菌感染のリスク: 清潔でない器具を使うと、細菌を扁桃腺に持ち込んでしまい、新たな炎症を引き起こすことがあります。
- 膿栓を奥に押し込むリスク: 無理に取ろうとすることで、かえって膿栓を陰窩のさらに奥深くに押し込んでしまい、取りにくくしてしまうことがあります。
最も安全で自然な方法は、咳やくしゃみなど、体の反射で膿栓が自然に出てくるのを待つことです。
うがいは、膿栓を物理的に洗い流す効果と、喉を清潔に保つ効果の両方が期待できるため、セルフケアとしては最も推奨される方法です。
びっしり付いている場合や取れない場合はどうする?
見た目で「びっしり付いている」「たくさんある」と感じる場合や、うがいをしても全く取れない場合は、自分で無理に取り続けようとせず、耳鼻咽喉科を受診することを強くお勧めします。
医療機関では、専門の器具(吸引器など)を使って、安全かつ効果的に膿栓を取り除くことができます。
無理な自己処置で扁桃腺を傷つけるリスクを冒すより、専門家に任せる方が安心です。
また、膿栓が頻繁にできる背景に、慢性扁桃炎や鼻の病気などが隠れている可能性もあるため、診察を受けることで根本的な原因の診断や治療にもつながります。
ためしてガッテンで紹介された取り方は?
NHKの番組「ためしてガッテン」で、過去に臭い玉に関する特集が組まれたことがあります。
番組内で紹介されたのは、やはり「強いうがい」や、シャワーの水圧を利用する方法など、物理的に洗い流すというアプローチでした。
特にシャワーを使う方法は、風呂場でシャワーの水を喉の奥に向けて当てて洗い流すというものでしたが、これも粘膜を傷つけたり、水を誤嚥したりするリスクがないとは言えません。
番組内でも、推奨されるのはあくまでうがいであり、無理は禁物である旨が強調されていたはずです。
テレビで紹介された方法でも、自己判断でリスクの高い方法を試すのは避けましょう。
最も安全で推奨できるセルフケアは、丁寧なガラガラうがいを習慣にすることです。
臭い玉の予防法
臭い玉(膿栓)は、扁桃腺の構造上、完全にゼロにすることは難しいかもしれません。
しかし、日常的なケアや生活習慣の見直しによって、できる頻度を減らしたり、大きくなるのを防いだりすることは可能です。
ここでは、臭い玉の予防に効果的な方法をご紹介します。
日常的な口腔ケアの徹底
口腔内を清潔に保つことは、膿栓の原因となる細菌や食べカスを減らすために非常に重要です。
- 丁寧な歯磨き: 食後や寝る前には、歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも活用して、食べカスをしっかり取り除きましょう。
- 舌磨き: 舌の表面に付着する舌苔も細菌の温床になります。舌ブラシや歯ブラシの背についている舌クリーナーを使って、舌の奥から手前に向かって優しく磨きましょう。ただし、強くこすりすぎると舌を傷つけるので注意が必要です。
- うがい: 食後に水や洗口液でうがいをすることで、口の中に残った食べカスや細菌を洗い流せます。特に喉の奥までするガラガラうがいは、扁桃腺の陰窩に溜まるのを防ぐ効果も期待できます。
鼻や喉の病気の管理
扁桃炎や鼻炎、副鼻腔炎など、喉や鼻の病気は膿栓ができやすくなる原因となります。
これらの病気がある場合は、適切に治療・管理することが膿栓の予防につながります。
- 耳鼻咽喉科での診察: 鼻詰まり、鼻水、喉の痛み、扁桃腺の腫れなどの症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。アレルギー性鼻炎の場合は、アレルギーの原因物質を特定し、対策を行うことも重要です。
- 後鼻漏対策: 後鼻漏がある場合は、その原因となっている鼻の病気を治療することが、膿栓の予防につながります。鼻うがいも、鼻腔から喉に流れ込む分泌物を減らすのに有効な場合があります(医師に相談の上で行うのが望ましいです)。
生活習慣の改善
口腔ケアや病気の管理に加えて、生活習慣を見直すことも、膿栓ができにくい体質を作る上で役立ちます。
- 口呼吸から鼻呼吸へ: 口呼吸は口の中を乾燥させ、細菌が繁殖しやすい環境を作ります。また、鼻のフィルターを通さないため、空気中のほこりや細菌が直接喉に届きやすくなります。意識して鼻呼吸を心がけましょう。寝ている間に口呼吸になる場合は、口にテープを貼るなどの対策も有効なことがあります(ただし、鼻詰まりがひどい場合は避けてください)。
- 喉の乾燥を防ぐ: 空気が乾燥している時期や、エアコンの効いた部屋では、喉が乾燥しやすくなります。加湿器を使ったり、こまめに水分を摂ったりして、喉を潤すようにしましょう。寝る前にマスクをして寝るのも効果的です。
- 禁煙: 喫煙は喉の粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、自浄作用を低下させます。膿栓ができやすいだけでなく、様々な病気のリスクを高めるため、禁煙を検討しましょう。
- 規則正しい生活と休息: 睡眠不足や疲労、ストレスは免疫力を低下させ、感染症にかかりやすくします。規則正しい生活を送り、十分な休息をとることで、体の免疫機能を正常に保つことが大切です。
これらの予防法を実践することで、臭い玉ができる頻度を減らし、気になる口臭の改善にもつながる可能性があります。
病院で相談・処置を受けるべきケース
多くの人にとって、臭い玉(膿栓)は不快ではあるものの、健康上の大きな問題とならないことが多いです。
しかし、場合によっては医療機関、特に耳鼻咽喉科での相談や処置が必要となることがあります。
どのような場合に病院に行くべきか、そして病院ではどのような処置が受けられるのかを解説します。
耳鼻咽喉科での専門的な処置
以下のような場合は、自分でどうにかしようとせず、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
- 膿栓が頻繁にできる、量が多い、大きい: 日常生活に支障をきたすほどの頻度や量、サイズの場合。
- セルフケア(うがいなど)では全く取れない: 自分で安全な方法を試しても改善しない場合。
- 喉の痛み、腫れ、発熱などの症状を伴う: 膿栓だけでなく、扁桃炎などの急性炎症を起こしている可能性がある場合。
- 喉の奥の強い異物感や不快感が続く: 膿栓以外の原因(ポリープや腫瘍など、まれですが)の可能性も考慮する必要がある場合。
- 口臭がひどく、他の原因が見当たらない: 臭い玉が口臭の主な原因となっている疑いが強い場合。
- 自分で取る際に扁桃腺を傷つけてしまった、出血させてしまった: 医療機関での適切な処置や感染予防が必要な場合。
耳鼻咽喉科では、以下のような処置が可能です。
- 吸引による除去: 医療用の吸引器を使って、扁桃腺の陰窩に溜まった膿栓を吸い取ります。安全かつ確実な方法で、扁桃腺を傷つけるリスクが少ないです。
- 洗浄: 専用の器具で扁桃腺の陰窩を洗浄し、膿栓を洗い流す処置を行うことがあります。
- 原因疾患の治療: 膿栓が頻繁にできる背景に慢性扁桃炎や鼻の病気がある場合は、それらの原因疾患に対する治療(薬物療法など)が行われます。
これらの処置は、医師が喉の状態を直接確認しながら行うため、自分で無理に取るよりもはるかに安全で効果的です。
扁桃腺摘出術の検討
膿栓が頻繁にでき、そのせいで日常生活に大きな支障が出ている場合や、慢性扁桃炎を繰り返し、それが膿栓の主な原因となっているような場合には、根本的な治療として「扁桃腺摘出術」が検討されることがあります。
扁桃腺摘出術は、文字通り扁桃腺を外科的に取り除く手術です。
扁桃腺自体がなくなるため、膿栓ができる陰窩もなくなり、膿栓ができることはなくなります。
ただし、扁桃腺は免疫機能の一部を担っている組織であるため、摘出術は慎重に検討されます。
主に以下のような場合に適応が検討されます。
- 慢性扁桃炎を年間に4回以上繰り返すなど、反復性の扁桃炎: 炎症を繰り返すことで全身に悪影響を及ぼす可能性がある場合。
- 扁桃病巣感染症が疑われる場合: 扁桃腺の炎症が原因で、体の離れた場所に二次的な病気を引き起こしている可能性がある場合(例: IgA腎症、掌蹠膿疱症など)。
- 扁桃腺の肥大による呼吸や摂食の障害: 特に子供で扁桃腺が大きい場合に、睡眠時無呼吸症候群や食事の際の飲み込みにくさの原因になっている場合。
- 頻繁にできる膿栓がQOLを著しく低下させている場合: 上記のような病的な原因がなくても、膿栓による不快感や口臭が精神的な負担となり、日常生活に大きな支障が出ている場合。
扁桃腺摘出術は入院が必要な手術であり、術後には痛みなどの回復期間が必要です。
手術の適応は、患者さんの症状や全身の状態、医師の判断によって総合的に決定されます。
膿栓が頻繁にできて困っている場合は、耳鼻咽喉科医に相談し、手術が選択肢となり得るか確認してみると良いでしょう。
処置方法 | 特徴 | メリット | デメリット/注意点 | 適応ケース |
---|---|---|---|---|
自宅でのうがい | 水やうがい薬で喉の奥を洗浄 | 手軽にできる、費用がかからない、日常的な予防にもなる | 効果は限定的、大きい膿栓や奥にある膿栓は取れにくい | 軽度の膿栓、予防 |
自宅での物理的除去 | 綿棒などで掻き出す(非推奨) | 理論的には取れる可能性がある(非推奨) | 粘膜損傷、出血、感染、奥に押し込むリスク大 | 絶対に行わないべき |
病院での吸引/洗浄 | 医療用器具で膿栓を吸引・洗浄 | 安全かつ確実、医師が状態を確認しながら行える | 受診の手間や費用がかかる | セルフケアで取れない、量が多い、気になる症状がある場合 |
扁桃腺摘出術 | 扁桃腺を外科的に切除する | 膿栓が根本的にできなくなる、慢性扁桃炎などの原因疾患の治療になる | 入院・手術が必要、術後の痛み、回復期間、免疫機能の一部を失う | 反復性扁桃炎、扁桃病巣感染症、膿栓によるQOL低下が著しい場合など、医師の判断 |
臭い玉(膿栓)についてよくある質問
臭い玉に関して、多くの方が疑問に思う点についてQ&A形式で解説します。
臭い玉は人にうつる?
いいえ、臭い玉(膿栓)が人から人へうつることはありません。
膿栓は、扁桃腺の陰窩に溜まった物質や細菌が固まったものであり、感染症のように体内で増殖して広がったり、咳やくしゃみで飛沫感染したりするものではありません。
あくまで、個人の体質や口腔衛生状態、喉や鼻の状態などが原因でできるものです。
子供にもできる?
はい、子供にも臭い玉はできます。
子供の扁桃腺は大人に比べて大きいことが多く、扁桃炎にかかることも比較的多いです。
そのため、扁桃腺の陰窩に物質が溜まりやすく、膿栓ができることがあります。
子供が喉の不快感を訴えたり、咳をした時に小さな白い塊を出したりした場合は、膿栓の可能性があります。
ただし、子供の場合は自分で正確に症状を伝えられなかったり、無理なセルフケアで喉を傷つけたりするリスクも高いため、気になる場合は小児科や耳鼻咽喉科に相談するのが良いでしょう。
自然に治る?
膿栓は、特別な治療をしなくても、咳やくしゃみ、食事の際の飲み込みなど、物理的な刺激によって自然にポロっと取れてしまうことがよくあります。
扁桃腺の陰窩から自然に排出されることが多いため、「自然に治る」というよりは、「自然に排出される」というのが正確な表現です。
しかし、また時間が経つと新しくできてくることもあります。
根本的にできにくくするには、原因となる口腔衛生状態や喉・鼻の状態を改善することが重要です。
どのくらいの大きさになる?
一般的に見られる膿栓の大きさは、米粒大(数ミリメートル程度)であることが多いです。
しかし、溜まる量や期間によっては、それ以上に大きくなることもあります。
まれに1センチメートル近くになる大きな膿栓が排出されて驚く人もいますが、そこまで大きくなるのは比較的珍しいケースです。
大きさに関わらず、強烈な臭いを放つのが特徴です。
臭い玉があると風邪を引きやすい?
臭い玉(膿栓)自体が直接的に風邪を引き起こすわけではありません。
しかし、膿栓ができやすい人は、慢性的な扁桃炎があったり、扁桃腺が大きいなど、もともと喉の免疫機能や構造に特徴がある場合があります。
また、口腔衛生状態が悪かったり、口呼吸をしていたりするなど、細菌やウイルスが体内に入り込みやすい環境にある可能性も考えられます。
これらの要因が重なることで、風邪を引きやすくなるという側面はあるかもしれません。
膿栓ができやすいということは、喉の健康状態に何らかのサインが現れていると捉え、口腔ケアや全身の健康管理に気を配るきっかけとすることが大切です。
【まとめ】臭い玉の原因を知り、正しく対処・予防しよう
喉の奥から出てくる臭い玉(膿栓)は、扁桃腺の陰窩に食べカスや細菌、免疫細胞などが溜まってできる、生理的な現象でもあります。
多くの人に見られる可能性があり、その強い臭いは主に細菌の分解によって発生する揮発性硫黄化合物が原因です。
膿栓は口臭の原因の一つとなりますが、口臭の原因は他にも様々あるため、膿栓を取り除いても完全に口臭が消えない場合もあります。
臭い玉ができる主な原因としては、口腔内の不衛生、扁桃炎などの喉の炎症、後鼻漏などの鼻の病気などが挙げられます。
これらの原因を踏まえた上で、日常的な口腔ケアの徹底、鼻や喉の病気の適切な管理、そして口呼吸の改善や禁煙といった生活習慣の見直しを行うことが、膿栓の予防につながります。
自宅でできるセルフケアとしては、うがいが最も安全で効果的な方法です。
特にガラガラうがいは、物理的に膿栓を洗い流す効果が期待できます。
しかし、綿棒などで無理にほじくり出す方法は、扁桃腺を傷つけたり、感染のリスクを高めたりするため、絶対に行わないでください。
膿栓が頻繁にできる、量が多い、セルフケアで取れない、喉の痛みや腫れを伴うといった場合は、迷わず耳鼻咽喉科を受診しましょう。
病院では安全かつ効果的な吸引や洗浄による除去が可能です。
また、膿栓の背景に慢性扁桃炎などの病気がある場合は、その治療が行われます。
膿栓による不快感が著しく、日常生活に大きな支障が出ている場合には、扁桃腺摘出術も選択肢の一つとして検討されることがあります。
臭い玉は不快なものですが、その正体や原因、正しい対処法を知ることで、過度に心配する必要はありません。
適切なケアと予防を心がけ、必要であれば専門医に相談することで、快適な毎日を取り戻しましょう。
免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。
個々の症状や状況については、必ず医師や専門家にご相談ください。
この記事の情報に基づいた行動によって生じたいかなる損害についても、当方では責任を負いかねます。