立ちくらみの原因と正しい対処法 | ひどい時のサインと受診目安

立ちくらみは、立ち上がった瞬間に目の前が暗くなったり、フワッとした感覚になったり、力が抜けるように感じたりする比較的よくある症状です。
多くの人が一度は経験したことがあるかもしれません。
一時的なものであれば問題ないことが多い一方で、中には何らかの病気が隠れているサインである可能性も否定できません。
この記事では、立ちくらみがなぜ起こるのか、その主な原因や症状の種類、性別による違い、そしてご自身でできる対処法や、どのような場合に医療機関を受診すべきかについて詳しく解説します。
立ちくらみに悩んでいる方、原因を知りたい方はぜひ参考にしてください。

立ちくらみが起こる主な原因とは?

立ちくらみは、主に脳への血流が一時的に低下することで起こります。
私たちの体は、普段から重力に逆らって血液を脳に送り届けるために、自律神経の働きによって血圧や心拍数を適切に調節しています。
しかし、何らかの原因でこの調節がうまくいかなくなると、特に体勢を変えたときに脳への血流が不足し、立ちくらみとして感じられるのです。
立ちくらみの原因は多岐にわたり、特定の病気だけでなく、生理的な反応や生活習慣、服用している薬剤などが関係していることもあります。

血圧変動による立ちくらみ(起立性低血圧)

立ちくらみの最も一般的な原因の一つに、「起立性低血圧」があります。
これは、寝ている状態や座っている状態から立ち上がったときに、一時的に血圧が大きく低下してしまう状態を指します。

通常、立ち上がると重力によって血液が下半身に移動しようとします。
しかし、健康な体であれば、自律神経の働きが素早く心臓の拍出量を増やしたり、血管を収縮させたりして血圧の低下を防ぎ、脳への血流を維持します。

ところが、この自律神経の調節機能がうまく働かない場合、立ち上がったときに血圧が十分に保てず、脳への血流が不足してしまいます。
これにより、立ちくらみやめまい、ひどい場合には失神などを引き起こすことがあります。

起立性低血圧にはいくつかのタイプがあり、立ち上がってすぐに起こる「古典的起立性低血圧」のほか、立ち上がって数分後に血圧が低下する「遅発性起立性低血圧」などがあります。

起立性低血圧の原因としては、以下のようなものが考えられます。

  • 加齢: 年齢を重ねるとともに、自律神経の機能や血管の弾力性が低下しやすくなります。
  • 脱水: 体内の水分量が不足すると、血液量も減少し、血圧を維持しにくくなります。
    発熱、下痢、嘔吐、暑さによる大量の発汗などが原因となります。
  • 特定の病気: パーキンソン病、糖尿病性神経障害、多系統萎縮症など、自律神経の働きに影響を与える神経系の病気や、心不全、弁膜症などの心臓の病気によって起こることもあります。
  • 薬剤: 後述しますが、特に降圧剤など、血圧や心拍数に影響を与える薬の副作用として起こることがあります。
  • 長時間の立位: 同じ姿勢で長時間立っていると、下半身に血液がたまりやすくなり、立ち上がるときと同様に血圧が維持しにくくなることがあります。

このように、起立性低血圧は様々な要因で引き起こされる立ちくらみの代表的な原因です。
特に高齢者や、特定の病気で治療を受けている方、薬剤を服用している方では注意が必要です。

貧血(鉄欠乏性貧血など)による立ちくらみ

貧血も立ちくらみの原因となることがあります。
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が減少した状態を指します。
ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ役割を担っているため、貧血になると体が必要とする十分な酸素を供給できなくなります。

脳は体の中でも特に多くの酸素を消費する器官です。
貧血によって脳への酸素供給が不十分になると、酸素不足を補うために心臓はより速く拍動しようとし、血圧も変動しやすくなります。
特に体勢を変えたり、急に動いたりした際に、脳が必要とする酸素や血液が一時的に不足し、立ちくらみやめまい、息切れ、だるさといった症状が現れることがあります。

貧血の原因として最も多いのは「鉄欠乏性貧血」です。
これは、ヘモグロビンの材料となる鉄分が不足することによって起こります。
鉄欠乏性貧血は、特に女性に多く見られます。
月経による出血、妊娠、授乳、無理なダイエットなどが原因となるほか、消化管からの慢性的な出血(胃潰瘍、大腸がんなど)が原因で鉄分が失われている可能性もあります。

その他の貧血としては、ビタミンB12や葉酸の不足による巨赤芽球性貧血、腎臓の病気による腎性貧血、自己免疫疾患や感染症に伴う貧血など、様々な種類があります。

貧血による立ちくらみは、単に立ち上がるときだけでなく、日常的にだるさや息切れを感じる、顔色が悪い、爪が割れやすい、異食症(氷などを無性に食べたくなる)といった他の症状を伴うことが多いのが特徴です。
立ちくらみに加えてこれらの症状がある場合は、貧血の可能性を考慮し、医療機関で検査を受けることが重要です。

自律神経の乱れが関係する立ちくらみ

私たちの体には、血圧、心拍数、体温、消化、呼吸など、生命維持に必要な体の機能を無意識のうちに調節している「自律神経」があります。
自律神経には、活動時に優位になる交感神経と、休息時に優位になる副交感神経があり、この二つのバランスがとれていることで体の機能は円滑に働いています。

しかし、過度なストレス、睡眠不足、不規則な生活、疲労、環境の変化などによって自律神経のバランスが崩れると、体の様々な機能に不調が現れます。
特に、起立時の血圧や心拍数の調節がうまくいかなくなり、立ちくらみやめまい、動悸、倦怠感、頭痛、腹痛などの多様な症状を引き起こすことがあります。

自律神経の乱れが原因で起こる立ちくらみの一つに、「起立性調節障害(OD)」があります。
これは思春期の子どもに多く見られる病気ですが、大人でも起こることがあります。
ODでは、立ち上がったときに脳への血流が十分に増えず、立ちくらみやめまい、午前中に調子が悪く午後から回復する、立ち続けるのが辛いといった症状が慢性的に現れます。

自律神経の乱れによる立ちくらみは、検査をしても体の異常が見つからないことも多く、診断が難しい場合があります。
しかし、適切な生活習慣の見直しや、場合によっては薬物療法などによって症状の改善が期待できます。

薬剤の副作用による立ちくらみ

特定の薬剤の副作用として、立ちくらみが起こることも少なくありません。
薬によっては、血管を拡張させたり、心臓の働きを抑えたり、自律神経に影響を与えたりする作用があるため、血圧の調節に影響を及ぼす可能性があるからです。

立ちくらみを副作用として引き起こしやすい主な薬剤には以下のようなものがあります。

  • 降圧剤: 高血圧の治療に使われる薬です。
    血圧を下げる作用が強く出すぎたり、体位変換時の血圧調節がうまくいかなくなったりすることで立ちくらみを引き起こすことがあります。
    特に複数の降圧剤を服用している場合や、高齢者では注意が必要です。
  • 利尿剤: 体内の余分な水分や塩分を排出することで血圧を下げる薬です。
    体液量が減少するため、脱水状態になりやすく、立ちくらみの原因となることがあります。
  • 精神安定剤や抗うつ薬: これらの薬の中には、自律神経に影響を与えるものや、血管を拡張させる作用を持つものがあり、立ちくらみやめまいを引き起こすことがあります。
  • 睡眠薬: 眠気を促す作用だけでなく、血圧を下げる効果を持つものもあり、服用後に立ち上がった際に立ちくらみを起こすことがあります。
  • 前立腺肥大症治療薬: 排尿を改善するために膀胱や尿道の筋肉を弛緩させる薬ですが、同時に血管も拡張させる作用があるため、血圧が下がり立ちくらみを起こすことがあります。

もし、新しい薬を飲み始めてから立ちくらみが頻繁に起こるようになった場合は、薬剤の副作用の可能性を疑う必要があります。
自己判断で薬の服用を中止したり、量を変更したりせず、必ず処方した医師や薬剤師に相談しましょう。
薬の種類や量を調整することで、立ちくらみの症状が改善する場合があります。

その他の病気が原因の立ちくらみ

立ちくらみは、上述した原因以外にも、様々な病気の症状として現れることがあります。
立ちくらみが頻繁に起こる、症状が重い、他の症状を伴うといった場合は、隠れた病気の可能性を考慮し、精密検査が必要となることがあります。

立ちくらみに関連する可能性のあるその他の病気としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 心疾患:
    • 不整脈: 心臓の拍動リズムが乱れることで、ポンプ機能が低下し、全身、特に脳への血流が一時的に不足して立ちくらみや失神を引き起こすことがあります。
      徐脈(脈が遅すぎる)、頻脈(脈が速すぎる)、期外収縮など、様々な不整脈が原因となり得ます。
    • 心不全: 心臓のポンプ機能が弱まり、全身に十分な血液を送り出せなくなる病気です。
      脳への血流も不足しがちになり、立ちくらみや息切れ、むくみなどの症状が現れます。
    • 弁膜症: 心臓の弁に異常があると、血液の流れが滞り、心臓に負担がかかります。
      これも脳への血流低下につながり、立ちくらみを引き起こす可能性があります。
  • 脳血管障害:
    • 一過性脳虚血発作(TIA): 脳の血管が一時的に詰まり、脳の一部への血流が不足する状態です。
      数分から数十分で症状は改善しますが、立ちくらみやめまいのほか、手足のしびれや麻痺、ろれつが回らない、片方の目が見えにくくなるといった症状が現れることがあります。
      脳梗塞の前触れである可能性が高いため、緊急の対応が必要です。
  • 内分泌疾患:
    • 糖尿病: 糖尿病による自律神経障害が起こると、起立時の血圧調節がうまくいかなくなり、起立性低血圧を引き起こすことがあります。
    • 副腎機能不全(アジソン病など): 副腎から分泌されるホルモン(コルチゾールなど)が不足すると、血圧が維持できなくなり、立ちくらみや全身倦怠感、体重減少などの症状が現れます。
  • 脱水や熱中症: 暑い環境での活動や、水分補給が不十分な場合に起こる脱水や熱中症は、血液量の減少や血管の拡張を引き起こし、立ちくらみの原因となります。
    特に夏場は注意が必要です。

これらの病気は、立ちくらみ以外にも特徴的な症状を伴うことがほとんどです。
立ちくらみに加えて、胸の痛み、息切れ、動悸、手足のしびれや麻痺、強い頭痛、意識の変化などがある場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。

目次

立ちくらみの症状と種類

立ちくらみと一口に言っても、その感じ方や現れる状況は様々です。
一般的には、立ち上がった瞬間に目の前が真っ暗になる「眼前暗黒感」や、フワフワして倒れそうになる感覚として表現されます。
これらの症状は、脳への血流が一時的に低下した結果として現れます。

立ちくらみと「めまい」の明確な違い

立ちくらみとよく似た症状に「めまい」があります。
どちらもふらつき感や不快感を伴うことがありますが、厳密には異なる現象であり、原因も異なります。
この違いを理解することは、症状を正確に伝えたり、適切な対処をしたりする上で重要です。

特徴 立ちくらみ めまい
感覚 目の前が暗くなる(眼前暗黒感)
フワフワする、宙に浮いている感じ(浮動性めまい)
血の気が引く、気が遠くなる感じ(失神寸前感)
周囲がぐるぐる回る(回転性めまい)
自分自身が揺れている、グラグラする感じ(浮動性めまい)
主な原因 血圧の急激な変動(起立性低血圧)、脳への血流低下、貧血 耳の平衡感覚器の異常、脳幹や小脳の異常、自律神経の乱れ
誘発要因 体勢の変化(特に立ち上がり)、長時間の立位 頭の位置を変える、特定の体勢、ストレス
随伴症状 倦怠感、冷や汗、動悸(代償性)、吐き気(まれ) 吐き気、嘔吐、耳鳴り、難聴、頭痛

立ちくらみ(眼前暗黒感、失神寸前感)は、主に脳への血流が一時的に不足することによって起こる症状です。
目の前が真っ暗になったり、意識が遠のくような感覚(失神寸前感)を伴ったりすることが特徴です。
「脳貧血」と呼ばれることもありますが、これは医学的には「起立性低血圧」やそれに伴う脳虚血を指すことが多いです。

一方、めまいは、体の平衡感覚を司る耳の奥(内耳)や、脳(脳幹、小脳)の異常によって起こることが多い症状です。
めまいには、大きく分けて二つのタイプがあります。

  • 回転性めまい: 自分自身や周囲がぐるぐる回っているように感じるめまいです。
    メニエール病や良性発作性頭位めまい症など、内耳の異常が原因で起こることが多いです。
    吐き気や嘔吐、耳鳴り、難聴などを伴うことがあります。
  • 浮動性めまい: 体がフワフワしたり、グラグラしたり、宙に浮いているように感じるめまいです。
    脳の異常や自律神経の乱れ、心因性などが原因で起こることがあります。

このように、立ちくらみは「血流不足による眼前暗黒感や失神寸前感」であり、めまいは「平衡感覚の異常による回転感や浮遊感」であるという違いがあります。
ご自身の症状がどちらに近いかを理解しておくと、医療機関を受診する際に正確に伝えやすくなります。

頻繁に起こる立ちくらみの特徴

一時的な立ちくらみは誰にでも起こりえますが、日常的に頻繁に起こる、あるいは特定の状況で必ず起こるといった場合は、何らかの背景に原因がある可能性が高まります。

頻繁に起こる立ちくらみの特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  • 回数の多さ: 1日に何度も、または週に数回以上など、繰り返し立ちくらみを経験する。
  • 特定の時間帯や状況: 朝起きた時、長時間立っていた後、お風呂から上がった後、食事の後など、決まった状況で起こりやすい。
  • 持続時間: 一時的(数秒〜数十秒)であることも多いが、回復に時間がかかったり、すぐに再発したりする。
  • 他の症状との関連: 立ちくらみが起こるときに、動悸、息切れ、冷や汗、吐き気、頭痛、倦怠感などを伴うことが多い。
  • 生活への影響: 立ちくらみが怖くて安心して立ち上がれない、外出が億劫になるなど、日常生活に支障をきたしている。

頻繁に立ちくらみが起こる場合、前述した起立性低血圧や貧血が慢性化している可能性、あるいは自律神経の調節機能が持続的に乱れている(起立性調節障害など)可能性などが考えられます。
また、慢性的な心疾患や神経系の病気が隠れている可能性も否定できません。

単なる体調不良として放置せず、頻繁に立ちくらみを経験する場合は、その回数や起こる状況、伴う症状などを詳しく記録しておき、医療機関で相談することをお勧めします。

しゃがんだ後に立ち上がる際の立ちくらみ

しゃがんだ状態から急に立ち上がったときに立ちくらみを経験する、という方も多いでしょう。
これは、しゃがんでいる状態では下半身の血管が圧迫され、血液が一時的に下半身にたまりやすくなっていることが関係しています。

しゃがんだ状態から立ち上がると、圧迫が解放された下半身に急激に血液が流れ込み、下半身に血液が「プール」されてしまうことがあります。
これにより、心臓に戻る血液の量が一時的に減少し、全身、特に脳への血液供給が不足しやすくなります。
健康な体であれば、自律神経がすぐに反応して血圧を維持しようとしますが、その調節が追いつかない場合に立ちくらみが起こります。

特に、以下のような状況ではしゃがんだ後の立ちくらみが起こりやすくなります。

  • 長時間しゃがんでいた場合: 長時間同じ姿勢でいると、より下半身に血液がたまりやすくなります。
  • 脱水状態: 体全体の血液量が少ないため、血圧を維持する予備能力が低下しています。
  • 疲労や睡眠不足: 自律神経の働きが鈍くなっている可能性があります。
  • 高齢者: 自律神経や血管の機能が低下しているため。
  • 特定の薬剤服用中: 血圧を下げる薬などを服用している場合。

しゃがんだ後の立ちくらみは、比較的生理的な反応として起こることもありますが、あまりにひどい場合や頻繁に起こる場合は、隠れた起立性低血圧や自律神経の調節異常がある可能性も考えられます。

立ちくらみの症状がひどい場合

立ちくらみの症状の程度は人によって異なりますが、中には「ひどい」と感じるほど重い症状が現れることもあります。

立ちくらみの症状がひどいケースとしては、以下のような状態が挙げられます。

  • 失神・意識消失に至る: 立ちくらみの最中に、完全に意識を失って倒れてしまう。
    これは脳への血流が極端に不足した状態であり、「失神」と呼ばれます。
    失神は、立ちくらみとは異なり、一時的であっても意識を完全に失う点でより重篤なサインと考えられます。
  • 倒れて怪我をする: 立ちくらみによって体のコントロールを失い、転倒して頭を打ったり、骨折したりといった怪我をする。
  • 症状が長く続く: 立ち上がってから数十秒経っても症状が改善せず、数分間ふらつきや目の前が暗い状態が続く。
  • 立ち上がるたびに必ず起こる: 少しでも体勢を変えて立ち上がるだけで、毎回のようにひどい立ちくらみが起こり、普通の生活が送れない。
  • 他の重い症状を伴う: ひどい立ちくらみに加えて、激しい頭痛、胸の痛み、息切れ、手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、視野がおかしいといった症状が同時に現れる。

特に、立ちくらみが失神に至る場合や、他の重篤な症状を伴う場合は、単なる立ちくらみではなく、心臓や脳など、生命維持に関わる重要な臓器の病気が原因となっている可能性が高まります。
このような場合は、迷わず救急車を呼ぶか、速やかに医療機関を受診する必要があります。

症状がひどいと感じる場合は、その原因を放置すると危険な状態につながる可能性もあるため、必ず医師に相談して適切な診断と治療を受けることが重要です。

立ちくらみは男性・女性で原因が違う?

立ちくらみ自体は性別に関わらず起こりうる症状ですが、その背景にある原因や頻度には、男性と女性で特徴的な違いが見られることがあります。
これは、ホルモンの影響や、ライフステージ、かかりやすい病気の違いなどが関係しています。

男性に多い立ちくらみの原因

男性の場合、立ちくらみの原因として比較的多く見られる、あるいは男性特有の要因としては以下のようなものが挙げられます。

  • ライフスタイルの影響:
    • 過労や睡眠不足: 仕事上のストレスや不規則な生活は、男性でも自律神経のバランスを乱しやすく、立ちくらみの原因となることがあります。
    • 飲酒: アルコールの摂取は一時的に血管を拡張させ、血圧を下げる作用があります。
      飲みすぎると脱水を招きやすくなることもあり、立ちくらみを引き起こしやすくなります。
      特に飲酒後に急に立ち上がったり、お手洗いに行ったりした際に起こることがあります。
    • 喫煙: 喫煙は血管を収縮させる一方で、長期的には血管の健康を損ない、血圧調節機能に影響を与える可能性があります。
  • 特定の病気や薬剤:
    • 前立腺肥大症の治療薬: 前述しましたが、前立腺肥大症の治療に用いられるα1ブロッカーという種類の薬は、血管を拡張させる作用があるため、立ちくらみや起立性低血圧の副作用を起こしやすいです。
      これは高齢の男性に多く見られる原因です。
    • 心疾患: 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や不整脈は、女性よりも男性に比較的多く見られる傾向があり、これらの病気が立ちくらみや失神の原因となることがあります。
    • その他の慢性疾患: 糖尿病や神経疾患など、自律神経に影響を与える病気は、男性でも立ちくらみの原因となり得ます。

男性の場合、仕事上のストレスや生活習慣の乱れ、そして加齢に伴って増加する特定の疾患やその治療薬が立ちくらみの背景にあることが多いと考えられます。

女性に多い立ちくらみの原因

女性は、男性と比較して以下のような要因が立ちくらみの原因となりやすい傾向があります。

  • 貧血:
    • 月経による鉄分不足: 毎月の月経によって定期的に血液(鉄分)が失われるため、女性は鉄欠乏性貧血になりやすいです。
      貧血は立ちくらみの主要な原因の一つであり、特に月経量の多い方や、頻繁に出産・授乳を経験している方では注意が必要です。
    • 妊娠: 妊娠中は、母体と胎児の両方に血液を送るため、体内の血液量が増加しますが、赤血球の増加が体液の増加に追いつかず、相対的に貧血になりやすい傾向があります(生理的貧血)。
      また、ホルモンバランスの変化や、大きくなった子宮が血管を圧迫することなども、立ちくらみの原因となることがあります。
  • ホルモンバランスの変化:
    • 更年期: 更年期には女性ホルモンのバランスが大きく変動し、自律神経の乱れを引き起こしやすくなります。
      これにより、立ちくらみやめまい、ほてり、動悸といった様々な不定愁訴が現れることがあります。
    • 無理なダイエット: 極端な食事制限や栄養不足は、貧血や低血糖、電解質バランスの乱れを引き起こし、立ちくらみの原因となります。
      特に若い女性に多く見られます。
  • 低血圧: 一般的に、収縮期血圧が100mmHg未満の場合を低血圧と呼びますが、女性は男性に比べて低血圧傾向の方が比較的多いとされます。
    元々の血圧が低い場合、少しの血圧変動でも脳への血流が不足しやすく、立ちくらみを起こしやすい可能性があります。
  • 起立性調節障害(OD): ODは思春期に多く見られますが、特に女性に多い傾向があります。
    立ちくらみやめまい、倦怠感、午前中に体調が悪いといった症状が特徴です。

このように、女性の立ちくらみは、貧血やホルモンバランスの変化といった、女性特有の生理的な要因やライフステージの変化が原因となっていることが多いと考えられます。
ただし、男性と同様に、心疾患や神経疾患、薬剤などが原因となっている可能性もあるため、症状が続く場合は医師に相談することが大切です。

立ちくらみの日常的な対処法と予防策

立ちくらみは、原因によっては医療的な治療が必要となる場合がありますが、日常生活の中でできる対処法や予防策も多く存在します。
日頃からこれらの対策を意識することで、立ちくらみが起こりにくくなったり、起こったときの症状を軽減したりすることが期待できます。

立ちくらみが起きたときの応急処置

立ちくらみを感じたときに、症状が悪化したり失神したりするのを防ぐための応急処置を知っておくことは重要です。

  1. すぐに座る、またはしゃがむ: 立ちくらみを感じたら、その場にすぐに座るかしゃがみ込みましょう。
    床に手をついて体を支えても良いです。
    これにより、脳と心臓の高低差が小さくなり、脳への血流が改善しやすくなります。
  2. 可能であれば横になる: 安全な場所であれば、その場に横になりましょう。
    足を少し高くすると、下半身にたまった血液が心臓に戻りやすくなり、脳への血流がさらに改善されます。
  3. 頭を低くする: 座った状態で、膝の間に頭を入れるように深くお辞儀をするのも効果的です。
    これも脳を心臓より低い位置に持っていくことで、脳への血流を助けます。
  4. 衣服を緩める: ネクタイやベルト、首元のきつい服などを緩めると、呼吸が楽になり、体の緊張が和らぎます。
  5. 深呼吸をする: ゆっくりと深い呼吸を繰り返すことで、リラックスし、自律神経のバランスを整える助けになります。
  6. 水分を摂る: 可能であれば、少し落ち着いてから水分(特に塩分や糖分を含むスポーツドリンクなど)を少量ずつ摂ると、脱水による立ちくらみの改善に役立ちます。
    ただし、無理に一度にたくさん飲まないようにしましょう。
  7. 急に立ち上がらない: 症状が落ち着いたからといって、すぐに急に立ち上がると再び立ちくらみを起こす可能性があります。
    ゆっくりと、手すりなどにつかまりながら慎重に立ち上がるようにしましょう。

立ちくらみを感じたら、まずは安全を確保することが最優先です。
転倒による怪我を防ぐために、人目を気にせずすぐに座るかしゃがむ、あるいは横になるようにしましょう。

立ちくらみを予防するための生活習慣

立ちくらみを起こしにくくするためには、日頃の生活習慣を見直すことが効果的です。

  • 規則正しい生活: 十分な睡眠時間を確保し、毎日決まった時間に寝起きすることで、体のリズムが整い、自律神経のバランスが安定しやすくなります。
  • バランスの取れた食事: 偏食せず、様々な食品から栄養を摂取しましょう。
    特に貧血が原因の場合、鉄分やビタミンB12、葉酸などを豊富に含む食品を意識的に摂ることが大切です。
  • 適度な運動: ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で定期的に運動を行うことで、全身の血行が促進され、自律神経の機能改善にもつながります。
    ただし、急激な激しい運動はかえって立ちくらみを招くことがあるため、徐々に慣らしていきましょう。
  • ストレスマネジメント: ストレスは自律神経の乱れの大きな原因となります。
    自分なりのリラックス方法(趣味、休息、入浴など)を見つけて、日頃からストレスを溜め込まないように心がけましょう。
  • 体勢を変えるときはゆっくりと: 寝ている状態から起き上がるときや、座っている状態から立ち上がるときは、急に動かずゆっくりと時間をかけて行うようにしましょう。
    一度腰を下ろしてから立ち上がる、手すりなどにつかまる、立ち上がる前に足踏みをするなども有効です。
  • 長時間の立位や座位を避ける: 同じ姿勢で長時間立ち続けたり座り続けたりすると、下半身に血液がたまりやすくなります。
    時々足首を動かしたり、軽く歩いたりして、血行を促しましょう。

食事や水分・塩分摂取による立ちくらみ対策

立ちくらみの予防や軽減には、食生活の工夫や適切な水分・塩分摂取が重要です。

  • 十分な水分摂取: 脱水は血液量を減らし、立ちくらみの原因となります。
    特に暑い時期や運動時、発熱・下痢・嘔吐がある場合は、こまめに水分を補給しましょう。
    1日に1.5~2リットルを目安に、水やお茶などを飲むように心がけます。
    一度に大量に飲むよりも、少量ずつ頻繁に飲む方が効果的です。
  • 適切な塩分摂取: 起立性低血圧など、低血圧傾向がある方の場合は、医師の指導のもと、適度に塩分を摂取することが推奨されることがあります。
    塩分は体内の水分を保持する働きがあるため、血液量を維持しやすくなります。
    ただし、高血圧の方や腎臓病など、塩分制限が必要な病気がある方は、自己判断で塩分を増やすのは危険です。
    必ず医師に相談してください。
    スポーツドリンクや経口補水液は、水分とともに塩分や糖分も補給できるため、脱水対策や運動時の立ちくらみ予防に有効な場合があります。
  • 鉄分を多く含む食品: 貧血による立ちくらみの場合は、鉄分を多く含む食品を積極的に摂りましょう。
    レバー、赤身の肉、魚(カツオ、マグロなど)、大豆製品(豆腐、納豆など)、緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜など)、海藻類(ひじき、のりなど)などが挙げられます。
    鉄分の吸収を助けるビタミンC(柑橘類、イチゴ、ブロッコリーなど)と一緒に摂るのがお勧めです。
    コーヒーや紅茶に含まれるタンニンは鉄分の吸収を妨げることがあるため、食事中や食後すぐに大量に飲むのは控えましょう。
  • 血糖値の管理: 食後に立ちくらみが起こりやすい場合は、急激な血糖値の上昇や下降が関係している可能性があります。
    一度に大量に食べるのではなく、少量ずつ数回に分けて食べる、炭水化物ばかりの食事を避け、たんぱく質や野菜もバランス良く摂るなどの工夫が有効です。

食事や水分・塩分摂取による対策は、原因によって適した方法が異なります。
特に病気が原因の場合や、特定の食事制限が必要な場合は、必ず医師や管理栄養士に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

立ちくらみで病院を受診すべきケース

多くの場合、立ちくらみは一時的なものや、生活習慣の改善で軽減されることが多いですが、中には医療機関での診断と治療が必要なサインであることもあります。
どのような場合に病院を受診すべきかを判断することは、早期発見・早期治療につながる上で非常に重要です。

立ちくらみに加え受診が必要な症状

立ちくらみに加えて、以下のような症状が見られる場合は、放置せず速やかに医療機関を受診する必要があります。
これらの症状は、立ちくらみだけでなく、心臓や脳など体の重要な部分に何らかの問題が起きている可能性を示唆しているからです。

立ちくらみに加えて見られる症状 考えられる可能性 受診の緊急度
失神(意識消失) 不整脈、心臓弁膜症、脳血管障害など 緊急
強い胸の痛み、圧迫感 狭心症、心筋梗塞 緊急
息切れ、呼吸困難 心不全、不整脈、肺の病気 緊急度高
動悸(脈が速い・遅い・不規則) 不整脈 緊急度高
手足のしびれ、麻痺 脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA) 緊急
ろれつが回らない、言葉が出にくい 脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA) 緊急
片方の目が見えにくい、視野がおかしい 脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA) 緊急
激しい頭痛 脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍など 緊急度高
吐き気、嘔吐を伴う重いめまい感 内耳の重い病気、脳幹や小脳の異常 緊急度高
発熱、強い倦怠感 感染症、炎症性疾患、脱水、熱中症など 状況による
体重の急激な減少 内分泌疾患、悪性腫瘍など 早期受診
立ちくらみが頻繁に起こる(毎日など) 慢性的な起立性低血圧、自律神経障害など 早期受診
立ちくらみによって転倒し怪我をした 隠れた重い原因の可能性 早期受診

これらの症状が立ちくらみとともに現れた場合は、「単なる立ちくらみだから」と自己判断せず、できるだけ早く医療機関を受診してください。
特に、失神や胸痛、息切れ、手足の麻痺、ろれつ困難、激しい頭痛などを伴う場合は、命に関わる病気の可能性も否定できないため、ためらわずに救急車を呼ぶことも検討が必要です。

また、上記のような緊急性の高い症状でなくても、立ちくらみが頻繁に起こるようになった、症状がだんだんひどくなってきた、日常生活に支障が出ている、原因が思い当たらないといった場合も、一度医師に相談することをお勧めします。

立ちくらみは何科を受診すればいい?

立ちくらみで医療機関を受診する場合、最初に何科に行けば良いか迷う方もいるかもしれません。
立ちくらみは様々な原因で起こるため、原因に応じた専門医の診察が必要となる場合があります。

一般的に、立ちくらみで初めて医療機関を受診する際は、まず以下の科を受診するのが良いでしょう。

  • かかりつけ医、または一般内科: まずは普段から利用しているかかりつけ医に相談するのが最もスムーズです。
    かかりつけ医であれば、これまでの既往歴や服用中の薬などを把握しており、総合的な視点から症状の原因を探ることができます。
    また、必要に応じて専門の医療機関への紹介状を書いてもらうことも可能です。
    かかりつけ医がいない場合は、最寄りの内科を受診しましょう。
    内科では、立ちくらみの原因として多い、貧血、起立性低血圧、自律神経の乱れ、一般的な心疾患や内分泌疾患の初期診断を行うことができます。
    問診や簡単な身体診察、血液検査、心電図検査などが行われることが多いです。

内科での診察の結果、立ちくらみの原因として特定の病気が強く疑われる場合は、専門の診療科を紹介されることがあります。

  • 循環器内科: 不整脈、心不全、心臓弁膜症など、心臓の病気が立ちくらみの原因として疑われる場合。
    心臓超音波検査、ホルター心電図(24時間心電図)、心臓カテーテル検査などが行われることがあります。
  • 脳神経内科: 一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞、パーキンソン病など、脳や神経系の病気が原因として疑われる場合。
    頭部MRIやCT、脳波検査などが行われることがあります。
  • 心療内科または精神科: 自律神経失調症や起立性調節障害(OD)、ストレスや不安など、心因性の要因が立ちくらみに関与していると考えられる場合。
  • 耳鼻咽喉科: めまい感も強く伴う場合や、耳鳴り、難聴などの症状がある場合、内耳の異常(メニエール病、良性発作性頭位めまい症など)が立ちくらみのように感じられている可能性も考えられます。

このように、立ちくらみの原因は多岐にわたるため、まずは内科で総合的な診察を受け、必要に応じて専門医の診察を受けるのが一般的な流れです。
症状を正確に伝え、いつ、どのような状況で、どれくらいの頻度で、どのくらいの時間、どのような感覚の立ちくらみが起こるのか、他にどのような症状を伴うのかなどを具体的に医師に伝えることが、適切な診断につながります。

まとめ

立ちくらみは多くの人が経験する身近な症状ですが、その原因は血圧の変動、貧血、自律神経の乱れ、薬剤の副作用、そして心臓や脳など様々な病気と関連している可能性があります。
立ち上がったときに目の前が暗くなる、フワフワするなどの症状は、脳への一時的な血流不足によって引き起こされます。
めまいとは症状の感じ方や原因が異なる点も理解しておくと良いでしょう。

立ちくらみが起きたときは、その場に座るか横になるなどして安全を確保し、脳への血流を回復させることが応急処置として重要です。
日頃から、規則正しい生活、バランスの取れた食事、十分な水分摂取、体勢を変えるときにゆっくり動くなどの予防策を心がけることで、立ちくらみを起こしにくくすることができます。
特に女性は貧血やホルモンバランスの変化、男性は特定の薬剤や生活習慣などが立ちくらみの原因となりやすい傾向が見られます。

ほとんどの立ちくらみは心配いらない一時的なものですが、頻繁に起こる、症状が重い(失神する)、胸痛や息切れ、手足のしびれ、激しい頭痛など他の症状を伴う場合は、隠れた病気のサインである可能性が高いため、速やかに医療機関を受診する必要があります。
まずはかかりつけ医や内科に相談し、必要に応じて専門医の診察を受けることが推奨されます。

立ちくらみは体のサインの一つです。
ご自身の体の声に耳を傾け、適切な対処や医療機関への相談を行うことが、健康を維持する上で大切です。

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、医療行為や医師による診断・治療に代わるものではありません。
立ちくらみの症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次