ケロイドってどんな病気?治る?原因と治療法を分かりやすく解説

ケロイドとは、傷が治った後も皮膚の線維組織が過剰に増殖し、赤く盛り上がって硬くなる病気です。
放置すると傷の範囲を超えて広がり、痛みやかゆみを伴うことがあります。
傷跡の盛り上がりにお悩みの方は、この記事でケロイドの原因や症状、そして専門医による治療法や予防法について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

ケロイドとは?定義と特徴

ケロイドは、外傷や手術、ニキビ、火傷などの傷が治った後も、傷跡の修復プロセスが異常をきたし、皮膚の結合組織(コラーゲンなど)が過剰に増殖してできる病的な瘢痕(はんこん:傷跡)の一種です。
特に、本来の傷の範囲を超えて周囲の正常な皮膚にまで広がる性質を持つのが大きな特徴です。

ケロイドは、単に盛り上がった傷跡というだけでなく、赤み、かゆみ、痛みを伴うことが多く、その症状は時間とともに悪化したり、自然に軽快することが少ない傾向にあります。
体質的な要因が強く関与していると考えられており、特定の部位(胸、肩、耳など)にできやすいことも知られています。

肥厚性瘢痕との違いは?見分け方

傷が盛り上がる状態には、「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」と「ケロイド」の2種類があります。
見た目は似ているため混同されがちですが、病態や治療法が異なるため、正しく見分けることが重要です。

最も大きな違いは、傷の範囲を超えて広がるかどうかです。

特徴 ケロイド 肥厚性瘢痕
広がり 元の傷の範囲を超えて周囲の正常な皮膚に広がる 元の傷の範囲内に留まる
症状 赤み、かゆみ、痛みが強い傾向がある 赤み、かゆみ、痛みを伴うことがあるが、ケロイドよりは弱いことが多い
増殖 時間とともに増大、進行しやすい 時間とともに自然に軽快・縮小する傾向がある
発生部位 胸、肩、耳、恥骨部などに好発 体のどの部分にも起こりうる
原因 体質的要因が強く関与 傷への物理的刺激(引っ張り、摩擦など)が関与しやすい
再発率(手術後) 高い(特に単独切除の場合) ケロイドと比較すると低い

ケロイドは、一度できると自然に治ることは非常に稀で、放置すると徐々に大きくなる傾向があります。
一方、肥厚性瘢痕は、傷が治癒する過程で一時的にコラーゲンが過剰に作られる状態であり、通常は数ヶ月から数年かけて自然に平坦化し、症状も改善していくことが多いです。

ただし、症状だけで自己判断するのは難しいため、盛り上がった傷跡ができた場合は、皮膚科や形成外科などの専門医に相談し、診断を受けることをお勧めします。

ケロイドの主な症状(画像で見る)

ケロイドの主な症状は、見た目の変化と、それに伴う自覚症状に分けられます。「画像で見る」という指示がありますが、ここでは言葉で詳細に症状を説明し、読者がイメージしやすいように解説します。

ケロイドは典型的に以下のような特徴を示します。

  • 盛り上がり(硬結): 傷跡が厚く、硬く盛り上がります。触るとゴムのように硬く感じられることがあります。
  • 赤み(紅斑): 傷跡全体またはその周辺が赤くなります。これは活発な炎症が続いているサインです。
  • かゆみ: 傷跡の周囲や内部に強いかゆみを感じることがあります。特に入浴時や運動で体温が上がった時、服が擦れるなどで悪化することがあります。
  • 痛み: 傷跡にズキズキ、あるいはピリピリとした痛みを感じることがあります。特に圧迫されたり引っ張られたりすると痛みが増すことがあります。

これらの症状は、ケロイドが活発に増殖している時期に強く現れる傾向があります。症状の程度は個人差がありますが、かゆみや痛みが日常生活に支障をきたすほど強くなることも少なくありません。

盛り上がり、赤み、かゆみ、痛みの特徴

盛り上がりと硬さ: ケロイドの最も目立つ特徴です。
皮膚の深い部分にある真皮層で、コラーゲン線維が不規則かつ過剰に生産され、密に絡み合うことで生じます。
この異常な組織増殖は、通常の傷跡修復のブレーキが効かなくなった状態と考えられます。

赤み: 傷跡に多くの毛細血管が新生したり、炎症細胞が集まったりすることで生じます。
ケロイドが活発に増殖している間は、赤みが強く見られることが多いです。
治療によって炎症が鎮まると、徐々に赤みが引いて目立ちにくくなることがあります。

かゆみと痛み: これらの感覚過敏は、ケロイド内部に増殖した神経線維や、炎症によって放出される物質(ヒスタミンなど)が関与していると考えられています。
かゆみや痛みはケロイドの進行を示すサインでもあり、これらの症状が強い場合は、ケロイドがまだ活動的である可能性が高いです。
掻きむしることでさらに傷をつけ、ケロイドを悪化させてしまうこともあるため注意が必要です。

これらの症状は、ケロイドの活動性や部位、大きさによって異なります。
特に、胸の中心部や肩、耳たぶなどにできたケロイドは、症状が強く、治療に抵抗性を示すことが多い傾向があります。

ケロイドの原因とは?なぜできる?

ケロイドが発生する正確なメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が複合的に関与していると考えられています。
主な原因としては、体質的な素因と、傷の種類や発生部位が挙げられます。

ケロイドは、傷の治癒過程における線維芽細胞(コラーゲンなどを作る細胞)の働きが異常になった結果生じます。
通常、傷が治る際には、線維芽細胞が必要な量のコラーゲンを作り、傷跡を埋めます。
しかし、ケロイド体質の人や特定の部位にできた傷では、線維芽細胞が過剰に活性化し、炎症も長引きやすいため、コラーゲンが過剰に生産・蓄積されてしまうと考えられています。
また、傷口にかかる物理的な刺激(引っ張り、摩擦、緊張など)も、線維芽細胞の活性化を促し、ケロイドの形成に関与すると言われています。

体質との関係(ケロイド体質の見分け方)

ケロイドができるかどうかには、「ケロイド体質」と呼ばれる体質的な素因が大きく関わっています。
ケロイド体質の人は、小さな傷や炎症でもケロイドになりやすく、一度できたケロイドも治療に抵抗性を示すことがあります。

ケロイド体質かどうかを診断する明確な基準はありませんが、以下のような特徴がある場合、ケロイド体質の可能性が高いと考えられます。

  • 家族歴: 血縁者にケロイドや肥厚性瘢痕ができやすい人がいる。
  • 既往歴: 過去にできた傷跡がケロイドや肥厚性瘢痕になったことがある(特に、小さな傷でも)。
  • 発生部位: 胸の中央部、肩、耳たぶ、下腹部、恥骨部、背中上部などにケロイドや肥厚性瘢痕ができたことがある。これらの部位はケロイドの好発部位として知られています。
  • 人種: アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系の人々にケロイドができやすい傾向があることが報告されていますが、日本人にもケロイド体質の人は多くいます。

「ケロイド体質」は病気ではなく、あくまで傷に対する体の反応の仕方の傾向を示す言葉です。
もし、これまでの傷跡で上記のような経験がある場合や、ケロイドの好発部位に傷を作る可能性がある場合(例えば、ピアス、手術など)は、自身がケロイド体質かもしれないと考え、傷の管理や予防に注意を払うことが重要です。
正確な診断やリスクの評価については、専門の医師に相談することをお勧めします。

傷の種類(手術創、熱傷、にきび痕など)

様々な種類の傷がケロイドの原因となり得ます。
特に、皮膚の真皮層にまで達する深い傷や、治癒に時間がかかる傷、炎症が長引く傷はケロイドのリスクが高まります。

ケロイドの原因となる代表的な傷の種類は以下の通りです。

  • 手術創: 外科手術の傷跡は、部位や縫合方法によっては皮膚に張力がかかりやすく、ケロイドや肥厚性瘢痕ができやすいです。特に胸骨や肩関節周辺の手術痕はリスクが高いとされます。
  • 熱傷(やけど): 深度の深いやけどは、皮膚の組織が広範囲に損傷するため、ケロイドや肥厚性瘢痕の発生リスクが非常に高いです。治癒に時間がかかることもリスクを高める要因となります。
  • にきび痕: 思春期以降の重症なにきび(特に嚢腫や硬結を伴うもの)が治った後に、特に胸や背中にケロイドや肥厚性瘢痕ができることがあります。
  • 外傷: 切り傷、擦り傷、打撲など、事故や怪我による傷跡もケロイドの原因となり得ます。傷の深さや汚染の有無、治癒過程が影響します。
  • ピアス: 耳たぶや体の他の部位に開けたピアスの穴が化膿したり、刺激を受けたりすることで、ケロイドが発生することは比較的よく見られます。特に耳たぶはケロイドの好発部位です。
  • 予防接種痕: BCG接種の痕が盛り上がってケロイドになることがあります。
  • その他の皮膚の炎症: 毛嚢炎(毛穴の炎症)、水疱瘡(みずぼうそう)、虫刺され、引っ掻き傷なども、体質によってはケロイドの原因となることがあります。

これらの傷ができる際には、ケロイド体質の可能性がある場合は特に、適切な初期治療と傷の管理が重要になります。
傷が治癒する過程で異常が見られた場合は、できるだけ早期に専門医に相談することが推奨されます。

ケロイドの治療法【保険適用】

ケロイドの治療は、その状態や症状、活動性、そして患者さんの体質に合わせて様々な方法が選択され、多くの場合、複数の治療法を組み合わせて行われます(集学的治療)。
ケロイド治療の目的は、ケロイドの増大を抑え、症状(かゆみ、痛み、赤み)を軽減し、見た目を改善することです。
多くの治療法が健康保険の適用対象となります。

主な治療法は以下の通りです。

保存的療法(塗り薬、テープ、圧迫療法)

ケロイドが比較的小さかったり、活動性がそれほど高くない場合や、他の治療と組み合わせて行われる初期治療として用いられます。
非侵襲的で、比較的安全性が高い治療法です。

塗り薬(ステロイド軟膏など)

ステロイド軟膏は、ケロイドや肥厚性瘢痕の炎症を抑え、かゆみや赤みを軽減する効果が期待できます。
塗り続けることで、組織の増殖を抑え、盛り上がりを改善させる効果も報告されています。

  • 使用される薬剤: ストロンゲストクラスやベリーストロングクラスなどの強力なステロイド軟膏が処方されることが多いです。ヘパリン類似物質含有クリームや軟膏が保湿や血行促進を目的に使用されることもあります。
  • 使用方法: 1日に数回、ケロイド部分に塗布します。
    皮膚が薄くなる、毛細血管が拡張するなどの副作用があるため、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。
    長期にわたる使用は、医師と相談しながら慎重に進める必要があります。

ケロイド治療用テープの効果

ケロイド治療用テープには、主にステロイド含有テープとシリコンテープがあります。

  • ステロイド含有テープ: テープに含まれるステロイド成分が皮膚から吸収され、炎症を抑え、線維芽細胞の増殖を抑制する効果があります。
    盛り上がり、赤み、かゆみの改善に有効です。
    貼りっぱなしにすることで、塗り薬よりも持続的に薬剤を作用させることができます。
    代表的なものに「ドレニゾンテープ」があります。
  • シリコンテープ(シート): テープ自体に薬剤は含まれていませんが、ケロイド部分を物理的に保護し、適度な圧迫を加えることで、コラーゲンの異常な蓄積を抑える効果が期待できます。
    また、傷跡の乾燥を防ぎ、保湿環境を保つことも重要とされています。
    透明で薄いシート状のものや、厚みのあるゲル状のものなどがあります。

いずれのテープも、効果が現れるまでには数ヶ月から年単位の継続が必要となることが多いです。
皮膚への刺激や接触性皮膚炎などの副作用が出ることがあるため、異常を感じたら使用を中止し、医師に相談してください。

シリコンゲルシート・スポンジによる圧迫

圧迫療法は、ケロイドや肥厚性瘢痕の治療・予防において非常に重要な位置を占めます。
持続的な圧迫によって、傷跡への血行を改善し、線維芽細胞の活動を抑え、過剰なコラーゲン線維の配列を整える効果があると考えられています。
特に広範囲なケロイドや、関節部など物理的な張力がかかりやすい部位に有効です。

  • 使用される素材: シリコンゲルシート(シリコンシート)、ウレタンフォームスポンジ、弾性包帯、サポーター、特注の圧迫着などがあります。
    シリコンゲルシートは、圧迫と同時に保湿効果も期待できます。
  • 使用方法: ケロイド部分に直接、またはテープや包帯で固定して貼付します。
    可能な限り長時間(1日12~24時間)、継続して圧迫することが重要です。
    治療期間はケロイドの状態や部位によりますが、数ヶ月から年単位に及ぶことも少なくありません。
  • 注意点: 圧迫が強すぎると血行障害を起こしたり、皮膚に水ぶくれやびらんができたりすることがあります。
    適切な圧迫力と清潔な状態を保つことが重要です。
    入浴時以外は装着したままにするのが基本ですが、個人の生活スタイルに合わせて調整が必要な場合もあります。

局所注射療法(ステロイド注射)

ケロイドの盛り上がりや、かゆみ、痛みが強い場合に、ケロイド内部に直接ステロイド薬を注射する治療法です。
ケロイドの縮小、平坦化、症状の緩和に高い効果が期待できます。

  • 使用される薬剤: トリアムシノロンアセトニド(商品名:ケナコルトなど)が主に使用されます。
  • 方法: 数週間に1回(2週間~4週間に1回程度)、ケロイドの硬い部分に注射針で薬剤を注入します。
    注射時の痛みはありますが、ケロイドの活動性を抑える上で非常に有効な手段の一つです。
  • 効果と注意点: 注射を繰り返すことで、ケロイドは徐々に柔らかくなり、平坦化が進みます。
    かゆみや痛みといった症状も比較的早期に改善することが多いです。
    しかし、注射部位の皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)、凹む、血管が目立つ、色素沈着(黒ずみ)や色素脱失(白斑)が生じるなどの副作用のリスクがあります。
    また、注射によって完全にケロイドが消失するわけではなく、再発予防のための他の治療(圧迫療法など)との併用が重要です。

内服療法(抗アレルギー剤など)

かゆみや痛みが強いケロイドに対して、症状を和らげる目的で内服薬が処方されることがあります。

  • 使用される薬剤: 抗アレルギー剤(例:トラニラスト)や、抗ヒスタミン剤などが用いられます。
    トラニラストは、ケロイドの増殖に関わる炎症性サイトカインの放出を抑え、線維芽細胞の働きを抑制する効果が期待されています。
  • 効果: かゆみや痛みを軽減することで、患者さんのQOL(生活の質)を改善します。
    ケロイド自体の増殖を完全に抑える効果は他の治療法に比べて限定的ですが、補助療法として重要な役割を果たします。

手術療法(切除術など)と放射線療法

大きなケロイドや、機能的な障害(関節の動きの制限など)を引き起こしているケロイドに対して、手術による切除が検討されることがあります。
しかし、ケロイドは手術単独では高い確率で再発することが知られており、切除した傷跡からさらに大きなケロイドができるリスクがあります。

そのため、ケロイドの手術は通常、術後の再発予防策と組み合わせることが必須とされています。
最も一般的な再発予防策は、手術直後から行う放射線療法です。

  • 手術(切除術): ケロイド組織をメスで切除し、傷口を縫合します。
    傷跡への負担を減らすために、ジグザグに切開したり、皮膚移植を併用したりすることもあります。
  • 放射線療法: 手術でケロイドを切除した直後から、残存している線維芽細胞の増殖を抑える目的で、切除部位に放射線を照射します。
    通常、数日間に分けて照射が行われます。
    放射線療法はケロイドの再発率を大幅に低下させる効果が期待できます。
  • その他の併用療法: 手術・放射線療法に加えて、術後も長期間にわたって圧迫療法やシリコンシートの使用、ステロイド含有テープの貼付などが行われることもあります。

手術と放射線療法を組み合わせた集学的治療は、特に難治性のケロイドに対して有効ですが、それぞれにリスク(放射線による皮膚の変化や将来的な発がんリスクなど)や制限(治療できる施設が限られるなど)があるため、治療の適応や方針は、専門医とよく相談して決定する必要があります。

傷跡の盛り上がり(肥厚性瘢痕・ケロイド)を治すには?

傷跡の盛り上がり(肥厚性瘢痕またはケロイド)は、放置しても改善が難しいことが多いため、適切な治療が必要です。
どちらの状態かによって治療法の選択肢や治療期間は異なりますが、いずれの場合も早期に治療を開始することが有効であることが多いです。

治療のポイントは以下の通りです。

  • 正確な診断: まずは、盛り上がりが肥厚性瘢痕なのか、ケロイドなのかを正確に診断してもらうことが重要です。
    これにより、最適な治療法を選択できます。
  • 症状や状態に合わせた治療: 盛り上がりの程度、部位、症状(かゆみ、痛み)、患者さんの年齢や体質などを考慮し、最も適した治療法が選択されます。
  • 複数の治療法の組み合わせ: 特にケロイドの場合、単一の治療法だけでは効果が限定的であったり、再発しやすかったりするため、保存的療法、注射、内服、手術、放射線療法などを組み合わせて治療が行われることが多いです。
  • 根気強い継続: ケロイドや肥厚性瘢痕の治療は、効果が出るまでに時間がかかることがほとんどです。
    数ヶ月から年単位の継続的な治療が必要となる場合が多いことを理解し、根気強く治療に取り組むことが重要です。
  • 予防的視点: 一度盛り上がった傷跡がある人は、新しい傷ができたり、治療した部位が再発したりするリスクがあります。
    治療と並行して、今後の傷跡対策についても医師と相談しましょう。

傷跡の盛り上がりは、見た目の問題だけでなく、かゆみや痛みといった症状によって日常生活に影響を与えることもあります。
一人で悩まず、皮膚科や形成外科などの専門医に相談し、ご自身に合った治療プランを立ててもらうことが、改善への第一歩となります。

ケロイドの予防方法

ケロイド体質の人や、ケロイドができやすい部位(胸、肩、耳など)に傷ができた場合、適切なケアを行うことでケロイドや肥厚性瘢痕の発生を予防したり、最小限に抑えたりすることが可能です。

主な予防方法は以下の通りです。

  • 傷をきれいに、早く治す: 傷口の清潔を保ち、細菌感染を防ぐことが重要です。
    適切な方法で傷を消毒・保護し、できるだけ早く治癒を促しましょう。
    深い傷や汚れた傷は、早めに医療機関を受診することが大切です。
  • 傷口への物理的刺激を避ける: 傷口や治りかけの傷跡を掻いたり、擦ったり、強く引っ張ったりする刺激は、線維芽細胞の過剰な活性化を招き、ケロイドをできやすくします。
    可能な限り傷に触れないようにし、衣服の摩擦などにも注意しましょう。
  • テーピングや圧迫: 傷が治癒した後、早期から傷跡に負担がかからないようにテーピングを行ったり、ケロイドのできやすい部位にはシリコンシートや圧迫着などを用いて予防的な圧迫を行ったりすることが有効です。
    特に、手術後の傷跡管理として広く推奨されています。
  • 保湿: 傷跡の乾燥は皮膚の炎症を招き、ケロイドを悪化させる可能性があります。
    保湿剤(ワセリンなど)やシリコンシートで傷跡を保湿することも予防に繋がります。
  • 紫外線対策: 傷跡に紫外線を浴びると、色素沈着を起こしやすくなるだけでなく、炎症を悪化させる可能性も指摘されています。
    傷跡は、治癒後も数ヶ月間は衣服で覆ったり、日焼け止めを使用したりして紫外線から保護することが望ましいです。
  • ケロイドができやすい処置の回避: ケロイド体質の自覚がある場合は、不要な傷を作る可能性のある美容目的の処置(ピアスの穴あけ、タトゥー、電気分解による脱毛など)は避けることを検討しましょう。
    どうしても必要な場合は、事前に医師に相談し、予防策についてアドバイスを受けることが重要です。
  • 早期の医療機関受診: もし、傷跡が赤みを帯びてきたり、かゆみや痛みを伴って盛り上がり始めてきた場合は、ケロイドや肥厚性瘢痕の初期症状かもしれません。
    早めに医療機関(皮膚科、形成外科)を受診することで、適切な治療を早期に開始し、ケロイドの拡大を防ぐことが期待できます。

特に、ケロイド体質の人は、どんなに小さな傷でもケロイドになるリスクがあります。
予防は治療よりも重要であると言えるため、日頃から自身の皮膚の状態に注意を払い、上記のような予防策を意識することが大切です。

ケロイドに関するよくある質問

ケロイドは自然に治る?

残念ながら、ケロイドが自然に完全に治ることは非常に稀です。 肥厚性瘢痕は時間とともに自然に改善していく傾向がありますが、ケロイドは一度できると、放置すると傷の範囲を超えて徐々に大きくなったり、症状(かゆみ、痛み)が悪化したりすることが多いです。

そのため、ケロイドと診断された場合は、自然治癒を期待せず、早期に適切な治療を開始することが非常に重要です。
治療によってケロイドの増殖を抑えたり、小さくしたり、症状を和らげたりすることは可能ですが、完全に元の皮膚の状態に戻すのは難しい場合が多いです。

ケロイドが「治った人」の経験談は?

インターネットなどで「ケロイドが治った」という個人的な体験談を目にすることがあるかもしれません。
しかし、これらはあくまで個人の経験であり、医学的な根拠に基づかない情報も含まれている可能性があるため、鵜呑みにしないように注意が必要です。

「治った」と感じているケースの中には、

  • 実際にはケロイドではなく、自然に軽快した肥厚性瘢痕だった。
  • 特定の治療法がその個人に非常に効果的だった。
  • ケロイドの活動期が過ぎて、症状が落ち着いた状態だった。

などが考えられます。

ケロイドの治療効果は、ケロイドの大きさ、できた部位、活動性、患者さんの体質、そして選択された治療法によって大きく異なります。
ある人に効果があった治療法が、他の人にも同じように効果があるとは限りません。
また、症状が一時的に改善しても、治療を中止すると再発するリスクもケロイドの特徴の一つです。

ケロイドの治療においては、科学的な根拠に基づいた医療情報と、専門医による個別の診断・治療計画が最も信頼できる情報源となります。
不安な点や疑問点があれば、必ず医師に相談するようにしましょう。

ケロイドの相談・治療はどこで?(病院の選び方など)

ケロイドや肥厚性瘢痕の相談や治療は、主に皮膚科形成外科で受けることができます。
どちらの科でもケロイドの診療を行っていますが、ケロイドの病態や治療法に特化した専門医がいるのは形成外科であることが多い傾向があります。

病院を選ぶ際には、以下の点を参考にすると良いでしょう。

  • 診療科: まずは皮膚科か形成外科を受診しましょう。
  • 専門医の有無: 可能であれば、ケロイドや傷跡治療に詳しい専門医(日本形成外科学会専門医など)がいるか確認してみましょう。
    大学病院や総合病院の形成外科などでは、より専門的な治療(手術+放射線療法など)に対応できる場合があります。
  • 治療法の選択肢: 受診を検討している病院が、ご自身のケロイドの状態に適した様々な治療法(保存療法、注射、手術、放射線など)を提供しているか、事前にウェブサイトなどで確認できると参考になります。
  • アクセス: ケロイド治療は長期にわたることが多いため、通院しやすい場所にあるかも重要な要素です。
  • 医師との相性: 医師が親身に話を聞いてくれるか、治療法について分かりやすく説明してくれるか、なども信頼関係を築く上で大切です。

まずは最寄りの皮膚科や形成外科を受診し、診断を受けてみるのが良いでしょう。
そこで、ご自身のケロイドの状態や、どのような治療法があるのかについて説明を受け、必要であればより専門的な医療機関を紹介してもらうことも可能です。

ケロイド治療は早期開始が鍵となります。
盛り上がってきた、赤みやかゆみが出てきたなど、気になる症状がある場合は、迷わずに医療機関を受診することをお勧めします。

【まとめ】ケロイド治療は専門医への相談が大切

ケロイドは、傷の治癒プロセスが異常をきたし、傷の範囲を超えて増大する病的な傷跡です。
見た目の問題だけでなく、かゆみや痛みといった辛い症状を伴うことも少なくありません。
肥厚性瘢痕と似ていますが、自然治癒が難しいことや、再発しやすいといった点で異なります。

ケロイドの発生には体質的な要因が大きく関わっており、手術創や熱傷、にきび痕など、様々な種類の傷が原因となります。
特に胸や肩、耳などはケロイドの好発部位として知られています。

ケロイドの治療法には、塗り薬、テープ、圧迫療法といった保存的療法、ステロイド注射、内服療法、そして手術と放射線療法を組み合わせた集学的治療など、様々な選択肢があります。
これらの治療法の多くは健康保険が適用されます。
ケロイドの状態や患者さんの体質に合わせて、これらの治療法が単独で、あるいは組み合わせて行われます。
治療は長期にわたることが多く、根気強い継続が必要です。

ケロイドの予防も非常に重要です。
傷をきれいに早く治すこと、傷への物理的刺激を避けること、早期からのテーピングや圧迫、保湿などが予防に繋がります。
ケロイド体質を自覚している方は、特に注意が必要です。

もし、傷跡が盛り上がってきた、赤みやかゆみが出てきたなど、ケロイドを疑う症状がある場合は、一人で悩まず、皮膚科や形成外科などの専門医に相談することが最も大切です。
早期に診断を受け、適切な治療を開始することで、ケロイドの拡大を防ぎ、症状を和らげ、より良い結果を得ることが期待できます。


免責事項

本記事は、一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療法を推奨するものではありません。
個々の症状や体質に合った診断や治療については、必ず専門の医療機関を受診し、医師の判断に従ってください。
本記事の情報を利用したことにより生じるいかなる結果についても、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
掲載内容は執筆時点の情報に基づいており、医学的知見は日々アップデートされる可能性があります。

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