バルデナフィルは、勃起不全(ED)治療に用いられる内服薬の一つです。
有効成分であるバルデナフィル塩酸塩水和物の働きにより、陰茎への血流を改善し、勃起をサポートします。
その効果の発現の早さや食事の影響の受けにくさから、多くの男性に利用されています。
しかし、医薬品である以上、副作用のリスクも伴います。
バルデナフィルの服用を検討されている方、あるいは現在服用中の方は、副作用について正しく理解しておくことが安全な治療のために非常に重要です。
この記事では、バルデナフィルの主な副作用の種類、症状が現れるタイミングや持続時間、万が一副作用が起きた場合の対処法、そして服用上の注意点について詳しく解説します。
バルデナフィルの主な副作用の種類
バルデナフィルの服用により、多くの場合、血管拡張作用に関連する副作用が現れることがあります。
これらの副作用は一時的で軽度であることがほとんどですが、その種類と症状を知っておくことは大切です。
頭痛
バルデナフィルを服用した際に最もよく報告される副作用の一つが頭痛です。
これは、バルデナフィルの血管拡張作用が、脳の血管にも影響を及ぼすことによって起こると考えられています。
多くは軽度で、一過性ですが、普段から頭痛持ちの方や、初めて服用する際に感じやすいとされています。
ほてり(顔のほてり)
顔や首筋などが熱くなる、いわゆる「ほてり」や「潮紅(ちょうこう)」も比較的多くみられる副作用です。
これも血管拡張作用によるもので、皮膚の毛細血管が広がることで起こります。
顔が赤くなったり、熱っぽく感じたりする症状が出ることがあります。
鼻づまり
鼻の粘膜の血管が拡張することによって、鼻づまりを感じることがあります。
アレルギー性鼻炎のような症状と似ていますが、薬の作用による一時的なものです。
消化不良
胃の不快感やもたれ、胸やけといった消化器系の症状が出ることがあります。
頻度はそれほど高くありませんが、報告されています。
めまい
血圧が一時的に低下することなどにより、めまいを感じることがあります。
特に立ちくらみのような症状として現れることがありますので、服用後は急な立ち上がりなどに注意が必要です。
視覚異常
まれに、光に敏感になったり、色が違って見えたり(特に青みがかって見える)、物がかすんで見えるといった一時的な視覚に関する副作用が報告されています。
これは、目の網膜に作用する酵素にも影響を与える可能性があるためと考えられています。
多くは軽度で、自然に回復します。
バルデナフィルの副作用が現れる時間と持続時間
バルデナフィルの副作用が現れるタイミングや持続時間には個人差がありますが、一般的には薬の効果が現れ始めるのと同じか、それよりも少し早い段階で出現しやすい傾向があります。
バルデナフィルは服用後15分程度という比較的早い時間で効果が現れ始めるとされていますが、副作用もこの頃から感じ始めることがあります。
ピークは服用後30分〜1時間程度で、頭痛やほてりなどが最も強く感じられる可能性があります。
副作用の持続時間も個人差が大きいですが、通常は薬の効果が持続する時間(約5〜8時間)よりも短く、数時間でおさまることがほとんどです。
効果が薄れるにつれて、副作用の症状も軽減されていく傾向があります。
ただし、中には効果が切れた後も副作用が続くケースや、翌日まで残るケースも報告されています。
まれに起こる重篤な副作用と注意点
バルデナフィルの副作用のほとんどは軽度で一時的なものですが、非常にまれながら、注意が必要な重篤な副作用が報告されています。
これらの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
持続勃起症
持続勃起症(Priapism)とは、性的な刺激がないにも関わらず、勃起が4時間以上持続する状態を指します。
バルデナフィルを含むED治療薬の血管拡張作用により、陰茎からの血液の排出が妨げられることで起こり得ます。
持続勃起症を放置すると、陰茎組織へのダメージや永続的なEDにつながる可能性があるため、4時間以上勃起が続く場合は、すみやかに救急医療機関を受診してください。
聴覚障害
突然の聴力低下や難聴、耳鳴りなどが報告されています。
メカニズムは十分に解明されていませんが、耳の血管への影響などが関連している可能性が考えられています。
これらの症状が現れた場合も、速やかに医療機関を受診してください。
視覚障害
前述の一時的な視覚異常とは別に、非常にまれではありますが、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)と呼ばれる、視野が欠ける、視力が低下するといった重篤な視覚障害が報告されています。
これは視神経への血流不足によって起こると考えられています。
特に、もともと視神経の形状に異常がある方や、糖尿病、高血圧、高脂血症、心臓病、喫煙などの危険因子を持つ方でリスクが高まる可能性があります。
NAIONの症状が疑われる場合は、直ちにバルデナフィルの服用を中止し、眼科医の診察を受けてください。
バルデナフィルの副作用が出やすいケース
バルデナフィルの副作用の出やすさには個人差がありますが、以下のようなケースでは副作用が現れやすい、あるいは症状が強く出やすい可能性があります。
- 初めてバルデナフィルを服用する方: 体が薬に慣れていないため、副作用を感じやすいことがあります。
- 体調が優れない時: 寝不足や疲労、風邪などの体調不良時は、体が過敏になり、副作用を感じやすくなることがあります。
- アルコールを多量に摂取している場合: アルコールも血管拡張作用を持つため、バルデナフィルと併用すると血圧が下がりすぎたり、めまいやほてりなどの副作用が強く出たりするリスクが高まります。適量にとどめるか、服用前後の飲酒は避けることが望ましいです。
- 特定の基礎疾患がある方: 循環器系の疾患(高血圧、低血圧など)や神経系の疾患を持つ方は、血管や神経の反応性が異なるため、副作用が出やすい可能性があります。
- 特定の薬剤を服用している方: 後述の「併用禁忌薬・注意が必要な飲み合わせ」に該当する薬剤を服用している場合、薬の代謝に影響が出てバルデナフィルの血中濃度が上昇したり、相互作用により副作用のリスクが高まったりします。
副作用が起きた場合の対処法
バルデナフィルの副作用は多くの場合軽度で一時的なものですが、症状が出た場合にどのように対処すれば良いかを知っておくと安心です。
副作用が現れたら、まずは落ち着いて楽な姿勢で休憩しましょう。
多くの場合、時間経過とともに症状は和らいでいきます。
頭痛の場合の対処法(頭痛薬の併用)
バルデナフィルの服用後に頭痛が起きた場合、市販の頭痛薬(解熱鎮痛剤)を服用しても良いか気になる方もいるでしょう。
多くの市販されている解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)は、バルデナフィルとの相互作用は少ないとされており、併用しても問題ない場合が多いです。
ただし、アスピリン系の薬など、一部の解熱鎮痛剤については注意が必要なケースもあります。
また、ご自身の体質や持病、他に服用している薬によっては、特定の頭痛薬が適さないこともあります。
頭痛薬を服用する前に、医師や薬剤師に相談することが最も安全です。
市販薬を使用する場合でも、添付文書をよく読み、用法・用量を守りましょう。
頭痛がひどい場合や長く続く場合は、必ず医療機関を受診してください。
その他の副作用の対処法:
- ほてり: 服用後数時間でおさまることがほとんどです。涼しい場所で安静にする、水分を摂るなどで様子を見てください。
- 鼻づまり: 横になって休憩したり、蒸しタオルなどで鼻周りを温めたりすると緩和される場合があります。症状が続く場合は耳鼻咽喉科医に相談してください。
- 消化不良: 軽いものであれば、消化の良いものを摂るなど様子を見ます。症状が続く場合やひどい場合は医師に相談してください。
- めまい: 無理に動かず、座るか横になって安静にしてください。転倒のリスクがあるため、めまいがある間は運転や危険な作業は控えてください。めまいが続く場合や、意識が遠のくなどの症状を伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
副作用が予想以上に強い場合や、前述のような重篤な副作用の症状(4時間以上勃起が続く、急な聴力低下、視野の欠けなど)が現れた場合は、自己判断せず、直ちに服用を中止し、必ず医療機関を受診してください。
バルデナフィルを服用する上での注意点
バルデナフィルを安全かつ効果的に服用するためには、いくつかの重要な注意点があります。
特に、併用してはいけない薬や、服用できない方がいることを理解しておくことが非常に重要です。
併用禁忌薬・注意が必要な飲み合わせ
バルデナフィルには、一緒に服用してはいけない「併用禁忌薬」と、注意が必要な「併用注意薬」があります。
これらの薬との併用は、バルデナフィルの効果や副作用に影響を与え、健康に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
【併用禁忌薬】
- 硝酸剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビドなど): 狭心症や心筋梗塞の治療に使われる薬です。バルデナフィルとの併用により、急激かつ重度の血圧低下を引き起こし、意識喪失や命に関わる可能性があります。バルデナフィル服用後、時間経過していても硝酸剤は使用できません。逆に、硝酸剤を使用している方はバルデナフィルを服用できません。
- 一酸化窒素供与剤: ニトログリセリンと同様の作用を持つ薬剤です。
- リオシグアト(肺動脈性肺高血圧症治療薬): リオシグアトも血管拡張作用を持つため、バルデナフィルと併用すると重度の血圧低下を引き起こす可能性があります。
これらの薬を現在服用している、あるいは過去に服用したことがある場合は、必ず医師に申告してください。
【併用注意薬】
- α遮断薬(前立腺肥大症や高血圧の治療薬): 併用により血圧が下がりすぎる可能性があります。
- CYP3A4阻害薬(一部の抗真菌薬、HIV治療薬など): バルデナフィルの分解を遅らせ、血中濃度を上昇させることで、効果が強く出すぎたり副作用が現れやすくなったりする可能性があります。
- チトクロームP450 3A4誘導薬(リファンピシンなど): バルデナフィルの分解を促進し、効果が弱まる可能性があります。
これらの薬剤を含め、現在服用している全ての薬(処方薬、市販薬、サプリメントを含む)を医師または薬剤師に伝えることが重要です。
服用できない方
以下に該当する方は、バルデナフィルを服用することができません。
これは、薬の作用が病状に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
項目 | 詳細 | 服用できない理由 |
---|---|---|
心血管系障害 | 不安定狭心症、性交中に狭心症が起こる方、重度の心不全、治療抵抗性の不整脈 | 性行為自体が心臓に負担をかけるため、薬による血行変化がリスクを高める可能性がある |
最近の心血管イベント | 6ヶ月以内に心筋梗塞を起こした方、6ヶ月以内に脳梗塞・脳出血を起こした方 | 回復途中の心臓や脳に負担がかかる可能性がある |
血圧異常 | コントロール不良な高血圧(収縮期血圧170mmHg以上または拡張期血圧100mmHg以上)、低血圧(収縮期血圧90mmHg以下) | 血圧が急激に変動するリスクがある |
肝機能障害 | 重度の肝機能障害がある方 | 薬の代謝・排泄が遅延し、体内に蓄積されて副作用が強く出るリスクがある |
腎機能障害 | 血液透析を受けている方(重度の腎機能障害に含まれる場合が多い) | 薬の排泄がうまくいかず、体内に蓄積されるリスクがある |
網膜の疾患 | 網膜色素変性症の方(遺伝性の網膜疾患) | 視覚系の副作用のリスクが通常より高い可能性がある |
バルデナフィルへのアレルギー | 過去にバルデナフィルを服用してアレルギー反応(発疹、かゆみ、呼吸困難など)を起こしたことがある方 | 再度服用すると重篤なアレルギー反応を起こす可能性がある |
硝酸剤または一酸化窒素供与剤投与中 | 前述の【併用禁忌薬】を参照 | 急激な血圧低下によるリスク |
リオシグアト投与中 | 前述の【併用禁忌薬】を参照 | 重度の血圧低下によるリスク |
特定の薬剤の服用中 | 一部のCYP3A4阻害薬(イトラコナゾール、ケトコナゾール、リトナビル、インジナビルなど)を服用中の方 | バルデナフィルの血中濃度が著しく上昇し、重篤な副作用が現れるリスクがある |
女性 | バルデナフィルは男性のED治療薬として開発されており、女性への安全性や有効性は確立されていません | 女性の服用は想定されておらず、効果がない上に予期せぬ副作用のリスクがある |
これらの項目に一つでも当てはまる場合は、バルデナフィルを服用できません。
必ず医師の診察時に正確に申告してください。
自己判断での服用は絶対に避けてください。
副作用が心配な場合は医師・薬剤師に相談しましょう
バルデナフィルの副作用について解説してきましたが、副作用の現れ方や程度は、服用する方の体質、体調、年齢、服用量、併用薬などによって大きく異なります。
多くの場合は軽度で心配ない症状ですが、まれに注意が必要な副作用もあります。
もし、バルデナフィルの服用に関して副作用について不安や疑問がある場合は、一人で悩まず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
特に、
- どのような副作用があるか事前に詳しく知っておきたい
- 普段から持病があり、他に薬を飲んでいる
- 過去に薬でアレルギーを起こしたことがある
- 実際に服用してみて気になる症状が出た
- 副作用が強く、つらいと感じる
- 副作用がなかなかおさまらない
といった場合は、積極的に医療機関に相談しましょう。
医師は、あなたの健康状態や服用中の薬などを踏まえて、バルデナフィルの服用が適切かどうかを判断し、適切な用法・用量を指示してくれます。
副作用が出た場合も、症状に応じて対処法をアドバイスしたり、必要であれば他のED治療薬への変更を検討したりしてくれます。
オンライン診療でも、専門の医師に気軽に相談することができます。
対面診療に抵抗がある方や、忙しくて時間が取れない方にとっては、オンライン診療は便利な選択肢の一つです。
オンライン診療で処方を受ける際も、問診票への正確な入力や、診察時の医師への情報提供をしっかり行いましょう。
まとめ
バルデナフィルはED治療に有効な薬剤ですが、頭痛、ほてり、鼻づまりといった一時的で軽度な副作用が現れることがあります。
これらの副作用は薬の作用機序によるものが多く、通常は時間とともに軽減します。
まれに持続勃起症や視覚・聴覚障害といった重篤な副作用も報告されていますが、発生頻度は非常に低いです。
副作用のリスクを最小限に抑え、安全にバルデナフィルを使用するためには、服用上の注意点を守ることが不可欠です。
特に、硝酸剤などの併用禁忌薬を服用している方や、特定の基礎疾患がある方はバルデナフィルを服用できません。
現在服用している全ての薬や健康状態を正確に医師に伝えることが最も重要です。
もし副作用が心配な場合や、実際に気になる症状が現れた場合は、自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
専門家のアドバイスを受けることで、安心してED治療に取り組むことができます。
免責事項: 本記事は情報提供のみを目的としており、医療アドバイスに代わるものではありません。
バルデナフィルの服用に関しては、必ず医師の診断を受け、指示に従ってください。
副作用や注意点に関する詳細な情報は、医療機関でご確認ください。