「吐きそうで吐けない」つらい…原因と対処法、病院の目安

「吐きそうで吐けない」という不快な経験は、多くの人が一度は感じたことがあるかもしれません。
みぞおちのあたりがムカムカして、今にも吐きそうなのに、実際には何も出てこない、あるいは少量しか出ない。
この状態は、日常生活に支障をきたすこともあります。
原因は一時的なものから、体の不調や病気が隠れている場合まで様々です。
この記事では、「吐きそうで吐けない」気持ち悪さの原因と、すぐにできる対処法、そしてどのような場合に医療機関を受診すべきかについて、詳しく解説します。
この不快な症状に悩まされている方が、少しでも楽になり、安心して過ごせるようになるための情報を提供できれば幸いです。

目次

吐きそうで吐けない時の対処法

「吐きそうで吐けない」という不快な症状を感じたとき、まずは自宅でできる応急処置や、症状を和らげるための対処法を試してみましょう。無理せず、ご自身の体調に合わせて行うことが大切です。

自宅で今すぐできる対処法

急な気持ち悪さに襲われたとき、まずは落ち着いて体を休ませることが重要です。

  • 楽な姿勢で安静にする: 椅子に座る、または横になって安静にしましょう。座る場合は、少し前かがみになってお腹を圧迫しないようにすると楽になることがあります。横になる場合は、左側を下にして横向きになるのがおすすめです。これは胃の形や位置から、吐き気を抑えやすいとされる姿勢です。
  • 衣服を緩める: 締め付けの強い衣服(ベルト、ブラジャー、きついズボンなど)は、胃や腹部を圧迫して吐き気を悪化させる可能性があります。できるだけゆったりとした楽な服装になり、体を締め付けている部分を緩めましょう。
  • 換気をして新鮮な空気を吸う: 閉め切った空間は気持ち悪さを増強させることがあります。窓を開けて部屋の空気を入れ替えたり、ベランダに出て新鮮な空気を吸ったりするのも効果的です。深呼吸をゆっくり繰り返すことで、リラックス効果も得られます。
  • 冷たいものを口に含む: 氷をなめたり、冷たい水を少量ずつ飲むことで、胃の不快感を和らげたり、気分を落ち着かせたりする効果が期待できます。ただし、一度に大量に飲むと逆に胃に負担をかけることがあるため、少量ずつゆっくりと摂りましょう。

吐き気を感じたら試せる対処法

症状が少し落ち着いてきたら、次のような対処法も試してみましょう。

  • 水分補給を少量ずつ行う: 吐き気があるときは脱水になりやすいため、水分補給は重要です。ただし、大量に飲むと吐き気を誘発することがあります。水や麦茶などを一口、二口と少量ずつ、こまめに摂るようにしましょう。電解質を含むスポーツドリンクや経口補水液も、脱水予防に役立ちますが、糖分が多いものもあるため状態に合わせて選びましょう。
  • 消化の良いものを少量食べる: 空腹も吐き気を引き起こすことがありますが、吐き気があるときに無理に食べる必要はありません。もし何か口にできそうであれば、おかゆ、うどん、クラッカー、ゼリー飲料など、消化の良いものを少量だけ試してみましょう。油っこいもの、辛いもの、冷たすぎるもの、熱すぎるものは避けましょう。
  • 生姜湯や梅干しを試す: 生姜には吐き気を抑える効果があると言われています。すりおろした生姜を少量お湯に溶かして飲んだり、市販の生姜湯を試したりするのも良いでしょう。梅干しも唾液の分泌を促し、胃のむかつきを和らげる効果があると言われています。
  • 気分転換を図る: 不安やストレスが吐き気を悪化させることもあります。好きな音楽を聴いたり、好きな香りを嗅いだり(アロマオイルなど)、軽いストレッチをしたりして、気分転換を図りましょう。ただし、無理は禁物です。

吐き気に効くツボと押し方

東洋医学では、特定のツボを刺激することで様々な症状が緩和されると考えられています。吐き気に関連する代表的なツボとして「内関(ないかん)」があります。

  • ツボの刺激方法: ツボを押す際は、深呼吸をしながらゆっくりと力を加えていきます。指の腹で気持ち良いと感じる程度の強さで、数秒間押しては離す、を数回繰り返します。強く押しすぎるとかえって気分が悪くなることがあるので注意しましょう。

内関(ないかん)の場所と効果

内関は、吐き気や乗り物酔いに効果があるとしてよく知られているツボです。

  • 場所: 手のひらを上にして、手首の付け根にある横じわから指3本分(自分の指を使用)ひじ側に向かったところにあります。この位置で、腕の内側にある2本の太い腱(けん)の間を探すと見つけやすいでしょう。
  • 押し方: もう一方の手の親指の腹を使って、腱の間を挟むように、ゆっくりと奥に向かって押します。左右どちらの手でも、両方の手でも構いません。
  • 効果: 内関は、胃の不調、吐き気、乗り物酔い、つわり、動悸、精神的な緊張など幅広い症状に効果があるとされています。ツボ押しは即効性がある場合もありますが、個人差があります。

お酒で気持ち悪い場合の対処法

お酒を飲みすぎて気持ち悪くなった「二日酔い」や「急性アルコール中毒」の初期症状の場合も、「吐きそうで吐けない」という状態になることがあります。

  • 水分補給: アルコールには利尿作用があり、脱水を起こしやすいため、水分補給が最優先です。水やスポーツドリンク、経口補水液などを少しずつ、こまめに飲みましょう。胃に負担をかけないよう、冷たすぎないものがおすすめです。
  • 糖分を摂る: アルコールを分解する過程で糖分が消費されるため、低血糖になることがあります。糖分を補給することで、気持ち悪さが和らぐことがあります。果汁100%ジュースや、飴、ゼリー飲料などがおすすめです。
  • 安静にする: 無理に動くと気持ち悪さが増すことがあります。横になって安静に過ごしましょう。
  • 吐き気止め薬: 薬局などで購入できる市販の吐き気止め薬が効果的な場合もあります。ただし、アルコールとの飲み合わせに注意が必要な場合や、肝臓に負担をかける成分が含まれていることもあります。使用する際は薬剤師に相談するか、製品の説明書をよく読みましょう。根本的な解決には水分や糖分の補給が重要です。
  • 無理に吐こうとしない: 酔って気持ち悪くても、無理に吐く必要はありません。体は自然にアルコールを分解しようとします。無理に吐こうとすると、食道や胃を傷つけたり、誤嚥(ごえん)のリスクを高めたりすることがあります。

えずいて吐かない場合の対処法

「えずく」とは、吐き気を催してお腹の筋肉が収縮するものの、胃の内容物が逆流してこない状態です。「吐きそうで吐けない」まさにこの状態に近いかもしれません。えずくだけで吐かない場合も、無理に吐こうとせず、体を楽にして安静にすることが大切です。

  • 深呼吸: ゆっくりと深い呼吸を繰り返すことで、気分を落ち着かせ、えずきを和らげることができます。鼻からゆっくり息を吸い込み、口からゆっくりと吐き出すのを繰り返しましょう。
  • 安静: 横になったり座ったりして、体を楽にしましょう。体を起こしすぎたり、逆に前かがみになりすぎたりせず、自分が最も楽に感じる姿勢を見つけましょう。
  • 水分補給: えずくことで体力を消耗し、口の中が乾燥することもあります。水分を少量ずつ補給して、口の中を潤し、脱水を防ぎましょう。
  • なぜえずくだけで吐かないのか?: えずきは、脳の嘔吐中枢が刺激され、吐こうとする体の反射が起こっている状態です。しかし、実際に胃の内容物が逆流して口から出る「嘔吐」に至るかどうかは、刺激の強さや原因、胃の内容物の状態など様々な要因によって異なります。吐き気を感じても、必ずしも嘔吐するわけではありません。無理に吐こうとすると、食道や胃に負担をかけたり、逆流性食道炎を悪化させたりする可能性もあるため、えずくだけの場合は無理強いしないことが大切です。

吐きそうで吐けない原因

「吐きそうで吐けない」という症状には、一時的なものから病気が隠れているものまで、様々な原因が考えられます。ここでは、考えられる主な原因について詳しく見ていきましょう。

考えられる主な原因(病気以外)

特定の病気ではないけれども、日常生活の中で起こりうる原因です。

ストレス、自律神経の乱れ

精神的なストレスは、私たちの体に様々な影響を与えます。特に胃腸の働きは自律神経によってコントロールされているため、強いストレスを感じたり、心身の疲労が蓄積したりすると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。

  • メカニズム: 自律神経には、体を活動的にする「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」があります。通常はこの二つの神経がバランスを取りながら働いています。しかし、ストレスが続くと交感神経が優位になりすぎたり、逆に疲労困憊で副交感神経の働きが乱れたりします。胃や腸の動きは副交感神経によって促進されますが、自律神経のバランスが崩れると、胃の動きが鈍くなったり、不規則になったりすることがあります。これにより、胃の内容物がうまく下に送られず、胃の中に長く留まることで、吐き気やむかつき、みぞおちの不快感、「吐きそうで吐けない」といった症状が現れることがあります。
  • 関連症状: ストレスや自律神経の乱れによる症状は、吐き気以外にも、頭痛、肩こり、めまい、動悸、息切れ、不眠、食欲不振、便秘や下痢など多岐にわたります。
  • 対処: ストレスの原因を取り除くこと、十分な休息、質の良い睡眠、適度な運動、趣味などで気分転換を図るなど、心身のリラックスを心がけることが大切です。

乗り物酔い、つわり(妊娠)

特定の条件下で起こる生理的な現象も、吐き気の原因となります。

  • 乗り物酔い: バス、電車、船、飛行機などの乗り物に乗っているときに起こる吐き気です。乗り物の揺れや加速・減速によって、耳の奥にある平衡感覚をつかさどる器官(三半規管や耳石器)が刺激され、その情報と目から入ってくる情報との間にずれが生じることで、脳が混乱して吐き気を引き起こすと考えられています。特に、読書やスマートフォンを見ていると症状が出やすいことがあります。
  • つわり(妊娠): 妊娠初期に多くの女性が経験する吐き気や嘔吐のことです。ホルモンバランスの急激な変化が主な原因と考えられていますが、正確なメカニズムはまだ完全には解明されていません。朝方に症状が強く出やすいことから「morning sickness」とも呼ばれますが、一日中続くこともあります。食事の匂いに敏感になったり、特定の食べ物が受け付けなくなったりすることも特徴です。
  • 対処: 乗り物酔いには酔い止め薬の服用が効果的です。また、進行方向を見る、窓を開けて換気する、乗り物に乗る前に食事を摂りすぎないなどの対策も有効です。つわりには特効薬はありませんが、少量ずつ頻回に食べる、特定の食べ物や匂いを避ける、体を冷やさないようにするなど、症状を和らげる工夫をすることが多いです。症状が重い場合は医師に相談しましょう。

薬の副作用

服用している薬の種類によっては、副作用として吐き気を引き起こすことがあります。

  • 原因となる薬: 吐き気を催しやすい薬としては、抗生物質、痛み止め(特に非ステロイド性抗炎症薬)、高血圧の薬、抗がん剤、向精神薬など、様々な種類の薬が挙げられます。これらの薬は、胃の粘膜を刺激したり、脳の嘔吐中枢に直接作用したり、消化管の動きに影響を与えたりすることで吐き気を引き起こすことがあります。
  • 対処: 薬を服用し始めてから吐き気を感じるようになった場合は、その薬が原因の可能性があります。自己判断で服用を中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。薬の種類や量、服用方法の変更、または吐き気止め薬の併用などで対応できる場合があります。空腹時を避けて服用する、大量の水と一緒に服用するなど、服用方法を工夫することで副作用を軽減できることもあります。

隠れているかもしれない病気

「吐きそうで吐けない」という症状が続く場合や、他の症状を伴う場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。

胃腸の病気(胃炎、胃潰瘍など)

消化器系の病気は、吐き気や腹部の不快感の一般的な原因です。

  • 胃炎・胃潰瘍: 胃の粘膜に炎症や潰瘍ができる病気です。原因としては、ピロリ菌感染、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期服用、ストレス、喫煙、アルコールの過剰摂取などがあります。胃炎や胃潰瘍では、みぞおちの痛みや不快感、胃もたれ、食欲不振、そして「吐きそうで吐けない」という吐き気を感じることがよくあります。胃潰瘍が進行すると、出血によるタール便や吐血が見られることもあります。
  • 逆流性食道炎: 胃酸が食道に逆流し、食道に炎症を起こす病気です。主な症状は胸焼けや酸っぱいものが上がってくる感じ(呑酸)ですが、吐き気やのどの違和感を伴うこともあります。食後や横になったときに症状が悪化しやすい特徴があります。
  • 機能性ディスペプシア: 胃の検査をしても炎症や潰瘍などの明らかな異常が見つからないにも関わらず、胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの痛みや灼熱感といった不快な症状が慢性的に続く病気です。胃の動きが悪くなっていたり、知覚過敏になっていたりすることが原因と考えられており、吐き気を感じることもあります。
  • 腸閉塞: 腸管が何らかの原因で詰まってしまい、内容物が流れなくなる状態です。激しい腹痛、お腹の張り、嘔吐、排便・排ガスの停止といった重篤な症状が現れます。吐き気や嘔吐は早期から見られることが多く、「吐きそうで吐けない」という状態から進行することもあります。
  • 感染性胃腸炎: ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルスなど)や細菌(サルモネラ菌、カンピロバクターなど)が原因で胃腸に炎症が起こる病気です。急な吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などが主な症状です。
  • 診断と治療: これらの胃腸の病気が疑われる場合は、内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)、腹部超音波検査、X線検査、血液検査、検便などの検査が行われます。治療は、原因に応じて薬物療法(胃酸分泌抑制薬、消化管運動改善薬、抗生物質など)、生活習慣の見直しなどが行われます。

脳や神経の病気

脳や神経の病気が、吐き気を引き起こすこともあります。これは、脳の嘔吐中枢が直接刺激されたり、平衡感覚に関わる神経に異常が生じたりするためです。

  • 片頭痛: ズキンズキンとした強い頭痛が繰り返し起こる病気です。頭痛に伴って、吐き気や嘔吐、光や音に過敏になるなどの症状を伴うことが多くあります。吐き気は、頭痛発作の前兆として現れたり、頭痛と同時に起こったりします。
  • 脳腫瘍: 脳の中に腫瘍ができると、脳圧が上昇したり、特定の脳の部位(嘔吐中枢など)を圧迫したりすることで、吐き気が起こることがあります。特に朝方に強い吐き気や嘔吐が見られるのが特徴です。吐き気以外にも、持続する頭痛、手足の麻痺やしびれ、視覚異常、けいれん、意識障害など、腫瘍ができた場所によって様々な神経症状が現れます。
  • メニエール病: 内耳のリンパ液が過剰になることで起こる病気です。強い回転性のめまい発作を繰り返し、多くの場合、吐き気や嘔吐を伴います。めまい発作時には、耳鳴りや難聴も一緒に起こることが特徴です。
  • その他の脳神経疾患: 脳出血、脳梗塞、くも膜下出血といった脳血管障害や、髄膜炎、脳炎などでも、脳圧の上昇や脳組織の障害により、吐き気や嘔吐が起こることがあります。これらの病気では、突然の激しい頭痛、意識障害、手足の麻痺、言語障害など、吐き気以外の重篤な症状を伴うことがほとんどです。
  • 診断と治療: 脳や神経の病気が疑われる場合は、頭部MRI検査、CT検査、脳波検査、髄液検査などが行われます。治療は、病気の種類に応じて薬物療法、手術などが行われます。特に脳血管障害などは緊急性の高い病気ですので、疑わしい症状がある場合は一刻も早く医療機関を受診する必要があります。

その他の病気

胃腸や脳神経系以外の病気でも、吐き気を引き起こすことがあります。

  • 心臓病: 特に心筋梗塞や狭心症の発作では、典型的な胸の痛みだけでなく、吐き気やみぞおちの痛みを伴うことがあります。特に女性や高齢者では、胸痛があまりはっきりせず、吐き気や胃の不調といった非典型的な症状が前面に出ることがあるため注意が必要です。息苦しさ、冷や汗、肩や顎への放散痛などを伴う場合は、緊急性の高い状態の可能性があります。
  • 急性膵炎・慢性膵炎: 膵臓の炎症で、みぞおちや背中に激しい痛みが起こります。同時に強い吐き気や嘔吐、発熱、腹部の張りなどを伴います。原因は胆石やアルコールの飲みすぎが多いです。
  • 胆石症・胆嚢炎: 胆嚢や胆管に結石ができ、炎症を起こす病気です。特に脂肪分の多い食事を摂った後などに、右上腹部からみぞおちにかけての強い痛み(疝痛発作)、吐き気、嘔吐、発熱、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)といった症状が現れることがあります。
  • 腎臓病: 腎機能が低下して老廃物が体内に蓄積すると、尿毒症となり、吐き気や食欲不振、倦怠感などの症状が現れることがあります。
  • 糖尿病: 血糖値のコントロールがうまくいかない場合、いくつかの合併症が吐き気を引き起こすことがあります。例えば、糖尿病性ケトアシドーシス(血糖値が非常に高くなり、体が酸性に傾く状態)では、強い吐き気、嘔吐、腹痛、呼吸困難などが起こります。また、糖尿病性胃麻痺(胃の神経が障害されて胃の動きが悪くなる状態)では、食後の胃もたれ、早期満腹感、吐き気、嘔吐といった症状が見られます。
  • 甲状腺機能亢進症: 甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。動悸、手の震え、多汗、体重減少などの症状に加え、吐き気を伴うことがあります。
  • アレルギー反応: 特定の食べ物や物質に対するアレルギー反応として、じんましんやかゆみだけでなく、吐き気や腹痛、呼吸困難といった消化器症状や全身症状が現れることがあります(アナフィラキシー)。

これらの病気による吐き気は、単なる不快感にとどまらず、重篤な病気のサインである可能性があります。特に、吐き気以外の症状を伴う場合や、症状が持続する場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。

吐きそうで吐けない症状で病院に行く目安

「吐きそうで吐けない」という症状は、一時的な不調であることが多いですが、中には医療機関での診察が必要なケースも存在します。特に、重篤な病気が隠れている可能性を示す「危険なサイン」がある場合は、迷わず病院を受診しましょう。

すぐに受診が必要な危険なサイン

以下の症状が「吐きそうで吐けない」という気持ち悪さに加えて現れた場合は、緊急性が高い可能性があります。速やかに医療機関(夜間や休日の場合は救急外来)を受診してください。

  • 突然発症した、非常に強い頭痛を伴う場合: 特に「これまで経験したことのないような」激しい頭痛は、脳血管障害(くも膜下出血など)の可能性があり危険です。
  • 胸の痛みや圧迫感を伴う場合: 心筋梗塞や狭心症など、心臓の病気の可能性があります。特に左胸だけでなく、みぞおちや背中、肩、顎などに痛みが広がる場合も注意が必要です。
  • 強い腹痛を伴う場合: 胃潰瘍の穿孔、虫垂炎(盲腸)、急性膵炎、腸閉塞、胆嚢炎など、腹部の重篤な病気が考えられます。痛みの場所や性質(差し込むような痛み、持続する痛みなど)も重要な情報です。
  • 手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らないなど、神経症状を伴う場合: 脳梗塞や脳出血など、脳血管障害の可能性があります。
  • 意識がもうろうとしている、反応が鈍いなど、意識障害がある場合: 重篤な全身状態の悪化や脳の病気が考えられます。
  • 高熱(38℃以上)を伴う場合: 重症の感染症などの可能性があります。
  • 激しい下痢や、血便・タール便を伴う場合: 重症の感染性胃腸炎、出血を伴う胃腸の病気(胃潰瘍、大腸炎など)の可能性があります。タール便(真っ黒でねばつく便)は、胃や十二指腸からの出血を示唆します。
  • 脱水症状が進んでいる場合: 尿量が極端に少ない、口や皮膚が乾燥している、立ちくらみがする、意識がぼんやりするなど。特に高齢者や子供、基礎疾患のある人では脱水が進みやすく危険です。
  • けいれんを伴う場合: 脳の病気や重篤な代謝異常などが考えられます。
  • 強いめまいを伴い、立っていられない場合: 脳の病気やメニエール病など、平衡感覚に関わる重篤な病気の可能性があります。
  • 物が二重に見える、視野がおかしいなど、視覚異常を伴う場合: 脳の病気の可能性があります。
  • 数日経っても症状が改善しない、あるいは悪化する場合: 一時的な不調ではなく、何らかの病気が原因となっている可能性が高まります。
  • 服用している薬を変えていないのに、以前とは違う種類の吐き気や、より強い吐き気が続く場合: 薬の副作用ではない他の原因を考える必要があります。

これらのサインに一つでも当てはまる場合は、自己判断で様子を見ず、すぐに医療機関を受診することが大切です。

何科を受診する?

「吐きそうで吐けない」という症状で病院を受診する場合、まずはどの科に行けば良いか迷うかもしれません。症状や状況に応じて適切な科を選ぶことがスムーズな診断につながります。

症状の種類 考えられる原因 受診科
吐き気のみ、または胃もたれ、みぞおちの痛みなど胃腸症状を伴う場合 胃炎、胃潰瘍、機能性ディスペプシア、逆流性食道炎、感染性胃腸炎など 内科、消化器内科
強い頭痛を伴う場合 片頭痛、脳腫瘍、脳血管障害など 脳神経外科、神経内科
強いめまいを伴う場合 メニエール病、前庭神経炎、脳血管障害など 耳鼻咽喉科、脳神経外科、神経内科
胸の痛みや圧迫感を伴う場合 心筋梗塞、狭心症など 循環器内科
強い腹痛を伴う場合(特にみぞおちより下) 虫垂炎、腸閉塞、急性膵炎、胆石症、婦人科疾患など 外科、消化器内科、婦人科(女性の場合)
発熱や下痢を伴う場合 感染症(感染性胃腸炎、インフルエンザなど) 内科
手足の麻痺やしびれ、意識障害など、神経症状を伴う場合 脳血管障害、脳腫瘍など 脳神経外科、神経内科
妊娠の可能性がある場合、または妊娠初期である場合 つわり 産婦人科
特定の薬を飲み始めてから症状が出た場合 薬の副作用 処方した科、またはかかりつけ医(薬剤師に相談するのも良い)
特に思い当たる原因がなく、様々な症状を伴う場合、または検査で異常がない場合 ストレス、自律神経失調症、心身症など 内科、心療内科、精神科
上記に当てはまらず、どこを受診すれば良いか判断に迷う場合 まずはかかりつけ医、または一般的な内科
緊急性の高い危険なサインがある場合 心筋梗塞、脳卒中、腸閉塞、急性膵炎など 救急外来

基本的には、まずは内科を受診するのが良いでしょう。問診や診察の結果、必要に応じて専門の診療科(消化器内科、脳神経外科、耳鼻咽喉科など)を紹介してもらうことができます。普段からかかりつけ医がいる場合は、まずかかりつけ医に相談するのが安心です。

受診する際は、いつから、どのような状況で症状が出たのか、症状の強さ、他にどのような症状があるか、食事や排便の状況、現在服用している薬、既往歴、アレルギーの有無などを具体的に伝えられるように準備しておくと、スムーズな診断につながります。

吐きそうで吐けない状態を予防するには

「吐きそうで吐けない」という不快な症状は、できることなら避けたいものです。日常生活でのちょっとした心がけや工夫によって、症状を予防したり、軽減したりすることが期待できます。

日常生活での注意点

体と心の状態を整えることが、吐き気の予防につながります。

  • 十分な休息と睡眠: 疲労や睡眠不足は自律神経の乱れを引き起こし、吐き気を誘発しやすくなります。毎日十分な睡眠時間を確保し、心身の疲れを溜め込まないようにしましょう。忙しい中でも、短時間でも良いので休息をとる時間を作るように心がけましょう。
  • ストレスマネジメント: 過度なストレスは胃腸の働きに悪影響を与えます。自分に合ったストレス解消法を見つけ、積極的に実践しましょう。軽い運動(ウォーキング、ストレッチなど)、趣味、リラクゼーション(入浴、瞑想、深呼吸など)は、ストレス軽減に効果的です。
  • 規則正しい生活リズム: 毎日同じ時間に寝起きし、食事を摂るなど、規則正しい生活を送ることは、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。生活リズムが乱れると、体の様々な機能に不調が生じやすくなります。
  • 適度な運動: 適度な運動は、ストレス解消になるだけでなく、全身の血行を促進し、自律神経のバランスを整える効果も期待できます。急に激しい運動を始めるのではなく、無理のない範囲で、継続できる運動(ウォーキング、ジョギング、ヨガなど)を取り入れましょう。
  • 体を冷やさない: 体が冷えると血行が悪くなり、胃腸の働きが低下することがあります。特に夏場でも、冷たい飲み物やエアコンの効きすぎには注意し、腹部を冷やさないように腹巻などを利用するのも良いでしょう。
  • 禁煙・節酒: 喫煙は胃の粘膜を荒らし、血行を悪くします。また、アルコールも胃に刺激を与えたり、分解過程で体に負担をかけたりします。タバコは控え、アルコールは適量にとどめましょう。

食事や飲み物の工夫

食生活を見直すことも、吐き気の予防には非常に重要です。

  • 暴飲暴食を避ける: 一度に大量の食事を摂ったり、脂っこいものや消化の悪いものばかり食べたりすると、胃に大きな負担がかかります。食事は腹八分目を心がけ、ゆっくりよく噛んで食べましょう。
  • 規則正しく3食摂る: 空腹時間が長すぎると、胃酸過多になったり、血糖値が不安定になったりして気持ち悪さを感じることがあります。3食決まった時間に摂ることで、胃腸のリズムを整えましょう。
  • 消化の良いものを中心に: 胃腸の調子が優れないときは、脂っこいもの、辛いもの、酸っぱいもの、冷たすぎるもの、熱すぎるものなどの刺激物は避け、消化の良いもの(おかゆ、うどん、豆腐、白身魚、鶏むね肉、温野菜など)を選びましょう。
  • 食後すぐに横にならない: 食後すぐに横になると、胃酸が逆流しやすくなり、逆流性食道炎の原因になったり、吐き気を誘発したりすることがあります。食後2~3時間は体を起こしておくのが望ましいです。
  • カフェインの摂りすぎに注意: コーヒーや緑茶に含まれるカフェインは、胃酸の分泌を促進したり、胃の働きを過剰に刺激したりすることがあります。摂りすぎは控えましょう。
  • 水分はこまめに摂る: 一度に大量ではなく、少量ずつこまめに水分を摂るようにしましょう。特に乾燥しやすい季節や、汗をたくさんかいたときは意識的に水分補給を行いましょう。冷たい飲み物よりも、常温やお腹を温める白湯などがおすすめです。
  • 寝る前の食事を控える: 就寝直前の食事は、消化が終わらないまま寝ることになり、胃に負担をかけます。就寝の2~3時間前までには食事を済ませるのが理想です。

これらの日常生活や食事における工夫を続けることで、「吐きそうで吐けない」という症状の発生を減らし、快適な毎日を送ることができるようになります。

【まとめ】「吐きそうで吐けない」症状に悩んだら、原因に応じた適切な対処を

「吐きそうで吐けない」という症状は非常に不快であり、日常生活の質を低下させることがあります。
この症状の原因は、ストレスや疲労といった一時的なものから、胃腸の病気、脳神経の病気、さらには心臓病など、様々な可能性が考えられます。

まずは、記事でご紹介したように、楽な姿勢をとる、衣服を緩める、換気をする、水分を少量ずつ摂る、ツボを押すといった自宅でできる応急処置や対処法を試してみてください。
これらの対処法は、一時的な不調による吐き気を和らげるのに役立ちます。

しかし、症状が続く場合や、強い頭痛、胸の痛み、強い腹痛、手足の麻痺、意識障害、高熱、血便など、危険なサインを伴う場合は、迷わず医療機関を受診することが非常に重要です。
これらのサインは、重篤な病気が隠れている可能性を示唆しており、迅速な診断と治療が必要となる場合があります。

受診する際は、症状の種類や他に気になる症状があるかどうかによって、内科、消化器内科、脳神経外科、耳鼻咽喉科、循環器内科など、適切な診療科を選びましょう。
かかりつけ医がいる場合は、まず相談するのが最も安心です。

日頃から、十分な休息と睡眠、ストレスの管理、規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動などを心がけることで、「吐きそうで吐けない」といった胃腸の不調を予防することにもつながります。

この記事で提供した情報は一般的なものであり、個々の症状や状態に最適な対処法や診断は、専門家である医師によって行われるべきです。
もし「吐きそうで吐けない」という症状が続く場合や、ご自身の症状について不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けるようにしてください。

免責事項:この記事は情報提供のみを目的としており、医学的なアドバイス、診断、または治療を意図したものではありません。ご自身の健康状態については、必ず医師やその他の資格を持つ医療専門家にご相談ください。この記事の情報に基づいて自己判断で行動することはお控えください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次