椎間板ヘルニアの痛みやしびれは、日常生活に大きな影響を及ぼします。少しでも楽になりたい、再発を防ぎたいと願う方は多いでしょう。そのような時、効果的な方法としてストレッチが挙げられます。しかし、椎間板ヘルニアの状態で行うストレッチは、方法を間違えると症状を悪化させる可能性も。
この記事では、椎間板ヘルニアの方に向けて、安全かつ効果的なストレッチ方法とその注意点を詳しく解説します。「やってはいけない」危険なストレッチや、症状別の対策、ストレッチを始める適切なタイミングなどもご紹介します。この記事を参考に、専門家の指導のもと、ご自身の状態に合ったストレッチを取り入れ、痛みの緩和と再発予防を目指しましょう。
椎間板ヘルニアになぜストレッチが必要?
椎間板ヘルニアは、背骨と背骨の間にあるクッション材である椎間板が変性し、その一部が飛び出して神経を圧迫することで、腰や足に痛みやしびれを引き起こす病気です。この状態では、周囲の筋肉が緊張し、血行が悪くなることが多いです。適切なストレッチを行うことで、これらの問題を改善し、症状の緩和や回復促進、さらには再発予防に繋がることが期待できます。
ストレッチの役割と効果
椎間板ヘルニアにおけるストレッチの主な役割は、硬くなった筋肉を柔軟にし、関節の可動域を改善することです。痛みやしびれがあると、無意識のうちに体をかばうようになり、特定の筋肉に負担がかかりやすくなります。この結果、筋肉はさらに硬直し、痛みを増強させるという悪循環に陥ることがあります。
ストレッチによって筋肉の柔軟性が回復すると、体の動きがスムーズになり、腰への負担を軽減できます。また、固まった関節の動きが良くなることで、姿勢の改善にも繋がります。良好な姿勢は、椎間板にかかる圧力を分散させ、ヘルニアの症状を和らげる効果が期待できます。さらに、継続的なストレッチは、体幹や腰部周辺の筋力バランスを整え、再発しにくい体づくりにも貢献します。
ストレッチの主な役割 | 効果 |
---|---|
筋肉の柔軟性向上 | 硬直した筋肉をリラックスさせ、痛みを緩和する。 |
関節可動域の改善 | 体の動きがスムーズになり、腰への負担を軽減する。 |
血行促進 | 筋肉や神経への血流を改善し、回復を促す。 |
姿勢の改善 | 椎間板への圧力を分散させ、症状を和らげる。 |
筋力バランスの調整 | 特定の筋肉への過剰な負担を防ぎ、再発予防に繋げる。 |
リラクゼーション効果 | 精神的なストレスを軽減し、痛みの感じ方を和らげる。 |
筋肉の緊張緩和と血行促進
椎間板ヘルニアによる痛みや神経の圧迫は、腰やその周辺の筋肉を過剰に緊張させます。特に、背中の筋肉、お尻の筋肉、太ももの裏側の筋肉などが硬くなりやすい傾向があります。これらの筋肉が緊張すると、血行が悪くなり、酸素や栄養素の供給が滞ることで、さらに痛みが強まることがあります。
ストレッチは、これらの緊張した筋肉をゆっくりと伸ばし、リラックスさせる効果があります。筋肉の緊張が和らぐと、圧迫されていた血管が解放され、血行が促進されます。血行が改善されると、痛み物質や疲労物質が排出されやすくなり、新鮮な酸素や栄養素が供給されることで、組織の回復が促されます。これは、椎間板ヘルニアからの回復プロセスにおいて非常に重要な要素です。特に、慢性的な痛みがある場合、筋肉の緊張と血行不良が痛みを長引かせていることが多いため、ストレッチによるアプローチが有効となります。
【重要】椎間板ヘルニアで「やってはいけない」ストレッチ
椎間板ヘルニアの治療やリハビリにおいてストレッチは有効ですが、全てのストレッチが安全なわけではありません。誤った方法でストレッチを行うと、かえって椎間板への負担が増加し、症状を悪化させてしまう危険性があります。特に、急性期や痛みが強い時期は、特定の動きを避けることが非常に重要です。
やってはいけないストレッチの種類とその理由
椎間板ヘルニアの人が特に注意すべき、あるいは避けるべきストレッチにはいくつかの種類があります。これらは、腰椎に不必要な負荷をかけたり、椎間板の突出を助長したりする可能性があるためです。
前屈・後屈動作
- やってはいけない理由: 腰を大きく前屈(前に曲げる)する動作は、椎間板の前側に圧力をかけ、後ろ側を広げる方向に力が働きます。すでに椎間板の後ろ側が突出しているヘルニアの場合、この動きはさらに突出を助長し、神経への圧迫を強める可能性があります。逆に、腰を大きく後屈(後ろに反る)する動作は、椎間板の後ろ側に圧力をかけ、神経根を刺激する可能性があります。特に、神経根が圧迫されている方向によっては、後屈によって症状が悪化することがあります。痛みが強い時期の無理な前屈・後屈は、椎間板に大きな負担をかけ、炎症を悪化させる原因となります。
腰をひねる動作(捻転)
- やってはいけない理由: 腰椎は、構造上、回旋(ひねり)の動きに強くありません。腰を大きくひねる動作は、椎間板にせん断力という強いストレスをかけます。このせん断力は、椎間板の線維輪(外側の丈夫な部分)を損傷させたり、既存の損傷を悪化させたりする可能性があります。ヘルニアがある状態での無理な捻転動作は、神経への刺激を増大させ、痛みやしびれを強くするリスクが非常に高いです。特に、片側だけに痛みやしびれが出ている場合、その方向にひねる動きは避けるべきです。
痛みを伴う無理なストレッチ
- やってはいけない理由: 「ストレッチは少し痛いくらいが効いている」という考え方は、椎間板ヘルニアにおいては非常に危険です。ストレッチ中に痛みを感じる場合、それは体が「これ以上伸ばすと危険だ」と警告しているサインです。痛みを我慢して無理に伸ばし続けると、炎症が悪化したり、筋肉や神経をさらに傷つけたりする可能性があります。ストレッチは、痛みを感じない範囲で、心地よさを感じる程度の強度で行うことが基本です。特にヘルニアの場合は、少しでも痛みを感じたら、そのストレッチは中止するか、強さを大幅に弱めるべきです。
症状別の避けるべき動き
椎間板ヘルニアの症状は人によって異なります。特定の動作で痛みが強くなる場合、その動作を含むストレッチは避けるべきです。
- 前屈で痛みが増す場合: 腰を前に曲げる、体を丸めるようなストレッチは避けましょう。
- 後屈で痛みが増す場合: 腰を後ろに反るような、胸を張るようなストレッチは注意が必要です。
- 特定の方向に体をひねると痛みが増す場合: その方向への捻転動作を含むストレッチは絶対に行わないでください。
- 座っている時間が長いと痛みが増す場合: 長時間座ったまま行うストレッチは、休憩を挟みながら行うか、寝た状態や立った状態で行えるストレッチを選びましょう。
- 立っている時間が長いと痛みが増す場合: 立ったまま行うストレッチは避け、座るか寝た状態で行えるものを選びましょう。
ご自身の症状がどのような動きで悪化するかを把握し、それに合わせたストレッチを選択することが重要です。迷う場合は、必ず医師や理学療法士に相談してください。
痛みが強い時期はストレッチを中止する
椎間板ヘルニアの急性期や、炎症が強く痛みが激しい時期は、無理にストレッチを行うべきではありません。この時期は、炎症を鎮め、神経の興奮を抑えることが最優先です。安静を保ち、必要に応じて消炎鎮痛剤を使用するなど、医師の指示に従いましょう。
痛みが強い時期に無理に体を動かしたりストレッチを行ったりすると、炎症をさらに悪化させ、回復を遅らせる原因となります。ストレッチは、痛みのピークを過ぎて、ある程度痛みが落ち着いてきてから、専門家のアドバイスのもと、ごく軽い強度で始めるのが安全です。痛みが和らいできたと感じても、急に負荷の高いストレッチを行うのではなく、徐々に強度を上げていくことが大切です。
椎間板ヘルニアに効果的なストレッチ方法
安全なストレッチは、椎間板ヘルニアの痛みを和らげ、再発を防ぐために非常に有効です。しかし、前述のように「やってはいけない」動きを避け、ご自身の状態に合った方法で行う必要があります。ここでは、椎間板ヘルニアの方におすすめの、比較的安全に行えるストレッチをいくつかご紹介します。これらのストレッチは、腰椎への直接的な負担を避けつつ、腰を支える重要な筋肉(体幹、お尻、太ももなど)の柔軟性や機能を改善することを目的としています。
どこを鍛えるべきか(体幹・お尻・太ももなど)
椎間板ヘルニアの改善や予防には、腰そのものだけでなく、腰を支え、安定させるための周囲の筋肉を整えることが重要です。特に以下の部位のストレッチや軽い筋力トレーニング(痛みのない範囲で)が推奨されます。
- 体幹(腹筋、背筋): 特に腹横筋や多裂筋といったインナーマッスルは、天然のコルセットのように腰椎を安定させる役割があります。これらの筋肉が弱いと、腰椎への負担が増加します。
- お尻(殿筋群): お尻の筋肉は、骨盤の安定に大きく関わります。特に中殿筋は、歩行時に骨盤が傾くのを防ぐ重要な筋肉です。梨状筋などの深層部の筋肉が硬くなると、坐骨神経を圧迫し、お尻や太もも裏の痛みやしびれを引き起こすことがあります。
- 太もも裏(ハムストリングス): 太ももの裏側の筋肉が硬いと、骨盤が後ろに傾きやすくなり(後傾)、猫背のような姿勢になります。この姿勢は腰椎の自然なS字カーブを失わせ、椎間板に負担をかけやすくなります。ハムストリングスの柔軟性を高めることで、骨盤の前傾を促し、腰椎への負担を軽減できます。
- 太もも前(大腿四頭筋): 太ももの前の筋肉が硬いと、骨盤が前に傾きやすくなり(前傾)、腰の反りが強くなることがあります。これも腰椎への負担を増やす可能性があります。ただし、ハムストリングスの硬さほど直接的な影響は少ないとされますが、全体のバランスとして柔軟性を保つことが望ましいです。
これらの部位の筋肉のバランスを整え、柔軟性を保つことが、腰椎への負担を減らし、ヘルニアの症状を和らげることに繋がります。
おすすめストレッチのやり方(画像や動画での解説を想定)
以下に、椎間板ヘルニアの方におすすめのストレッチ方法をいくつかご紹介します。これらのストレッチは、腰への直接的な強い負荷を避けるように設計されています。痛みのない範囲で、ゆっくりと行いましょう。各ストレッチの回数や時間は目安であり、ご自身の体調に合わせて調整してください。
猫のポーズ (Cat-Cow Pose)
これは、背骨の柔軟性を高めるストレッチです。腰椎の動きを改善し、周辺筋肉の緊張を和らげます。
- 四つん這いになります。手は肩の真下、膝は股関節の真下につきます。
- 息を吐きながら、背中を丸め、お腹を覗き込むように頭を下げます。猫が威嚇するようなイメージです。腰を無理に丸めすぎないように注意しましょう。
- 息を吸いながら、ゆっくりと背中をそらせ、顔を上げます。腰を反らせすぎず、お腹を軽く引き込む意識を持ちます。
- この動きを呼吸に合わせてゆっくりと5~10回繰り返します。
- ポイント: 腰の痛みに注意し、無理な範囲で行わないこと。特に腰を反らせる動きで痛みが出る場合は、範囲を狭くするか、背中を丸める動きだけを行いましょう。
ドローイン (腹式呼吸と腹横筋収縮)
これは、体幹のインナーマッスルである腹横筋を意識的に収縮させるトレーニングであり、リラクゼーション効果のある腹式呼吸も兼ねています。腰椎の安定性を高めるのに役立ちます。
- 仰向けになり、膝を立てて楽な姿勢をとります。
- 鼻から息をゆっくり吸い込み、お腹を膨らませます(腹式呼吸)。
- 口から息をゆっくりと吐き出しながら、お腹を凹ませていきます。お腹を床に近づけるように、おへそのあたりを背骨の方に引き寄せるイメージです。このとき、お腹の力が抜けないように意識します。息を完全に吐ききると、腹横筋が自然と収縮するのを感じられるでしょう。
- お腹を凹ませた状態を数秒キープします。
- この呼吸と腹筋の収縮を組み合わせて、5~10回繰り返します。
- ポイント: 腹筋に力を入れすぎず、呼吸に合わせて自然に行うこと。腰が反りすぎないように注意し、必要であれば腰の下に薄いタオルなどを敷いても良いでしょう。
お尻のストレッチ (梨状筋ストレッチ)
梨状筋の緊張は坐骨神経を圧迫し、お尻や足の痛みやしびれの原因となることがあります。このストレッチは梨状筋を伸ばすのに効果的です。
- 仰向けになり、両膝を立てます。
- 片方の足首を、もう片方の膝の上にのせます。
- 膝を立てた方の足の太ももの裏に両手を回し、胸の方に引き寄せます。お尻の外側が伸びるのを感じられるでしょう。
- お尻の外側が伸びているのを感じながら、20~30秒キープします。
- ゆっくりと足を戻し、反対側の足も同様に行います。左右それぞれ2~3セット繰り返します。
- ポイント: 痛みのない範囲で行うこと。お尻の伸びを感じることが目的であり、無理に引き寄せすぎないように注意しましょう。
太もも裏のストレッチ (ハムストリングスストレッチ)
ハムストリングスの硬さは骨盤の歪みや腰への負担に繋がります。このストレッチはハムストリングスの柔軟性を高めます。
- 仰向けになり、両膝を立てます。
- 片方の足を天井方向に伸ばします。膝は軽く曲がっていても構いません。
- 伸ばした足の太ももの裏、またはふくらはぎに両手を回し、ゆっくりと足全体を体の方に引き寄せます。太ももの裏側が伸びるのを感じられるでしょう。
- 太もも裏が伸びているのを感じながら、20~30秒キープします。
- ゆっくりと足を戻し、反対側の足も同様に行います。左右それぞれ2~3セット繰り返します。
- ポイント: 腰が反らないように注意すること。膝を完全に伸ばす必要はありません。無理に引き寄せすぎず、心地よい伸びを感じる範囲で行いましょう。
これらのストレッチは一般的なものであり、全ての方に合うとは限りません。必ずご自身の体調や症状に合わせて、無理なく行うことが重要です。
腰椎4番5番など特定の部位にアプローチするストレッチ
椎間板ヘルニアは、特に腰椎の4番目と5番目の間(L4/L5)、または5番目と仙骨の間(L5/S1)に多く発生します。これらの特定の部位にピンポイントでアプローチする直接的なストレッチは、かえって負担をかける可能性があるため、一般的には推奨されません。
むしろ、腰椎全体や周囲の筋肉の柔軟性、体幹の安定性を高めることで、結果的に特定の椎間板への負担を軽減し、症状の改善を目指すのが安全で効果的なアプローチです。前述の猫のポーズは腰椎全体の柔軟性を促し、ドローインは腰椎を安定させる腹横筋を鍛えます。お尻や太もも裏のストレッチは、骨盤の傾きを改善し、間接的に腰椎への負担を減らす効果があります。
特定の部位への痛みが強い場合は、その部位を無理に動かすストレッチは避け、まずは安静や痛みのない範囲での動きに留めるべきです。専門家(医師や理学療法士)は、問診や触診、画像診断の結果から、どの椎間板に問題があるかを把握し、それに応じた安全なリハビリテーション計画を立ててくれます。自己判断で特定の部位を意識したストレッチを行うのは危険な場合があるため、必ず専門家の指導を仰ぎましょう。
ストレッチを始めるタイミングと注意点
椎間板ヘルニアのストレッチは、始めるタイミングと方法を誤ると逆効果になる可能性があります。安全かつ効果的に行うためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
運動はいつから始めるべきか
椎間板ヘルニアを発症した直後(急性期)は、炎症や痛みが最も強い時期です。この時期に無理な運動やストレッチを行うと、炎症を悪化させ、症状を長引かせる可能性があります。急性期はまず安静を保ち、痛みが落ち着くのを待つことが重要です。
ストレッチや軽い運動を始めるのは、痛みのピークを過ぎて、日常的な動作(歩く、座る、立つなど)がある程度痛みなく行えるようになってからです。一般的には、発症から数日から1週間程度で痛みが軽減してくることが多いですが、個人差が大きいため、必ず医師の許可を得てから始めるようにしましょう。
また、いきなり本格的な運動を始めるのではなく、まずは軽いストレッチから始め、徐々に強度や種類を増やしていくのが安全です。最初のうちは、寝たままできるストレッチや、体への負担が少ないストレッチから試してみましょう。
痛みが逆効果になる場合の見極め方
ストレッチ中に少しの伸び感や筋肉の疲労感を感じるのは正常ですが、「痛み」を感じた場合は、それが逆効果になっているサインかもしれません。
- ストレッチ中や直後に痛みが増す:そのストレッチはあなたの状態に合っていない可能性があります。すぐに中止するか、強さを大幅に弱めてください。
- ストレッチ後、数時間経っても痛みが続く:ストレッチの負荷が高すぎたか、まだストレッチを行うべき時期ではなかった可能性があります。
- 特定のストレッチで毎回痛みが生じる:そのストレッチはその時期には適していないと考えられます。他のストレッチに切り替えるか、専門家に相談してください。
- お尻や足への痛みやしびれが増す:神経症状が悪化しているサインかもしれません。すぐに中止し、医師に連絡してください。
ストレッチは「痛みを我慢して行うもの」ではありません。常に体の反応に注意を払い、少しでも異常を感じたら無理せず中止する勇気が必要です。
毎日続けることの重要性
ストレッチの効果は、継続することで徐々に現れます。週に1回や2回行うだけでは、筋肉の柔軟性を維持したり、体幹を安定させたりする効果は限定的です。可能であれば、毎日、あるいは週に数回(例えば週5回)など、決まった頻度で継続することが理想です。
朝起きた後や、入浴後など、体が温まって筋肉が柔らかくなっている時間帯に行うと、より効果を実感しやすいでしょう。ただし、朝は体が硬い場合もあるため、無理のない範囲で始めましょう。一度に長時間行う必要はありません。10分〜15分程度の短い時間でも、毎日続けることが大切です。
継続するためには、無理のない範囲で、習慣として生活に取り入れる工夫が必要です。「〇〇をしたらストレッチをする」といったように、他の行動と紐づけるのも良い方法です。
医師や専門家に相談すること
椎間板ヘルニアのストレッチや運動は、自己判断で行うよりも、必ず医師や理学療法士といった専門家の指導のもとで行うことが強く推奨されます。
- 正確な診断に基づいたアドバイス: 専門家は、あなたのヘルニアの状態(どの椎間板が、どの程度突出しているか、神経圧迫の有無など)を正確に診断し、それに合った安全なストレッチや避けるべき動きを具体的にアドバイスしてくれます。
- 個々の状態に合わせたプログラム: ヘルニアの状態、痛みの程度、年齢、体力レベルなどは人それぞれ異なります。専門家はこれらの要因を考慮し、あなたに最適なストレッチやリハビリテーションのプログラムを作成してくれます。
- 正しいフォームの指導: ストレッチは正しいフォームで行うことが重要です。間違ったフォームで行うと効果が得られないばかりか、かえって体を痛める原因になります。専門家は正しいフォームを指導し、必要に応じて修正してくれます。
- 症状の変化に応じた対応: リハビリの過程で症状が変化した場合(改善したり、悪化したり)、専門家はそれに応じたプログラムの見直しを行ってくれます。
- 安全性の確保: 「やってはいけない」ストレッチを見極め、安全にリハビリを進めるためには専門知識が必要です。
専門家のアドバイスは、安全かつ効率的に椎間板ヘルニアの改善を目指す上で、最も信頼できる情報源です。痛みが強い時期はもちろん、痛みが落ち着いてきてからも、一度は専門家の診察や指導を受けることを強くお勧めします。
椎間板ヘルニアの痛みを和らげるその他の方法
椎間板ヘルニアによる痛みや不快感を和らげるためには、ストレッチだけでなく、日常生活での工夫やその他のケアも有効です。これらを組み合わせることで、より効果的な症状の管理が期待できます。
安静や姿勢の工夫
- 急性期の安静: 痛みが非常に強い急性期は、無理に動かず安静にすることが最も重要です。横になって痛みが楽になる姿勢をとりましょう。ただし、長時間完全に寝たきりになると筋力が低下するため、痛みが少し落ち着いたら、無理のない範囲で少しずつ動くようにします。
- 正しい座り方: 座っている姿勢は、立っている姿勢よりも椎間板に負担がかかると言われています。深く腰かけ、背筋を伸ばし、骨盤が立つように意識しましょう。可能であれば、腰の後ろにクッションを入れて腰椎のS字カーブをサポートすると良いでしょう。長時間座りっぱなしは避け、定期的に立ち上がったり、軽く歩いたりする休憩を挟んでください。
- 正しい立ち方: 耳、肩、骨盤、膝、くるぶしが一直線になるように立つことを意識します。お腹を軽く引き締め、腰が反りすぎたり丸まったりしないように注意しましょう。片足に重心をかけすぎず、両足に均等に体重を乗せるようにします。
- 正しい寝方: 仰向けで寝る場合は、膝の下にクッションや丸めたタオルなどを入れて、腰の反りを軽減すると楽になることがあります。横向きで寝る場合は、膝の間にクッションを挟むと、骨盤の歪みを防ぎ、腰への負担を減らせます。うつ伏せ寝は腰に負担がかかりやすいため、避けた方が無難です。
温める・冷やすの判断
椎間板ヘルニアにおける温熱・冷却の使い分けは、炎症の有無や痛みの性質によって判断します。
- 冷やす(アイシング): 発症直後や、痛みが強く炎症が疑われる急性期には、患部を冷やすのが効果的です。冷やすことで血管が収縮し、炎症や腫れを抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。アイスパックなどをタオルで包み、1回15~20分程度、1日に数回行いましょう。直接皮膚に当てると凍傷になる危険性があるので注意してください。
- 温める(ホットパック、入浴など): 慢性的な痛みや、筋肉の緊張が主な原因と考えられる場合には、患部を温めるのが効果的です。温めることで血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減されることがあります。お風呂にゆっくり浸かる、ホットパックを使用するなどが有効です。ただし、痛みが強い急性期に温めると、かえって炎症を悪化させる可能性があるので注意が必要です。
どちらが良いか迷う場合は、ご自身の痛みがどのような時に増すか(冷やすと楽になるか、温めると楽になるか)で判断するのも一つの目安ですが、自己判断が難しい場合は医師や理学療法士に相談してください。
まとめ|安全に効果的なストレッチで椎間板ヘルニアの改善を目指そう
椎間板ヘルニアによる痛みやしびれは辛いものですが、適切なケアによって症状を和らげ、QOL(生活の質)を改善することは可能です。その中でも、安全かつ継続的なストレッチは、硬くなった筋肉を柔軟にし、血行を促進し、体幹を安定させることで、痛みの緩和や再発予防に重要な役割を果たします。
しかし、椎間板ヘルニアの状態で行うストレッチは、方法を間違えると症状を悪化させる危険性も伴います。特に、腰を大きく前屈・後屈させたり、ひねったりする動きは椎間板に負担をかけやすいため、避けるべきです。また、ストレッチ中に痛みを感じる場合は、無理せず中止することが鉄則です。痛みが強い急性期は安静を優先し、ストレッチは痛みが落ち着いてから、ごく軽い強度で始めましょう。
ご紹介した猫のポーズ、ドローイン、お尻や太もも裏のストレッチなどは、比較的安全に行えるものが中心ですが、個人の状態によって適さない場合もあります。最も安全で効果的なアプローチは、必ず医師や理学療法士といった専門家の診断を受け、個々の状態に合わせたストレッチやリハビリテーションの指導を受けることです。専門家は、あなたのヘルニアの状態を正確に把握し、適切なストレッチの種類、強度、頻度をアドバイスしてくれます。
日々の生活の中で正しい姿勢を意識したり、温熱療法などを適切に活用したりすることも、痛みの管理には有効です。
この記事が、椎間板ヘルニアでお悩みの方が、安全にストレッチを取り入れ、症状の改善、そして痛みから解放された日常生活を取り戻すための一助となれば幸いです。焦らず、ご自身の体と向き合いながら、専門家と協力して、根気強くリハビリに取り組んでいきましょう。
免責事項:
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。椎間板ヘルニアの診断、治療、ストレッチを含むリハビリテーションについては、必ず医師や理学療法士といった専門家の指示に従ってください。本記事の情報に基づいて行った行動によって生じた結果については、一切の責任を負いかねます。