たったこれだけ!血圧を下げる方法【食事・運動・生活習慣】

高血圧と診断されたり、健康診断で血圧が高いと指摘されたりして、「血圧を下げるにはどうしたらいいのだろう?」と不安に感じている方は多いかもしれません。
高血圧は自覚症状が少ないからこそ、気づかないうちに心臓病や脳卒中などの深刻な病気のリスクを高めてしまいます。
しかし、悲観する必要はありません。日々のちょっとした心がけや生活習慣の見直しによって、血圧をコントロールし、健康リスクを減らすことは十分に可能です。
この記事では、血圧を下げるために今日から始められる具体的な方法を、食事、運動、生活習慣など、様々な視点から詳しく解説します。ご自身のペースでできることから取り入れて、高血圧改善への第一歩を踏み出しましょう。

血圧が高い状態が続くと、血管は常に強い圧力を受け続け、次第に硬く弾力性を失っていきます。これが動脈硬化です。
動脈硬化が進むと、心臓や脳、腎臓などに大きな負担がかかり、狭心症や心筋梗塞、脳卒中、腎不全といった重篤な病気を引き起こす可能性が高まります。これらの病気は命にかかわるだけでなく、後遺症が残ることも少なくありません。

血圧を下げるための基本的なアプローチは、主に以下の3つです。

  • 生活習慣の改善: 食事の見直し、適度な運動、禁煙、節酒、ストレス管理、睡眠不足の解消、体重管理など、日々の生活習慣を改めることが高血圧治療の基本であり、最も重要です。

  • 薬物療法: 生活習慣の改善だけでは目標とする血圧値に達しない場合や、血圧が非常に高い場合、合併症のリスクが高い場合などに、医師の判断で降圧薬が処方されます。

  • 定期的な健康チェック: 自身の血圧値を把握し、治療の効果を確認するためにも、家庭での血圧測定や定期的な健康診断、医師の診察を受けることが大切です。

この記事では、まずご自身で取り組める生活習慣の改善策を中心に、具体的な方法を解説していきます。薬物療法については、あくまで医師の指示に従うべきであることを強調します。

目次

食事で血圧を下げるには

食事は血圧に大きな影響を与える要素の一つです。特に塩分の摂りすぎは、体内の水分量を増やし、血管を収縮させる作用があるため、血圧を上げる主な原因となります。一方で、カリウムや食物繊維、特定の栄養素を含む食品は、血圧を下げる効果が期待できます。

塩分摂取量を減らす工夫

日本人は比較的塩分摂取量が多い傾向にあります。目標とすべき塩分摂取量は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人男性は1日7.5g未満、成人女性は1日6.5g未満とされています。そして、高血圧患者の場合は、さらに少なく1日6g未満が望ましいとされています。これは小さじ1杯の食塩が約6gに相当することを考えると、かなり厳しい目標です。

しかし、日々の食事で少しずつ工夫することで、減塩は十分に可能です。以下に具体的な工夫をいくつかご紹介します。

  • 調味料の量を減らす: 醤油、味噌、ソース、ドレッシングなどの使用量を意識して減らしましょう。かけるより「つける」、少量でも風味豊かなものを選ぶといった工夫が有効です。

  • だしや香辛料を活用する: 昆布やかつお節などでしっかりだしをとることで、薄味でも美味しく感じられます。また、わさび、しょうが、カレー粉、唐辛子、レモン汁、酢などの香辛料や酸味を利用することで、塩分を減らしても味の満足度を保てます。

  • 加工食品やインスタント食品を控える: ハム、ソーセージ、漬物、麺類のスープ、レトルト食品、スナック菓子などには多くの塩分が含まれています。これらの摂取頻度や量を減らすことから始めましょう。表示されている栄養成分表示を確認し、塩分量(食塩相当量)が少ないものを選ぶ習慣をつけることも大切です。

  • 外食・中食に注意する: 外食やコンビニ弁当、惣菜などは味付けが濃い傾向にあります。麺類のスープは飲まない、定食の場合はご飯の量を増やして薄味のおかずとバランスをとる、惣菜を選ぶ際は成分表示を確認するといった工夫が必要です。

  • 新鮮な食材を選ぶ: 新鮮な肉、魚、野菜は素材そのものの味がしっかりしているので、少ない調味料でも美味しく調理できます。

  • 減塩タイプの調味料を活用する: 減塩醤油や減塩味噌などを利用するのも一つの方法ですが、これらにも塩分は含まれているため、使いすぎには注意が必要です。

まずは「隠れ塩分」の多い加工食品や外食を減らすことから始めると、意外と簡単に塩分摂取量を減らせる場合があります。

カリウムを豊富に含む食べ物

カリウムは、体内の余分なナトリウム(塩分の成分)を体外に排出する働きがあり、血圧を下げる効果が期待できるミネラルです。カリウムは多くの食品に含まれていますが、特に野菜、果物、海藻、きのこ類、豆類などに豊富です。

カリウムを多く含む代表的な食品を以下に示します。

食品群 具体的な食品例 備考
野菜 ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、トマト、なす 生で食べるか、汁ごと摂れるスープなどが効果的
果物 バナナ、メロン、アボカド、キウイフルーツ 摂りすぎると糖分の問題もあるため適量に
海藻類 ひじき、わかめ、昆布 乾燥品より生の方が含有量が多い場合も
きのこ類 しめじ、えのき、しいたけ 汁物や炒め物など幅広く使える
豆類 大豆、枝豆、いんげん豆 煮物や豆腐など
いも類 じゃがいも、さつまいも 加熱しても比較的減りにくい

カリウムは水溶性のため、茹でたり煮たりすると煮汁に溶け出しやすい性質があります。効率的に摂るには、生で食べるか、スープや味噌汁のように汁ごと摂れる調理法がおすすめです。ただし、腎臓病などでカリウム制限がある方は、必ず医師や管理栄養士に相談してください。

血圧を下げる効果が期待できる食品・飲み物

塩分を控える、カリウムを積極的に摂ることに加えて、特定の食品や栄養素も血圧コントロールに役立つ可能性があります。

  • DHA・EPA(オメガ3脂肪酸): 魚、特に青魚(サバ、イワシ、アジなど)に豊富に含まれるDHAやEPAは、血液をサラサラにし、血管の健康を保つ効果が期待されています。週に数回は魚を食べるように心がけましょう。

  • 食物繊維: 野菜、果物、きのこ、海藻、豆類、全粒穀物などに豊富な食物繊維は、血糖値の上昇を抑えるだけでなく、ナトリウムの排出を助けたり、腸内環境を改善したりすることで血圧に良い影響を与えると考えられています。

  • 大豆製品: 豆腐、納豆、味噌などの大豆製品は、良質なたんぱく質や食物繊維、カリウムなどを含んでいます。ただし、味噌汁は塩分が多いので具沢山にする、減塩味噌を使うなどの工夫が必要です。

  • : 酢に含まれる酢酸には、血圧上昇に関わるホルモンの働きを抑える可能性があると言われています。料理に酢を取り入れたり、酢を使ったドリンクを適量飲んだりするのも良いでしょう。

  • 緑茶: 緑茶に含まれるカテキンには、血圧上昇を抑える効果が期待されています。

  • コーヒー: 最新の研究では、適量のコーヒー摂取は心血管疾患リスクを上げない、あるいはむしろ下げる可能性も示唆されています。ただし、飲みすぎはカフェインの影響で一時的に血圧を上げることもありますし、砂糖やミルクをたっぷり入れるとカロリー過多になるため、ブラックコーヒーを適量(1日2~3杯程度まで)楽しむのが良いでしょう。

これらの食品や飲み物も、特定の栄養素だけを過剰に摂取するのではなく、バランスの取れた食事の一部として取り入れることが大切です。

ナトカリ比とは?

ナトカリ比とは、摂取したナトリウム量とカリウム量の比率のことです。ナトリウムを摂りすぎず、同時にカリウムを十分に摂ることが、血圧管理において非常に重要であるという考え方に基づいています。

理想的なナトカリ比は、概ね「ナトリウム:カリウム=1:2以上」が良いとされています。つまり、カリウム摂取量をナトリウム摂取量の2倍以上にすることを目指します。

多くの加工食品や外食が多い食事では、ナトリウム摂取量が過剰になりがちな一方で、カリウム摂取量が不足しがちです。そのため、ナトカリ比は「ナトリウムが多いのにカリウムが少ない」というバランスになりやすいのです。

意識的にカリウムの多い野菜や果物、海藻などを増やすことで、自然とナトカリ比を理想的なバランスに近づけることができます。例えば、以下のような食品の組み合わせを考えると、ナトカリ比を改善しやすいことがわかります。

食品例(目安量) ナトリウム量(mg) カリウム量(mg) ナトカリ比(N:K) 備考
白米ご飯 茶碗1杯 (150g) 0 45 0:45 主食はカリウム源にもなる
食パン 6枚切り 1枚 270 45 270:45 パン類はナトリウムが多い傾向
わかめと豆腐の味噌汁 1杯 400 120 400:120 味噌汁はナトリウムが多い、具でK補給
バナナ 1本 (100g) 0 360 0:360 優れたカリウム源
きゅうりの浅漬け 30g 300 60 300:60 漬物はナトリウムが非常に多い
ほうれん草のおひたし 50g 5 345 5:345 茹でる前の値、茹でるとカリウムは減
茹でブロッコリー 50g 5 230 5:230 カリウムが多い

この表からもわかるように、加工度の低い食品や野菜・果物はカリウムが多く、加工食品や漬物、パン類はナトリウムが多い傾向にあります。食事全体のナトカリ比を改善するためには、減塩と同時に野菜や果物の摂取量を増やすことが両輪となります。

運動で血圧を下げるには

適度な運動は、血圧を下げるために非常に効果的な方法の一つです。運動によって血管の柔軟性が高まり、血液の流れがスムーズになることで、血圧が安定しやすくなります。また、運動は体重管理やストレス解消にもつながるため、多方面から血圧に良い影響を与えます。

おすすめの運動の種類とポイント

血圧を下げるために特におすすめなのは、有酸素運動です。有酸素運動とは、酸素を取り込みながら比較的弱い負荷を体にかける運動で、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳、水中ウォーキング、エアロビクスなどがこれにあたります。

有酸素運動のポイントは以下の通りです。

  • 少し息がはずむ程度の強度: 楽すぎず、きつすぎない、「笑顔で続けられる」くらいの強度が目安です。心拍数が少し上がる程度が良いでしょう。高強度の運動はかえって血圧を急上昇させる可能性があるため、避けましょう。

  • 継続できるものを選ぶ: 自分が楽しめる運動を選ぶことが、継続の鍵です。ウォーキングであれば、景色を楽しみながら、誰かと話しながらなど、工夫してみましょう。

  • 全身を使う運動: 全身の大きな筋肉を使うことで、より効果的に血行促進や脂肪燃焼が期待できます。

有酸素運動に加えて、軽い筋力トレーニングも血圧を下げる効果が期待できます。ただし、重いものを持ち上げるような高負荷の筋力トレーニングは、一時的に血圧を大きく上げるため、高血圧の方は避けるべきです。自分の体重を利用したスクワットや腕立て伏せ、軽いダンベルを使った運動など、無理のない範囲で行いましょう。

また、運動前のストレッチは、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進する効果があります。血圧を下げる直接的な効果は限定的かもしれませんが、体を動かす準備として、またリラクゼーションとしても有効です。

運動をする際は、以下の点に注意しましょう。

  • 体調が良いときに行う: 体調が優れないとき、睡眠不足のときなどは無理をせず休みましょう。

  • 食後すぐは避ける: 食後1時間程度は消化のために血液が胃腸に集まるため、運動は避けましょう。

  • 十分な水分補給: 運動前、運動中、運動後に水分をしっかり摂りましょう。特に夏場は熱中症予防のためにも重要です。

  • 急な中断・開始をしない: 運動の始めと終わりには、ウォーミングアップとクールダウンを取り入れましょう。

運動の頻度と時間はどのくらい?

血圧を下げる効果を得るためには、継続することが最も重要です。一般的に推奨されている運動の頻度と時間は以下の通りです。

  • 頻度: 毎日行うのが理想的ですが、難しければ週に3~4回以上を目指しましょう。週に合計で150分以上の有酸素運動を行うことが目標とされています。

  • 時間: 一度に長時間行うよりも、10分程度の運動を1日に数回行うことでも効果が期待できます。例えば、通勤時に一駅分歩く、昼休みに散歩する、買い物の際に遠回りするなど、日常生活の中で「ちょい足し」するだけでも積み重ねれば大きな効果になります。

特に運動習慣がなかった方は、まずは1日10分からでも良いので、無理のない範囲で始めて、徐々に頻度や時間を増やしていくのが継続のコツです。毎日続けることが難しくても、「昨日はできなかったけど今日はやろう」という気持ちで、気負わずに取り組みましょう。

「ためしてガッテン」で紹介された運動方法

NHKの「ためしてガッテン」(現:ガッテン!)では、過去に高血圧対策として様々な運動方法が紹介され、話題となりました。いくつか例を挙げます。

  • 貧乏ゆすり: 座っているときに無意識に行う貧乏ゆすりには、ふくらはぎの筋肉を収縮させることで血行を促進し、血管を柔らかくする効果があるという内容が紹介されました。デスクワークなどで長時間座っていることが多い方でも手軽にできる方法として注目されました。ただし、あくまで補助的なものとして捉え、マナーには配慮が必要です。

  • かかと落とし: つま先立ちになり、ストンとかかとを下ろす運動も、骨や筋肉に刺激を与え、血行促進につながると紹介されたことがあります。これも場所を選ばず手軽にできる運動です。

これらの「ためしてガッテン」で紹介された運動は、日常生活の中で意識的に取り入れやすいというメリットがあります。ただし、テレビ番組で紹介された情報は、放送当時の知見に基づいている場合や、すべての人に同じ効果があるとは限らない点に留意が必要です。正規のガイドラインで推奨されている有酸素運動や筋力トレーニングを基本としつつ、これらの手軽な運動も補助的に取り入れてみるのが良いでしょう。重要なのは、「体を動かす」という習慣を身につけることです。

生活習慣で血圧を下げるには

食事や運動だけでなく、日々の様々な生活習慣が高血圧と密接に関わっています。体重管理、アルコール摂取、喫煙、ストレス、睡眠、そして冬場の室温なども、血圧に影響を与える要因です。これらの生活習慣を見直すことも、血圧を下げるためには欠かせません。

適正体重の維持

肥満、特に内臓脂肪の蓄積は血圧を上昇させる大きな要因の一つです。体重が増えると、全身の血管にかかる負担が増え、血液量も増えるため、心臓はより強く血液を送り出す必要が生じ、結果として血圧が上がります。

ご自身の適正体重を知る目安として、BMI(Body Mass Index)があります。
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
で計算でき、BMI 25以上が肥満と判定されます。高血圧の方は、まずはBMI 25未満、あるいはそれ以下を目指すことが推奨されます。

たとえ極端な肥満でなくても、現在の体重から数キロ減量するだけでも、血圧の改善が見られることが多いと言われています。例えば、体重の3~5%を減らすだけでも効果が期待できるとされています。

減量には、無理な食事制限や過酷な運動は禁物です。リバウンドしやすく、体調を崩す原因にもなりかねません。食事の見直し(特に間食や高カロリーな食事を控える)と適度な運動を組み合わせ、継続可能な範囲で、ゆっくりと体重を減らしていくことが大切です。1ヶ月に1~2kg程度のペースが理想的です。

アルコールは控えめに

アルコールを摂りすぎると、一時的に血圧が上昇し、習慣的な多量飲酒は慢性的な高血圧の原因となります。また、アルコールは食欲を増進させたり、おつまみとして塩分やカロリーの高いものを摂りすぎたりする原因にもなります。

高血圧の予防・改善のためには、アルコール摂取量を控えることが重要です。飲酒する際は、以下の目安量を参考にしましょう。

  • 適量: 純アルコール量で、男性は1日20g以下、女性は1日10g以下が目安とされています。

    • 純アルコール20gに相当するお酒の例: ビール中瓶1本 (500ml)、日本酒1合 (180ml)、ワイン1/4本 (約180ml)、ウイスキーダブル1杯 (60ml)。
  • 休肝日: 週に1~2日はアルコールを全く飲まない「休肝日」を設けることも大切です。

全く飲まないに越したことはありませんが、難しい場合は量を減らす、飲む頻度を減らすといった工夫から始めましょう。

禁煙の重要性

喫煙は、血圧を上昇させるだけでなく、動脈硬化を強力に促進する最大の危険因子の一つです。タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させ、一時的に血圧と心拍数を上昇させます。また、タバコの煙に含まれる有害物質は血管の内側を傷つけ、動脈硬化を進めます。

喫煙習慣がある高血圧の方が禁煙すると、血圧が改善されるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中といった命にかかわる病気のリスクを大幅に下げることができます。禁煙に「遅すぎる」ということはありません。今日からでも遅くないので、禁煙に挑戦しましょう。

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診したり、禁煙補助薬(ニコチンパッチや飲み薬)を利用したりすることも有効です。医師や薬剤師に相談してみましょう。

ストレスをためない工夫

精神的なストレスは、交感神経を刺激し、血管を収縮させて血圧を上昇させることがあります。一時的なストレスによる血圧上昇は健康な人でも起こりますが、慢性的なストレスは高血圧のリスクを高める可能性があります。

ストレスを全くなくすことは難しいですが、上手に付き合っていくことが重要です。以下のような方法でストレスを解消・軽減する工夫を取り入れましょう。

  • リラクゼーション: 深呼吸、瞑想、ヨガ、アロマセラピーなど、自分がリラックスできる方法を見つけましょう。

  • 趣味や楽しみを持つ: 仕事や日常から離れて、好きなこと、楽しいことに没頭する時間を持つことも大切です。

  • 適度な運動: 運動はストレス解消にも非常に効果的です。体を動かすことで気分転換になり、心身のリフレッシュにつながります。

  • 十分な休息: 忙しい毎日でも、休息する時間を意識的に確保しましょう。

  • 誰かに相談する: 抱え込まず、信頼できる家族や友人、専門家などに話を聞いてもらうことも有効です。

睡眠不足の改善

慢性的な睡眠不足や睡眠の質の低下は、交感神経を優位にさせ、血圧を高い状態に保ってしまう可能性があります。高血圧の方の中には、睡眠時無呼吸症候群など、睡眠の質に関わる病気が隠れている場合もあります。

適切な睡眠時間には個人差がありますが、一般的には7~8時間程度の睡眠が推奨されています。ご自身にとって最適な睡眠時間を確保し、質の高い睡眠をとるための工夫を取り入れましょう。

  • 規則正しい生活: 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけましょう。

  • 寝る前にカフェインやアルコールを控える: これらは睡眠を妨げる可能性があります。

  • 寝る前のスマホやPC操作を控える: 画面のブルーライトが脳を覚醒させてしまいます。

  • 快適な睡眠環境: 寝室の温度、湿度、明るさ、騒音などを調整し、眠りやすい環境を作りましょう。

  • 寝る前のリラックスタイム: 温かいお風呂に入る、軽い読書をするなど、心身をリラックスさせる習慣を取り入れましょう。

室温調整のポイント

特に冬場は、急激な温度変化が血圧に大きな影響を与えることがあります。暖かい場所から寒い場所へ移動した際に、体温を保とうとして血管が収縮し、急激に血圧が上昇することがあります。これは「ヒートショック」と呼ばれ、高血圧の方や高齢者にとっては、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす危険な現象です。

ヒートショックを防ぐために、冬場は家の中の温度差を小さくする工夫をしましょう。

  • 脱衣所や浴室の暖房: 入浴前に脱衣所や浴室を暖めておきましょう。

  • トイレや廊下なども暖める: 普段あまり暖房を使わない場所も、可能であれば温度差をなくすように暖めましょう。

  • 寝室の温度調整: 寝る前に暖房を入れておく、エアコンのタイマー機能を活用するなどして、寒すぎないように調整しましょう。

  • 厚着をする: 服装で体温調整することも大切です。

部屋ごとの温度差をなくすことで、体への負担を減らし、血圧の急激な変動を防ぐことができます。

即効性のある血圧対策はある?

血圧が高い状態が続くと、すぐにでも血圧を下げたいと思うかもしれません。しかし、自己判断で急激に血圧を下げるのは危険な場合もあります。

緊急時の対応

めまいや強い頭痛、吐き気などを伴うような、普段とは明らかに違う異常な高血圧(例えば、上の血圧が200mmHgを超えるような場合)は、脳出血や心筋梗塞などの緊急性の高い状態の兆候である可能性があります。このような場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。救急車を呼ぶことも含めて検討してください。

血圧が多少高いだけで特に症状がない場合でも、焦って無理に血圧を下げようとするのは禁物です。急激な血圧低下は、脳への血流を減少させ、めまいやふらつき、失神などを引き起こす可能性があります。まずは落ち着いて、後述するようなリラックスできる方法を試み、速やかに医療機関を受診して医師の指示を仰ぐことが最も安全で確実な対応です。

血圧をすぐに下げるツボについて

インターネットなどで「血圧をすぐに下げるツボ」として紹介されている情報を見かけることがあるかもしれません。例えば、首の後ろや手にある特定のツボを刺激すると血圧が下がるといったものです。

しかし、これらのツボ押しやマッサージが医学的に血圧をすぐに、かつ確実に下げる効果があるという科学的な根拠は確立されていません。ツボ押しやマッサージによってリラックス効果が得られ、一時的に血圧が落ち着く可能性はありますが、それは血圧を下げる根本的な治療にはなり得ません。

高血圧治療の基本は、生活習慣の改善と医師から処方された薬を正しく服用することです。ツボ押しやマッサージを行う場合は、あくまでリラクゼーションを目的とした補助的なものとして捉え、正規の治療に代わるものとして過信しないように注意が必要です。もし、血圧が急に高くなって不安な場合は、ツボを探すよりもまず落ち着いて、医療機関に連絡することをお勧めします。

血圧を下げる薬について

生活習慣の改善をしっかり行っても目標とする血圧値に達しない場合や、血圧が非常に高い場合、心血管疾患などの合併症のリスクが高いと判断された場合などには、医師の判断で降圧薬が処方されます。

降圧薬の役割

降圧薬は、様々なメカニズムで血圧を下げる働きをします。血管を広げて血液の流れをスムーズにしたり、体内の水分や塩分を排出して血液量を減らしたり、血圧を上げるホルモンの働きを抑えたりするなど、多くの種類があります。

降圧薬は、血圧を高いまま放置することで起こる心臓病や脳卒中などのリスクを減らすために非常に重要な役割を果たします。薬を飲むことに抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、高血圧によって将来起こりうる深刻な病気を防ぐための大切な手段です。

ただし、降圧薬は高血圧そのものを「完治」させるものではなく、あくまで血圧を目標値にコントロールするためのものです。薬を飲んで血圧が正常値になっても、高血圧体質が治ったわけではありません。自己判断で薬を中止したり、減量したりすると、再び血圧が上昇し、かえって危険な状態になる可能性があります。

医師との相談の重要性

降圧薬による治療を開始するかどうか、どの種類の薬を選ぶか、どのくらいの量にするかなどは、患者さん一人ひとりの血圧の高さ、年齢、体質、他の病気の有無、服用している他の薬などを総合的に考慮して、必ず医師が判断します

降圧薬にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や副作用が異なります。また、他の病気で服用している薬との飲み合わせ(相互作用)にも注意が必要です。

  • 自己判断で薬の量を増やしたり減らしたりしない

  • 自己判断で薬を中止しない

  • 他の病院やクリニックを受診する際は、必ず服用中の降圧薬について伝える

  • 市販薬やサプリメントなどを服用する際も、念のため医師や薬剤師に相談する

血圧のコントロールは長期にわたる場合がほとんどです。医師としっかりとコミュニケーションをとり、疑問点や不安な点があれば遠慮なく質問し、納得した上で治療を続けることが大切です。定期的に受診して血圧や体調の変化を医師に伝え、必要に応じて薬の調整をしてもらいましょう。

監修者情報

(ここに監修者の情報が入ります)

よくある質問

高血圧に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

ED治療薬・漢方・精力剤の違いは?

これは高血圧とは直接関係のない質問ですが、もし健康に関する一般的な疑問としてお答えするなら、それぞれ目的や効果のメカニズムが異なります。

  • ED治療薬: 勃起不全(ED)の原因である血流障害などを改善し、勃起をサポートする医療用医薬品です。特定の疾患に対して医師が処方します。

  • 漢方: 東洋医学に基づき、体全体のバランスを整えることで症状の改善を目指すものです。血圧を下げる目的で使われる漢方薬もありますが、効果の現れ方や強さは西洋薬とは異なります。

  • 精力剤: 主に滋養強壮や疲労回復を目的としたもので、食品やサプリメントに分類されることが多いです。医学的な治療効果は確認されていないものがほとんどです。

高血圧治療において、医学的に効果が認められているのは降圧薬です。漢方薬を使用する場合は医師に相談し、精力剤は血圧への影響が不明なものもあるため注意が必要です。

若い人でも高血圧になる?

はい、若い人でも高血圧になることはあります。かつて高血圧は高齢者に多い病気と考えられていましたが、食生活の変化(高塩分・高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレス、喫煙などの影響で、20代や30代といった若い世代でも高血圧が増加傾向にあります

若い頃からの高血圧を放置すると、血管へのダメージが蓄積され、将来的に心血管疾患を発症するリスクが高まります。若いからと油断せず、健康診断などで血圧が高いと指摘されたら、早めに生活習慣を見直し、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。

高血圧は遺伝する?

高血圧には遺伝的な要因も関係していると考えられています。両親や兄弟に高血圧の方がいる場合、そうでない場合に比べて高血圧になるリスクは高まります。

しかし、遺伝だけで高血圧が決まるわけではありません。遺伝的な体質に加えて、食塩の摂りすぎ、肥満、運動不足、喫煙、多量飲酒、ストレスといった環境要因(生活習慣)が大きく影響します。たとえ高血圧になりやすい体質を持っていても、健康的な生活習慣を心がけることで、発症を予防したり、発症しても重症化を防いだりすることが可能です。

健康食品やサプリメントで血圧は下がる?

血圧を下げる効果を謳う健康食品やサプリメントが多数販売されています。これらの中には、GABA、特定のペプチド、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれているものがあります。

一部の成分については、血圧を下げる効果を示唆する研究結果もあります。しかし、その効果は医薬品ほど確実で強力ではなく、効果が出るまでに時間がかかったり、個人差が大きかったりします。また、製品によって成分量や品質にばらつきがあることもあります。

健康食品やサプリメントは、あくまで「食品」であり、医薬品のように病気を治療する目的で使うものではありません。高血圧の治療が必要な方が、健康食品やサプリメントだけに頼って正規の治療(生活習慣の改善や薬物療法)を行わないのは非常に危険です。

もし健康食品やサプリメントを試したい場合は、必ず事前に医師に相談しましょう。服用中の薬との飲み合わせなど、思わぬ健康被害につながる可能性もゼロではありません。

血圧を下げる運動として筋トレはダメ?

前述の通り、高負荷の筋力トレーニングは一時的に血圧を大きく上昇させる可能性があるため、高血圧の方には推奨されません。特に、息を止めて重いものを持ち上げるような運動は血管に強い負担をかけます。

しかし、軽い負荷で行う筋力トレーニングであれば、血圧を下げる効果も期待できます。例えば、自分の体重を利用したスクワットや腕立て伏せ、軽い負荷でのマシントレーニングなどです。筋肉量を維持・増加させることは、基礎代謝を上げて体重管理に役立ったり、血糖コントロールにも良い影響を与えたりするため、高血圧を含む生活習慣病の改善に有効です。

重要なのは、無理のない範囲で、正しいフォームで行うことです。どの程度の負荷なら大丈夫か分からない場合は、医師や運動指導の専門家(理学療法士や健康運動指導士など)に相談することをおすすめします。有酸素運動を中心に、補助的に軽い筋力トレーニングを取り入れるのが良いでしょう。

まとめ

「血圧を下げるには」という課題に対して、最も重要かつ効果的なのは、日々の生活習慣を見直すことです。塩分を控え、カリウムをたっぷり摂る食事、適度な有酸素運動、適正体重の維持、禁煙、節酒、ストレス管理、十分な睡眠、冬場の室温調整など、今日から始められる具体的な方法はたくさんあります。

これらの生活習慣の改善は、血圧を下げるだけでなく、糖尿病や脂質異常症といった他の生活習慣病の予防・改善にもつながり、体全体の健康にとって非常に良い影響を与えます。

ただし、生活習慣の改善だけでは血圧が目標値まで下がらない場合や、血圧が非常に高い場合は、医師の判断で降圧薬による治療が必要になります。薬物療法が必要になったとしても、それは決して失敗ではありません。将来の重大な病気を防ぐための大切なステップです。

最も危険なのは、高血圧を放置したり、自己判断で治療を中断したりすることです。ご自身の血圧に関することで不安なことや疑問なことがあれば、一人で悩まず、必ず医療機関を受診して医師に相談してください。医師はあなたの状態を把握し、最適な治療法を提案してくれます。

高血圧の改善は、一朝一夕にできるものではありません。焦らず、ご自身のペースで、できることから一つずつ取り組んでいくことが成功の鍵です。この記事が、あなたの高血圧改善への一助となれば幸いです。

免責事項

この記事は、一般的な情報提供を目的として作成されており、医学的な診断や治療法を示すものではありません。個別の症状に関する診断や治療については、必ず医師にご相談ください。この記事の情報に基づいて行った行為によって生じた一切の責任は負いかねますので、ご了承ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次