産後の抜け毛はいつまで続く?原因と今日から始める対策ケア

産後、髪の毛の量が急に減って驚いているという方は少なくありません。鏡を見るたびにため息をついてしまったり、ブラッシングするたびにゴッソリと抜ける髪に不安を感じたりする方もいるでしょう。
産後の抜け毛は、多くの女性が経験する一時的な生理現象です。しかし、「いつまで続くのだろう?」「何か病気なのでは?」といった疑問や不安を抱えるのは当然のことです。

この記事では、産後抜け毛の主な原因から、いつ頃始まりいつ頃落ち着くのか、そしてご自身でできる対策や、専門機関に相談すべき目安について詳しく解説します。
産後の抜け毛を正しく理解し、不安を少しでも和らげ、適切なケアを見つける手助けになれば幸いです。

目次

産後抜け毛の原因とは?

産後の抜け毛は、医学的には「分娩後脱毛症(ぶんべんごだつもうしょう)」と呼ばれ、多くの女性が経験する自然な体の変化です。
妊娠・出産を経て、体の様々な機能が劇的に変化する中で起こる現象の一つです。
その主な原因は、女性ホルモンの急激な変化と、産後の生活習慣やストレスが複雑に絡み合っていることにあります。

女性ホルモンの急激な変化

妊娠中は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が普段よりも大幅に増加します。
エストロゲンには、髪の成長期を長く保つ働きがあります。
通常、髪の毛には「成長期」「退行期」「休止期」というヘアサイクルがあり、全体の約85~90%が成長期、1%が退行期、10~15%が休止期にあります。
休止期に入った髪はやがて自然に抜け落ち、その後再び成長期が始まります。

妊娠中はエストロゲンが増えることで、本来なら休止期に入って抜け落ちるはずだった髪の毛も、成長期やそれに近い状態が長く維持されます。
これにより、妊娠中は髪の毛が普段よりも抜けにくく、量が増えたように感じたり、ハリやコシが出たと感じたりする方が多いです。

しかし、出産を終えると、それまで大量に分泌されていたエストロゲンが急激に減少します。
この急激なホルモンバランスの変化により、妊娠中に抜けずにいたたくさんの髪の毛が一斉に休止期へと移行します。
そして、休止期に入った髪の毛が、産後数ヶ月経過した頃からまとめて抜け落ち始めます。
これが産後抜け毛の最大の原因と考えられています。
エストロゲンが減少することで、ヘアサイクルが正常な状態に戻る過程で起こる現象と言えます。

まるで、妊娠中にため込んでいた抜け毛が一気に来るようなイメージです。
普段の抜け毛はヘアサイクルの過程で少しずつ起こりますが、産後はまとめて多くの髪が休止期から抜けるため、量が多く感じられるのです。

生活習慣やストレスの影響

女性ホルモンの変化が産後抜け毛の主な引き金ですが、産後の生活習慣や精神的なストレスも抜け毛を悪化させる要因となり得ます。

産後の生活は、赤ちゃんのお世話を中心に一変します。
授乳やおむつ替え、夜泣き対応などで睡眠不足に陥りやすく、昼夜逆転の生活になることも珍しくありません。
慢性的な睡眠不足は、体の回復を妨げ、血行不良やホルモンバランスの乱れを招き、髪の成長にも悪影響を与えます。

また、出産による体のダメージからの回復に加え、初めての育児によるプレッシャー、慣れない環境での生活、夫婦関係の変化など、精神的なストレスも非常に大きくなります。
過度なストレスは自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こし、頭皮の血行不良を招いたり、髪の成長に必要な栄養供給を妨げたりすることがあります。

さらに、産後は自身の食事を十分に摂る時間がなかったり、バランスの偏った食事になったりしがちです。
栄養バランスの乱れは、髪の毛を作るために必要なタンパク質やビタミン、ミネラルなどの供給を不足させ、健康な髪の成長を妨げる可能性があります。

このように、産後の抜け毛はホルモン変化だけでなく、睡眠不足、ストレス、栄養不足といった様々な要因が複合的に影響し合って起こるのです。

産後抜け毛はいつからいつまで?ピークは?

産後の抜け毛が始まると、「一体いつまでこの状態が続くのだろう」と不安になりますよね。
産後抜け毛には一般的な経過があり、時期を知っておくことで、過度な心配をせずに済むかもしれません。

抜け毛が始まる時期

産後抜け毛は、一般的に出産から2ヶ月〜4ヶ月頃に始まると言われています。
妊娠中にエストロゲンによって成長期が延長されていた髪の毛が、産後のホルモン減少により一斉に休止期に入り、その後抜け落ちるまでに約2~4ヶ月の期間がかかるためです。

出産直後や退院直後にすぐに大量に抜け始めるわけではありません。
少し落ち着いてきたかな、と思った頃に始まることが多いため、余計に驚く方もいるかもしれません。

抜け毛のピーク

抜け毛が最も多くなる、いわゆるピークは、産後4ヶ月〜6ヶ月頃に訪れることが多いです。
この時期は、一度に多くの髪が休止期から成長期へと移行する準備段階にあり、古い髪が新しい髪に押し出されるように抜けるため、抜け毛の量が最も多く感じられます。
お風呂の排水溝やブラシに溜まる髪の量を見て、ショックを受ける方も少なくありません。

このピークの時期は、多くの髪が一気に抜けるため見た目の変化も感じやすくなります。
分け目が目立つようになった、髪全体のボリュームが減った、といった悩みが顕著になるかもしれません。

落ち着く時期

産後抜け毛は一時的な現象であり、一般的には産後半年〜1年頃までには自然と落ち着いてくると言われています。
ピークを過ぎると徐々に抜け毛の量が減少し、新しい髪の毛が生え始めてきます。
短い毛や細い毛がツンツンと生えてくるのを確認できる方もいるでしょう。

抜け毛が落ち着き、元の髪のボリュームに戻るまでには、さらに数ヶ月から1年程度かかることもあります。
ヘアサイクルが完全に正常に戻るには時間がかかるため、焦らず経過を見守ることが大切です。

個人差について

ただし、これはあくまで一般的な目安であり、産後の抜け毛の時期や期間、程度には大きな個人差があります。

  • 抜け毛が始まる時期: 出産後1ヶ月頃から始まる人もいれば、6ヶ月頃から始まる人もいます。
  • 抜け毛のピーク: ピークの量や、それが続く期間も人それぞれです。
  • 落ち着く時期: 比較的早く落ち着く人もいれば、1年以上かかる人もいます。二人目、三人目と出産を経験する中で、抜け毛の程度や時期が変わることもあります。
  • 抜け毛の程度: 明らかに量が減ったと感じる人もいれば、ほとんど気にならない程度で済む人もいます。

これらの個人差は、妊娠中のホルモン分泌量、出産時の体の状態、産後の生活習慣、ストレスの程度、元々の髪質や量など、様々な要因によって影響されます。

もし目安の時期を過ぎても抜け毛が改善しない場合や、あまりにも量がひどく不安な場合は、この後で解説する「専門機関への相談」を検討することも大切です。

産後抜け毛がひどいと感じたら

「私の抜け毛、他の人よりひどい気がする…」と感じる場合、どのように判断すれば良いのでしょうか。
正常な産後抜け毛との比較や、他の薄毛の原因の可能性について考えてみましょう。

正常な抜け毛との比較

通常、健康な人でも1日に50本〜100本程度の髪の毛は自然に抜け落ちています。
これはヘアサイクルによるもので、新しい髪が生えるための自然な入れ替わりです。

産後抜け毛の場合、この通常の抜け毛に加えて、妊娠中に抜けなかった分の髪が一気に抜けるため、1日に200本〜300本、多い時には500本以上抜けることもあります。
洗髪時やブラッシング時にごっそり抜けるように感じたり、部屋の床に抜け毛が多く落ちているのを見て驚いたりするのは、このためです。

「ひどい」と感じるかどうかは主観的な部分も大きいですが、以下のような状態であれば、正常な範囲内である可能性が高いです。

  • 抜け毛の量: 一時的に通常より明らかに増えているが、特定の箇所だけでなく頭部全体から均等に抜けている。
  • 頭皮の状態: 赤みやかゆみ、フケなどの炎症がない。
  • 新しい髪: 抜け毛の増加と同時期か少し遅れて、短い毛や細い毛が地肌から生え始めているのを確認できる。
  • 期間: 出産後2~3ヶ月頃から始まり、半年頃にピークを迎え、1年以内には落ち着いてくる傾向がある。

もちろん、見た目で分け目が目立つようになったり、髪全体のボリュームが減ったりすることはありますが、地肌が完全に露出するほどの薄毛になることは稀です。

ただし、上記の目安を大幅に超えて抜け毛が続く場合(1年以上経っても改善しないなど)や、特定の箇所だけが極端に薄くなる場合は、注意が必要です。

他の薄毛の原因の可能性

産後に抜け毛が増える原因のほとんどは分娩後脱毛症ですが、中には産後の時期に重なって、別の原因による薄毛を発症したり、元々あった別の原因の薄毛が顕著になったりする可能性もゼロではありません。

例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • びまん性脱毛症: 女性に多く見られる脱毛症で、頭部全体から髪が均一に抜け、薄毛が進行します。原因はストレス、ダイエット、老化、ホルモンバランスの乱れなど様々で、産後のストレスや栄養不足が誘因となる可能性も考えられます。
  • 甲状腺疾患: 出産後に甲状腺ホルモンのバランスが崩れる「産後甲状腺炎」を発症することがあります。甲状腺ホルモンの異常は、全身の代謝に影響を与え、抜け毛を引き起こす原因の一つとなることがあります。疲れやすい、むくみ、体重の変化などの症状を伴うこともあります。
  • 鉄欠乏性貧血: 妊娠中や出産時に鉄分を多く消費するため、産後に貧血になりやすい方がいます。鉄分は髪の成長にも重要な栄養素であり、鉄分不足が抜け毛の原因となることがあります。
  • 円形脱毛症: 免疫系の異常により、コインのように丸く髪の毛が抜ける脱毛症です。ストレスが誘因となることもあり、産後のストレスが影響する可能性も考えられます。
  • 牽引性脱毛症: ポニーテールやエクステなど、髪や頭皮に物理的な牽引力が継続的にかかることで起こる脱毛症です。産後の抜け毛とは直接関係ありませんが、普段のヘアスタイルが原因となっている場合もあります。

もし、産後1年以上経っても抜け毛が改善しない、抜け毛の量が異常に多いと感じる、特定の場所だけが薄くなる、頭皮に炎症がある、抜け毛以外にも体調の変化(疲労感、体重の変化、動悸など)がある、といった場合は、産後の生理的な抜け毛ではない可能性も考慮し、専門機関に相談してみることをお勧めします。
次のセクションで、どのような場合に相談すべきか、詳しく解説します。

産後抜け毛への対策・セルフケア

産後抜け毛は一時的なものとはいえ、抜ける量を目の当たりにすると精神的な負担も大きいものです。
完全に防ぐことは難しいですが、体の回復を促し、健康な髪が再び成長しやすい環境を整えるためのセルフケアを行うことは有効です。

バランスの取れた食事

健康な髪の毛は、食事から摂取する栄養素を材料として作られます。
産後は赤ちゃんのお世話で忙しく、自分の食事は二の次になりがちですが、意識してバランスの良い食事を心がけることが大切です。

特に積極的に摂りたい栄養素は以下の通りです。

栄養素 役割 含まれる食品
タンパク質 髪の主成分(ケラチン)の材料となる。 肉、魚、卵、大豆製品(豆腐、納豆)、牛乳・乳製品など。
亜鉛 タンパク質の合成や細胞分裂に必要なミネラル。髪の成長をサポートする。 牡蠣、レバー、牛肉、チーズ、大豆製品など。
鉄分 全身に酸素を運ぶヘモグロビンの材料。頭皮への栄養・酸素供給に関わる。 レバー、赤身肉、マグロ、カツオ、ほうれん草、ひじき、大豆製品など。ビタミンCと一緒に摂ると吸収率UP。
ビタミンB群 代謝を助け、タンパク質の合成やエネルギー生成に関わる。頭皮や髪の健康を保つ。 豚肉、レバー、魚、卵、乳製品、大豆製品、緑黄色野菜など。特にビタミンB6、B12、葉酸などが重要。
ビタミンC コラーゲン生成に関わる。鉄分の吸収を助ける。抗酸化作用。 いちご、みかん、キウイ、ブロッコリー、ピーマンなど。
ビタミンE 血行促進作用。頭皮の血行を良くし、髪への栄養供給をサポート。 アーモンド、ヘーゼルナッツ、植物油(ひまわり油、アーモンド油)、アボカドなど。
ミネラル 髪の健康維持に必要な様々なミネラル(銅、セレン、ヨウ素など)が含まれる。 海藻類(わかめ、昆布)、ナッツ類、きのこ類など。バランス良く様々な食品から摂る。

特定の食品に偏るのではなく、主食、主菜、副菜を揃え、色とりどりの食材を食べることを意識しましょう。
自炊が難しい場合は、栄養バランスの整った宅配食サービスなどを利用するのも良いでしょう。

十分な睡眠と休息

産後の生活で最も確保が難しいのが睡眠時間かもしれません。
しかし、体の回復やホルモンバランスを整えるためには、十分な睡眠と休息が非常に重要です。
髪の毛の成長を促す成長ホルモンは、睡眠中に多く分泌されます。
睡眠不足は成長ホルモンの分泌を妨げ、ヘアサイクルにも悪影響を与えます。

まとまった睡眠時間を確保するのが難しくても、赤ちゃんが眠っている間に一緒に仮眠をとるなど、こまめに休息をとるように心がけましょう。
パートナーや家族に協力してもらい、夜間に数時間でも良いので、赤ちゃんのお世話から離れてゆっくり眠れる時間を作ることも大切です。

また、日中も無理せず、横になったりリラックスしたりする時間を持つことで、体の疲労回復を助け、ストレスを軽減することにつながります。

ストレスを軽減する

産後の生活は、喜びとともに大きなストレスも伴います。
ストレスは自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こし、抜け毛を悪化させる可能性があります。
ストレスを完全に無くすことは難しいですが、意識的に軽減するための方法を取り入れることが重要です。

  • 完璧を目指さない: 育児も家事も完璧にこなそうとせず、手を抜けるところは抜き、自分を責めすぎないようにしましょう。「今日はこれができたからOK」と自分を褒めることも大切です。
  • 休息や気分転換: 短時間でも良いので、自分の好きなこと(読書、音楽鑑賞、軽いストレッチなど)をする時間を作りましょう。家族に赤ちゃんを預けて、一人で散歩に出かけたり、カフェで休憩したりするのも良い気分転換になります。
  • 誰かに話を聞いてもらう: パートナーや家族、友人、産後の母親教室などで知り合った仲間など、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になります。
  • 専門機関のサポート: 育児に関する悩みや精神的な負担が大きい場合は、自治体の育児相談窓口や、心理カウンセリングなどを利用することも検討しましょう。

周囲に助けを求めることをためらわないでください。
一人で抱え込まず、利用できるサポートは積極的に利用しましょう。

正しいヘアケア・頭皮ケア

産後のデリケートな時期には、頭皮や髪に優しいヘアケアを心がけることも重要です。

  • シャンプーの選び方: 頭皮への刺激が少ない、アミノ酸系やベタイン系の洗浄成分を使用したシャンプーがおすすめです。
    石油系界面活性剤などの洗浄力が強すぎるシャンプーは、頭皮の必要な皮脂まで洗い流して乾燥させたり、刺激を与えたりする可能性があります。
    無添加やオーガニックと表記されていても、洗浄成分は確認しましょう。
    また、頭皮環境を整える成分(保湿成分、血行促進成分、抗炎症成分など)が配合されているものを選ぶのも良いでしょう。
  • 正しい洗髪方法:
    • シャンプー前に、ぬるま湯で頭皮と髪を十分にすすぎ、汚れをある程度落とします。
    • シャンプーを手のひらでよく泡立ててから頭皮に乗せます。
    • 爪を立てず、指の腹を使って優しく頭皮をマッサージするように洗います。ゴシゴシと力を入れすぎないことが大切です。
    • すすぎは念入りに行い、シャンプーやリンスの成分が頭皮に残らないようにしっかりと洗い流します。
  • ドライヤーの使い方: 濡れた髪はキューティクルが開いて傷みやすい状態です。
    洗髪後はタオルで優しく水分を拭き取り、早めにドライヤーで乾かしましょう。
    ただし、ドライヤーの熱を長時間同じ場所にあてたり、頭皮に近づけすぎたりすると、頭皮が乾燥したり傷んだりする原因になります。
    ドライヤーは頭皮から15~20cmほど離し、温風と冷風を使い分けながら、根元から毛先に向かって乾かすのがおすすめです。
  • 頭皮マッサージ: シャンプー時や入浴後などに、指の腹を使って頭皮全体を優しくマッサージすることで、血行促進効果が期待できます。
    リラックス効果もあり、ストレス軽減にもつながります。

産後抜け毛におすすめのシャンプー

前述したように、産後のデリケートな頭皮には、刺激の少ない洗浄成分(アミノ酸系、ベタイン系など)を使用したシャンプーが適しています。
加えて、以下のような成分が含まれているかどうかも、シャンプーを選ぶ際のポイントになります。

成分例 期待できる効果
保湿成分 グリセリン、ヒアルロン酸、セラミド、各種植物エキス(アロエベラ、カミツレなど)。頭皮の乾燥を防ぎ、バリア機能を保つ。
血行促進成分 センブリエキス、トコフェロール(ビタミンE)。頭皮の血行を良くし、髪への栄養供給を助ける。
抗炎症成分 グリチルリチン酸2K、アラントイン。頭皮のかゆみや炎症を抑え、健やかな頭皮環境を保つ。
天然由来成分 シアバター、ホホバオイル、アルガンオイルなどの植物オイル。髪や頭皮を保湿・保護する。

これらの成分表示を確認し、ご自身の頭皮の状態(乾燥しやすい、ベタつきやすいなど)や好みに合ったものを選びましょう。
ただし、特定の成分にアレルギーがある場合は注意が必要です。
不安な場合はパッチテストを行ったり、皮膚科医に相談したりすることをおすすめします。

産後抜け毛におすすめの育毛剤

産後抜け毛に特化した育毛剤も市販されています。
育毛剤は、頭皮環境を整えたり、血行を促進したりすることで、これから生えてくる髪の成長をサポートすることを目的としています。

育毛剤に含まれる主な成分とその働きは以下の通りです。

成分例 期待できる効果
血行促進成分 センブリエキス、ミノキシジル(医薬品)、パントテニルエチルエーテル、ニコチン酸アミド。頭皮の血行を改善し、毛根への栄養供給を増やす。
細胞活性化成分 アデノシン、t-フラバノン。毛母細胞や毛乳頭細胞の働きを活性化させ、髪の成長を促す。
女性ホルモン様成分 エチニルエストラジオール。女性ホルモンと似た働きで、ヘアサイクルを整えることを期待する。(医薬品に配合されることが多い)
保湿成分 ヒアルロン酸、コラーゲン、植物エキス。乾燥を防ぎ、頭皮を柔らかく保つ。
抗炎症成分 グリチルリチン酸2K、サリチル酸。頭皮の炎症を抑え、フケやかゆみを改善する。

市販の育毛剤は医薬部外品が多く、その効果は穏やかです。
使用する際は、商品の説明書をよく読み、正しく頭皮に塗布し、マッサージなどと合わせて継続的に使用することが大切です。
効果を実感するには、数ヶ月かかることが一般的です。

より高い効果を期待する場合や、市販のものでは不安な場合は、皮膚科や女性専門の薄毛治療クリニックで医師に相談し、医薬品成分が配合された育毛剤や、他の治療法についてアドバイスを受けることも可能です。
ただし、授乳中の場合は使用できる成分に制限があることもありますので、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。

使用上の注意:

  • 育毛剤は、発毛を確約するものではありません。
  • 肌に合わない場合は使用を中止し、医師に相談してください。
  • 効果を実感するまでには時間がかかることを理解しておきましょう。

産後抜け毛をカバーする髪型

抜け毛によって髪のボリュームが減ったり、分け目が目立ったりすると、外出がおっくうになったり、気分が落ち込んだりすることもあるでしょう。
ヘアスタイルを工夫することで、気になる部分を自然にカバーし、気分を明るくすることができます。

  • レイヤーを入れる: 髪全体に段を入れる(レイヤーカット)ことで、毛先に動きが出てボリュームがあるように見えます。
    重めのワンレングスよりも、軽やかなスタイルの方が、抜け毛によるボリュームダウンが目立ちにくくなります。
  • 前髪を作る・前髪の分け目を変える: 分け目が目立つ場合は、前髪を作ることで地肌が見える範囲をカバーできます。
    また、いつも同じ分け目にしていると、その部分の髪が薄くなりやすいこともあります。
    定期的に分け目を変えてみるのも良いでしょう。
  • 短いスタイルにする: ロングヘアよりも、ボブやショートヘアの方が、髪全体の重さがなくなるため、根元が立ち上がりやすくボリュームが出やすくなります。
    洗髪やドライヤーの時間も短縮できるため、産後の忙しい時期にはお手入れが楽というメリットもあります。
  • パーマやコテで動きをつける: 毛先にゆるくパーマをかけたり、コテで巻いたりして動きを出すことで、ボリュームアップしたように見せることができます。
    ただし、頻繁なパーマやカラーリングは髪や頭皮に負担をかける場合があるので、美容師さんと相談しながら慎重に行いましょう。
  • ヘアアクセサリーや帽子: カチューシャ、ヘアバンド、ターバン、帽子などを上手に活用することで、手軽に気になる部分をカバーできます。
    ファッションのアクセントにもなり、おしゃれを楽しむことができます。
  • スタイリング剤の活用: 軽めのワックスやスプレーを使い、髪の根元を立ち上げるようにセットしたり、毛先に動きを出したりすることで、ボリューム感を演出できます。
    ただし、頭皮に直接つけすぎたり、洗い残しがあったりすると、頭皮トラブルの原因になる可能性があるので注意が必要です。

これらのヘアスタイルの工夫は、あくまで一時的に見た目をカバーするためのものです。
根本的な抜け毛対策と並行して取り入れるのがおすすめです。
信頼できる美容師さんに相談して、ご自身の髪質や骨格に合ったスタイルを提案してもらうのも良いでしょう。

こんな場合は専門機関へ相談

産後抜け毛は多くの女性が経験する自然な現象であり、ほとんどの場合は時間とともに改善します。
しかし、中には専門機関に相談した方が良いケースもあります。

受診を検討する目安

以下のような場合は、産後の生理的な抜け毛ではない可能性や、他の要因が重なっている可能性も考えられるため、一度専門機関に相談してみることを検討しましょう。

  • 産後1年以上経っても抜け毛が改善しない、またはさらに進行している。
  • 抜け毛の量が異常に多く、短期間で急激に髪が減ったと感じる。
  • 頭部全体ではなく、特定の箇所だけが円形や帯状に抜ける(円形脱毛症の可能性)。
  • 頭皮に強いかゆみ、赤み、湿疹、大量のフケなどの炎症がある。
  • 抜け毛以外にも、著しい疲労感、むくみ、体重の急激な変化、動悸、便秘や下痢などの体調不良がある(甲状腺疾患や鉄欠乏性貧血などの可能性)。
  • 精神的な落ち込みがひどく、育児や日常生活に支障が出ている(産後うつなど、ストレスが抜け毛を悪化させている可能性)。
  • 市販の育毛剤やセルフケアを試しても変化が見られない、または不安が解消されない。
  • 家族や周囲の人からも「抜け毛が多い」「薄くなった」と指摘され、気になる。

これらの項目に当てはまる場合は、自己判断せずに専門家のアドバイスを求めることが大切です。
原因を特定し、適切な治療やケアについて guidance を受けることで、不要な心配を減らし、改善への道筋が見えてくるでしょう。

何科を受診すべき?

産後の抜け毛や薄毛に関する相談は、一般的に以下の科で受け付けています。

  • 皮膚科: 髪や頭皮の病気全般を専門としており、脱毛症の原因診断や治療(内服薬、外用薬、注射など)を行います。
    産後脱毛症かどうか、あるいは他の脱毛症や頭皮疾患がないかなどを診断してもらえます。
    一般的な産後抜け毛だけでなく、円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など、頭皮トラブルが原因の抜け毛にも対応しています。
  • 婦人科: 産後のホルモンバランスの乱れに関する相談が可能です。
    産後甲状腺炎など、女性ホルモンの異常が原因となっている場合の診断や、他の婦人科的な問題についても相談できます。
  • 内科: 貧血や甲状腺疾患など、全身の疾患が抜け毛の原因となっている可能性を調べる場合に受診します。
  • 女性専門の薄毛治療クリニック/AGAクリニック: 近年増えている、薄毛治療に特化した専門クリニックです。
    特に女性の薄毛(FAGAなど)にも対応しており、より専門的な診断や、多様な治療法(内服薬、外用薬、メソセラピー、植毛など)の選択肢がある場合があります。
    産後の薄毛についても相談を受け付けているクリニックが多く、最新の治療法について情報収集することも可能です。

まずは、お近くの皮膚科に相談してみるのが一般的です。
もし全身的な症状も伴う場合は、内科や婦人科と連携して診察を受けることもあります。
専門の薄毛治療クリニックを受診する際は、費用や治療内容について事前にしっかり確認しましょう。

受診する際は、いつ頃から抜け毛が始まったか、どのくらいの量抜けているか、他に気になる症状はあるか、基礎疾患や内服中の薬はあるか、などを医師に正確に伝えることが診断の助けとなります。

相談先 特徴
皮膚科 髪・頭皮の病気全般を診断・治療。他の皮膚疾患の可能性も同時に診察可能。
婦人科 産後のホルモンバランスや婦人科的な原因を相談。
内科 全身疾患(貧血、甲状腺など)が原因の場合を診断。
女性専門薄毛治療クリニック/AGAクリニック 薄毛治療に特化。専門的な診断・治療法。費用が高くなる場合あり。

ご自身の状況に合わせて、最も適した相談先を選びましょう。
一人で悩まず、専門家の力を借りることも、産後の大切な体を守るために必要なことです。

まとめ

産後の抜け毛は、多くの女性が経験する自然な体の変化であり、主に妊娠中の女性ホルモンの増加と、出産後の急激な減少によって引き起こされる一時的な生理現象です。
一般的には産後2~4ヶ月頃に始まり、4~6ヶ月頃にピークを迎え、半年から1年頃までには自然と落ち着いてくることが多いですが、これには大きな個人差があります。

抜け毛の量が一時的に増えても、頭皮に異常がなく、新しい髪が生え始めているようであれば、過度に心配する必要はありません。
バランスの取れた食事、十分な睡眠と休息、ストレス軽減、そして頭皮に優しいヘアケアを心がけることで、体の回復を促し、健やかな髪の成長をサポートすることができます。

しかし、もし産後1年以上経っても抜け毛が改善しない、量が異常に多い、特定の場所だけが抜ける、頭皮に炎症がある、抜け毛以外に体調不良があるなど、気になる症状がある場合は、自己判断せずに皮膚科などの専門機関に相談することをお勧めします。
他の原因による脱毛症や病気が隠れている可能性も考慮し、専門家のアドバイスを受けることが大切です。

産後の体は回復に時間がかかります。
抜け毛についても、焦らず、ご自身の体と向き合いながら、できる範囲で適切なケアを行いましょう。
必要に応じて周囲や専門家のサポートを借りながら、この時期を乗り越えてください。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を推奨するものではありません。産後の抜け毛や体調に関して不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。

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