脱水症状は、体内の水分と電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランスが崩れた状態を指します。
単にのどが渇くだけではなく、私たちの体が正常に機能するために不可欠な体液が不足し、さまざまな不調や健康障害を引き起こす可能性があります。
特に、体温調節機能が十分に発達していない子供や、体内の水分量が少なく、のどの渇きを感じにくい高齢者、あるいは病気によって体液が失われやすい状態にある人は、脱水症状に陥りやすく、重症化しやすい傾向があります。
脱水症状は、軽度であれば適切な対処で回復できますが、重症化すると命に関わる危険な状態となることもあります。
このため、脱水症状の原因や初期のサインを知り、いかに早く適切に対処し、予防するかが非常に重要となります。
この記事では、脱水症状について、その原因から症状、年齢別の注意点、正しい対処法、そして日頃からの予防策までを詳しく解説します。
私たちの体の約60%は水分で構成されており、この体液は生命維持に不可欠な役割を担っています。
体液は、血液として栄養や酸素を全身に運び、細胞や組織の活動を支え、体温を一定に保つ(体温調節)、老廃物を体外に排出する(排泄)など、生命活動のあらゆる面に関わっています。
脱水症状とは、この体液、特に水分と体液に含まれる電解質(ナトリウムイオン、カリウムイオン、クロールイオンなど)が、体外に失われる量に対して、体内に取り込まれる量が不足し、バランスが崩れた状態です。
簡単に言えば、体の水分が足りなくなり、同時に重要なミネラルも失われている状態です。
脱水が起こると、まず血液量が減少し、全身への栄養や酸素の供給が滞ります。
体温調節機能も低下するため、特に暑い環境では熱が体内にこもりやすくなり、熱中症のリスクが高まります。
また、腎臓での老廃物排泄機能も低下し、体に有害物質が溜まりやすくなります。
脱水症状は、体液が失われた量に応じて軽度から重症まで分類されます。
体重のわずか1~2%の水分が失われただけでも、のどの渇きや尿量減少などの初期症状が現れ始めます。
体重の5%以上の水分が失われると中等症となり、さらに10%以上失われると重症となり、生命の危機に直面する可能性が出てきます。
脱水症状は、夏場の暑い時期に特に注意が必要ですが、冬場でも乾燥や暖房の使用、あるいは風邪などによる体調不良から起こり得ます。
体から水分や電解質が失われるメカニズムは多様であり、それぞれの原因に応じた理解と対策が必要です。
脱水症状の主な原因
脱水症状は、体から水分や電解質が過剰に失われたり、必要な量が摂取できなかったりすることで発生します。
主な原因は多岐にわたりますが、ここでは特に一般的なものをいくつか掘り下げて解説します。
高温多湿な環境
夏場の暑さや、屋内でもサウナのように湿度が高い環境は、脱水症状の主要な原因の一つです。
私たちの体は、体温が上がりすぎないように、汗をかくことで熱を外へ逃がそうとします。
汗は体温を下げるための重要な機能ですが、その成分のほとんどは水分であり、電解質も含まれています。
高温多湿な環境に長時間いると、体温調節のために大量の汗をかき、水分と電解質が大量に失われます。
特に湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなり、体温が効果的に下がりにくくなるため、さらに発汗量が増え、脱水のリスクが高まります。
このような環境下での水分・電解質補給は、脱水症状だけでなく、熱中症を予防する上でも非常に重要です。
激しい運動や労働
運動や肉体労働も、大量の発汗を伴うため脱水症状の原因となります。
運動の強度が高かったり、長時間に及んだりすると、体温が上昇し、それを抑えるために多くの汗をかきます。
スポーツ選手だけでなく、屋外で作業する人、工場など暑い環境で働く人も同様にリスクが高いです。
運動や労働による発汗は、単なる水分だけでなく、ナトリウムなどの電解質も失わせます。
水分だけを補給しても電解質が不足したままだと、体液の濃度が薄まり、かえって体に負担をかけることがあります。
運動や労働の際には、事前の水分補給はもちろん、最中や後にも適切に水分と電解質を補給することが重要です。
下痢や嘔吐などの病気
消化器系の病気、特に急性胃腸炎などによる激しい下痢や嘔吐は、体液を急速に失わせるため、脱水症状の非常に危険な原因となります。
下痢では、通常、大腸で吸収されるはずの水分が十分に吸収されず、大量の水分と電解質が便として排出されます。
嘔吐では、胃液や摂取した水分・食物が体外に排出されるだけでなく、吐き気のために水分を摂取すること自体が難しくなります。
特に乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人では、下痢や嘔吐による脱水症状が急速に進行しやすく、重症化しやすい傾向があります。
これらの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な治療と水分・電解質補給の指導を受けることが不可欠です。
水分摂取量の不足
体から失われる水分に見合うだけの水分を摂取しないことも、脱水症状の直接的な原因となります。
意識的に水分摂取を控える場合(例えば、トイレに行く回数を減らしたいから)、あるいはのどの渇きを感じにくい場合(特に高齢者)、さらには忙しさから水分補給を忘れてしまう場合などがあります。
- 高齢者: のどの渇きを感じる機能が鈍くなるため、水分が不足していても自覚しにくいことがあります。また、関節痛などで動きが制限されると、水分を取りに行くのが億劫になることも。
- 子供: 遊びに夢中になったり、のどの渇きをうまく伝えられなかったりすることがあります。また、体格に対する体液の割合が大人よりも大きいため、少しの水分喪失でも脱水しやすいです。
- 発熱時: 体温が高い状態では、体から水分がより多く失われます(不感蒸泄の増加)。また、食欲不振により食事からの水分摂取も減りがちです。
その他、糖尿病などの慢性疾患がある場合、利尿作用のある薬剤を服用している場合なども、水分摂取量が不足したり、体からの水分排出量が増えたりして脱水のリスクが高まることがあります。
カフェインやアルコールの過剰摂取も利尿作用があり、水分喪失を促すため注意が必要です。
脱水症状のサイン・症状(初期〜重症度別)
脱水症状のサインや症状は、体液がどれくらい失われたかによって変化します。
早期に気づき、適切に対処することが重症化を防ぐために非常に重要です。
ここでは、脱水の進行度に応じたサインと、水分・電解質不足による特有の症状について解説します。
脱水症状の初期サイン
軽度の脱水、つまり体液が体重の1〜2%程度失われた段階で現れるサインです。
この段階であれば、意識的な水分・電解質補給で改善が見込めます。
- のどの渇き: 最も一般的なサインですが、高齢者では感じにくいことがあります。
- 尿量の減少: トイレに行く回数が減る、または1回に出る尿の量が少なくなる。
- 尿の色が濃くなる: 体が水分を節約しようとするため、濃縮された尿が出ます。濃い黄色やオレンジ色になるのが目安です。
- だるさ、軽い倦怠感: 全身のエネルギーが低下したような感覚。
- 食欲不振: 特に暑さによる脱水の場合に見られます。
- めまい、立ちくらみ: 血液量が減少し、脳への血流が一時的に滞ることで起こります。
- 皮膚や唇の乾燥: 口の中がネバネバしたり、唇がカサついたりします。
中等症の脱水症状
体液が体重の5%程度失われると、中等症と判断されるサインが現れます。
この段階では、経口補水液による積極的な補給が必要であり、状態によっては医療機関の受診も検討すべきです。
- 頭痛: 脳への血流が不足することなどが原因と考えられます。
- 吐き気、嘔吐: 消化器系の機能が低下するため起こることがあります。
- 倦怠感の増強: 体の疲労感が強くなり、動くのがつらくなる。
- 集中力や判断力の低下: 脳機能への影響が出始めます。
- 皮膚の弾力低下(ツルゴール低下): 特に子供で顕著です。皮膚をつまんで離しても、すぐに元に戻らず、シワが残る状態。
- 手足の冷え: 血行が悪くなるため。
- 脈拍が速くなる: 血液量を補うために心臓が頑張って血液を送り出そうとします。
重症の脱水症状
体液が体重の10%以上失われた、非常に危険な状態です。
命に関わる可能性が高く、速やかに医療機関での点滴などの治療が必要です。
- 意識障害: 呼びかけへの反応が鈍い、意識が朦朧としている、ぐったりしている、最悪の場合は意識を失う。
- けいれん: 特に電解質バランスの異常(ナトリウム不足など)が原因で起こることがあります。
- 血圧低下: 血液量が著しく減少し、全身に血液を送る力が弱まります。
- 脈拍増加(頻脈): 中等症よりもさらに顕著になります。
- 呼吸速迫: 体のバランスを保つために呼吸回数が増えることがあります。
- 尿がほとんど出ない、または全く出ない(無尿): 腎臓への血流が減少し、機能が停止しかける兆候です。
- 体が触ると非常に冷たい: 血行が極端に悪化しています。
- 全身の臓器不全: 腎臓だけでなく、脳、心臓、肝臓など、全身の臓器に深刻なダメージが及びます。
水分不足と電解質不足の症状
脱水症状は、単に水分だけが不足する場合(純粋な脱水)と、水分だけでなく電解質も同時に不足する場合(混合性脱水)、あるいは体液量は比較的保たれているが電解質(特にナトリウム)が不足する場合(低ナトリウム血症など)で、原因や症状の現れ方が少し異なります。
- 水分不足(純粋な脱水): 発熱や不感蒸泄(呼吸や皮膚からの自然な水分蒸発)の増加などで起こりやすいタイプです。体液が濃くなるため、強いのどの渇きを感じやすいのが特徴です。
- 水分・電解質不足(混合性脱水): 大量の発汗、下痢、嘔吐などで起こる最も一般的なタイプです。水分と同時にナトリウムなどの電解質も失われるため、のどの渇きに加え、後述する電解質不足の症状が現れやすくなります。
- 電解質不足(低ナトリウム血症など): 水分補給は十分に行っているつもりでも、失われた電解質(特にナトリウム)を補給できていない場合に起こり得ます。例えば、大量に汗をかいた後に水だけをがぶ飲みした場合などです。体液の濃度が薄まり、細胞内外の電解質バランスが崩れて様々な神経症状などを引き起こします。
電解質不足による症状とは?
体液中の電解質は、神経や筋肉の働き、体液の浸透圧調節などに重要な役割を果たしています。
電解質が不足すると、これらの機能に異常が生じます。
特に重要な電解質とその不足による症状は以下の通りです。
電解質 | 主な役割 | 不足による主な症状 |
---|---|---|
ナトリウム | 体液の浸透圧調節、神経・筋肉の伝達、血圧維持 | 疲労感、脱力感、頭痛、吐き気、食欲不振、筋肉のけいれん、意識障害、せん妄、けいれん |
カリウム | 筋肉の収縮、神経の伝達、心臓の拍動、細胞内外の水分調節 | 脱力感、疲労感、食欲不振、便秘、不整脈(重症の場合、心停止のリスク) |
クロール | 体液の浸透圧調節、胃酸の成分など | ナトリウム不足に伴う症状と類似 |
特に、大量の発汗や下痢・嘔吐による脱水では、水分と同時にナトリウムが大量に失われるため、低ナトリウム血症を合併しやすく、強い脱力感や筋肉のけいれん、ひどい場合には意識障害やけいれんといった重篤な症状を引き起こすことがあります。
単なる水分補給だけでなく、電解質を適切に補うことの重要性がここからもわかります。
年齢別の脱水症状の特徴と注意点
脱水症状のリスクや現れ方は、年齢によって特徴があります。
特に体内の水分調節機能が未発達な子供と、機能が低下しがちな高齢者は注意が必要です。
子供の脱水症状
子供は大人に比べて、体に対する体液の割合が大きく、体温調節機能も未発達です。
そのため、少しの水分喪失でも脱水症状に陥りやすく、進行も早い傾向があります。
また、自分の体の不調をうまく言葉で伝えられないことも、発見を遅らせる要因となります。
子供の脱水症状の特徴と注意点:
- 体液の割合: 体重に対する体液の割合が大人より高いため、同量の水分喪失でも大人より脱水の影響を受けやすいです。
- 体温調節: 汗をかく機能などが未発達なため、体温が上がりやすく、その結果発汗量が増えて脱水しやすくなります。熱中症のリスクも高いです。
- 訴えられない: 特に乳幼児は、のどの渇きやだるさなどを適切に伝えることができません。周囲の大人が注意深く観察する必要があります。
- 下痢・嘔吐: 感染性胃腸炎にかかりやすく、激しい下痢や嘔吐による体液喪失が脱水の主な原因となることが多いです。
- 活気の低下: 遊びや食事への興味を失い、ぐったりしているのは危険なサインです。
- 泣いても涙が出ない: 脱水が中等度以上に進んでいる可能性が高いサインです。
- おむつの濡れが少ない/尿量が少ない: 尿の回数が減ったり、量が普段より明らかに少なくなったりするのは、体が水分を保持しようとしているサインです。
- 皮膚の弾力低下(ツルゴール低下): 小さな子供では、皮膚をつまんで離した時にすぐに戻らないことで脱水が疑われます。
- 泉門(ずんもん)の陥没: 乳児の場合、頭頂部の骨が閉じきっていない部分(泉門)がへこんでいるのは脱水が疑われます。
- 口の中や唇の乾燥: 大人同様に見られます。
子供が下痢や嘔吐をしている場合、あるいは暑い環境で過ごす場合は、意識的に水分補給を促し、上記のサインがないか注意深く観察することが非常に重要です。
少しでも脱水が疑われる場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診しましょう。
高齢者の脱水症状
高齢者は、いくつかの理由から脱水症状のリスクが高くなります。
高齢者の脱水症状の特徴と注意点:
- 体内の水分量: 加齢とともに体内の水分量が減少する傾向があります。
- のどの渇きを感じにくい: のどの渇きを感じる中枢機能が低下し、水分不足に気づきにくいです。「隠れ脱水」になりやすいと言われます。
- 排尿を気にする: 頻尿や失禁を心配して、意識的に水分摂取を控える方が少なくありません。
- 腎機能の低下: 腎臓で水分や電解質のバランスを調節する機能が低下するため、脱水したり、逆に水分を過剰に摂りすぎると体に負担がかかったりします。
- 基礎疾患や服用薬: 心臓病や腎臓病などの持病がある場合、脱水が病状を悪化させる可能性があります。また、利尿剤など特定の薬剤を服用している場合も注意が必要です。
- 活動量の低下: 関節痛や筋力低下などで動きが制限されると、水分を取りに行くこと自体が困難になることがあります。
- 症状が分かりにくい: 高齢者の脱水症状は、だるさや食欲不振といった非特異的な症状で始まることが多く、気づかれにくいことがあります。進行すると、意識がはっきりしない、せん妄(一時的な精神錯乱)、認知症の症状が悪化するといった形で現れることがあり、脱水以外の原因と間違われやすいです。
高齢者の場合は、周囲が積極的に水分摂取を促すことが大切です。
のどの渇きを訴えなくても、時間を決めて少量ずつ水分(お茶や水、食事からの水分など)を摂ってもらうようにしましょう。
また、ジュースなどの糖分が多い飲料やカフェインの多い飲料は避け、麦茶や水などが適しています。
食事では、汁物や果物、野菜など水分や電解質を多く含む食品を意識的に取り入れるのも有効です。
体調の変化やいつもと違う様子が見られたら、早めに医療機関に相談しましょう。
脱水症状になった場合の対処法と応急処置
脱水症状が疑われる場合、適切な応急処置と、症状に応じた医療機関の受診が重要です。
特に体から水分だけでなく電解質も失われている場合は、水だけを飲んでも回復は難しく、かえって危険なこともあります。
適切な水分・電解質の補給
軽度な脱水の場合や、これから脱水を予防したいという段階では、自分で水分・電解質を補給することが応急処置の中心となります。
- なぜ水だけでは不十分なのか: 大量の汗や下痢・嘔吐で水分と共に電解質、特にナトリウムが失われている場合、水だけを多量に飲むと、体液中のナトリウム濃度がさらに薄まってしまいます(低ナトリウム血症)。これにより、細胞内外の電解質バランスが崩れ、頭痛、吐き気、けいれん、ひどい場合は意識障害を引き起こす可能性があります。これを「水中毒」と呼ぶこともあります。
- 何で補給すべきか: 脱水時には、水分と同時に適切な量の電解質(特にナトリウムとカリウム)を補給できるものが適しています。具体的には、経口補水液が推奨されます。スポーツドリンクも電解質を含んでいますが、糖分が多く、電解質濃度は経口補水液よりも低いため、軽度な脱水や運動時の水分・電解質補給には適していますが、下痢や嘔吐による脱水など、より迅速な回復が必要な場合には経口補水液の方が優れています。
- 補給の方法: 一度に大量に飲むのではなく、少量(コップ半分〜1杯程度)を15分〜30分ごとにこまめに飲むのが効果的です。特に吐き気がある場合は、一度に飲む量をさらに減らし(スプーン1杯程度から)、間隔を短くして頻回に与えると良いでしょう。
経口補水液の選び方と使い方
経口補水液(Oral Rehydration Solution; ORS)は、世界保健機関(WHO)などが推奨する、脱水状態からの回復を目的とした特別な飲料です。
水にブドウ糖と電解質(ナトリウム、カリウムなど)が適切なバランスで配合されています。
- 選び方: 薬局やドラッグストアで販売されている「経口補水液」と表示されたものを選びましょう。商品名としては、「OS-1(オーエスワン)」などが代表的です。スポーツドリンクとは成分バランスが異なるため、表示をよく確認してください。
- 使い方:
- そのまま飲む: 薄めたり、他の飲み物と混ぜたりしてはいけません。経口補水液のブドウ糖と電解質のバランスは、腸管からの水分・電解質吸収を最も効率良く行うように設計されています。薄めるとこのバランスが崩れ、効果が低下します。
- 温めたり凍らせたりしない: 加熱すると成分が変化する可能性があり、凍らせると電解質が偏るため、効果が低下します。常温で飲むのが基本です。
- 飲む量: 体の脱水度合いや体重によって目安量が定められています。製品の表示や医師・薬剤師の指示に従いましょう。一般的には、軽度〜中等度の脱水に対して、数時間かけて体重1kgあたり50〜100mlを目安に少しずつ与えます。
医療機関を受診する目安
以下のいずれかに当てはまる場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
重症化のサインを見逃さず、迷ったら専門家の判断を仰ぐことが大切です。
- 意識が朦朧としている、呼びかけへの反応が鈍い、ぐったりしている
- けいれんがある
- めまいや頭痛がひどく、立っていることも困難
- 水分を摂ってもすぐに吐いてしまう、または吐き気が強くて全く水分を摂れない
- 半日以上、または子供なら数時間、尿が全く出ていない
- 皮膚の弾力性が著しく低下している(特に子供)
- 呼吸が速い、または乱れている
- 血圧が低い、または脈拍が非常に速い
- 下痢や嘔吐がひどく、止まらない
- 乳幼児で、活気がない、泣いても涙が出ない、泉門がへこんでいる
- 高齢者で、いつもと様子が違う、意識がはっきりしない、基礎疾患がある
- 持病(心臓病、腎臓病、糖尿病など)がある方が脱水症状を起こしている
これらの症状がある場合は、自己判断で様子を見ず、救急車を呼ぶことも含めて、緊急性の高い対応が必要です。
下痢・嘔吐を伴う場合の対処法
下痢や嘔吐による脱水は進行が早いため、特に注意が必要です。
- 水分・電解質補給: 最優先で経口補水液による水分・電解質補給を行います。一度に大量に与えると吐き気を誘発したり、下痢が悪化したりすることがあるため、少量(スプーン1杯など)を頻繁に与えるのがポイントです。吐き気が強い場合は、無理に与えず、吐き気が落ち着いてから再開します。
- 食事: 無理に食事を摂らせる必要はありません。消化器系に負担をかけないよう、水分補給を中心にします。症状が落ち着いてきたら、お粥やうどんなど、消化の良いものから少量ずつ始めます。
- 薬: 下痢止めや吐き気止めは、原因によっては症状を悪化させる場合があるため、自己判断で使用せず、医師の指示に従ってください。
- 医療機関の受診: 特に子供や高齢者、症状が重い場合(何度も吐く、激しい下痢が続く、ぐったりしているなど)は、早めに医療機関を受診し、点滴など専門的な治療を受けることが重要です。
脱水症状の予防策
脱水症状は、日頃からの心がけである程度予防することができます。
特にリスクの高い時期や状況においては、意識的な対策が重要です。
こまめな水分補給の習慣
脱水予防の基本は、体から水分が失われる前に、または失われた分を速やかに補うことです。
のどの渇きを感じた時には、すでに体液の1%程度が失われていると言われています。
のどの渇きを感じる前に、計画的に水分補給を行う習慣をつけましょう。
- 時間帯を決める: 起床時、朝食時、10時、昼食時、15時、夕食時、入浴後、就寝前など、時間を決めて水分補給を行います。
- 状況に応じて増やす: 暑い環境にいる時、運動をする時、発熱している時、下痢や嘔吐がある時などは、通常よりも多くの水分が必要になります。意識して水分を摂る量を増やしましょう。
- 飲み物の種類: 基本的には水や麦茶が適しています。カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶など)やアルコールは利尿作用があり、水分を排出させてしまうため、過剰摂取は避けましょう。スポーツドリンクは糖分が多いので、運動時以外での日常的な水分補給には適しません。電解質も補いたい場合は、ミネラルウォーターや麦茶、あるいは食事からの摂取を心がけましょう。
- 高齢者や子供: のどの渇きを感じにくい高齢者や、遊びに夢中になる子供には、周囲が積極的に水分補給を促すことが大切です。
環境整備と服装
体温の上昇を抑え、過剰な発汗を防ぐことも脱水予防に繋がります。
- 室温・湿度管理: エアコンや扇風機を適切に使い、室温・湿度を快適な状態に保ちます。特に就寝中は、寝ている間に多くの水分が失われるため、寝室の環境整備が重要です。
- 直射日光を避ける: 屋外では、日陰を選んで歩いたり、帽子や日傘を使ったりして直射日光を避けます。
- 風通し: 換気を行い、室内の空気を循環させることで、体感温度を下げることができます。
- 服装: 吸湿性、速乾性、通気性の良い素材の服を選び、熱がこもりにくい、ゆったりとした服装を心がけましょう。屋外では、明るい色の服は太陽光を吸収しにくいのでおすすめです。
その他の予防策
- 食事からの水分・電解質摂取: 食事からも水分や電解質を摂取できます。汁物、果物(スイカ、メロン、柑橘類など)、野菜(キュウリ、トマトなど)は水分やカリウムなどを多く含んでいます。適度に塩分を摂ることも重要ですが、摂りすぎは高血圧などのリスクを高めるため、バランスが大切です。
- 体調管理: 寝不足や疲労は体の抵抗力を弱め、脱水や熱中症になりやすくなります。十分な睡眠をとり、体調を整えることが大切です。
- アルコール・カフェインの制限: これらは利尿作用があるため、特に暑い時期や体調が優れない時の過剰摂取は避けましょう。
これらの予防策を組み合わせることで、脱水症状のリスクを効果的に減らすことができます。
脱水症状に関するよくある質問
脱水するとどうなりますか?重症化すると死に至ることもありますか?
脱水すると、体内の水分と電解質のバランスが崩れ、様々な機能に障害が起こります。
軽度ではのどの渇きやだるさですが、進行すると頭痛、吐き気、めまい、筋肉のけいれんなどが現れます。
さらに重症化すると、意識障害(意識が朦朧とする、呼びかけに反応しない)、けいれん、血圧低下、臓器不全(腎不全など)を引き起こす可能性があります。
適切に対処せずに重症化が進むと、命に関わる非常に危険な状態となり、最悪の場合、死に至ることもあります。
特に子供や高齢者、持病がある方は、脱水症状が急速に悪化しやすいため、早期の発見と対応が非常に重要です。
水分不足でも脱水症状になりますか?
はい、水分不足は脱水症状の最も主要な原因の一つです。
体から失われる水分量に対して、飲むなどの方法で体内に取り込む水分量が不足すると、体液が減少し脱水症状が起こります。
ただし、脱水症状は単なる水分不足だけでなく、同時に電解質(特にナトリウム)も不足することが多いため、水分と電解質の両方をバランス良く補給することが重要です。
例えば、大量に汗をかいた後に水だけを多量に飲むと、体液中のナトリウム濃度が薄まり、かえって体調を崩すことがあります。
腹泻脱水症状(下痢による脱水症状)とはどのようなものですか?
下痢は、消化管から大量の水分と電解質が急速に失われることで起こる脱水症状です。
特に感染性胃腸炎などによる激しい下痢の場合、通常の便とは比較にならないほどの水分が排出されるため、短時間で深刻な脱水状態に陥るリスクがあります。
腹痛や吐き気を伴うことも多く、水分を摂取しようとしても吐いてしまったり、食欲不振で十分な量が摂れなかったりすることで、さらに脱水が進行しやすくなります。
子供や高齢者は下痢による脱水が重症化しやすいため、特に注意が必要です。
このタイプの脱水には、水分だけでなく電解質も適切に含んだ経口補水液による補給が非常に効果的です。
脱水怎么补水(脱水時の補水方法)は?
脱水時の基本的な補水方法は、水分と電解質を同時に補給することです。
軽度の場合や予防としては水や麦茶、あるいは果物や汁物などの食事からの摂取も有効です。
しかし、ある程度脱水が進んでいる場合や、下痢・嘔吐を伴う場合は、経口補水液(ORS)を少量頻回に飲むことが推奨されます。
経口補水液は、水分・電解質・糖分のバランスが、腸からの吸収を効率良くするために調整されています。
スポーツドリンクも電解質を含みますが、経口補水液より糖分が多く、電解質濃度が低いため、脱水回復目的には経口補水液が優れています。
意識障害がある、自力で水分を摂れない、激しい下痢・嘔吐が止まらないなど重症の場合は、医療機関での点滴による補水が必要です。
小孩脱水症状(子供の脱水症状)の特徴は?
子供は体液の割合が大人より高く、体温調節機能が未発達なため、脱水しやすく進行が早いという特徴があります。
また、自分の不調をうまく伝えられないため、周囲の大人が注意深く観察する必要があります。
子供の脱水サインとしては、活気がない、ぐったりしている、泣いても涙が出ない、おむつの濡れが少ない(尿量が少ない)、口の中や唇が乾燥している、皮膚の弾力が低下している(つまむと戻りにくい)、乳児では泉門がへこんでいるなどが挙げられます。
下痢や嘔吐による脱水が多いのも特徴です。
これらのサインが見られたら、速やかに医療機関を受診することが重要です。
呕吐脱水症状(嘔吐による脱水症状)とは?
嘔吐によって胃から大量の水分や食物が体外に排出されることに加え、吐き気があるために水分を摂取することが困難になることで起こる脱水症状です。
特に何度も繰り返す激しい嘔吐は、体液を急速に失わせます。
下痢と合併することも多く、その場合はさらに脱水のリスクが高まります。
嘔吐による脱水の場合も、水分と共に電解質が失われているため、経口補水液による補給が有効ですが、吐き気が強い時は無理に飲ませるとさらに吐いてしまう可能性があるため、少量(スプーン1杯程度)を時間をかけて頻回に与えるのがポイントです。
吐き気がなかなか治まらず、水分を全く受け付けない場合は、速やかに医療機関を受診し、点滴による補水が必要となる場合があります。
【まとめ】脱水症状は早期発見・早期対処が鍵
脱水症状は、軽度であれば適切な水分・電解質補給で回復できますが、進行すると重篤な状態となり、生命に関わることもあります。
特に体温調節機能が未熟な子供や、のどの渇きを感じにくい高齢者はリスクが高く、周囲の注意深い観察と配慮が必要です。
脱水症状の原因は、高温多湿な環境、激しい運動、下痢や嘔吐などの病気、水分摂取量の不足など様々です。
初期サインであるのどの渇きや尿量の減少、尿の色の変化などに気づき、早めに適切な水分・電解質補給を行うことが重症化を防ぐ鍵となります。
脱水が疑われる場合は、水だけでなく電解質もバランス良く含まれた経口補水液が有効です。
ただし、意識障害やけいれんがある場合、自力で水分を摂れない場合、激しい下痢や嘔吐が続く場合などは、自己判断せず速やかに医療機関を受診し、専門的な治療を受けるようにしてください。
日頃からの予防策としては、のどの渇きを感じる前にこまめに水分補給をする習慣をつけること、暑い環境では無理をせず、適切に室温を管理し、通気性の良い服装をすることなどが挙げられます。
食事からも水分や電解質を意識的に摂取することも予防に繋がります。
脱水症状は予防可能な健康問題です。
正しい知識を持ち、日頃から意識して水分・電解質補給と体調管理を行うことで、健康に過ごしましょう。
免責事項: 本記事は脱水症状に関する一般的な情報を提供するものであり、医学的なアドバイスや診断、治療を代替するものではありません。
個々の症状や状況については、必ず医療専門家にご相談ください。
本記事の情報に基づいて行った行為によって生じたいかなる結果についても、当方は一切の責任を負いかねます。