デング熱の主な症状を解説|発熱・発疹・関節痛の特徴と見分け方

デング熱は、デングウイルスに感染した蚊(主にネッタイシマカ、日本ではヒトスジシマカ)に刺されることでかかる感染症です。発熱や発疹、関節痛など、様々な症状が現れます。特に熱帯・亜熱帯地域で広く流行しており、海外渡航の機会が増えるにつれて日本国内での感染例も報告されています。この記事では、デング熱の主な症状、感染経路、潜伏期間、診断、治療、予防策について詳しく解説します。デング熱の症状が疑われる場合や、流行地域へ渡航される際の参考にしてください。

デング熱の症状は個人差が大きく、感染しても症状が出ない場合(不顕性感染)から、軽症、典型的なデング熱、そして稀に重症型(デング出血熱、デングショック症候群)まで様々です。ここでは、典型的なデング熱でみられる主な症状について説明します。

デング熱の初期症状

デング熱の初期症状は、風邪やインフルエンザと似ていることが多く、デング熱だと気づきにくい場合があります。一般的に、感染した蚊に刺されてから3日〜14日(多くは5日〜7日)の潜伏期間を経て発症します。

初期に多く見られる症状としては、突然の高熱(38℃〜40℃)、頭痛(特に目の奥の痛み)、全身の倦怠感などがあります。これらの症状は、発熱と同時または発熱に先行して現れることが多いです。

デング熱の典型的な症状

初期症状に続いて、以下のような典型的な症状が現れるのが一般的です。

  • 発熱: 突然始まる高熱(38℃〜40℃)が2日〜7日間続きます。熱は一旦下がって再び上がる「二峰性」を示すこともあります。
  • 発疹: 発熱から数日後(3日〜7日頃)に現れることが多いです。全身に広がる紅い斑点状の発疹で、かゆみを伴うこともあります。はしかや風しんの発疹と似ているため、鑑別が必要です。
  • 関節痛・筋肉痛: 特に手足の関節や筋肉に強い痛みを感じることがあります。この症状から「Breakbone fever(骨折熱)」と呼ばれることもあります。
  • 目の奥の痛み: 目を動かすと痛むなど、目の奥に強い痛みを伴うことがあります。
  • 全身の倦怠感: 非常に強い全身のだるさや疲労感を感じます。
  • 吐き気・嘔吐: 消化器症状として吐き気や嘔吐が見られることがあります。
  • 食欲不振: 全身症状に伴い、食欲が低下します。

これらの症状は同時に全てが現れるわけではなく、個人やウイルスの型によって症状の出方や重症度は異なります。

デング熱における発熱・発疹について

デング熱の発熱は突然に始まり、多くの場合38℃以上の高熱となります。熱は数日間続きますが、一度解熱した後に再び上昇する「二峰性」の発熱パターンが見られることがあります。この解熱期に注意が必要なのは、後述する重症型(デング出血熱やデングショック症候群)に移行する可能性があるからです。

発疹は、発熱のピークが過ぎた頃、または解熱期に入る頃(発熱から3日〜7日頃)に体幹や顔から始まり、手足の末端に広がっていくパターンが多いです。発疹の色は赤く、形はやや盛り上がりのある斑点状(麻疹様)や、点状出血のような小さな斑点(猩紅熱様)など、様々です。かゆみを伴うこともありますが、伴わないこともあります。発疹は数日で消えるのが一般的です。

デング熱でみられるその他の症状(頭痛、関節痛、筋肉痛など)

デング熱では、発熱や発疹以外にも特徴的な症状が多くみられます。

頭痛は、発熱と同時期に現れることが多く、特に目の奥の痛みを伴うのが特徴です。眼球を動かす際に痛みが強まる傾向があります。

関節痛や筋肉痛は非常に強く現れることがあり、患者さんは「骨が折れたようだ」と感じるほどです。特に手足の関節や、背中、腰、下肢などの大きな筋肉に強い痛みが生じやすいです。

その他にも、リンパ節の腫れや、味覚異常鼻血や歯茎からの出血などの軽い出血傾向が見られることもあります。しかし、これらの症状は他の感染症でも見られるため、デング熱に特有というわけではありません。デング熱を疑う際は、流行地域への渡航歴や蚊に刺された状況などを含めて総合的に判断する必要があります。

このように、デング熱の症状は多岐にわたりますが、発熱、発疹、関節痛・筋肉痛、目の奥の痛みが特に典型的な症状として知られています。

目次

デング熱の感染経路と原因

デング熱はどのようにして人から人へ広がるのでしょうか。感染経路や原因となるウイルス、そして媒介する蚊について説明します。

デング熱は人にうつりますか?(ヒトヒト感染の可能性)

デング熱は、基本的に人から人へ直接うつる病気ではありません。感染経路は、デングウイルスに感染したヒトの血を吸った蚊が、そのウイルスを別のヒトに媒介することで感染が成立します。

つまり、感染したヒトがウイルス血症の状態にあるときに、ウイルスを持っていない蚊に刺されると、蚊の体内にウイルスが取り込まれます。蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊が別のヒトを刺す際に、蚊の唾液腺にあるウイルスがヒトの体内に入り感染が成立するのです。

ただし、例外的にヒトからヒトへ感染する可能性も報告されています。非常に稀ですが、輸血臓器移植による感染例、また妊娠中に母親が感染した場合の母子感染の可能性も指摘されています。しかし、一般的な飛沫感染や接触感染で人から人へうつることはありません。

デング熱の原因となるウイルス

デング熱の原因は、デングウイルスというフラビウイルス科に属するウイルスです。このウイルスには、DEN-1型、DEN-2型、DEN-3型、DEN-4型4つの血清型があります。

いずれかの型のウイルスに感染して回復すると、その型のウイルスに対しては終生免疫を獲得すると考えられています。しかし、他の型のウイルスに対する免疫は獲得されないため、生涯のうちに異なる血清型のウイルスに複数回感染する可能性があります。特に、一度デング熱にかかった後に別の型のウイルスに感染した場合、重症化しやすいという報告があり、注意が必要です。

デング熱を媒介する蚊の種類

デングウイルスを媒介するのは、主にネッタイシマカ(Aedes aegypti)ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)の2種類の蚊です。これらの蚊は「ヤブカ」とも呼ばれ、日中に活動するのが特徴です。

  • ネッタイシマカ: 主に熱帯・亜熱帯地域に分布しており、都市部にも多く生息しています。デング熱の主要な媒介蚊であり、世界的な流行の多くはネッタイシマカによって引き起こされています。日本国内には生息していません。
  • ヒトスジシマカ: 日本国内を含む温帯から熱帯にかけて広く分布しています。公園や庭、空き缶や古タイヤに溜まった水など、小さな水たまりで発生します。日本国内で確認されるデング熱の国内感染例は、ヒトスジシマカによる媒介と考えられています。

これらの蚊は、夜行性の一般的な蚊とは異なり、日中の、特に朝方や夕方に活発に活動します。屋外だけでなく、家の中に侵入して人を刺すこともあります。デング熱の流行地域に滞在する際や、国内でデング熱の発生が報告された地域にいる際は、日中の蚊対策が特に重要になります。

デング熱の潜伏期間

デング熱の潜伏期間とは、デングウイルスを持った蚊に刺されてから、最初の症状が現れるまでの期間を指します。

この期間は個人差がありますが、一般的には3日〜14日とされています。多くの場合、5日〜7日で症状が出始めることが多いです。

例えば、海外のデング熱流行地域で蚊に刺されたとしても、帰国後すぐに症状が出るわけではなく、数日〜2週間後に発熱や体調不良が現れる可能性があります。そのため、流行地域からの帰国後に体調が悪くなった場合は、必ず医療機関を受診し、渡航歴を伝えることが非常に重要です。

潜伏期間中はウイルスが体内で増殖していますが、症状がないため感染に気づきにくい期間と言えます。この潜伏期間があるため、デング熱の早期発見や感染拡大の防止には、流行地域への渡航歴の確認が非常に重要な手がかりとなります。

デング熱の診断方法

デング熱が疑われる場合、医療機関での診察と検査によって診断が確定されます。診断は、問診で症状や流行地域への渡航歴、蚊に刺された状況などを確認することから始まります。

医師はこれらの情報に加え、以下のような検査を組み合わせて診断を行います。

  1. 血液検査:
    • ウイルス検査: 血液中にデングウイルスそのものやウイルスの成分(抗原)があるかどうかを調べる検査です。発症早期(通常、発熱から5日以内)に有効なことが多いです。RT-PCR法などが用いられます。
    • 抗体検査: 体がデングウイルスに対して作った抗体(IgM抗体やIgG抗体)を調べる検査です。発症数日後から抗体が検出されるようになり、時間の経過とともに抗体の種類や量が変化します。感染の時期や過去の感染を知る手がかりとなります。
    • 血球数などの一般検査: 白血球や血小板の数の減少、ヘマトクリット値(血液中に占める赤血球の容積の割合)の上昇などがみられることがあり、診断の参考になります。特に血小板の減少は、重症化のサインとなり得るため注意深く観察されます。

デング熱の診断には、これらの検査結果と臨床症状、疫学情報(流行地域への渡航歴など)を総合的に判断することが必要です。検査によってウイルスや抗体が検出された場合や、流行地域への渡航歴があり典型的な症状がみられる場合に、デング熱と診断されます。

特に海外から帰国された方で発熱などの症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、渡航先や帰国時期、蚊に刺されたかなどの情報を医師に正確に伝えるようにしましょう。これにより、迅速な診断と適切な対応につながります。

デング熱に感染したらどうなる?症状の経過と重症化リスク

デング熱の症状は、通常は時間の経過とともに回復に向かいますが、一部のケースでは重症化するリスクがあります。ここでは、典型的なデング熱の症状の経過と、重症化について詳しく見ていきます。

デング熱の症状の回復期間

典型的なデング熱の場合、症状は通常1週間〜10日程度で回復に向かいます。

発熱は数日続き、その後解熱しますが、解熱期に入った頃に発疹が現れることが多いです。関節痛や筋肉痛、倦怠感などの症状は、解熱後もしばらく続くことがあります。全身の倦怠感や疲労感は回復後も数週間続くケースも見られます。

多くの患者さんは、安静と適切な水分補給によって自然に回復します。しかし、油断は禁物です。特に解熱期は、後述する重症型に移行する可能性がある最も注意すべき時期です。

デング熱の重症型(デング出血熱・デングショック症候群)

デング熱の約1%未満、特に過去にデング熱に感染したことがある人が別の型のウイルスに再感染した場合などに、稀に重症型に移行することがあります。重症型には、デング出血熱(DHF: Dengue Hemorrhagic Fever)デングショック症候群(DSS: Dengue Shock Syndrome)があります。

重症型は、発熱が下がる解熱期に発症することが多いため、熱が下がったからといって安心せず、症状の変化に注意が必要です。

  • デング出血熱: 血小板が著しく減少し、血液を固める機能が低下することで、様々な場所から出血しやすくなります。鼻血、歯茎からの出血、皮膚の点状出血やあざ、吐血、下血などがみられます。血管からの血漿成分の漏出(プラズマリーク)も起こり、腹水や胸水が溜まることがあります。
  • デングショック症候群: デング出血熱の症状に加え、血圧が急激に低下し、意識障害や臓器障害を伴う非常に危険な状態です。脈が速く弱くなる、手足が冷たくなる、落ち着きがなくなるなどのサインが見られます。ショック状態に陥ると、適切な治療を行わないと命に関わる可能性があります。

重症化のサインとしては、解熱期に入ったにもかかわらず、激しい腹痛、持続する嘔吐、倦怠感の増強、落ち着きのなさ、呼吸困難、鼻血や歯茎からの出血、黒い便(タール便)などが挙げられます。これらの兆候が見られた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。

デング熱の致死率について

デング熱全体の致死率は、適切な医療を受けられる環境であれば比較的低いとされています。多くの典型的なデング熱は、適切な対症療法で回復します。

しかし、重症型であるデング出血熱やデングショック症候群に移行した場合の致死率は高まります。特に治療が遅れた場合や、適切な集中治療が行われない環境では、命に関わることも少なくありません。世界保健機関(WHO)の報告では、重症型の致死率は適切な治療が受けられれば2%未満ですが、治療が遅れると20%以上になることもあるとされています。

重症化のリスクを低減するためには、デング熱が疑われる症状が出た場合に速やかに医療機関を受診し、医師の指示に従って安静や水分補給を行い、症状の経過を注意深く観察することが非常に重要です。

デング熱の治療法と使用される薬

現在、デングウイルスそのものに直接作用する特効薬は開発されていません。そのため、デング熱の治療は、現れている症状を和らげるための対症療法が中心となります。

デング熱の基本的な治療(対症療法)

デング熱の対症療法は、主に以下の点に重点が置かれます。

  1. 安静: 十分な休息をとり、体を休めることが重要です。
  2. 水分補給: 高熱や嘔吐、下痢などにより脱水症状を起こしやすいので、こまめに水分や電解質を補給することが非常に重要です。経口補水液などが推奨されます。重症の場合は点滴による輸液が必要になることもあります。
  3. 解熱・鎮痛: 発熱や頭痛、関節痛、筋肉痛などの痛みを和らげるために、解熱鎮痛剤を使用します。

これらの対症療法は、患者さんの免疫力がウイルスを排除するまでの期間をサポートすることを目的としています。医療機関では、患者さんの症状や全身状態を観察し、必要に応じて入院管理や、重症化のサインがないか注意深くモニタリングが行われます。

デング熱で注意すべき市販薬

デング熱の症状がある場合、自己判断で市販薬を服用する際には注意が必要です。特に、解熱鎮痛剤の中には、デング熱の病態を悪化させる可能性がある成分が含まれているものがあります。

デング熱で注意が必要な解熱鎮痛剤の成分:

成分名 一般的な商品例(成分を含むもの) 注意点
アスピリン バファリン、ケロリンなど(一部商品) 出血傾向を強める作用があり、デング熱における出血のリスクを高める可能性があります。原則として服用を避けるべきです。小児のアスピリン使用はライ症候群のリスクもあり特に注意が必要です。
イブプロフェン
ロキソプロフェン
ナプロキセンなど(NSAIDs)
イブ、バファリンプレミアム、ロキソニンSなど アスピリンと同様に、出血傾向を強める可能性があります。医療機関で医師の指示なく自己判断で使用することは推奨されません。

デング熱による発熱や痛みに対して、比較的安全に使用できるとされるのはアセトアミノフェンを含む解熱鎮痛剤です。

成分名 一般的な商品例(成分を含むもの) 注意点
アセトアミノフェン タイレノール、カロナールなど 出血傾向への影響が少ないとされていますが、過剰摂取は肝臓に負担をかける可能性があります。用法・用量を守り、できれば医療機関で処方された薬を使用することが望ましいです。

発熱や痛みで市販薬を使用したい場合は、必ず薬剤師や登録販売者に相談し、デング熱の可能性(渡航歴や蚊に刺された状況など)を伝えた上で、使用しても安全な薬を選ぶようにしてください。最も安全なのは、医療機関を受診し、医師から指示された薬を使用することです。

デング熱の予防策

デング熱には特効薬がないため、予防が最も重要です。予防の基本は、デングウイルスを媒介する蚊に刺されないようにすることと、蚊の発生源をなくすことです。

蚊に刺されないための対策

日中に活動するヒトスジシマカなどの蚊に刺されないためには、以下の対策が有効です。

  1. 虫よけ剤の使用:
    • ディート(DEET)やイカリジンなどの有効成分を含む虫よけ剤を、皮膚の露出部分や衣服の上から適切に使用しましょう。特に、蚊が多く活動する朝方や夕方に出かける際は忘れずに使用することが大切です。
    • 製品に記載された用法・用量を守って使用し、特に小児に使用する場合は年齢制限や使用回数に注意が必要です。
  2. 服装の工夫:
    • 長袖、長ズボン、靴下などを着用し、肌の露出を少なくしましょう。明るい色の衣服は蚊を引き寄せにくいと言われます。
  3. 屋内の対策:
    • 網戸を設置したり、蚊の侵入を防ぐ工夫をしましょう。室内で蚊を見かけた場合は、蚊取り線香や電気蚊取り器などを使用して駆除しましょう。
  4. 蚊の発生源対策:
    • ヒトスジシマカは、植木鉢の受け皿、空き缶、古タイヤ、雨水ますなど、小さな水たまりで発生します。自宅や職場の周囲にある、水が溜まる可能性のあるものを定期的に点検し、水たまりをなくすことが重要です。バケツなどを屋外に放置せず、ひっくり返して保管しましょう。

これらの対策を組み合わせることで、蚊に刺されるリスクを大幅に減らすことができます。

海外渡航時の注意点と予防接種について

デング熱は特に熱帯・亜熱帯地域で流行しています。これらの地域へ渡航する際は、以下の点に注意が必要です。

  1. 渡航先の流行状況の確認: 出発前に、渡航先のデング熱の流行状況を厚生労働省の海外感染症情報や在外公館の情報などで確認しましょう。
  2. 現地での蚊対策の徹底: 現地滞在中はもちろん、空港やホテルなどの場所でも、日中の蚊対策を徹底しましょう。肌の露出を避け、虫よけ剤をこまめに使用することが重要です。宿泊施設を選ぶ際には、網戸やエアコンがあるかなども考慮すると良いでしょう。
  3. 帰国後の体調変化に注意: 帰国後2週間程度は、発熱などの症状がないかご自身の体調に注意しましょう。もし体調が悪くなった場合は、速やかに医療機関を受診し、必ず渡航先や帰国時期を医師に伝えてください。

予防接種について:
デング熱の予防接種ワクチンは、現在いくつかの国で承認され使用されています。日本では、2023年8月に一部のデングウイルス血清型に対して、4価の弱毒生ワクチン(商品名:タケイック)が小児(4歳以上16歳未満)に対して承認されました。ただし、このワクチンは過去のデング熱感染の有無によって接種の適応や効果が異なるため、接種にあたっては専門的な判断が必要です。
成人向けのワクチンや、国内で広く使用可能なワクチンについては、今後の研究開発や承認状況の進展が期待されます。海外渡航前に予防接種を検討する場合は、渡航先の状況や個人の健康状態なども踏まえて、医師とよく相談することが重要です。

現時点では、予防接種だけでデング熱を完全に防ぐことは難しい場合もあります。最も確実な予防策は、やはり蚊に刺されないための対策を徹底することです。

デング熱に関するよくある質問

デング熱について、患者さんや一般の方が疑問に思うことが多い点について解説します。

デング熱の流行地域・多い国はどこですか?

デング熱は世界中の熱帯・亜熱帯地域で流行しています。特に患者数が多い地域や国としては、以下のような場所が挙げられます。

  • アジア: 東南アジア(タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシアなど)、南アジア(インド、バングラデシュなど)
  • 中南米: ブラジル、コロンビア、メキシコ、ペルーなど、カリブ海諸国
  • アフリカ: 東アフリカ、西アフリカなど
  • 太平洋諸島: フィジー、サモアなど

都市部でも流行することがあり、観光地や人が多く集まる場所でも感染リスクがあります。海外へ渡航する際は、これらの地域での流行状況を確認することが非常に重要です。

日本国内でのデング熱の発生状況

日本国内では、過去に海外からの渡航者や帰国者がデング熱に感染して帰国する輸入例がほとんどでした。年間数十例〜数百例の輸入例が報告されています。

しかし、2014年夏には、海外渡航歴のない人が国内でデング熱に感染する国内感染例が東京都の代々木公園周辺を中心に発生し、注目を集めました。これは、海外でデングウイルスに感染した方が国内のヒトスジシマカに刺され、その蚊が他の国内にいる方を刺すことで感染が広がったと考えられています。

国内感染例は輸入例に比べると稀ですが、ヒトスジシマカは日本国内に広く生息しているため、今後も国内での発生リスクはゼロではありません。特に夏季には、国内での蚊対策も重要になります。

デング熱の回復後の注意点は?

デング熱から回復した後も、数週間は全身の倦怠感や疲労感が続くことがあります。無理をせず、十分に休養をとることが大切です。また、稀に回復後に脱毛が見られることもありますが、一時的なものが多いです。

重要なのは、デングウイルスには4つの血清型があるため、一度感染しても別の型のウイルスに感染する可能性がある点です。再感染した場合には、初回よりも重症化しやすいリスクがあるため、回復後も引き続き蚊に刺されないように予防策を継続することが重要です。

デング熱は潜伏期間中に人にうつすことがありますか?

デング熱の潜伏期間中(症状が現れる前)は、蚊に刺されても蚊の体内でウイルスが増殖するのに時間がかかるため、通常はまだ蚊にウイルスを媒介する能力はありません。ウイルス血症のピークは発熱が始まった頃から数日間とされています。蚊は、ヒトがウイルス血症の状態にある時に吸血することでウイルスに感染し、その後蚊の体内でウイルスが十分に増える(通常8〜12日程度かかる)と、他のヒトにウイルスを媒介できるようになります。したがって、潜伏期間中に蚊に刺されても、その蚊がすぐに他の人にうつすリスクは低いと考えられます。ただし、発症直前には既にウイルス血症が始まっている可能性もあるため、症状の有無に関わらず流行地域滞在中は蚊対策を徹底することが重要です。

デング熱が疑われる場合の対応

もしご自身やご家族がデング熱に感染したかもしれないと思った場合、どのように対応すべきでしょうか。

最も重要なのは、速やかに医療機関を受診することです。

特に、以下のような場合はデング熱の可能性を疑い、医療機関での診察を受けることを強く推奨します。

  • 発熱があり、最近2週間以内デング熱の流行地域(熱帯・亜熱帯地域など)に渡航した、または流行地域から帰国した
  • 発熱に加え、発疹、強い頭痛(目の奥の痛み)、関節痛、筋肉痛などの典型的な症状が見られる。
  • 国内でデング熱の発生が報告されている地域に滞在しており、蚊に刺された可能性がある。

医療機関を受診する際は、以下の情報を医師に伝えるようにしましょう。

  • いつから、どのような症状があるか(発熱のピーク、発疹の時期や形、痛みの部位や程度など)
  • 最近の海外渡航歴(渡航先、渡航期間、帰国日)
  • 蚊に刺された覚えがあるか(いつ、どこで)
  • 持病現在服用している薬の有無

これらの情報は、医師がデング熱を診断し、適切な治療や指導を行う上で非常に重要な手がかりとなります。自己判断で様子を見たり、誤った市販薬を使用したりすることは、診断の遅れや重症化のリスクを高める可能性があるため避けるべきです。

もし、医療機関でデング熱と診断された場合は、医師の指示に従って安静にし、水分補給を十分に行いましょう。また、蚊に刺されないように注意し、周囲への感染拡大を防ぐための対策をとることも大切です。

まとめ|デング熱の症状を知り、適切な対応と予防を

デング熱は、デングウイルスに感染した蚊によって媒介される感染症です。突然の高熱、発疹、強い関節痛や筋肉痛、目の奥の痛みなどが主な症状として現れます。多くの場合は1週間程度で回復に向かいますが、稀にデング出血熱やデングショック症候群といった重症型に移行し、命に関わることもあります。

デング熱には特効薬がないため、治療は症状を和らげる対症療法が中心となります。自己判断でアスピリンなどの特定の市販薬を使用すると、出血傾向を強めるリスクがあるため注意が必要です。発熱や痛みに対しては、アセトアセトアミノフェンを含む薬剤が比較的安全とされていますが、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。

デング熱の予防には、何よりも「蚊に刺されない」ための対策が不可欠です。日中の蚊(ヒトスジシマカなど)の活動に注意し、虫よけ剤の適切な使用、長袖・長ズボンの着用、そして蚊の発生源となる水たまりをなくすといった対策を徹底しましょう。デング熱の流行地域へ渡航する際は、事前に流行状況を確認し、現地での蚊対策、そして帰国後の体調管理に十分注意することが重要です。

もし、デング熱を疑う症状、特に流行地域からの帰国後に発熱や全身の痛みなどが見られた場合は、必ず速やかに医療機関を受診し、渡航歴や蚊に刺された状況を医師に伝えましょう。早期の診断と適切な医療機関での対応が、重症化を防ぐために非常に重要です。

この記事が、デング熱の症状や予防策についての理解を深め、皆様の健康管理の一助となれば幸いです。

※本記事はデング熱に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の医療行為を推奨したり、病気の診断・治療を代替するものではありません。個々の症状や健康状態については、必ず医療機関で医師の診断と指導を受けてください。

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