口内炎の原因・症状・治し方|痛みを和らげ早く治す対策ガイド

口の中にできた痛みを伴う「口内炎」。食事や会話が辛くなり、早く治したいと感じる方も多いのではないでしょうか。一口に口内炎と言っても、いくつかの種類があり、それぞれ原因や効果的な治し方が異なります。この記事では、口内炎ができるメカニズムから、主な原因、代表的な種類別の特徴、ご自宅でできるセルフケア、市販薬や病院での治療法、そして日頃からできる予防策まで、口内炎に関する情報を網羅的に解説します。つらい口内炎を改善し、再発を防ぐための参考にしてください。

目次

口内炎とは?

口内炎とは、口の中の粘膜に起こる炎症の総称です。唇の内側、頬の内側、歯ぐき、舌、上あごなど、口の中の様々な場所に発生する可能性があります。多くの場合、赤みや腫れ、ただれ、潰瘍(かいよう:粘膜の一部が剥がれてえぐれた状態)を伴い、触れたり食べ物が当たったりすると強い痛みを引き起こします。

口内炎ができるメカニズム

口の中の粘膜は、常に食べ物や飲み物、細菌など様々な刺激にさらされています。健康な状態であれば、粘膜は傷ついても速やかに修復される「ターンオーバー」と呼ばれる新陳代謝を繰り返しています。

しかし、何らかの原因でこのターンオーバーのサイクルが乱れたり、粘膜が大きなダメージを受けたりすると、修復が追いつかずに炎症が起こりやすくなります。傷ついた粘膜に細菌などが感染することで、さらに炎症が悪化する場合もあります。

口内炎は、このように口の中の粘膜の抵抗力が低下した状態や、物理的・化学的刺激、全身の体調不良、免疫力の低下などが複合的に関与して発生すると考えられています。

口内炎の主な症状

口内炎の最も一般的な症状は「痛み」です。特に食事中や会話中に患部に刺激が加わると、痛みが強くなります。痛みの程度は口内炎の種類や大きさ、深さによって異なりますが、QOL(生活の質)を著しく低下させることも少なくありません。

痛みの他に、口内炎によく見られる症状としては以下のようなものがあります。

  • 赤みと腫れ: 炎症を起こした部分が赤く腫れます。
  • ただれ(潰瘍): 粘膜の一部が剥がれて、白っぽい、または黄色っぽい膜で覆われたり、赤くえぐれたりします。
  • しみたりヒリヒリする感覚: 熱いもの、冷たいもの、辛いもの、酸っぱいものなどが触れると強くしみたり、刺激を感じたりします。
  • 口の中の不快感: 患部が気になる、ザラザラする、といった感覚です。
  • 味覚異常: 口内炎の種類によっては、味を感じにくくなることがあります。
  • 口臭: 炎症や潰瘍部分に細菌が繁殖することで、口臭の原因になることがあります。

これらの症状は、口内炎の種類によって現れ方が異なる場合があります。

口内炎の主な原因

口内炎ができる原因は一つではなく、様々な要因が複雑に関係していることが多いです。ここでは、口内炎の主な原因をいくつかご紹介します。

物理的刺激による原因

口の中の粘膜は非常にデリケートです。以下のような物理的な刺激は、直接的に粘膜を傷つけ、口内炎を引き起こす原因となります。

  • 誤って噛んでしまう: 食事中などにうっかり頬の内側や舌を噛んでしまうことは誰にでも起こり得ます。できた傷から炎症が広がることがあります。
  • 歯ブラシや硬い食べ物: 歯磨きの際に強く擦りすぎたり、先端の硬いものが当たったり、お煎餅などの硬い食べ物で粘膜を傷つけたりすることもあります。
  • 熱傷(やけど): 熱い飲み物や食べ物を急いで口に含んだ際に、口の中を火傷し、それが口内炎になることがあります。
  • 矯正装置や入れ歯: 歯科矯正装置のワイヤーやブラケットが粘膜に当たったり、合わない入れ歯が擦れたりすることで、慢性的な刺激となり口内炎の原因となることがあります。

ストレスや疲労による原因

精神的なストレスや体の疲れが溜まると、免疫力が低下しやすくなります。免疫力が低下すると、口の中の常在菌のバランスが崩れたり、ウイルスの活動が活発になったりして、口内炎ができやすくなると考えられています。

  • 免疫力の低下: ストレスホルモンの増加や睡眠不足などにより、体の免疫システムが十分に機能しなくなり、口の中の粘膜を守る働きが弱まります。
  • 唾液の分泌量減少: ストレスや疲労は、唾液の分泌量を減らすことがあります。唾液には口の中を清潔に保ち、細菌の増殖を抑える働きがあるため、唾液が減ると口内環境が悪化しやすくなります。

栄養不足による原因

口の中の粘膜を健康に保つためには、様々な栄養素が必要です。特にビタミンB群や鉄分などの栄養素が不足すると、粘膜の再生や修復がうまくいかなくなり、口内炎ができやすくなります。

  • ビタミンB2、B6: これらのビタミンは、皮膚や粘膜の健康維持に不可欠です。不足すると、口角炎や舌炎とともに口内炎ができやすくなります。
  • ビタミンB12、葉酸: これらの栄養素は、細胞の生成に関わっており、不足すると貧血とともに口内炎の原因となることがあります。
  • 鉄分: 鉄分も細胞の成長や酸素運搬に関わる重要なミネラルです。不足すると貧血や口内炎を引き起こすことがあります。

偏った食事や無理なダイエットは、栄養不足を招き、口内炎のリスクを高めます。

ウイルス・細菌感染による原因

特定のウイルスや細菌に感染することも、口内炎の原因となります。これらの感染による口内炎は、他の種類の口内炎とは症状が異なる場合が多く、適切な治療が必要です。

  • 単純ヘルペスウイルス: 口唇ヘルペスの原因ウイルスです。口の中の粘膜に感染すると、ヘルペス性口内炎を引き起こします。特に子供に多く見られます。
  • カンジダ菌: 口の中にも存在する真菌(カビ)の一種です。通常は悪さをしませんが、体の抵抗力が落ちたり、抗生物質を長期間使用したりすると異常に増殖し、カンジダ性口内炎を引き起こします。
  • その他の細菌: 口腔内の衛生状態が悪かったり、傷口から細菌感染したりすることで、炎症が起こり口内炎となることもあります(カタル性口内炎の原因の一つ)。

その他の原因

上記の他に、以下のような要因も口内炎の原因となり得ます。

  • 喫煙: タバコの煙に含まれる有害物質は、口の中の粘膜に刺激を与え、血行を悪くします。これにより、口内炎ができやすくなったり、治りにくくなったりします。
  • アレルギー: 特定の食物や歯科材料(金属、レジンなど)、薬剤などが原因で、口の中の粘膜にアレルギー反応が起こり、口内炎ができることがあります。
  • 特定の病気: ベーチェット病などの全身疾患の症状として、口内炎が繰り返し発生することがあります。原因不明の難治性口内炎が続く場合は、全身疾患の可能性も考慮し、精密検査が必要となる場合があります。
  • 薬剤の副作用: 一部の薬剤(抗がん剤や免疫抑制剤など)の副作用として、口内炎が発生することが知られています。

口内炎の原因は多岐にわたるため、自分の口内炎の原因が何であるかを理解することは、効果的な対処や予防につながります。

口内炎の種類と特徴

口内炎にはいくつかの種類があり、それぞれ原因、症状、好発部位、治療法などが異なります。ここでは、代表的な口内炎の種類とその特徴について解説します。

アフタ性口内炎

アフタ性口内炎は、最も一般的によく見られる口内炎です。円形または楕円形の浅い潰瘍で、中心部は白っぽい偽膜で覆われ、その周囲は赤く縁取られているのが特徴です。

  • 症状: 強い痛みを伴います。特に食べ物や飲み物が触れると痛みが強くなります。通常は1〜2個できますが、複数同時にできることもあります。
  • 好発部位: 唇の裏側、頬の内側、舌の側面や裏側などにできやすいです。
  • 原因: 原因ははっきりしないことが多いですが、ストレス、疲労、睡眠不足、栄養不足(特にビタミンB群)、口の中の小さな傷などが誘因となると考えられています。喫煙との関連も指摘されています。
  • 治療: 自然に1〜2週間程度で治癒することが多いですが、痛みが強い場合はステロイド軟膏やパッチなどの市販薬が有効です。

カタル性口内炎

カタル性口内炎は、機械的な刺激や熱傷、化学物質などによって引き起こされる炎症性の口内炎です。アフタ性口内炎のようなはっきりとした潰瘍ではなく、粘膜が赤く腫れたり、ただれたりするのが特徴です。

  • 症状: 患部がヒリヒリしたり、ズキズキしたりする痛みを伴います。味覚がおかしくなる(味覚異常)こともあります。粘膜の表面が剥がれやすくなることもあります。
  • 好発部位: 物理的な刺激を受けた場所にできます。頬の内側、舌、歯ぐきなど。
  • 原因: 誤って口の中を噛んだ傷、入れ歯や矯正装置による擦れ、熱い食べ物による火傷、歯磨き粉や特定の食べ物による刺激などが原因となります。口の中の不衛生な状態も悪化要因となります。
  • 治療: 原因となっている刺激を取り除くことが重要です。清潔に保ち、消炎作用のあるうがい薬や軟膏を使用することがあります。原因を取り除けば比較的早く改善します。

ヘルペス性口内炎

ヘルペス性口内炎は、単純ヘルペスウイルスに感染することで起こる口内炎です。特に初めて感染した子供に多く見られます。

  • 症状: 口の中全体、特に歯ぐきや舌、唇の内側などに多数の小さな水ぶくれができ、すぐに破れてただれ(潰瘍)になります。強い痛みを伴い、食事や水分摂取が困難になることが多いです。発熱やリンパ節の腫れを伴うこともあります。
  • 好発部位: 口腔粘膜全体、特に歯ぐき、舌、唇の内側。
  • 原因: 単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の感染。飛沫感染や接触感染によって広がります。一度感染するとウイルスは体内に潜伏し、体調が悪い時などに再活性化して口唇ヘルペスなどを引き起こすことがあります。
  • 治療: 抗ウイルス薬による治療が必要です。痛みに対しては鎮痛剤や、保護作用のあるうがい薬などが用いられます。症状が重い場合や免疫力が低下している場合は、入院が必要になることもあります。

カンジダ性口内炎

カンジダ性口内炎は、口腔内の常在菌であるカンジダ菌が異常に増殖することで起こる口内炎です。体の抵抗力が低下している場合に起こりやすいです。

  • 症状: 頬の内側や舌、歯ぐきなどに、牛乳のカスのような白い苔状の斑点が付着するのが特徴です。この白い斑点はガーゼなどで拭うと剥がれますが、その下は赤くただれています。痛みは少ない場合から、ヒリヒリ感を伴う場合まであります。
  • 好発部位: 頬の内側、舌、口蓋(上あご)、歯ぐき。
  • 原因: 免疫力の低下(高齢者、乳幼児、糖尿病やエイズなどの病気、抗がん剤やステロイドの使用)、抗生物質の長期服用による常在菌バランスの乱れ、不衛生な入れ歯などが原因となります。
  • 治療: 抗真菌薬による治療が必要です。塗り薬やうがい薬、内服薬などがあります。原因となっている全身疾患の治療や、入れ歯の清掃なども重要です。

その他の口内炎

  • ニコチン性口内炎: 喫煙によって、上あごの粘膜が白く厚くなり、表面に赤い点々(唾液腺の開口部)が現れることがあります。炎症の一種ですが、痛みは少ないことが多いです。禁煙が最も効果的な治療・予防法です。
  • アレルギー性口内炎: 特定の食物、歯科金属、薬剤などに対するアレルギー反応として起こります。原因物質に接触した部分が赤く腫れたり、ただれたりします。原因物質を特定し、それを避けることが重要です。
  • 全身疾患に伴う口内炎: ベーチェット病、クローン病、膠原病、血液疾患などの全身の病気の症状として、口内炎が繰り返し発生することがあります。難治性であったり、特徴的な形状や部位にできたりすることがあります。

口内炎がどのタイプであるかによって、適切な対処法や治療法が異なります。原因がはっきりしない場合や、症状が重い場合は、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。

アフタ性口内炎、カタル性口内炎、ヘルペス性口内炎、カンジダ性口内炎の主な特徴を以下の表にまとめました。

口内炎の種類 特徴的な症状 好発部位 主な原因 痛み
アフタ性 円形・楕円形の白い潰瘍、周囲が赤い 唇の裏、頬の内側、舌など 原因不明(ストレス、疲労、栄養不足、傷など関与) 強い
カタル性 赤み、腫れ、ただれ、境界不明瞭 物理的な刺激を受けた部位 物理的刺激(噛み傷、火傷、擦れ)、不衛生 ヒリヒリ、ズキズキ
ヘルペス性 小さな水ぶくれが多数→破れてただれ、発熱伴うこと 口腔粘膜全体、歯ぐき、舌など 単純ヘルペスウイルス感染(子供に多い) 非常に強い、飲食困難
カンジダ性 白い苔状の斑点(拭うと剥がれる、下はただれ) 頬の内側、舌、口蓋など カンジダ菌の異常増殖(免疫低下、抗生物質、不潔な入れ歯) 比較的少ない〜ヒリヒリ

口内炎を早く治す方法(対処法)

できてしまった口内炎は、できるだけ早く治したいものです。口内炎の種類や症状の程度によって対処法は異なりますが、ご自宅でできるセルフケアや、薬による治療法があります。

セルフケアによる治し方

軽症のアフタ性口内炎やカタル性口内炎であれば、セルフケアで十分改善することが多いです。口の中を清潔に保ち、生活習慣を見直すことが重要です。

口腔内を清潔に保つ

口の中を清潔に保つことは、口内炎の悪化を防ぎ、治癒を促進するために非常に重要です。

  • 丁寧な歯磨き: 歯磨きで食べかすやプラークを取り除き、細菌の繁殖を抑えましょう。ただし、口内炎がある部分は刺激しないように、やわらかめの歯ブラシで優しく磨くか、患部を避けて磨きましょう。歯磨き粉も、刺激の少ないものを選ぶと良いでしょう。
  • うがい薬の活用: 殺菌・消毒作用のあるうがい薬は、口の中の細菌を減らし、口内炎の感染や悪化を防ぐのに役立ちます。また、炎症を抑える成分(アズレンなど)を含むうがい薬もあります。ただし、アルコールを多く含むものや刺激の強すぎるものは、かえって粘膜を刺激することがあるため注意が必要です。低刺激タイプのうがい薬を選ぶか、生理食塩水(水100mlに塩0.9g程度を溶かしたもの)でのうがいも効果的です。食後や就寝前に行うと良いでしょう。

食事や生活習慣の改善

口内炎の痛みを軽減し、治癒を助けるためには、食事内容や日頃の生活習慣を見直すことも大切です。

  • 刺激物を避ける: 痛みを悪化させないために、熱すぎるもの、冷たすぎるもの、辛いもの、酸っぱいもの、塩辛いもの、硬いものなど、口内炎を刺激する可能性のある食べ物や飲み物は避けましょう。柔らかく、温度が適度なものを選び、ゆっくりと食べるように心がけてください。
  • アルコールとタバコを控える: アルコールやタバコは口の中の粘膜に刺激を与え、血行を悪化させることがあります。口内炎の治りを遅らせる原因となるため、できるだけ控えることが望ましいです。
  • 十分な睡眠と休息: ストレスや疲労は免疫力を低下させ、口内炎の治りを遅らせる要因となります。十分な睡眠をとり、休息して体を休ませることで、体の回復力を高めることができます。
  • ストレス解消: 適度な運動や趣味など、自分に合った方法でストレスを解消しましょう。

栄養バランスを考える

口内炎の予防にもつながりますが、できてしまった口内炎の治癒を早めるためにも、栄養バランスの取れた食事は非常に重要です。特にビタミンB群(B2、B6、B12)、葉酸、鉄分、ビタミンCなどの栄養素は、粘膜の健康維持や再生に関わるため、意識して摂取しましょう。

  • 積極的に摂りたい食品:
    • ビタミンB群: レバー、うなぎ、卵、乳製品、緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリー)、豆類(納豆、豆腐)、きのこ類など
    • 葉酸: ほうれん草、ブロッコリー、枝豆、レバーなど
    • 鉄分: レバー、赤身肉、ほうれん草、プルーン、大豆製品など
    • ビタミンC: パセリ、ピーマン、ブロッコリー、レモン、イチゴなど
  • サプリメントの活用: 食事だけでは十分な栄養素を摂取するのが難しい場合は、ビタミンB群などが配合されたサプリメントを活用するのも一つの方法です。

薬による治療法

セルフケアでも改善しない場合や、痛みが強い場合には、薬の使用が有効です。市販薬と病院で処方される薬があります。

市販薬の種類と選び方

薬局やドラッグストアでは、様々な種類の口内炎治療薬が販売されています。症状や口内炎のできた場所によって、適したタイプを選びましょう。

  • 貼るタイプ(パッチ剤): 口内炎を物理的に保護し、外部からの刺激や食べ物との接触を防ぎながら、薬効成分がじっくりと患部に作用します。剥がれにくい場所にできた口内炎や、日中痛みが気になる場合におすすめです。炎症を抑えるステロイド成分を含むものが多いです。
  • 塗るタイプ(軟膏・クリーム): 患部に直接塗布するタイプです。広範囲にできたり、頬の内側など塗布しやすい場所にできた口内炎に適しています。炎症を抑えるステロイド、殺菌成分、粘膜の修復を助ける成分など、様々な成分配合のものがあります。
  • スプレータイプ: 患部に直接スプレーして使用します。手が届きにくい場所や、複数の口内炎がある場合に便利です。殺菌成分や炎症を抑える成分を含むものが多いです。
  • うがい薬: 口の中全体を消毒・殺菌することで、口内炎の原因となる細菌の増殖を抑えたり、口内環境を改善したりします。炎症を抑える成分を含むものもあります。
  • 内服薬: ビタミン剤などが中心です。特にビタミンB群の不足が疑われる場合に用いられます。

市販薬を選ぶ際は、成分を確認しましょう。炎症を強く抑えたい場合はステロイド配合のものが効果的ですが、用法・用量を守り、長期間の連用は避けることが重要です。また、ウイルス性や真菌性の口内炎には効果がないため注意が必要です。薬剤師や登録販売者に相談して選ぶと安心です。

以下の表に、市販薬の代表的な剤形の特徴をまとめました。

剤形 特徴 メリット デメリット
パッチ 患部に貼り付けて使用する薄いシート 患部を保護、薬効成分が持続、飲み込みにくい場所にも 剥がれやすい場所には不向き、貼り付けにくい場合も
軟膏 患部に直接塗布するペースト状またはクリーム状の薬 患部に密着して作用、広範囲にも対応可能 塗布後違和感がある、唾液で流れやすい場所も
スプレー 患部に吹き付けて使用する液体タイプ 手軽に使用できる、手が届きにくい場所や複数箇所に 成分がすぐに流れることがある、味が気になることも
うがい薬 口の中全体に行き渡らせて使用する液体タイプ 口腔内全体の清浄・殺菌に、複数箇所に効果 局所的な効果は限定的、刺激が強い場合がある
内服薬 飲んで体内から作用させる薬(主にビタミン剤など) 体の内側から改善、他の症状にも効果期待 局所的な即効性は期待しにくい

病院で処方される薬

口内炎が重症の場合や、特定の原因(ウイルス性、真菌性、全身疾患など)によるものの場合、医療機関を受診し、医師の診断を受けて適切な薬を処方してもらう必要があります。

  • ステロイド軟膏/貼付剤: 市販薬よりも強力なステロイド成分を含むものなどが処方されることがあります。炎症を強力に抑え、痛みを軽減する効果が高いです。
  • 抗ウイルス薬: ヘルペス性口内炎の場合、ウイルスの増殖を抑えるための内服薬や点滴薬が処方されます。早期に開始することで症状を軽くし、治癒を早める効果があります。
  • 抗真菌薬: カンジダ性口内炎の場合、カンジダ菌の増殖を抑えるためのうがい薬や内服薬が処方されます。
  • その他: 原因となっている全身疾患がある場合は、その病気に対する治療が行われます。

薬を使用する際の注意点

  • 用法・用量を守る: 医師や薬剤師の指示、または市販薬の添付文書に記載された用法・用量を必ず守りましょう。
  • ステロイド薬の連用: ステロイド配合の薬は炎症を抑える効果が高いですが、長期連用すると口の中の常在菌のバランスを崩したり、粘膜が薄くなったりする副作用のリスクがあります。特に市販薬の場合は、5〜7日程度使用しても改善しない場合は使用を中止し、医療機関を受診してください。
  • 子供への使用: 子供に口内炎ができた場合は、自己判断で市販薬を使用する前に、小児科や耳鼻咽喉科、歯科口腔外科などを受診して相談することが望ましいです。特にヘルペス性口内炎は重症化しやすいので注意が必要です。
  • 原因に応じた薬を使う: ウイルス性や真菌性の口内炎に、アフタ性口内炎用の薬(ステロイドなど)を使っても効果がないばかりか、悪化させる可能性もあります。自己判断が難しい場合は、専門家へ相談しましょう。

口内炎が治るまでの期間

一般的なアフタ性口内炎の場合、特別な治療をしなくても1週間から2週間程度で自然に治ることがほとんどです。しかし、口内炎の大きさや深さ、できた場所、そして個人の体調や免疫力によって治癒までの期間は異なります。

  • アフタ性口内炎: 通常1〜2週間。大きいものや深いものは3週間以上かかることもあります。
  • カタル性口内炎: 原因となっている刺激を取り除き、適切に対処すれば比較的早く(数日〜1週間程度で)改善することが多いです。
  • ヘルペス性口内炎: 症状のピークは数日ですが、完全に治るまでには2週間〜1ヶ月程度かかることがあります。抗ウイルス薬を早期に使用すれば期間を短縮できます。
  • カンジダ性口内炎: 抗真菌薬による治療を行えば、数日〜1週間程度で改善が見られることが多いです。

2週間以上経っても治らない口内炎や、繰り返しできる口内炎の場合は、単なる口内炎ではなく他の病気が隠れている可能性もあるため、医療機関を受診することが重要です。

口内炎の予防方法

口内炎は一度できると痛みを伴い不快なものですが、日頃からいくつかのことに気をつけることで、口内炎ができるリスクを減らすことができます。

日常生活での予防策

毎日の生活習慣を整えることが、口内炎予防の基本です。

  • 規則正しい生活と十分な睡眠: 体の免疫力を高く保つために、十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活を心がけましょう。
  • ストレスをためない: ストレスは免疫力低下の大きな要因です。適度にリフレッシュする時間を作り、ストレスを上手に解消しましょう。
  • 丁寧な口腔ケア: 食後の歯磨きはもちろん、歯間ブラシやデンタルフロス、うがいなども活用して、口の中を清潔に保ちましょう。ただし、粘膜を傷つけないように優しい力で行うことが大切です。
  • 口の中を傷つけない: 熱すぎるものや硬すぎるものの飲食に注意し、食事中は口内を誤って噛まないように意識しましょう。入れ歯や矯正装置を使用している場合は、粘膜に当たっていないか確認し、調整が必要な場合は歯科医師に相談しましょう。
  • 禁煙・節酒: タバコは口内環境を悪化させ、血行を阻害します。お酒の飲みすぎも口の中を乾燥させたり刺激を与えたりする可能性があります。禁煙または本数を減らす、節酒を心がけましょう。

栄養摂取での予防策

バランスの取れた食事は、健康な粘膜を作るために不可欠です。特に口内炎予防に効果的な栄養素を意識して摂取しましょう。

  • ビタミンB群の積極的な摂取: ビタミンB2、B6、B12は、皮膚や粘膜の健康を保ち、再生を助ける重要な栄養素です。これらが不足すると、口内炎ができやすくなります。レバー、魚介類、卵、乳製品、大豆製品、緑黄色野菜などを積極的に食事に取り入れましょう。
  • その他のビタミン・ミネラル: ビタミンCは粘膜のコラーゲン生成を助け、免疫力を高める働きがあります。亜鉛は細胞のターンオーバーに関与しています。これらの栄養素もバランス良く摂取することが望ましいです。
  • サプリメントの活用: 食事で十分に摂取するのが難しい場合は、マルチビタミンやビタミンB群のサプリメントを補助的に利用することも考えられます。

日頃からこれらの予防策を実践することで、口内炎ができるリスクを低減し、たとえできても早く治りやすくなります。

病院を受診する目安

多くの場合、口内炎は数日から2週間程度で自然に治癒するか、市販薬で対処可能です。しかし、以下のような場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが強く推奨されます。

自分で治せない場合

  • 2週間以上経っても治らない: 一般的なアフタ性口内炎は通常2週間以内に治ります。それ以上長引く場合は、他の原因や病気が隠れている可能性があります。
  • 大きさが1cmを超える: 大きな口内炎は痛みが強く、治りにくい傾向があります。
  • 数が増える、頻繁に再発する: 繰り返しできる口内炎や、一度に多数できる場合は、原因を特定するために検査が必要な場合があります。
  • 痛みが非常に強く、飲食が困難: 痛みが日常生活に支障をきたすレベルであれば、医療機関でより効果的な治療を受けることで痛みを和らげることができます。

特定の症状がある場合

以下のような全身症状や、口内炎以外の症状を伴う場合は、ウイルス感染や全身疾患の可能性も考えられるため、速やかに医療機関を受診しましょう。

  • 高熱、全身の倦怠感: ヘルペス性口内炎などで見られる症状です。
  • リンパ節の腫れ: 口内炎がある側の首や顎の下のリンパ節が腫れることがあります。
  • 口内炎以外の部位の症状: 目が充血したり痛んだりする、皮膚に発疹が出る、性器に潰瘍ができるなど、口内炎以外の場所に症状がある場合は、ベーチェット病などの全身疾患の可能性があります。
  • 原因が不明確、あるいは自分で疑われる原因に心当たりがない: 何が原因で口内炎ができたのか全く分からない場合。
  • 免疫力が低下している状態: 糖尿病、エイズ、がん治療中などで免疫力が低下している方が口内炎ができた場合、重症化したりカンジダ性口内炎など他の種類である可能性もあるため、早めに受診しましょう。

口内炎で受診する診療科は、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科、皮膚科、内科などが考えられます。迷う場合は、かかりつけ医に相談するか、総合病院の総合診療科を受診するのも良いでしょう。

【まとめ】口内炎

口内炎は、口の中の粘膜にできる痛みを伴う炎症の総称です。物理的な刺激、ストレス、疲労、栄養不足、ウイルス・細菌感染など、様々な原因によって引き起こされます。アフタ性、カタル性、ヘルペス性、カンジダ性など、いくつかの種類があり、それぞれ特徴や対処法が異なります。

多くの場合、口内炎は口腔内を清潔に保ち、バランスの取れた食事を心がけるなどのセルフケアや、薬局で購入できる市販薬で改善が見られます。市販薬には、患部を保護するパッチタイプ、塗り薬、スプレータイプなどがあり、症状や部位に応じて使い分けることができます。

しかし、2週間以上治らない、痛みが強い、数が多い、頻繁に再発する、高熱を伴うなど、症状が重い場合や長引く場合は、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。病院では、原因に応じた適切な薬(ステロイド、抗ウイルス薬、抗真菌薬など)が処方され、早く治すことができます。

口内炎は日頃の予防も非常に重要です。規則正しい生活、十分な睡眠、ストレス管理に加え、毎日の丁寧な口腔ケアと、ビタミンB群などを意識した栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。

つらい口内炎に悩まされないために、原因を知り、適切な対処と予防を行いましょう。

※本記事は口内炎に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や医薬品を推奨するものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。

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