健康診断の結果を見て、「hdlコレステロール」という項目が気になっていませんか？善玉コレステロールとも呼ばれるこの数値は、私たちの健康状態を知るための重要なバロメーターです。
数値が高かったり低かったりすると、「何か病気のリスクがあるのでは？」と不安に思うかもしれません。しかし、hdlコレステロールの役割や基準値を正しく理解すれば、いたずらに心配する必要はなく、適切な対策を立てることができます。
この記事では、hdlコレステロールの基本的な知識から、基準値、高い場合・低い場合のそれぞれの原因と影響、そして数値を改善するための具体的な方法（食事・運動・生活習慣）まで、分かりやすく解説します。
hdlコレステロールとは？善玉コレステロールの役割
hdlコレステロール（高比重リポタンパク質コレステロール）は、一般的に「善玉コレステロール」として知られています。その主な役割は、体内の血管壁にたまった余分なコレステロールを回収し、肝臓に運び戻すことです。
この働きから、HDLコレステロールは「血管のお掃除屋さん」とも呼ばれ、動脈硬化の進行を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な血管の病気のリスクを低減させる上で非常に重要な役割を担っています。
つまり、hdlコレステロールは、私たちの血管を健康に保つための”味方”なのです。
hdlコレステロールの基準値と目標値
日本動脈硬化学会が定める脂質異常症の診断基準では、hdlコレステロールの基準値は40mg/dL以上とされています。
この数値を下回ると「低HDLコレステロール血症」と診断され、動脈硬化のリスクが高まるため注意が必要です。一方で、基準値に上限は設けられていませんが、極端に高い場合にも注意が必要なケースがあります（後述します）。
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| HDLコレステロール | 40mg/dL以上 |
健康診断の結果と照らし合わせ、ご自身の数値がどの範囲にあるかを確認してみましょう。
hdlコレステロール値の男女差
hdlコレステロール値には性別による差が見られます。一般的に、女性は男性よりも数値が高い傾向にあります。これは、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」に、HDLコレステロールを増やす働きがあるためです。
そのため、閉経後の女性はエストロゲンの分泌が減少することから、hdlコレステロール値が低下しやすくなるため、より一層の注意が必要になります。
hdlコレステロールの危険値とは？
明確に「危険値」として定められた数値はありませんが、基準値である40mg/dL未満は「低HDLコレステロール血症」とされ、健康上のリスクが高まる状態と考えられています。
数値が低いほど、血管内に余分なコレステロールが溜まりやすくなり、動脈硬化が進行する危険性が増します。健康診断で40mg/dL未満を指摘された場合は、生活習慣の見直しを始めることが重要です。
hdlコレステロールが高い場合
hdlコレステロールは善玉であるため、基本的には数値が高い方が望ましいとされています。基準値（40mg/dL以上）をクリアしていれば、通常は大きな問題にはなりません。
しかし、100mg/dLを超えるような極端な高値の場合は、背景に何らかの原因が隠れている可能性も考えられます。
hdlコレステロールが高い原因
適度な運動やアルコール摂取、特定の薬剤の影響などでhdlコレステロールが高くなることがあります。これらは多くの場合、心配いりません。
高値でも注意が必要なケース（遺伝性など）
まれに、遺伝的な体質によってhdlコレステロールが異常に高くなることがあります。代表的なものに「CETP（コレステリルエステル転送蛋白）欠損症」があります。
この場合、hdlコレステロールの”量”は多くても、コレステロールを回収する”質”が低下している可能性が指摘されています。つまり、数値が高いからといって必ずしも動脈硬化のリスクが低いとは言い切れないのです。
極端に数値が高い場合は、一度専門の医療機関で相談することをおすすめします。
hdlコレステロールが低い場合
hdlコレステロールが 基準値の40mg/dLを下回る状態は、健康上のリスクサインです。その原因の多くは、日々の生活習慣に潜んでいます。
hdlコレステロールが低い原因
hdlコレステロールが低くなる主な原因には、以下のようなものが挙げられます。
- 肥満（特に内臓脂肪の増加）
- 運動不足
- 喫煙
- 糖質や脂質の多い食事への偏り
- ストレス
- 遺伝的な要因
これらの要因は、互いに影響し合ってhdlコレステロール値を低下させることがあります。
hdlコレステロールが低いことの影響
hdlコレステロールが低い状態が続くと、血管の壁に悪玉（LDL）コレステロールが蓄積しやすくなります。これがプラーク（粥腫）となり、血管を硬く、狭くしてしまいます。この状態が「動脈硬化」です。
動脈硬化が進行すると、血流が悪くなったり、プラークが破れて血栓（血の塊）ができたりすることで、以下のような命に関わる病気を引き起こすリスクが高まります。
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞
hdlコレステロールを正常な範囲に保つことは、これらの病気を予防するために非常に重要です。
hdlコレステロールを増やす方法
hdlコレステロールは、生活習慣を見直すことで数値を改善できる可能性が高い項目です。ここでは、具体的な改善策を「食事」「運動」「生活習慣」の3つの側面から解説します。
食事による改善策
バランスの良い食事を基本としながら、hdlコレステロールを増やす効果が期待できる食品を積極的に取り入れましょう。
- 青魚を積極的に摂る: サバ、イワシ、サンマなどに含まれるDHAやEPAといったn-3系多価不飽和脂肪酸は、中性脂肪を減らし、hdlコレステロールを増やす働きが期待できます。
- 良質な油を選ぶ: 油を使う際は、オリーブオイルやキャノーラ油などに含まれるオレイン酸が豊富なものを選びましょう。
- 大豆製品を食事に加える: 豆腐、納豆、豆乳などの大豆製品に含まれる大豆たんぱく質には、コレステロール値を改善する効果が報告されています。
- 食物繊維を十分に: 野菜、きのこ、海藻類に豊富な水溶性食物繊維は、コレステロールの吸収を穏やかにする働きがあります。
- トランス脂肪酸は避ける: マーガリンやショートニング、それらを使った菓子パンや揚げ物に含まれるトランス脂肪酸は、hdlコレステロールを減少させるため、できるだけ避けましょう。
運動による改善策
運動はhdlコレステロールを増やすための非常に効果的な方法です。特に、継続的な有酸素運動が推奨されます。
- 運動の種類: ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など
- 運動の目安: 「ややきつい」と感じるくらいの強度で、1日30分以上、週に3日以上を目指しましょう。まとめて時間が取れない場合は、10分の運動を3回に分けるなど、細切れでも構いません。
- 継続が力: 大切なのは無理なく続けることです。まずは通勤時に一駅歩く、エレベーターを階段にするなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やすことから始めましょう。
生活習慣の見直し（禁煙・飲酒）
喫煙はhdlコレステロールを減少させる大きな要因の一つです。禁煙することで、数値の改善が期待できるだけでなく、心血管疾患の総合的なリスクを大幅に下げることができます。
また、アルコールについては、「適量であればHDLを増やす」というデータもありますが、飲み過ぎは中性脂肪を増やし、肝臓に負担をかけるなど、かえって健康を害する原因となります。飲む場合は、節度ある適量を心掛けることが重要です。
サプリメントの活用（補助として）
DHA・EPAや難消化性デキストリン（食物繊維の一種）など、hdlコレステロール値の改善をサポートするサプリメントや特定保健用食品（トクホ）もあります。
ただし、これらはあくまで食事や運動といった生活習慣の改善を基本とした上での補助的な役割です。サプリメントの利用を考える際は、まずかかりつけ医や薬剤師に相談しましょう。
ldlコレステロールとの関係性（悪玉コレステロールとのバランス）
コレステロールの管理において、hdlコレステロール（善玉）の数値だけでなく、ldlコレステロール（悪玉）とのバランスを見ることが非常に重要です。
ldlコレステロールは、増えすぎると血管壁に蓄積して動脈硬化の原因となるため「悪玉」と呼ばれます。健康な血管を保つには、この悪玉を減らし、善玉を増やすことが理想です。
LH比とは？
動脈硬化のリスクをより正確に評価するための指標として「LH比」があります。これは、ldlコレステロール値をhdlコレステロール値で割って算出します。
LH比 ＝ ldlコレステロール値 ÷ hdlコレステロール値
このLH比の目標値は以下の通りです。
| 状態 | LH比の目標値 |
|---|---|
| 健康な方 | 2.0未満 |
| 高血圧や糖尿病などのリスクがある方 | 1.5未満 |
たとえldlコレステロールとhdlコレステロールがそれぞれ基準値内であっても、LH比が高い場合は動脈硬化のリスクが隠れている可能性があります。一度ご自身の数値を計算してみることをお勧めします。
hdlコレステロールに関するよくある質問
HDLコレステロールは高い方が良いですか？
はい、基本的には基準値である40mg/dL以上で、高い方が動脈硬化の予防につながるため良いとされています。ただし、100mg/dLを超えるような極端な高値の場合は、遺伝的な要因などが隠れている可能性もあるため、医師に相談することをおすすめします。
HDLコレステロールの正常値は女性でいくつですか？
男女ともに基準値は「40mg/dL以上」です。しかし、女性は女性ホルモンの影響で男性よりも平均値が高い傾向にあります。そのため、同じ40mg/dL台でも、女性の場合は相対的に注意が必要な場合もあります。
HDLコレステロールの危険値はいくつですか？
明確な危険値はありませんが、基準値を下回る「40mg/dL未満」は低HDLコレステロール血症と診断され、動脈硬化のリスクが高まるため注意が必要です。
HDLが高いとどうなりますか？
通常、HDLコレステロールが高い場合は、余分なコレステロールが効率よく回収され、血管が健康に保たれている状態と考えられます。心筋梗塞などのリスクが低いとされています。ただし、前述の通り、極端に高い場合は善玉としての機能が低下している可能性もゼロではありません。
まとめ｜hdlコレステロール値を適切に保つために
hdlコレステロールは、私たちの血管を健康に保つ「善玉」のコレステロールです。この数値が基準値である40mg/dLを下回ると、動脈硬化を進行させ、心筋梗梗塞や脳梗塞のリスクを高めてしまいます。
hdlコレステロールが低い原因の多くは、肥満、運動不足、喫煙、食生活の乱れといった生活習慣にあります。逆に言えば、これらを見直すことで、数値を改善できる可能性が高いということです。
- 食事: 青魚や大豆製品、野菜、良質な油を摂る
- 運動: ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にする
- 生活習慣: 禁煙を心掛け、飲酒は適量に
健康診断は、ご自身の体の状態を知り、生活を見直す絶好の機会です。hdlコレステロールの数値を正しく理解し、健康的な毎日を送るための第一歩を踏み出 ましょう。もし数値に異常が見られたり、不安な点があったりする場合は、自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。
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免責事項：本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。健康に関する問題については、必ず専門の医療機関にご相談ください。
