味覚障害は、食事の味が分かりにくくなったり、何も食べていないのに変な味を感じたりと、日常生活に大きな影響を与えるつらい症状です。「この味覚障害、どうすれば治るんだろう?」と不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。味覚障害には様々な原因があり、原因によって適切な治し方や対策が異なります。この記事では、味覚障害の主な原因から、病院での治療法、ご自宅で今日からできるセルフケアまで、あなたの味覚を取り戻すための具体的なステップを分かりやすく解説します。
どんな症状?味を感じにくい・変な味がする
味覚障害とは、食べ物や飲み物の味を正常に感じることができなくなる状態全般を指します。その症状の現れ方は人によって様々ですが、主なものとして以下のような感覚の変化が挙げられます。
- 味が薄く感じる、鈍くなる(味覚減退):以前はしっかり感じていた塩味や甘味、酸味などが弱く感じられます。だしの味や素材の風味が分からなくなり、食事が味気なく感じられることがあります。
- 特定の味だけが分からなくなる(解離性味覚障害):甘味だけ、塩味だけといった特定の味だけが感じにくくなる状態です。複数の味が同時に障害されることもあります。
- 何も食べていないのに変な味がする(異味症):口の中に苦味、渋味、金属のような味などが常に、あるいは断続的に感じられます。「口の中がまずい」「口の中が苦い」と感じてしまい、食事が楽しめなくなるだけでなく、精神的な苦痛を伴うこともあります。
- 本来の味とは違う味に感じる(錯味症):例えば、甘いはずのものが苦く感じたり、美味しいと感じていたものが不味く感じたりします。
- 全く味を感じない(味覚消失):これは最も重い味覚障害の症状で、全ての味を全く感じなくなります。非常に稀なケースですが、生活への影響は甚大です。
これらの症状は単独で現れることもありますが、複数組み合わさって生じることも少なくありません。味覚の変化は、食欲不振や栄養不足につながるだけでなく、食事の楽しみが失われることで生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性があります。
味覚障害の種類
味覚障害は、その症状の現れ方や原因によっていくつかの種類に分類されることがあります。専門的な分類では、以下のような名称が使われます。
- 味覚減退 (Hypogeusia): 味を感じる能力が低下している状態。最も一般的な味覚障害です。
- 味覚消失 (Ageusia): 味を全く感じない状態。稀です。
- 異味症 (Dysgeusia): 何も食べていないのに不快な味が持続する状態(苦味、渋味、金属味など)。
- 錯味症 (Parageusia): 本来の味とは異なる味に感じる状態。
- 幻味症 (Phantogeusia): 実際には存在しない味を感じる状態。異味症と似ていますが、原因が異なる場合があります。
これらの症状は、味覚を感じ取る舌にある「味蕾(みらい)」という器官や、味覚信号を脳に伝える神経、そして脳そのものに問題が生じることで発生します。味覚障害の治療では、これらの症状の種類だけでなく、その根底にある原因を特定することが非常に重要になります。自己判断だけでなく、専門医の診察を受けることで、ご自身の味覚障害の種類や程度、そして原因を正しく知ることが、適切な「治し方」への第一歩となります。
味覚障害の主な原因
味覚障害の原因は多岐にわたります。単一の原因で起こる場合もあれば、複数の要因が複雑に絡み合っていることもあります。ここでは、味覚障害の主な原因について詳しく見ていきましょう。ご自身の症状に心当たりがないか確認してみてください。
亜鉛不足
味覚障害の原因として最も多いとされるのが、亜鉛不足です。亜鉛は、私たちの体にとって必要不可欠なミネラルの一つであり、細胞の新生や代謝に深く関わっています。特に、舌の表面にある味を感じ取る細胞「味蕾」は、約10日という非常に短い周期で生まれ変わっています。この味蕾の細胞が正常に生まれ変わるためには、亜鉛が不可欠なのです。
亜鉛が不足すると、味蕾の細胞の生まれ変わりが滞り、その機能が低下します。これにより、味を感じる能力が鈍くなったり、正しく認識できなくなったりといった味覚障害が生じます。
亜鉛不足になる原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 偏食やダイエット:亜鉛を多く含む食品(肉類、魚介類、豆類など)の摂取量が不足している。
- 加工食品やインスタント食品の過剰摂取:これらの食品は亜鉛含有量が少なく、また亜鉛の吸収を阻害する添加物を含む場合があります。
- アルコールの過剰摂取:アルコールは亜鉛の吸収を妨げ、体外への排出を促進します。
- 特定の薬剤の服用:後述する薬剤性味覚障害の原因となる薬の中には、亜鉛の吸収を阻害したり、排出を促進するものがあります。
- 胃腸の手術や病気:消化吸収能力が低下している場合、食事からの亜鉛吸収が悪くなります。
- 妊娠・授乳:母体や乳児に必要な亜鉛量が増加するため、不足しやすくなります。
現代の食生活では、知らず知らずのうちに亜鉛が不足している方も少なくありません。特に偏食が多い方や、加工食品をよく利用する方は注意が必要です。
薬剤性(薬の副作用)
現在服用している薬が原因で味覚障害が起こることもあります。これを薬剤性味覚障害と呼びます。薬の種類は多岐にわたり、味覚に影響を与えるメカニズムも様々です。
薬剤性味覚障害の主なメカニズムとしては、以下のようなものが考えられます。
- 味蕾への直接的な影響:薬の成分や代謝物が唾液中に分泌され、味蕾に直接作用して味を感じにくくさせる。
- 亜鉛などのミネラル代謝への影響:薬が体内の亜鉛や銅などのミネラルの吸収を妨げたり、排出を促進したりすることで、味蕾の機能に必要なミネラルが不足する。
- 唾液分泌の抑制(ドライマウス):唾液は味物質を溶かして味蕾に運ぶ役割や、口の中を清潔に保つ役割があります。唾液が減少すると、味物質が味蕾に届きにくくなり、味を感じにくくなります。また、口の中が乾燥することで舌の表面が荒れ、味蕾が傷つきやすくなることもあります。
- 神経系への影響:味覚を脳に伝える神経や、脳の味覚中枢に影響を与える薬もあります。
味覚障害を引き起こす可能性のある代表的な薬としては、以下のようなものがあります。
- 降圧薬(ACE阻害薬など)
- 脂質異常症治療薬
- 精神安定剤、抗うつ薬
- 睡眠薬
- 抗ヒスタミン薬(一部)
- 抗菌薬、抗真菌薬
- 化学療法薬(抗がん剤)
- 利尿薬
- 痛風治療薬
- 口腔乾燥を招く薬全般
新しい薬を飲み始めてから味覚に異常を感じるようになった場合は、その薬が原因である可能性があります。自己判断で薬を中止せず、必ず処方医や薬剤師に相談することが重要です。医師は、味覚障害のリスクが低い別の薬に変更したり、用量を調整したりといった対応を検討してくれます。
全身疾患との関連(風邪、糖尿病など)
味覚障害は、体のどこかに病気が隠れているサインであることもあります。様々な全身疾患が味覚に影響を与える可能性があります。
- 風邪やインフルエンザなどの感染症:鼻づまりによって嗅覚が低下し、風味を感じにくくなることがよくあります。風味は味覚と密接に関わっているため、これも一種の味覚障害として感じられます。また、高熱や体力の消耗、使用した薬(抗菌薬など)も味覚に影響を与えることがあります。
- 糖尿病:糖尿病によって血糖コントロールが不良な状態が長く続くと、末梢神経障害が生じることがあります。味覚神経も影響を受ける可能性があり、味覚障害を引き起こすことがあります。また、糖尿病の治療薬が味覚に影響する場合もあります。
- 腎臓病、肝臓病:これらの病気により体内の老廃物がうまく排出されなくなると、舌の表面に老廃物が溜まったり、体内のミネラルバランスが崩れたりして、味覚障害が生じることがあります。
- 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、代謝全般が遅くなり、味蕾の機能にも影響を与えることがあります。
- 鉄欠乏性貧血、悪性貧血:貧血により全身の細胞に必要な酸素や栄養が十分に運ばれなくなると、味蕾の機能も低下する可能性があります。特に鉄分は亜鉛の吸収にも影響を与えるため、鉄不足が亜鉛不足を招くこともあります。
- シェーグレン症候群などの自己免疫疾患:唾液腺や涙腺が攻撃されることでドライマウスを引き起こし、味覚障害につながることがあります。
これらの全身疾患が原因の場合、元の病気の治療を行うことが味覚障害の改善につながります。味覚障害がなかなか改善しない場合や、他の全身症状を伴う場合は、全身疾患の可能性も考慮して医療機関を受診することが大切です。
口腔内の問題(舌炎、ドライマウスなど)
口の中の状態も、味覚に大きな影響を与えます。舌そのものの病気や、唾液の分泌量の変化などが味覚障害の原因となります。
- 舌炎:舌の表面が炎症を起こすと、味蕾がある舌乳頭が腫れたり萎縮したりして、味蕾の機能が低下します。痛みを伴うこともあります。カンジダ菌などの真菌感染や、ビタミン不足(ビタミンB群など)、鉄欠乏などが原因となることがあります。
- ドライマウス(口腔乾燥症):唾液の分泌量が減少し、口の中が乾燥する状態です。唾液は味物質を味蕾まで運ぶだけでなく、口の中の汚れを洗い流し、味蕾を保護する役割も担っています。唾液が不足すると、味物質が溶けにくくなり、味蕾への到達が妨げられるため、味を感じにくくなります。また、乾燥によって舌の粘膜が傷つきやすくなり、舌炎を併発することもあります。ドライマウスの原因としては、薬剤の副作用、加齢、ストレス、シェーグレン症候群などの全身疾患、口呼吸などが挙げられます。
- 歯周病、虫歯:口の中の不衛生な状態は、細菌の繁殖を招き、舌に苔(舌苔)が厚く付着したり、炎症を引き起こしたりして味覚に影響を与えることがあります。特に舌苔が多いと、味物質が味蕾に届きにくくなる原因となります。
- 口腔カンジダ症:口の中に常在するカンジダ菌が異常繁殖する病気です。舌や口の粘膜に白い苔のようなものが付着し、味覚障害(特に苦味や金属味)や痛みを引き起こすことがあります。免疫力の低下や、抗菌薬、ステロイド薬の使用などが原因となります。
これらの口腔内の問題が原因の場合、適切な口腔ケアや、原因となっている疾患の治療を行うことが重要です。歯科医院や口腔外科、耳鼻咽喉科などで相談してみましょう。
特発性味覚障害(原因不明)
様々な検査を行っても、明らかな原因が見つからない味覚障害を「特発性味覚障害」と呼びます。味覚障害全体の約15~20%を占めるとされています。
特発性味覚障害の場合、原因が特定できないため、明確な「治し方」を確立することは困難です。しかし、多くの場合は亜鉛不足の治療薬(亜鉛補充療法)が試みられます。これは、検査では正常値であっても潜在的な亜鉛代謝異常や局所的な亜鉛不足が存在する可能性があると考えられているためです。また、味覚改善薬や漢方薬が処方されることもあります。
原因不明と言われると不安になるかもしれませんが、特発性味覚障害であっても適切な治療やセルフケアによって改善するケースも少なくありません。諦めずに専門医と相談しながら治療を続けることが大切です。
ストレスや疲労
精神的なストレスや過労も、味覚障害の引き金となることがあります。自律神経の乱れや血行不良、唾液分泌量の低下などが味覚に影響を与えると考えられています。
- 自律神経の乱れ:ストレスによって交感神経が優位な状態が続くと、血管が収縮して血行が悪くなり、味蕾への栄養供給が滞る可能性があります。また、唾液分泌も自律神経によってコントロールされているため、ストレスがドライマウスの原因となることもあります。
- ホルモンバランスの変化:女性の場合、更年期障害や月経周期に伴うホルモンバランスの変化が味覚に影響を与えるという報告もあります。ストレスはホルモンバランスにも影響を与える可能性があります。
- 心因性:強いストレスや不安、抑うつ状態などが、実際に味覚器には問題がないにも関わらず、味覚の感じ方に変化をもたらすことがあります。異味症(特に苦味や金属味)として現れることが多いとされています。
現代社会では、仕事や人間関係、生活環境など様々な要因でストレスを抱えやすい状況にあります。味覚障害だけでなく、不眠や頭痛、胃腸の不調など、他の身体症状も伴う場合は、ストレスや疲労が原因である可能性が高いと考えられます。この場合、味覚障害そのものの治療に加えて、ストレスの軽減や心身のリフレッシュが改善に繋がる重要なステップとなります。
コロナウイルス感染症の後遺症
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した後、味覚や嗅覚の異常が長期間続くケースが報告されています。これも、近年注目されている味覚障害の原因の一つです。
コロナウイルス感染症による味覚・嗅覚障害は、ウイルスの感染によって、嗅覚に関わる細胞や、味蕾そのもの、あるいはそれらの機能をサポートする細胞がダメージを受けることで生じると考えられています。嗅覚と味覚は密接に関係しているため、嗅覚が障害されることで、風味を感じる能力が低下し、結果として味覚がおかしく感じられることが多く見られます。
多くの場合は感染から数週間~数ヶ月で自然に回復しますが、一部のケースでは数ヶ月以上続く後遺症となることがあります。
コロナ後遺症による味覚障害の治療法としては、現時点では確立されたものはありませんが、以下のようなアプローチが試みられています。
- 嗅覚トレーニング:特定の香りを繰り返し嗅ぐことで、嗅覚神経の回復を促すリハビリテーションです。
- ステロイド点鼻薬:鼻の炎症を抑えることで、嗅覚の回復を促す場合があります。
- 亜鉛補充療法:他の味覚障害と同様に試みられることがありますが、コロナ後遺症に対する有効性はまだ明確ではありません。
- 漢方薬:体全体の調子を整えることで、回復を促す目的で使用されることがあります。
コロナ後遺症による味覚障害は、比較的新しい問題であり、現在も研究が進められています。症状が続く場合は、コロナ後遺症外来を設置している医療機関や、耳鼻咽喉科で相談してみることをお勧めします。
味覚障害は自然に治る?回復の目安
味覚障害は、原因や重症度によって、自然に治る場合と、治療が必要な場合があります。「放っておいても大丈夫?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、原因によっては早期の対処が必要なケースもあります。
自然回復するケースとその期間
比較的軽度な味覚障害や、原因が一時的なものである場合は、特別な治療をしなくても自然に回復することがあります。
- 風邪などによる嗅覚低下に伴うもの:風邪が治り鼻づまりが解消されれば、ほとんどの場合、味覚(風味)も自然に元に戻ります。回復までの期間は、風邪の治り具合によりますが、数日~数週間程度が多いでしょう。
- ストレスや疲労による一時的なもの:十分な休息を取り、ストレスの原因が解消されれば、味覚も徐々に改善に向かうことがあります。回復までの期間は、ストレスの程度や持続期間によりますが、数週間~数ヶ月かかることもあります。
- 軽度な亜鉛不足:軽度の亜鉛不足であれば、食生活を少し改善するだけで亜鉛の摂取量が増え、自然に改善することもあります。ただし、明確な亜鉛不足による味覚障害の場合は、食事だけでは回復が難しいことが多く、亜鉛補充療法が必要となるケースがほとんどです。
- 薬剤性味覚障害(原因薬剤中止後):薬が原因で味覚障害が起こった場合、その薬の服用を中止したり、別の薬に変更したりすることで、味覚は徐々に回復に向かいます。回復までの期間は、薬の種類や服用期間、味覚障害の程度によりますが、数週間~数ヶ月かかることがあります。
特に、風邪や一時的なストレスなど、原因がはっきりしていて軽度な場合は、しばらく様子を見てみるのも一つの方法です。しかし、症状が改善しない場合や、原因が分からない場合は、医療機関を受診することを検討しましょう。
治るまでの期間(味蕾のターンオーバー)
味覚を感じ取る味蕾細胞は、約10日周期で新しい細胞に生まれ変わっています(ターンオーバー)。この細胞の入れ替わりがあるため、原因を取り除いたり、適切な治療を開始したりすれば、比較的早期に味覚が回復する可能性があります。
しかし、味覚障害が長期間続いている場合や、味蕾そのものがダメージを受けている場合は、回復に時間がかかることがあります。一般的には、治療を開始してから味覚の改善を実感するまでに、数週間から数ヶ月かかることが多いとされています。特に、亜鉛不足が重度であったり、長期間続いていたりした場合は、味蕾の機能が回復するまでに時間がかかる傾向があります。
また、全身疾患が原因である場合は、その病気の治療が進まなければ味覚障害も改善しにくいことがあります。高齢の方や、複数の原因が重なっている方の場合は、さらに回復に時間がかかる可能性もあります。
「すぐに治るだろう」と安易に考えず、症状が続く場合は早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが、早期回復への鍵となります。治療を開始した後も、焦らず、担当医と相談しながら根気強く治療を続けることが大切です。
味覚障害のセルフチェック方法
「もしかして味覚がおかしいかも?」と感じたら、簡単なセルフチェックでご自身の状態を確認してみましょう。ただし、これはあくまで簡易的なチェックであり、正確な診断は医療機関で行う必要があります。
簡単なチェックリスト
以下の項目について、ご自身の味覚の状態をチェックしてみてください。
- 食事の味が以前より薄く感じますか?
はい / いいえ - 特定の味(甘味、塩味、酸味、苦味など)だけが分かりにくく感じますか?
はい / いいえ - 何も食べていないのに、口の中に変な味(苦い、渋い、金属っぽいなど)が常に、あるいは断続的にしますか?
はい / いいえ - 美味しいと感じていたものが、不味く感じるようになりましたか?
はい / いいえ - 食事の時間が楽しくなくなりましたか?
はい / いいえ - 新しい薬を飲み始めてから、味覚の変化を感じますか?
はい / いいえ - 風邪や鼻づまりがありますか?
はい / いいえ - 口の中がよく乾燥しますか?
はい / いいえ - 舌に白っぽい苔のようなものがたくさん付いていますか?
はい / いいえ - 最近、強いストレスを感じたり、疲労が溜まっていますか?
はい / いいえ - 最近、新型コロナウイルスに感染しましたか?
はい / いいえ - 普段から偏食気味ですか?
はい / いいえ
チェックリストで「はい」が多いほど、味覚障害の可能性があると考えられます。特に、味の変化が続く場合や、異味症(変な味がする)の症状がある場合は、味覚障害の可能性が高いと言えます。
セルフチェックで異常を感じたら
セルフチェックで味覚に異常がある可能性を感じた場合は、自己判断で済ませずに、医療機関を受診することを強くお勧めします。
- 原因の特定:味覚障害の原因は多岐にわたるため、ご自身で正確な原因を特定することは困難です。医療機関では、問診や専門的な検査によって原因を調べてもらえます。
- 適切な治療:原因が分かれば、それに合わせた最も効果的な治療を受けることができます。例えば、亜鉛不足であれば亜鉛補充療法、薬剤性であれば薬の調整、口腔内の問題であればその治療など、原因に応じたアプローチが必要です。
- 隠れた病気の発見:味覚障害が、糖尿病や腎臓病、貧血などの全身疾患のサインである可能性もあります。医療機関を受診することで、これらの病気を早期に発見し、治療を開始することができます。
「大したことないだろう」と放置せず、専門医の診断を受けることが、早期に味覚を取り戻すための最も確実な方法です。特に、症状が1週間以上続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、迷わず受診しましょう。
医療機関での味覚障害の治療法
味覚障害の治療は、その原因を特定し、原因に応じたアプローチを行うことが基本となります。医療機関では、まず精密な検査を行い、味覚障害の種類や程度、そしてその原因を診断します。
診断の流れ(問診、検査)
医療機関を受診すると、まず医師による詳細な問診が行われます。
- 問診:
味覚障害はいつから始まったか、どのような症状か(味が薄い、変な味など)。
特定の味だけが障害されているか。
症状は常に現れているか、特定の時間帯に多いか。
食事や飲み物の種類によって症状が変わるか。
過去にかかった病気や現在治療中の病気。
現在服用している薬(市販薬やサプリメント含む)。
食生活(偏食、ダイエットなど)。
喫煙や飲酒の習慣。
ストレスや睡眠の状態。
風邪や鼻づまり、口の乾燥などの有無。
新型コロナウイルス感染歴。
これらの情報から、ある程度の原因の見当をつけます。
次に、味覚の状態や口腔内の確認、そして必要に応じて専門的な検査を行います。
- 視診:舌の表面の状態(舌苔の付着、舌炎の有無、乾燥の程度など)を目で見て確認します。
- 味覚検査:味覚の機能を客観的に評価するために行われます。代表的な検査方法には以下のようなものがあります。
- 電気味覚検査:舌に微弱な電流を流し、どの程度の強さの電流で味覚(多くは金属味)を感じるかを測定します。味覚を感じる閾値(いきち)を調べることで、味覚の感度を評価します。
- ろ紙ディスク法:甘味、塩味、酸味、苦味の4種類の基本味を染み込ませた小さなろ紙を舌の様々な部分に乗せ、どの味をどの程度の濃度で感じられるかを調べます。舌のどの部分の味覚が障害されているかを知ることができます。
- 全口法:それぞれの基本味を口全体に含んで、味の質と濃度を調べます。
- 血液検査:亜鉛や銅などのミネラルの量、貧血の有無、血糖値、肝機能、腎機能、甲状腺機能などを調べ、全身疾患との関連や亜鉛不足の有無を確認します。
- 画像検査:必要に応じて、脳腫瘍など神経系に原因がないかを調べるために、頭部のMRIやCTスキャンが行われることがあります。
これらの問診や検査結果を総合的に判断して、味覚障害の原因を特定し、診断が確定します。
原因に応じた治療アプローチ
診断された原因に基づいて、最も適切な治療法が選択されます。
- 亜鉛不足の場合:後述する亜鉛補充療法が中心となります。
- 薬剤性の場合:原因となっている薬の服用を中止したり、味覚障害を起こしにくい別の薬に変更したりします。自己判断での変更は危険なので、必ず処方医と相談しながら行います。
- 全身疾患が原因の場合:元の病気(糖尿病、腎臓病、貧血、甲状腺疾患など)に対する治療を優先的に行います。病状の改善に伴って、味覚障害も改善することが期待できます。
- 口腔内の問題が原因の場合:
- 舌炎:原因(真菌感染、ビタミン不足など)に応じた薬(抗真菌薬、ビタミン剤など)による治療や、口腔ケアの指導が行われます。
- ドライマウス:唾液分泌を促す薬、人工唾液、保湿剤の使用や、原因となる生活習慣の見直しを行います。
- 舌苔、歯周病など:歯科医院でのクリーニングや、適切な口腔ケアの指導、歯周病治療などを行います。
- ストレスや疲労が原因の場合:ストレス軽減のためのカウンセリング、抗不安薬や抗うつ薬の処方、生活習慣の改善指導などが行われます。
- コロナ後遺症の場合:嗅覚トレーニングやステロイド点鼻薬などが試みられることがあります。
複数の原因が重なっている場合は、それぞれの原因に対する治療を並行して行います。
亜鉛補充療法について(薬の服用期間)
亜鉛不足が原因と診断された場合や、特発性味覚障害の場合に、亜鉛補充療法が最も一般的かつ有効な治療法として行われます。
- 治療薬: 亜鉛製剤(多くは硫酸亜鉛水和物やポラプレジンクなど)が内服薬として処方されます。
- 服用方法: 1日に数回、食後に服用することが多いです。胃に負担がかかる場合があるため、空腹時の服用は避けるように指導されることがあります。
- 効果: 亜鉛が体内に補充されることで、味蕾細胞の生まれ変わりが促進され、味覚機能の回復が期待できます。
- 服用期間: 味覚の改善には時間がかかるため、一般的に数ヶ月以上(3ヶ月〜6ヶ月程度)継続して服用する必要があります。味覚が回復した後も、体内の亜鉛濃度が安定するまでしばらく服用を続ける場合もあります。効果が見られない場合や、原因が亜鉛不足ではない場合は、別の治療法を検討します。
- 副作用: まれに吐き気、胃の不快感などの消化器症状が現れることがあります。副作用が強い場合は医師に相談しましょう。
亜鉛補充療法は、味覚障害の治療において重要な選択肢の一つですが、効果が現れるまでに時間がかかることを理解し、医師の指示通りに根気強く続けることが大切です。また、自己判断で市販の亜鉛サプリメントを過剰に摂取すると、他のミネラル(銅など)の吸収を妨げたり、健康被害を引き起こしたりするリスクがあるため、必ず医師の指導のもとで治療薬を服用するようにしてください。
自宅でできる味覚障害の対策・セルフケア
医療機関での治療と並行して、ご自宅でできるセルフケアや生活習慣の見直しも、味覚障害の改善や再発予防に非常に有効です。日々の生活の中で少し意識するだけで、味覚の回復をサポートすることができます。
食事による改善(亜鉛を多く含む食べ物)
味覚障害の原因として最も多い亜鉛不足に対しては、食事からの亜鉛摂取を増やすことが有効です。
亜鉛を積極的に摂れる食品例
亜鉛は様々な食品に含まれていますが、特に含有量が多い食品を意識して摂るようにしましょう。
食品群 | 具体的な食品例 | 亜鉛含有量(目安) |
---|---|---|
魚介類 | 牡蠣(カキ) | 非常に多い(特に豊富) |
ホタテ、煮干し、イワシ、エビ、カニ | 多い | |
肉類 | 牛肉(特に赤身、モモ、肩) | 多い |
豚レバー、鶏レバー、ラム肉 | 多い | |
豆類・種実類 | 大豆、豆腐、納豆、アーモンド、カシューナッツ、ゴマ | 多い |
きな粉、おから | 多い | |
穀類 | 玄米、小麦胚芽、ライ麦 | 比較的多い(精製されると減少) |
野菜類 | 枝豆、たけのこ、きくらげ | 比較的多い |
卵・乳製品 | 卵黄、チーズ | 比較的多い |
※ 上記はあくまで目安であり、産地や調理法によって含有量は変動します。
意識してこれらの食品を食卓に取り入れるようにしましょう。特に牡蠣は「海のミルク」と呼ばれるほど栄養豊富で亜鉛含有量が非常に多いですが、生食の場合はノロウイルスなどのリスクもあるため、加熱調理がお勧めです。牛肉の赤身なども効率よく亜鉛を摂取できます。ベジタリアンやヴィーガンの方は、豆類や種実類、全粒穀物などを組み合わせて意識的に摂取する必要があります。
食事だけで必要な亜鉛量を十分に摂取するのが難しい場合や、吸収効率が悪い体質の場合は、医師の指導のもとで亜鉛サプリメントの利用も検討できますが、まずはバランスの取れた食事から摂るのが基本です。
味覚を感じやすくする食事の工夫
味覚障害があると、食事が美味しく感じられず、食欲が落ちてしまいがちです。しかし、栄養をしっかり摂ることは味覚の回復にも重要です。味覚を感じやすくするための工夫をいくつかご紹介します。
- だしの旨味を活かす:鰹節や昆布、干ししいたけなどから丁寧に取っただしには、旨味成分が豊富に含まれています。旨味は基本味の一つであり、味覚が低下していても感じやすい場合があります。だしの味をしっかり効かせた料理は、薄味でも満足感が得られやすいです。
- 香りを活用する:香りは風味として味覚と深く関わっています。ハーブ(パセリ、大葉、ミョウガなど)、スパイス(カレー粉、胡椒、生姜、ニンニクなど)、柑橘類(レモン、ゆずなど)、ごま油などの香りを積極的に料理に取り入れてみましょう。嗅覚を刺激することで、食事がより豊かに感じられます。
- 温度の変化を楽しむ:温かい料理は香りが立ちやすく、冷たい料理は爽やかさがあります。料理の温度を変えることで、味覚や嗅覚への刺激が変わります。
- 食感を意識する:パリパリ、ポリポリ、とろとろなど、様々な食感の食材を取り入れることで、味覚以外の感覚(触覚)を刺激し、食事の満足度を高めることができます。
- 彩り豊かにする:料理の見た目の美しさも食欲をそそります。彩り豊かな野菜などを取り入れることで、視覚からも食事を楽しむことができます。
- 酸味や辛味をアクセントに:味覚が鈍くなっている場合でも、酸味や辛味といった刺激的な味は比較的感じやすいことがあります。レモン汁、酢、唐辛子、わさびなどを少量加えることで、味にメリハリをつけることができます。ただし、舌に炎症がある場合は刺激が強すぎることもあるため、注意が必要です。
これらの工夫を取り入れながら、無理のない範囲で食事を楽しむことを心がけてください。食欲がないときは、少量でも栄養価の高いもの(ヨーグルト、チーズ、卵豆腐など)を摂取するようにしましょう。
正しい口腔ケアの実施
口腔内の状態は味覚に直結します。毎日の丁寧な口腔ケアは、味覚障害の改善だけでなく予防にも非常に重要です。
- 丁寧な歯磨き:食後はもちろん、朝晩は特に丁寧に歯を磨き、食べかすや歯垢を取り除きましょう。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスなども活用して、歯と歯の間や歯周ポケットの汚れもしっかり落とします。
- 舌苔(ぜったい)のケア:舌の表面に付着する白っぽい苔のようなものを舌苔と呼びます。舌苔が厚く付着すると、味蕾の働きを妨げ、味を感じにくくしたり、異味症の原因となったりします。舌苔は、歯磨き後に舌ブラシや舌クリーナーを使って優しく取り除きましょう。ただし、舌の粘膜は非常にデリケートなので、力を入れすぎると傷つけてしまう可能性があります。一日1回程度、舌の奥から手前に向かって優しく数回なでる程度で十分です。強くこすりすぎたり、頻繁に行いすぎたりしないように注意しましょう。
- 口の乾燥対策:ドライマウスは味覚障害の大きな原因の一つです。意識的に水分をこまめに摂るようにしましょう。また、唾液腺マッサージを行ったり、保湿効果のある洗口液やジェルを使ったりすることも有効です。就寝中は特に乾燥しやすいので、寝室に加湿器を置くのも良いでしょう。
- 義歯(入れ歯)のケア:義歯を使用している場合は、毎食後や就寝前に必ず外し、専用のブラシや洗浄剤で清潔に保ちましょう。不潔な義歯は口の中に細菌や真菌を繁殖させ、味覚障害の原因となることがあります。
正しい口腔ケアの方法が分からない場合は、歯科医院で指導を受けることができます。定期的に歯科検診を受けることも、口腔内の健康維持に繋がります。
ストレス軽減とリラクゼーション
ストレスや疲労は、自律神経を乱し、味覚障害を引き起こしたり悪化させたりする可能性があります。意識的にストレスを軽減し、心身をリラックスさせる時間を持つことが大切です。
- 十分な睡眠:睡眠不足は心身の疲労を招き、ストレスを溜め込みやすくします。毎日同じ時間に寝起きするなど、規則正しい生活を送り、質の良い睡眠を十分にとるように心がけましょう。
- 適度な運動:ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、軽い運動は気分転換になり、ストレス解消に効果的です。血行促進効果もあり、味蕾への栄養供給改善にも繋がる可能性があります。
- リラクゼーションを取り入れる:趣味の時間を持つ、好きな音楽を聴く、アロマテラピーを利用する、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるなど、ご自身がリラックスできる方法を見つけて実践しましょう。
- デジタルデトックス:スマートフォンやパソコンから離れる時間を作り、心身を休ませることも大切です。
- 誰かに話を聞いてもらう:信頼できる友人や家族に悩みを打ち明けたり、専門家(カウンセラーなど)に相談したりすることも、ストレス軽減に繋がります。
全てを完璧に行う必要はありません。まずは一つでも二つでも、日常生活に取り入れやすいことから始めてみましょう。
生活習慣の見直し(睡眠、禁煙)
味覚障害の改善や予防には、健康的な生活習慣を維持することが重要です。
- 禁煙:タバコに含まれる有害物質は、味蕾細胞にダメージを与えたり、血行を悪くしたりして味覚障害の原因となります。喫煙習慣がある方は、禁煙することで味覚の回復が期待できます。
- 飲酒を控える:過度のアルコール摂取は亜鉛の吸収を妨げ、味覚障害の原因となる可能性があります。適量にとどめるか、可能であれば控えるようにしましょう。
- バランスの取れた食事:特定の栄養素だけでなく、様々な食品から満遍なく栄養を摂取することが、体全体の健康維持、ひいては味覚機能の維持・回復に繋がります。
- 規則正しい生活リズム:毎日同じ時間に寝起きし、食事を摂るなど、規則正しい生活を送ることで、体内のリズムが整い、自律神経も安定しやすくなります。
これらのセルフケアは、すぐに劇的な効果が現れるものではありません。しかし、継続することで少しずつ味覚機能の回復をサポートし、再発予防にも繋がります。医療機関での治療と組み合わせることで、より効果的な回復を目指すことができます。
味覚障害で病院を受診するタイミング
「味覚がおかしいけど、どれくらい様子を見ていいのだろう?」「どんな症状が出たら病院に行くべき?」と悩む方もいるかもしれません。味覚障害は自然に治るケースもありますが、中には早期に医療機関を受診する必要がある場合もあります。
専門医に相談すべき症状
以下のような症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診することを強くお勧めします。
- 味覚の異常が1週間以上続く場合:一時的な体調不良や風邪によるものであれば、数日~1週間程度で改善することが多いです。それ以上続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性や、専門的な治療が必要な亜鉛不足などの可能性が考えられます。
- 何も食べていないのに常に変な味(苦味、金属味など)がする場合(異味症):異味症は、味覚器そのものの障害や、ドライマウス、精神的な要因などが関与していることが多く、原因を特定し適切な治療を受ける必要があります。
- 食欲が著しく低下したり、体重が減ったりしている場合:味覚障害によって食事が楽しめなくなり、栄養不足に陥っているサインかもしれません。健康を維持するためにも早期の対処が必要です。
- 他の症状(口の乾燥、舌の痛み、全身の倦怠感、体重の変化など)を伴う場合:味覚障害が他の病気の一部として現れている可能性があります。
- 市販薬やサプリメントを試しても改善しない場合:自己ケアだけでは限界があるサインかもしれません。
- 原因に全く心当たりがない場合:原因不明の味覚障害は、専門的な検査によって原因が特定されることがあります。
これらの症状が見られる場合は、放置せずに必ず医療機関を受診してください。「味覚障害くらいで病院に行っていいのかな」と遠慮する必要はありません。味覚障害は生活の質に大きく関わる重要な感覚器の障害であり、適切な治療によって改善が期待できる症状です。
何科を受診すべきか?(耳鼻咽喉科など)
味覚障害の診断と治療は、主に耳鼻咽喉科で行われます。耳鼻咽喉科は、耳、鼻、喉だけでなく、舌や口腔内、唾液腺、顔面神経など、味覚に関わる器官を専門とする科だからです。多くの耳鼻咽喉科では、味覚検査を含む専門的な検査を行うことができます。
ただし、以下のような場合は、他の診療科の受診も検討する必要があります。
- 現在治療中の病気があり、その病気や服用中の薬との関連が疑われる場合:まずはかかりつけ医に相談してみましょう。かかりつけ医から専門医(耳鼻咽喉科など)への紹介状を書いてもらうことも可能です。
- ドライマウスがひどく、口腔内の問題が強い場合:歯科口腔外科や一般歯科でも相談できます。
- 明らかな全身疾患(糖尿病、腎臓病など)が原因と考えられる場合:その病気を治療している内科などの専門医に相談し、必要であれば耳鼻咽喉科を紹介してもらうのがスムーズです。
- 強いストレスや精神的な問題が疑われる場合:心療内科や精神科での相談も有効な場合があります。
- 新型コロナウイルス感染後の後遺症が疑われる場合:コロナ後遺症外来を設置している医療機関や、耳鼻咽喉科で相談してみましょう。
迷う場合は、まずかかりつけ医に相談するか、地域の基幹病院の総合内科などで相談し、適切な科を紹介してもらうのが良いでしょう。また、日本耳鼻咽喉科学会のホームページなどで、味覚外来を設置している医療機関を探すこともできます。
味覚障害を予防するために
一度味覚障害を経験すると、「また再発するのではないか?」と不安になるかもしれません。また、今は味覚に問題がない方も、将来的に味覚障害を予防するためにできることがあります。日々の生活の中で、味覚を健やかに保つための習慣を身につけましょう。
バランスの取れた栄養摂取
味覚障害の最も多い原因である亜鉛不足を防ぐために、バランスの取れた食事を心がけることが最も重要です。
- 様々な食品を食べる:特定の食品に偏らず、肉、魚、卵、大豆製品、野菜、穀物などをバランス良く食べることで、亜鉛だけでなく、味覚機能や全身の健康に必要な様々な栄養素を摂取できます。
- 亜鉛を多く含む食品を意識する:日常的に牡蠣、牛肉、豚レバー、大豆製品、ナッツ類などを適量取り入れるようにしましょう。
- 加工食品やインスタント食品を控えめに:これらの食品は亜鉛の含有量が少ないだけでなく、亜鉛の吸収を妨げる可能性のある添加物を含むことがあります。可能な範囲で手作りの食事を増やすのが理想です。
- 無理なダイエットをしない:極端な食事制限は栄養バランスを崩し、亜鉛を含む必要な栄養素が不足する原因となります。健康的な方法で体重管理を行いましょう。
日々の食事から意識することで、体内の亜鉛レベルを適正に保ち、味蕾の健康を維持することができます。
口腔環境を清潔に保つ
口腔内の健康は、味覚機能と密接に関わっています。日頃から口腔ケアを丁寧に行うことが予防に繋がります。
- 毎日の丁寧な歯磨き:食後の歯磨きを習慣にし、歯垢や食べかすをしっかり除去します。
- 舌苔ケア:舌ブラシや舌クリーナーを使って、優しく舌苔を取り除きましょう。ただし、やりすぎは禁物です。
- ドライマウス対策:意識的に水分を摂る、口呼吸を改善する、保湿効果のある製品を使うなど、口の中の乾燥を防ぎましょう。
- 定期的な歯科検診:定期的に歯科医院を受診し、虫歯や歯周病のチェック、プロによるクリーニングを受けることで、口腔内の健康を維持できます。
清潔で潤った口腔環境を保つことは、味蕾が正常に機能するために不可欠です。
ストレスを溜め込まない生活
ストレスは味覚障害だけでなく、様々な体の不調の原因となります。日頃からストレスを上手に解消する方法を見つけ、心身を健やかに保つことが予防に繋がります。
- 十分な休息と睡眠:毎日決まった時間に寝起きし、質の良い睡眠を確保しましょう。
- 趣味やリラクゼーションの時間を設ける:好きなことをする時間を作り、気分転換を図りましょう。
- 適度な運動を取り入れる:運動はストレス解消効果があるだけでなく、全身の血行を促進します。
- 一人で抱え込まない:悩みや不安は信頼できる人に話を聞いてもらったり、必要であれば専門家(カウンセラーなど)に相談したりしましょう。
ストレスは避けられないものですが、溜め込まずに発散することが大切です。
これらの予防策は、味覚障害だけでなく、全身の健康維持にも繋がる基本的なことです。日頃からこれらの習慣を意識することで、味覚を健やかに保ち、豊かな食生活を長く楽しむことができるでしょう。もし味覚に少しでも不安を感じたら、ご紹介したセルフチェックを試したり、早めに医療機関に相談したりすることも、味覚を守るための重要なステップです。
【まとめ】味覚障害かな?と思ったらまずは原因特定を!
味覚障害は、食事が楽しめなくなるだけでなく、栄養状態や心身の健康にも影響を及ぼす可能性のある症状です。味覚が薄く感じる、変な味がする、味が分からないなど、症状は人それぞれですが、その背景には様々な原因が隠されています。
この記事では、味覚障害の主な原因として、亜鉛不足、薬剤の副作用、全身疾患、口腔内の問題、ストレスや疲労、そしてコロナ後遺症などを詳しく解説しました。原因によって適切な治し方や対策が異なるため、まずはご自身の味覚障害の原因を知ることが、改善への第一歩となります。
もし味覚に異常を感じたら、まずは簡単なセルフチェックをしてみましょう。そして、症状が1週間以上続く場合や、何も食べていないのに変な味がする場合など、ご紹介した受診の目安に当てはまる場合は、迷わず医療機関(主に耳鼻咽喉科)を受診してください。 専門医による問診や検査によって、正確な原因が特定され、適切な治療(亜鉛補充療法、原因疾患の治療、薬の調整など)を受けることができます。
医療機関での治療と並行して、ご自宅でできるセルフケアも非常に重要です。亜鉛を多く含む食品を意識した食事、正しい口腔ケア、ストレス軽減や規則正しい生活習慣は、味覚機能の回復をサポートし、再発予防にも繋がります。
味覚障害は、適切な診断と治療、そして日々のケアによって改善が期待できる症状です。「きっと自然に治るだろう」と安易に考えず、ご自身の味覚の変化に耳を傾け、必要であれば専門家の力を借りながら、大切な味覚を取り戻しましょう。
※ 本記事で提供する情報は、一般的な医学知識に基づくものであり、個々の症状や状況に対する診断や治療法の決定を行うものではありません。味覚障害の症状がある場合は、必ず専門の医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。自己判断による治療や薬剤の変更は危険を伴う可能性があります。