「背中が痛い」原因徹底解説!筋肉痛から内臓疾患まで見分け方

背中が痛いという症状は、多くの人が経験する比較的ありふれた不調です。
しかし、その原因は単純な筋肉疲労から、時には命に関わる重篤な病気に至るまで、非常に多岐にわたります。
単なる肩こりや腰痛の延長と考えがちですが、痛む場所や痛み方、他の症状の有無によって、原因となる病気は大きく異なります。
この記事では、背中の痛みがなぜ起こるのか、どのような原因が考えられるのかを詳しく解説し、痛む場所による見分け方、自分でできる対処法、そして「これは危険かも?」と感じたときに病院を受診する目安や何科に行けばよいのかについて、分かりやすくご紹介します。
ご自身の背中の痛みについて、正しい知識を得るための一助となれば幸いです。

目次

背中が痛い原因は?

背中の痛みの原因は、大きく分けていくつかのカテゴリーに分類できます。
それぞれの原因によって、痛みの性質や、伴う症状が異なります。

筋肉・骨格系の原因

背中の痛みの原因として最も一般的で、多くの方が経験するのが筋肉や骨格に関わる問題です。

姿勢や生活習慣による負担

長時間のデスクワークやスマートフォンの操作、立ち仕事など、特定の姿勢を長く続けることは、背中の筋肉や関節に過度な負担をかけます。
特に、猫背や前かがみといった不良姿勢は、背骨のカーブを崩し、特定の筋肉群に緊張を集中させます。
これにより、筋肉が疲労して硬くなり、血行が悪化することで痛みを引き起こします。
また、運動不足による筋力低下や、逆に急激な運動、不慣れな体の使い方なども、筋肉や関節に負担をかけ、痛みの原因となります。
重い荷物を持ち上げる際の不適切な体の使い方も、背中に強い負担をかけやすい行動の一つです。

ぎっくり背中(急性背部痛)

「ぎっくり腰」の背中版とも言えるのが、ぎっくり背中(急性背部痛)です。
これは、くしゃみや咳をした瞬間、あるいは体をひねったり持ち上げたりした動作をきっかけに、背中に突然激しい痛みが走る状態です。
多くの場合、背中の筋肉や筋膜、靭帯などの急性の損傷によって起こると考えられています。
痛みが非常に強く、体を動かすことが困難になることもあります。
安静にしていると比較的早く改善する傾向がありますが、痛みが強い場合は医療機関での診察が必要となることもあります。

骨や関節の病気

背骨(脊椎)やその周囲の関節に病気がある場合も、背中の痛みの原因となります。

  • 変形性脊椎症: 加齢などにより背骨の関節や椎間板が変形し、神経を圧迫したり炎症を起こしたりすることで痛みが現れます。特に高齢者に多く見られます。

  • 椎間板ヘルニア: 背骨の間にあるクッション材(椎間板)が飛び出し、近くを通る神経を圧迫することで、背中の痛みや手足のしびれなどを引き起こします。首(頸椎)、背中(胸椎)、腰(腰椎)のいずれでも起こり得ますが、特に腰椎ヘルニアが有名です。胸椎ヘルニアは比較的稀ですが、背中の痛みの原因となり得ます。

  • 脊柱管狭窄症: 背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されることで、背中の痛みや足のしびれ、間欠性跛行(しばらく歩くと足が痛くなったりしびれたりして歩けなくなるが、休憩すると回復して再び歩けるようになる状態)などの症状が出ます。

  • 脊椎分離症・すべり症: 背骨の一部が分離したり、骨同士がずれてしまったりすることで、背中の痛みを引き起こします。スポーツを行う若い世代や、中高年以降に発生することがあります。

  • 骨粗しょう症による圧迫骨折: 骨がもろくなる骨粗しょう症が進行すると、軽い衝撃や何もしなくても背骨が潰れてしまう(圧迫骨折)ことがあります。これにより、背中に強い痛みが突然現れたり、徐々に痛みが強くなったりします。特に閉経後の女性に多い原因です。

  • 脊椎炎: 脊椎に細菌感染などが起こり炎症を起こす病気です。強い痛みに加え、発熱などの全身症状を伴うことがあります。

  • 関節リウマチなどの炎症性関節疾患: 全身の関節に炎症を起こす病気が、背骨の関節にも影響を及ぼし、痛みの原因となることがあります。

内臓疾患が原因の背中の痛み

背中の痛みの原因として、特に注意が必要なのが内臓の病気です。
内臓の痛みは、脳が痛みの場所を正確に認識しにくいため、本来の原因部位から離れた場所に痛みが感じられることがあります。
これを「放散痛(ほうさんつう)」と呼びます。
背中の痛みが内臓疾患によるものである場合、痛みの性質が筋骨格系の痛みとは異なることが多く、他の随伴症状(発熱、吐き気、食欲不振、倦怠感など)を伴うことが一般的です。

胃の病気

胃の病気(胃炎、胃潰瘍、胃がんなど)は、みぞおちの痛みや胸やけが代表的な症状ですが、背中の痛みを伴うこともあります。
特に、胃の後壁(背中側)に潰瘍などができた場合、背中に痛みを感じやすいとされています。
胃の痛みに合わせて、食後に痛みが増す、空腹時に痛むといった特徴が見られることがあります。

膵臓の病気

膵臓は体の奥、胃の後ろに位置しているため、膵臓の病気(膵炎、膵臓がんなど)による痛みは、しばしば背中に感じられます。
特に、お腹の痛みに加えて、みぞおちから背中にかけて、体を丸めると楽になるような、えぐるような強い痛みが特徴的とされます。
膵炎の場合は急激な痛みを伴うことが多く、膵臓がんの場合は初期には無症状なことが多いですが、進行すると持続的な鈍い背部痛や、食欲不振、体重減少、黄疸(皮膚や白目が黄色くなること)などを伴うことがあります。

胆嚢・胆管の病気

胆嚢(たんのう)や胆管の病気(胆石症、胆嚢炎、胆管炎など)による痛みは、多くの場合、右のわき腹から背中にかけて感じられます。
特に、脂肪の多い食事を摂った後に、右の肩や背中に痛みが放散することがあります。
発熱や黄疸を伴うこともあります。

腎臓・尿管の病気

腎臓や尿管の病気(腎盂腎炎、尿路結石など)による痛みは、背中の下の方、特に腰の少し上のあたりに感じられることが多いです。
尿路結石の場合は、脇腹から背中、下腹部にかけて、波のような周期的な非常に強い痛み(疝痛発作)が現れることが特徴的です。
血尿や排尿時の痛み、頻尿などを伴うこともあります。
腎盂腎炎の場合は、背中や腰の痛みに加えて、高熱や悪寒、全身倦怠感などを伴います。

その他の内臓疾患

上記以外にも、以下のような内臓疾患が背中の痛みの原因となることがあります。

  • 心臓の病気: 狭心症や心筋梗塞など、心臓の病気による胸の痛みは、左肩や左腕、顎、そして背中(特に左側)に放散することがあります。
    特に、体を動かしたときに胸が締め付けられるような痛みに加えて、背中にも痛みや違和感がある場合は注意が必要です。

  • 肺の病気: 肺炎や胸膜炎、肺がんなど、肺や胸膜の病気が原因で背中に痛みを感じることがあります。
    特に、呼吸や咳をしたときに痛みが強まることが特徴的です。

  • 大動脈瘤・大動脈解離: 大動脈という体の中で最も太い血管に問題が起こった場合、突然の激しい背中の痛みを引き起こすことがあります。
    大動脈解離では、引き裂かれるような、これまで経験したことのないような激痛が胸や背中に走ることが典型的です。
    これは命に関わる緊急性の高い状態です。

  • 食道疾患: 逆流性食道炎や食道がんなど、食道の病気による痛みが背中に放散することもあります。

  • 婦人科疾患: 子宮や卵巣の病気が原因で、下腹部の痛みが背中や腰に広がることもあります。

ストレスが原因

心身のストレスは、筋肉の緊張を引き起こしたり、痛みの感じ方を変化させたりすることで、背中の痛みの原因となることがあります。
「ストレス性背中痛」と呼ばれることもあり、特に検査をしても器質的な問題が見つからない場合に疑われます。
精神的な緊張が続くと、無意識のうちに体の筋肉がこわばり、血行不良を起こして痛みを引き起こします。
また、うつ病や不安障害といった精神的な不調が、身体症状として背中の痛みとして現れることもあります。

その他の原因

上記以外にも、以下のような原因が背中の痛みを引き起こすことがあります。

  • 感染症: 帯状疱疹(ヘルペスウイルスによる神経の炎症)は、体の片側にピリピリ、チクチクとした痛みが生じ、数日後に水ぶくれを伴う発疹が現れます。発疹が現れる前の段階で、背中の片側に痛みを先に感じることがあります。

  • 腫瘍(がんの転移など): 背骨や周囲の組織に腫瘍ができた場合、あるいは他のがんが骨や神経に転移した場合、持続的な強い痛みを引き起こすことがあります。特に夜間に痛みが強くなる、安静にしても痛みが軽くならない、体重減少や全身倦怠感を伴うといった場合は注意が必要です。

  • 線維筋痛症: 全身のあちこちに慢性的な痛みを引き起こす病気で、背中も痛む部位の一つです。筋肉や関節には異常が見られないのが特徴です。

背中の痛む場所別の原因

背中の痛みがどのあたりに集中しているかによって、疑われる原因がある程度絞り込めます。
ただし、痛みの感じ方には個人差があり、必ずしも特定の場所の痛みが特定の病気を意味するわけではありません。
あくまで可能性として参考にしてください。

背中 真ん中が痛い場合

背中の真ん中、つまり背骨の胸椎あたりやその周辺に痛みが集中する場合、いくつかの原因が考えられます。

  • 姿勢や筋肉の負担: デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けたり、猫背になったりすることで、背骨の胸椎周辺の筋肉や関節に負担がかかり、痛みを引き起こすことがよくあります。特に、肩甲骨の間あたりにコリや痛みを感じることが多いです。

  • 胸椎の椎間板ヘルニア: 比較的稀ですが、胸椎の椎間板ヘルニアが原因で、背中の真ん中や肋骨に沿った部分に痛みが現れることがあります。

  • 内臓疾患: 胃や膵臓の病気による痛みが、背中の真ん中あたりに放散することがあります。特に胃の後壁の病気や膵臓の病気で、みぞおちから背中にかけての痛みが特徴的です。また、食道の病気が原因で、背中の真ん中あたりに痛みが現れることもあります。

  • 心臓の病気: 狭心症や心筋梗塞など、心臓の病気による痛みが、胸だけでなく背中の真ん中あたりに放散することもあります。

背中 左側が痛い場合

背中の左側に痛みが集中する場合、以下のような原因が考えられます。

  • 筋肉・骨格系の問題: 左側の筋肉に負担がかかっている場合(利き手や特定の動作の癖など)、あるいは寝違えなどで左側の筋肉や関節を痛めた場合などが考えられます。

  • 内臓疾患:

    • 心臓: 最も注意が必要なのが心臓の病気です。狭心症や心筋梗塞による痛みが、左胸だけでなく、左肩、左腕、そして左側の背中に放散することがあります。
      特に、運動時や精神的な興奮時に痛みが現れ、安静にすると数分で治まる場合は狭心症が疑われます。痛みが20分以上続く場合は心筋梗塞の可能性もあり、救急受診が必要です。
    • 膵臓: 膵臓は体の中心よりやや左寄りに位置しているため、膵臓の病気(膵炎、膵臓がんなど)による痛みが、みぞおちから左側の背中にかけて感じられることがあります。
    • : 胃の病気による痛みが、左側の背中に放散することもあります。
    • 腎臓・尿管: 左側の腎臓や尿管に問題がある場合、左側の腰の少し上のあたりに痛みが現れることがあります。特に尿路結石の場合は、左の脇腹から背中にかけて激しい痛みが走ることがあります。
  • 帯状疱疹: 左側の背中にピリピリとした痛みが先に現れ、数日後に左側の背中に沿って発疹が出ることがあります。

背中 右側が痛い場合

背中の右側に痛みが集中する場合、以下のような原因が考えられます。

  • 筋肉・骨格系の問題: 左側と同様に、右側の筋肉や関節に負担がかかっている場合などが考えられます。

  • 内臓疾患:

    • 胆嚢・胆管: 胆嚢や胆管は体の右側に位置しています。胆石症や胆嚢炎、胆管炎などによる痛みは、右のわき腹から右側の背中、時には右肩にかけて放散することが特徴的です。脂肪分の多い食事を摂った後に痛みが誘発されやすい傾向があります。発熱や黄疸を伴う場合は特に注意が必要です。
    • 肝臓: 肝臓の病気(肝炎、肝臓がんなど)は、初期には自覚症状が少ないことが多いですが、進行すると右のわき腹や右側の背中に鈍い痛みや重苦しさを感じることがあります。
    • 腎臓・尿管: 右側の腎臓や尿管に問題がある場合、右側の腰の少し上のあたりに痛みが現れることがあります。尿路結石の場合は、右の脇腹から背中にかけて激しい痛みが走ることがあります。
  • 帯状疱疹: 右側の背中にピリピリとした痛みが先に現れ、数日後に右側の背中に沿って発疹が出ることがあります。

背中の痛みが内臓疾患か見分けるポイント

背中の痛みが筋肉や骨格によるものか、それとも内臓疾患によるものかを見分けることは重要ですが、自己判断は難しく、最終的には医療機関での診察が必要です。
しかし、痛みの特徴を把握することで、内臓疾患の可能性を疑うヒントにはなります。

内臓疾患による背中痛の特徴

内臓疾患による背中の痛みは、一般的に以下のような特徴を持つことが多いです。

  • 痛みの性質: 鈍い痛み、重苦しい痛み、えぐるような痛み、締め付けられるような痛みなど、筋骨格痛のような「凝り」や「張り」とは異なる性質の痛みであることが多いです。

  • 痛みの持続性: 体勢を変えたり、安静にしたりしても痛みが改善しない、あるいは悪化することがあります。筋骨格系の痛みは、多くの場合、特定の動きや体勢で痛みが強まったり弱まったりします。

  • 痛みの時間帯: 食事や排尿など、特定の行為と関連して痛みが現れたり強まったりすることがあります(例:食後に胃や胆嚢の痛み、排尿障害と共に腎臓・尿管の痛み)。夜間に痛みが強くなることも、内臓疾患や腫瘍の可能性を示唆することがあります。

  • 痛む場所: 原因となる臓器から離れた場所に痛みが感じられる「放散痛」であることが多いです。痛みの範囲が広く、漠然としていることもあります。

  • 随伴症状: 背中の痛みに加えて、以下のような全身症状や消化器症状などを伴うことが多いです。
    発熱、悪寒
    吐き気、嘔吐
    食欲不振、体重減少
    黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
    血尿、排尿時の痛み
    全身倦怠感

一方、筋肉・骨格系の背中の痛みは、多くの場合、特定の動作や姿勢で痛みが強まり、安静にしたりストレッチをしたりすることで痛みが軽減する傾向があります。
また、痛む場所を直接押すと痛みが誘発されることもあります。

危険なサイン(緊急性の高い症状)

背中の痛みに加えて、以下のような症状が見られる場合は、内臓疾患など緊急性の高い病気の可能性があり、速やかに医療機関(救急外来を含む)を受診する必要があります。

  • 突然発症した、これまでに経験したことのないような激しい痛み(大動脈解離、心筋梗塞、尿路結石発作、急性膵炎など)

  • 胸の締め付けられるような痛みや圧迫感を伴う背中の痛み(特に左側の背中。心臓の病気)

  • 発熱や悪寒を伴う背中や腰の痛み(腎盂腎炎、脊椎炎、胆嚢炎など)

  • 体を動かしても、安静にしても痛みが軽くならない、持続する痛み(内臓疾患、腫瘍など)

  • 痛みに加えて、息苦しさや呼吸困難がある(心臓、肺、大動脈の病気)

  • 痛みに加えて、手足のしびれや麻痺、力が入らないなどの神経症状がある(脊髄の圧迫、脳卒中など)

  • 痛みに加えて、お腹の激しい痛みや吐き気、嘔吐がある(膵炎、胆嚢炎、胃潰瘍穿孔など)

  • 血尿や排尿時の痛みを伴う背中や腰の痛み(尿路結石、腎盂腎炎など)

  • 原因不明の体重減少や全身倦怠感を伴う持続的な背中の痛み(悪性腫瘍など)

  • 体が動かせないほどの強い痛み(ぎっくり背中、圧迫骨折、急性炎症など)

これらの症状は、重篤な病気を示唆している可能性があるため、迷わず医療機関を受診することが重要です。

胃や急な背中の痛み

胃の不調と背中の痛みは関連することがあり、また急に背中が痛くなった場合も注意が必要です。

胃痛と背中痛の関連

胃の病気(胃炎、胃潰瘍、胃がんなど)は、主にみぞおちの痛みや不快感として現れますが、前述のように背中への放散痛として感じられることがあります。
特に、胃の裏側(後壁)に潰瘍ができた場合、痛みが背中に響きやすいと言われています。

胃の病気による背中痛の特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  • 胃の症状(みぞおちの痛み、胸やけ、吐き気など)と合わせて背中の痛みがある

  • 食後や空腹時など、食事に関連して痛みが強まることがある

  • 制酸剤などを服用すると、胃の症状と共に背中の痛みも軽減することがある

ただし、背中の痛みが胃の病気によるものかどうかは、他の病気との鑑別が必要であり、自己判断は危険です。
消化器内科を受診し、適切な検査を受けることが推奨されます。

急に背中が痛くなった場合の注意点

急に背中に強い痛みが走った場合、ぎっくり背中や骨折といった筋骨格系の問題である可能性が高いですが、内臓疾患による緊急性の高い状態である可能性も否定できません。

急な背中の痛みで特に注意すべきは、これまでの人生で経験したことのないような激しい痛みです。
このような痛みは、大動脈解離、心筋梗塞、尿路結石発作、急性膵炎などの命に関わる病気のサインである可能性があります。
痛みの強さだけでなく、痛みの性質(引き裂かれるような、えぐるようななど)、他の症状(息苦しさ、吐き気、冷や汗、血尿など)にも注意が必要です。

急に背中が痛くなり、上記の「危険なサイン」に挙げた症状が一つでも見られる場合は、ためらわずに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。

ストレス性背中痛の特徴

ストレスが原因で背中が痛む場合、特定の身体的な異常が見つからないことが特徴です。

ストレスと痛みの関係性

ストレスを感じると、自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になりやすくなります。
これにより、全身の筋肉が緊張しやすくなり、血行が悪化します。
特に、日頃から肩や背中に力が入りやすい人は、ストレスによる筋肉の緊張が背中の痛みを引き起こしやすいと考えられます。
また、ストレスは痛みの感じ方にも影響を与えます。
精神的な負担が大きいと、わずかな刺激でも痛みを強く感じやすくなったり、痛みが慢性化しやすくなったりすることがあります。

ストレス性背中痛の痛む部位

ストレスによる背中の痛みは、特定の場所だけでなく、背中全体や、肩、首、腰など広範囲にわたって感じられることがあります。
痛みの性質も、鈍い痛み、重苦しさ、張り感など様々です。
痛む場所が日によって移動したり、痛みの強さが変動したりすることも特徴の一つです。

ストレス性背中痛が疑われる場合は、痛みの原因となる身体的な病気がないことを確認した上で、ストレスの原因に対処したり、リラクゼーションを取り入れたりすることが重要です。
心理的な側面からのアプローチが必要となることもあります。

すい臓がんと背中の痛み

膵臓がんは、初期には自覚症状がほとんどないことが多いため、「サイレントキラー」と呼ばれることがあります。
症状が現れた際には、進行していることが多い病気です。

膵臓がんによる背中痛の特徴と痛む場所

膵臓がんが進行し、周囲の神経に浸潤したり、後腹膜という組織に広がったりすると、痛みが現れることがあります。
膵臓がんによる痛みの特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  • みぞおちの痛みや不快感に加え、背中(特にみぞおちの裏側、背骨の真ん中からやや左寄り)の痛みを伴うことが多い

  • 体を丸めたり、前かがみになったりすると痛みが和らぐことがある

  • 横になると痛みが強くなることがある

  • 痛みが持続的で、時間帯や体勢で大きく変化しないことがある

  • 進行すると、強い痛みが持続するようになる

痛みの性質は、鈍い痛み、重苦しさ、えぐるような痛みなどと表現されることがあります。

早期発見の重要性

膵臓がんの早期発見は非常に困難ですが、痛みに加えて、以下のような症状がある場合は注意が必要です。

  • 食欲不振、体重減少

  • 全身倦怠感

  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる、尿の色が濃くなる、便の色が薄くなる)

  • 血糖値の急激な上昇(糖尿病の発症や悪化)

これらの症状がある場合、特に高齢の方や糖尿病、慢性膵炎、家族に膵臓がんの方がいるといったリスク因子がある方は、消化器内科を受診し、医師に相談することが非常に重要です。
早期発見のためには、定期的な健康診断や人間ドック、特に腹部エコー検査や血液検査(腫瘍マーカーなど)を受けることも検討されます。

背中の痛みの対処法

背中の痛みの原因が、筋骨格系の問題や軽度の疲労である場合は、日常生活での改善策やセルフケアで痛みを和らげることができる場合があります。
ただし、痛みが強い場合や、内臓疾患などが疑われる場合は、速やかに医療機関を受診することが最も重要です。

日常生活での改善策

  • 姿勢の改善: デスクワークや立ち仕事の際には、正しい姿勢を意識しましょう。
    背筋を伸ばし、肩の力を抜くように心がけます。
    椅子の高さや机との距離を調整し、画面を見る目線を高くすることも有効です。
    長時間同じ姿勢を続けないように、定期的に休憩を取り、軽く体を動かしましょう。

  • 体の使い方の見直し: 重い物を持ち上げる際は、膝を曲げて体の中心に引き寄せ、背中を丸めずに持ち上げるようにします。
    体をひねりながら重い物を持つのは避けるようにしましょう。

  • 適切な寝具の使用: 体に合ったマットレスや枕を使用することで、寝ている間の背骨への負担を軽減できます。
    硬すぎず柔らかすぎない、体圧が分散される寝具が理想的です。

  • 運動の習慣化: 適度な運動は、背中や体幹の筋力を維持・向上させ、姿勢を安定させるのに役立ちます。
    ウォーキングや水泳、軽い筋力トレーニングなどを習慣にしましょう。
    ただし、痛みが強い時は無理な運動は避けてください。

ご自宅でできるセルフケア

痛みの原因が筋骨格系のものである場合に有効なセルフケアをいくつかご紹介します。

  • 安静: 急な強い痛み(ぎっくり背中など)の場合は、まずは無理に動かさず安静にすることが重要です。
    痛みが和らいできたら、徐々に体を動かしていくようにしましょう。

  • 温める・冷やす:
    急性期の痛み(ぎっくり背中など、炎症が疑われる場合): 痛む部分を冷やすことで、炎症や腫れを抑える効果が期待できます。冷湿布や氷嚢(タオルで包むなどして、直接皮膚に当てないように注意)を使用します。
    慢性的な痛み(筋肉の凝りや張り): 痛む部分を温めることで、血行を改善し、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。温湿布、ホットパック、入浴などが有効です。

  • ストレッチ: 背中や肩甲骨周りの筋肉をゆっくりと伸ばすストレッチは、筋肉の緊張を和らげ、柔軟性を高めるのに役立ちます。
    例:キャット&カウ: 四つん這いになり、息を吐きながら背中を丸め(キャット)、息を吸いながら背中を反らせます(カウ)。これを数回繰り返します。
    例:肩甲骨回し: 両肩を前から後ろへ、後ろから前へと大きく回します。

  • マッサージ: 痛む部分やその周辺の筋肉を優しくマッサージすることで、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげることができます。テニスボールやフォームローラーなどを利用して、自分で背中の筋肉をほぐすこともできます。

  • 市販薬の使用: 痛みがつらい場合は、湿布薬や塗り薬、飲み薬(痛み止め)などの市販薬を使用することもできます。
    ただし、漫然と使用せず、薬剤師に相談するなどして適切に使用してください。
    特に飲み薬は胃腸に負担をかけることがあるため注意が必要です。

セルフケアで痛みが改善しない場合や、痛みが悪化する場合、あるいは痛みに加えて他の症状がある場合は、専門家(医師や理学療法士など)に相談することが必要です。

  • 医師: 痛みの原因を正確に診断し、適切な治療方針を立ててくれます。

  • 理学療法士: 医師の指示のもと、運動療法や物理療法(電気治療、温熱療法など)を行い、痛みの改善や機能回復をサポートしてくれます。体の使い方や姿勢の指導なども行います。

  • 柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師: 資格を持った専門家による施術も、痛みの緩和や筋肉の緊張を和らげるのに役立つ場合があります。ただし、これらの治療を受ける前には、必ず医療機関で痛みの原因を診断してもらうことが重要です。

病院に行く目安と何科を受診?

背中の痛みを感じたとき、どのくらいの痛みで、どのような症状があれば病院に行くべきか、そして何科を受診すればよいのかは、多くの人が迷う点です。

受診を検討すべき症状

前述の「危険なサイン」に挙げた症状は、緊急性が高いため速やかな受診が必要です。
それに加えて、以下のような症状がある場合も、医療機関での診察を検討しましょう。

症状の項目 具体的な状態
痛みの強さ 日常生活に支障が出るほどの強い痛み、または徐々に痛みが強くなっている場合。
痛みの持続期間 2週間以上痛みが続いている、セルフケアで改善しない場合。
痛みの性質の変化 いつもの筋肉痛などとは違う、経験したことのない痛み方(えぐるよう、焼けつくようなど)の場合。
痛む時間帯 夜間に痛みが強くなり、眠れない、または安静にしても痛みが変わらない場合。
他の症状の有無 発熱、吐き気、食欲不振、体重減少、全身倦怠感、体のしびれ、呼吸困難、血尿、黄疸など、背中の痛み以外の症状を伴う場合。
痛みのきっかけ 明らかなきっかけ(激しい運動や重い物を持ったなど)がなく痛み出した場合。
既往歴 心臓病、消化器疾患、腎臓病、がんなどの持病がある場合。
治療への反応 市販薬やセルフケアを試しても、全く痛みが改善しない場合。

これらの症状は、単なる筋肉疲労ではない、何らかの病気が隠れている可能性を示唆しています。
自己判断で様子を見過ぎず、早めに専門家のアドバイスを受けることが大切です。

受診すべき診療科

背中の痛みの原因によって、適切な診療科が異なります。
迷う場合は、まずは「かかりつけ医」に相談するか、内科または整形外科を受診するとよいでしょう。

  • 整形外科: 筋肉、骨、関節、神経といった運動器系の病気が疑われる場合。ぎっくり背中、姿勢による痛み、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、脊椎の骨折や変形などが考えられる場合に適しています。多くの背中の痛みの原因は整形外科の範囲です。

  • 内科(特に消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、泌尿器科): 内臓疾患が疑われる場合。

    • 消化器内科: 胃、膵臓、胆嚢・胆管などの病気(胃潰瘍、膵炎、胆石症など)が疑われる場合。みぞおちの痛みや吐き気などを伴う背中の痛みに適しています。
    • 循環器内科: 心臓の病気(狭心症、心筋梗塞など)が疑われる場合。胸の痛みや息苦しさを伴う左側の背中の痛みに適しています。
    • 呼吸器内科: 肺や胸膜の病気(肺炎、胸膜炎など)が疑われる場合。呼吸や咳で痛みが強まる場合に適しています。
    • 泌尿器科: 腎臓や尿管の病気(尿路結石、腎盂腎炎など)が疑われる場合。腰の上のあたりや脇腹の痛み、血尿や排尿時の痛みを伴う場合に適しています。
  • 心療内科・精神科: ストレスや精神的な不調が原因の背中の痛みが強く疑われる場合。様々な検査で身体的な異常が見つからない場合に検討されます。

  • 皮膚科: 背中の片側にピリピリした痛みが先行し、数日後に発疹が現れた場合(帯状疱疹など)。

  • 脳神経外科・神経内科: 手足のしびれや麻痺など、神経症状が強い場合。脊髄の圧迫や、脳からの神経系の問題が疑われる場合に適しています。

  • 救急外来: 突然の激しい痛みや、「危険なサイン」に挙げた緊急性の高い症状がある場合。迷わず救急車を要請するか、救急外来を受診してください。

まずは、ご自身の痛みの特徴や随伴症状をよく観察し、どの診療科が適切か判断の目安にしてください。
しかし、原因を特定するためには複数の検査が必要になることもありますし、思わぬ病気が見つかることもあります。
自己判断に限界があることを理解し、適切なタイミングで医療機関を受診することが、症状の改善や早期治療につながります。

【まとめ】背中の痛み、多様な原因と適切な対処

背中の痛みは、誰もが経験しうる一般的な症状ですが、その背景には様々な原因が潜んでいます。
多くは姿勢の悪さや筋肉の疲労、軽いぎっくり背中といった筋骨格系の問題ですが、時には内臓の病気、ストレス、稀ながら腫瘍など、専門的な診断と治療が必要な疾患のサインであることもあります。

この記事では、背中の痛みの主な原因を、筋肉・骨格系、内臓疾患、ストレスなどに分類して詳しく解説しました。
特に、胃、膵臓、胆嚢、腎臓、心臓、肺といった内臓の病気が、背中に放散痛として現れる可能性があることをご紹介しました。
また、背中の痛む場所(真ん中、左側、右側)によって疑われる原因が異なること、そして内臓疾患による痛みは、体勢で変わらない持続性や、発熱、吐き気、体重減少といった他の随伴症状を伴うことが多いといった特徴を解説しました。

急に発症した激しい痛み、胸の痛みや息苦しさを伴う痛み、発熱を伴う痛み、安静にしても改善しない痛み、手足のしびれや麻痺を伴う痛みなどは、「危険なサイン」として速やかに医療機関を受診する必要があることも強調しました。

筋骨格系の軽度な痛みであれば、姿勢の改善やセルフケア(安静、温める・冷やす、ストレッチ、マッサージなど)が有効な場合があります。
しかし、症状が改善しない場合や、悪化する場合、あるいは内臓疾患が疑われる症状がある場合は、自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。
受診すべき診療科は、疑われる原因によって整形外科、内科(消化器内科、循環器内科など)、心療内科など多岐にわたりますが、迷う場合はまず整形外科か内科を受診するのが一般的です。

背中の痛みは、体が発する大切なサインです。「いつものこと」と軽視せず、痛みの性質や他の症状にも注意を払い、必要に応じて専門医に相談することが、ご自身の健康を守るために最も重要なステップです。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや診断に代わるものではありません。
背中の痛みに関する具体的な症状や治療については、必ず医療機関を受診し、医師の診断を受けてください。
本記事の情報に基づいて行った行動によって生じたいかなる結果についても、当方は一切の責任を負いません。

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