コロナの咳はいつまで続く?長引く後遺症、うつる期間と対処法

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染すると、様々な症状が現れますが、特に多くの人が悩まされるのが「咳」です。コンコンという乾いた咳、ゴホンゴホンという湿った咳、息苦しさを伴う咳など、その症状は様々です。そして、つらい咳がいつまで続くのか、長引く場合はどうすれば良いのか、周りの人にうつしてしまうのではないか、といった不安を抱える方も少なくありません。

この記事では、コロナ感染後の咳に焦点を当て、その症状の特徴、咳が続く期間の目安、いわゆる「後遺症」としての咳について、また、周りへの感染リスクや、ご自身でできる対処法、医療機関での治療、そして病院を受診する目安について、詳しく解説します。現在コロナの咳に悩まされている方、また今後感染した場合に備えたい方にとって、役立つ情報となることを目指します。

目次

コロナの咳の症状と特徴

新型コロナウイルス感染症による咳の症状は、人によって、また感染したウイルスの株によっても多様です。典型的な風邪やインフルエンザによる咳と似ている場合もあれば、特有の特徴が見られる場合もあります。

乾いた咳や痰の絡む咳など種類

コロナの咳は、大きく分けて「乾いた咳(乾性咳嗽)」と「痰が絡む咳(湿性咳嗽)」の2種類があります。日本呼吸器学会の咳嗽に関するガイドラインでも、咳の性状による分類は診断の手がかりとして重要とされています。

  • 乾いた咳(乾性咳嗽):
    「コンコン」「ケンケン」といった音で、痰を伴わない咳です。
    喉のイガイガ感や痛み、違和感から始まることが多いです。
    特に初期の症状として現れやすく、気道に炎症があることを示唆します。
    夜間や朝方に悪化しやすい傾向があります。
    重症化すると、息苦しさや胸の痛みを伴うこともあります。
  • 痰が絡む咳(湿性咳嗽):
    「ゴホンゴホン」「ゼロゼロ」といった音で、痰を伴う咳です。
    感染が進行し、気道や肺に炎症が広がり、粘液(痰)が増加することで起こります。
    痰の色は透明、白色、黄色、緑色など様々で、感染の種類や状態によって異なります。
    痰を出すことで一時的に呼吸が楽になることがあります。
    湿性咳嗽が続く場合は、気管支炎や肺炎などを起こしている可能性も考慮されます。

ウイルスの変異株によっては、初期から喉の痛みが強く、それに伴って乾いた咳が出やすいといった特徴が報告されることもあります。また、発熱や倦怠感などの症状よりも先に、咳や喉の痛みといった呼吸器症状が前面に出るケースも見られます。

咳以外の主な症状

新型コロナウイルス感染症では、咳以外にも様々な症状が現れます。これらの症状と咳が組み合わさることで、診断や病状の把握に役立ちます。

以下は、コロナ感染時によく見られる咳以外の主な症状です。

  • 発熱: 37.5℃以上の熱が出ることが多いですが、微熱で済む場合や熱が出ない場合もあります。
  • 喉の痛み: 多くの感染者に見られる症状で、咳と関連して現れることが多いです。
  • 倦怠感・全身痛: 体がだるく、関節や筋肉が痛むといった症状です。
  • 味覚・嗅覚障害: 以前に比べて見られる頻度は減りましたが、特定の株で起こることがあります。
  • 頭痛: 咳や発熱に伴って起こることがあります。
  • 鼻水・鼻づまり: 風邪と似た症状も現れます。
  • 下痢・嘔吐: 消化器症状が現れる人もいます。
  • 息苦しさ(呼吸困難): 重症化のサインである可能性があり、注意が必要です。

これらの症状のうち、咳が唯一の症状であることもありますが、多くの場合、複数の症状が同時に現れます。特に、発熱や喉の痛み、倦怠感を伴う咳がある場合は、新型コロナウイルス感染症を強く疑う必要があります。

コロナの咳はどのくらい続く?期間の目安

新型コロナウイルス感染症による咳がどのくらい続くかは、個人の免疫状態や感染したウイルスの種類、重症度などによって大きく異なります。多くの場合は数週間以内に改善しますが、一部の人では長期間続くこともあります。

発症からの期間と咳の分類(急性・遷延性・慢性)

医学的に、咳の持続期間は以下の3つに分類されます。これは、日本呼吸器学会のガイドラインや、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引きでも用いられている分類です。

  • 急性咳嗽(きゅうせいがいそう): 3週間未満の咳
  • 遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう): 3週間以上8週間未満の咳
  • 慢性咳嗽(まんせいがいそう): 8週間以上の咳

新型コロナウイルス感染症による咳は、発症後数日から1週間程度でピークを迎え、その後徐々に改善していくことが多いです。この期間の咳は急性咳嗽に分類されます。

しかし、一部の人では咳が3週間以上続くことがあります。この場合の咳は遷延性咳嗽と呼ばれます。さらに、8週間以上咳が続く場合は慢性咳嗽に分類されます。コロナ感染後に咳が慢性化するケースは、後述する「後遺症」として捉えられることが多いです。

咳の分類 持続期間 コロナとの関連
急性咳嗽 3週間未満 発症初期から見られる一般的な症状
遷延性咳嗽 3週間以上8週間未満 感染後の回復期に見られることがあり、注意が必要
慢性咳嗽 8週間以上 いわゆる「後遺症」として長期化するケースがある

発症から1~2週間で他の症状(発熱や倦怠感など)が改善しても、咳だけがしつこく残る、というパターンは比較的よく見られます。これは、ウイルスによって炎症を起こした気道が敏感になり、刺激に対して過剰に反応して咳が出やすくなっている状態と考えられます。

新型コロナ感染後の長引く咳(後遺症)について

新型コロナウイルス感染症に罹患した後、急性期を過ぎても症状が続く状態は、「罹患後症状(いわゆる後遺症)」と呼ばれます。この後遺症の症状の一つとして、長引く咳が挙げられます。国立国際医療研究センターが提供するCOVID-19 罹患後症状(いわゆる後遺症)の対応と診療によると、感染後3ヶ月の時点で8.8%の人に咳が持続しているというデータも報告されています。

後遺症としての咳は、感染の重症度に関わらず起こる可能性があり、軽症だった人でも発症することがあります。そのメカニズムは完全に解明されていませんが、いくつかの要因が考えられています。

  • 気道の過敏性: ウイルスによる炎症で気道がダメージを受け、タバコの煙や冷たい空気、会話などのわずかな刺激にも反応して咳が出やすくなる状態。
  • 炎症の遷延: 肺や気管支の炎症が完全に収まらず、軽い炎症が続いている状態。
  • 神経系の異常: 咳を制御する神経系にウイルスが影響を与えている可能性。
  • 精神的な要因: 感染への不安やストレスが咳を悪化させる可能性。
  • 合併症: 感染後に気管支炎や肺炎が長引いたり、別の呼吸器疾患(喘息など)が顕在化したりするケース。国立国際医療研究センターの情報では、稀に肺線維化のリスクについても言及されています。

後遺症の咳は、8週間、あるいは数ヶ月以上にわたって続くことがあります。特に、乾いた咳が続く、特定の刺激で咳が出る、夜間に咳が悪化するといった特徴が見られることがあります。倦怠感や息切れ、集中力の低下、睡眠障害など、他の後遺症を合併しているケースも少なくありません。

長引く咳が後遺症であるかどうかは、医師による診断が必要です。他の病気(喘息、COPD、肺線維症、胃食道逆流症など)が原因で咳が出ている可能性も考慮し、必要な検査が行われます。

咳が続く場合の病院受診目安

多くの場合、コロナ感染後の咳は時間とともに改善しますが、以下のような症状が見られる場合は、医療機関を受診して相談することを強く推奨します。

症状 受診の目安
咳が8週間以上続く 医学的に慢性咳嗽に分類されます。いわゆる「後遺症」や他の慢性疾患(喘息、COPD、胃食道逆流症など)の可能性を考慮し、専門医の診察を受けましょう。(日本呼吸器学会 咳嗽に関するガイドライン参照)
息苦しさが増す、呼吸が浅くなる 肺炎や他の呼吸器疾患の悪化が疑われます。緊急性の高いサインである可能性があります。
胸の痛みがある 肺炎、胸膜炎、心臓疾患などの可能性も考慮されます。
血痰が出る 気道や肺からの出血を示唆します。結核や肺がんなどの可能性もゼロではないため、必ず検査が必要です。
高熱(38.0℃以上)が続くまたはぶり返す 細菌感染の合併や別の病気の可能性が考えられます。
咳で眠れない、日常生活に支障が出る 症状が重く、生活の質(QOL)が著しく低下している状態です。適切な治療やケアが必要です。
市販薬を使っても改善しない 症状に合っていないか、より専門的な治療が必要な可能性が高いです。
もともと呼吸器疾患(喘息など)がある 基礎疾患の悪化やコントロール不良の可能性が高いです。かかりつけ医に相談しましょう。
症状が改善せず、不安が強い 専門家の意見を聞き、適切なアドバイスや治療を受けることで、安心して療養できます。

これらの症状がない場合でも、咳が長期間続くとQOL(生活の質)が著しく低下します。単なる風邪の後遺症だろうと自己判断せず、気になる場合はかかりつけ医や呼吸器内科のある医療機関に相談しましょう。医師は問診や診察、必要に応じてレントゲン検査や呼吸機能検査などを行い、咳の原因を特定し、適切な治療法を提案してくれます。

コロナの咳、周りにうつる期間は?

新型コロナウイルスは主に咳やくしゃみなどで飛び散る飛沫や、ウイルスが付着したものを触った手で口や鼻などを触ることによって感染が広がります。そのため、咳が出ている間は、周囲にウイルスを排出している可能性があります。しかし、感染力は発症からの日数によって大きく変動します。

ウイルス排出と感染力のピーク

新型コロナウイルスの排出量と感染力は、発症から早期の段階で最も高くなると考えられています。厚生労働省の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引きでも、発症後数日間が特に注意すべき期間とされています。

  • 発症前1〜2日から発症後数日間: この期間が最もウイルス排出量が多く、感染力が強いピークです。症状が現れる前から感染を広げる可能性があることが、コロナの特徴の一つです。
  • 発症後5日間: この期間はまだウイルス排出量が多く、感染リスクが高いと考えられています。厚生労働省の定める療養期間の目安でも、特にこの期間は自宅等での安静を推奨しています。
  • 発症後7日間〜10日間: ウイルス排出量は徐々に減少しますが、まだ感染させる可能性はあります。
  • 発症後10日以降: 多くの場合、ウイルス排出量は著しく減少し、感染リスクはかなり低くなると考えられています。ただし、個人差やウイルスの株によっても異なる場合があります。

無症状の場合でも、感染している場合はウイルスを排出している可能性があるため注意が必要です。

発症10日以降の咳エチケット

発症から10日以上経過し、他の症状(発熱や倦怠感など)が改善している場合、ウイルス排出量は少ないため、周囲に感染させるリスクは大幅に低下しています。しかし、咳だけが残っている場合、完全に感染リスクがゼロになったとは言い切れません。

特に高齢者や基礎疾患を持つ方など、重症化リスクの高い方が周囲にいる場合は、引き続き慎重な対応が必要です。咳が続いている間は、念のため以下の咳エチケットを心がけることが大切です。

  • マスクの着用: 咳やくしゃみをする際はもちろん、人が集まる場所ではマスクを着用しましょう。特に不織布マスクが推奨されます。
  • 咳やくしゃみをする際の注意: 口や鼻をティッシュやハンカチ、または服の袖で覆いましょう。使用済みのティッシュはすぐにゴミ箱に捨てましょう。
  • 手洗い・手指消毒: 咳やくしゃみで手に飛沫が付着した可能性がある場合は、石鹸と流水でしっかり手洗いをするか、アルコール消毒を行いましょう。
  • 人との距離を保つ: 可能であれば、周囲の人との距離を確保しましょう。
  • 換気: 室内ではこまめに換気を行いましょう。

これらの対策は、コロナだけでなく、他の呼吸器感染症(インフルエンザや風邪など)の拡大防止にも有効です。咳が長引いている場合は、症状自体がつらいだけでなく、周囲への気遣いも必要になりますが、適切なエチケットを守ることで安心して過ごすことができます。

コロナの咳の対処法・治療法

新型コロナウイルス感染症による咳は、自然に軽快することが多いですが、症状がつらい場合や長引く場合は、適切な対処や治療によって緩和することができます。対処法には、医療機関での治療と、ご自身でできるセルフケアがあります。

医療機関での診察と処方薬

咳が続く場合や、他の症状を伴う場合は、医療機関を受診しましょう。医師は問診や診察を通して、咳の原因を特定し、症状に合わせた治療法を提案します。

医療機関で処方される可能性のある薬には、以下のようなものがあります。

  • 咳止め薬(鎮咳薬): 咳の反射を抑える薬です。症状に応じて、中枢性(脳に作用)のものや末梢性(気道に作用)のものがあります。ただし、痰を出すための必要な咳を抑えすぎてしまうと、かえって回復を遅らせる場合もあるため、医師の指示に従って使用することが重要です。
  • 痰切り薬(去痰薬): 痰の粘り気を弱めたり、気道からの排出を促したりする薬です。痰が絡む咳で、痰を出しにくい場合に有効です。
  • 気管支拡張薬: 気道が狭くなっている場合に、気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、気道が狭窄する傾向がある場合や、気道の過敏性が高い場合に処方されることがあります。吸入薬の形で処方されることもあります。
  • 消炎鎮痛薬: 喉の痛みや炎症を抑えることで、咳を和らげる効果が期待できる場合があります。
  • 抗アレルギー薬: 咳の原因がアレルギー性の炎症である場合に有効なことがあります。
  • 吸入ステロイド薬: 気道の炎症を抑える効果が高く、長引く咳や気道の過敏性が疑われる場合に検討されることがあります。大阪府の新型コロナウイルス感染症 後遺症ハンドブックでも、医師の判断により適応となる場合があることが示されています。

また、もし細菌感染を合併している場合は、抗生物質が処方されることもありますが、新型コロナウイルス自体に抗生物質は効果がありません。あくまで細菌感染の合併症に対して使用されます。

医師は、患者さんの咳の性質(乾いた咳か、痰が絡むか)、他の症状、持病、服用中の薬などを考慮して、最も適切な薬を選択します。自己判断で市販薬を使い続けるのではなく、一度専門家である医師に相談することが、つらい咳を改善させる近道となることが多いです。

咳止めなど市販薬の選び方

医療機関を受診する時間がない場合や、症状が比較的軽い場合は、市販の咳止めや去痰薬で一時的に症状を和らげることができます。薬局やドラッグストアには様々な種類の市販薬がありますが、症状に合わせて選ぶことが大切ですのです。

症状 市販薬の種類 特徴・選び方のポイント
乾いた咳(痰なし) 鎮咳薬(咳止め成分が主) 咳の反射自体を抑える成分(ジヒドロコデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物など)が配合されています。夜間や会議中など、咳を止めたい時に。
痰が絡む咳(痰あり) 去痰薬(痰切り成分が主) 痰をサラサラにしたり、気道からの排出を促したりする成分(カルボシステイン、ブロムヘキシン塩酸塩など)が配合されています。痰が絡んで出しにくい時に。
両方の症状 総合感冒薬や、鎮咳成分と去痰成分の両方が配合された薬 咳止め成分と去痰成分の両方がバランス良く配合されているものを選ぶと良いでしょう。発熱や喉の痛みなど、他の症状も伴う場合は総合感冒薬も選択肢になります。
喉の痛みも強い 喉の炎症を抑える成分(トラネキサム酸、グリチルリチン酸など)や、殺菌消毒成分が配合されたトローチ、うがい薬なども併用すると効果的です。 喉の痛みによる刺激が咳の原因になっていることもあります。

市販薬を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。

  • 自分の咳のタイプ(乾いているか、痰が絡むか)に合わせて選ぶ。
  • 添付文書をよく読み、用法・用量を守って使用する。
  • 他の薬(特に風邪薬や鼻炎薬など)と併用する際は、成分が重複していないか、飲み合わせに問題がないかを確認する。
  • 持病がある方や、現在他の薬を服用している方は、購入前に薬剤師に相談する。
  • 数日使用しても症状が改善しない、あるいは悪化する場合は、市販薬の使用を中止し、医療機関を受診する。

市販薬はあくまで症状の一時的な緩和を目的とするものです。根本的な治療が必要な場合や、症状が重い場合は、必ず医療機関を受診してください。

家庭でできるセルフケア

医療機関での治療や市販薬の使用と並行して、ご家庭でできるセルフケアを行うことで、咳の症状を和らげ、回復を助けることができます。大阪府が発行する新型コロナウイルス感染症 後遺症ハンドブックでも、以下のような実践的なアドバイスが推奨されています。

  • 湿度を保つ: 空気が乾燥していると、喉や気道が刺激されて咳が出やすくなります。室内の湿度を50〜60%程度に保つようにしましょう。加湿器を使ったり、濡れたタオルを干したりするのが効果的です。外出時はマスクを着用するのも良いでしょう。
  • 水分補給: 喉を潤すために、こまめに水分を摂りましょう。特に1日1.5Lを目安に水分を摂取することが推奨されています。水、お茶、白湯、スポーツドリンクなどが良いでしょう。温かい飲み物は喉の痛みを和らげ、痰を出しやすくする効果も期待できます。
  • 十分な休息: 体力を回復させるために、十分な睡眠と休息をとりましょう。体が疲れていると、免疫力が低下し、回復が遅れることがあります。
  • 禁煙・受動喫煙を避ける: タバコの煙は気道を刺激し、咳を悪化させます。喫煙している場合は禁煙を、非喫煙者も受動喫煙を避けましょう。
  • 刺激物を避ける: 冷たい空気、香辛料の強い食べ物、アルコールなどは気道を刺激することがあります。症状がある間は避けるのが賢明です。
  • うがい: 喉の炎症を和らげるために、こまめにうがいをしましょう。水や薄めた塩水、うがい薬を使っても良いでしょう。
  • 寝るときの工夫: 咳で眠れない場合は、枕を高くしたり、就寝時に上半身を起こした半座位姿勢をとったりすると楽になることがあります。

これらのセルフケアは、薬を使わずに症状を和らげる効果が期待できます。ただし、症状が重い場合や改善が見られない場合は、速やかに医療機関を受診してください。

コロナの咳は自然に治る?ぶり返す可能性は?

新型コロナウイルス感染症による咳は、多くの場合は時間とともに自然に軽快していく症状です。しかし、一部の人では長引いたり、一度治まった後に再び現れたりすることもあります。

自然軽快する場合

急性期の咳は、発症から1〜2週間でピークを過ぎ、その後徐々に頻度や強さが弱まっていくことが多いです。他の症状(発熱、倦怠感など)が改善するにつれて、咳も改善に向かうのが一般的な経過です。これは、体の免疫機能がウイルスを排除し、炎症が収まるにつれて気道の状態が回復するためです。

軽症の場合や、若い健康な人であれば、特別な治療をしなくても、自然に咳が治まることがほとんどです。大切なのは、この期間に十分な休息をとり、栄養と水分をしっかり補給して、体の回復を助けることです。

一度治まっても咳がぶり返すケース

一度コロナの症状が改善し、咳も治まったと思っていたのに、数日〜数週間後に再び咳が出始める、あるいは悪化するといったケースも残念ながらあります。ぶり返しの原因としては、いくつかの可能性が考えられます。

  • 気道の過敏性の遷延: ウイルス感染によって気道がダメージを受け、過敏な状態が続いているため、ちょっとした刺激(乾燥、温度変化、埃など)で咳が出やすくなっている。体が完全に回復するまで時間がかかることがあります。これは国立国際医療研究センターの後遺症情報でも指摘されているメカニズムの一つです。
  • 他の呼吸器感染症への感染: コロナに罹患して体力が低下しているところに、別の風邪ウイルスや細菌に感染し、新たな咳の原因となっている。
  • アレルギー反応: 花粉やハウスダストなどのアレルゲンに対して、気道が過剰に反応しやすくなっている。
  • 環境要因: 喫煙、大気汚染、職場の環境などが咳を誘発している。
  • 合併症や基礎疾患の悪化: 喘息などの呼吸器疾患がある場合、コロナ感染をきっかけに悪化する。また、肺炎が完全に治りきっていなかったり、胃食道逆流症などが隠れていたりする可能性もゼロではありません。
  • 再感染: ごく稀ですが、再び新型コロナウイルスに感染する可能性もゼロではありません。

咳がぶり返した場合や、一度治まった咳が悪化した場合は、自己判断せず、改めて医療機関を受診して相談することをお勧めします。医師は、ぶり返しの原因がコロナの後遺症なのか、他の病気によるものなのかなどを慎重に判断し、適切な対応をアドバイスしてくれます。

コロナの咳に関するよくある質問

新型コロナウイルスの咳に関して、多くの人が抱える疑問にお答えします。

コロナの咳に咳止めは効きますか?

コロナの咳に対して、咳止め(鎮咳薬)が全く効かないわけではありませんが、効果は咳の原因やタイプ、症状の重症度によって異なります。

  • 急性期のつらい咳: 症状を一時的に抑えるために有効な場合があります。特に夜間の咳で眠れない場合など、QOL改善に役立つことがあります。市販薬や医師から処方された薬を使用できます。
  • 痰が絡む咳: 痰を出すための咳を無理に止めすぎると、かえって痰が気道に溜まりやすくなり、症状が悪化したり、回復が遅れたりする可能性があります。この場合は、咳止めよりも痰切り薬(去痰薬)の方が適しています。
  • 長引く咳(後遺症の可能性): 気道の過敏性による咳の場合、通常の咳止めが効きにくいことがあります。この場合、気道の炎症を抑える薬や気管支拡張薬などが有効なことがあります。

市販薬を使用しても効果が感じられない場合や、咳が長引く場合は、自己判断で様々な薬を試すのではなく、医療機関を受診して医師に相談することが重要です。日本呼吸器学会の咳嗽に関するガイドラインでも、診断に基づいた適切な治療が推奨されています。

コロナの咳、どのくらいで病院に行くべきですか?

発熱や息苦しさなどの急性期症状がない場合でも、以下のような場合は医療機関への受診を検討しましょう。

  • 咳が8週間以上続いている(医学的に慢性咳嗽に分類されます。他の疾患の可能性も考慮されますので専門医に相談しましょう。)(日本呼吸器学会 咳嗽に関するガイドライン参照)
  • 息苦しさを伴う咳
  • 胸の痛みがある
  • 血痰が出る
  • 咳で眠れない、日常生活に大きな支障が出ている
  • 市販の咳止めやセルフケアで改善しない
  • もともと呼吸器の病気がある方
  • 症状が改善せず、不安が大きい

これらの症状は、単なるコロナの後遺症ではなく、肺炎、気管支炎、喘息、あるいは他の病気が隠れている可能性も考えられます。早期に医師の診断を受けることで、適切な治療につながります。

コロナの咳は10日過ぎても人にうつりますか?

発症から10日以上経過した場合、多くの人ではウイルス排出量が大幅に減少し、周囲に感染させるリスクはかなり低くなると考えられています。厚生労働省の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引きでも、10日以降のリスクは低いとされていますが、完全にゼロになるわけではありません。

特に症状が重かった方や、免疫機能が低下している方などは、比較的長くウイルスを排出する可能性があります。また、咳が出ているということは、まだウイルスが気道に残っているサインとも捉えられます。

したがって、発症から10日以上経過しても咳が続いている場合は、念のためマスク着用、手洗い、咳エチケットなどを継続することが推奨されます。これにより、たとえわずかでも残っている感染リスクをさらに低減させることができます。特に、高齢者や基礎疾患のある方など、重症化リスクの高い方と接する際には、より一層注意が必要です。

コロナの咳がぶり返すことはありますか?

はい、一度治まったように見えた咳が、数日後や数週間後に再び現れたり、悪化したりすることはあります。

ぶり返しの主な原因としては、コロナ感染による気道の過敏性が長引いていること、別の呼吸器感染症に二次感染したこと、アレルギー反応、環境要因などが考えられます。また、稀にですが、コロナ感染が完全に治癒していなかったり、合併症(例えば軽度の肺炎が遷延しているなど)が隠れていたりする可能性もゼロではありません。気道の過敏性については国立国際医療研究センターなども言及しています。

咳がぶり返した場合は、自己判断で放置せず、医療機関を受診して医師に相談することをお勧めします。医師は、ぶり返しの原因を詳しく調べ、その原因に応じた適切な治療やアドバイスを行います。

専門家からのアドバイスと受診のご案内

新型コロナウイルス感染症による咳は、多くの人が経験する一般的な症状の一つですが、その症状の程度や続く期間は様々です。急性期のつらい咳から、数ヶ月続く長引く咳まで、患者さんにとって大きな負担となることがあります。

多くの場合は自然に軽快していきますが、大切なのは、ご自身の体の声に耳を傾け、無理をしないことです。十分な休息と栄養、水分補給を心がけ、タバコや乾燥といった気道への刺激を避けるといったセルフケアは、回復を助ける上で非常に重要です。具体的なセルフケアの方法については、大阪府の新型コロナウイルス感染症 後遺症ハンドブックなども参考になります。

また、症状がつらい場合や、以下のサインが見られる場合は、迷わずに医療機関を受診してください。

  • 咳が長期間(目安として8週間以上)続いている (日本呼吸器学会 咳嗽に関するガイドラインで慢性咳嗽とされる期間です)
  • 息苦しさや胸の痛みを伴う
  • 血痰が出る
  • 高熱が続く、またはぶり返した
  • 咳で眠れない、日常生活に支障が出ている
  • 市販薬を使っても改善が見られない
  • もともと呼吸器系の持病がある

これらの症状は、コロナの後遺症だけでなく、肺炎、気管支炎、喘息、あるいは他の病気が隠れている可能性も示唆しています。厚生労働省の診療の手引き国立国際医療研究センターの後遺症に関する情報でも、遷延する症状への対応について触れられています。早期に専門家である医師の診断を受けることで、正確な原因の特定と、適切な治療法を見つけることができます。

医療機関での診察では、問診や聴診に加え、必要に応じてレントゲン検査、採血、呼吸機能検査などが行われます。これらの検査を通して、咳の原因が新型コロナウイルス感染によるものなのか、それとも他の疾患によるものなのかを判断し、最適な治療計画を立てます。

不安な気持ちを抱え込まず、まずはかかりつけ医や、お近くの呼吸器内科などの医療機関に相談してみましょう。最近では、コロナ後遺症に関する相談窓口を設けている医療機関や、オンラインでの相談に対応している場合もあります。適切なアドバイスとケアを受けることで、つらい咳から解放され、安心して日常を送るための一歩を踏み出すことができます。

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や特定の治療法を推奨するものではありません。個々の症状や診断については、必ず医療機関を受診し、医師の判断を仰いでください。本記事の情報に基づいて行われたいかなる行為についても、執筆者および公開者は一切の責任を負いません。情報の正確性には努めていますが、医療情報は常に最新のエビデンスに基づき更新される可能性があるため、最新の情報を得るためには専門家にご相談ください。

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