私たちの体は、呼吸を通じて生命を維持しています。
その呼吸において重要な役割を果たすのが肺です。
しかし、この肺が炎症を起こしてしまう病気があります。
それが「肺炎」です。
肺炎は、感染症によって引き起こされることが多く、風邪やインフルエンザと似たような症状で始まることも少なくありません。
そのため、「ただの風邪だろう」と軽く考えてしまいがちですが、進行すると重症化し、命に関わることもある怖い病気です。
特に高齢者や基礎疾患を持つ方にとっては注意が必要とされています。
この病気について正しく理解し、適切な対策をとることが、健康を守る上で非常に大切です。
肺炎とはどのような病気か
肺炎とは、肺の奥深くにある「肺胞」や、その周囲の組織に炎症が起きる病気です。
肺胞は、吸い込んだ空気から酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するというガス交換を行う場所です。
この肺胞が炎症を起こすと、本来の機能が十分に果たせなくなり、体に様々な不調が現れます。
健康な状態では、気道に侵入しようとする病原体は、咳や痰、線毛の働きによって排除されます。
また、体に備わっている免疫機能も病原体の侵入を防ぎます。
しかし、これらの防御機能が弱まったり、病原体の力が強かったりすると、病原体が肺の奥まで到達し、炎症を引き起こすのです。
炎症が起こると、肺胞に水や膿がたまり、ガス交換がうまくいかなくなります。
これにより、息切れや呼吸困難といった症状が現れます。
また、炎症反応によって発熱や咳、痰なども伴います。
肺炎は、原因や患者さんの状態によって、軽症で済む場合もあれば、人工呼吸器が必要になるほどの重症になる場合もあります。
肺炎の主な原因は?
肺炎を引き起こす原因は多岐にわたりますが、最も多いのは感染症です。
細菌やウイルス、真菌などの病原体が肺に侵入することで発症します。
その他にも、アレルギー反応や薬剤によって引き起こされることもあります。
細菌性肺炎の原因
細菌性肺炎は、肺炎の中で最も頻繁に見られるタイプです。
様々な種類の細菌が原因となりますが、中でも最も多いのは肺炎球菌です。
肺炎球菌は、もともと健康な人の鼻や喉にも存在していることがありますが、体の抵抗力が落ちたときに肺に侵入し、肺炎を引き起こします。
その他にも、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)なども細菌性肺炎の原因となります。
これらの細菌は、主に咳やくしゃみなどによる飛沫感染、または病原体が付着した手で口や鼻を触る接触感染によって広がります。
免疫力が低下している人、高齢者、基礎疾患(糖尿病、心臓病、肺の病気など)がある人、喫煙者などで発症しやすい傾向があります。
ウイルス性肺炎の原因
ウイルス性肺炎は、インフルエンザウイルスやアデノウイルス、RSウイルス、そして新型コロナウイルスなど、様々なウイルスによって引き起こされます。
ウイルスの種類によって症状の現れ方や重症度は異なります。
特にインフルエンザウイルスによる肺炎は、高齢者や基礎疾患のある人では重症化しやすく、細菌による二次感染を合併することもあります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も、肺炎を引き起こすことがあり、重症化すると呼吸不全に陥るリスクがあります。
ウイルス性肺炎は、主に飛沫感染や接触感染で人から人へ感染します。
誤嚥性肺炎の原因
誤嚥性肺炎は、飲食物や唾液、胃液などが誤って気管に入り込み(誤嚥)、それに含まれる細菌が肺で炎症を起こすことで発症します。
このタイプの肺炎は、嚥下機能(食べ物や飲み物を飲み込む機能)が低下した高齢者や、脳血管疾患の後遺症、神経系の病気などで嚥下障害がある方に多く見られます。
特に寝たきりの方や、食事中のむせが多い方は注意が必要です。
口腔内の衛生状態が悪いと、誤嚥した際に肺に入り込む細菌の数が増え、肺炎のリスクが高まります。
誤嚥性肺炎は、繰り返しやすいことも特徴の一つです。
その他の原因
- 非定型肺炎の原因菌: マイコプラズマやクラミジアといった細菌は、一般的な細菌性肺炎とは少し異なる症状を示すため、「非定型肺炎」と呼ばれます。
特に若い世代や学校などの集団生活で流行することがあります。 - 真菌性肺炎: カビの一種である真菌(アスペルギルスやカンジダなど)によって引き起こされる肺炎です。
免疫力が著しく低下している人(例: 抗がん剤治療中、臓器移植後、HIV感染者など)に起こりやすいとされています。 - アレルギー性肺炎: 特定の物質(カビや鳥の糞など)を繰り返し吸い込むことで、肺がアレルギー反応を起こし、炎症が生じるタイプの肺炎です。
- 薬剤性肺炎: 特定の薬剤の副作用として肺に炎症が起こることもあります。
このように、肺炎の原因は多岐にわたり、原因によって症状や治療法も異なります。
肺炎の症状をチェック
肺炎の症状は、原因や炎症の範囲、患者さんの年齢や健康状態によって様々ですが、一般的には以下のような症状が見られます。
肺炎の一般的な症状
肺炎の典型的な症状は、咳、痰、発熱、息苦しさです。
- 咳: 乾いた咳の場合もあれば、痰を伴う湿った咳の場合もあります。
炎症が強くなると、咳がひどくなり、夜間に眠れないほどになることもあります。 - 痰: 最初は少量で透明な痰でも、細菌感染が加わると、黄色や緑色っぽい膿性の痰が出たり、時には血が混じったりすることもあります。
- 発熱: 38℃以上の高熱が出ることが多いですが、高齢者ではあまり熱が上がらないこともあります。
- 息苦しさ(呼吸困難): 肺の機能が低下するため、息切れを感じたり、少し体を動かしただけで息が苦しくなったりします。
重症化すると、安静時でも呼吸が速くなったり、浅くなったりします。 - 胸の痛み: 炎症が肺を覆う膜(胸膜)に及ぶと、呼吸をするたびに胸が痛むことがあります。
- 倦怠感: 全身のだるさや疲労感もよく見られる症状です。
なりかけ・初期症状は?
肺炎の初期症状は、風邪や気管支炎と区別がつきにくいことが多いです。
数日前から咳や鼻水、喉の痛みといった風邪のような症状が現れ、その後、熱が上がったり、咳や痰がひどくなったり、息苦しさを感じるようになったりして、肺炎が疑われるという経過をたどることがあります。
「なりかけ」の段階では、長引く咳や痰、少しずつ強くなる息切れなどがサインとなることがあります。
特に、風邪だと思って安静にしていたのに症状が改善しない、あるいは悪化している場合は注意が必要です。
軽い肺炎の症状
肺炎の中には、比較的症状が軽いものもあります。
特にマイコプラズマ肺炎やクラミジア肺炎といった非定型肺炎では、高熱が出ない、咳がひどいが痰はあまり出ない、といった atypical(非典型的)な症状を示すことがあります。
レントゲンを撮ってみて初めて肺炎だとわかるケースもあります。
「軽い肺炎」であっても、放置すると重症化するリスクがあるため、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。
高齢者の肺炎症状の特徴
高齢者の肺炎は、若い人に比べて症状が典型的でないことが多いのが特徴です。
- 発熱が目立たない: 高熱が出ず、微熱や平熱のままで経過することがあります。
- 咳や痰が少ない: 炎症が大きくても、咳反射や痰を出す力が弱いために、症状がはっきりしないことがあります。
- 全身の倦怠感や食欲不振: 「なんとなく元気がない」「食欲がない」「だるそうにしている」といった全身症状が主なサインとなることがあります。
- 意識の変化: 呼びかけへの反応が鈍くなる、ぼんやりしている、せん妄などが現れることもあります。
- 活動性の低下: 急に歩かなくなった、寝ている時間が増えた、といった変化が見られることもあります。
これらの非典型的な症状から肺炎を見つけるのは難しいことがあり、診断が遅れるリスクがあります。
高齢者の場合、「いつもと様子が違う」と感じたら、早めに医療機関に相談することが非常に大切です。
肺炎になるとどうなる?
肺炎と診断された場合、一般的には原因に応じた治療が開始されます。
軽症であれば外来で治療が可能ですが、重症度が高い場合や基礎疾患がある場合などは入院が必要となります。
治療によって炎症が治まれば、症状は徐々に改善し、数日から数週間で回復に向かいます。
しかし、重症化すると、呼吸不全が悪化し、人工呼吸器による管理が必要になったり、全身の状態が悪化して敗血症などを合併し、命に関わることもあります。
また、一度肺炎にかかると、肺の機能が完全に元に戻らない場合や、慢性的な咳や息切れが残ることもあります。
特に高齢者や、もともと肺の病気がある方では、肺炎が既存の病気を悪化させるきっかけとなることもあります。
肺炎の種類を知る
肺炎は、その原因や発症した場所などによっていくつかの種類に分類されます。
分類によって、原因となる病原体の種類や治療法が異なるため、正しく診断することが重要です。
市中肺炎
市中肺炎は、病院や介護施設に入所・入居しておらず、日常生活を送っている中でかかる肺炎です。
原因菌としては、肺炎球菌が最も多く、次いでマイコプラズマ、インフルエンザ菌などが挙げられます。
健康な人でもかかる可能性がありますが、高齢者や基礎疾患を持つ人は重症化しやすい傾向があります。
市中肺炎の重症度を判定するために、日本呼吸器学会が提唱しているA-DROPシステムという指標があります。
これは、年齢(Age)、脱水(Dehydration)、呼吸状態(Respiration)、意識状態(Orientation)、血圧(Pressure)の5つの項目を評価し、入院の必要性や重症度を判断するものです。
診断や治療の詳細は、成人市中肺炎診療ガイドラインなども参考にされています。
院内肺炎
院内肺炎は、入院してから48時間以降に発症した肺炎を指します。
病院内には、健康な人には影響が少ないものの、抵抗力が低下した患者さんにとっては感染源となりうる病原体が存在します。
特に、人工呼吸器を使用している患者さんや、寝たきりの患者さん、手術を受けた患者さんなどは、院内肺炎を起こしやすいリスクがあります。
院内肺炎の原因菌は、市中肺炎とは異なり、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)や黄色ブドウ球菌、エンテロバクター属などの多剤耐性菌が多いことが特徴です。
これらの菌は、多くの抗菌薬が効きにくいため、治療が難しい場合があります。
院内肺炎の予防については、院内肺炎予防ガイドラインなども参考にされています。
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎は、前述の通り、飲食物や唾液などを誤って気管に吸い込んでしまうこと(誤嚥)によって起こる肺炎です。
主に高齢者や嚥下機能に障害がある方に多く見られます。
誤嚥された口腔内の細菌が肺で増殖し、炎症を引き起こします。
誤嚥性肺炎の原因となる細菌は、口の中に常在する様々な細菌の混合感染であることが多いです。
予防のためには、口腔ケアや嚥下リハビリテーションなどが重要となります。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)という細菌によって引き起こされる肺炎です。
「非定型肺炎」の一種とされ、特に子どもや若い世代の間で流行が見られます。
典型的な症状は、発熱と比較的頑固な咳です。
咳は最初乾いた咳で、次第に痰を伴うようになることが多いです。
通常の細菌性肺炎に比べて、全身のだるさや頭痛といった症状が目立つこともあります。
胸部レントゲンでは肺炎像が認められますが、聴診上の所見が乏しい場合もあります。
治療には、マイコプラズマに有効な抗菌薬が用いられます。
クラミジア肺炎
クラミジア肺炎は、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)という細菌によって引き起こされる肺炎です。
これも「非定型肺炎」の一種です。
インフルエンザのような上気道炎症状から始まり、徐々に咳が強くなることが多いです。
マイコプラズマ肺炎と同様に、子どもから高齢者まで幅広い年齢層で発症しますが、診断が難しい場合もあります。
治療には、クラミジアに有効な抗菌薬が用いられます。
ウイルス性肺炎
ウイルス性肺炎は、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、サイトメガロウイルス、そして新型コロナウイルスなど、様々なウイルスが原因となって発症します。
ウイルス性肺炎は、細菌性肺炎に比べて比較的軽症で済むことが多いですが、ウイルスによっては重症化したり、細菌による二次感染を合併したりすることがあります。
特にインフルエンザや新型コロナウイルスによる肺炎は、注意が必要です。
ウイルス性肺炎に対する特効薬は、ウイルスによっては存在する(例: インフルエンザに対する抗インフルエンザ薬)ものの、対症療法が中心となることも多いです。
肺炎は自然に回復する?治療法と入院レベル
「肺炎は自然に治るの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
しかし、肺炎は基本的に医療機関での適切な診断と治療が必要な病気です。
肺炎の基本的な治療方法
肺炎の治療は、原因となっている病原体によって異なります。
- 細菌性肺炎: 細菌が原因の場合は、抗菌薬(抗生剤)が治療の中心となります。
原因菌の種類や重症度に応じて、点滴や内服の抗菌薬が処方されます。
途中で服用をやめたりせず、医師の指示通りに最後まで服用することが大切です。 - ウイルス性肺炎: ウイルスが原因の場合、ウイルスによっては抗ウイルス薬が使用されることがあります(例: インフルエンザ肺炎に対する抗インフルエンザ薬)。
しかし、多くのウイルス性肺炎では、特効薬がなく、対症療法が中心となります。
対症療法とは、発熱に対して解熱剤を使用したり、咳に対して鎮咳薬を使用したりするなど、症状を和らげる治療のことです。 - 誤嚥性肺炎: 誤嚥性肺炎も細菌感染が原因となるため、抗菌薬による治療が行われます。
同時に、誤嚥を防ぐための対策(食事姿勢の改善、嚥下リハビリテーション、口腔ケアなど)も重要です。 - その他の肺炎: 真菌性肺炎の場合は抗真菌薬、アレルギー性肺炎の場合はアレルギーの原因物質の除去やステロイド薬などが使用されます。
どのタイプの肺炎であっても、安静にすることが重要です。
十分な睡眠と栄養をとり、体の回復を促す必要があります。
また、脱水を防ぐために水分補給も大切です。
呼吸状態が悪い場合には、酸素投与が行われることもあります。
自然回復について
「軽い肺炎なら自然に治るのでは?」と思うかもしれませんが、肺炎は肺胞に炎症が起きている状態であり、放置すると炎症が広がり、重症化するリスクが高い病気です。
特に細菌性肺炎は、抗菌薬による治療なしに完全に回復することは難しい場合がほとんどです。
ウイルス性肺炎の中には、比較的軽症で自然に回復に向かうものもありますが、それが肺炎かどうか、他の原因が合併していないかなどを自己判断することは困難です。
症状が長引く場合や悪化する場合は、必ず医療機関を受診し、専門家の診断を受けることが重要です。
結論として、肺炎は自然回復に頼るべきではなく、早期に医療機関を受診し、適切な治療を開始することが大切です。
入院が必要となるケース(入院レベル)
肺炎と診断された場合、外来で治療するか、入院して治療するかの判断は、患者さんの状態や肺炎の重症度によって行われます。
一般的に、以下のような場合には入院が必要となる可能性が高くなります。
入院が必要となる可能性が高いケース | 補足 |
---|---|
重症度が高い場合 | 日本呼吸器学会のA-DROPシステムなどで判定される項目(意識障害、脱水、酸素飽和度の低下、血圧低下など)が複数当てはまる場合 |
高齢者(一般的に70歳以上) | 症状が非典型的で重症化しやすく、基礎疾患を合併している可能性が高いため |
基礎疾患がある場合 | 糖尿病、心臓病、肺の病気(COPD、喘息など)、腎臓病、肝臓病、免疫不全状態(エイズ、抗がん剤治療中など)など |
呼吸状態が悪い場合 | 息切れがひどい、酸素飽和度が低い、呼吸回数が多いなど |
循環状態が悪い場合 | 血圧が低い、脈が速い、意識状態が悪いなど |
脱水がひどい場合 | 水分や食事が十分に摂れない場合 |
十分な栄養や水分摂取ができない場合 | 自宅での療養が難しい場合 |
経口抗菌薬の効果が不十分な場合 | 点滴による抗菌薬投与が必要な場合 |
診断が確定できない、または合併症(胸水貯留など)がある場合 | 精密検査や専門的な管理が必要な場合 |
自宅での療養環境が整っていない場合 | 家族のサポートが得られない、独居で容体悪化時の対応が困難な場合など |
これらの項目に複数当てはまるほど、入院の必要性は高くなります。
特に高齢者の場合は、典型的な症状が出にくいため、「なんとなく元気がない」「食欲がない」といったサインを見逃さず、早めに医療機関を受診し、必要に応じて入院による管理を行うことが重要です。
肺炎の時にしてはいけないこと
肺炎にかかった時、回復を遅らせたり、症状を悪化させたりする可能性のある行動があります。
治療を受けている間や回復期には、以下の点に注意しましょう。
- 無理をする: 安静が基本です。
仕事を続けたり、激しい運動をしたりすることは、体力を消耗させ、回復を遅らせるだけでなく、重症化のリスクを高めます。 - 喫煙: 喫煙は肺に直接ダメージを与え、炎症を悪化させます。
また、肺の防御機能を低下させるため、回復を妨げます。
肺炎にかかっている時はもちろん、普段から禁煙を心がけることが肺炎予防にもつながります。 - 過度な飲酒: 飲酒は体を脱水状態にしやすく、免疫機能を低下させる可能性があります。
また、アルコールを分解する際に肝臓に負担がかかることも、回復には良くありません。 - 自己判断で薬の服用を中止する: 抗菌薬などは、症状が軽くなったからといって自己判断で服用を中止すると、原因菌が完全に死滅せず、再発したり、薬剤耐性菌が出現したりするリスクがあります。
必ず医師の指示通りに最後まで服用しましょう。 - 水分や栄養摂取を怠る: 体力を回復させるためには、十分な水分と栄養が必要です。
食欲がない場合でも、消化の良いものや、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。
脱水を防ぐために、こまめな水分補給も重要です。 - 症状を我慢する: 息苦しさが強くなった、高熱が続く、胸の痛みがひどいなど、症状が悪化していると感じたら、我慢せずにすぐに医師に連絡を取りましょう。
肺炎の予防策
肺炎は、かかると重症化するリスクがある病気ですが、日頃から予防を心がけることで、発症のリスクを減らすことができます。
特に高齢者や慢性的な病気を持つ方にとっては、予防が非常に重要です。
肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌は、肺炎の原因菌として最も多い細菌です。
肺炎球菌ワクチンは、この肺炎球菌による肺炎を予防するためのワクチンです。
特に高齢者や、以下のような基礎疾患を持つ方(慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、糖尿病、慢性腎疾患、肝機能障害など)に接種が推奨されています。
現在、日本で使用されている主な肺炎球菌ワクチンには、成人用の「肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(23価)」と「沈降肺炎球菌結合型ワクチン(13価)」があります。
厚生労働省のウェブサイトでも詳しい情報が提供されています。
どちらのワクチンが適しているか、接種時期や回数については、かかりつけ医と相談しましょう。
定期接種の対象者(65歳、70歳、75歳…100歳の方など)は、費用の一部または全額が公費で助成されます。
インフルエンザワクチン
インフルエンザにかかると、体力が低下し、肺炎を合併しやすくなります。
インフルエンザウイルスそのものによる肺炎もあれば、インフルエンザにかかった後に細菌による二次感染で肺炎を起こすこともあります。
インフルエンザワクチンを接種することで、インフルエンザの発症や重症化を予防し、結果的に肺炎の予防にもつながります。
毎年流行シーズン前に接種することが推奨されます。
日常生活での予防
ワクチン接種だけでなく、日常生活での予防も非常に重要です。
- 手洗い・うがい: 感染経路の多くは飛沫感染や接触感染です。
外出から帰った時や食事前には、石鹸を使った丁寧な手洗いやうがいを習慣にしましょう。 - マスクの着用: 人混みなど感染リスクの高い場所では、マスクを着用することで、飛沫感染を防ぐことができます。
咳やくしゃみが出ている人も、周囲への感染拡大を防ぐためにマスクを着用しましょう(咳エチケット)。 - 口腔ケア: 口の中を清潔に保つことは、誤嚥性肺炎の予防に非常に効果的です。
毎日の歯磨きや舌の清掃を丁寧に行い、口腔内の細菌を減らしましょう。
入れ歯を使っている方は、入れ歯の清掃も重要です。 - 禁煙: 喫煙は肺の機能を低下させ、肺炎にかかりやすく、また重症化させやすくします。
禁煙は、肺炎予防の最も重要な対策の一つです。 - バランスの取れた食事と十分な睡眠: 体の免疫力を維持するためには、バランスの取れた食事と十分な睡眠が欠かせません。
疲労や栄養不足は免疫力を低下させ、感染症にかかりやすくなります。 - 適度な運動: 適度な運動は、全身の血行を良くし、体力を維持・向上させることで免疫力の維持につながります。
- 嚥下機能の維持: 高齢者や嚥下機能に不安がある方は、食事中の姿勢を工夫したり、食べやすい形態の食事を選んだり、嚥下体操などを行ったりして、誤嚥を防ぐ対策をしましょう。
これらの予防策を組み合わせることで、肺炎にかかるリスクを大きく減らすことができます。
まとめ
肺炎は、肺に炎症が起きる病気であり、その原因は細菌、ウイルス、誤嚥など多岐にわたります。
症状は咳、痰、発熱、息苦しさなどが一般的ですが、高齢者では症状が典型的でないことも多く、注意が必要です。
風邪と似た症状で始まることがありますが、症状が長引いたり悪化したりする場合は、「ただの風邪」と思わずに必ず医療機関を受診しましょう。
肺炎の治療は、原因に応じた抗菌薬や抗ウイルス薬、対症療法が中心となります。
重症度や患者さんの状態によっては入院が必要となり、適切な治療を受けなければ重症化し、命に関わることもあります。
自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従うことが非常に重要です。
肺炎は、ワクチン接種や、手洗い・うがい、口腔ケア、禁煙、バランスの取れた生活習慣といった日頃からの予防策を講じることで、発症リスクを減らすことが可能です。
特に肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンは、高齢者やリスクの高い方にとって重要な予防手段です。
ご自身の体調に不安がある場合、特に長引く咳や息切れ、普段と違う体調の変化を感じる場合は、早めに医療機関を受診し、専門医に相談してください。
早期発見、早期治療、そして日頃からの予防が、肺炎から身を守るための鍵となります。
免責事項: 本記事は、肺炎に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を保証するものではありません。
ご自身の症状について不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を仰いでください。