糖尿病の主な症状|見逃しやすい初期サインと原因・合併症も解説

糖尿病は、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が慢性的に高くなる病気です。初期には自覚症状がほとんどないことも多く、気づかないうちに進行してしまうことがあります。しかし、高血糖の状態が長く続くと、全身の血管や神経が傷つき、さまざまな合併症を引き起こすリスクが高まります。

国立国際医療研究センター 糖尿病情報センターによると、糖尿病は「インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気」と定義されており、インスリンは膵臓から出るホルモンで血糖を一定に保つ働きがあります。この高血糖の状態が何年間も放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気(合併症)につながるリスクが高まります。

糖尿病のサインを見逃さず、早期に発見して適切な対策を講じることが非常に重要です。ご自身の体調や健康診断の結果に注意を払い、気になる症状があれば医療機関に相談しましょう。

目次

糖尿病の主な症状

血糖値がかなり高くなると、特徴的な症状が現れることがあります。これらの症状は、体が過剰なブドウ糖を排出しようとしたり、ブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなったりするために起こります。

代表的な症状としては、以下のものが挙げられます。

  • 多尿: 尿の量が増え、トイレに行く回数が多くなります。特に夜間に頻繁にトイレに行くようになることもあります。これは、血液中の過剰なブドウ糖が尿と一緒に排出される際に、水分も引き連れて排出されるためです。
  • 多渇: 尿量が増えることで体内の水分が失われるため、強い喉の渇きを感じるようになります。水分をいくら摂っても喉の渇きが収まらないことがあります。
  • 体重減少: 血糖値が高いにもかかわらず、体重が減ることがあります。これは、インスリンの働きが悪くなり、ブドウ糖をエネルギーとして効率的に利用できなくなるため、代わりに脂肪や筋肉が分解されてエネルギーとして使われるようになるからです。
  • 全身倦怠感: 体がエネルギーをうまく作れないため、疲れやすく、だるさを感じます。しっかり睡眠をとっても疲労感が抜けないことがあります。

これらの症状は、血糖値がある程度高くなった場合に比較的はっきりと現れるサインです。

見逃しやすい初期症状

糖尿病の怖いところは、初期の段階ではこれらの典型的な症状がほとんど現れないことが多いという点です。血糖値が正常より少し高い「糖尿病予備群」や、まだ糖尿病と診断されるほどではないが血糖値が高めの段階では、以下のような見逃しやすい、あいまいな症状が現れることがあります。

  • 疲れやすい、だるい
  • 特別な原因がないのに体重が少し減った
  • 手足がむくみやすい
  • なんとなく体が重い
  • 傷が治りにくい
  • 皮膚のかゆみ
  • 目がかすむ

これらの症状は、加齢や他の病気でも起こりうるため、「年のせいかな」「疲れているだけだろう」と見過ごされがちです。しかし、これらが糖尿病の始まりのサインである可能性もあります。特に、糖尿病のリスク因子(後述)を持っている方は注意が必要です。

血糖値が高いときに現れるサイン

血糖値が高い状態が続くと、体は様々なサインを出します。主な症状で挙げた多尿、多渇、体重減少、全身倦怠感に加え、以下のようなサインにも注意が必要です。

  • 食欲不振、吐き気: 高血糖が続くと、胃腸の動きが悪くなり、食欲がなくなったり吐き気を感じたりすることがあります。
  • 手足のしびれや痛み: 血糖値が高い状態が長く続くと、末梢神経が障害され(糖尿病神経障害)、手足の指先などにしびれやピリピリする痛み、感覚の麻痺などが現れることがあります。これは合併症の初期サインである可能性もあります。
  • 立ちくらみ、めまい: 自律神経が障害されることで、血圧の調節がうまくいかなくなり、立ち上がったときにめまいや立ちくらみが起こることがあります。
  • 目がかすむ、視力低下: 血糖値の変動によって一時的に視力が不安定になったり、高血糖が長く続くことで目の網膜の血管が傷つき(糖尿病網膜症)、視力低下やかすみ、飛蚊症などが現れたりします。
  • 性機能障害(ED): 男性の場合、高血糖による神経障害や血管障害が原因で勃起不全(ED)が起こりやすくなります。

これらのサインは、血糖値が慢性的に高い状態が続いていることを示唆している場合が多いです。

1型糖尿病の症状

糖尿病にはいくつかのタイプがありますが、症状の現れ方が異なります。1型糖尿病は、自己免疫によって膵臓のインスリンを作る細胞(β細胞)が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる病気です。

1型糖尿病は、一般的に子どもや若い人に多く見られますが、成人でも発症することがあります。インスリンが急激に不足するため、症状が比較的早く、そして強く現れるのが特徴です。

  • 急激な発症: 数日から数週間という短期間で、多尿、多渇、体重減少、全身倦怠感といった症状が急激に現れます。
  • ケトアシドーシス: インスリンが極度に不足すると、体がエネルギーとして脂肪を分解し、ケトン体という物質が増加します。これにより、強い吐き気、腹痛、呼吸困難、意識障害などを引き起こす「糖尿病性ケトアシドーシス」という危険な状態になることがあります。この場合、緊急の治療が必要です。

1型糖尿病の場合、症状が現れたときには進行していることが多いため、迅速な診断と治療が求められます。

2型糖尿病の症状

最も一般的な糖尿病のタイプが2型糖尿病です。遺伝的な要因に加えて、食べすぎ、運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣が大きく関わって発症します。インスリンの分泌が悪くなったり(インスリン分泌不足)、インスリンがうまく体に作用しなくなったり(インスリン抵抗性)することで起こります。

2型糖尿病は、ゆっくりと時間をかけて進行するのが特徴です。

  • 初期は無症状または軽症: 発症初期は、ほとんど自覚症状がないか、あっても非常に軽微なことが多いため、気づきにくい傾向があります。健康診断で血糖値が高いことを指摘されて初めてわかる、というケースが非常に多いです。
  • 症状が現れるときは進行していることも: 多尿、多渇、体重減少といった典型的な症状が現れる頃には、糖尿病がある程度進行しているか、血糖値がかなり高い状態になっていることが多いです。
  • 合併症の症状で気づくことも: 手足のしびれ、視力低下、むくみなど、すでに合併症が始まってから糖尿病に気づくというケースも少なくありません。

そのため、2型糖尿病では定期的な健康診断や血糖値検査が早期発見のために非常に重要となります。

妊娠糖尿病の症状

妊娠糖尿病は、妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常を指します。妊娠前からの糖尿病や、妊娠中に診断された明らかな糖尿病とは区別されます。

  • 自覚症状はほとんどない: 妊娠糖尿病の場合、通常は妊婦さん自身に自覚症状はほとんどありません。
  • 妊婦健診での検査: 妊娠中期(妊娠24〜28週頃)に行われるスクリーニング検査(ブドウ糖負荷試験など)で発見されることがほとんどです。

妊娠糖尿病は、母体だけでなくお腹の赤ちゃんにも様々な影響を与える可能性があります。出産後には血糖値が正常に戻ることが多いですが、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高くなることがわかっています。

糖尿病のタイプ別特徴の比較

特徴 1型糖尿病 2型糖尿病 妊娠糖尿病
発症原因 自己免疫によるβ細胞破壊 インスリン分泌不足+インスリン抵抗性 妊娠中のホルモン変化によるインスリン抵抗性
発症時期 小児・若年者に多いが、成人も 中年以降に多いが、若年者も増加傾向 妊娠中
発症速度 急激 ゆっくり 妊娠中に発症(通常中期以降)
自覚症状 急激かつ強い(多尿、多渇など) 初期はほとんどない、または軽微 ほとんどない
診断方法 血液検査、自己抗体検査など 血液検査(血糖値、HbA1cなど) 妊婦健診での糖負荷試験など
治療法 インスリン療法が必須 食事・運動療法、薬物療法(経口薬、注射薬) 食事・運動療法、必要な場合はインスリン療法
将来のリスク 合併症リスク 合併症リスク 将来の2型糖尿病発症リスク

特徴的な皮膚の症状

高血糖は皮膚にも様々な影響を及ぼし、特徴的な症状が現れることがあります。これらは糖尿病のサインであると同時に、すでに合併症が始まっている可能性も示唆します。

  • 皮膚のかゆみ: 体が乾燥しやすくなり、全身または部分的なかゆみを感じることがあります。
  • 皮膚の乾燥: 血糖値が高いと、体の水分が失われやすくなるため、皮膚が乾燥し、ひび割れたりすることもあります。
  • 感染症にかかりやすい: 血糖値が高いと免疫機能が低下し、細菌や真菌(カビ)による感染症にかかりやすくなります。
    • カンジダ症: 口の中や性器、皮膚のしわの部分などにカビが繁殖しやすくなり、赤みやかゆみ、白い苔のようなものが現れます。
    • せつ(おでき)やよう: 毛穴や汗腺に細菌が感染し、赤く腫れて痛みを伴う「おでき」ができやすくなります。複数集まって大きくなる「よう」になることもあります。
    • 水虫: 足に真菌が繁殖しやすくなります。
  • 傷が治りにくい: 高血糖により血行が悪くなり、傷口への酸素や栄養の供給が不十分になるため、一度できた傷が治りにくくなります。小さな傷でも悪化しやすく、感染を起こすと重症化することもあります(糖尿病足病変につながるリスク)。
  • 黒色表皮腫: 首の後ろ、脇の下、股の付け根などの皮膚が、黒ずんで厚く硬くなることがあります。これはインスリン抵抗性に関連するサインとされています。
  • 糖尿病性皮膚症: 下腿(すね)に、茶色っぽい小さな丸い斑点ができることがあります。痛みやかゆみは伴わないことが多いです。
  • 環状肉芽腫: 手足や体幹に、盛り上がったリング状の皮疹が現れることがあります。

これらの皮膚症状は、糖尿病の可能性があることを知らせる重要なサインです。原因不明の皮膚トラブルが続く場合は、糖尿病の検査を検討することも大切です。

その他、注意すべき症状

前述の主な症状やタイプ別の症状、皮膚症状以外にも、糖尿病によって引き起こされる可能性のある注意すべき症状があります。これらは、しばしば糖尿病の合併症が進行したサインでもあります。

  • 足の異常:
    足先の冷感、しびれ、痛み(特に夜間)
    足の感覚が鈍くなる(やけどや傷に気づきにくい)
    足にできた傷やたこが治りにくい、悪化する
    足の形が変わる(シャルコー関節など)
  • 目の異常:
    急激な視力低下
    視野の中心がゆがむ、見えなくなる
    飛蚊症(目の前に虫のようなものが飛んでいるように見える)の増加
    目の充血、痛み
  • 腎臓の異常:
    初期にはほとんど自覚症状なし
    進行すると、むくみ(特にまぶたや下肢)
    疲れやすい
    食欲不振
    夜間頻尿
  • 心臓・血管系の異常:
    動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などのリスクが高まります。これらの病気の症状(胸痛、息切れ、手足の麻痺、呂律が回らないなど)が糖尿病の合併症として現れることがあります。糖尿病患者さんでは、神経障害のため、心筋梗梗塞を起こしても典型的な胸痛を感じない「無痛性心筋梗塞」のリスクもあります。
  • 消化器系の異常:
    胃の動きが悪くなる(胃不全麻痺)による、食後のもたれ、吐き気、嘔吐
    下痢や便秘を繰り返す
  • 膀胱の異常:
    尿意を感じにくくなる、排尿困難、残尿感
  • 歯周病:
    歯ぐきの腫れ、出血、ぐらつき、口臭。糖尿病患者さんは歯周病が悪化しやすく、歯周病も血糖コントロールを悪化させる要因となります。

これらの症状は、すでに糖尿病による合併症が進行している可能性を示唆するため、非常に危険なサインです。これらの症状に気づいたら、速やかに医療機関を受診してください。

糖尿病の原因とは

糖尿病は、体がブドウ糖をエネルギーとしてうまく利用できなくなることによって起こります。その原因は、糖尿病のタイプによって異なります。

1型糖尿病の原因

1型糖尿病は、自己免疫疾患と考えられています。本来、外部から侵入した異物(ウイルスや細菌など)を攻撃する免疫細胞が、なぜか自分の膵臓にあるインスリンを作るβ細胞を誤って攻撃し、破壊してしまいます。その結果、体内でインスリンがほとんど作られなくなり、血糖値を下げることができなくなって発症します。

  • 自己免疫: 自分の体を敵とみなして攻撃してしまう体の仕組みの異常です。
  • 遺伝的要因: 1型糖尿病になりやすい体質は遺伝することがありますが、必ずしも遺伝するわけではありません。
  • 環境要因: ウイルス感染などが引き金になる可能性も指摘されていますが、明確な原因はまだ完全には解明されていません。

2型糖尿病の原因

2型糖尿病は、遺伝的な体質に、後天的な生活習慣が複雑に組み合わさって発症します。主な原因は、インスリン分泌不足インスリン抵抗性の2つ、またはその両方です。

  • インスリン分泌不足: 膵臓のβ細胞の働きが悪くなり、必要な量のインスリンを分泌できなくなる状態です。体質的にβ細胞の機能が弱い人もいます。
  • インスリン抵抗性: インスリンは分泌されているのに、筋肉や脂肪、肝臓といった細胞がインスリンの働きに反応しにくくなり、ブドウ糖をうまく取り込めなくなる状態です。

これらの原因に加えて、後述する生活習慣の乱れリスク因子が発症に大きく関わっています。日本の糖尿病患者さんの約95%がこの2型糖尿病です。

妊娠糖尿病の原因

妊娠中は、胎盤からインスリンの働きを妨げるホルモン(インスリン抵抗性ホルモン)が分泌されます。これにより、血糖値が上がりやすくなります。通常、膵臓はこのホルモンの影響に対抗するため、インスリンの分泌量を増やして血糖値をコントロールします。しかし、体質的にインスリンを十分に増やせない妊婦さんで、血糖値が高くなってしまうのが妊娠糖尿病です。

  • 妊娠に伴う生理的な変化: 胎盤から分泌されるホルモンがインスリン抵抗性を引き起こします。
  • インスリン分泌能力: 妊娠によるインスリン抵抗性の増加に対応できるほど、膵臓がインスリンを十分に分泌できない場合に発症します。

妊娠糖尿病と診断された妊婦さんは、出産後も将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高くなるため、注意が必要です。

糖尿病の原因となる生活習慣

2型糖尿病の発症に大きく関わる生活習慣は以下の通りです。これらは単独ではなく、複数組み合わさることでよりリスクを高めます。

  • 過食、偏食:
    糖質の摂りすぎ: ご飯、パン、麺類、甘い飲み物、お菓子などの摂りすぎは、血糖値を急激に上昇させ、膵臓に負担をかけます。
    脂質の摂りすぎ: 高脂肪食は肥満の原因となり、インスリン抵抗性を引き起こしやすくします。
    早食い: 血糖値が急激に上がるため、インスリンが大量に必要となり、膵臓に負担がかかります。
    不規則な食事: 朝食を抜いたり、夜遅くに食事をしたりすることも血糖コントロールを乱す原因となります。
  • 運動不足:
    体を動かさないでいると、筋肉でのブドウ糖の利用が減り、インスリン抵抗性が高まります。
    消費カロリーが少ないため、体重が増えやすく、肥満につながります。
  • 肥満:
    特に内臓脂肪の蓄積は、インスリン抵抗性を強く引き起こします。お腹周りが気になる方は要注意です。
  • ストレス:
    慢性的なストレスは、血糖値を上げるホルモン(コルチゾールなど)の分泌を増やし、血糖コントロールを悪化させることがあります。
  • 喫煙:
    タバコは血管を傷つけ、インスリンの働きを妨げ、動脈硬化を促進します。糖尿病の合併症リスクも高まります。
  • 過度な飲酒:
    アルコール自体が高カロリーであること、またアルコールと一緒に食べるおつまみが高カロリー・高脂肪になりがちなことが原因となります。飲みすぎは肝臓にも負担をかけます。

これらの生活習慣の改善は、糖尿病の予防や治療において非常に重要です。

糖尿病のリスク因子

糖尿病になりやすい人には、いくつかの共通する特徴(リスク因子)があります。これらに当てはまる方は、より一層注意が必要です。

  • 家族に糖尿病の人がいる: 遺伝的な体質が関与するため、両親や兄弟姉妹に糖尿病患者さんがいる場合、自身も糖尿病になるリスクが高まります。
  • 肥満(特に内臓脂肪型肥満): BMIが高い人や、お腹周りに脂肪が多くついている人(ウエスト周囲径が大きい人)は、インスリン抵抗性が高いため、糖尿病になりやすいです。
  • 高齢: 年齢とともにインスリンの働きが低下したり、生活習慣病が蓄積したりするため、高齢になるほど糖尿病のリスクは高まります。
  • 運動不足: 日常的に体を動かす習慣がない人はリスクが高いです。
  • 不健康な食生活: 過食、偏食、朝食抜きなどの食習慣がある人はリスクが高いです。
  • 喫煙: 喫煙者は非喫煙者に比べて糖尿病になるリスクが高いことがわかっています。
  • 高血圧: 糖尿病と高血圧は密接に関連しており、両方持っていると互いの状態を悪化させやすく、合併症のリスクも高まります。
  • 脂質異常症(高コレステロール、高中性脂肪): 高血圧と同様に、糖尿病と関連が深く、合併症リスクを高めます。
  • 過去に妊娠糖尿病になったことがある: 妊娠糖尿病の既往がある女性は、将来的に高い確率で2型糖尿病を発症します。
  • 多嚢胞性卵巣症候群の女性: インスリン抵抗性が見られることが多く、糖尿病のリスクが高いとされています。
  • 特定の薬剤を使用している: ステロイド薬など、一部の薬剤は血糖値を上昇させる副作用があります。
  • ストレス、睡眠不足: 慢性のストレスや睡眠不足も血糖コントロールに悪影響を与え、リスクを高める可能性があります。

これらのリスク因子を複数持っている方は、定期的に健康診断を受けたり、医師と相談したりして、糖尿病の早期発見に努めることが大切です。

糖尿病の合併症とその症状

糖尿病が本当に怖いのは、高血糖状態が長く続くことによって引き起こされる合併症です。合併症は、全身の大小さまざまな血管や神経が傷つけられることによって起こり、重篤な場合は生活の質を著しく低下させたり、命に関わったりすることもあります。糖尿病の代表的な合併症は「三大合併症」と呼ばれる糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症です。

糖尿病神経障害の症状

糖尿病神経障害は、高血糖により神経が障害される合併症です。最も早く現れやすく、様々な症状を引き起こします。

  • 手足のしびれ、痛み、感覚異常:
    最も多い症状は、足の指先や裏、手の指先などに現れるしびれ、ピリピリ、チクチク、ジンジンといった異常な感覚です。
    夜間に症状が強くなることがよくあります。
    感覚が鈍くなり、熱い・冷たい、痛みなどを感じにくくなることもあります。これにより、やけどや傷に気づきにくくなり、悪化するリスクが高まります。
  • 自律神経の障害:
    立ちくらみ、めまい: 血圧の調節がうまくいかなくなり、立ち上がったときに血圧が下がりすぎる(起立性低血圧)ことで起こります。
    発汗異常: 体温調節がうまくいかなくなり、異常に汗をかいたり、逆に全く汗をかかなくなったりします。
    胃腸の不調: 胃の動きが悪くなり(胃不全麻痺)、食後のもたれ、吐き気、嘔吐、早期満腹感などが現れます。下痢や便秘を繰り返すこともあります。
    膀胱の異常: 尿意を感じにくくなり、排尿がスムーズにできなかったり、残尿感があったりします。
    性機能障害(ED): 男性の場合、神経障害や血行不良により勃起不全(ED)が起こりやすくなります。
    不整脈、無痛性心筋梗塞: 心臓の自律神経が障害されると、脈拍が一定でなくなったり、心筋梗塞を起こしても胸の痛みを感じにくくなったりすることがあります。

これらの症状が現れたら、すでに神経障害が始まっているサインです。血糖コントロールを改善し、進行を抑えることが重要です。

糖尿病網膜症の症状

糖尿病網膜症は、目の奥にある網膜の血管が高血糖により傷つけられる合併症です。日本における失明原因の上位を占めており、非常に危険な合併症です。

  • 初期には自覚症状なし: 網膜症は初期の段階では、視力にほとんど影響が出ないため、自覚症状がありません。この段階で発見するには、眼科での定期的な検査が不可欠です。
  • 進行期の症状: 病状が進行し、網膜の中心部(黄斑)に影響が及んだり、網膜剥離や硝子体出血などが起こったりすると、以下のような症状が現れます。
    • 視力低下: 物が見えにくくなります。
    • かすみ目: 霧がかかったように見えたり、全体的にぼやけて見えたりします。
    • 飛蚊症: 目の前に糸くずや虫のようなものが飛んでいるように見えます。数が増えたり、大きくなったりすることがあります。
    • ゆがみ: 見るものがゆがんで見えることがあります。
    • 急な見えにくさ、失明: 血管が破れて出血したり、網膜剥離が起こったりすると、急激に視力が低下したり、失明したりすることがあります。

糖尿病と診断されたら、自覚症状がなくても、必ず定期的に眼科を受診し、眼底検査を受けることが非常に重要です。早期発見・早期治療によって、進行を抑え、失明を防ぐことが可能です。

糖尿病腎症の症状

糖尿病腎症は、高血糖により腎臓の血管や組織が傷つけられ、腎臓の機能が低下する合併症です。進行すると腎不全に至り、透析療法が必要になることがあります。日本における透析導入原因の第1位です。

  • 初期には自覚症状なし: 糖尿病腎症も、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。症状が現れるのは、腎臓の機能がかなり低下してからです。
  • 初期のサイン(尿検査でわかる): 自覚症状はないものの、初期の段階では尿の中に微量のタンパク(アルブミン)が漏れ出すようになります。これは尿検査で発見できます。定期的な尿検査が早期発見には欠かせません。
  • 進行期の症状: 腎機能が低下するにつれて、以下のような症状が現れます。
    • むくみ: 体内の余分な水分や塩分を排出できなくなるため、まぶたや顔、特に足やふくらはぎなどにむくみが出やすくなります。
    • だるさ、疲労感: 腎臓の機能が低下すると、体の中に老廃物がたまり、だるさや疲れを感じやすくなります。
    • 食欲不振、吐き気: 老廃物の蓄積により、消化器症状が現れることがあります。
    • 貧血: 腎臓で作られる造血ホルモン(エリスロポエチン)の分泌が減少し、貧血になることがあります。
    • 息切れ、呼吸困難: 体液量が増えたり、貧血が進んだりすることで、息切れや呼吸困難を感じることがあります。
  • 末期腎不全: さらに進行すると、腎臓の機能がほとんど失われ、人工透析や腎移植が必要な状態になります。

糖尿病と診断されたら、神経障害や網膜症と同様に、定期的に尿検査や血液検査(腎機能の評価)を受けることが非常に重要です。早期に腎症を発見し、適切な治療を行うことで、透析導入を遅らせたり、回避したりすることが可能です。

その他の合併症による症状

三大合併症以外にも、糖尿病は全身の様々な臓器に影響を及ぼし、多様な合併症を引き起こします。

  • 動脈硬化(大血管症): 高血糖は血管の壁を傷つけ、動脈硬化を進行させます。これにより、以下のような重篤な病気を引き起こすリスクが高まります。
    • 心筋梗塞、狭心症: 心臓の血管の動脈硬化により、胸の痛み、圧迫感、息切れなどが起こります。糖尿病患者さんでは、神経障害により典型的な痛みが現れないこともあります。
    • 脳梗塞、脳出血: 脳の血管の動脈硬化により、手足の麻痺、顔のゆがみ、呂律が回らない、意識障害などが起こります。
    • 閉塞性動脈硬化症: 足の血管の動脈硬化により、歩くと足が痛くなる(間欠性跛行)、足の冷感、しびれ、傷が治りにくい、重症化すると潰瘍や壊疽に至る(糖尿病足病変)ことがあります。
  • 糖尿病足病変: 神経障害、血行不良、感染症の抵抗力低下などが組み合わさり、足に潰瘍(傷が深くえぐれる)や壊疽(組織が腐る)を起こしやすくなります。感覚が鈍いため、小さな傷や靴擦れに気づかず重症化することがあり、最悪の場合、足の切断が必要になることもあります。
  • 感染症: 免疫機能の低下により、様々な感染症にかかりやすくなります。肺炎、尿路感染症、皮膚感染症(水虫、おできなど)のリスクが高まります。
  • 歯周病: 歯ぐきの炎症が起こりやすく、悪化しやすいです。歯ぐきからの出血、腫れ、歯がぐらつく、口臭などの症状が現れます。
  • 骨粗鬆症: 骨がもろくなり、骨折しやすくなるリスクが高まります。

これらの合併症は、血糖コントロールだけでなく、血圧や脂質(コレステロールや中性脂肪)、体重なども含めた全身の管理が非常に重要となります。

糖尿病の診断と検査

糖尿病は、血液検査で血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)という値を調べることによって診断されます。自覚症状がない場合でも、健康診断などで血糖値の異常を指摘された場合は、必ず医療機関(内科など)を受診し、詳しい検査を受ける必要があります。

主な診断基準と検査

検査項目 説明 糖尿病型と判断される基準(いずれか)
空腹時血糖値 10時間以上絶食した後の血糖値 126mg/dL以上
随時血糖値 食事時間に関係なく測定した血糖値 200mg/dL以上(典型的な糖尿病症状がある場合)
75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT) 75gのブドウ糖を溶かした水を飲み、血糖値の推移を測定する検査。糖尿病予備群の診断などにも用いられます。 2時間値が200mg/dL以上
HbA1c (NGSP値) 過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖値を反映する指標です。赤血球中のヘモグロビンとブドウ糖が結合した割合を示します。 6.5%以上
グリコアルブミン (GA) 過去2週間程度の平均的な血糖値を反映する指標です。 高値であれば高血糖が続いていることを示唆します(診断基準そのものではないですが、血糖コントロールの目安として用いられます)。

診断のポイント

  • 通常、空腹時血糖値が126mg/dL以上または75gOGTTの2時間値が200mg/dL以上であれば糖尿病型と判断されます。
  • これに加えて、HbA1cが6.5%以上であれば、一度の検査で糖尿病と診断されます。
  • 典型的な糖尿病症状(多尿、多渇、体重減少など)がある場合は、随時血糖値が200mg/dL以上またはHbA1cが6.5%以上で診断されます。
  • 上記基準を満たさない場合でも、空腹時血糖値が110〜125mg/dL(境界型)、または75gOGTTの2時間値が140〜199mg/dL(境界型)の場合は、「糖尿病予備群」と診断されます。予備群の段階でも、将来糖尿病を発症するリスクが高く、すでに合併症が始まっている可能性もあるため、生活習慣の改善が必要です。
  • 診断確定のためには、原則として別の日に再検査を行うことが推奨されます。

これらの検査によって、現在の血糖の状態や過去からの平均的な血糖コントロールの状態が把握できます。

糖尿病の予防と改善(前期を含む)

糖尿病(特に2型糖尿病)は、発症前に「糖尿病予備群」という段階を経ることが多いです。この段階や、まだ軽症の糖尿病であれば、生活習慣の改善によって進行を遅らせたり、血糖値を正常に戻したりすることが可能です。もちろん、すでに糖尿病と診断されている方も、血糖コントロールを良好に保つことで合併症の発症や進行を防ぐことができます。

食事による血糖値コントロール

食事は血糖値に直接影響するため、非常に重要です。極端な食事制限ではなく、バランスの取れた健康的な食事を心がけることが大切です。

  • 適正なエネルギー量: 自身の年齢、性別、活動量に応じた適正なエネルギー量を知り、食べすぎないように注意します。
  • バランスの取れた食事: 炭水化物、タンパク質、脂質のバランスを適切に保ちます。主食(炭水化物)に偏らず、野菜、きのこ類、海藻類、魚介類、肉類、豆類などもバランスよく摂りましょう。
  • 食べる順番: 食事の最初に食物繊維が豊富な野菜やきのこ類、海藻類などを食べ、次にタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)、最後に炭水化物(ご飯、パン、麺類)を食べるようにすると、血糖値の急激な上昇を抑えることができます。
  • ゆっくりよく噛んで食べる: 早食いは血糖値の急上昇を招きます。ゆっくりよく噛んで食べることで、満腹感も得られやすくなります。
  • 糖質の質と量: 血糖値を上げやすい清涼飲料水、お菓子、菓子パンなどは控えます。ご飯やパンなどの主食も適量にし、全粒粉を使ったパンや玄米など、血糖値の上昇が穏やかなものを選ぶと良いでしょう。
  • 間食に注意: 間食はなるべく控え、摂る場合も果物や無糖ヨーグルトなど、血糖値への影響が少ないものを選びます。
  • アルコールの適量: アルコールはエネルギーが高く、血糖コントロールを乱す可能性があります。飲む場合は適量を守り、休肝日を設けることが大切です。主治医に相談しましょう。

具体的な食事療法については、医師や管理栄養士に相談し、個別の指導を受けることをお勧めします。

運動習慣の重要性

運動は、筋肉がブドウ糖を利用するのを促進し、インスリンの働きを改善する(インスリン抵抗性を改善する)効果があります。また、体重管理にも役立ちます。

  • 有酸素運動: ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど、軽く息が弾む程度の運動を、1回20〜30分、週に3〜5回行うのが目安です。毎日続けることが理想的ですが、まずはできる範囲から始めましょう。
  • 筋力トレーニング: 軽いダンベル体操やスクワットなど、筋肉をつける運動も効果的です。筋肉量が増えると、安静時でもブドウ糖の消費が増えます。週に2〜3回行うのが目安です。
  • 日常生活での活動量を増やす: エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩く、家事や庭仕事をするなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やすことも有効です。
  • 運動のタイミング: 食後1〜2時間後に行うのが、食後の高血糖を抑えるのに効果的と言われています。
  • 運動前の注意: 運動前に血糖降下薬を服用している場合や、血糖値が極端に高い・低い場合は、運動によって低血糖や高血糖が悪化するリスクがあります。運動を始める前に医師に相談し、安全な範囲で行うようにしましょう。

無理のない範囲で、楽しく続けられる運動を見つけることが大切です。

糖尿病前期の改善方法

「糖尿病予備群」と呼ばれる糖尿病前期の段階は、まだ糖尿病には至っていませんが、将来糖尿病を発症するリスクが非常に高い状態です。しかし、この段階で積極的に生活習慣を改善すれば、糖尿病の発症を予防したり、遅らせたりすることが十分に可能です。

  • 食事療法: 前述の「食事による血糖値コントロール」と同様の考え方で、バランスの取れた適量の食事を心がけます。特に、食べすぎや早食いを避け、食物繊維を意識して摂ることが重要ですす。
  • 運動療法: 前述の「運動習慣の重要性」を参考に、ウォーキングなどの有酸素運動を中心に、日常的な活動量を増やします。
  • 体重管理: 現在太り気味の方は、適正体重を目指して減量することが非常に効果的です。少し体重が減るだけでも、インスリンの働きは大きく改善されます。例えば、現在の体重から5%減量するだけでも、糖尿病発症リスクを大幅に低下させられることがわかっています。
  • 禁煙、節酒: 喫煙習慣がある方は禁煙し、飲酒量が多い方は節酒に努めます。
  • 定期的な健康診断: 予備群と診断された場合でも、そのまま放置せず、定期的に健康診断や医師の診察を受け、血糖値やHbA1cなどの値をチェックし続けることが大切です。

糖尿病前期は、生活習慣を見直す絶好の機会です。将来の健康のために、ぜひ積極的に取り組みましょう。

まとめと医療機関への相談

糖尿病は、初期には自覚症状がほとんどない場合が多く、気づかないうちに進行し、さまざまな合併症を引き起こす怖い病気です。多尿、多渇、体重減少といった典型的な症状が現れる頃には、すでに病状が進行していることも少なくありません。

しかし、手足のしびれ、視力低下、むくみ、傷の治りにくさなど、見逃されやすい初期のサイン合併症の兆候に注意を払うことで、早期発見につながる可能性があります。特に、家族に糖尿病患者がいる、肥満がある、運動不足、不健康な食生活といったリスク因子をお持ちの方は、定期的な健康診断を受けることが非常に重要です。

健康診断で血糖値やHbA1cが高いことを指摘された場合、あるいはこの記事を読んで気になる症状がある場合は、自己判断せず、必ずお近くの医療機関(内科、かかりつけ医など)を受診してください。医師による正確な診断を受け、必要な検査や適切なアドバイス、治療方針について相談することが、糖尿病の進行を防ぎ、合併症を予防するために最も大切なステップです。

糖尿病は、適切に管理すれば、合併症を予防し、健康な人と変わらない生活を送ることが十分に可能です。一人で悩まず、医療専門家と共に病気と向き合っていきましょう。


免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に関するアドバイスではありません。ご自身の健康状態や症状については、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。本記事の情報に基づいて行われた行為の結果について、当方は一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

糖尿病についてよくある質問

Q1. 糖尿病は遺伝するのですか?

A1. 糖尿病になりやすい体質は遺伝すると言われています。特に2型糖尿病では、家族に糖尿病の人がいる場合、そうでない人に比べて発症リスクが高くなります。しかし、遺伝だけで必ずしも発症するわけではありません。遺伝的な体質に加えて、食生活や運動習慣などの生活習慣が大きく関わって発症します。家族に糖尿病患者さんがいる場合は、日頃から健康的な生活を心がけ、定期的な健康診断を受けることが予防につながります。1型糖尿病も遺伝的な要因が関わるとされていますが、原因は複雑でまだ完全には解明されていません。

Q2. 一度糖尿病になったらもう治らないのですか?

A2. 一般的に、糖尿病は一度診断されると「完治」することは難しい病気とされています。これは、血糖値を正常に保つためのインスリンの分泌や働きが悪くなった状態が完全に元に戻ることが少ないためです。しかし、適切な治療(食事療法、運動療法、薬物療法)によって、血糖値をコントロールし、正常に近い状態を維持することは十分に可能です。特に、2型糖尿病のごく初期や糖尿病予備群の段階であれば、生活習慣の改善によって血糖値を正常に戻し、薬剤を使用せずにコントロールできる場合もあります。これは「寛解(かんかい)」と呼ばれ、見かけ上は治ったように見える状態ですが、体質が変わったわけではないため、油断すると再び血糖値が悪化する可能性があります。定期的な健康管理は継続が必要です。

Q3. 糖尿病の食事療法で特に何に気をつければ良いですか?

A3. 糖尿病の食事療法で最も大切なのは、バランスの取れた食事を、適量、規則正しく摂ることです。特定の食品を完全に排除するのではなく、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などをバランスよく摂取します。特に注意すべきは、糖質の量と質です。清涼飲料水や甘いお菓子、菓子パンなど、血糖値を急激に上げるものは控えます。主食(ご飯、パン、麺類)も適量にし、食物繊維が豊富な野菜やきのこ類、海藻類を先に食べるようにすると、血糖値の上昇が緩やかになります。早食いを避け、ゆっくりよく噛んで食べることも大切です。具体的な食事内容は、個々の状態に合わせて医師や管理栄養士と相談して決めましょう。

Q4. 糖尿病の運動療法はどのようなことをすれば良いですか?

A4. 糖尿病の運動療法としては、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動が特に推奨されます。これらの運動は、血糖値を下げる効果が高く、インスリンの働きを改善します。週に3〜5回、1回20〜30分程度を目安に行います。また、筋力トレーニングも効果的です。筋肉量が増えると、ブドウ糖の消費量が増え、基礎代謝も上がります。軽いダンベル体操やスクワットなどを週2〜3回取り入れると良いでしょう。最も重要なのは、「継続すること」です。無理なく、楽しみながら続けられる運動を見つけ、日常生活の中で体を動かす機会を増やすことから始めましょう。運動前には、低血糖や高血糖に注意し、医師に相談してください。

Q5. 市販のサプリメントや健康食品で糖尿病は改善できますか?

A5. 残念ながら、市販のサプリメントや健康食品だけで糖尿病が「改善」したり「完治」したりすることは証明されていません。糖尿病の治療の基本は、食事療法と運動療法、そして必要な場合は薬物療法です。特定のサプリメントや健康食品に効果があるかのように謳われているものもありますが、科学的な根拠が不十分であったり、中には体に合わずに体調を崩したり、服用中の薬の効果に影響を与えたりするものもあります。糖尿病の治療は専門的な管理が必要です。サプリメントや健康食品に頼るのではなく、必ず医師の指導の下で、適切な治療を行いましょう。気になるサプリメントがある場合は、使用前に必ず医師に相談してください。

Q6. 痩せているのに糖尿病になることはありますか?

A6. はい、痩せている方でも糖尿病になることはあります。特に2型糖尿病は肥満との関連が強いですが、日本人の場合は、欧米人に比べて肥満がなくても糖尿病になりやすい体質を持つ人が多いと言われています。これは、インスリンを分泌する能力が体質的に低い人が一定数いるためです。痩せていても、遺伝的な要因、内臓脂肪の蓄積(見た目は痩せていても内臓脂肪が多い「隠れ肥満」)、不健康な生活習慣(不規則な食事、睡眠不足、ストレスなど)などによって糖尿病を発症することがあります。また、1型糖尿病は肥満とは直接関係なく発症します。痩せているからといって油断せず、健康診断を定期的に受けたり、気になる症状があれば医療機関に相談したりすることが大切ですます。

より詳細な専門情報については、一般社団法人日本糖尿病学会 用語集などもご参照ください。

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