突然、咳が止まらなくなってつらい思いをされていませんか?
咳は、気道に入った異物や分泌物を体の外に出そうとする大切な防御反応ですが、それが過剰になると日常生活に支障をきたし、体力を消耗させてしまいます。
特に急に咳が止まらなくなった時は、「何か大きな病気かも?」と不安になることもあるでしょう。
咳の原因は風邪のような一時的なものから、治療が必要な疾患まで多岐にわたります。
この記事では、急に咳が止まらない場合に考えられる原因、自宅でできる対処法、そして見逃してはいけない危険なサインや病院を受診すべき目安について詳しく解説します。
ご自身の症状と照らし合わせながら、適切な対応を考える一助としていただければ幸いです。
急に咳が止まらない原因とは?多岐にわたる可能性
咳は、空気の通り道である気道(鼻から喉、気管支、肺に至るまで)に何らかの刺激が加わったときに起こる生理的な反射です。
この刺激の原因は様々であり、急に咳が止まらなくなる場合も、その背景には複数の可能性が考えられます。
咳の原因を正しく把握することは、適切な対処や治療を行う上で非常に重要です。
ここでは、急に咳が止まらない場合に特に考えられる主な原因について見ていきましょう。
感染症による咳:風邪から肺炎まで
急に咳が止まらなくなる原因として最も一般的なのは、ウイルスや細菌による感染症です。
- 急性感染症(風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症など): これらの感染症では、ウイルスや細菌が気道の粘膜に炎症を引き起こし、咳が出やすくなります。
通常、発熱、鼻水、喉の痛み、だるさなど他の症状を伴うことが多いですが、咳が比較的強く出るタイプもあります。
これらの咳は、病気の経過とともに数日から1~2週間程度で改善していくことが多いです。 - 気管支炎、肺炎: 風邪などが悪化し、気管支や肺の奥まで炎症が広がった状態です。
咳がひどくなり、黄色や緑色の痰を伴うことが多くなります。
発熱や息苦しさも現れることがあり、特に高齢者や基礎疾患がある方では重症化のリスクもあるため注意が必要です。 - 百日咳: 特徴的な「コンコンコンコン」という連続的な咳の後、「ヒュー」という笛のような吸気音がする発作性の咳が特徴です。
乳幼児は特に重症化しやすく、呼吸困難になる危険性があります。
学童期以降や成人では典型的な症状が出ないこともありますが、強い咳が長期間続く場合は百日咳の可能性も考慮されます。
ワクチン接種をしていてもかかることがあるため注意が必要です。
長引く咳の原因として、百日咳のような感染症の可能性も考えられます 参照元: 厚生労働省。 - 感染後咳嗽: 風邪や気管支炎などの急性感染症が治癒した後も、気道の炎症や過敏性がしばらく残ることで、咳だけが続く状態です。
通常は数週間程度で自然に軽快することが多いですが、長引くこともあります。
他の症状(発熱など)がなく、咳だけが残るのが特徴です。
アレルギーによる咳:見落とされがちな原因
アレルギー反応によって気道が過敏になり、ホコリ、ダニ、花粉、ペットの毛などのアレルゲンや、冷たい空気、タバコの煙といったわずかな刺激に反応して咳が出やすくなることも、急に咳が止まらなくなる原因として重要です。
- 咳喘息: 気管支喘息の類縁疾患とされ、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)や呼吸困難感を伴わないのが特徴です。
空咳が出ることが多く、特に夜間から明け方にかけて症状が悪化しやすい傾向があります。
温度差、運動、タバコの煙、会話、笑うことなどがきっかけで咳き込むこともあります。
放置すると数年以内に気管支喘息へ移行する可能性が高いため、早期の診断と治療が重要です。
日本呼吸器学会の咳嗽診療ガイドラインでも、8週間以上続く咳嗽の原因として咳喘息の鑑別が必要とされています 参照元: 日本呼吸器学会。 - アトピー咳嗽: アトピー体質の人に比較的多く見られる、乾いた咳が特徴です。
痒みを伴うこともあり、夜間や早朝、寒い場所、暖房の効いた場所などで症状が出やすい傾向があります。
抗ヒスタミン薬が有効な場合があり、咳喘息と区別が難しいこともあります。
日本呼吸器学会の咳嗽診療ガイドラインでも、長引く咳の原因としてアトピー咳嗽が挙げられています 参照元: 日本呼吸器学会。 - アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎に伴う咳: 鼻炎や副鼻腔炎で鼻水や痰が増え、これが喉の後ろに流れ込む(後鼻漏)ことで、喉の粘膜が刺激されて咳が出ることがあります。
特に寝ている間や、仰向けになった時に起こりやすい傾向があります。
喉のムズムズを伴う咳
「喉がムズムズする」「イガイガする」といった不快感やかゆみを伴って咳が出る場合、これは喉の知覚神経が過敏になっているサインかもしれません。
アレルギー反応による炎症、空気の乾燥、タバコの煙や大気汚染物質などの刺激、あるいは軽い感染症などが原因で起こり得ます。
喉の粘膜が乾燥したり、わずかな刺激に過剰に反応したりすることで、ムズムズ感が生じ、それを解消しようとして咳が出てしまうというメカニズムです。
その他の原因:様々な背景が影響することも
感染症やアレルギー以外にも、急に咳が止まらなくなる原因はあります。
- 乾燥や刺激物: 空気が乾燥していると、気道の粘膜も乾燥しやすくなり、わずかな刺激にも敏感になって咳が出やすくなります。
特に冬場やエアコンの効いた室内で起こりやすいです。
また、タバコの煙(喫煙、受動喫煙)、香水、芳香剤、化学物質、排気ガスなども気道を刺激し、咳を誘発または悪化させる原因となります。 - 特定の薬剤の副作用: 一部の薬剤は副作用として咳を引き起こすことがあります。
特に、高血圧の治療に使われるACE阻害薬は、乾いた咳の副作用が比較的多く知られています。
服用を開始してから数週間〜数ヶ月後に咳が出始めることがあります。
もし、新しい薬を飲み始めてから咳が出始めた場合は、医師や薬剤師に相談してみましょう。 - 心因性の咳: ストレス、不安、緊張などが原因で咳が出ることがあります。
このタイプの咳は、精神的な状態に左右されることが特徴で、例えば何か特定の場面で出やすかったり、意識を向けていない時(特に睡眠中)には出なかったりすることが多いです。
他の原因が考えられない場合に診断されることがあります。 - 逆流性食道炎: 胃酸や胃の内容物が食道に逆流し、食道や喉の粘膜を刺激して咳を誘発することがあります。
特に食後や夜間に横になった時に咳が出やすい傾向があります。
胸やけや酸っぱいものが上がってくる感じ(呑酸)を伴うこともありますが、咳だけが唯一の症状であるケースも少なくありません。 - 肺や気管支の慢性疾患の悪化: COPD(慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺炎、肺がんなどの慢性の肺疾患がある場合、普段から咳や痰、息切れなどの症状があることが多いですが、病状が悪化すると「急に咳がひどくなる」と感じることがあります。
特に喫煙歴のある方は注意が必要です。 - 異物誤嚥: 食事中などに食べ物や飲み物、あるいは小さな異物が誤って気道に入り込んでしまい、それを排出しようとして激しい咳が出ることがあります。
特に高齢者や、脳梗塞などで飲み込みの機能(嚥下機能)が低下している方に起こりやすい緊急性の高い原因です。
このように、急に咳が止まらない原因は多岐にわたります。
自己判断せずに、症状が続く場合や気になる場合は医療機関を受診し、適切な診断を受けることが大切です。
急に咳が止まらない時の対処法:原因に応じた適切なケア
急に咳が止まらなくなった時は、まず落ち着いて自分の症状を観察することが大切です。
どのような時に咳が出るか、どのような音か、他の症状はあるかなどを把握しておくと、医療機関を受診した際に医師に伝える重要な情報となります。
原因に応じた適切な対処を行うことで、症状の緩和や改善が期待できます。
自宅でできるセルフケア:症状緩和のために
医療機関を受診するまでや、比較的軽い症状の場合、自宅でできるいくつかのセルフケアで咳を和らげることができます。
のどを潤す
乾燥は喉の粘膜を刺激し、咳を誘発・悪化させます。
こまめに喉を潤すことが重要です。
- 水分補給: 水、ぬるいお茶(カフェインは利尿作用があるため、摂りすぎに注意)、ノンカフェインのハーブティーなどを少量ずつ頻繁に飲みましょう。
冷たい飲み物は刺激になることがあるため、避けた方が良い場合があります。 - はちみつ: はちみつには殺菌作用や抗炎症作用があると言われており、咳や喉の痛みを和らげる効果が期待できます。
お湯に溶かして飲んだり、そのまま舐めたりします。(ただし、乳児ボツリヌス症の危険があるため、1歳未満の乳児には絶対に与えないでください。) - のど飴・トローチ: 口に含むことで唾液の分泌を促し、喉の乾燥を防ぎます。
メントール成分が強いものはかえって刺激になることもあるため、マイルドなものを選びましょう。
適切な姿勢をとる
特に夜間、寝ている間に咳が出やすい場合は、寝る姿勢を工夫することで症状が和らぐことがあります。
- 上半身を起こす: 枕を高くしたり、背中の下にクッションや抱き枕を入れたりして、上半身を少し起こして寝るようにすると、気道への負担が軽減され、咳が出にくくなることがあります。
これにより、痰が絡む場合も少し楽になることがあります。 - 座る時: 猫背にならず、背筋を伸ばして座る方が呼吸が楽になり、咳も出にくくなることがあります。
加湿をする
空気の乾燥は咳の大敵です。
特に冬場の暖房使用時や、乾燥した季節には積極的に加湿しましょう。
- 加湿器の使用: 部屋の湿度を40~60%に保つように加湿器を使用します。
ただし、加湿器のタンクをこまめに掃除しないと、カビや細菌が繁殖してかえって健康を害することがあるため、清潔に保つことが重要です。 - 濡れたタオルを干す: 加湿器がない場合でも、部屋に濡らしたタオルを干したり、洗濯物を部屋干ししたりすることで湿度を上げることができます。
- マスクの着用: マスクをつけると、自分の呼気で喉や鼻の粘膜を保湿する効果があります。
乾燥対策として外出時だけでなく、就寝時に着用するのも有効です。
その他のセルフケアとして、タバコの煙やその他の刺激物(強い香料など)を避ける、十分な睡眠と休息をとることも、体の回復力を高め、咳の症状を和らげるために重要です。
医療機関での治療法:根本原因へのアプローチ
自宅でのセルフケアはあくまで対症療法や補助的なものです。
咳の原因を正確に診断し、根本から治療するためには医療機関を受診することが不可欠です。
医師は問診、診察、必要に応じて検査を行い、咳の原因を特定した上で、最適な治療法を選択します。
医療機関で行われる主な治療法は以下の通りです。
- 原因疾患に対する治療: これが最も重要です。
- 感染症(細菌性)の場合: 抗生物質
- アレルギー性疾患(咳喘息、アトピー咳嗽など)の場合: 吸入ステロイド薬、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬など。
日本呼吸器学会のガイドラインでも、これらの疾患に対する吸入ステロイド薬の効果的な活用が示唆されています 参照元: 日本呼吸器学会。 - 逆流性食道炎の場合: 胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬など)
- 薬剤性咳嗽の場合: 原因となっている薬剤の中止や変更
- その他、原因に応じた専門的な治療が行われます。
- 鎮咳薬(咳止め): 咳を抑える薬です。
咳がひどくて眠れない、会話もままならないなど、日常生活に大きな支障が出ている場合に処方されます。
ただし、咳は体の防御反応であり、痰を出すためにはある程度必要な場合もあります。
原因によっては咳止めを使わない方が良い場合や、使用する咳止めの種類に注意が必要な場合もあるため、必ず医師の指示に従って服用します。 - 去痰薬: 痰が絡んで出しにくい咳の場合に、痰を柔らかくしたり、気道の分泌を促したりして痰を出しやすくする薬です。
- 気管支拡張薬: 気道が狭くなっている場合に、気管支を広げ、呼吸を楽にしたり咳を和らげたりする薬です。
吸入薬や内服薬があります。
このように、医療機関では咳の原因に応じた多角的な治療が行われます。
つらい咳に悩まされている場合は、自己判断で市販薬を使い続けるのではなく、一度医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることを強くお勧めします。
急に咳が止まらない症状で考えられる病気:咳の種類から推測
咳の音、出るタイミング、他の症状の有無などは、原因疾患を推測する上で重要なヒントになります。
ご自身の咳の症状がどのタイプに近いかを把握しておくと、医療機関を受診した際に医師に伝えるべき情報として役立ちます。
ただし、これはあくまで目安であり、自己診断はせずに必ず医師の診断を受けてください。
熱はないのに咳が続く場合
風邪のような明らかな感染症状(発熱、強い倦怠感など)がないのに咳が続く場合、様々な病気が考えられます。
- 感染後咳嗽: 風邪などが治った後、咳だけが3週間以内続く場合。
- 咳喘息: 喘鳴(ゼーゼー音)がなく、主に夜間や早朝に咳が出やすい。
空気の温度差や運動などで誘発されることも。 - アトピー咳嗽: アトピー体質の人に多い乾いた咳。
夜間・早朝、冷たい空気などで悪化。 - 逆流性食道炎: 食後や夜間、横になった時に咳が出やすい。
胸やけや呑酸を伴うことも、咳だけの場合も。 - 薬剤性咳嗽: 特定の薬剤(ACE阻害薬など)の副作用による乾いた咳。
- 副鼻腔気管支症候群: 副鼻腔炎からくる後鼻漏が原因で咳が出やすい。
鼻や喉の症状を伴うことが多い。 - 初期の肺炎やマイコプラズマ感染症などでも、熱が低い、または一時的な場合もあります。
むせる・えづくような咳の場合
食事中や食後、あるいは特定の動作をした時に急にむせたり、えづいたりするような強い咳が出る場合、以下の病気が考えられます。
- 異物誤嚥: 食事中などに異物が気道に入った場合に起こる、非常に激しい咳。
- 逆流性食道炎: 胃酸の逆流により、喉や食道が刺激されてむせるような咳が出る。
- 百日咳: 特徴的な発作性の咳で、咳き込んだ後に息を吸うときにヒューと音が鳴る。
- 嚥下機能の低下: 高齢者や神経系の疾患がある方で、食べ物や唾液をうまく飲み込めずに誤嚥しやすくなっている場合。
発作的に咳が出る場合
特定のタイミングや刺激によって、突然咳き込みが始まる場合です。
- 咳喘息、気管支喘息: 夜間から早朝、運動後、温度差、アレルゲンへの曝露などで咳発作が起こる。
喘息の場合は喘鳴や息苦しさも伴うことが多い。 - 百日咳: 連続的な咳の後に特徴的な吸気音がする咳発作。
- 異物誤嚥: 急に激しい咳発作が起こる。
- 心因性咳嗽: 精神的なストレスや緊張で咳が出始め、一度出ると止まらなくなることも。
- 稀に、気道の狭窄や腫瘍などが原因で発作性の咳が出ることがあります。
長引く咳(遷延性咳嗽・慢性咳嗽):3週間以上続く咳は要注意
咳が3週間以上続く場合を遷延性咳嗽、8週間以上続く場合を慢性咳嗽と呼びます。
これらの長引く咳は、単なる風邪の後遺症ではない可能性が高く、専門的な検査が必要になることが多いです。
考えられる病気・原因 | 主な特徴 | 受診目安 |
---|---|---|
感染後咳嗽 | 風邪などの感染症が治った後も咳だけが続く。 通常数週間で自然改善傾向。 |
3週間以上続く場合(遷延性咳嗽)。 症状が悪化する場合。 |
咳喘息 | 喘鳴や息苦しさはないが、夜間・早朝、温度差、運動、会話、タバコなどで咳が出やすい。 放置すると喘息へ移行リスク。 |
咳が続く場合。 特に夜間や早朝の咳が多い場合。 参照元: 日本呼吸器学会 |
アトピー咳嗽 | アトピー体質に多く、乾いた咳。 夜間・早朝、冷たい空気、暖房などで悪化。 喉に痒みを伴うことも。 |
咳が続く場合。 参照元: 日本呼吸器学会 |
副鼻腔気管支症候群 | 副鼻腔炎に伴う後鼻漏が原因で咳が出やすい。 鼻詰まり、鼻水、喉の違和感などの鼻症状を伴うことが多い。 |
鼻や喉の症状と共に咳が続く場合。 耳鼻咽喉科または呼吸器内科へ。 |
逆流性食道炎 | 食後や横になった時に咳が出やすい。 胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がる)を伴うことも、咳のみの場合も。 |
咳が続く場合。 消化器症状がある場合。 |
薬剤性咳嗽 | 特定の薬(ACE阻害薬など)を服用開始後に乾いた咳が出現。 内科や呼吸器内科で相談。 |
服用中の薬があり、咳が出始めた場合。 必ず医師に相談が必要。 |
COPD(慢性閉塞性肺疾患) | 喫煙者に多い慢性の病気。 労作時の息切れ、慢性的な咳や痰が特徴。 病状悪化で咳が増加。 |
咳や痰、息切れが続く場合。 喫煙歴がある場合。 |
間質性肺炎 | 肺が硬くなり、酸素を取り込みにくくなる病気。 乾いた咳と息切れが特徴。 進行性の場合がある。 |
乾いた咳と息切れが続く場合。 |
百日咳 | 特徴的な発作性の咳(コンコンの後にヒューという吸気音)。 乳幼児は重症化リスク大。 成人では非典型的でも長引く咳の原因となる。 |
特徴的な咳が出現した場合。 周囲への感染拡大を防ぐためにも早期受診が推奨。 長引く咳の原因として結核と並び注意が必要です 参照元: 厚生労働省。 |
心因性咳嗽 | 精神的な要因。 意識を向けていない時(睡眠中)には出にくい。 他の原因が否定された場合に考慮される。 |
他の原因が否定された場合。 精神的な負担が大きい場合。 |
肺がんなど | 稀ながら、長引く咳の原因として考慮される。 血痰、体重減少、胸痛などの症状を伴うことも。 |
咳が長引く、血痰が出る、体重が減るなど他の症状がある場合。 特に喫煙歴がある方。 |
このように、長引く咳の背景には様々な病気が隠れている可能性があります。
自己判断で市販薬を使い続けたり、様子を見すぎたりすると、原因疾患の発見や治療が遅れてしまうことがあります。
咳が3週間以上続く場合は、必ず医療機関を受診し、専門的な検査や診断を受けるようにしましょう。
厚生労働省も3週間以上咳が続く場合は医療機関への受診を推奨しています 参照元: 厚生労働省。
急に咳が止まらない!危険なサインと病院受診の目安
「急に咳が止まらない」という症状の中でも、特に注意が必要な「危険なサイン」があります。
これらのサインが見られる場合は、重篤な病気が隠れている可能性があり、速やかに医療機関を受診する必要があります。
また、たとえ危険なサインがなくても、一定期間咳が続く場合は医療機関を受診すべき目安となります。
すぐに受診が必要な症状:迷わず医療機関へ
以下の症状が一つでも見られる場合は、様子を見ずにすぐに医療機関を受診してください。
夜間や休日であれば、救急外来の受診も検討しましょう。
- 呼吸困難感・息苦しさ: 咳き込むだけでなく、呼吸が浅い、速い、胸が締め付けられるような感じ、酸素が足りない感じがある場合。
これは気道や肺に重度の問題が起きているサインかもしれません。 - 胸の痛み: 咳をするときだけでなく、安静時にも胸に痛みがある場合。
肺炎や胸膜炎、あるいは心臓の病気など、咳以外の原因も考えられます。 - 高熱が続く: 38℃以上の熱が数日続く場合や、一度下がった熱が再び上がる場合。
これは感染症が悪化している可能性や、合併症を起こしているサインです。 - 血痰や多量の痰: 痰に鮮血や錆びたような色の血が混じる場合(血痰)、あるいは黄色や緑色の粘り気のある痰が大量に出る場合。
これは気道や肺からの出血、あるいは細菌感染による炎症が強いことを示唆します。
肺炎や気管支拡張症、稀ながら肺がんなどの可能性も考慮されます。 - 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー): 息を吸ったり吐いたりする時に、呼吸と共にゼーゼー、ヒューヒューという音が聞こえる場合。
これは気道が狭くなっているサインであり、喘息発作や重度の気管支炎など、呼吸状態が悪化している可能性があります。 - 顔色が悪い、唇が紫色: 体内の酸素が不足している状態(チアノーゼ)を示しており、非常に危険なサインです。
- 意識が朦朧とする、ぐったりしている: 全身状態が悪化しているサインです。
- 水分や食事が摂れない: 体力低下や脱水のリスクが高まります。
- 症状が急速に悪化する: 数時間から1日程度の短時間で、咳や他の症状が急激に重くなる場合。
- 持病がある方: 心臓病、腎臓病、糖尿病、免疫抑制状態(ステロイドや免疫抑制剤の服用、HIV感染など)がある方は、たとえ症状が比較的軽く見えても、急速に重症化するリスクが高いため、早めに受診することが重要です。
- 乳幼児や高齢者: 体力や免疫力が低いため、症状が急速に悪化したり、脱水を起こしやすかったりします。
普段と様子が違うと感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
上記のような危険なサインがなくても、咳が3週間以上続く場合(遷延性咳嗽)は、必ず一度医療機関を受診すべきです。
長引く咳は、風邪の後遺症だけでなく、咳喘息、アトピー咳嗽、逆流性食道炎、副鼻腔気管支症候群、あるいはより稀な病気など、様々な原因が考えられ、適切な診断と治療が必要です。
放置することで、病状が悪化したり、気管支喘息へ移行したりするリスクもあります。
何科を受診すべきか:適切な専門家へ
急に咳が止まらない場合、まず何科に行けば良いのか迷うこともあるでしょう。
- かかりつけ医や内科: まずは、普段からかかっているかかりつけ医や、近所の内科クリニックを受診するのが一般的です。
風邪などの一般的な感染症による咳であれば、内科での診療で十分対応できます。
問診や聴診、簡単な検査(血液検査、レントゲンなど)で初期診断を行い、適切な治療や専門医への紹介を行います。 - 呼吸器内科: 咳や呼吸器症状が主な場合や、症状が重い、長引いている場合は、呼吸器内科を受診するのが最も専門的です。
呼吸器内科では、肺機能検査、気管支鏡検査、CT検査など、呼吸器疾患に関する詳細な検査や専門的な治療が可能です。
咳喘息や気管支喘息、COPD、間質性肺炎など、呼吸器の専門的な病気が疑われる場合に適しています。
日本呼吸器学会は、咳嗽診療ガイドラインなどを公開し、専門的な知見を提供しています 参照元: 日本呼吸器学会。 - アレルギー科: アレルギーが咳の原因として強く疑われる場合(アトピー体質がある、特定の季節や場所で咳が出やすいなど)は、アレルギー科の受診も考えられます。
呼吸器内科がアレルギー専門医を兼ねている場合も多いです。 - 耳鼻咽喉科: 鼻水、鼻詰まり、喉の痛み、後鼻漏などの鼻や喉の症状が強く、それが咳の原因になっている可能性が高い場合は、耳鼻咽喉科を受診すると良いでしょう。
副鼻腔炎などが原因の咳に対応してもらえます。 - 消化器内科: 胸やけ、呑酸(酸っぱいものが上がる)などの消化器症状を伴う咳の場合や、逆流性食道炎が強く疑われる場合は、消化器内科を受診すると良いでしょう。
迷う場合は、まずは内科を受診し、症状を詳しく説明した上で、必要に応じて専門科への紹介を受けるのがスムーズな場合が多いです。
受付で症状を伝え、どの科が良いか相談してみるのも良いでしょう。
まとめ:咳は体からの大切なサイン
「急に咳が止まらない」という症状は、私たちの体が発する大切なサインです。
その原因は、一時的な風邪のようなものから、適切な診断と治療が必要な疾患まで、非常に多岐にわたります。
咳がつらい時は、喉を潤す、加湿をする、適切な姿勢をとるなど、自宅でできるセルフケアで症状を和らげることも有効です。
しかし、これらのセルフケアはあくまで対症療法であり、根本的な原因を解決するものではありません。
特に、息苦しさ、胸の痛み、高熱が続く、血痰が出る、喘鳴が聞こえる、顔色が悪いといった「危険なサイン」が見られる場合は、迷わず速やかに医療機関を受診してください。
これらの症状は、肺炎や喘息発作など、緊急性の高い病気を示している可能性があります。
また、たとえ危険なサインがなくても、咳が3週間以上続く場合(遷延性咳嗽)は、風邪以外の病気(咳喘息、アトピー咳嗽、逆流性食道炎、副鼻腔気管支症候群など)の可能性が高くなります。
長引く咳を放置すると、病状が悪化したり、他の疾患へ移行したりするリスクも考えられます。
この場合も、早めに内科や呼吸器内科などの医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが非常に重要です。
厚生労働省も、長引く咳(3週間以上)の場合は医療機関への受診を推奨しています 参照元: 厚生労働省。
つらい咳から解放され、健やかな毎日を取り戻すために、ご自身の症状をよく観察し、必要に応じて迷わず医療機関を受診しましょう。
医師に症状を詳しく伝えることで、適切な診断と治療につながります。
免責事項
本記事で提供される情報は一般的な知識に基づくものであり、医学的アドバイスや診断、治療を代替するものではありません。
個々の症状や健康状態に関しては、必ず医師やその他の資格を持つ医療専門家にご相談ください。
特に乳幼児や高齢者の咳、持病がある方の咳については、重症化リスクも高いため、早めの医療機関受診をお勧めします。
本記事の情報に基づくいかなる行動についても、執筆者および運営者は一切の責任を負いません。
病状に関しては自己判断せず、必ず専門家の診断を受けてください。